(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
G01D 13/02 20060101AFI20240523BHJP
G01D 11/28 20060101ALI20240523BHJP
B60K 35/00 20240101ALI20240523BHJP
【FI】
G01D13/02 101Z
G01D11/28 B
B60K35/00
(21)【出願番号】P 2020162828
(22)【出願日】2020-09-29
【審査請求日】2023-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】根本 昌幸
【審査官】藤澤 和浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-91223(JP,A)
【文献】特開2015-25725(JP,A)
【文献】特開2005-156268(JP,A)
【文献】特開2019-132680(JP,A)
【文献】特開2018-40747(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 7/00- 7/12
G01D 11/00-13/28
B60K 35/00-37/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性の透光部材と、
前記透光部材を支持するケース部材と、
前記透光部材と前記ケース部材とは溶着で接合される溶着部を有
し、
前記透光部材は、遮光性の遮光層により形成される遮光領域と、前記遮光層の形成されない透光領域と、を有し、
前記溶着部は、前記透光領域に対応する箇所に形成され、
前記透光領域の前方に、前記透光領域がユーザーから視認されないように覆う覆い部材を有することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記覆い部材は指針であることを特徴とする
請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
透光性の透光部材と、
前記透光部材を支持するケース部材と、
前記透光部材と前記ケース部材とは溶着で接合される溶着部を有し、
前記透光部材は、遮光性の遮光層により形成される遮光領域と、前記遮光層の形成されない透光領域と、を有し、
前記溶着部は、前記透光領域に対応する箇所に形成され、
前記透光部材は、前記遮光層を有する文字板と、前記文字板と前記ケース部材との間に配置される導光部材とから構成されることを特徴とす
る表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表示装置に関するものであり、特に、車両に搭載する表示装置に関するものである。
【0002】
車両のインスツルメントパネルには、指針と文字板から構成されるスピードメータやタコメータ等を備えた表示装置が配置される。文字板は、中ケースの上に載置される。指針は、文字板の前面を回動するが、文字板が浮き上がると、浮き上がった文字板に引っ掛かり動かなくなる虞がある。そこで文字板は、指針の周辺及び指針の真下を種々の方法で中ケースに固定される。
【0003】
例えば特許文献1に開示されるように、文字板の指針下部を樹脂製の中ケースに形成されたフックで固定される。また、特許文献2に開示されるように、文字板の指針周辺をネジなどの固定具で中ケースに固定される。また、特許文献3に開示されるように、文字板の指針下部を文字板の裏面に貼付された両面テープなどにより中ケースに固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-004303号公報
【文献】特開平9-126829号公報
【文献】特開2017-150824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、文字板をフックに固定する場合は、フックが削れてゴミが発生したり、ネジや両面テープを使う場合は、部品費等の費用が掛かるといった問題点があった。
【0006】
そこで、本開示は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、低コストで強固に文字板を固定することができる表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の表示装置は、透光性の透光部材1,6と、前記透光部材1,6を支持するケース部材3と、前記透光部材1,6と前記ケース部材3とは溶着で接合される溶着部Z1,Z2を有し、前記透光部材1,6は、遮光性の遮光層により形成される遮光領域12と、前記遮光層の形成されない透光領域12dと、を有し、前記溶着部Z1,Z2は、前記透光領域12に対応する箇所に形成され、前記透光領域12の前方に、前記透光領域12がユーザーから視認されないように覆う覆い部材22を有するすることを特徴とする。
また、透光性の透光部材1,6と、前記透光部材1,6を支持するケース部材3と、前記透光部材1,6と前記ケース部材3とは溶着で接合される溶着部Z1,Z2を有し、前記透光部材1,6は、遮光性の遮光層により形成される遮光領域12と、前記遮光層の形成されない透光領域12dと、を有し、前記溶着部Z1,Z2は、前記透光領域12に対応する箇所に形成され、前記透光部材1,6は、前記遮光層を有する文字板1と、前記文字板1と前記ケース部材3との間に配置される導光部材6とから構成されることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の第1の実施形態を示す表示装置の正面図。
【
図4】
図2における本開示の第2の実施形態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、
図1乃至4に基づいて、本開示の表示装置を車両に搭載される車両用の表示装置に適用した場合を例に挙げて説明する。尚、本開示は、車両用の表示装置に関し、例えば、自動車やオートバイ、あるいは農業機械や建設機械を備えた移動体に搭載される車両用の表示装置に適用することができる。
【0010】
以下の説明において、「前面側」は、
図1における手前側、及び
図2における上側(文字板1側)であり視認者(運転者)に視認される側を意味する。「背(後)面側」は、
図1における奥側、及び
図2における下側(回路基板4側)を意味する。
【0011】
以下、本開示の第1の実施形態を説明する。
図1に示すように、表示装置100は、少なくとも、車両の速度を表示するスピードメータ101と、エンジン回転数を表示するタコメータ102と、液晶表示器8などからなるデジタル表示部103と、車両の作動や警告を表示する複数のインジケータ104と、を表示する。
【0012】
図2に示すように、表示装置100は、文字板(透光部材)1と、文字板1の前方に配置される指針2と、文字板1の背後に配置されるケース部材3と、ケース部材3の背後に配置される回路基板4と、回路基板4の前方に実装される光源5と、文字板1とケース部材3の間に配置される導光部材(透光部材)6と、を主に有する。
【0013】
文字板1は、例えば透明又は半透明の透光性の合成樹脂(例えば、アクリル又はポリカーボネート)からなる薄板状の板部材11を母材とする。文字板1は、遮光層(遮光領域)12と、スモーク層13と、指針開口部14と、を有する。
【0014】
遮光層12は、板部材11の表面に遮光性の黒色のインキが印刷形成されたものである。遮光層12は、後述するレーザー光L1を透過しない。遮光層12は、指標部12aと、透視窓部12bと、インジケータ意匠部12cと、指針開口透過部(透光領域)12dと、を有する。
【0015】
指標部12aは、指針2が指示する目盛や数字等の意匠に遮光層12が抜き印刷され形成される。指標部12aは、指針2の後述する指針指示部21の回動軌跡に沿って形成される。透視窓部12bは、液晶表示器8の表示部に対向する位置に略矩形状に遮光層12が抜き印刷され形成される。インジケータ意匠部12cは、ターンやハイビーム等の各種作動灯や燃料残量警告灯等の警告灯の意匠に遮光層12が抜き印刷され形成される。
【0016】
指針開口透過部12dは、
図3,4に示すように、指針開口部14の周辺に指針開口部14の相似形状で遮光層12が抜き印刷され形成される。第2の光源52は真上に最も強い光を照射する。板部材11の中にこの強い光が入射して文字板1の前面から出射されることを防止するため、指針開口透過部12dは、第2の光源52は真上に対向する位置には形成されないので、複数個所に形成される。指針開口透過部12dは、遮光層12が形成されないので、指針開口透過部12dは、レーザー光L1を透過する透光領域1bとなる領域である。
【0017】
スモーク層13は、板部材11の表面に遮光層12と同系色の黒色のスモークインキが印刷形成されたものである。スモーク層13は、インジケータ意匠部12cや指針開口透過部12dに形成される。スモーク層13は、スモークインキがカーボンブラックを含有すると、カーボンブラックがレーザー光L1を吸収するので、カーボンブラックを含有しない染料型のインキが好適である。
【0018】
また、中ケース部材3は、レーザーエネルギーの約30%を吸収できれば発熱可能なので、スモーク層13は、レーザー光L1を透過可能なもので有る必要があり、特に、光の透過率が30%以上に形成されるものが好適である。指針開口部14は、指針2の後述する指針軸部22及び回動軸71に対応して開けられた孔である。
【0019】
指針2は、透光性樹脂(例えば、ポリカーボネート)からなる指針指示部21と、不透明な樹脂(例えば、ABS)からなる指針軸部(覆い部材)22と、を有する。指針2は、指針軸部22が駆動本体7の回動軸71に接続され、指標部12aを指針指示部21にて指示する。駆動本体7は、可動磁石式駆動本体,ステッピングモータ等からなるものであり、回路基板4の背後に装着され、回動軸71が前方に突出する。
【0020】
表示装置100は、指針2と指標部12aとにより、アナログ式のスピードメータ101及びタコメータ102を構成する。指針軸部22は、指針開口透過部12dがユーザーから視認されないように覆うように形成される。
【0021】
ケース部材3は、白色の合成樹脂(例えば、ポリプロピレン)からなる。ケース部材3は、前面3aに文字板1が載置される。後面3bにケース部材3に設けられるフックなどにより回路基板4が固定される。ケース部材3は、前面側に導光体6や液晶表示器8を収納する。
【0022】
ケース部材3は、アナログ照明室31と、指針照明室32と、有する。アナログ照明室31は、指標部12aに対応して文字板1の背後に形成される空間である。アナログ照明室31は、回路基板4上に指標部12aを背後から照明する第1の光源51が設けられる。指針照明室32は、指針2の指針軸部22に対応して形成される文字板1の背後に形成される空間である。
【0023】
指針照明室32は、中央に駆動本体7の回動軸71が配置され、回動軸71の周りの回路基板4上に指針2を背後から照明する第2の光源52が設けられる。指針照明室32は、文字板1の指針開口透過部12dと対向した位置に、文字板1の裏面と密着配置する対向部33を有する。
【0024】
回路基板4は、例えばFR-4(Flame Retardant-4)等の平板状のガラスエポキシ系基材に配線パターン(図示せず)を施した硬質配線基板からなり、電子部品が前記配線パターンに導通接続(配置)される。電子部品は、例えば指針2を駆動する駆動本体7や、第1の光源51,52や、複数個のIC(Integrated Circuit)チップ41や、抵抗や,コンデンサ等がある。
【0025】
ICチップ41は、薄板矩形のマイクロチップであり、回路基板4の背面側に実装される。ICチップ41は、マイクロコンピュータとして機能するものがあり、CPU(Central Processing Unit),ROM(Read Only Memory),RAM(Random Access Memory)などを有し、車両のECU(Electronic Control Unit)から車速、エンジン回転数、各種車両情報、ナビゲーション情報などを取得し、取得した情報に基づきROMに書き込まれたプログラムに従って所定の演算処理を実行し、駆動本体7,第1の光源51,52,液晶表示器8らを駆動・制御する。
【0026】
ICチップ41は、GDC(Graphics Display Controller:描画制御コントローラ)として機能するものがあり、ICチップ41から出力された制御信号に基づいて、液晶表示器8に画像を表示させる。
【0027】
光源5は、回路基板4の前面側に実装される。光源5は、例えば所定の色の表面実装型のLED(Light Emitting Diode)からなる。光源5は、それぞれ複数の第1の光源51と、第2の光源52と、を有する。第1の光源51は、指標部12aを背後から照明し発光させる。第2の光源52は、指針2を背後から照明し発光させる。また、光源5は図示しないが、複数のインジケータ意匠部12cの背後にもそれぞれ配置されこれらを発光させる。
【0028】
導光体6は、透明又は光拡散材料を含有する透光性の合成樹脂(例えば、アクリル)からなる。導光体6は、アナログ照明室31の文字板1の背後に形成される空間の指標部12aに対応する位置に、文字板1の背後に密着して配置される。導光体6は、ケース部材3に支持される。導光体6は、第1の光源51の光を受光し、文字板1へ照射する。
【0029】
液晶表示器8は、文字板1の透視窓部12bの背後に配置される。液晶表示器8は、液晶表示パネルと、液晶表示パネルを透過照明するバックライトユニットと、液晶表示パネル,バックライトユニットを収納する金属ケースと、を備えている。液晶表示器8は、TFT型カラーLCDセルの前後面に偏光部材を貼着したものであり、走行距離計,燃費消費計,時刻等の各種車両情報を画像にて表示する表示部が設けられている。表示部は、透視窓部12bから視認者に視認可能となる。
【0030】
このように形成されることにより、文字板1とケース部材3とはレーザー溶着により接合される。レーザー光L1は、
図2に示すように、指針2を回動軸71に装着する前(指針2を破線で示す)に、文字板1の前面側から指針開口透過部12dに向けて照射される。すると、レーザー光L1は、スモーク層13,板部材11を透過しケース部材3の対向部33に照射される。すると、ケース部材3は、レーザー光L1を吸収し、発熱し溶融する。そして、対向部33が凝固すると第1の溶着部Z1が形成され、文字板1と対向部33とが接合される。
【0031】
尚、レーザー光L1は、YAGレーザーや、ダイオードレーザーや、ファイバーレーザーや、赤外線レーザー等である。レーザー光L1は、遮光層12に照射されると、遮光層12が焦げる虞があるので、遮光層12と第1の溶着部Z1との間には隙間Gが設けられる。
【0032】
このように、レーザー溶着により文字板1とケース部材3とを接合することにより、両面テープ等で接着する場合に比べ、強い接合強度で文字板1とケース部材3とを接合することができ、且つ、接合工程の時間短縮が可能である。
【0033】
また、このように、遮光層12と同系色の黒色のスモークインキであるスモーク層13により、指針開口透過部12dを目立たなくすることができる。
【0034】
本開示の第2の実施形態を
図4に示す。前述した第1の実施形態と同一部分、均等部箇所については同一符号を付して説明する。
【0035】
本開示では、導光体6は、文字板1の指針開口透過部12dとケース部材3の対向部33との間に配置される延出部61を有する。
【0036】
このように形成されることにより、導光体6とケース部材3とはレーザー溶着により接合される。レーザー光L2は、
図4に示すように、指針2を回動軸71に装着する前(指針2を破線で示す)に、文字板1の前面側から指針開口透過部12dに向けて照射される。延出部61が無い箇所のレーザー光L2は、スモーク層13,板部材11を透過しケース部材3の対向部33に照射される。すると、ケース部材3は、レーザー光L2を吸収し、発熱し溶融する。そして、対向部33が凝固すると第1の溶着部Z1が形成され、文字板1と対向部33とが接合される。
【0037】
延出部61が有る箇所のレーザー光L2は、スモーク層13,板部材11、延出部61を透過しケース部材3の対向部33に照射される。すると、ケース部材3は、レーザー光L2を吸収し、発熱し溶融する。そして、対向部33が凝固すると第2の溶着部Z2が形成され、導光体6と対向部33とが接合される。
【0038】
このように、従来、導光体6をケース部材3に固定する際にケース部材3にフックを設けていたが、レーザー溶着により導光体6とケース部材3とを接合することにより、該フック構造を廃止することができる。
【0039】
尚、本開示の表示装置100を上記した実施形態の構成にて例に挙げて説明したが、本開示はこれに限定されるものではなく、他の構成においても、本開示の要旨を逸脱しない範囲において種々の改良、並びに設計の変更が可能なことは勿論である。
【0040】
例えば、実施形態では、第1の溶着部Z1や第2の溶着部Z2は指針開口部14の周りに形成されていたが、指針開口透過部12dに相当するレーザー光L1,L2の透過する透光領域を、指標部12aの外側に形成してもよい。その場合、指針開口透過部12dをユーザーから視認されないように覆う指針軸部22に相当する覆い部材を、指標部12aを加飾する周知のリング部材等であったり、指標部12a以外を遮蔽する周知の見返し部材等で形成してもよい。
【0041】
また、実施形態では、指針開口透過部12dが複数個所に形成されていたため、途切れたリング状に形成されていたが、指針開口透過部12dが第2の光源52の真上にも形成され略円状に形成される場合は、リング状に形成されてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 文字板(透光部材)
11 板部材
12 遮光層(遮光領域)
12a 指標部
12b 透視窓部
12c インジケータ意匠部
12d 指針開口透過部(透光領域)
13 スモーク層
14 指針開口部
2 指針
21 指針指示部
22 指針軸部(覆い部材)
3 ケース部材
3a 前面
3b 後面
31 アナログ照明室
32 指針照明室
33 対向部
4 回路基板
41 ICチップ
5 光源
51 第1の光源
52 第2の光源
6 導光部材(透光部材)
61 延出部
7 駆動本体
71 回動軸
8 液晶表示パネル
100 表示装置
101 スピードメータ
102 タコメータ
103 デジタル表示部
104 インジケータ