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特許7492680ガラス板の折割装置およびガラス板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】ガラス板の折割装置およびガラス板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 33/033 20060101AFI20240523BHJP
   B26F 3/00 20060101ALI20240523BHJP
   B28D 5/00 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
C03B33/033
B26F3/00 A
B28D5/00 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020200333
(22)【出願日】2020-12-02
(65)【公開番号】P2022088082
(43)【公開日】2022-06-14
【審査請求日】2023-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168550
【弁理士】
【氏名又は名称】友廣 真一
(72)【発明者】
【氏名】柿木 浩
(72)【発明者】
【氏名】茗原 貴裕
【審査官】三村 潤一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-154514(JP,A)
【文献】特開2020-176038(JP,A)
【文献】特開平05-085764(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0011928(US,A1)
【文献】特開2018-090445(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 33/00 - 33/14
B26F 3/00 - 3/16
B28D 5/00 - 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品部と非製品部との境界に沿って一方面側にスクライブ線が形成されたガラス板を保持する保持部材と、
前記保持部材に保持された前記ガラス板を他方面側から押圧することで、前記スクライブ線の形成部に対して曲げ応力を作用させ、前記ガラス板を前記スクライブ線に沿って折り割る折割部材と、
前記折割部材による折り割りに伴って前記製品部と分断された前記非製品部を回収する回収部材とを備え、
前記保持部材が、前記ガラス板の保持のために前記非製品部を押える押え部を有し、
前記回収部材が、前記非製品部の回収のために前記非製品部を吸着する吸着部を有し、
前記押え部と前記吸着部との両者が、前記ガラス板の同一面側から前記非製品部に対して接触するように構成されたガラス板の折割装置であって、
前記スクライブ線が延びる方向から観察したときに、前記押え部と前記非製品部とが接触する第一接触領域の幅と、前記吸着部と前記非製品部とが接触する第二接触領域の幅とが、重複するように構成されていることを特徴とするガラス板の折割装置。
【請求項2】
前記保持部材が複数の前記押え部を有し、
前記回収部材が複数の前記吸着部を有することを特徴とする請求項1に記載のガラス板の折割装置。
【請求項3】
前記スクライブ線が延びる方向から観察したときに、前記第一接触領域と前記第二接触領域とのうち、相対的に幅広な領域の幅内に、相対的に幅狭な領域の全幅が収まっていることを特徴とする請求項1又は2に記載のガラス板の折割装置。
【請求項4】
前記スクライブ線が延びる方向に沿って、前記第一接触領域と前記第二接触領域とが交互に並ぶことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のガラス板の折割装置。
【請求項5】
製品部と非製品部との境界に沿って一方面側にスクライブ線が形成されたガラス板を保持する保持工程と、
前記保持工程の実行中に、前記ガラス板を他方面側から押圧することで、前記スクライブ線の形成部に対して曲げ応力を作用させ、前記ガラス板を前記スクライブ線に沿って折り割る折割工程と、
前記折割工程の実行後に、折り割りに伴って前記製品部と分断された前記非製品部を回収する回収工程とを含み、
前記保持工程では、前記ガラス板の保持のために前記非製品部を押え、
前記回収工程では、前記非製品部の回収のために前記非製品部を吸着し、
前記保持工程での前記非製品部の押え、及び、前記回収工程での前記非製品部の吸着を、前記非製品部の同一面に対して行うガラス板の製造方法であって、
前記スクライブ線が延びる方向から観察したときに、前記非製品部のうちの前記保持工程にて押えられる領域の幅と、前記非製品部のうちの前記回収工程にて吸着される領域の幅とが、重複するようにしたことを特徴とするガラス板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガラス板の折割装置およびガラス板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、ガラス板の製造工程は、製品ガラス板の元となるガラス板から製品には不要となる部位(以下、非製品部と表記)を分断した上で、分断後の非製品部を廃棄する工程を含む場合が多い。同工程を実行する形態の一例としては、特許文献1に開示されるような形態が挙げられる。
【0003】
同文献に開示された形態では、まず、後に製品ガラス板となる部位(以下、製品部と表記)と非製品部との境界に沿ってスクライブ線が形成されたガラス板について、当該ガラス板をスクライブ線に沿って折り割る。その後、折り割りに伴って製品部と分断された非製品部を廃棄するために、当該非製品部を回収する。
【0004】
上記の形態の実行にあたっては、図12及び図13に示すような折割装置100が使用される。なお、図12はガラス板Gの折り割り前の状態を示し、図13は折り割り後の状態を示している。折割装置100は、製品部Gaと非製品部Gbとの境界に沿って上面Gs側にスクライブ線Sが形成されたガラス板Gを保持する保持部材200と、保持部材200に保持されたガラス板Gを下面Gt側から押圧することで、スクライブ線Sの形成部に対して曲げ応力を作用させ、ガラス板Gをスクライブ線Sに沿って折り割る折割部材300と、折割部材300による折り割りに伴って製品部Gaと分断された非製品部Gbを回収する回収部材400とを備えている。
【0005】
保持部材200は、ガラス板Gの製品部Gaおよび非製品部Gbをそれぞれ下面Gt側から支持する第一載置台500および第二載置台600と、製品部Gaおよび非製品部Gbをそれぞれ上面Gs側から押える第一押え部材700および第二押え部材800とを備えている。折割部材300は、ガラス板Gの厚み方向(Z方向)に沿った移動が可能であると共に、両載置台500,600の相互間でガラス板Gの押圧が可能である。回収部材400は、分断後の非製品部Gbを回収するために当該非製品部Gbの上面Gsを吸着する吸着パッド900を備えている。
【0006】
第一押え部材700および第二押え部材800は、それぞれスクライブ線Sが延びる方向(Y方向)に沿って長尺に形成されている。吸着パッド900は、回収部材400に複数が備わっており、複数の吸着パッド900が、スクライブ線Sが延びる方向に沿って並べられている。
【0007】
第二押え部材800と各吸着パッド900は、いずれもガラス板Gの非製品部Gbに対して上面Gs側から接触するが、両者800,900の間では、非製品部Gbと接触する領域の位置が異なっている。詳述すると、スクライブ線Sが延びる方向から観察したときに(Y方向から観察したときに)、第二押え部材800と非製品部Gbとが接触する接触領域A1(図12に太線で表示)と、吸着パッド900と非製品部Gbとが接触する接触領域A2(図13に太線で表示)とが、非製品部Gbの幅方向(X方向)にて横並びとなるように位置している。なお、接触領域A2は、接触領域A1に比べてスクライブ線S寄り(製品部Gaと非製品部Gbとの境界寄り)に位置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2018-154514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記の折割装置100を使用した場合には、ガラス板Gにおける非製品部Gbの幅(X方向に沿った寸法)が狭いときに、ガラス板Gの折割不良が発生しやすいという問題があった。これは、上述した接触領域A1と接触領域A2とが非製品部Gbの幅方向にて横並びに位置する関係上、非製品部Gbの幅が狭い場合には、非製品部Gb上にて接触領域A1と接触領域A2との双方を確保することが困難なことに起因している。
【0010】
以上の事情に鑑みて解決すべき技術的課題は、折り割りによりガラス板から非製品部を分断するに際し、非製品部の幅が狭い場合であっても、折割不良の発生を防止できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するためのガラス板の折割装置は、製品部と非製品部との境界に沿って一方面側にスクライブ線が形成されたガラス板を保持する保持部材と、保持部材に保持されたガラス板を他方面側から押圧することで、スクライブ線の形成部に対して曲げ応力を作用させ、ガラス板をスクライブ線に沿って折り割る折割部材と、折割部材による折り割りに伴って製品部と分断された非製品部を回収する回収部材とを備え、保持部材が、ガラス板の保持のために非製品部を押える押え部を有し、回収部材が、非製品部の回収のために非製品部を吸着する吸着部を有し、押え部と吸着部との両者が、ガラス板の同一面側から非製品部に対して接触するように構成されたガラス板の折割装置であって、スクライブ線が延びる方向から観察したときに、押え部と非製品部とが接触する第一接触領域の幅と、吸着部と非製品部とが接触する第二接触領域の幅とが、重複するように構成されていることを特徴とする。
【0012】
本装置は、スクライブ線が延びる方向から観察したときに、押え部と非製品部とが接触する第一接触領域の幅と、吸着部と非製品部とが接触する第二接触領域の幅とが、重複するように構成されている。このように両接触領域の幅が重複することで、非製品部の幅が狭い場合であっても、非製品部上にて第一接触領域と第二接触領域との双方を容易に確保することが可能となる。その結果、折割不良の発生を防止することができる。さらに、折割不良の発生を防止できることから、ガラス板の生産効率の低下についても回避することが可能である。
【0013】
上記の構成では、保持部材が複数の押え部を有し、回収部材が複数の吸着部を有することが好ましい。
【0014】
このようにすれば、保持部材が複数の押え部を有することにより、例えば、保持部材が長尺(スクライブ線が延びる方向に沿って長尺)な単一の押え部を有するような場合と比較して、押え部に掛かるコストを削減することが可能となる。また、押え部と吸着部とがそれぞれ複数存在することで、例えば、特定の押え部や吸着部に不具合が生じた場合であっても、その押え部や吸着部のみを交換すれば足りる。そのため、設備コストやメンテナンスコストについても削減することができる。
【0015】
上記の構成では、スクライブ線が延びる方向から観察したときに、第一接触領域と第二接触領域とのうち、相対的に幅広な領域の幅内に、相対的に幅狭な領域の全幅が収まっていることが好ましい。
【0016】
このようにすれば、相対的に幅広な領域の幅内に、相対的に幅狭な領域の全幅が収まることから、非製品部の幅がより狭い場合であっても、折割不良の発生を防止することが可能となる。
【0017】
上記の構成では、スクライブ線が延びる方向に沿って、第一接触領域と第二接触領域とが交互に並ぶことが好ましい。
【0018】
このようにすれば、押え部による非製品部の押え、及び、吸着部による非製品部の吸着を安定させることができる。
【0019】
また、上記の課題を解決するためのガラス板の製造方法は、製品部と非製品部との境界に沿って一方面側にスクライブ線が形成されたガラス板を保持する保持工程と、保持工程の実行中に、ガラス板を他方面側から押圧することで、スクライブ線の形成部に対して曲げ応力を作用させ、ガラス板をスクライブ線に沿って折り割る折割工程と、折割工程の実行後に、折り割りに伴って製品部と分断された非製品部を回収する回収工程とを含み、保持工程では、ガラス板の保持のために非製品部を押え、回収工程では、非製品部の回収のために非製品部を吸着し、保持工程での非製品部の押え、及び、回収工程での非製品部の吸着を、非製品部の同一面に対して行うガラス板の製造方法であって、スクライブ線が延びる方向から観察したときに、非製品部のうちの保持工程にて押えられる領域の幅と、非製品部のうちの回収工程にて吸着される領域の幅とが、重複するようにしたことを特徴とする。
【0020】
本方法によれば、上記のガラス板の折割装置について既述の作用・効果と同一の作用・効果を得ることが可能である。
【発明の効果】
【0021】
本開示に係るガラス板の折割装置およびガラス板の製造方法によれば、折り割りによりガラス板から非製品部を分断するに際し、非製品部の幅が狭い場合であっても、折割不良の発生を防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】ガラス板の折割装置を示す側面図である。
図2】ガラス板の折割装置を示す正面図である。
図3】ガラス板の折割装置を示す正面図である。
図4】第一接触領域~第三接触領域を示す平面図である。
図5】ガラス板の製造方法を示す側面図である。
図6】ガラス板の製造方法を示す側面図である。
図7】ガラス板の製造方法を示す側面図である。
図8】ガラス板の製造方法を示す側面図である。
図9】ガラス板の製造方法を示す側面図である。
図10】ガラス板の折割装置の変形例において第二押え部および吸着パッドを下から視た状態を示す底面図である。
図11】変形例における第一接触領域~第三接触領域を示す平面図である。
図12】従来のガラス板の折割装置を示す側面図である。
図13】従来のガラス板の折割装置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、実施形態に係るガラス板の折割装置およびガラス板の製造方法について、添付の図面を参照しながら説明する。なお、実施形態の説明で参照する各図面に表示したX方向、Y方向、及びZ方向は、互いに直交する方向である。
【0024】
<ガラス板の折割装置>
図1に示したガラス板の折割装置1(以下、単に折割装置1と表記)は、製品部Gaと非製品部Gbとの境界に沿ってスクライブ線Sが形成されたガラス板Gを折り割ることで、両部Ga,Gbを分断すると共に、分断後の非製品部Gbを廃棄のために回収する装置である(図6及び図9を参照)。なお、製品部Gaは、後に製品ガラス板となる部位であり、非製品部Gbは、廃棄される部位である。
【0025】
折割装置1は、上面Gs側にスクライブ線Sが形成されたガラス板Gを保持する保持部材2と、保持部材2に保持されたガラス板Gを下面Gt側から押圧してスクライブ線Sに沿って折り割る折割部材3と、折割部材3による折り割りに伴って製品部Gaと分断された非製品部Gbを回収する回収部材4とを備えている。
【0026】
折り割りの対象となるガラス板Gは矩形をなし、スクライブ線Sはガラス板Gがなす矩形の一辺と平行に直線状に形成されている(本実施形態ではY方向に沿って形成)。ガラス板Gの厚みは、例えば2mm以下であり、好ましくは0.2mm~0.7mmである。ガラス板Gの非製品部Gbの幅(X方向に沿った寸法)は、例えば45mm以下であり、好ましくは35mm以下であり、より好ましくは25mm以下である。一方、ガラス板Gの非製品部Gbの幅が狭すぎると、折り割りが困難となることから、下限は15mm以上とすることが好ましい。
【0027】
保持部材2は、ガラス板Gの製品部Gaおよび非製品部Gbをそれぞれ下面Gt側から支持する第一支持部材5および第二支持部材6と、製品部Gaおよび非製品部Gbをそれぞれ上面Gs側から押える第一押え部材7および第二押え部材8とを備えている。保持部材2は、第一支持部材5と第一押え部材7とで製品部Gaを厚み方向に挟むと共に、第二支持部材6と第二押え部材8とで非製品部Gbを厚み方向に挟むことで、ガラス板Gを平置き姿勢で保持することが可能である(図5を参照)。
【0028】
ここで、第一支持部材5および第二支持部材6としては、図1に示した支持台状の部材に限らず、例えばコンベア(ベルトコンベアやローラーコンベア等)を使用しても構わない。具体例を挙げると、搬送方向をX方向とし、第二支持部材6を相対的に上流側のコンベアとし、第一支持部材5を相対的に下流側のコンベアとしても構わない。この場合、両コンベアにより、スクライブ線Sが折割部材3の上方に位置するようにガラス板Gが折割装置1に搬入されると共に、下流側のコンベアにより、分断後の製品部Gaが折割装置1から搬出される。或いは、搬送方向をX方向とし、第二支持部材6を相対的に下流側のコンベアとし、第一支持部材5を相対的に上流側のコンベアとしても構わない。或いは、搬送方向をY方向としても構わない。
【0029】
第一押え部材7および第二押え部材8は、図1に矢印で示すように、それぞれ上下方向(Z方向)に沿って移動が可能となっている。そして、両押え部材7,8は、下方への移動に伴ってそれぞれ製品部Gaおよび非製品部Gbを押える構成となっている。
【0030】
第一押え部材7は、製品部Gaの上面Gsに接触して当該製品部Gaを直接に押える部位である第一押え部7aを有する。同様にして、第二押え部材8は、非製品部Gbの上面Gsに接触して当該非製品部Gbを直接に押える部位である第二押え部8aを有する。第一押え部7aおよび第二押え部8aの各々は、中心線がY方向に延びた円柱状に形成されている。勿論この限りではなく、本実施形態の変形例として、例えば両押え部7a,8aが四角柱状に形成されていてもよい。第一押え部7aおよび第二押え部8aは弾性部材で構成され、外力により弾性変形が可能である。第一押え部7aおよび第二押え部8aの材質としては、例えばゴム(天然ゴム、合成ゴム等)やスポンジを採用できる。また、本実施形態の変形例として、第一押え部7aおよび第二押え部8aをブラシで構成してもよい。
【0031】
回収部材4は、分断後の非製品部Gbの上面Gsに接触して当該非製品部Gbを吸着する吸着部としての吸着パッド4aを有する。この吸着パッド4aの吸着面は円形をなしている。勿論この限りではなく、本実施形態の変形例として、吸着面は四角形、多角形、楕円形等であってもよい。吸着パッド4aは、図1に矢印で示すように、上下方向に対して傾斜した方向(以下、傾斜方向と表記)に沿って移動が可能となっている。そして、吸着パッド4aは、当該傾斜方向に沿って下方へ移動したのち、分断後の非製品部Gbを吸着する構成となっている。なお、当該傾斜方向と上下方向とがなす角度は、1°~30°が好ましく、1.5°~15°がより好ましく、2°~10°が最も好ましい。吸着パッド4aの非製品部Gbと接触する部位の材質としては、例えばウレタンを採用できる。
【0032】
なお、上述のごとく傾斜方向に沿って吸着パッド4aを移動させるのは、下記の理由からである。分断後の非製品部Gbは、折割部材3により端部(分断後の製品部Gaと隣接する端部)が持ち上げられた状態となる(図7を参照)。そして、この状態にある非製品部Gbを吸着パッド4aで吸着することになる。このため、持ち上げに伴って水平面に対して傾いた非製品部Gbの上面Gsと、吸着パッド4aの吸着面とを可及的に平行にした状態で、吸着パッド4aを非製品部Gbに接触させれば、円滑な吸着に有利となるからである。
【0033】
ここで、本実施形態の変形例として、吸着パッド4aは、必ずしも上記の傾斜方向に沿って移動が可能でなくてもよい。例えば、吸着パッド4aは、上下方向に沿って移動が可能であってもよい。
【0034】
上記の第二押え部材8および吸着パッド4aの両者は、共通の移動機構9に搭載されている。移動機構9は、XZ平面に沿って自在に移動することが可能となっている。移動機構9は、分断後の非製品部Gbを吸着した吸着パッド4aを介して、当該非製品部Gbを廃棄用のコンベア(図示省略)まで運ぶ機能を有する。
【0035】
折割部材3は、Y方向に沿って長尺に形成されると共に、第一支持部材5と第二支持部材6との相互間に配置されている。折割部材3は、図1に矢印で示すように、上下方向に沿って移動が可能となっている。そして、折割部材3は、上方への移動に伴ってガラス板Gにおけるスクライブ線Sの形成部に対して曲げ応力を作用させ、ガラス板Gを折り割る構成となっている。
【0036】
折割部材3は、ガラス板Gの下面Gtに接触して当該ガラス板Gを直接に押圧する押圧面と、押圧面の両側で傾斜した一対の傾斜面とを有する。押圧面は、スクライブ線Sを挟んで製品部Gaと非製品部Gbとに跨った状態でガラス板Gの下面Gtと接触する。押圧面の幅(X方向に沿った寸法)は、3mm~15mmであることが好ましい。また、押圧面と傾斜面とがなす角度は、30°~50°であることが好ましい。
【0037】
図2及び図3に示すように、第二押え部8aおよび吸着パッド4aは、それぞれ複数が備わっており、複数の第二押え部8aと複数の吸着パッド4aとがY方向に沿って交互に並べられている。第二押え部8aと吸着パッド4aとの両者は、相互に独立して移動(上下動)が可能となっている。複数の第二押え部8aの相互間では、Y方向に沿った長さが不均一になっているが、均一であってもよい。これにより、隣り合う吸着パッド4a,4a同士の間隔もまた不均一になっているが、均一であってもよい。
【0038】
なお、上述のごとく複数の第二押え部8aの相互間でY方向に沿った長さを不均一にしているのは、下記の目的からである。折り割りの対象となるガラス板Gは、種々の規格サイズ(例えば、G8サイズ、G8.5サイズ等)に対応した製品部Gaを有する。そして、折り割りの対象となるガラス板Gがいずれの規格サイズに対応した製品部Gaを有する場合でも、当該ガラス板GのY方向における端部に対しては、吸着パッド4aではなく、第二押え部8aが接触するようにする目的である。
【0039】
ここで、上述のごとく第二押え部8aは複数が備わっている一方で、第一押え部7aはY方向に沿って長尺に形成された単一の部材でなる。勿論この限りではなく、本実施形態の変形例として、第一押え部7aが複数の部材からなってもよい。
【0040】
図4は、ガラス板Gを上方から平面視した状態を示す。同図に斜線を施して示す各領域は、第二押え部8aが非製品部Gbを押える際に両者8a,Gbが接触する第一接触領域A1、吸着パッド4aが非製品部Gbを吸着する際に両者4a,Gbが接触する第二接触領域A2、及び、第一押え部7aが製品部Gaを押える際に両者7a,Gaが接触する第三接触領域A3である。第一接触領域A1~第三接触領域A3は、いずれもガラス板Gの上面Gs上に存する領域である。
【0041】
上述した複数の第二押え部8aと複数の吸着パッド4aとの並びから、第一接触領域A1と第二接触領域A2とは、スクライブ線Sが延びる方向(Y方向)に沿って交互に並んだ配置となる。一方、上述した第一押え部7aの構成から、第三接触領域A3は、スクライブ線Sが延びる方向に沿って長尺な単一の領域となる。
【0042】
第一接触領域A1は略矩形の領域である。これは、第二押え部8aが非製品部Gbを押える際に、第二押え部8aがなす円柱の下部が非製品部Gbの上面Gsとの接触に伴って平坦に変形(弾性変形)するためである。同様の理由から、第三接触領域A3についても略矩形の領域である。一方、第二接触領域A2は略円形の領域である。これは、吸着パッド4aの吸着面が円形であることによる。
【0043】
スクライブ線Sが延びる方向から観察したときに、第二接触領域A2の幅W2は、第一接触領域A1の幅W1よりも幅広となっている。そして、第二接触領域A2の幅W2内に、第一接触領域A1の全幅(幅W1)が収まっている。本条件が満たされるように、第二押え部8aおよび吸着パッド4aのサイズや配置が調節されている。
【0044】
ここで、本実施形態の変形例として、複数の第二押え部8aと複数の吸着パッド4aとの並びにおいて、第二押え部8aと吸着パッド4aとは交互に並んでいなくともよい。つまり、並びの一部で第二押え部8aが連続してもよいし、吸着パッド4aが連続してもよい。さらに、第一接触領域A1の幅W1と第二接触領域A2の幅W2との大小関係は、本実施形態とは逆であってもよいし、幅W1と幅W2とが等しくてもよい。加えて、両接触領域A1,A2のうちの一方の領域の幅内に、他方の領域の全幅が収まることは必須ではなく、両接触領域A1,A2の少なくとも一部がX方向で重複していればよい。
【0045】
<ガラス板の製造方法>
以下、上記の折割装置1を使用したガラス板の製造方法について説明する。本製造方法は、保持工程P1(図5)と、折割工程P2(図6)と、回収工程P3(図7図9)とを含んでいる。
【0046】
図5に示すように、保持工程P1では、スクライブ線Sが形成されたガラス板Gを保持部材2により保持する。具体的には、第一押え部材7および第二押え部材8をそれぞれ下方に移動させるのに伴って、第一支持部材5および第二支持部材6により下面Gtを支持された状態にあるガラス板Gの製品部Gaおよび非製品部Gbをそれぞれ上面Gs側から押える。これにより、ガラス板Gを平置き姿勢で保持する。なお、スクライブ線Sは、保持工程の実行前に、ホイールカッターやレーザー照射等によりガラス板Gに形成したものである。
【0047】
図6に示すように、折割工程P2では、ガラス板Gを下面Gt側から押圧してスクライブ線Sに沿って折り割る。具体的には、ガラス板Gを保持部材2で保持した状態の下、折割部材3を上方に移動させるのに伴って、ガラス板Gにおけるスクライブ線Sの形成部を持ち上げる。これにより、スクライブ線Sの形成部は上面Gs側が凸となるように変形し、変形に伴って当該形成部に曲げ応力が作用する。この曲げ応力の作用により、スクライブ線Sに含まれるメディアンクラックがガラス板Gの厚み方向に進展し、ガラス板Gが製品部Gaと非製品部Gbとに分断される。
【0048】
図7に示すように、回収工程P3では、まず、分断後の非製品部Gbを廃棄のために回収する準備として、吸着パッド4aにより分断後の非製品部Gbを吸着する。具体的には、吸着パッド4aを下方に移動させ、吸着パッド4aの吸着面を非製品部Gbの上面Gsに接触させた後、負圧を利用して吸着パッド4aに非製品部Gbを吸着させる。なお、吸着パッド4aによる非製品部Gbの吸着は、折割部材3による非製品部Gbの端部(製品部Gaと隣接する端部)の持ち上げ、及び、第二押え部材8による非製品部Gbの押えを維持した状態で行うことが好ましい。これは、分断後の製品部Gaと非製品部Gbとの接触に起因して、製品部Gaの品質が低下することを防止する目的である。このとき、吸着パッド4aに吸着される非製品部Gbは、その上面Gsが傾いた状態となっている。
【0049】
上述した吸着パッド4aによる非製品部Gbの吸着が完了すると、次に、図8に示すように、第二押え部材8を上方に移動させるのに伴って、当該第二押え部材8による非製品部Gbの押えを解除する。なお、この押えを解除する際においても、折割部材3による非製品部Gbの端部の持ち上げは維持させることが好ましい。
【0050】
上述した第二押え部材8による非製品部Gbの押えの解除が完了すると、次に、図9に示すように、移動機構9を上方に移動させるのに伴って、分断後の非製品部Gbを回収する。回収後の非製品部Gbは、移動機構9により廃棄用のコンベアまで運んだ後、当該コンベアにより廃棄場所へと搬送して廃棄する。一方、分断後の製品部Gaは、洗浄や検査等を行った上で製品ガラス板とする。以上により、本製造方法が完了する。
【0051】
以下、上記の折割装置1および製造方法による主たる作用・効果について説明する。
【0052】
上記の折割装置1および製造方法では、スクライブ線Sが延びる方向(Y方向)から観察したときに、第二押え部8aと非製品部Gbとが接触する第一接触領域A1の幅W1と、吸着パッド4aと非製品部Gbとが接触する第二接触領域A2の幅W2とが重複する。このように両接触領域A1,A2の幅W1,W2が重複することで、非製品部Gbの幅(X方向に沿った寸法)が狭い場合であっても、非製品部Gb上にて第一接触領域A1と第二接触領域A2との双方を容易に確保することが可能となる。その結果、ガラス板Gの折割不良の発生を防止できる。
【0053】
ここで、上記の実施形態で説明した折割装置1および製造方法には、図10及び図11に示すような変形例を適用することも可能である。図10は、第二押え部8aおよび吸着パッド4aを下から視た状態を示す底面図である。同図に示すように、上記の実施形態における複数の第二押え部8aと複数の吸着パッド4aとに代えて、Y方向に沿って長尺に形成された単一の第二押え部8aと複数の吸着パッド4aとを用いてもよい。同変形例では、第二押え部8aに吸着パッド4aの数と同数の貫通孔8aa(第二押え部8aを上下に貫通する貫通孔)が形成されている。Z方向から観察したときに、貫通孔8aaの開口面積は吸着パッド4aよりも一回り大きくなっている。この貫通孔8aa内を吸着パッド4aが上下動できる構成となっている。同変形例では、図11に示すように、第一接触領域A1の幅W1と第二接触領域A2の幅W2との大小関係が上記の実施形態とは逆(幅W1>幅W2)になると共に、第一接触領域A1の幅W1内に、第二接触領域A2の全幅(幅W2)が収まっている。
【符号の説明】
【0054】
1 折割装置
2 保持部材
3 折割部材
4 回収部材
4a 吸着パッド
8a 第二押え部
A1 第一接触領域
A2 第二接触領域
G ガラス板
Ga 製品部
Gb 非製品部
Gs 上面
Gt 下面
P1 保持工程
P2 折割工程
P3 回収工程
S スクライブ線
W1 第一接触領域の幅
W2 第二接触領域の幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13