(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】車両ドアの開閉装置
(51)【国際特許分類】
E05B 85/16 20140101AFI20240523BHJP
【FI】
E05B85/16 D
(21)【出願番号】P 2021564519
(86)(22)【出願日】2019-04-29
(86)【国際出願番号】 BR2019050156
(87)【国際公開番号】W WO2020220097
(87)【国際公開日】2020-11-05
【審査請求日】2022-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】521473169
【氏名又は名称】ミネベア アクセスソリューションズ サウス アメリカ リミターダ
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】パウロ セルジオ カルモ
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-145224(JP,A)
【文献】独国特許発明第10155340(DE,C1)
【文献】実開昭56-133059(JP,U)
【文献】特開2001-227205(JP,A)
【文献】独国実用新案第202011051817(DE,U1)
【文献】米国特許第06072403(US,A)
【文献】特開2006-305196(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0042897(US,A1)
【文献】米国特許第06459373(US,B1)
【文献】特開平09-317279(JP,A)
【文献】特開2017-066815(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00 - 85/28
B60J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ドア(101)の開放を制御するための車両のドアハンドルであって、作動時に前記車両ドア(101)を解放するように構成されたドアラッチ機構(103)と、休止位置と前記ドアラッチ機構(103)を作動させる作動位置との間で、ハンドルフレーム(5)に対して可動であるハンドリング要素(3)とを備えるものにおいて、
前記ハンドルフレーム(5)と一緒に移動するように固定された少なくとも1つの静止磁気要素(53)と、前記ハンドリング要素(3)と一緒に移動するように構成された少なくとも1つの可動磁気要素(33)とを含み、
前記静止磁気要素および前記可動磁気要素(53、33)が互いに向き合い、引き付けまたは反発する位置である、前記ハンドリング要素(3)の安定位置(S)または不安定位置(U1、U2)を定めることにより、触覚フィードバックを生成するようになっており、
前記静止磁気要素または前記可動磁気要素は、複数の磁石を含んでおり、
前記静止磁気要素および前記可動磁気要素(53、33)は、互いに向き合うときに、互いに反発することによって前記不安定位置(U1、U2)を定める反対の極性を有する磁石を含んでいることを特徴とする車両のドアハンドル。
【請求項2】
車両ドア(101)の開放を制御するための車両のドアハンドルであって、作動時に前記車両ドア(101)を解放するように構成されたドアラッチ機構(103)と、休止位置と前記ドアラッチ機構(103)を作動させる作動位置との間で、ハンドルフレーム(5)に対して可動であるハンドリング要素(3)とを備えるものにおいて、
前記ハンドルフレーム(5)と一緒に移動するように固定された少なくとも1つの静止磁気要素(53)と、前記ハンドリング要素(3)と一緒に移動するように構成された少なくとも1つの可動磁気要素(33)とを含み、
前記静止磁気要素および前記可動磁気要素(53、33)が互いに向き合い、引き付けまたは反発する位置である、前記ハンドリング要素(3)の安定位置(S)または不安定位置(U1、U2)を定めることにより、触覚フィードバックを生成するようになっており、
前記静止磁気要素または前記可動磁気要素は、複数の磁石を含んでおり、
前記静止磁気要素および前記可動磁気要素(53、33)は、互いに向き合うときに、互いに引き付け合うことによって少なくとも1つの前記安定位置(S)を定める同様の極性を有する磁石を含んでいることを特徴とする車両のドアハンドル。
【請求項3】
車両ドア(101)の開放を制御するための車両のドアハンドルであって、作動時に前記車両ドア(101)を解放するように構成されたドアラッチ機構(103)と、休止位置と前記ドアラッチ機構(103)を作動させる作動位置との間で、ハンドルフレーム(5)に対して可動であるハンドリング要素(3)とを備えるものにおいて、
前記ハンドルフレーム(5)と一緒に移動するように固定された少なくとも1つの静止磁気要素(53)と、前記ハンドリング要素(3)と一緒に移動するように構成された少なくとも1つの可動磁気要素(33)とを含み、
前記静止磁気要素および前記可動磁気要素(53、33)が互いに向き合い、引き付けまたは反発する位置である、前記ハンドリング要素(3)の安定位置(S)または不安定位置(U1、U2)を定めることにより、触覚フィードバックを生成するようになっており、
前記静止磁気要素または前記可動磁気要素は、複数の磁石を含んでおり、
前記静止磁気要素または前記可動磁気要素は、調整可能な電流供給手段を備えた電磁石を含んでおり、前記静止磁気要素および前記可動磁気要素(53、33)は、互いに向き合うときに、互いに反発することによって前記不安定位置(U1、U2)を定める反対の極性を有するように構成されていることを特徴とする車両のドアハンドル。
【請求項4】
車両ドア(101)の開放を制御するための車両のドアハンドルであって、作動時に前記車両ドア(101)を解放するように構成されたドアラッチ機構(103)と、休止位置と前記ドアラッチ機構(103)を作動させる作動位置との間で、ハンドルフレーム(5)に対して可動であるハンドリング要素(3)とを備えるものにおいて、
前記ハンドルフレーム(5)と一緒に移動するように固定された少なくとも1つの静止磁気要素(53)と、前記ハンドリング要素(3)と一緒に移動するように構成された少なくとも1つの可動磁気要素(33)とを含み、
前記静止磁気要素および前記可動磁気要素(53、33)が互いに向き合い、引き付けまたは反発する位置である、前記ハンドリング要素(3)の安定位置(S)または不安定位置(U1、U2)を定めることにより、触覚フィードバックを生成するようになっており、
前記静止磁気要素または前記可動磁気要素は、複数の磁石を含んでおり、
前記静止磁気要素または前記可動磁気要素は、調整可能な電流供給手段を備えた電磁石を含んでおり、前記静止磁気要素および前記可動磁気要素(53、33)は、互いに向き合うときに、互いに引き付け合うことによって少なくとも1つの前記安定位置(S)を定める同様の極性を有するように構成されていることを特徴とする車両のドアハンドル。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項の車両のドアハンドルにおいて、
前記ハンドルフレーム(5)に取り付けられた静止ガイド手段(51)と、前記ハンドリング要素(3)に取り付けられた可動ガイド手段(31)と、前記ハンドリング要素(3)の動きをガイドする手段とを含み、
前記静止磁気要素(53)は、前記静止ガイド手段(51)に取り付けられ、前記可動磁気要素(33)は前記可動ガイド手段(31)に取り付けられていることを特徴とする車両のドアハンドル。
【請求項6】
請求項5の車両のドアハンドルにおいて、
前記静止ガイド手段および前記可動ガイド手段(51、31)は、ガイドフィンガーと、前記ハンドリング要素(3)の移動中に前記ガイドフィンガーが並進してスライドするレールまたはシースとを備えていることを特徴とする車両のドアハンドル。
【請求項7】
請求項5の車両のドアハンドルにおいて、
前記可動ガイド手段(31)はロータを含み、前記静止ガイド手段(51)はステータを含み、前記ロータおよび前記ステータは、前記ハンドリング要素(3)の移動中に回転して互いに移動することを特徴とする車両のドアハンドル。
【請求項8】
請求項1~2のいずれか1項の車両のドアハンドルにおいて、
前記静止磁気要素および前記可動磁気要素(53、33)の少なくとも1つは、交互の極性の前記磁石を含み、前記可動磁気要素または前記静止磁気要素(33、53)の1つの前記磁石に面するとき、互いに反発することにより少なくとも1つの前記不安定位置(U1、U2)を定め、互いに引き付け合うことによって少なくとも1つの前記安定位置(S)を定めることを特徴とする車両のドアハンドル。
【請求項9】
請求項1~2のいずれか1項の車両のドアハンドルにおいて、
前記静止磁気要素および前記可動磁気要素(53、33)は、少なくとも1つの永久磁石を含んでいることを特徴とする車両のドアハンドル。
【請求項10】
請求項1~2のいずれか1項の車両のドアハンドルにおいて、
前記静止磁気要素または前記可動磁気要素(53、33)の一方は、少なくとも1つの前記磁石を含み、他方は、前記ハンドリング要素(3)の安定した位置に面しているときに、前記安定位置を定義する少なくとも1つの金属隆起(53a、53b)を備えていることを特徴とする車両のドアハンドル。
【請求項11】
請求項5~7のいずれか1項の車両のドアハンドルにおいて、
前記静止ガイド手段(51)または前記可動ガイド手段(31)のいずれかは、2つの前記不安定位置(U1、U2)と、該2つの不安定位置(U1、U2)の間にある1つの前記安定位置(S)を定める、少なくとも2つの磁気要素(53a、53b)を備えていることを特徴とする車両のドアハンドル。
【請求項12】
請求項11の車両のドアハンドルにおいて、
前記ハンドリング要素が前記安定位置(S)に到達したとき、認証ユニットに命令が送信され、前記認証ユニットは、ユーザが保有しているセキュリティトークンの存在を問い合わせ、前記セキュリティトークンを認証することを特徴とする車両のドアハンドル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両ドアの開放を制御するためのドアの開閉装置に係り、特にドアラッチおよび触覚フィードバック生成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両のドアラッチまたは開閉装置は、車両のドアパネルを選択的にロックまたは解放する。ユーザは、車両のドアラッチを作動させるために、ハンドルレバー、ノブなどをつかんで動かすことにより、ラッチ機構を作動させるためのエネルギーを与える。
特に、殆どのドアラッチは、ユーザの開放動作に逆らって作用する可変ブレーキ力または反力を生成する機械的な触覚フィードバックシステムを備えている。
【0003】
ドアパネルが解放されると、ユーザまたは電気パネルアクチュエータは、パネルをスイングまたはスライドさせて、車両への物理的なアクセスを許容する。
作動信号は、特に、認証プロセスの実行後に生成される。この認証プロセスには、例えば、RFIDカードやモジュール、ブルートゥース(Bluetooth:登録商標)接続電話などの認証トークンのリモート検出や、または、単にシリンダー錠にキーを挿入して回すことが行われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
触覚フィードバックを提供するために、双安定ばねまたは弾性器具などのシステムが使用されている。このようなシステムは、例えば、圧縮された弾性要素またはばね、この圧縮されたばねの端部のスライダーまたは指状部、および、ハンドルの移動中に変化する可変抵抗力を前記指状部で生成する突起を含んでいる。
その結果、ユーザは、フィードバック力として、移動の最初の部分では徐々に増加して最大値に達し、その後、減少するか、あるいはさらに補助力となる力を経験する。
このフィードバック力の減少または反転は、「カチッ」という感覚を生成して、ユーザの行動がラッチ機構を作動させたことをこのユーザに確認させるためのものであり、鋭いものが好ましい。
【0005】
ばねまたは他の弾性要素に基づく双安定メカニズムを含んだ触覚フィードバックメカニズムは、一般に、幾つかの要素が、互いに強い摩擦を伴ってスライドすることを意味する。この摩擦により、互いにスライドする要素が摩耗するため、車両のドアハンドルの寿命が短くなる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記した従来技術の欠点を克服するために、車両ドアの開放を制御するための車両のドアハンドルであって、
作動時に車両ドアを解放するように構成されたドアラッチ機構と、休止位置と前記ドアラッチ機構を作動させる作動位置との間で、ハンドルフレームに対して可動であるハンドリング要素とを備えるドアハンドルにおいて、
前記ハンドルフレームと一緒に移動するように固定された少なくとも1つの静止磁気要素と、前記ハンドリング要素と一緒に移動するように構成された少なくとも1つの可動磁気要素とを含み、
前記静止磁気要素および前記可動磁気要素が、互いに向き合い引き付け、または反発する位置である、前記ハンドリング要素の安定位置と不安定位置を定めることにより、触覚フィードバックを生成するようになっている。
【0007】
前記磁石は、前記力を生成するための機械的摩擦なしに、フィードバック力を生成する。前記ガイド手段は摩擦を減らすために最適化することができ、これにより、前記ラッチの潜在的な寿命を延ばすことができる。
【0008】
前記車両のドアラッチは、以下の1つまたは複数の特徴を有していても良い。
前記ハンドルフレームに取り付けられた静止ガイド手段と、前記ハンドリング要素に取り付けられた可動ガイド手段とを含み、前記ハンドリング要素の動きをガイドする手段であって、これの前記静止ガイド手段に前記静止磁気要素が取り付けられ、前記可動ガイド手段に前記可動磁気要素が取り付けられている。
前記静止ガイド手段および前記可動ガイド手段は、ガイドフィンガーと、前記ハンドリング要素の移動中に、前記ガイドフィンガーが並進してスライドするレール、またはシースとを備えていても良い。
前記可動ガイド手段はロータを含み、かつ、前記静止ガイド手段はステータを含み、前記ロータと前記ステータは、前記ハンドリング要素の移動中に回転することにより、相互に移動する。
前記静止磁気要素または前記可動磁気要素は、複数の磁石を含んでいても良い。
前記静止磁気要素および前記可動磁気要素は、互いに向き合ったときに、互いに反発することによって複数の不安定位置を定める、反対の極性の磁石を含んでいても良い。
前記静止磁気要素および前記可動磁気要素は、互いに向き合ったときに、互いに引き付け合うことによって、少なくとも1つの安定位置を定める、同様の極性の磁石を含んでいても良い。
【0009】
前記静止磁気要素および前記可動磁気要素の少なくとも1つは、交互の極性を有する複数の磁石を含み、それぞれ前記可動磁気要素または前記静止磁気要素の少なくとも1つの磁石に面するとき、互いに反発することによって少なくとも1つの不安定位置を定め、かつ、互いに引き付け合うことによって少なくとも1つの安定位置を定めるものであっても良い。
前記静止磁気要素および前記可動磁気要素は、少なくとも1つの永久磁石を含んでいても良い。
前記磁気要素は、少なくとも1つの電磁石を含んでいても良い。
【0010】
前記静止磁気要素または前記可動磁気要素のそれぞれの1つは、少なくとも1つの磁石を含んでいても良く、他方は、前記ハンドリング要素の安定位置に面するときに、安定位置を定める少なくとも1つの金属隆起を含んでいても良い。
前記静止磁気要素または前記可動磁気要素のいずれかは、それらの位置の間に、1つの安定位置がある少なくとも2つの不安定な中間位置を定める、少なくとも2つの磁気要素を含んでいても良い。
前記ハンドリング要素が前記安定位置に到達したとき、認証ユニットに命令を送信して、前記認証ユニットに、ユーザが保有しているセキュリティトークンの存在を問い合わせさせ、前記セキュリティトークンを認証させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1a】ドアの開閉装置がある作動位置にある、車両ドアの開閉装置の概略図である。
【
図1b】ドアの開閉装置が異なる作動位置にある、車両ドアの開閉装置の概略図である。
【
図1c】ドアの開閉装置がさらに異なる作動位置にある、車両ドアの開閉装置の概略図である。
【
図2】前記ドアの開閉装置の作動中にユーザが感じる、抵抗フィードバック力のグラフである。
【
図3a】ドアの開閉装置がある作動位置にある、車両ドアの開閉装置の別の実施形態および装置の作動の概略図である。
【
図3b】ドアの開閉装置が異なる作動位置にある、車両ドアの開閉装置の別の実施形態および装置の作動の概略図である。
【
図3c】ドアの開閉装置がさらに異なる作動位置にある、車両ドアの開閉装置の別の実施形態および装置の作動の概略図である。
【
図4】ドアの開閉装置が
図3a、
図3b、
図3cのように作動するのに伴い、動作中にユーザが感じる、抵抗フィードバック力のグラフである。
【
図5】ドアの開閉装置の別の実施形態を示す概略図である。
【
図6】ドアの開閉装置の別の実施形態を示す概略図である。
【
図7】本発明に基づく触覚フィードバックを備える手動ロックボタンの概略図である。
【
図8】ハンドリング要素が回転した際のドアの開閉装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のさらなる特徴および利点は、図面に示す例示的かつ非限定的な方法に関する以下の説明を読むことにより明らかになると思う。
すべての図面において、同じ要素には同じ符号を付してある。図面は、本発明の正確な実施形態を示しているが、図示の実施形態を組み合わせるか、またはわずかに変更することによって、別の新たな実施形態を得ることもできる。この新しい実施形態もまた、本発明の範囲内に含まれる。
空間的方向について述べると、長手方向の水平軸Xは、一直線の(すなわち、回転していないときの)車輪を備える車両の、通常の前進移動方向である。垂直の上下軸Zは、平坦な地形における車両の重力方向である。
ホイール軸(直線の場合)は、前記2つの軸に直交する横軸として定義される。「内向き」、「外向き」などの用語は、車両の外面に対してのものであり、車両のキャビンの外側からこの車両を見たときの見かけの車体に関するものである。
【0013】
図1a、
図1bおよび
図1cは、ドアパネル100およびそれにビルトインされたドアラッチ1を備える、車両ドアの概略の断面図である。ドアパネル100は車両の外面を形成し、ドアラッチ1には、基本的にハンドリング要素3とハンドルフレーム5がある。ハンドリング要素3は、作動中にユーザによって把持されて移動されるようになっている部分であり、ハンドルフレーム5は、作動中は静止したままの部分である。ハンドリング要素3は、この実施例では、回転軸Aの周りの休止位置(
図1a)と、作動位置(
図1c)との間で回転して移動するハンドルレバーである。
【0014】
別の実施形態によれば、ハンドリング要素3は、ハンドルノブまたは押しボタンを含むことができる。
「内向き」、「外向き」などの用語は、それぞれ車両の内側と外側に関するものである。
【0015】
図1aに示す第1の断面図では、ハンドリング要素3は休止位置にある。この休止位置は、ユーザとの相互作用がない状態の位置である。ユーザがハンドリング要素3を解放したときに、このハンドリング要素3を休止位置に自動復帰させるために、ドアラッチ1は、この休止位置に復帰させるための戻りばね(図示せず)を備えている。
【0016】
図1bに示す第2の断面図では、ハンドリング要素3は中間位置にある。ハンドリング要素3は、このハンドリング要素を移動させるためにユーザが開放操作することにより、この中間位置において、ハンドル軸Aの周りに所定の角度(例えば、20°~45°)だけ外側に回転している。
【0017】
図1cに示す第3の断面図では、ハンドリング要素3は作動位置にある。ハンドリング要素3が、ユーザによってさらに外側(40°~60°以上)へ回転させられると、この作動位置となる。この作動位置において、ハンドリング要素3は、ラッチ機構103と相互作用して前記ドアパネルを解放する。ハンドリング要素3をさらに外側へ引っ張ることにより、ドアパネルを開くことができる。
休止位置(
図1a)と作動位置(
図5c)は、架台により、特に極値位置として定められている。ユーザが押すことによって、または電動モータによって、特に、ドアラッチをフラッシュ動作させる場合に、架台は、相対的動き、および/または変位が可能である。
【0018】
フラッシングドアラッチでは、ハンドリング要素3は、車両の車体と同一平面になるフラッシュ位置を採用することができる。電動モータは、特定の条件が満たされたときに、ハンドリング要素3をこのフラッシュ位置から準備完了位置へ移動させる。この特定の条件は、例えば、ハンドリング要素上の容量性検出器を介するユーザの接触の検出や、車両に近い所定の領域でのセキュリティトークン(キーカード、RFID送信機、暗号化キー付きのブルートゥース接続電話など)の検出などである。
ハンドリング要素3を、そのフラッシュ位置からその準備完了位置に移動させるために、電動モータは、戻りばねの作用に逆らって可動架台を移動させる。この場合、準備完了位置は、絶対的な極値位置ではなく、
図1aの休止位置に対応する。
【0019】
フラッシュ位置では、ハンドリング要素3は、駐車されたときに通行人と相互作用する可能性が低く、また、走行中における空気抵抗も減少する。このフラッシュ位置では、ハンドリング要素3もまた、快適でかつ離散的な方法で、ドアパネル100内に統合されているように見える。
ハンドリング要素3およびハンドルフレーム5は、ガイド要素として、1つの可動ガイド要素31、および1つの静止ガイド要素51を備えている。可動ガイド要素31は、ハンドリング要素3に取り付けられるか、またはそれと一体的に形成され、静止ガイド要素51は、ハンドルフレーム5に取り付けられるか、またはそれと一体的に形成されている。
【0020】
特に、
図1a、
図1b、
図1cの実施形態では、可動ガイド要素31は、ハンドリング要素の回転軸Aとは反対側の先端に設けられた円弧状の指状部であり、静止ガイド要素51は、可動ガイド要素31がそれに沿って案内される円弧レールである。ガイド要素31、51の間の摩擦をさらに低減させるために、ニードルベアリングまたはボールベアリングなどのベアリングを、これら2つのガイド要素間に実装することもできる。
【0021】
可動ガイド要素31および静止ガイド要素51は、それぞれ、可動ガイド要素31に取り付けられた可動磁気要素33と、静止ガイド要素53に取り付けられた静止磁気要素53とを備えている。これら複数の磁気要素31、51には、特に複数の磁石、例えば、ネオジム磁石などの永久磁石が適している。
可動磁石33および静止磁石53は、それぞれのガイド要素31、51に取り付けられており、
図1aの休止位置および
図1cの作動位置において、それらは互いに最大の距離にあり、
図1bの中間位置において、それらは互いに最小の距離となる。
【0022】
特に、複数の可動磁石33および静止磁石53は、反対の極性に配置され(
図3a、
図3b、
図3cの矢印を参照)、従って、それらの中間位置では、それらのN極とS極とが互いに向き合い、反発力が生成される。
【0023】
図2は、ハンドリング要素が休止位置と作動位置の間で移動しているときの、長さまたは角度(cmまたは角度°)の変位dの関数として、ユーザが感じる、抵抗フィードバック力Fまたはトルク(NまたはNm)のグラフである。
零変位である開始点では、比較的小さいが正の抵抗力があり、本質的に、戻りばねによってハンドリング要素3に加えられる反対の力またはトルクに対応しており、ユーザは、ハンドリング要素3を移動させるためにこの力を克服する。
【0024】
次に、第1の区間に沿って変位dが増すにつれ、抵抗力Fは増加する。この第1の区間において、変位dが増すと、静止磁石53と可動磁石33とが、互いに近づく。
可動磁石33と静止磁石53とが向かい合うと、反発力は変位に対して直交する。その結果として、可動磁石33と静止磁石53とが互いに向き合うと、知覚される抵抗力Fは、突然減少し、零になる。
【0025】
変位dがさらに増すと、力は負になり、絶対値が急速に増加し、互いに反発する磁石33、53は、変位が増すのを助ける。
この、知覚される抵抗力Fの急激な減少と反転は、機械的な接触や弾性力に打ち勝つことが起こらないにもかかわらず、機械的な性質の「クリック」またはスナップインの形態で、ユーザに知覚される。
【0026】
この知覚される触覚力F、したがって触覚フィードバックの調整は、多かれ少なかれ、重要な磁気モーメントを有する複数の磁石を選択し、それらが互いに最も近い位置にあるときの磁気要素33、53間の相対距離を変更することによって実現できる。
この触覚力Fを調整するために、複数の磁気要素33、53のうちの少なくとも1つは、調整可能な電流供給手段を備えた電磁石とすることができる。好ましくは、静止磁気要素53は、調整可能な反発力または引き付け強度を有するハンドリング要素の安定な位置または不安定位置を定めるための、電磁石を含むことができる。
特に、電磁石は、容量検出器を使用してユーザとハンドリング要素との接触が検出されたとき、または、RFIDタグや暗号化キーを含んでいるBluetooth電話などのリモート認証トークンが車両の周囲の所定の境界内に入ったときに、選択的に電流を供給することができる。
【0027】
図3a、
図3b、
図3cは、ハンドル1が、2つの不安定位置U1、U2と、これら2つの不安定位置の間に1つの安定位置Sを有する例を示している。
前記各図において、可動ガイド手段31は、ガイドフィンガーを含み、静止ガイド手段51は、このガイドフィンガーのスライド運動を案内するためのレールを形成する、ガイドフィンガー用のシースを含んでいる。
ハンドリング要素3の動きにより、ガイドフィンガーは、休止位置(
図3a)にあるシースからスライドして外れる。
静止磁気要素53は、2つの静止磁石53a、53bを含み、可動磁気要素33は、静止磁石53a、53bの分極と反対方向の分極を有する単一の磁石を含んでいる。
【0028】
図3aに示すように、休止位置において、可動磁気要素33は、2つの静止磁石よりも先に位置しており、その結果、両方の静止磁石53a、53bの反発力を受けて、橋台に対して静止している。
ユーザがハンドリング要素3を引っ張ると、可動磁気要素33は、第1の静止磁石
53b(
図3a、
図3b、
図3cの右側)に近づき、第1の不安定位置U1である第1の静止磁石
53bと向かい合った位置に達する。
この第1の不安定位置では、抵抗力が急激に減少し、抵抗力の向きが変化する。この位置を、ユーザは、第1のノイズのない「クリック」として感じる。
この第1の静止磁石
53bの反発力に打ち勝ち、さらに可動磁気要素33の移動が続くと、この可動磁気要素33は、
図3bに示す安定位置Sに到達する。この位置では、静止磁石53a、53bの両方の反発力が互いに打ち消し合っている。
【0029】
ハンドリング要素3がこの中間の安定位置Sに到達したとき、ラッチ100および認証ユニットの制御装置は、認証が肯定的である場合に、ドアのロックを解除するために、認証ユニットにユーザが保有しているセキュリティトークンの存在と認証値を問い合わせる。制御装置およびロック機構103は、否定的な認証の場合、ハンドリング要素3のさらなる外向きの動きを防止することができる。
ユーザは、ハンドリング要素3をさらに移動させるために、可動磁気要素33が第2の静止磁石
53a(
図3a、
図3b、
図3cの左側)に近づき、さらに第2の不安定位置U2である第2の静止磁石
53aと向かい合った位置になるまで、第2の静止磁石
53aの反発力に打ち勝つ力を与えなければならない。
【0030】
可動磁気要素33は、
図3cに示すように、第2の不安定位置U2を超えて、さらにそれが橋台に接触して作動位置に到達するまで、両方の静止磁石53a、53bの反発力を受ける。
【0031】
図4のグラフは、ユーザが知覚する抵抗力Fまたはトルクを示している。
図4は、
図2と同様の方法により、変位dの関数としての抵抗力Fを示すグラフである。
最初の位置では、抵抗力Fは、正であるが比較的弱い。変位dが大きくなり、可動磁性体33が第1の静止磁石
53bに近づくにつれ、抵抗力は大きくなり、最大値に達する。
さらに、可動磁性体33と第1の静磁石
53bとが互いに接近し、それらが向かい合ったとき、抵抗力は急激に減少して、第1の不安定位置U1を定める。
【0032】
変位dがさらに増すと、抵抗力Fは負になり(これはハンドルレバー3の動きをアシストする)、絶対値が最大に達するまで急速に増加する。この最大値の後、第2の静止磁石53aの反発力が、第1の静止磁石53bの反発力を打ち消し始めるので、抵抗力Fの絶対値は再び減少する。
第1および第2の静止磁石53b、53aの両方の反発力が互いに打ち消し合うとき、抵抗力Fは零となる。これにより、安定位置Sが定められる。
【0033】
変位dがさらに増すと、第2の静止磁石53aの反発力の増加により、可動磁気要素33と第2の静止磁石53aとが互いに接近する位置まで、抵抗力Fが増加し、これらが向かい合うと、抵抗力Fが急激に減少し、第2の不安定位置U2を定める。
この第2の不安定位置U2を超えると、抵抗力は、最大になるまで再び急激に増加し、その後、架台がハンドリング要素のそれ以上の外向きの動きを妨げる作動位置に達するまで減少する。
【0034】
図5は、
図3a、
図3b、
図3cと同様の方法で、シース51内を滑走するガイドフィンガー31を備えるハンドル1の別の実施形態を示している。
図5の実施形態では、静止磁気要素53は、第1の隆起53aおよび第2の隆起53bを備える金属要素を含んでいる。この金属要素は、特に鉄や鋼などの強磁性金属からなっている。
この隆起53a、53bは、より重要な断面を有しており、磁石、特に永久磁石である可動磁気要素33の方向へ伸びている。
【0035】
隆起53a、53bは、ハンドリング要素3が所定の安定位置に達すると、可動磁気要素33に面する。この安定位置において、可動磁気要素33は、それが面する隆起53aまたは53bに引き付けられ、特に、考慮される位置に安定させるために、戻りばねの力に打ち勝つ強度を有する。
他の実施形態では、3つ以上の隆起53a、53bを設けることもでき、また、隆起53a、53bを静止磁石と組み合わせることもできる。
さらに、可動磁気要素33は金属要素を含むことができ、静止磁気要素53は磁石を含むことができる。
別の実施形態によれば、隆起53a、53bの少なくとも一部を、可動磁気要素33と同じ方向に分極する磁石と、置き換えることができる。
【0036】
図6は、シース51内を滑るガイドフィンガー31を備えるロック1の、他の代替実施形態を示している。
図6の実施形態では、静止磁気要素53は、交互の分極を有する複数の磁石を含んでいる。可動磁気要素33もまた、1つの磁石を含んでいる。
2つの極値磁石53a、53bは、可動磁気要素33に対して反対方向に分極されている。静止磁気要素53の2つの極値磁石53a、53bの間に位置する1つの中間磁石53cは、可動磁気要素33と同じ方向に分極されている。
【0037】
複数の極値磁石53a、53bは、可動磁気要素33に面したときに、ハンドリング要素3の不安定位置を定めるという点で、
図3a、
図3b、
図3cの実施形態と同様に作用する。ハンドリング要素3がその中間安定位置Sにあるとき、中間磁石53cは可動磁気要素33に面している。この位置での可動磁気要素33と中間磁石53cとの間の引力は、
図5に示すように、中間位置の安定性を強化する。
ハンドリング要素3を、車両のドアラッチの内部手動ロックボタンとすることもできる。この手動ロックボタンは、一般的に車体のドア本体の内部から垂直に突き出ている。この手動ロックボタンを引くと、ドアのロックが解除され、押し下げるとドアがロックされる。対応する「上」および「下」位置は安定位置Sであり、一方、車両のドアラッチ1のロックおよびロック解除が行われる中間位置は、不安定位置Uである。
【0038】
図7における、手動ロックボタン3の実施形態は、中間の不安定位置を概略的に示している。ハンドルまたはドアフレーム5は、単一の静止磁気要素53を備えるガイドコリドー51を有し、手動ロックボタン3は、単一の可動磁気要素33を備えるガイドロッド31を有している。可動磁気要素33および静止磁気要素53は同じ極性を有し、図示された中間位置にあるときに互いに向き合う。
架台(図示せず)は、可動磁気要素33と静止磁気要素53が最も離れている安定位置を定める。
手動ロックボタン装置の他の実施形態は、
図5および
図6の実施形態に基づいて得ることができる。
【0039】
図8は、車両のドアラッチ1の部分図であり、可動ガイド要素31は、回転軸Aの周りを回転して移動するロータである。静止ガイド要素51はステータであり、このステータに対してロータ31が回転運動する。
静止磁気要素53および可動磁気要素33は、回転軸Aの半径方向の周辺位置に配置されている。
静止磁気要素51および可動磁気要素31は、それらの相互引力または反発力により、安定および不安定な回転位置を定めることにより、抵抗力Fの代わりに、抵抗トルクを生成する。
【符号の説明】
【0040】
1 ドアラッチ
3 ハンドリング要素
31 可動ガイド要素、可動ガイド手段
33 可動磁気要素、可動磁石
5 ハンドルフレーム
51 静止ガイド要素、静止ガイド手段、
53 静止磁気要素、静止磁石
53a 第1の隆起
53b 第2の隆起
53c 中間磁石
100 ドアパネル
103 ドアラッチ機構
A 回転軸
d 変位
F 抵抗力
S 安定位置
U1 不安定位置
U2 不安定位置