(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】青果物のカビ発生の抑制方法
(51)【国際特許分類】
A23L 3/28 20060101AFI20240523BHJP
A23B 7/00 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
A23L3/28
A23B7/00
(21)【出願番号】P 2019225440
(22)【出願日】2019-12-13
【審査請求日】2022-10-26
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成31年3月23日、園芸学研究 第18巻 別冊1-2019-(園芸学会平成31年度春季大会研究発表)、一般社団法人園芸学会 平成31年度春季大会、一般社団法人園芸学会 令和元年9月11日、2019年度(第52回)照明学会全国大会講演論文集、一般社団法人照明学会2019年度(第52回)照明学会全国大会、一般社団法人照明学会 令和元年9月15日、園芸学研究 第18巻 別冊2-2019-(園芸学会令和元年度秋季大会研究発表およびシンポジウム講演要旨)、一般社団法人園芸学会 令和元年度秋季大会、一般社団法人園芸学会
(73)【特許権者】
【識別番号】504203572
【氏名又は名称】国立大学法人茨城大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000128496
【氏名又は名称】株式会社オーク製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【氏名又は名称】長山 弘典
(74)【代理人】
【氏名又は名称】森田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】望月 佑哉
(72)【発明者】
【氏名】高野 友二郎
(72)【発明者】
【氏名】芹澤 和泉
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-283909(JP,A)
【文献】特開2016-036772(JP,A)
【文献】特開2008-142593(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A23B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
223nm~233nmに第一のピーク波長を有し、255nm~265nmに第二のピーク波長を有し、そして第二ピーク波長の相対強度が第一ピーク波長の相対強度より低い紫外線を青果物に照射することを特徴とするカビ発生の抑制方法。
【請求項2】
前記紫外線を放射する光源が発光管内面に蛍光体が塗布されたエキシマランプである、請求項1に記載のカビ発生の抑制方法。
【請求項3】
前記発光管の封入ガスがXeである、請求項2に記載のカビ発生の抑制方法。
【請求項4】
223nm~233nmに第一のピーク波長を有する紫外線を、先端側を上方に向けたイチゴに、上方の先端側から照射する、カビ発生の抑制方法。
【請求項5】
223nm~233nmに第一のピーク波長を有する紫外線を、青果物の先端側から照射することを特徴とするカビ発生の抑制方法(但し、搬送コンベアで水平軸まわりに回転しながらの照射を除く)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、青果物のカビ発生の抑制方法に関する。本発明によれば、青果物におけるカビの発生を効率的に抑制することができる。
【背景技術】
【0002】
最近、日本から海外への青果物の輸出が急増している。青果物の輸出においては、鮮度保持の目的で、冷却装置及び鮮度保持フィルムなどの開発が進んでいる。鮮度保持技術の向上に伴って、高湿度で保存されることにより、カビの発生が新たな問題となっている。
例えば、イチゴのカビの発生を抑制するために、波長260~290nmの紫外線を照射すること(特許文献1)、又は電子線を照射すること(特許文献2)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-153456号公報
【文献】特開2016-36257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1及び2に記載の殺菌方法によるカビの発生の抑制は、充分ではなかった。
従って、本発明の目的は、青果物における効果的なカビの発生の抑制方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、青果物における効果的なカビの発生の抑制方法について、鋭意研究した結果、驚くべきことに、223~233nmにピーク波長を有する紫外線を青果物に照射することによって、効果的にカビの発生を抑制できることを見出した。
本発明は、こうした知見に基づくものである。
従って、本発明は、
[1]223nm~233nmに第一のピーク波長を有する紫外線を青果物に照射することを特徴とするカビ発生の抑制方法、
[2]前記紫外線が255nm~265nmに第二のピーク波長を有し、第二ピーク波長の相対強度が第一ピーク波長の相対強度より低い、[1]に記載のカビ発生の抑制方法、
[3]前記紫外線を放射する光源が発光管内面に蛍光体が塗布されたエキシマランプである、[1]又は[2]に記載のカビ発生の抑制方法、
[4]前記発光管の封入ガスがXeである、[3]に記載のカビ発生の抑制方法、
[5]前記青果物の先端側から紫外線を照射する、[1]~[4]のいずれかに記載のカビ発生の抑制方法、及び
[6]前記青果物がイチゴである、[1]~[5]のいずれかに記載のカビ発生の抑制方法、
に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の青果物のカビ発生の抑制方法によれば、効果的にイチゴなどの青果物のカビの発生を抑制することができる。本発明の方法によれば、青果物の収穫後の貯蔵期間を延長させることができる。更に、輸送時におけるカビの発生を抑えることで、青果物の商品価値の低下を防ぐことができる。本発明のカビ発生の抑制方法において、従来の260nm程度の波長を用いる殺菌法と比較して、少ない照射線量によってカビを効率的に死滅させることができる。
また、本発明のカビ発生の抑制方法においては、従来カビの殺菌に用いられていた水銀灯に代えて、エキシマランプを用いることができる。従って、水銀灯に含まれる水銀による環境汚染を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】蛍光ランプA、蛍光ランプB、及び蛍光ランプCの蛍光強度を示したグラフである。
【
図2】蛍光ランプA、蛍光ランプB、及び蛍光ランプCの大腸菌に対する殺菌効果を示したグラフである。
【
図3】蛍光ランプA、蛍光ランプB、及び蛍光ランプCの大腸菌に対するD値を示したグラフである。
【
図4】Aspergillus brasiliensis及びPenicillium sp.に対する蛍光ランプCの殺菌効果を示したグラフである。
【
図5】イチゴに紫外線を照射する場合の、イチゴの並べ方を示した写真であり、イチゴの果実の先端を上側にして、ヘタを下側にして並べたものである。
【
図7】イチゴに紫外線を照射した場合の、カビ発生個体数(A)及びイチゴに付着したカビのコロニー数(B)を計数したグラフである。
【
図8】イチゴのカビの発生部位を示した図(A)及びグラフ(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のカビ発生の抑制方法は、223~233nmに第一のピーク波長を有する紫外線を青果物に照射する。本発明のカビの発生の抑制方法は、限定されるものではないが、好ましくは前記紫外線が255~265nmに第二のピーク波長を有し、第二ピーク波長の相対強度が第一ピーク波長の相対強度がより低い。
【0009】
《ピーク波長》
本発明のカビ発生の抑制方法に使用される紫外線は、223~233nmに第一ピーク波長を有する。第一ピーク波長は、好ましくは224~232nmであり、より好ましくは、225~231nmであり、更に好ましくは226~230nmであり、更に好ましくは227~229nmであり、最も好ましくは約228nmである。第一ピーク波長が前記範囲であることにより、効率的にカビの発生を抑制することができる。
本発明のカビ発生の抑制方法に使用される紫外線は、更に255~265nmに第二のピーク波長を有してもよい。第二ピーク波長は、好ましくは256~264nmであり、より好ましくは257~263nmであり、更に好ましくは258~262nmであり、更に好ましくは259~261nmであり、最も好ましくは約260nmである。用いる紫外線が、第一ピーク波長に加えて、更に前記範囲の第二ピーク波長を有することにより、更に効果的にカビの発生を抑制することができる。
【0010】
前記第二ピーク波長は、限定されるものではないが、好ましくは前記第一ピーク波長の相対強度よりも低い。限定されるものではないが、前記第二ピーク波長の相対強度は、第一ピーク波長の相対強度の好ましくは0.9以下であり、より好ましくは0.8以下であり、更に好ましくは0.7以下であり、最も好ましくは0.6以下である。なお、本明細書における相対強度は、紫外線の最も高いピーク波長の強度を1とした場合の各波長の強度の割合を示すものである。
【0011】
《エキシマランプ》
本発明の紫外線の光源は、特に限定されるものではないが、エキシマランプが挙げられる。エキシマランプは、限定されるものではないが、放電ガスとしてXeガスが充填され、発光管内面に蛍光体が塗布されたエキシマランプが好ましい。
蛍光体を用いることにより、限定されるものではないが、エキシマランプは223~233nmに第一ピーク波長を有する紫外線を放射することができる。
【0012】
エキシマランプに用いられる放電ガスは、前記蛍光体から蛍光を発するための励起光を放射する。従って、223~233nmの第一ピーク波長より低い波長を発生するエキシマ分子である限りにおいて、特に限定されるものではないが、例えばXe(172nm)、又はKrCl(222nm)が挙げられる。223~233nmより低い波長を励起光として用い、前記蛍光体に照射することにより、223~233nmの第一ピーク波長を発することができる。更に、255~265nmの第二のピーク波長を発生させることもできる。
【0013】
本発明のカビ発生の抑制方法における照射線量(紫外線量)は、本発明の効果が得られる限りにおいて特に限定されるものではないが、好ましくは1~1000mJ/cm2であり、より好ましくは10~800mJ/cm2であり、更に好ましくは50~400mJ/cm2であり、更に好ましくは100~200mJ/cm2である。前記範囲であることより、様々な種類のカビの発生を抑制することができる。例えば、実施例に示すように、アスペルギルス属のカビの1種であるAspergillus brasiliensisに対する本発明の照射線量のD値は355mJ/cm2であり、ミカン果実に発生したカビから単離されたPenicillium sp. に対する本発明の照射線量のD値は41mJ/cm2である。従って、前記の範囲の照射線量によって、多くのカビの発生を抑制できると考えられる。なお、本明細書において「D値」とは、それぞれのカビ(微生物)の生存率が1/10となるのに要する照射線量を意味する。
【0014】
本発明のカビ発生の抑制方法における照射時間は、紫外線の照度によって異なるため、特に限定されるものではない。具体的には、照度(mW/cm2)が低い場合には、照射時間を長くすることにより、カビを十分に死滅させることのできる照射線量を得ることができる。また照度(mW/cm2)が高い場合は、短い照射時間によりカビを十分に死滅させることのできる照射線量を得ることができる。しかしながら、効率的にカビを殺菌するためには、照射時間の下限は好ましくは1秒以上であり、より好ましくは10秒以上であり、更に好ましくは30条以上であり、最も好ましくは1分以上である。照射時間の上限も限定されるものではないが、好ましくは60分以下であり、より好ましくは30分以下であり、更に好ましくは10分以下であり、最も好ましくは5分以下である。前記照射時間の上限と下限とは、任意に組み合わせることができる。
また、本発明のカビ発生の抑制方法における紫外線の照度(mW/cm2)も、本発明の効果が得られる限りにおいて、特に限定されるものではないが、照射時間を考慮すると、照度の下限は好ましくは0.01mW/cm2以上であり、より好ましくは0.1mW/cm2以上であり、更に好ましくは0.5mW/cm2以上である。照度の上限も限定されるものではないが、好ましくは100mW/cm2以下であり、より好ましくは50mW/cm2以下であり、更に好ましくは10mW/cm2以下である。前記照度の上限と下限とは、任意に組み合わせることができる。
なお、前記照射線量は、下記の式によって計算することができる。
[式1]
照射線量(mJ/cm2)=照度(mW/cm2)×時間(sec)
また、本発明のカビ発生の抑制方法における照射距離も、前記の照射線量が得られる限りにおいて、特に限定されるものではないが、例えば、10~100cmであり、好ましくは15~50cmであり、より好ましくは20~40cmである。
【0015】
《青果物》
カビ抑制の対象となる青果物は、カビが発生する可能性のある青果物であれば、特に限定されない。例えば、青果物としては、イチゴ、キウイ、ビワ、モモ、サクランボ、ブドウ、マンゴー、ブルーベリー、バナナ、リンゴ、クリ、柑橘類(例えば、レモン、ライム、シークワサー、スダチ、ユズ、ダイダイ、カボス、温州ミカン、イヨカン、キンカン、ポンカン、あま夏、ブンタン、八朔、又は日向夏)、梨、トマト、柿、ナス、キュウリ、ピーマン、シシトウ、タマネギ、長ネギが挙げられる。
【0016】
《カビ》
本発明のカビ発生の抑制方法は、ほとんどのカビの発生を抑制できる。カビとしては灰色カビ病(ボトリティス・シネレア)、黒カビ病、糸状菌が挙げられる。
【0017】
《照射部位》
本発明のカビ発生の抑制方法において、対象物が果実である場合、限定されるものではないが、好ましくは果実の先端側から紫外線を照射する。例えば、イチゴの場合、
図5に示すように、果実の先端側を上方に向けて、上方の先端側から紫外線を照射することが好ましい。先端側から紫外線を照射することにより、果実のヘタ側から紫外線を照射した場合と比較して、効率的にカビ発生を抑制することができる。
本発明者らは、果実の先端側から紫外線を照射したほうが、効率的にカビの発生を抑制できたことの理由を解析するため、イチゴにおけるカビの発生部位を検討した。その結果、
図8に示すように、カビの発生部位は、果実の先端部及び中央部に集中していた。前記の果実の先端側から紫外線を照射した場合に効率的にカビを抑制できたこと、及びカビの発生部位が果実の先端部及び中央部に集中していたことを考慮すると、果実のカビの発生しやすい部分から、紫外線を照射することによって、1回の紫外線の照射で、効果的にカビ発生を抑制できたと推定される。
なお、本明細書において「果実の先端側から紫外線を照射する」とは、紫外線の光源から少なくとも果実の先端部が見えるように照射されることを意味する。
【実施例】
【0018】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0019】
《製造例1》
本製造例では、キセノンガス(Xe)及び3種の蛍光体を用いて、3種のエキシマランプを作製した。エキシマランプは、導入管が接続された有底筒状の外側管と、内部に内側電極を埋設した有底筒状の内側管とを同軸状に配設して一体に溶着させることにより発光管を形成し、導入管から蛍光体塗料を流入流出させることにより、蛍光体塗料を発光管の内表面に塗布して、蛍光体膜を設ける。導入管から発光管内を真空引きして不純物を除去して、導入管を通じて発光管の内部に放電ガス(キセノンガス)を封入して、導入管を加熱溶融により気密封止する。発光管の外表面に外側電極を配設することで作製できる。
【0020】
得られた蛍光ランプの波長を
図1に示す。蛍光ランプAは273nmにピーク波長を有し、蛍光ランプBは263nmにピーク波長を有し、蛍光ランプCは228nmに第一のピーク波長を有し、260nmにそれより低い第二ピーク波長を有していた。
【0021】
《実施例1》
本実施例では、大腸菌を用いて、蛍光ランプA、蛍光ランプB、及び蛍光ランプCのD値を測定した。D値とは生存率を10分の1とするために必要な紫外線量である。35℃、暗黒条件下で24時間培養した大腸菌(K-12株)を1白金耳掻き取り、10mLの滅菌水に添加し菌液を作成した(約10
7CUF/mL)。菌液は10
0~10
5倍に希釈し、シャーレ(直径9cm)内の寒天培地に0.1mL塗抹した。菌液を塗抹したシャーレにおいて、各種ランプによる紫外線照射を行った。照射距離は20または30cm、照射時間は3~90秒とした。照射後、シャーレにクロモカルトコリフォーム寒天培地を添加し、35℃、暗黒条件にて24時間培養した。培養後のコロニー数から生存率を測定した。紫外線量(照度と照射時間の積)ごとの生存率を基に、単回帰分析によりD値を推定した。
図2に示すように、すべてのランプにおいて紫外線量と生存率には負の相関があったものの、紫外線量当たりの生存率はランプごとに異なった。また、
図3にこれらの結果から計算したD値を示すが、蛍光ランプCのD値が殺菌灯のそれよりも低く、最も少ない紫外線量で大腸菌を不活性化させることが分かった。
【0022】
《実施例2》
本実施例では、Aspergillus brasiliensis(NBRC9455)及びPenicillium sp.に対する蛍光ランプCのカビの不活化効果を測定した。Penicillium sp.は2018年12月17日にミカン果実に発生したカビより単離培養した。
25℃、暗黒条件下で7日間培養したAspergillus brasiliensis及びPenicillium sp.に10mLの0.01%モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン水溶液を添加し菌液を作成した(約10
5~10
6CUF/mL)。菌液は滅菌ガーゼを用いてろ過した後、10
0~10
5倍に希釈し、シャーレ(直径9cm)内のポテトデキストロース寒天培地に0.1mL塗抹した。菌液を塗抹したシャーレにおいて、エキシマ蛍光ランプによる紫外線照射を行った。発光長は9cm、照射距離は10cm、照射時間は0~15分とした。スペクトルラジオメーター(MCPD-3000)によって測定されたエキシマ蛍光ランプの波長スペクトルは2山型のピークを示し(
図1)、照射距離10cmでの照度は1.03mW/cm
2であった。照射後、25℃、暗黒条件にて2日間培養した。培養後のコロニー数から生存率を測定した。紫外線量(照度と照射時間の積)ごとの生存率を基に、単回帰分析によりA. brasiliensisおよびPenicillium sp.のD値を推定した。
【0023】
結果を
図4に示す。Aspergillus brasiliensis及びPenicillium sp.ともに、紫外線量が大きくなるにつれて生存率は低くなったが、Penicillium sp.の方が紫外線に対する感受性は高かった。単回帰分析により、A. brasiliensis及びPenicilium sp.のD値を計算した。D値は、A. brasiliensisが355.0mJ/cm
2であり、Penicilium sp.は41.0mJ/cm
2であった(A. brasiliensis: y = -0.0028x, R
2 = 0.93, p < 0.001; Penicilium sp.: y = -0.024x, R
2 = 0.95, p < 0.001)。
【0024】
《実施例3及び比較例1》
本実施例では、イチゴに蛍光ランプCの紫外線を照射し、カビの発生を測定した。
市販のイチゴ(とちおとめ)を、ランダムに紫外線照射区(実施例3)及び無照射区(比較例1)に分けた。
図5に示すように、イチゴを、ヘタを下側にして、プラスチックパックにならべた(9個/パック、実施例3及び比較例1ともに3パック作製した)。パック詰めしたイチゴに照射距離10cmで、紫外線照射した。照射時間は3分(185.6mJ/cm
2)とした。紫外線照射後、パックを一般防曇フィルム(8号規格)に包装し、冷蔵庫(5℃)にて7日間貯蔵した。比較例1は、紫外線を照射せずに3分間静置した後、同様の条件で貯蔵した。貯蔵後、目視にてすべてのイチゴを観察し、カビ発生個体数を計数した。結果を
図7(A)に示す。比較例1では、7日後に22%(n=27)にカビが発生したのに対し、実施例3では全くカビが発生しなかった。
【0025】
また、実施例3及び比較例1の貯蔵後のイチゴを6個/パック取り出し、ヘタの反対側(果托の先端)から1gの切片を作製した。試験管内でホモジナイズした切片に滅菌水を加えた混合液(合計10mL)を滅菌ガーゼでろ過した。ポテトデキストロース寒天培地の入ったシャーレに、ろ液0.1mLを塗抹し、25℃で2日間培養後のコロニー数を数えた。
図7(B)に示すように、イチゴの付着菌数においても、実施例3の方が比較例1よりも明らかに少なかった(p < 0.05, t-test)。
【0026】
《参考例1》
本参考例では、イチゴのカビ発生位置を測定した。イチゴを冷蔵庫において7日間貯蔵した。貯蔵後、カビが発生したイチゴにおいて、カビ発生位置を測定した。ヘタと果托先端を結ぶ直線を3等分して、カビ発生位置を分類した。結果を
図6及び
図8に示す。測定したイチゴ30個のうち、9個(10か所)にカビが発生していた。カビの発生位置は中央部(50%)と先端部(40%)がほとんどであった。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明のカビ発生の抑制方法は、青果物のカビの発生を抑制できることから、青果物の保存及び流通において、有用である。