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特許7492617溶接脚長限界ゲージを使用した合否判定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】溶接脚長限界ゲージを使用した合否判定方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 3/04 20060101AFI20240522BHJP
   B23K 31/00 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
G01B3/04
B23K31/00 K
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023025210
(22)【出願日】2023-02-21
【審査請求日】2023-11-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592173124
【氏名又は名称】日本ファブテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】西本 哲也
(72)【発明者】
【氏名】上野 康雄
【審査官】眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-065791(JP,U)
【文献】実開昭61-076303(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 3/00-5/30
G01B 11/00-21/32
B23K 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材に対して第2部材を直交させて突き当てて溶接された隅肉溶接部の脚長の限界を確認するための溶接脚長限界ゲージを使用した合否判定方法であって、
前記溶接脚長限界ゲージは、
直角に配置される第1辺と第2辺との角部を切り欠いた切欠部が形成され、
前記切欠部は、前記第1辺と交差する第1切欠頂部と、前記第2辺と交差する第2切欠頂部と、を有し、
前記第1切欠頂部は、前記第1辺と前記第2辺とが交差する仮想交点から指定脚長値の長さを切り欠いた位置であり、
前記第2切欠頂部は、前記仮想交点から過大脚長の限界値を示す長さを切り欠いた位置である構成とされ、
前記溶接脚長限界ゲージを使用し、前記第1切欠頂部を前記隅肉溶接部の脚長端に一致させたときに、
前記第2切欠頂部が前記隅肉溶接部に非接触となり、かつ前記第1辺と前記第1部材との間および前記第2辺と前記第2部材との間の両方に隙間が形成されたときには、前記隅肉溶接部の脚長が適正と判断し、
前記第1辺が前記第1部材に対して全長にわたって隙間なく当接し、かつ前記第2辺が前記第2部材に対して全長にわたって隙間なく当接した状態となり、さらに前記第1切欠頂部及び前記第2切欠頂部の両方共に前隅肉溶接部に対して接触していないときには、指定脚長より小さい過小脚長となって不合格判定とし、
また、前記第1切欠頂部が前記隅肉溶接部に当接し、前記第1辺が前記第1部材に対して傾斜して前記第1部材との間に第1隙間が確保され、かつ前記第2辺が前記第2部材に対して傾斜して前記第2部材との間に第2隙間が確保された状態であっても、前記第2切欠頂部が前記隅肉溶接部に対して接触しているときには、過大脚長の限界値より大きい脚長となって不合格判定とする溶接脚長限界ゲージを使用した合否判定方法。
【請求項2】
前記切欠部は、互いに直交方向に延びる二つの測定辺を有し、
前記二つの測定辺のうち一方の前記第2辺と平行に延びる第1測定辺の長さは、前記指定脚長値と同じ長さであり、
他方の前記第1辺と平行に延びる第2測定辺の長さは、前記過大脚長の限界値と同じ長さである、請求項1に記載の溶接脚長限界ゲージを使用した合否判定方法
【請求項3】
矩形板状のゲージ本体を有し、
前記ゲージ本体の四隅の角部のうち少なくとも2つの角部に前記切欠部が形成され、
複数の前記切欠部は、それぞれ指定脚長が異なっている、請求項1に記載の溶接脚長限界ゲージを使用した合否判定方法
【請求項4】
前記第1切欠頂部には、前記指定脚長値を示す第1表示部が表示され、
前記第2切欠頂部には、前記過大脚長の限界値を示す第2表示部が表示されている、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の溶接脚長限界ゲージを使用した合否判定方法
【請求項5】
前記第1表示部と前記第2表示部とのいずれか一方は、他方と異なる表示マークが表示されている、請求項4に記載の溶接脚長限界ゲージを使用した合否判定方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接脚長限界ゲージを使用した合否判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のゲージでは、例えば特許文献1に示されるように、2つの直交する部材の隅肉溶接における隅肉ののど厚及び脚長を測定することにより合否判定を行うためのゲージが知られている。
【0003】
特許文献1には、ゲージに形成される頂部を隅肉溶接部に当接させるように配置し、頂部の両側の互いに直角に位置する2つの斜辺のそれぞれを直交する部材に当接させ、ゲージに表示された脚長合格の判断基準となる数値の位置を示す引き出し線と実際の隅肉溶接部の脚長と比較して合否を判断する構成のゲージについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録第3147376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の溶接脚長限界ゲージでは、以下のような問題があった。
特許文献1のゲージでは、ゲージに表示される脚長合格の判断基準となる数値の位置を示す引き出し線と、隅肉溶接部の脚長の位置と、を目視のみで見比べる必要があり、目視による判断に誤りが生じやすいことから、その点で改善の余地があった。そのため、明かりが十分でない場所や、隅肉溶接部に当てたゲージを目視で確認がし難い場所では、脚長の合否判断の精度が低下するという問題があった。
【0006】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、隅肉溶接の過小脚長と過大脚長とを視覚のみでなく感覚的に、容易かつより確実に判定することができ、過大脚長による部材コストや溶接時間の増大を抑制できる溶接脚長限界ゲージを使用した合否判定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る溶接脚長限界ゲージを使用した合否判定方法の態様1は、第1部材に対して第2部材を直交させて突き当てて溶接された隅肉溶接部の脚長の限界を確認するための溶接脚長限界ゲージを使用した合否判定方法であって、前記溶接脚長限界ゲージは、直角に配置される第1辺と第2辺との角部を切り欠いた切欠部が形成され、前記切欠部は、前記第1辺と交差する第1切欠頂部と、前記第2辺と交差する第2切欠頂部と、を有し、前記第1切欠頂部は、前記第1辺と前記第2辺とが交差する仮想交点から指定脚長値の長さを切り欠いた位置であり、前記第2切欠頂部は、前記仮想交点から過大脚長の限界値を示す長さを切り欠いた位置である構成とされ、前記溶接脚長限界ゲージを使用し、前記第1切欠頂部を前記隅肉溶接部の脚長端に一致させたときに、前記第2切欠頂部が前記隅肉溶接部に非接触となり、かつ前記第1辺と前記第1部材との間および前記第2辺と前記第2部材との間の両方に隙間が形成されたときには、前記隅肉溶接部の脚長が適正と判断し、前記第1辺が前記第1部材に対して全長にわたって隙間なく当接し、かつ前記第2辺が前記第2部材に対して全長にわたって隙間なく当接した状態となり、さらに前記第1切欠頂部及び前記第2切欠頂部の両方共に前隅肉溶接部に対して接触していないときには、指定脚長より小さい過小脚長となって不合格判定とし、また、前記第1切欠頂部が前記隅肉溶接部に当接し、前記第1辺が前記第1部材に対して傾斜して前記第1部材との間に第1隙間が確保され、かつ前記第2辺が前記第2部材に対して傾斜して前記第2部材との間に第2隙間が確保された状態であっても、前記第2切欠頂部が前記隅肉溶接部に対して接触しているときには、過大脚長の限界値より大きい脚長となって不合格判定とすることを特徴としている。
【0008】
本発明に係る溶接脚長限界ゲージの態様1によれば、第1切欠頂部を隅肉溶接部の脚長端に一致させたときに、第2切欠頂部が隅肉溶接部に接触となり、かつ第1辺と第1部材との間および第2辺と第2部材との間の両方に隙間が形成されたときに隅肉溶接部の脚長が適正と判断することができる。
一方で、第1辺が第1部材に対して全長にわたって隙間なく当接し、かつ第2辺が第2部材に対して全長にわたって隙間なく当接した状態となり、さらに第1切欠頂部及び第2切欠頂部の両方共に隅肉溶接部に対して接触していないときには、指定脚長より小さい過小脚長となって不合格判定となる。
また、第1切欠頂部が隅肉溶接部に当接し、第1辺が第1部材に対して傾斜して第1部材との間に隙間が確保され、かつ第2辺が第2部材に対して傾斜して第2部材との間に隙間が確保された状態であっても、第2切欠頂部が隅肉溶接部に対して接触しているときには、過大脚長より大きい脚長となって不合格判定となる。
このように、本発明では、隅肉溶接脚長の合否判定を行うことができる。
【0009】
(2)本発明の態様2は、態様1の溶接脚長限界ゲージを使用した合否判定方法において、前記切欠部は、互いに直交方向に延びる二つの測定辺を有し、二つの測定辺のうち一方の前記第2辺と平行に延びる第1測定辺の長さは、前記指定脚長値と同じ長さであり、他方の前記第1辺と平行に延びる第2測定辺の長さは、前記過大脚長の限界値と同じ長さであることが好ましい。
【0010】
(3)本発明の態様3は、態様1又は態様2の溶接脚長限界ゲージを使用した合否判定方法において、矩形板状のゲージ本体を有し、前記ゲージ本体の四隅の角部のうち少なくとも2つの角部に前記切欠部が形成され、複数の前記切欠部は、それぞれ指定脚長が異なっていることを特徴としてもよい。
【0011】
(4)本発明の態様4は、態様1から態様3のいずれか一つの溶接脚長限界ゲージを使用した合否判定方法において、前記第1切欠頂部には、前記指定脚長値を示す第1表示部が表示され、前記第2切欠頂部には、前記過大脚長の限界値を示す第2表示部が表示されていることが好ましい。
【0012】
この場合には、使用者が第1表示部及び第2表示部を目視により確認することで、使用する切欠部を間違えることなく選択でき、より効率よく測定作業を行うことができる。
【0013】
(5)本発明の態様5は、態様4の溶接脚長限界ゲージを使用した合否判定方法において、前記第1表示部と前記第2表示部とのいずれか一方は、他方と異なる表示マークが表示されていることが好ましい。
【0014】
この場合には、使用者が第1表示部と第2表示部を区別することができ、より効率よく測定作業を行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る溶接脚長限界ゲージを使用した合否判定方法によれば、隅肉溶接の過小脚長と過大脚長とを視覚のみでなく感覚的に、容易かつより確実に判定することができ、過大脚長による部材コストや溶接時間の増大を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態による第1脚長ゲージを示す平面図である。
図2】第2脚長ゲージを示す平面図である。
図3】第1脚長ゲージによる測定状態を示す図であって、脚長が合格判定の場合の図である。
図4】第1脚長ゲージによる測定状態を示す図であって、過小脚長で不合格判定の場合の図である。
図5】第1脚長ゲージによる測定状態を示す図であって、過大脚長で不合格判定の場合の図である。
図6】第1脚長ゲージによる測定状態を示す図であって、過大脚長で不合格判定の場合の図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る溶接脚長限界ゲージを使用した合否判定方法の実施形態について図面を参照して説明する。
なお、各図面において、各構成部材を視認可能な大きさとするために必要に応じて各構成部材の縮尺を適宜変更している場合がある。
【0018】
図1及び図2に示すように、本実施形態の溶接脚長限界ゲージ(以下、脚長ゲージ1という)は、図3に示す第2部材2Bに対して第1部材2Aを直交させて突き当てて隅肉溶接されたビード30(隅肉溶接部)の脚長Sの限界を確認する際に使用される測定治具である。脚長ゲージ1は、隅肉溶接に利用することができ、ビード30の脚長Sの合否判定の測定を行うためのものである。なお、本実施形態では、隅肉溶接脚長の合否判定を行うことができる。
ここで、脚長Sは、測定する際に基準となる所定の脚長を指定脚長S1といい、指定脚長S1より大きな脚長を過大脚長S2という。
【0019】
脚長ゲージ1(1A、1B)は、本実施形態では2種類が採用されている。すなわち、脚長ゲージ1は、図1に示すように指定脚長S1が4mm、5mm、6mm、7mmの測定に使用可能な第1脚長ゲージ1Aと、図2に示すように指定脚長S1が8mm、9mm、10mm、11mmの測定に使用可能な第2脚長ゲージ1Bと、を有する。すなわち、本実施形態では、第1脚長ゲージ1Aと第2脚長ゲージ1Bの2つを容易しておくことで、指定脚長S1で4~11mmの範囲で1mm毎に測定し合否判定を行うことができる。
そして、本実施形態における過大脚長S2の限界値L2は、指定脚長S1+3mmとしている。
なお、脚長ゲージ1で測定可能な指定脚長S1は、上記の数値のものに限定されることはなく、任意に設定することができる。
【0020】
図1に示す第1脚長ゲージ1Aと図2に示す第2脚長ゲージ1Bは、共通する構成が多いことから、先ず共通する基本構成について第1脚長ゲージ1Aに基づいて説明する。
【0021】
脚長ゲージ1は、長方形板状のゲージ本体11の四隅の角部を切り抜いた形状をなしている。すなわち、脚長ゲージ1の四隅には、直角に配置される第1辺10Aと第2辺10Bとの角部を切り欠いた切欠部12が形成されている。なお、本実施形態では、ゲージ本体11において短辺方向に延びる辺を第1辺10Aとし、長辺方向に延びる辺を第2辺10Bとする。
【0022】
ゲージ本体11は、平板状のステンレス製で構成されている。例えば、ゲージ本体11は、厚さが2mm、縦寸法L3が35mm、横寸法L4が70mmである。4つの角部に形成される切欠部12(12A、12B、12C、12D)は、それぞれ指定脚長S1が異なるものに対応しているので、それぞれの切欠き形状が異なっている。
【0023】
ゲージ本体11の切欠部12は、隅肉溶接におけるビード30の脚長Sを測定する際に基準となる所定の脚長(以下、指定脚長S1)および過大脚長S2の限界値L2を確保して、これら指定脚長S1の長さ相当分(指定脚長値L1)と過大脚長S2の限界の長さ相当分(限界値L2)の範囲が切り欠かれて形成されている。
【0024】
ゲージ本体11の板面中央には、厚み方向に貫通する貫通穴16が設けられている。この貫通穴16には、不図示の線状の連結部材が挿通可能である。連結部材が複数の脚長ゲージ1の貫通穴16同士を挿通させて連結することで、複数の脚長ゲージ1を分離させることなく使用することができる。
【0025】
切欠部12は、互いに直交方向に延びる二つの測定辺12a、12bを有する。一方の第1測定辺12aは、第2辺10Bと平行に延びる。他方の第2測定辺12bは、第1辺10Aと平行に延びる。第1測定辺12aの長さは、指定脚長値L1と同じ長さである。第2測定辺12bの長さは、過大脚長S2の限界値L2と同じ長さである。
【0026】
切欠部12は、第1測定辺12aと第1辺10Aとの交点となる第1切欠頂部13Aと、第2測定辺12bと第2辺10Bとの交点となる第2切欠頂部13Bと、を有する。第1切欠頂部13Aは、第1辺10Aと第2辺10Bとが交差する仮想交点Kから指定脚長値の長さを切り欠いた位置である。第2切欠頂部13Bは、仮想交点Kから過大脚長S2の限界値L2を示す長さを切り欠いた位置である。
【0027】
ゲージ本体11における第1切欠頂部13A近傍には、指定脚長値L1を示す第1表示部14Aが表示されている。ゲージ本体11における第2切欠頂部13B近傍には、過大脚長S2の限界値L2を示す第2表示部14Bが表示されている。そして、第1表示部14Aは、第2表示部14Bと異なり、指定脚長S1を示すようにその数値を四角枠15(表示マーク)で囲んで表示されている。これら第1表示部14A及び第2表示部14Bは、ゲージ本体11の表裏両面に表示されている。なお、ゲージ本体11の表裏面のうち一方の面のみに第1表示部14A及び第2表示部14Bが表示されていてもよい。
【0028】
具体的な一例として、図1に示す第1脚長ゲージ1Aにおいて、例えば、第2切欠部12Bの第1測定辺12aの近傍には指定脚長値L1の5mmを表す四角枠15で囲まれた数字「5」が第1表示部14Aとして表示され、第2測定辺12bの近傍には指定脚長値L1である「5」に対応する過大脚長S2の限界値L2の8mmを表す数字「8」のみが第2表示部14Bとして表示されている。
また、第1脚長ゲージ1Aにおける第4切欠部12Dの場合には、第1測定辺12aの近傍には指定脚長値L1の7mmを表す四角枠15で囲まれた数字「7」が第1表示部14Aとして表示され、第2測定辺12bの近傍には指定脚長値L1である「7」に対応する過大脚長S2の限界値L2の10mmを表す数字「10」のみが第2表示部14Bとして表示されている。
【0029】
そして、例示していない第1切欠部12Aおよび第3切欠部12Cにおける第1表示部14Aと第2表示部14Bについても、上記第2切欠部12Bおよび第4切欠部12Dと同様の要領で表示されている。
【0030】
また、図2に示す第2脚長ゲージ1Bの切欠部12に表示される第1表示部14A及び第2表示部14Bについても、同様の要領で表示されている。
【0031】
次に、上述した脚長ゲージ1を使用してビード30の脚長Sを測定する作業手順と、測定による合否判断する手法について、図面に基づいて説明する。
図3は、測定した脚長Sが所定の設定範囲(指定脚長S1から過大脚長S2の限界までの範囲)となる場合(S1≦S≦S2)で合格判定となる一例を示している。図4は、測定した脚長Sが指定脚長S1より小さくなる過小脚長の場合(S<S1)で不合格判定となる一例を示している。図5は、測定した脚長Sが過大脚長S2の限界値L2より大きくなる脚長の場合(S2<S)で不合格判定となる一例を示している。
【0032】
脚長Sの測定方法としては、溶接対象となる第1部材2Aと第2部材2Bとの突き当て部分に隅肉溶接されたビード30における指定脚長S1に対応する脚長ゲージ1の切欠部12を選ぶ。選択する切欠部12は、ゲージ本体11に表示される指定脚長S1の第1表示部14A(四角枠15で表示)を目視により確認することで容易に選択できる。すなわち、例えば図3図5に示すように、指定脚長S1が6mmの場合には、四角枠15の内部に記載される「6」の数字が表示される切欠部(ここでは第2切欠部12B)を目視により確認して選択される。以下、指定脚長S1が6mmの場合の第2切欠部12Bを使用して合否判定するケースについて説明する。
【0033】
次に、選んだ第2切欠部12Bを当該ビード30に当てて、当該ビード30が所定の脚長Sの範囲であるか否かの合否判定を行う。具体的な一例として、第2切欠部12Bに表示される第1表示部14Aの数値「6」が読める向きに脚長ゲージ1を向けた姿勢において、第1切欠頂部13Aを第1部材2Aに当接させつつ、ゲージ本体11の第1辺10A及び第2辺10Bのそれぞれが第1部材2A及び第2部材2Bに当接させて位置決めする。このように脚長ゲージ1を溶接対象物2に配置することにより、脚長ゲージ1で対象となるビード30の脚長Sの合否判定を行う。
【0034】
次に、脚長ゲージ1によるビード30における脚長Sの合否判定について具体的に説明する。
先ず、図3に示すように、第1切欠頂部13A(あるいは第1測定辺12aの一部も含む)がビード30の上脚長端30aに当接し、第1辺10Aが第1部材2Aに対して傾斜して第1部材2Aとの間に第1隙間D1が確保され、かつ第2辺10Bが第2部材2Bに対して傾斜して第2部材2Bとの間に第2隙間D2が確保され、さらに第2切欠頂部13Bがビード30に接触していないときには、合格判定となる。すなわち、測定した脚長Sは、指定脚長S1から過大脚長S2の限界までの範囲(S1≦S≦S2)であり、適正な脚長Sで溶接されていると判定される。
【0035】
また、図4に示すように、第1辺10Aが第1部材2Aに対して全長にわたって隙間なく当接し、かつ第2辺10Bが第2部材2Bに対して全長にわたって隙間なく当接した状態となり、さらに第1切欠頂部13A及び第2切欠頂部13Bの両方共にビード30に対して接触していないときには、不合格判定となる。すなわち、測定した脚長Sは、指定脚長S1より小さい過小脚長(S<S1)となり、不適な脚長Sで溶接されていると判定される。
【0036】
さらに、図5に示すように、第1切欠頂部13A(あるいは第1測定辺12aの一部も含む)がビード30の上脚長端30aに当接し、第1辺10Aが第1部材2Aに対して傾斜して第1部材2Aとの間に第1隙間D1が確保され、かつ第2辺10Bが第2部材2Bに対して傾斜して第2部材2Bとの間に第2隙間D2が確保された状態であっても、第2切欠頂部13Bがビード30に対して接触しているときには、不合格判定となる。すなわち、測定した脚長Sは、過大脚長S2の限界値L2より大きい脚長(S2<S)となり、不適な脚長Sで溶接されていると判定される。
【0037】
また、図6に示すように、第2切欠頂部13B(あるいは第2測定辺12bの一部も含む)がビード30の横脚長端30bに当接し、第2辺10Bが第2部材2Bに対して全長にわたって隙間なく当接した状態となり、さらに第1部材2Aと第1辺10Aとの間に全長にわたって第1隙間D1が確保され、第1切欠頂部13Aがビード30に対して接触していない状態のときには、不合格判定となる。すなわち、測定した脚長Sは、過大脚長S2の限界値L2より大きい脚長(S2<S)となり、不適な脚長Sで溶接されていると判定される。
【0038】
次に、このように構成される溶接脚長限界ゲージを使用した合否判定方法の作用について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0039】
本実施形態による溶接脚長限界ゲージは、第1部材2Aに対して第2部材2Bを直交させて突き当てて溶接されたビード30の脚長Sの限界を確認するための溶接脚長限界ゲージであって、直角に配置される第1辺10Aと第2辺10Bとの角部を切り欠いた切欠部12が形成されている。切欠部12は、第1辺10Aと交差する第1切欠頂部13Aと、第2辺10Bと交差する第2切欠頂部13Bと、を有する。第1切欠頂部13Aは、第1辺10Aと第2辺10Bとが交差する仮想交点Kから指定脚長値L1の長さを切り欠いた位置である。第2切欠頂部13Bは、仮想交点Kから過大脚長S2の限界値L2を示す長さを切り欠いた位置である。
【0040】
本実施形態による溶接脚長限界ゲージを使用した合否判定方法によれば、第1切欠頂部をビード30の脚長端に一致させたときに、第2切欠頂部がビード30に接触となり、かつ第1辺10Aと第1部材2Aとの間および第2辺10Bと第2部材2Bとの間の両方に隙間D1、D2が形成されたときにビード30の脚長Sが適正と判断することができる。
一方で、第1辺10Aが第1部材2Aに対して全長にわたって隙間なく当接し、かつ第2辺が第2部材2Bに対して全長にわたって隙間なく当接した状態となり、さらに第1切欠頂部13A及び第2切欠頂部13Bの両方共にビード30に対して接触していないときには、指定脚長S1より小さい過小脚長となって不合格判定となる。
また、第1切欠頂部13Aがビード30に当接し、第1辺10Aが第1部材2Aに対して傾斜して第1部材2Aとの間に第1隙間D1が確保され、かつ第2辺10Bが第2部材2Bに対して傾斜して第2部材2Bとの間に第2隙間D2が確保された状態であっても、第2切欠頂部13Bがビード30に対して接触しているときには、過大脚長S2の限界値L2より大きい脚長となって不合格判定となる。
このように、本実施形態では、隅肉溶接脚長の合否判定を行うことができる。
【0041】
また、本実施形態では、切欠部12は、互いに直交方向に延びる二つの測定辺を有する。二つの測定辺12a、12bのうち一方の第2辺10Bと平行に延びる第1測定辺12aの長さは、指定脚長値L1と同じ長さであり、他方の第1辺10Aと平行に延びる第2測定辺12bの長さは、過大脚長S2の限界値L2と同じ長さである。これにより、上記判定を効率よく行うことができる。
【0042】
また、本実施形態では、矩形板状のゲージ本体11を有する。ゲージ本体11の四隅の角部のうち少なくとも2つの角部に切欠部12が形成されている。複数の切欠部12は、それぞれ指定脚長S1が異なっている。これにより、上記判定を効率よく行うことができる。
【0043】
また、本実施形態では、第1切欠頂部13Aには、指定脚長値L1を示す第1表示部14Aが表示されている。第2切欠頂部13Bには、過大脚長S2の限界値L2を示す第2表示部14Bが表示されている。
そのため、使用者が第1表示部14A及び第2表示部14Bを目視により確認することで、使用する切欠部12を間違えることなく選択でき、より効率よく測定作業を行うことができる。
【0044】
また、本実施形態では、第1表示部14Aと第2表示部14Bとのいずれか一方は、他方と異なる四角枠15が表示されている。
そのため、使用者が第1表示部14Aと第2表示部14Bを区別することができ、より効率よく測定作業を行うことができる。
【0045】
上述のように構成された本実施形態による溶接脚長限界ゲージを使用した合否判定方法では、隅肉溶接の過小脚長と過大脚長とを視覚のみでなく感覚的に、容易かつより確実に判定することができ、過大脚長による部材コストや溶接時間の増大を抑制できる。
【0046】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、その他様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形例には、例えば当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、均等の範囲のものなどが含まれる。
【0047】
例えば、上記実施形態では、ゲージ本体の四隅の角部の全てに切欠部12が設けられた構成としているが、これに限定されることはなく、ゲージ本体11の四隅の角部のうち1つの角部であってもよいし、2つの角部に切欠部12が形成されていてもよい。
【0048】
本実施形態では、第1切欠頂部13Aに指定脚長値L1を示す第1表示部14Aが表示され、第2切欠頂部13Bに過大脚長S2の限界値L2を示す第2表示部14Bが表示されているが、これら第1表示部14Aおよび第2表示部14Bを省略することも可能である。また、本実施形態では、第1表示部14Aおよび第2表示部14Bが数値で表示しているが、記号や符号等であってもかまわない。さらに表示マークについても、本実施形態のように四角枠15であることに制限されることはなく、他のマークを採用することも可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 脚長ゲージ
2A 第1部材
2B 第2部材
1A 第1脚長ゲージ
1B 第2脚長ゲージ
10A 第1辺
10B 第2辺
11 ゲージ本体
12 切欠部
12a 第1測定辺
12b 第2測定辺
13A 第1切欠頂部
13B 第2切欠頂部
14A 第1表示部
14B 第2表示部
15 四角枠(表示マーク)
30 ビード(隅肉溶接部)
D1 第1隙間
D2 第2隙間
K 仮想交点
L1 指定脚長値
L2 過大脚長の限界値
S 脚長
S1 指定脚長
S2 過大脚長
【要約】
【課題】隅肉溶接の過小脚長と過大脚長とを視覚のみでなく感覚的に、容易かつより確実に判定することができ、過大脚長による部材コストや溶接時間の増大を抑制できる。
【解決手段】第1部材2Aに対して第2部材2Bを直交させて突き当てて溶接されたビード30の脚長の限界を確認するための溶接脚長限界ゲージであって、直角に配置される第1辺10Aと第2辺10Bとの角部を切り欠いた切欠部12が形成され、切欠部12は、第1辺10Aと交差する第1切欠頂部13Aと、第2辺10Bと交差する第2切欠頂部13Bと、を有し、第1切欠頂部13Aは、第1辺10Aと第2辺10Bとが交差する仮想交点から指定脚長値の長さを切り欠いた位置であり、第2切欠頂部13Bは、仮想交点から過大脚長の限界値を示す長さを切り欠いた位置となるように構成されている。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5
図6