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特許7492612電気駆動システムを作動させるための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】電気駆動システムを作動させるための方法
(51)【国際特許分類】
   B60L 58/40 20190101AFI20240522BHJP
   B60L 50/75 20190101ALI20240522BHJP
   B60L 58/12 20190101ALI20240522BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20240522BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20240522BHJP
   H01M 8/04537 20160101ALI20240522BHJP
   H01M 8/04858 20160101ALI20240522BHJP
   H01M 8/04992 20160101ALI20240522BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240522BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
B60L58/40
B60L50/75
B60L58/12
H01M8/00 Z
H01M8/04 Z
H01M8/04537
H01M8/04858
H01M8/04992
H02J7/00 B
H02J7/00 P
H02J7/35 K
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022580348
(86)(22)【出願日】2021-07-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-28
(86)【国際出願番号】 EP2021068461
(87)【国際公開番号】W WO2022008413
(87)【国際公開日】2022-01-13
【審査請求日】2023-02-13
(31)【優先権主張番号】102020004102.7
(32)【優先日】2020-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】522100316
【氏名又は名称】セルセントリック・ゲーエムベーハー・ウント・コー・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100090583
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 清
(74)【代理人】
【識別番号】100098110
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 みどり
(72)【発明者】
【氏名】オットマール・ゲーリンク
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・バラリン
(72)【発明者】
【氏名】ステッフェン・マオス
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0298555(US,A1)
【文献】特開2020-045094(JP,A)
【文献】特開2007-053051(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 58/40
B60L 50/75
B60L 58/12
H01M 8/00
H01M 8/04
H01M 8/04537
H01M 8/04858
H01M 8/04992
H02J 7/00
H02J 7/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのバッファ・バッテリ(2.8)と、駆動電力を提供するための少なくとも1つの燃料電池(2.6)とを備える自動車(2)の電気駆動システムを作動させるための方法であって、経路データが決定され、次いで、前記経路データに基づいて、前記燃料電池(2.6)の作動を最適化するために消費データが予測される、前記方法において、
前記燃料電池(2.6)の作動を最適化するために、前記予測された消費データに基づいて、経路に関する総エネルギー要求が予測され、その後、前記経路の開始時点に前記バッファ・バッテリ(2.8)に貯蔵されているエネルギーと共に前記総エネルギー要求を提供するために必要とされる平均燃料電池電力が決定され、それにより、このために必要とされる前記燃料電池(2.6)からの電力に関する一定の電力軌跡が規定され、その後、前記電力軌跡を用いた前記経路の走行時に、前記バッファ・バッテリ(2.8)の限度値が違反されるかどうかのチェックが行われ、
限度値が違反されない場合、前記燃料電池(2.6)が、前記規定された電力軌跡で作動され、
限度値が違反される場合、前記限度値の前記違反の範囲内で、前記燃料電池(2.6)の電力が、時間的に一定の量だけ変えられ、その後、前記経路全体にわたって前記平均燃料電池電力に再び到達するように調整され、それにより新たな電力軌跡が規定され、その後、
前記バッファ・バッテリ(2.)の限度値の違反がない電力軌跡が決定されるまで、新たな電力軌跡に関する前記チェックが再び実施され、その後、前記燃料電池(2.6)が作動されることを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
前記燃料電池(2.6)の電力が調整されるフェーズの大きさが、限度値の違反の範囲よりも大きく規定され、前記フェーズの開始が前記違反の開始前であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電力軌跡が、それぞれのフェーズで一定の電力を有する少なくとも1つのフェーズを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
複数のフェーズがあるとき、一定の電力のフェーズ間の遷移が、傾斜および/または曲線の形で規定されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記チェックが、それぞれ前記経路の開始から限度値の最初の違反まで行われることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
消費値の前記予測が、前記自動車(2)のモデリングに基づいて、前記経路上での駆動および制動トルクの計算によって行われることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記経路データが、車両外部のサーバから照会されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記限度値として、前記バッファ・バッテリ(2.8)の充電状態が使用されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記充電状態の開始値として、前記バッファ・バッテリ(2.8)の実際の充電状態が使用され、または、固定電力網から前記バッファ・バッテリを再充電することが可能である場合には、戦略的に最適化された充電状態が使用され、このとき、前記充電状態が、前記開始前に前記電力網での充電/放電によって調整されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記実際の充電状態の定期的な検査が行われ、前記実際の充電状態が、前記予測された充電状態の上下の許容帯域から出る場合、残りの経路のための前記電力軌跡の再決定が行われることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部でより詳細に定義されたタイプによる、自動車の電気駆動システムを作動させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バッファ・バッテリと少なくとも1つの燃料電池とを備える自動車用、特にまた商用車用の電気駆動システムが、全般的な従来技術から知られている。さらに、燃料電池は、その性能の面で、およびその寿命の面で、燃料電池電力の非常に急速で動的な変化に対して不利な応答をすることが知られている。したがって、そのような電気駆動システムに関して、これらの問題を解決することができるように電気駆動システムを最適化することも知られている。
【0003】
これに関連して、当技術分野の特許文献1には、燃料電池用の少なくとも1つの燃料タンクと少なくとも1つのトラクション・バッテリとを備えた自動車の電気駆動システムを作動させるための方法が記載されている。その方法では、経路情報に基づいて消費データを予想し、これによって燃料電池の作動に関するフェーズと燃料電池が作動しないフェーズとを規定するために、ナビゲーション・データが読み込まれて処理される。最適化の目的は、例えば、全航続距離の最適化、性能の最適化、給油停止回数の最適化などであり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】DE 10 2017 213 088 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、そのような方法をさらに改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、この目的は、請求項1の特徴部の特徴を備えた方法によって達成される。請求項1に従属する請求項から、有利な改良形態および発展形態が明らかになる。
【0007】
当技術分野の先行技術での方法と同様に、本発明による方法は、経路データが決定され、その後、この経路データに基づいて消費データが予測され、このデータに基づいて燃料電池の作動が最適化されることを企図する。本発明によれば、燃料電池の作動を最適化するために、予測された消費データに基づいて、計画された経路に関する総エネルギー要求が決定されることが企図される。次いで、車両が経路を走破できるように、開始時点にバッファ・バッテリに蓄積されているエネルギーと共にこの総エネルギー要求を提供するために必要とされる平均燃料電池電力が決定される。
【0008】
平均燃料電池電力、あるいはまた以下での走行に関連し得る範囲やフェーズなどの概念は、本明細書では、それぞれ時間単位または経路単位に関する平均値を意味する。本質的に、これらの単位は互いに依存しており、したがって、道程に関する観察が行われるか、それともこの道程に必要とされる時間に関する観察が行われるかは重要な役割を果たさない。
場合によってはバッファ・バッテリにまだ貯蔵されているエネルギーと共に、経路全体を走破することを可能にするために必要とされる平均燃料電池電力は、経路全体にわたる一定の平均燃料電池電力と仮定され、燃料電池から必要とされる電力に関する対応する一定の電力軌跡に設定される。次いで、燃料電池は、この軌跡に基づいて作動される。
【0009】
この最初の一定の電力軌跡の規定後、次いで、この電力軌跡で経路を走破する場合にバッファ・バッテリの限度値が違反されるかどうかの検査が行われる。そのような限度値は、例えば、高すぎる温度、高すぎる電流、または高すぎるバッファ・バッテリの動的負荷などであり得る。本発明による方法の特に有利な形態によれば、場合によってはバッファ・バッテリに関する限度値としての上述の他の変数以外に、特にその充電状態が限度値として使用される。これは、以下で方法の例示的な説明にも使用されるが、それにより方法がこの充電状態に限定されることを意図するものではない。
【0010】
燃料電池に関する、最初の始動時に規定された一定の電力軌跡を用いた経路に関する予測がバッファ・バッテリの限度値を違反しない場合、方法はこの時点で既に完了しており、平均燃料電池電力に対応するこの一定の電力軌跡を用いた作動を行うことができる。一方、限度値が違反される場合、限度値のこの違反が生じている範囲、ここでもやはり時間的または経路的な範囲で、燃料電池の電力が一定の量だけ変えられる。したがって、例えば電力が増加または減少される。例えば限度値がバッテリの充電状態であり、これが臨界限度値を下回る場合、燃料電池の電力はそれに対応して増加されて、バッファ・バッテリを再充電するためのエネルギーを有し、したがって充電状態が臨界限度値を下回らないようにする。
【0011】
この例示的なシナリオでの電力の増加により、燃料電池によって供給される総電力が経路のこの時点または地点までに増加されているので、時間的にその後、燃料電池の電力は調整され、ここで述べている例では減少され、平均して、経路全体にわたって平均燃料電池電力を再び提供する。これにより、燃料電池からの電力に関する新たな電力軌跡が実際に得られ、この電力軌跡は、上述した例では、最初は平均燃料電池電力の値で一定に始まり、次いで充電状態の例示的な限度値の違反の範囲内で一時的に増加され、次いで、前に決定された平均燃料電池電力よりも下で一定にさらに続くようなものである。
【0012】
この新たな電力軌跡は、上述した様式で再度チェックされ、バッファ・バッテリの限度値の違反がない電力軌跡が決定されるまでこれらのステップが繰り返され、その後、その電力軌跡が燃料電池の作動に使用される。すなわち、これにより、経路もしくは時間単位あたりに必要とされる平均エネルギー要求に基づいて、または経路全体に必要とされる総エネルギー要求に基づいて、平均燃料電池電力が簡単かつ効率的に決定され、バッファ・バッテリの限度値の違反に関して最適化される。これは簡単であり効率的である。これは、予測により事前に既に決定されている臨界状態を緩衝することができ、それと同時に燃料電池の電力制御がこの軌跡によって滑らかにされるため、バッファ・バッテリを保護し、それにより燃料電池がほぼ一定の電力で作動され、これは、一方では燃料電池の効率、他方では燃料電池の寿命に有益である。
【0013】
本発明による方法の非常に有利な発展形態によれば、ここで、燃料電池の電力が調整されるフェーズの大きさは、限度値の違反の範囲よりも大きい。ここで、フェーズの開始は、違反の開始前である。これは、最適化が予測に基づいており、したがって限度値の違反が実際に生じるまで待つ必要がないので可能である。したがって、限度値のそのような違反が実際に生じる前に、既にそのような限度値の違反に対処して、違反を回避し、それにより特にバッファ・バッテリを保護し、その寿命を最適化することができる。ここではとりわけ、燃料電池への動的な負荷がなくされる。そのような動的な負荷は、限度値の違反、例えば臨界充電状態への未達が、それが測定された後になってから燃料電池が非常に強く動的に電力を上昇されることにより「対抗」されるときに必要となるであろう。しかし、このような挙動は燃料電池にとって好ましくなかろう。補償のフェーズが違反の範囲よりも大きく選択されることにより、必要とされる電力ジャンプの量を減少させることができる。これも、燃料電池の寿命および効率に有利である。
【0014】
本発明による方法のさらなる非常に有利な形態は、電力軌跡が、それぞれのフェーズで一定の電力を有する少なくとも1つのフェーズを含むことをさらに企図する。したがって、電力軌跡は、例えば最初のチェック時にバッファ・バッテリの限度値の違反が確認されなかった場合には、経路全体または経路に必要とされる持続期間と同じ長さのただ1つのフェーズからなっていてよい。このとき、電力軌跡は、それに対応して平均燃料電池電力レベルで一定であり、したがって燃料電池は定常電力で連続的に作動される。複数のフェーズがある場合、個々のフェーズの電力は互いに異なる可能性があり、しかしそれぞれのフェーズ内では一定のままであり、燃料電池に電力の変更をできるだけ要求しなければならず、これは燃料電池の寿命に関して非常に不利になるであろう。
【0015】
本方法のさらなる非常に有利な形態は、複数のフェーズがあるとき、一定の電力のフェーズ間の遷移が、傾斜および/または曲線の形で規定されることをさらに企図する。本着想のこの特に好適な形態では、燃料電池から要求される電力の急激な変化がなくされる。そうではなく、特に燃料電池の電力の許容される変化率に合わせた傾斜、または場合によってはさらに曲線を規定することができ、したがって一定の電力の個々のフェーズ間の「緩やかな」遷移によって、燃料電池の作動をよりいっそう滑らかにし、それに応じて燃料電池を保護して駆動する。
【0016】
本発明による方法の非常に好適な発展形態は、チェックが、それぞれ経路の開始から限度値の最初の違反まで行われることをさらに企図し得る。したがって、チェックは、経路の開始から限度値の最初の違反まで行われることによって、繰り返し実施される。このとき、燃料電池電力は、この限度値に違反しなくなるように調整され、それにより、新たなチェックの際には再び開始時に始められ、次いで経路または時間グラフで左から右へ、場合により限度値の違反が再び生じるまでチェックされ、この違反が、この検査に関する新たな「最初の」違反となる。ここでも燃料電池の電力が再び調整され、場合により、これは、経路全体にわたって限度値が違反されなくなるまで繰り返される。
【0017】
ここで、本着想の非常に有利な発展形態によれば、この方法は、経路上での駆動および制動トルクの計算によって車両のモデリングに基づいて、消費値の予測を実施することができる。車両の風袋重量、積載量、および変化しないまたは時間経過と共に変化するさらなる車両固有の境界条件などの対応するパラメータを「インプット」することができる車両のそのようなモデリングにより、消費値の比較的良好な予測が可能になり、したがって本発明による方法に基づいて作動をさらに改善する。
【0018】
ここで、原則として、冒頭で述べた当技術分野の先行技術の場合のように、経路データは、車両のナビゲーション装置から提供されることがある。しかし、この方法は、経路計画が非常に予測的に、大きな経路範囲または時間区間にわたって実施され、典型的にはまた比較的厳密に保たれるときに特に有利である。このために、経路計画は、特に車両外部のサーバからの経路データを利用することができ、このサーバは、例えばクラウドでのナビゲーション・システムの一部として構成することができ、または前述の有利な変形形態によれば物流計画の輸送管理システムとして構成することもできる。とりわけ商用車による商品の輸送の分野で行われるような、輸送管理システムによるそのような物流計画は、停車地点、給油地点、休憩時間などを含む非常に長期的で信頼性の高い経路予測を提供する。通常使用される輸送管理システムには、さらに運転者、移動される積荷、その重量、および車両のさらなるパラメータが保存され、したがって非常に効率的にかつ高い信頼性で予測を行うことができる。さらに、経路が事前に計画されている比較的大きい時間区間により、本発明による方法によって、燃料電池のできるだけ穏やかな作動に関するさらなる最適化が達成される。
【0019】
既に述べたように、限度値としてバッファ・バッテリの充電状態を使用することができる。この場合、限度値として充電状態を使用する有利な発展形態によれば、必要とされる総エネルギーの観察に必要なバッファ・バッテリの充電状態の開始値をそれに対応して測定することができ、したがってバッファ・バッテリの実際の充電状態が使用される。固定電力網からバッファ・バッテリを再充電することが可能である場合、すなわち車両がいわゆるプラグイン車両である場合、バッファ・バッテリの再充電によって、あるいはまたは電力網への電流の放電およびフィードバックによって、それぞれ戦略的に最適化された充電状態を開始前に調整することができる。同様のことが、例えば商用車の荷物の積み下ろしまたは積み込みの枠組で、走行途中に電力網での再充電が行われる場合にも当てはまる。例えば、そのような充電のための停車に続いて、または開始およびそれに続く充電のための停車に続いて下り坂の経路になる場合、バッテリから電力網に電気エネルギーを戻すことが有意であり、一方、上り坂の場合は、可能であればバッファ・バッテリを完全に充電することができる。
【0020】
ここで、本着想の非常に有利な発展形態によれば、実際の充電状態の定期的な検査が行われてもよく、実際の充電状態が、予測された充電状態の上下の許容帯域から出る場合、残りの経路のための電力軌跡の再決定が行われる。これは、純粋なモデリングおよび予測に基づいて作成された電力軌跡が、実際の作動中に多かれ少なかれ顕著な逸脱をもたらす場合に、エネルギー消費ならびに燃料電池および/またはバッファ・バッテリの寿命に関して計画を再び最適化するために、対応する再計算または再調整が可能になるという利点を有する。
【0021】
充電状態の場合に関して、モデル化された予測で限度値を上回るまたは下回る場合、予測される曲線とそれぞれの限度値との間の面積がそれに対応して積分されるように応答されて、あるエネルギー含有量を得ることがあり、このエネルギー含有量は次いで、可能であれば限度値の違反に抵触する前に、対応する期間にわたって燃料電池の電力を一定値だけ増加または減少させることにより、対応して補償することができる。
【0022】
本発明の意味における経路データは、純粋な運転経路に加えて、上り坂、下り坂、および経路に恒久的に存在する他の事象も含むことができる。さらに、経路データは、例えば第三者提供者から提供されることがある情報も含むことができる。これは、例えば、気象データ、交通データ、現在の建築現場に関するデータ、交通渋滞、および経路上での交通密度分布の予想などを含むことがある。
【0023】
本発明による方法のさらなる有利な形態は、図面を参照して以下でより詳細に述べる例示的実施形態からも明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明による方法を実施することができるシステムの概略ブロック図である。
図2】本発明による方法の例示的な適用において見られる、バッテリ充電状態と燃料電池の電力目標値との様々なグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
好ましい発展形態での本発明による方法を特に含む可能な詳細なシーケンスを、図1での概略ブロック図に基づいて以下に述べる。
【0026】
ここで、第1のステップは、ここでは参照符号1で表されるボックスでの物流計画であり、この物流計画は、車両、特に商用車のフリートのフリート・オペレータのもとで行われる。一般に、この物流計画1は、いわゆる輸送管理システム(TMS)で実施される。ここで、輸送依頼は、個々の車両2およびその運転者とリンクされる。さらに、それぞれの車両2に関する時間および経路計画が実施される。物流計画1でそのようにして生成されたデータ・パケットは、典型的には、経路データ、すなわち個々の区間の座標、出発時間、積み下ろし時間、休憩時間などを含む時間計画を含む。さらに、データ・パケットには、車両2に関する仕様、例えば様々な車両パラメータ、車両2の装備、車両2の車両識別番号などが保存されている。さらに、データ・パケットは、運転者、および車両の積荷、ここでは特に積荷の重量に関するデータを含む。
【0027】
参照符号1aで表される通信を介してこのデータ・パケットを運転戦略モジュール3に伝達し、データ・インターフェース3.1を介して運転戦略モジュール3で受信することができる。次いで、データ・パケットは、運転予測モジュール3.3でさらに処理される。通信1aを介して伝達されたデータ・パケットからの車両2に関する仕様に合わせて、さらなるインターフェース・モジュール3.2を介して、車両2に関するデータが通信2a/2bを介して要求される、または車両2の通信モジュール2.1を用いて読み出される。データには、例えばタンク2.3の物理的測定値、例えばタンク制御モジュール2.4によって取得される圧力、温度、および充填量、ならびにバッファ・バッテリ2.8の充電状態、ならびに例えばバッテリ管理モジュール2.7から提供されることがあるバッファ・バッテリ2.8の熱負荷が含まれる。次いで、物流計画データおよび車両データを用いて、運転戦略モジュール3の運転予測モジュール3.3は、計画された車両による計画された運転経路上でのエネルギー要求およびさらなる車両状態を計算する。ここで、交通、場合によっては運転者、地形、天候、および交通インフラストラクチャの影響も適宜考慮に入れられる。これらの情報は、追加のモジュール4によって、例えば気象情報4.1および/または交通情報4.2の形で、データ・パケットとしてライン4bを介して要求される、および/またはライン4aを介して呼び出されることがある。
【0028】
運転予測モジュール3.3の計算結果を用いて、作動戦略モジュール3.4は、燃料電池2.6の最適化された電力要求を決定することができる。
【0029】
このために、以下に述べるシーケンスが使用される。物流計画1からの既に決定されている経路データに基づいて、車両2の車両データが導入される車両モデルを用いて、経路全体について必要な駆動および制動トルクが計算される。これらの駆動および制動トルクは次いで、電力需要、または電気駆動機械の回生電力に変換される。ここから、次いで、経路全体でのそれぞれの経路区間またはそれぞれの時間単位に関する平均電力要求を計算することができる。したがって、経路全体にわたって、平均して一定の電力要求の値が生じる。次いで、バッファ・バッテリ2.6内のエネルギーと、経路でのこの平均電力要求または全エネルギー要求とに基づいて、燃料電池2.8によって供給すべき平均の電力を計算することができる。バッファ・バッテリ2.8の充電状態に関する開始値として、バッテリ管理モジュール2.7によって取得された実際の値を使用することができ、または、車両2もしくはそのバッファ・バッテリ2.8を電力網に接続することが可能であるときには、バッファ・バッテリ2.8の充電またはバッファ・バッテリ2.8から電力網へのエネルギーのフィードバックによって、バッファ・バッテリ2.8の充電状態(SOC)に関する最適な開始値を調整することができる。
【0030】
次に、既に上述したモデリングに基づいて、経路全体にわたって一定である仮定された平均燃料電池電力について、燃料電池2.6のそのような電力軌跡によってバッファ・バッテリ2.8の充電状態の限度値が超過されるか否かがチェックされる。これに関し、図2a)では、上側に、燃料電池2.6の電力目標値がキロワット単位で示され、下側に、バッファ・バッテリ2.8の充電状態がパーセンテージで示されている。ここで、下回ってはならない下限の充電状態と、上回ってはならない上限の充電状態との2つの限度値が破線で描かれている。燃料電池2.6の電力軌跡は、燃料電池2.6から必要とされる平均電力に対応する一定の値として表されている。バッファ・バッテリ2.8の限度値の違反に関する検査は、充電状態に加えて、例えば温度、電流強度、または電流密度など他の値も補完する、または代替的に考慮に入れることができる。
【0031】
次に、電力軌跡として燃料電池2.6の平均電力値が一定であるとき、バッファ・バッテリ2.8の限度値の違反が検出されない場合、戦略的計画は既に完了しており、燃料電池2.6はこの平均値、すなわち一定の電力軌跡で作動される。
【0032】
図2a)の図におけるように、最小の充電状態を下回った場合、それに対応して応答しなければならない。ここで、図2のグラフでは、チェックは常に左から右に行われ、それぞれ経路の開始時点または開始地点で再び始まり、対応する限度値を超えるまたは下回るまで行われる。この場合には、バッファ・バッテリ2.8の最小充電状態を下回り、これは、対応して図2aおよび図2bで見ることができる。この下回りを相殺するために、下限値の下の灰色の面積、すなわちエネルギー量が、例えば曲線と限度値との間の面積の積分によって識別される。このとき、この値は、燃料電池2.6によってさらに提供されなければならないエネルギー量に対応する。図2b)の図では、これは、バッファ・バッテリ2.8の限度に足りていないと前に識別されたエネルギー量の分だけ燃料電池2.6の電力を増加することによってもたらされる。一方では燃料電池の電力変化をできるだけ低く保ちつつ、燃料電池2.6の作動時にできるだけ長期間にわたって一定の電力で維持するために、それに対応して電力が増加される時間または経路区間は、下限値を下回っていた時間または経路区間よりも大きくされ、例えば2倍にされ、これは図2b)の図で見ることができる。最後に、燃料電池2.6の平均総電力、したがって経路上で燃料電池2.6によって生成される総エネルギーを保つために、続いて、やはり時間または経路に関して、燃料電池電力のプロファイルが対応して低下され、平均して図2aと同じ平均電力が再び達成される。
【0033】
このようにして、ここで燃料電池2.6の作動に関する新たな電力軌跡が生じた。この電力軌跡も、次いで新たなチェックを受け、このチェックは、図2a)の図と同様に、対応して図2c)に示されている。このチェックは、ここでは、バッファ・バッテリ2.8の充電状態での下限値の違反がなく、その充電の上限値を超えるまで行われる。ここでも同様に、少なくとも上限値を超えていた期間にわたって、燃料電池2.6によって供給される電力が低下されることによって応答される。これは、対応して図2d)の図に示されている。ここでも、燃料電池2.6に関するさらに新たな電力軌跡は、それに対応して適合された、ここに示されている最後の区間での電力を有して生じ、したがって合計では、最初に決定されたこの経路に関する燃料電池2.6からの平均電力、したがって総エネルギーになる。新たなチェックにおいて、図2d)に示されている電力軌跡に基づいて、バッファ・バッテリ2.8の限度値の違反は生じなくなり、したがって、バッファ・バッテリ2.8の限度値が許容限度内にある最適な作動戦略が見つけられている。
【0034】
図2d)の図に示されているように、燃料電池2.6に関する電力軌跡は、燃料電池2.6の異なる電力を有する様々なフェーズからなり、しかし各フェーズ内で電力は一定のままである。これにより、燃料電池2.6の非常に穏やかな作動が可能になる。これは、ここでは実線で示されているような電力の急激な変化の代わりに、任意選択で、傾斜または場合によってはさらに他の曲線が使用されることによってさらに改良することができ、これらは、燃料電池2.6にとって寿命および性能を損なうことなく可能な最大変化率に合わせられる。図2d)の図において、これらの傾斜は、電力軌跡に破線で描かれている。
【0035】
作動戦略モジュール3.4において、計画された経路全体にわたる燃料電池2.6に関する電力軌跡、および限度値を違反しないバッファ・バッテリ2.8の充電状態の関連のプロファイルの形での最適な作動戦略が決定された場合、これらのデータは、ここに示されるように好ましくはクラウドで行うことができる計算の後、参照符号1bで表されるラインで物流計画1のフリート・オペレータまたは配車係に表示され、同時に、参照符号2bで表されるラインで車両2に伝送される。これに対する代替として、クラウドでの運転戦略モジュール3で計算する代わりに、この計算を車両で完全に行うこともでき、これは、上述の方法にさらには影響を与えず、当業者に自明の方法で単に通信経路が変わるにすぎない。
【0036】
このとき、計算された作動戦略は、燃料電池2.6の場所または時間に依存する電力目標値、すなわちその電力軌跡、およびバッファ・バッテリ2.8の充電状態の仮定された事前計算されたプロファイルの形で、通信モジュール2.1によって車両2の中央駆動制御モジュール2.2に転送され、中央駆動制御モジュール2.2は、それに対応して車両2での作動戦略を実行する。
【0037】
ここで、駆動制御モジュール2.2は、燃料電池2.6の制御モジュール2.5による車両2での目標値の規定のために、燃料電池2.6に関する事前計算された電力軌跡を使用する。同時に、駆動制御モジュール2.2は、バッファ・バッテリ2.8の充電状態の計画されたプロファイルと、バッテリ管理モジュール2.7から呼び出すことができる走行中の実際のプロファイルとの間に逸脱が生じているかどうかを検査する。バッファ・バッテリ2.8の充電状態の計画されたプロファイルと実際のプロファイルとの間に逸脱が生じた場合、または熱負荷限度、電流限度、電流密度限度などに達した場合、駆動制御モジュール2.2は、燃料電池2.6での電力要求に修正を施すことができる。これはまた、計算されて計画された充電状態の上下の特定の事前定義された閾値または許容帯域までは注意を払われないこともあり得る。しかし、そのような許容帯域を超えた場合、さらなる計算が車両2で行われるだけでなく、対応する運転戦略モジュール3にも再び反映されると有意であり得て、後続の経路の残りの部分に関して上述した計画シーケンスをもう一度実施し、それにより、例えば事故による突然の渋滞発生や短期的な迂回による計画外の経路逸脱など予測不能な外的事象によって走行途中に逸脱が生じたとしても計画を最適化する。
【0038】
ルート選択からの逸脱を車両2の運転者が認識したときにも、対応する再計画を開始することができ、これもまた上述した様式で行われ、その結果を関連のシステム1、2に分散することができる。この枠組で、特に、更新された交通データ、交通流データ、または気象情報などのさらなる情報によって経路データを更新することもできる。


図1
図2a)】
図2b)】
図2c)】
図2d)】