(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】ノイズ判定器
(51)【国際特許分類】
A61B 5/308 20210101AFI20240522BHJP
A61B 5/301 20210101ALI20240522BHJP
A61B 5/287 20210101ALI20240522BHJP
【FI】
A61B5/308
A61B5/301
A61B5/287
(21)【出願番号】P 2023509927
(86)(22)【出願日】2021-03-29
(86)【国際出願番号】 JP2021013309
(87)【国際公開番号】W WO2022208614
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】594170727
【氏名又は名称】日本ライフライン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】八田 陽一
(72)【発明者】
【氏名】宮本 久生
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-076117(JP,A)
【文献】特表2014-507213(JP,A)
【文献】米国特許第5983127(US,A)
【文献】特開平04-200533(JP,A)
【文献】特開2000-157504(JP,A)
【文献】特開平04-190163(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/24 - 5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のノイズ
検出を行うノイズ
検出器であって、
前記ノイズ
検出器とは異なる他の機器に電気的に接続された交流電源ライン
の放射電界ノイズを測定する測定部
を有し、
前記測定部は、前記放射電界ノイズを
検出回路上から測定するようになっており、
前記他の機器のアース端子と電気的に接続されているアースラインと、前記検出回路におけるグランドとが、互いに非接続となっている
ノイズ
検出器。
【請求項2】
前記測定部が、前記アースラインから離間配置されている
請求項1に記載のノイズ
検出器。
【請求項3】
前記測定部における前記放射電界ノイズの測定面が、前記他の機器の筐体面に対して略垂直となるように、配置されている
請求項1または請求項2に記載のノイズ
検出器。
【請求項4】
前記測定部における前記放射電界ノイズの測定面が、前記検出回路を搭載する回路基板の基板面に対して略平行となるように、配置されている
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のノイズ
検出器。
【請求項5】
前記他の機器が、商用の交流電源と電気的に接続された、アイソレーショントランスである
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のノイズ
検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心電位波形に混入するノイズの測定や所定の判定等を行う、ノイズ判定器に関する。
【背景技術】
【0002】
電極カテーテルや電源装置(高周波電源装置)、心電図表示装置などを備えたカテーテルシステムを使用する際に、ノイズ(例えば、交流電源ライン上を伝播する放射電界ノイズなど)が、心電位波形に混入してしまうケースがある(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】「カテーテルアブレーション関連秋季大会2018」ABSTRACT、MP-CP16(P.219),MP-CP26(P.221)
【発明の概要】
【0004】
そこで、このようなカテーテルシステムなどを使用する環境下での、ノイズの状況の測定や所定の判定等を行う機器(ノイズ判定器)を用いることが考えられる。また、このようなノイズ判定器では、ノイズ判定の際の判定精度を向上させることが求められると、考えられる。したがって、ノイズ判定の際の判定精度を向上させることが可能な、ノイズ判定器を提供することが望ましい。
【0005】
本発明の一実施の形態に係るノイズ判定器は、このノイズ判定機器とは異なる他の機器に電気的に接続された交流電源ライン上を伝播して心電位波形に混入する、放射電界ノイズを測定する測定部と、この測定部によって測定された放射電界ノイズに基づいて、所定の処理を行う検出回路と、を備えたものである。測定部は、放射電界ノイズを検出回路上から測定するようになっている。検出回路は、測定部によって測定された放射電界ノイズのノイズレベルが、閾値以上であるのか否かについてのノイズ判定を行う判定部と、この判定部におけるノイズ判定の結果を外部に通知する通知部と、上記他の機器からの交流電源ラインを介した電力供給に基づいて、判定部および通知部に対してそれぞれ、動作用の電力を供給する電源回路と、を有している。上記他の機器のアース端子と電気的に接続されているアースラインと、検出回路におけるグランドとが、互いに非接続となっている。
【0006】
本発明の一実施の形態に係るノイズ判定器では、交流電源ライン上を伝播して心電位波形に混入する放射電界ノイズが、上記測定部において上記検出回路上から測定される。そして、その測定された放射電界ノイズのノイズレベルが、閾値以上であるのか否かについてのノイズ判定が行われ、そのノイズ判定の結果が外部に通知される。これにより、例えば、測定機器での放射電界ノイズの測定結果を目視で読み取る必要などがなくなり、閾値(基準値)以上のノイズレベルを有する放射電界ノイズの発生が、瞬時に把握できるようになる。また、上記他の機器からの交流電源ラインを介した電力供給に基づいて、判定部および通知部に対してそれぞれ動作用の電力が供給されるため、上記他の機器からの電源供給に基づいて動作を行うとともに、上記検出回路上の放射電界ノイズの測定ができるようになる。これにより、例えば、ノイズ測定の度ごとに、そのノイズ判定器を手に持って測定する必要がなくなる。ここで、上記他の機器のアース端子と電気的に接続されているアースラインと、上記検出回路におけるグランドとが、互いに非接続となっていることにより、以下のようになる。すなわち、上記検出回路上の放射電界ノイズを測定する際に、例えば、上記他の機器におけるアース端子が非接地状態になった場合であっても、上記検出回路のグランドへの同相ノイズ(コモンモードノイズ)の影響が、抑えられる。
【0007】
本発明の一実施の形態に係るノイズ判定器では、上記測定部が、上記アースラインから離間配置されているようにしてもよい。このようにした場合、例えば、上記他の機器におけるアース端子が非接地状態になった場合であっても、上記検出回路上の放射電界ノイズを測定する際に、以下のようになる。すなわち、上記アースラインと上記測定部との間の浮遊容量が小さくなることから、そのような浮遊容量を介した同相ノイズ成分の混入が、抑えられる。その結果、ノイズ判定の際の判定精度が、更に向上することになる。
【0008】
ここで、上記測定部における放射電界ノイズの測定面が、上記他の機器の筐体面に対して、略垂直となるように配置されていてもよい。このようにした場合、例えば、上記他の機器におけるアース端子が非接地状態になった場合であっても、上記検出回路上の放射電界ノイズを測定する際に、以下のようになる。すなわち、フレームグランドとしての上記他の機器の筐体における筐体面と、上記測定面との間の浮遊容量が、小さくなることから、そのような浮遊容量を介した同相ノイズ成分の混入が、抑えられる。その結果、ノイズ判定の際の判定精度が、更に向上することになる。
【0009】
また、上記測定部における放射電界ノイズの測定面が、上記検出回路を搭載する回路基板の基板面に対して、略平行となるように配置されていてもよい。このようにした場合、上記回路基板における基板面と上記測定面との間の浮遊容量が、大きくなることから、上記検出回路上の放射電界ノイズを測定する際に、放射電界ノイズの測定感度が高くなる。その結果、ノイズ判定の際の判定精度が、更に向上することになる。
【0010】
なお、上記他の機器としては、例えば、商用の交流電源と電気的に接続されたアイソレーショントランスなどが、挙げられる。
【0011】
本発明の一実施の形態に係るノイズ判定器によれば、上記他の機器のアース端子と電気的に接続されているアースラインと、上記検出回路におけるグランドとが、互いに非接続となっているようにしたので、以下のようになる。すなわち、上記検出回路上の放射電界ノイズを測定する際に、例えば、上記他の機器におけるアース端子が非接地状態になった場合であっても、上記検出回路のグランドへの同相ノイズの影響を、抑えることができる。よって、ノイズ判定の際の判定精度を、向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るノイズ判定器が適用されるカテーテルシステムの概略構成例を模式的に表すブロック図である。
【
図2】
図1に示したノイズ判定器等の詳細構成例を表すブロック図である。
【
図3】
図2に示したノイズ判定器等における各部材の配置構成例を表すブロック図である。
【
図4】放射電界ノイズの波形例を模式的に表すタイミング図である。
【
図5】心電位信号および放射電界ノイズの周波数特性例を表す模式図である。
【
図6】
図1に示したノイズ判定器の動作例を表す流れ図である。
【
図7】ノイズ判定の際における同相ノイズについて説明するためのブロック図である。
【
図8】
図7に示した交流電源ライン上の各ラインにおけるノイズ波形例を表す模式図である。
【
図9】ノイズ判定の際における同相ノイズについて説明するための他のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態(アイソレーショントランスから電力供給を受けるノイズ判定器の例)
2.変形例
【0014】
<1.実施の形態>
[概略構成]
図1は、本発明の一実施の形態に係るノイズ判定器(後述するノイズ判定器4)が適用されるカテーテルシステムの概略構成例を、模式的にブロック図で表したものである。このカテーテルシステムは、
図1に示した所定のカテーテル室内に設置されており、本実施の形態のノイズ判定器4は、このようなカテーテル室内の環境下でのノイズ(後述する放射電界ノイズNre)について、後述する測定や所定の判定等を行うようになっている。
【0015】
なお、
図1に示したカテーテル室における壁Wには、この例では、4つの壁コンセント(商用の交流電源)20a,20b,20c,20dがそれぞれ、互いに離れた位置にて設置されている。
【0016】
ここで、この
図1に示したカテーテルシステムは、電極カテーテル1と、3つのアイソレーショントランス2a,2b,2cと、心電図表示装置3と、ノイズ判定器4と、電源タップ50と、電源装置51(高周波電源装置)と、ポンプ52と、食道温度計53と、3Dマッピング装置6と、を含んで構成されている。
【0017】
電極カテーテル1は、
図1に示したように、所定のカテーテル台10上において使用されるようになっている。この電極カテーテル1は、例えば、患者の治療部位に対する焼灼(アブレーション)を行うためのアブレーションカテーテルや、患者の治療部位付近での所定の測定(例えば、後述する心電位信号Scの測定など)を行うための測定用カテーテルとして、機能するようになっている。また、この電極カテーテル1は、
図1に示したように、後述する電源装置51から供給される交流電力(高周波電力)に基づいて焼灼を行ったり、この電源装置51との間で各種情報(例えば、所定の測定データや制御信号など)のやり取りを行うようになっている(配線経路P31参照)。
【0018】
アイソレーショントランス2aは、
図1に示したように、上記した壁コンセント20aと、後述する心電図表示装置3およびノイズ判定器4との間を接続する、交流電源ライン上に配置されている。同様に、アイソレーショントランス2bは、壁コンセント20bと後述する電源タップ50との間を接続する交流電源ライン上に配置され、アイソレーショントランス2cは、壁コンセント20cと後述する3Dマッピング装置との間を接続する交流電源ライン上に配置されている。このように、アイソレーショントランス2a,2b,2cはそれぞれ、商用の交流電源としての壁コンセント20a,20b,20cに対して、個別に電気的接続されるようになっている。
【0019】
これらのアイソレーショントランス2a,2b,2cはそれぞれ、このような交流電源ライン上を伝播するノイズ(後述する放射電界ノイズNre)を取り除く機能を有している。具体的には、
図1に示したように、アイソレーショントランス2aは、壁コンセント20a側(1次側)の交流電源ラインP1a上での上記ノイズを取り除き、交流電源ラインP2a1,P2a2側(2次側)に交流電力を出力する。同様に、アイソレーショントランス2bは、壁コンセント20b側(1次側)の交流電源ラインP1b上での上記ノイズを取り除き、交流電源ラインP2b側(2次側)に交流電力を出力する。また、アイソレーショントランス2cは、壁コンセント20c側(1次側)の交流電源ラインP1c上での上記ノイズを取り除き、交流電源ラインP2c側(2次側)に交流電力を出力する。このように、アイソレーショントランス2a,2b,2cはそれぞれ、交流電源ラインP2a1,P2a2,P2b,P2cに対して、個別に電気的接続されるようになっている。
【0020】
なお、これらのアイソレーショントランス2a,2b,2cはいずれも、壁W側のできるだけ近い位置に配置されることで(
図1参照)、上記ノイズを含む交流電源ラインP1a,P1b,P1cの長さが、最小限に抑えられるようになっている。つまり、
図1に示したように、カテーテル室内で引き回される交流電源ラインとしては、基本的には、上記ノイズが取り除かれた後の交流電源ラインP2a1,P2a2,P2b,P2cが、用いられるようになっている。
【0021】
心電図表示装置3は、患者の心電位信号Scに基づいて、その患者の心電位波形(心電図)を表示する装置である。この心電図表示装置3には、上記した交流電源ラインP2a1から交流電力が供給されると共に、電極カテーテル1から後述する電源装置51および配線経路P32を介して、上記した心電位信号Scが入力されるようになっている(
図1参照)。
【0022】
ノイズ判定器4には、
図1に示した例では、アイソレーショントランス2aから前述した交流電源ラインP2a2を介して、交流電力が供給されるようになっている。また、このアイソレーショントランス2aの2次側では、2つの交流電源ラインP2a1,P2a2が、互いに並列配置されている。このノイズ判定器4は、このようなアイソレーショントランス2aの2次側(ノイズ判定器4内の後述する検出回路40上)を伝播する、前述した放射電界ノイズNre(後述するノイズ信号Sn)の測定(検出)を行うと共に、後述する所定のノイズ判定等を行う機器である。これは、詳細は後述するが(
図4,
図5参照)、アイソレーショントランス2aの2次側においても、そのような放射電界ノイズNreが残存し、心電図表示装置3における心電位波形(心電位信号Sc)に混入してしまうおそれがあるためである。なお、このようなノイズ判定器4の詳細構成例については、後述する(
図2,
図3参照)。
【0023】
電源タップ50は、前述した交流電源ラインP2bから供給される交流電力を、複数の経路に分配するための機器である。具体的には、
図1に示した例では、この電源タップ50から、電源装置51、ポンプ52および食道温度計53にそれぞれ、そのような交流電力が並列的に分配されている。
【0024】
電源装置51は、所定の交流電力(高周波電力)を出力したり、各種情報(例えば、所定のデータや制御信号など)の入出力を行ったりする装置である。具体的には、
図1に示した例では、この電源装置51は、電極カテーテル1との間で前述した各種情報(例えば、所定の測定データや制御信号など)のやり取りを行う(配線経路P31参照)。また、電源装置51には、電極カテーテル1において測定された心電位信号Scが、この電極カテーテル1から入力されるようになっている(配線経路P31参照)。なお、このようにして電源装置51に入力された心電位信号Scは、
図1に示したように、心電図表示装置3へと出力されるようになっている(配線経路P32参照)。
【0025】
ポンプ52は、電極カテーテル1を用いて焼灼を行う際の灌注用の液体(例えば生理食塩水など)を、この電極カテーテル1に対して供給するための装置(液体供給装置)である。
【0026】
食道温度計53は、電極カテーテル1を用いて焼灼を行う際の、患者の食道付近の温度を測定する温度計である。
【0027】
3Dマッピング装置6には、前述した交流電源ラインP2cから交流電力が供給されるようになっている。この3Dマッピング装置6は、例えば、患者において測定された心腔内電位等を、3D(3次元)表示する装置である。
【0028】
[ノイズ判定器4の詳細構成]
ここで、
図2,
図3を参照して、上記したノイズ判定器4の詳細構成例について説明する。
図2は、このノイズ判定器4等の詳細構成例を、ブロック図で表したものであり、
図3は、このノイズ判定器4等における各部材の配置構成例を、ブロック図で表したものである。ノイズ判定器4は、
図2,
図3に示したように、後述する放射電界ノイズNre(ノイズ信号Sn)を測定する電界センサ42と、この電界センサ42によって測定された放射電界ノイズNreに基づいて、後述する所定の処理を行う検出回路40と、を備えている。また、この検出回路40は、
図2に示したように、電源回路(電源部)41と、判定部43と、通知部44とを備えている。
【0029】
また、ノイズ判定器4は、
図2,
図3に示したように、このノイズ判定器4とは異なる他の機器(この例では、アイソレーショントランス2a)からの交流電源ラインP2a2を介した電力供給に基づいて、以下説明する各種の動作を行う機器となっている。言い換えると、このノイズ判定器4は、他の機器に接続可能な、コンセント型の機器となっている。具体的には、この例では
図2に示したように、他の機器としてのアイソレーショントランス2aから、電源プラグ72(交流電源入力部)と、交流電源ラインP2a2とを介して、ノイズ判定器4に対して電力供給がなされるようになっている。
【0030】
ここで、
図2に示したように、このような電源プラグ72(アイソレーショントランス2aの2次側)は、いわゆる3端子型のプラグとなっている。つまり、この電源プラグ72には、ライブ(Live:L)端子72Lと、ニュートラル(Neutral:N)端子72Nと、アース(Earth:E)端子72Eとが、それぞれ設けられている。同様に、アイソレーショントランス2aの1次側に設けられた電源プラグ71(前述した交流電源ラインP1aと、商用の交流電源としての壁コンセント20aとの間に配置)も、いわゆる3端子型のプラグとなっている。つまり、この電源プラグ71にも、ライブ端子71Lと、ニュートラル端子71Nと、アース端子71Eとが、それぞれ設けられている。
【0031】
また、この電源プラグ71におけるアース端子71Eは、
図2中の符号P7で示したように、一般には、アースEに電気的接続されており、接地状態となっている。したがって、
図2に示したように、この電源プラグ71のアース端子71Eから、交流電源ラインP1a、アイソレーショントランス2aの筐体20(フレームグランドFG20)、および、電源プラグ72のアース端子72Eまでを経由して、アースラインLEが形成されることになる。つまり、このようなアースラインLEは、アース端子71E,72Eと電気的に接続されていると共に、交流電源ラインP1a上に含まれた接続ラインとなっている。一方、
図2に示したように、交流電源ラインP2a2上には、このようなアースラインLEは含まれないようになっている。
【0032】
電源回路41は、
図2に示したように、上記した電源プラグ72および交流電源ラインP2a2を介して、アイソレーショントランス2aから電力供給を受ける回路である。また、この電源回路41は、このようなアイソレーショントランス2aからの電力供給に基づき、後述する判定部43および通知部44に対してそれぞれ、これらの動作用の電力を供給するようになっている(
図2参照)。
【0033】
電界センサ42は、上記した検出回路40上を伝播する放射電界ノイズNre(ノイズ信号Sn)を、この検出回路40上から測定(検出)するセンサである(
図2中の符号P40参照)。具体的には、検出回路40上には、交流電源ラインP2a2上の放射電界ノイズNreが伝播することから、電界センサ42は、この検出回路40上を伝播する放射電界ノイズNreを、検出回路40上から測定するようになっている。なお、このようにして測定された放射電界ノイズNreは、交流電源ラインP2a1,P2a2上を伝播する放射電界ノイズNreと、同等のものとなっている。また、このような電界センサ42は、
図2中の符号P42で示したように、詳細は後述するが、上記したアースラインLEからは離間するようにして、ノイズ判定器4内に配置されている。なお、このような電界センサ42とアースラインLEとの間の距離(離間距離)は、例えば40mm以上であり、一例としては80mmである。
【0034】
なお、このような電界センサ42は、本発明における「測定部」の一具体例に対応している。ただし、電界センサ42以外の他のセンサ等を用いて、本発明における「測定部」を構成するようにしてもよい。
【0035】
判定部43は、電界センサ42によって測定された放射電界ノイズNreについて、後述する所定のノイズ判定を行うものである。具体的には、判定部43は、この放射電界ノイズNre(ノイズ信号Sn)におけるノイズレベルLnが、後述する所定の閾値Lth以上(Ln≧Lth)であるのか否か等について、判定(ノイズ判定)を行うようになっている。また、判定部43は、このようなノイズ判定の結果を、判定結果Rjとして通知部44へと出力するようになっている(
図2参照)。なお、このような判定部43における判定手法の詳細については、後述する(
図6参照)。このような判定部43は、例えば、そのような各種のノイズ判定を行う判定回路の他、所定の増幅回路(アンプ)や、所定のフィルタ回路(後述するバンドパスフィルタなど)等を、含んで構成されている。
【0036】
通知部44は、判定部43におけるノイズ判定の結果(上記した判定結果Rj)を、ノイズ判定器4の外部へと(ユーザへ向けて)通知するものである。具体的には、詳細は後述するが、通知部44は、例えば、所定の色などを利用した表示(例えば、LED(Light Emitting Diode)等による点灯表示)や、所定の音声出力などを用いて、そのような判定結果Rjに基づく通知を行うようになっている。
【0037】
ここで、本実施の形態のノイズ判定器4では、
図2中の符号P41(「×(バツ)」印参照)で示したように、前述したアースラインLEと、検出回路40におけるグランドGND40とが、互いに非接続となっている。つまり、これらのアースラインLEとグランドGND40とは、電気的に接続されないようになっている。
【0038】
また、このノイズ判定器4では、
図3に示したように、電界センサ42における放射電界ノイズNreの測定面Smが、アイソレーショントランス2aの筐体20における筐体面S20に対して、略垂直(例えば垂直)となるように、配置されている(Sm⊥S20)。更に、このノイズ判定器4では、
図3に示したように、このような電界センサ42の測定面Smが、検出回路40を搭載する回路基板45の基板面S40に対して、略平行(例えば平行)となるように、配置されている(Sm//S40)。なお、この略平行(平行)には、これらの測定面Smと基板面S40とが同一平面上に配置されている場合も、含まれている。
【0039】
[動作および作用・効果]
(A.放射電界ノイズについて)
最初に、心電位波形(心電位信号Sc)に混入する、前述した放射電界ノイズNreについて、詳細に説明する。
【0040】
図4は、このような放射電界ノイズNre(ノイズ信号Sn)の波形例を、模式的にタイミング図で表したものである。また、
図5は、前述した心電位信号Scおよび放射電界ノイズNreの周波数特性例をそれぞれ、模式的に表したものである。なお、
図4において、横軸は時間tを示し、縦軸は、信号の振幅Am(放射電界ノイズNreのノイズレベルLn)を示している。また、
図5において、横軸は周波数fを示し、縦軸は、信号の振幅Amを示している。
【0041】
まず、例えば
図4に示したように、放射電界ノイズNreのノイズ信号Snは、周期Δt(=約20ms程度)を有する波形となっており、交流電源(壁コンセント20a~20d)の帯域(50Hz,60Hz程度)の周波数fnを有している。このような放射電界ノイズNreは、いわゆる「ハムノイズ」と呼ばれるノイズであり、
図1に示した例では、カテーテル室内での環境起因のノイズのほとんどが、このような交流電源由来の放射電界ノイズNreとなっている。したがって、この放射電界ノイズNreを抑えるだけでも、カテーテル室内での環境起因のノイズの出現率は、大幅に低下することになる。
【0042】
また、このような放射電界ノイズNreは、一般に、配線ケーブル等を構成する導線が拾うケースが多い。したがって、例えば、そのような配線ケーブル等の導線は、放射電界ノイズNreのノイズ源から離して配置することが望ましいと言える。また、
図1の例では、破線で示した配線経路P31,P32(電極カテーテル1から電源装置51を介して、心電図表示装置3まで至る配線経路)が、特に、放射電界ノイズNreの影響を受け易い部分となっている。したがって、特にこれらの配線経路P31,P32の周辺箇所について、ノイズ判定器4を用いて、後述する放射電界ノイズNreの測定等を行うのが望ましいと言える。
【0043】
また、例えば
図5に示したように、心電位信号Scおよび放射電界ノイズNreの周波数特性は、以下のようになっている。まず、心電位信号Scにおける低域側の周波数帯域ΔfLでは、例えばHPF(High Pass Filter)を用いて、その振幅Amが低減されている。同様に、心電位信号Scにおける高域側の周波数帯域ΔfHでは、例えばLPF(Low Pass Filter)を用いて、その振幅Amが低減されている。
【0044】
一方、心電位信号Scにおける中域側の周波数帯域ΔfMについては、例えばノッチフィルタを用いることで、その振幅Amを低減させることが考えられる。しかしながら、この周波数帯域ΔfM内では、例えば
図5に示したように、所定の周波数範囲Δfn内に、放射電界ノイズNreの周波数(周波数fn)が含まれるケースがある。つまり、この周波数帯域ΔfMにおいては、心電位波形を構成する心電位信号Scにおける周波数と、放射電界ノイズNreの周波数fnとが、重なってしまうことから、そのようなフィルタによって振幅Amを低減させるのは、望ましくないと言える。なお、上記した周波数範囲Δfnとしては、例えば、50Hz~60Hz程度の範囲が挙げられ、心電位信号Scの周波数帯域としては、例えば、30Hz~500Hz程度の帯域が挙げられる。
【0045】
ところで、このような放射電界ノイズNreは、前述したアイソレーショントランス2a,2b,2cの2次側(交流電源ラインP2a1,P2a2,P2b,P2c)においては、基本的には取り除かれているはずである。しかしながら、例えば、アイソレーショントランス2aの2次側のように、複数の機器が並列して接続されていると、ある機器が接続されることで、低ノイズ状態のはずの交流電源ラインが、一斉に高ノイズ状態になってしまうケースがある。また、これらのアイソレーショントランス2a,2b,2cを用いたとしても、放射電界ノイズNreを完全に取り除くことは難しく、実際には、ある程度の放射電界ノイズNreが取り除かれずに、2次側に残存してしまうケースがある。そして、これらの要因によって、心電位波形(心電位信号Sc)に放射電界ノイズNre(ノイズ信号Sn)が混入してしまうと、心電図表示装置3における心電位波形(心電図)の読み取りが、困難となってしまうおそれがある。
【0046】
そこで、本実施の形態では、
図1~
図3に示したノイズ判定器4を用いて、このような放射電界ノイズNreの測定や、所定のノイズ判定等を行うようにしている。以下、このノイズ判定器4における動作例について、詳細に説明する。
【0047】
(B.ノイズ判定器4の動作)
図6は、このようなノイズ判定器4の動作例(ノイズ判定等の動作例)を、流れ図で表したものである。
【0048】
この
図6に示した動作例では、まず、電界センサ42が、交流電源ラインP2a1,P2a2上を伝播する放射電界ノイズNre(ノイズ信号Sn)を測定(検出)する(ステップS11)。具体的には、例えば
図2に示したように、本実施の形態では前述したように、電界センサ42は、検出回路40上を伝播する放射電界ノイズNreを、測定する。
【0049】
次いで、判定部43が、このようにして測定された放射電界ノイズNre(ノイズ信号Sn)の周波数fnが、前述した所定の周波数範囲Δfn内(
図4参照)であるのか否かについて、判定を行う(ステップS12)。
【0050】
ここで、放射電界ノイズNreの周波数fnが、上記した周波数範囲Δfn内ではないと判定された場合には(ステップS12:N)、以下のようになる。すなわち、この場合には、そのような周波数fnの放射電界ノイズNreが心電位波形(心電位信号Sc)に混入したとしても、心電位波形への影響が小さい(もしくは、ほとんど無い)と言える(
図5参照)。したがって、次に通知部44は、判定部43における判定結果Rj(低ノイズ状態であるとの判定結果)を、ノイズ判定器4の外部へと通知する(ステップS13)。具体的には、この場合には通知部44は、例えば、緑色による点灯表示を行うことで、そのような低ノイズ状態であるとの判定結果を通知する。
【0051】
なお、このようなステップS13の後は、上記したステップS11へと再び戻ることになる。
【0052】
一方、放射電界ノイズNreの周波数fnが、上記した周波数範囲Δfn内であると判定された場合には(ステップS12:Y)、以下のようになる。すなわち、この場合には、そのような周波数fnの放射電界ノイズNreが心電位波形(心電位信号Sc)に混入した場合、そのノイズレベルLnによっては、心電位波形への影響が大きくなってしまうと言える(
図5参照)。したがって、次に判定部43は、その放射電界ノイズNre(ノイズ信号Sn)のノイズレベルLnが、所定の閾値Lth以上(Ln≧Lth)であるのか否かについて、判定を行う(ステップS14)。なお、この閾値Lthとしては、例えば、50~150[V/m]の範囲内の値(一例として、100[V/m])が挙げられる。
(ステップS14)
【0053】
ここで、ノイズレベルLnが閾値Lth未満(Ln<Lth)であると判定された場合には(ステップS14:N)、以下のようになる。すなわち、この場合には、そのようなノイズレベルLnの放射電界ノイズNreが心電位波形(心電位信号Sc)に混入したとしても、心電位波形への影響が小さい(もしくは、ほとんど無い)と言える。したがって、この場合にも、上記したステップS13へと進むことになる。つまり、この場合にも通知部44は、例えば上記した通知手法を用いて、低ノイズ状態であるとの判定結果を、外部へと通知する。
【0054】
なお、この場合においても、このステップS13の後は、上記したステップS11へと再び戻ることになる。
【0055】
一方、ノイズレベルLnが閾値Lth以上(Ln≧Lth)であると判定された場合には(ステップS14:Y)、以下のようになる。すなわち、この場合には、そのようなノイズレベルLnの放射電界ノイズNreが心電位波形(心電位信号Sc)に混入した場合、心電位波形への影響が大きくなってしまうと言える。したがって、次に通知部44は、判定部43における判定結果Rj(高ノイズ状態であるとの判定結果)を、ノイズ判定器4の外部へと通知する(ステップS15)。具体的には、この場合には通知部44は、例えば、赤色による点灯表示を行ったり、所定のメッセージ音を出力したり、このような赤色の点灯表示とメッセージ音の出力とを併用したりすることで、そのような高ノイズ状態であるとの判定結果を通知する。
【0056】
なお、このようなステップS15の後は、上記したステップS11へと再び戻ることになる。
【0057】
【0058】
(C.同相ノイズの影響について)
続いて、
図7~
図9を参照して、ノイズ判定器4での上記したようなノイズ判定の際における、同相ノイズ(コモンモードノイズ)の影響について、詳細に説明する。
【0059】
ここで、
図7,
図9はそれぞれ、そのようなノイズ判定の際における同相ノイズについて説明するための、ブロック図である。具体的には、
図7は、前述した電源プラグ71におけるアース端子71Eが、接地状態に設定されている(アースEに対して電気的に接続されている)場合について、示している。一方、
図9は、このアース端子71Eが、非接地状態に設定されている(アースEに対して電気的に接続されていない:
図9中の「×」印参照)場合について、示している。また、
図8は、
図7に示した交流電源ラインP2a2上の各ラインにおけるノイズ波形例を、模式的に表したものである。なお、このような各ラインとしては、ライブ端子71L,72Lと電気的に接続されたライブラインLLと、ニュートラル端子71N,72Nと電気的に接続されたニュートラルラインLNと、前述したアースラインLEとが、挙げられる。
【0060】
まず、例えば
図7に示したように、アース端子71Eが接地状態となっている場合には、交流電源ラインP2a2上を伝播する放射電界ノイズNreについては、上記した各ラインのうち、ライブラインLLおよびニュートラルラインLNにおけるノイズ成分が、主要成分となる(
図8参照)。これらのノイズ成分はそれぞれ、検出回路40上へと伝播し、この検出回路40上の放射電界ノイズNreが、電界センサ42との間の浮遊容量(コンデンサ成分)を介して、測定される。また、検出回路40における放射電界ノイズNreのノイズレベルは、この検出回路40におけるグランドGND40から見たノイズレベルとなる。これらのことから、
図7に示したように、アース端子71Eが接地状態となっている場合には、ライブラインLLおよびニュートラルラインLNから放射されるノイズ成分が、放射電界ノイズNreとして正常に測定されることになる。
【0061】
一方、例えば
図9に示したように、アース端子71Eが非接地状態となっている場合には、以下のようになる。すなわち、この場合、交流電源ラインP2a2上を伝播する放射電界ノイズNreについては、上記した各ラインのうち、ライブラインLLおよびニュートラルラインLNにおけるノイズ成分よりも、アースラインLEからのノイズ成分が、主要成分となる。これは、アース端子71Eが非接地状態となっている場合には、アースラインLEが完全に浮いた状態になり、電気的に不安定な状態になることから、強大なノイズを放射するためである。
【0062】
また、このようにしてアース端子71Eが非接地状態となっている場合には、アイソレーショントランス2aの筐体20(フレームグランドFG20)からも、非常に高レベルのノイズが放射されることなる。これは、このフレームグランドFG20とアースラインLEとが、電気的に接続された状態であるためである。このようにして、アース端子71Eが非接地状態となっている場合、アイソレーショントランス2aの筐体20およびアースラインLEはそれぞれ、強大なノイズ源となる。また、アースラインLEから放射されるノイズが強大であるため、検出回路40におけるグランドGND40に対しても、大きなノイズが重畳されることになる。そして、このようにして、検出回路40のグランドGND40が、大きなノイズによって揺れることから、検出回路40におけるノイズレベル(アースラインLEからのノイズレベル)との差分が小さくなる。その結果、
図8に示したように、アース端子71Eが非接地状態となっている場合には、放射電界ノイズNreのノイズレベルが低く測定され、誤判定されてしまうおそれがある。ちなみに、このようなアースラインLEからのノイズは、いわゆる同相ノイズ(コモンモードノイズ)と呼ばれるものと考えられる。
【0063】
ここで、
図7,
図9に示したような、アイソレーショントランス2aの1次側のアース端子71Eは、必ずしもアースEに接地されているとは限らない。特に、壁コンセント20a内の工事状況は、外部からは分からないのが実情である。また、このノイズ判定器4は、前述したようにして、自身での電池駆動ではなく、外部(アイソレーショントランス2a)を介したAC電源駆動となっている。このため、ノイズ源(交流電源ラインP2a2)と検出回路40とのアイソレーションが完全ではないことから、検出回路40は、上記した同相ノイズの影響を受け易いことになる。これらのことから、ノイズ判定器4において放射電界ノイズNreを測定する際に、測定精度を向上させるためには、そのような同相ノイズの影響を低減させることが重要であると言える。
【0064】
なお、いわゆるノーマルモードノイズの周波数と、コモンモードノイズ(同相ノイズ)の周波数とは、同一であることから、同相ノイズのみをフィルタで除去することは、できない。また、一般に、同相ノイズ用のフィルタとしては、コモンドチョークコイルが使用されるが、対象となる周波数が、50Hz/60Hz程度の超低周波であるため、本実施の形態のノイズ判定器4のような小型機器の筐体に、そのようなフィルタの回路を実装することは、非現実的である。更に、そのようなコイルをフィルタとして使用した場合、そのコイルに磁界ノイズが重畳してしまうことから、安易にコイルを使用することはできない。加えて、磁気シールドするとしても、上記したような超低周波に有効なシールド材は、無いと言える。また、そもそも、測定対象の周波数が50Hz/60Hz程度であることから、そのような50Hz/60Hz程度の周波数に対するフィルタは、適用できないことになる。
【0065】
このようにして、アース端子71Eが非接地状態となる場合も考慮すると、同相ノイズのノイズ源となるアースラインLEからは、電界センサ42をできるだけ離して配置したほうが、放射電界ノイズNreの測定精度の観点からは、望ましいと言える。
【0066】
また、このような同相ノイズの影響を考慮すると、放射電界ノイズNreの測定精度を向上させるには、アースラインLEと、検出回路40におけるグランドGND40とは、電気的に接続しない(非接続とする)のが望ましいと言える。一般的な観点からは、これらのアースラインLEとグランドGND40とを、互いに電気的に接続させたほうが、検出回路40の動作が安定するが、上記したような同相ノイズの影響を考慮すると、互いに電気的接続させないほうが望ましいと言える。
【0067】
(D.作用・効果)
以上のようにして、本実施の形態のノイズ判定器4では、交流電源ラインP2a1,P2a2上を伝播して心電位波形(心電位信号Sc)に混入する放射電界ノイズNre(ノイズ信号Sn)が、電界センサ42において検出回路40上から測定される。そして、その測定された放射電界ノイズNreのノイズレベルLnが、閾値Lth以上であるのか否かについての判定が行われ、その判定結果Rjが、ノイズ判定器4の外部に通知される。これにより本実施の形態では、閾値Lth(基準値)以上のノイズレベルLnを有する放射電界ノイズNreの発生が、瞬時に把握できるようになる。つまり、例えば、ノイズ測定を行う度に、測定機器を放射電界ノイズNreの発生源に近づけて、その測定機器での放射電界ノイズNreの測定結果(数値)を、目視で読み取る必要などがなくなる。その結果、ノイズ判定器4を使用する際の利便性が、向上することになる。
【0068】
また、本実施の形態では、ノイズ判定器4とは異なる他の機器からの交流電源ラインP2a2を介した電力供給に基づいて、判定部43および通知部44に対してそれぞれ動作用の電力が供給されることから、以下のようになる。すなわち、上記した他の機器からの電源供給に基づいて動作を行うとともに、検出回路40上の放射電界ノイズNreの測定ができるようになる。したがって、例えば、ノイズ測定の度ごとに、そのノイズ判定器4を手に持って測定する必要がなくなることから、ノイズ判定器4を使用する際の利便性が、更に向上することになる。
【0069】
ここで、特に本実施の形態は、上記した観点から、前述したアース端子71E,72Eと電気的に接続されていると共に交流電源ラインP1aに含まれているアースラインLEと、検出回路40におけるグランドGND40とが、互いに非接続となっている。これにより本実施の形態では、検出回路40上の放射電界ノイズNreを測定する際に、例えば上記したように、アース端子71Eが非接地状態になった場合であっても、上記したようにして、グランドGND40への同相ノイズの影響が、抑えられる。よって、本実施の形態のノイズ判定器4では、上記したようなノイズ判定の際の判定精度を、向上させることが可能となる。
【0070】
また、本実施の形態では、電界センサ42がアースラインLEから離間配置されているようにしたので、例えば上記したように、アース端子71Eが非接地状態になった場合であっても、検出回路40上の放射電界ノイズNreを測定する際に、以下のようになる。すなわち、上記したようにして、アースラインLEと電界センサ42との間の浮遊容量が小さくなることから、そのような浮遊容量を介した同相ノイズ成分の混入が、抑えられる。よって、ノイズ判定の際の判定精度を、更に向上させることが可能となる。
【0071】
更に、本実施の形態では、電界センサ42における放射電界ノイズNreの測定面Smが、上記他の機器としてのアイソレーショントランス2aの筐体面S20に対して、略垂直となるように配置されていることから、以下のようになる。すなわち、例えば上記したように、アース端子71Eが非接地状態になった場合であっても、検出回路40上の放射電界ノイズNreを測定する際に、前述したフレームグランドFG20としての筐体20における筐体面S20と、測定面Smとの間の浮遊容量が、小さくなる。その結果、前述したようにして、そのような浮遊容量を介した同相ノイズ成分の混入が、抑えられることから、ノイズ判定の際の判定精度を、更に向上させることが可能となる。
【0072】
加えて、本実施の形態では、上記した電界センサ42における測定面Smが、検出回路40を搭載する回路基板45の基板面S40に対して、略平行となるように配置されていることから、以下のようになる。すなわち、このような基板面S40と測定面Smとの間の浮遊容量が、大きくなることから、検出回路40上の放射電界ノイズNreを測定する際に、放射電界ノイズNreの測定感度が高くなる。具体的には、回路基板45内の微弱な放射電界ノイズNreを、積極的に検出する(拾う)ことができる。その結果、ノイズ判定の際の判定精度を、更に向上させることが可能となる。
【0073】
また、本実施の形態では、上記した他の機器が、交流電源としての壁コンセント20aと心電図表示装置3との間を接続する、交流電源ラインP1a,P2a1上に配置された、アイソレーショントランス2aであることから、以下のようになる。すなわち、このアイソレーショントランス2aから心電図表示装置3までに至る経路(交流電源ラインP2a1)上において、そのアイソレーショントランス2aによって取り除ききれなかった放射電界ノイズNreが、検出回路40上にて測定できるようになる。その結果、ノイズ判定器4を使用する際の利便性を、より一層向上させることが可能となる。
【0074】
更に、本実施の形態では、放射電界ノイズNreの周波数fnが、心電位波形(心電位信号Sc)における所定の周波数範囲Δfn内である場合に、ノイズレベルLnが閾値Lth以上であるのか否かについての判定を行うようにしたので、以下のようになる。すなわち、例えば、心電位波形に対する影響が特に大きい周波数帯域(周波数範囲Δfn内)の放射電界ノイズNreについて、そのような判定が行われることになる。したがって、そのような影響が特に大きい放射電界ノイズNreについて、閾値Lth以上のノイズレベルLnの発生が瞬時に把握できることから、ノイズ判定器4を使用する際の利便性を、更に向上させることが可能となる。
【0075】
<2.変形例>
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はこの実施の形態に限定されず、種々の変形が可能である。
【0076】
例えば、上記実施の形態において説明した各部材の形状や配置位置、サイズ、個数、材料等は限定されるものではなく、他の形状や配置位置、サイズ、個数、材料等としてもよい。具体的には、上記実施の形態では、電界センサ42における放射電界ノイズNreの測定面Smが、前述した筐体面S20に対して略垂直となるように配置されていると共に、前述した基板面S40に対して略平行となるように配置されている場合の例について説明したが、これらの例には限られない。すなわち、そのような測定面Smが、例えば、筐体面S20に対して非垂直となるように配置されたり、基板面S40に対して非平行となるように配置されるようにしてもよい。また、上記実施の形態では、電界センサ42がアースラインLEから離間配置されている場合の例について説明したが、この例には限られず、場合によっては、電界センサ42がアースラインLEと近接するように配置されてもよい。更に、上記実施の形態では、電源プラグ72が3端子型のプラグである場合の例について説明したが、この例には限られない。すなわち、例えば、電源プラグ72を、2端子型のプラグ(アース端子72Eが設けられていないタイプのプラグ)としてもよい。また、上記実施の形態では、交流電源ラインP2a2上にアースラインLEは含まれない場合の例について説明したが、この例には限られない。すなわち、例えば、交流電源ラインP2a2上に、アースラインLEが含まれているようにしてもよい。
【0077】
また、上記実施の形態では、ノイズ判定器4内の判定部43における判定手法や、通知部44における通知手法等について、具体例を挙げて詳細に説明したが、これらの判定手法や通知手法等には限られず、他の手法を用いるようにしてもよい。具体的には、例えば場合によっては、
図6中のステップS12(ノイズ信号Snの周波数fnが所定の周波数範囲Δfn内であるのか否かの判定)を、行わないようにしてもよい。また、例えば、上記実施の形態で説明した、色などを利用した表示や、所定の音声出力などには限られず、他の手法を用いて、通知部44における通知を行うようにしてもよい。
【0078】
更に、上記実施の形態では、「他の機器」が、商用の交流電源と電気的に接続されたアイソレーショントランスである場合の例について説明したが、この例には限られず、「他の機器」が、アイソレーショントランス以外の別の機器であってもよい。
【0079】
加えて、上記実施の形態で説明した放射電界ノイズNreの測定の際に、例えば、放射電界ノイズNreの測定信号に対して、以下のような処理を施すようにしてもよい。すなわち、例えば、そのような測定信号を絶対値化した後に、ダイオード等を用いた半波整流および平滑化(あるいはピークホールド)を施すようにしてもよい。このような処理を施すことにより、半波整流のみでは利用できなかった部分の測定波形も利用することができ、放射電界ノイズNreの測定精度を向上させることが可能となる。
【0080】
また、上記実施の形態では、
図1に示したカテーテルシステムを使用する環境下で適用されるノイズ判定器4を、例に挙げて説明したが、本発明のノイズ判定器は、このようなカテーテルシステム以外の他のシステムや、他の機器についても、適用することが可能である。つまり、場合によっては、心電位波形以外の他の波形に混入する放射電界ノイズを対象としても、本発明のノイズ判定器を適用するようにしてもよい。