(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】微粒子分散型重合性組成物の製造方法および該製造方法により作製された微粒子分散型重合性組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 75/08 20060101AFI20240523BHJP
C08G 75/04 20160101ALI20240523BHJP
C08L 81/00 20060101ALI20240523BHJP
C08K 5/37 20060101ALI20240523BHJP
C08K 5/372 20060101ALI20240523BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240523BHJP
【FI】
C08G75/08
C08G75/04
C08L81/00
C08K5/37
C08K5/372
C08K3/013
(21)【出願番号】P 2020071918
(22)【出願日】2020-04-13
【審査請求日】2023-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504182255
【氏名又は名称】国立大学法人横浜国立大学
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【氏名又は名称】杉山 共永
(74)【代理人】
【識別番号】100131990
【氏名又は名称】大野 玲恵
(74)【代理人】
【識別番号】100217663
【氏名又は名称】末広 尚也
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】金 英輝
(72)【発明者】
【氏名】並木 康佑
(72)【発明者】
【氏名】宮本 美幸
(72)【発明者】
【氏名】古川 喜久夫
(72)【発明者】
【氏名】飯島 志行
(72)【発明者】
【氏名】窪田 百恵
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-012165(JP,A)
【文献】特開2011-105553(JP,A)
【文献】特開2008-201634(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0289395(US,A1)
【文献】特開2019-081910(JP,A)
【文献】特開2011-037994(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
C08G75/00-75/32
C08G18/00-18/87
C09C1/00-3/12
G02B1/00-1/08
G02B3/00-3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性硫黄系組成物(A)に、分子構造内に硫黄原子を2以上またはエピスルフィド基を1以上含む硫黄系分散剤(C)を溶解させて溶解組成物を得る工程と、
前記重合性硫黄系組成物(A)に均一混合されない溶媒(B)に、金属酸化物微粒子(D)を分散させて分散組成物を得る工程と、
少なくとも前記溶解組成物と、前記分散組成物と、を含む液相を撹拌することにより、前記金属酸化物微粒子(D)を前記硫黄系分散剤(C)で表面修飾する工程と、
前記重合性硫黄系組成物(A)に分散された表面修飾金属酸化物微粒子(D)を含む微粒子分散型重合性組成物を得る工程と、
を含
み、
前記硫黄系分散剤(C)が、下記一般式(9):
K―N―M 式(9)
(式中、Kは、アルコキシシリル基、ヒドロキシシリル基、カルボキシル基、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、カテコール基及び3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸基からなる群より選択される親水性の部分構造を1以上含み、Mは、下記一般式(m1)~(m3)で表される硫黄原子を含む基を有する親油性の部分構造を1以上含み、Nは、下記一般式(n1)~(n3)で表される二価の連結基からなる群より選択される部分構造を1以上含む。)
【化9】
(式中、pは2~4の整数を表し、Xp及びZpは、それぞれ独立して、水素原子又はメチルチオール基を表す。)
【化10】
(式中、nは1又は2の整数を表す。)
【化11】
(式中、nは1~8の整数を表す。)
【化12】
(式中、Xは炭素原子、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子を表し、mは0~7の整数を表し、nは0~7の整数を表す。)
【化13】
(式中、Rは水素原子、又はメチル基を表し、nは1~3の整数を表す。)
【化14】
(式中、nは1~3の整数を表す。)
で表される、微粒子分散型重合性組成物の製造方法。
【請求項2】
前記重合性硫黄系組成物(A)が、下記構造式(1)~(8)で表される化合物からなる群より選択される1以上を含む、請求項1に記載の製造方法。
【化1】
(式中、mは0~4の整数を表し、nは0~2の整数を表す。)
【化2】
(式中、pは2~4の整数を表し、Xp及びZpは、それぞれ独立して水素原子又はメチルチオール基を表す。)
【化3】
(式中、nは1又は2の整数を表す。)
【化4】
(式中、Rは水素原子、又はメチル基を表し、pは1~2の整数を表す。)
【化5】
(式中、Rは水素原子、又はメチル基を表し、pは1~2の整数を表す。)
【化6】
(式中、p及びqは、それぞれ独立して1~3の整数を表す。)
【化7】
【化8】
【請求項3】
前記重合性硫黄系組成物(A)に均一混合されない溶媒(B)が、低級アルコールを含む、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記硫黄系分散剤(C)の配合量が、微粒子分散型重合性組成物の全固形分(100質量%)に対して0.1~30質量%の範囲内である、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記金属酸化物微粒子(D)が、ジルコニウム、亜鉛、鉄、銅、チタン、スズ、インジウム、セリウム、タンタル、ニオブ、タングステン、ユーロピウム及びハフニウムからなる群より選択される1種以上の金属元素を含む、請求項1~
4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか一項に記載の製造方法により作製された、微粒子分散型重合性組成物。
【請求項7】
請求項1~
5のいずれか一項に記載の製造方法により微粒子分散型重合性組成物を作製する工程を含む、微粒子分散型硬化物の製造方法。
【請求項8】
さらに、熱又は活性エネルギー線により前記微粒子分散型重合性組成物を硬化させる工程を含む、請求項
7に記載の製造方法。
【請求項9】
請求項
7又は
8に記載の製造方法により作製された、微粒子分散型硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学樹脂レンズや光導波路、導光板等の光学部品を作製する際に必要な微粒子分散型重合性組成物の製造方法、該製造方法により作製された微粒子分散型重合性組成物、並びに、該微粒子分散型重合性組成物を用いた微粒子分散型硬化物の製造方法、該製造方法により作製された微粒子分散型硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
無機ガラスは、透明性に優れているなどの諸物性に優れており、光学部材として広い分野で用いられている。しかしながら、重くて破損しやすいこと、加工性、生産性が悪い等の短所があり、無機ガラスに代わる素材として透明光学用樹脂の開発が盛んに行われている。
【0003】
透明光学用樹脂として、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。可視光領域波長における良好な透明性を有し、しかも無機ガラス材料に比べて成形性、量産性、あるいは可撓性、強靱性、耐衝撃性等の優れた特徴を有する汎用透明樹脂材料が望まれている。
【0004】
このような透明樹脂材料に高い屈折率を付与することによって、薄肉軽量な光学レンズ(メガネレンズ、フレネルレンズ、CD、DVDなどの情報記録機器におけるピックアップレンズ、デジタルカメラなどの撮影機器用レンズ等)、光学プリズム、光導波路、光ファイバー、薄膜成形物、光学用接着剤、光半導体用封止材料、回折格子、導光板、液晶基板、光反射板、反射防止材等の高屈折光学部材の材料等への展開が期待されている。
【0005】
高屈折率化には、硫黄元素を含有するモノマーが有用である。例えばチオール化合物とイソシアネート化合物を熱重合しチオウレタン結合を形成して得られる樹脂(nd=1.60~1.66程度)や、エピスルフィド、エピチオスルフィド化合物を重合硬化してなる樹脂(nd=1.7程度)などがある。ただ、nd=1.73以上の更なる高屈折率化を実現するには不十分であった。
【0006】
屈折率1.73を超える高屈折率化には、樹脂中に金属酸化物微粒子を含有させる方法が挙げられる。金属酸化物微粒子は、粒子表面が高極性であるため高極性の溶媒に安定に分散する。一方で、金属酸化物微粒子は、低極性である硫黄元素を含有するモノマーとは親和性が低く混ざりにくい。そのため、この方法では、金属酸化物微粒子の凝集を防ぎ、モノマーとの相溶性を向上させるため、金属酸化物微粒子を高分子分散剤や有機酸を用いて表面修飾する必要がある(例えば、特許文献1および2)。
【0007】
表面修飾を施した金属酸化物微粒子を重合性の有機材料(例えばモノマー)に分散させる方法としては、1)金属酸化物微粒子を分散剤等で表面修飾した後、遠心分離により固液分離を行い、上記重合性の有機材料に再分散させる方法が挙げられる(例えば、特許文献2)。また、2)段階的な減圧蒸留により高極性の溶媒を順次除去し、最終的に、上記重合性の有機材料に近い極性となった表面修飾金属酸化物微粒子を該重合性の有機材料に分散させる方法も挙げられる(例えば、特許文献3)。
【0008】
しかしながら、上記1)の方法は、固液分離により表面修飾金属酸化物微粒子が凝集するため、再分散後の重合性組成物に濁りが発生してしまうという問題があった。また、上記2)の方法は、金属酸化物微粒子の表面修飾の工程、および減圧蒸留による脱溶媒の工程で使用する溶媒と金属酸化物微粒子との親和性が低く、微粒子の凝集を防止することができず、有機材料に分散しにくいという問題があった。また、上記1)および2)の方法ともに中間的な工程が多く、所望の微粒子分散型重合性組成物を得るまでに多くの時間を要していた。よって依然として、微粒子分散型重合性組成物を得るためのより簡便な方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2008-201634号公報
【文献】特許第5422393号公報
【文献】特開2011-105553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の従来技術における問題を解決するためになされたものであって、より簡便に、光学樹脂レンズや光導波路、導光板等の光学部品を作製する際に有用な微粒子分散型重合性組成物を得る方法、および該微粒子分散型重合性組成物を用いた微粒子分散型硬化物の製造方法を提供する。また本発明は、高い透明性を有する微粒子分散型重合性組成物および微粒子分散型硬化物も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、鋭意検討した結果、重合性硫黄系組成物の一部と同様の構造を有する、硫黄元素を含むある種の化学構造を含んだ硫黄系分散剤を表面修飾剤として用いると、重合性硫黄系組成物への金属酸化物微粒子の相溶性を向上させ、固液分離等の中間的な処理を要さずに高い透明性を有する微粒子分散型重合性組成物が得られることを見出した。さらに、硬化反応時に硫黄系分散剤と重合性硫黄系組成物とが架橋反応し、高透明な硬化物を容易に得られることを見出すに至った。
【0012】
すなわち本発明は、下記に記載する通りである。
<1> 重合性硫黄系組成物(A)に、分子構造内に硫黄原子を2以上またはエピスルフィド基を1以上含む硫黄系分散剤(C)を溶解させて溶解組成物を得る工程と、
前記重合性硫黄系組成物(A)に均一混合されない溶媒(B)に、金属酸化物微粒子(D)を分散させて分散組成物を得る工程と、
少なくとも前記溶解組成物と、前記分散組成物と、を含む液相を撹拌することにより、前記金属酸化物微粒子(D)を前記硫黄系分散剤(C)で表面修飾する工程と、
前記重合性硫黄系組成物(A)に分散された表面修飾金属酸化物微粒子(D)を含む微粒子分散型重合性組成物を得る工程と、
を含む、微粒子分散型重合性組成物の製造方法。
<2> 前記硫黄系重合性組成物(A)が、下記構造式(1)~(8)で表される化合物からなる群より選択される1以上を含む、<1>に記載の製造方法。
【化1】
(式中、mは0~4の整数を表し、nは0~2の整数を表す。)
【化2】
(式中、pは2~4の整数を表し、Xp及びZpは、それぞれ独立して水素原子又はメチルチオール基を表す。)
【化3】
(式中、nは1又は2の整数を表す。)
【化4】
(式中、Rは水素原子、又はメチル基を表し、pは1~2の整数を表す。)
【化5】
(式中、Rは水素原子、又はメチル基を表し、pは1~2の整数を表す。)
【化6】
(式中、p及びqは、それぞれ独立して1~3の整数を表す。)
【化7】
【化8】
<3> 前記重合性硫黄系組成物(A)に均一混合されない溶媒(B)が、低級アルコールを含む、<1>又は<2>に記載の製造方法。
<4> 前記硫黄系分散剤(C)が、分子構造内に親水基及び親油基を有し、前記親水基が、アルコキシシリル基、ヒドロキシシリル基、カルボキシル基、リン酸基、ホスホン酸、ホスフィン酸、カテコール基及び3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸基からなる群より選択される1以上を含み、前記親油基が、スルフィド基、ジスルフィド基、チオール基及び(チオ)エポキシ基からなる群より選択される1以上を含む、<1>~<3>のいずれか一項に記載の製造方法。
<5> 前記硫黄系分散剤(C)が、下記一般式(9)で表される、<1>~<4>のいずれか一項に記載の製造方法。
K―N―M 式(9)
(式中、Kは、アルコキシシリル基、ヒドロキシシリル基、カルボキシル基、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、カテコール基及び3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸基からなる群より選択される親水性の部分構造を1以上含み、Mは、下記一般式(m1)~(m3)で表される硫黄原子を含む基を有する親油性の部分構造を1以上含み、Nは、下記一般式(n1)~(n3)で表される二価の連結基からなる群より選択される部分構造を1以上含む。)
【化9】
(式中、pは2~4の整数を表し、Xp及びZpは、それぞれ独立して、水素原子又はメチルチオール基を表す。)
【化10】
(式中、nは1又は2の整数を表す。)
【化11】
(式中、nは1~8の整数を表す。)
【化12】
(式中、Xは炭素原子、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子を表し、mは0~7の整数を表し、nは0~7の整数を表す。)
【化13】
(式中、Rは水素原子、又はメチル基を表し、nは1~3の整数を表す。)
【化14】
(式中、nは1~3の整数を表す。)
<6> 前記金属酸化物微粒子(D)が、ジルコニウム、亜鉛、鉄、銅、チタン、スズ、インジウム、セリウム、タンタル、ニオブ、タングステン、ユーロピウム及びハフニウムからなる群より選択される1種以上の金属元素を含む、<1>~<5>のいずれか一項に記載の製造方法。
<7> <1>~<6>のいずれか一項に記載の製造方法により作製された、微粒子分散型重合性組成物。
<8> <1>~<6>のいずれか一項に記載の製造方法により微粒子分散型重合性組成物を作製する工程を含む、微粒子分散型硬化物の製造方法。
<9> さらに、熱又は活性エネルギー線により前記微粒子分散型重合性組成物を硬化させる工程を含む、<8>に記載の製造方法。
<10> <8>又は<9>に記載の製造方法により作製された、微粒子分散型硬化物。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、硫黄系分散剤により表面修飾を施した金属酸化物微粒子が重合性硫黄系組成物に容易に分散し、得られる微粒子分散型重合性組成物は透明、かつ易成型であり、硬化後においても微粒子分散型硬化物の透明性が維持されることから、光学素子、特に厚膜な導光板や薄膜な回折格子等の作製に利用されるインプリント材料への展開が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明について説明する。なお、以下は本発明を説明するための例示であり、本発明はその実施の形態のみに限定されない。
【0015】
[微粒子分散型重合性組成物の製造方法]
1.溶解組成物を得る工程
本発明の製造方法は、重合性硫黄系組成物(A)に、分子構造内に硫黄原子を2以上またはエピスルフィド基を1以上含む硫黄系分散剤(C)を溶解させて溶解組成物を得る工程を含む。溶解の方法は特に制限されず、常法により、前記硫黄系分散剤(C)を重合性硫黄系組成物(A)に溶解させることができる。
【0016】
(重合性硫黄系組成物(A))
本発明で使用され得る重合性硫黄系組成物(A)は、分子内に硫黄原子を含有する化合物である。前記重合性硫黄系組成物(A)としては、例えば、エピチオ化合物((チオ)エポキシ化合物)やチオール化合物が挙げられる。さらに、前記重合性硫黄系組成物(A)としては、分子内に硫黄原子を含有する化合物とアリル化合物やイソシアネート化合物とを組み合わせて用いてもよい。
【0017】
本発明の好ましい実施形態では、前記重合性硫黄系組成物(A)は、下記構造式(1)~(8)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種類を含んでよい。
【化15】
(式中、mは0~4の整数を表し、nは0~2の整数を表す。)
【化16】
(式中、pは2~4の整数を表し、Xp及びZpは、それぞれ独立して水素原子又はメチルチオール基を表す。)
【化17】
(式中、nは1又は2の整数を表す。)
【化18】
(式中、Rは水素原子、又はメチル基を表し、pは1~2の整数を表す。)
【化19】
(式中、Rは水素原子、又はメチル基を表し、pは1~2の整数を表す。)
【化20】
(式中、p及びqは、それぞれ独立して1~3の整数を表す。)
【化21】
【化22】
【0018】
(エピチオ化合物)
エピチオ化合物としては、例えば、ビス(2,3-エピチオプロピル)スルフィド、ビス(2,3-エピチオプロピル)ジスルフィド、ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)メタン、1,2-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)エタン、1,2-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)プロパン、1,3-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)プロパン、1,3-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-2-メチルプロパン、1,4-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)ブタン、1,4-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-2-メチルブタン、1,3-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)ブタン、1,5-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)ペンタン、1,5-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-2-メチルペンタン、1,5-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-3-チアペンタン、1,6-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)ヘキサン、1,6-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-2-メチルヘキサン、3,8-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-3,6-ジチアオクタン、1,2,3-トリス(2,3-エピチオプロピルチオ)プロパン、2,2-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-1,3-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)プロパン、2,2-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-1-(2,3-エピチオプロピルチオ)ブタン、1,5-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-2-(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-3-チアペンタン、1,5-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-2,4-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-3-チアペンタン、1-(2,3-エピチオプロピルチオ)-2,2-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-4-チアヘキサン、1,5,6-トリス(2,3-エピチオプロピルチオ)-4-(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-3-チアヘキサン、1,8-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-4-(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-3,6-ジチアオクタン、1,8-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-4,5-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-3,6-ジチアオクタン、1,8-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-4,4-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-3,6-ジチアオクタン、1,8-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-2,5-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-3,6-ジチアオクタン、1,8-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-2,4,5-トリス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-3,6-ジチアオクタン、1,1,1-トリス[{2-(2,3-エピチオプロピルチオ)エチル}チオメチル]-2-(2,3-エピチオプロピルチオ)エタン、1,1,2,2-テトラキス[{2-(2,3-エピチオプロピルチオ)エチル}チオメチル]エタン、1,11-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-4,8-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン、1,11-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-4,7-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン、1,11-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-5,7-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン等の鎖状脂肪族の2,3-エピチオプロピルチオ化合物、及び、
1,3-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)シクロヘキサン、1,4-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)シクロヘキサン、1,3-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)シクロヘキサン、2,5-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-1,4-ジチアン、2,5-ビス[{2-(2,3-エピチオプロピルチオ)エチル}チオメチル]-1,4-ジチアン、2,5-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-2,5-ジメチル-1,4-ジチアン等の環状脂肪族の2,3-エピチオプロピルチオ化合物、及び、
1,2-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)ベンゼン、1,3-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)ベンゼン、1,4-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)ベンゼン、1,2-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、1,3-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、1,4-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、ビス{4-(2,3-エピチオプロピルチオ)フェニル}メタン、2,2-ビス{4-(2,3-エピチオプロピルチオ)フェニル}プロパン、ビス{4-(2,3-エピチオプロピルチオ)フェニル}スルフィド、ビス{4-(2,3-エピチオプロピルチオ)フェニル}スルフォン、4,4’-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)ビフェニル等の芳香族2,3-エピチオプロピルチオ化合物等、
更に3-メルカプトプロピレンスルフィド、4-メルカプトブテンスルフィド等のメルカプト基含有エピチオ化合物等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なお、例示化合物のみに限定されるものではない。
【0019】
(チオール化合物)
チオール化合物としては、例えば、脂肪族チオール化合物、脂環族チオール化合物、芳香族チオール化合物、複素環含有チオール化合物等が挙げられる。より具体的には、メタンジチオール、1,2-エタンジチオール、1,2,3-プロパントリチオール、1,2-シクロヘキサンジチオール、ビス(2-メルカプトエチル)エーテル、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、(2-メルカプトエチル)スルフィド、ジエチレングリコールビス(2-メルカプトアセテート)、ジエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビス(2-メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2-メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタントリス(2-メルカプトアセテート) 、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ビス(メルカプトメチル)スルフィド、ビス(メルカプトメチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、ビス(メルカプトエチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトプロピル)スルフィド、ビス(メルカプトメチルチオ)メタン、ビス(2-メルカプトエチルチオ)メタン、ビス(3-メルカプトプロピルチオ)メタン、1,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エタン、1,2-ビス(2-メルカプトエチルチオ)エタン、1,2-ビス(3-メルカプトプロピルチオ)エタン、1,2,3-トリス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス(2-メルカプトエチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス(3-メルカプトプロピルチオ)プロパン、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、テトラキス(メルカプトメチルチオメチル)メタン、テトラキス(2-メルカプトエチルチオメチル)メタン、テトラキス(3-メルカプトプロピルチオメチル)メタン、ビス(2,3-ジメルカプトプロピル)スルフィド、2,5-ジメルカプトメチル-1,4-ジチアン、2,5-ジメルカプト-1,4-ジチアン、2,5-ジメルカプトメチル-2,5-ジメチル-1,4-ジチアン、及びこれらのチオグリコール酸及びメルカプトプロピオン酸のエステル、ヒドロキシメチルスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルスルフィドビス(3-メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(3-メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(3-メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(3-メルカプトプロピネート)、2-メルカプトエチルエーテルビス(2-メルカプトアセテート)、2-メルカプトエチルエーテルビス(3-メルカプトプロピオネート)、チオジグリコール酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、チオジプロピオン酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、ジチオジグリコール酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、ジチオジプロピオン酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,1,2,2-テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタン、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、トリス(メルカプトメチルチオ)メタン、1,2-ビス[(2-メルカプトエチル)チオ]3-メルカプトプロパン、トリス(メルカプトエチルチオ)メタン等の脂肪族ポリチオール化合物;
1,2-ジメルカプトベンゼン、1,3-ジメルカプトベンゼン、1,4-ジメルカプトベンゼン、1,2-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3,5-トリメルカプトベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトメチレンオキシ)ベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、2,5-トルエンジチオール、3,4-トルエンジチオール、1,5-ナフタレンジチオール、2,6-ナフタレンジチオール等の芳香族ポリチオール化合物;
2-メチルアミノ-4,6-ジチオール-sym-トリアジン、3,4-チオフェンジチオール、ビスムチオール、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、2-(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)-1,3-ジチエタン等の複素環ポリチオール化合物等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なお、例示化合物のみに限定されるものではない。
【0020】
(硫黄系分散剤(C))
本発明で使用され得る硫黄系分散剤(C)は、分子構造内に硫黄原子を2以上またはエピスルフィド基を1以上含むものである。また、本発明の一実施形態において、硫黄系分散剤(C)は、分子構造内に親水基と親油基とを有し、前記親水基が、アルコキシシリル基、ヒドロキシシリル基、カルボキシル基、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、カテコール基及び3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸基からなる群より選択される1以上を含み、前記親油基が、スルフィド基、ジスルフィド基、チオール基、及び(チオ)エポキシ基からなる群より選択される1以上を含むことがより好ましい。
【0021】
本発明の一実施形態において、前記硫黄系分散剤(C)は、下記一般式(9)で表されるものであることが好ましい。
K―N―M 式(9)
本発明の好ましい実施形態において、式(9)中、Kは、アルコキシシリル基、ヒドロキシシリル基、カルボキシル基、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、カテコール基及び3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸基からなる群より選択される親水性の部分構造を1以上含み、Mは、下記一般式(m1)~(m3)で表される硫黄原子を含む基からなる群より選択される親油性の部分構造を1以上含み、Nは、下記一般式(n1)~(n3)で表される二価の連結基からなる群より選択される部分構造を1以上含む。
本発明の一実施形態において、式(9)中、MおよびNの組み合わせとしては、以下の態様があり得る。すなわち、式(9)は、K-(n1)-(m1)、K-(n1)-(m2)、K-(n1)-(m3)、K-(n2)-(m1)、K-(n2)-(m2)、K-(n2)-(m3)、K-(n3)-(m1)、K-(n3)-(m2)、K-(n3)-(m3)であり得る。
【化23】
(式中、pは2~4の整数を表し、Xp及びZpは、それぞれ独立して、水素原子又はメチルチオール基を表す。)
【化24】
(式中、nは1又は2の整数を表す。)
【化25】
(式中、nは1~8の整数を表す。)
【化26】
(式中、Xは炭素原子、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子を表し、mは0~7の整数を表し、nは0~7の整数を表す。)
【化27】
(式中、Rは水素原子、又はメチル基を表し、nは1~3の整数を表す。)
【化28】
(式中、nは1~3の整数を表す。)
【0022】
本発明の一実施形態において、硫黄系分散剤(C)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせて使用してもよい。さらに、硫黄系分散剤(C)は、他のシランカップリング剤と組み合わせて使用してもよい。
【0023】
(シランカップリング剤)
硫黄系分散剤(C)と組み合わせて使用することができるシランカップリング剤は特に限定されず、ラジカル重合反応性の官能基を有するシランカップリング剤及びその他のシランカップリング剤が挙げられる。
【0024】
ラジカル重合反応性シランカップリング剤は、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニル基含有シラン;3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリロイル基含有シラン等が挙げられ、(メタ)アクリロイル基含有シランが好ましい。
【0025】
その他のシランカップリング剤は、ラジカル重合反応性の官能基を有さないシラン化合物である。その他のシランカップリング剤は、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のエポキシシラン;N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン;γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシラン;γ-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ-クロロプロピルメチルジエトキシシラン等のハロアルキル基含有シランが挙げられる。
【0026】
2.分散組成物を得る工程
本発明の製造方法は、重合性硫黄系組成物(A)に均一混合されない溶媒(B)に、金属酸化物微粒子(D)を分散させて分散組成物を得る工程を含む。分散の方法は特に制限されず、常法により、金属酸化物微粒子(D)を前記溶媒(B)に分散させることができる。
【0027】
(溶媒(B))
本発明で使用され得る溶媒(B)は、硫黄系分散剤(C)を含む重合性硫黄系組成物(A)と均一に混合されずに異なる液相を構成する、前記重合性硫黄系組成物(A)に比して極性の高い溶媒である。このような溶媒としては、低級アルコールが好適に挙げられる。より好ましくは、炭素数が5以下の低級アルコールであり、さらに好ましくは、炭素数が3以下の低級アルコールである。また、このような溶媒としては、具体的には、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、t-ブチルアルコール、n-アミルアルコール、sec-アミルアルコールを挙げることができる。本発明の一実施形態において、これらの溶媒は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。また、上記の溶媒(B)は、上記低級アルコールと水とを含む混合溶媒であってもよい。この場合、前記混合溶媒における水の含有量は特に制限されないが、目安として、1~50質量%、好ましくは1~15質量%が挙げられる。
【0028】
(金属酸化物微粒子(D))
本発明で使用され得る金属酸化物微粒子(D)は、ジルコニウム、亜鉛、鉄、銅、チタン、スズ、インジウム、セリウム、タンタル、ニオブ、タングステン、ユーロピウム及びハフニウムからなる群から選択される1種以上の金属元素を含む。
【0029】
また、金属酸化物微粒子(D)を構成する金属酸化物は、例えば、酸化チタン(チタニア)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、酸化マグネシウム(マグネシア)、酸化ケイ素(シリカ)等の単酸化物;チタン酸カリウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸鉛、チタン酸アルミニウム、チタン酸リチウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、酸化インジウムスズ(ITO)等の複合酸化物等を挙げることができる。本発明の一実施形態において、これらの金属酸化物は、分散質粒子として1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、屈折率、透明性、安定性の観点から、酸化ジルコニウムが特に好ましい。
【0030】
本発明の好ましい実施形態において、金属酸化物微粒子(D)は、分散質粒子として用いることができ、平均一次粒子径が50nm未満の金属酸化物微粒子(D)である。
金属酸化物微粒子(D)の平均一次粒子径が50nm以上であると、得られる微粒子分散型硬化物の透明性の低下、ヘーズの上昇、表面平滑性の低下が生じる可能性がある。
【0031】
金属酸化物微粒子(D)の平均一次粒子径の下限値は特に限定されないが、例えば、1nm以上であることが好ましい。したがって、金属酸化物微粒子(D)の平均一次粒子径の範囲としては、1nm以上50nm未満が好ましく、3~30nmがより好ましく、3~15nmが特に好ましい。
なお、金属酸化物微粒子(D)の平均一次粒子径は、動的光散乱法を用いて球相当径とする体積基準の分布より求めた体積平均径として測定することができる。
【0032】
さらに、金属酸化物微粒子(D)は、結晶状であってもアモルファス状であってもよく、また、等方性粒子であっても異方性粒子であってもよく、繊維状であってもよい。さらに、金属酸化物微粒子(D)は、一般的な粉末状であってもよいし、微粒子ゾルであってもよい。
【0033】
(金属酸化物微粒子(D)の製造方法)
本発明で用いられる金属酸化物微粒子(D)の製造方法(調製方法)は、特に限定されず、既知の方法を好適に用いることができる。例えば、代表的な製造方法として、粗大粒子を機械的に解砕、微細化していくトップダウン方式;いくつかの単位粒子を生成させ、それが凝集したクラスター状態を経由して粒子が形成されるボトムアップ方式;の2種類の方式の製造方法を挙げることができるが、いずれの方法で調製されたものであってもよい。また、これら方式の製造方法は、湿式法または乾式法のいずれであってもよい。また、これら方式の製造方法で用いられる媒体としては、水系であっても非水系であっても気相であってもよい。
【0034】
また、ボトムアップ方式には、物理的方法と化学的方法があるが、いずれの方法によるものであってもよい。物理的方法の代表例としては、バルク金属を不活性ガス中で蒸発させ、ガスとの衝突により冷却凝縮させてナノ粒子を生成するガス中蒸発法が挙げられる。また、化学的方法の代表例としては、液相還元法(液相中で保護剤の存在下で金属イオンを還元し、生成した0価の金属をナノサイズで安定化させる方法)、金属錯体の熱分解法等が挙げられる。液相還元法のより具体的な例としては、化学的還元法、電気化学的還元法、光還元法、または化学的還元法と光照射法とを組み合わせた方法等を挙げることができる。
【0035】
なお、本発明の微粒子分散型重合性組成物は、後述するように、硫黄系分散剤(C)、金属酸化物微粒子(D)、溶媒(B)、及び重合性硫黄系組成物(A)を混合攪拌することにより調製(製造)することができるが、硫黄系分散剤(C)は、トップダウン方式またはボトムアップ方式での金属酸化物微粒子(D)の製造工程中で使用することができる。また、前述した各種の方式または方法を採用して金属酸化物微粒子(D)を製造する際には、その製造工程で用いた媒体中から金属酸化物微粒子(D)を取り出すために、保護剤を使用することができる。保護剤は、金属酸化物微粒子(D)の表面を修飾する表面修飾剤、あるいは、金属酸化物微粒子(D)の表面を保護する表面保護剤等を挙げることができる。これら保護剤により表面が被覆されるか、これら保護剤により含浸されることにより、媒体中から金属酸化物微粒子(D)を安定的に取り出すことができる。ここで、硫黄系分散剤(C)は、この保護剤としても使用することができる。
【0036】
3.金属酸化物微粒子(D)を硫黄系分散剤(C)で表面修飾する工程
本発明の製造方法は、少なくとも前記溶解組成物と、前記分散組成物と、を含む液相を撹拌することにより、前記金属酸化物微粒子(D)を前記硫黄系分散剤(C)で表面修飾する工程を含む。金属酸化物微粒子(D)を硫黄系分散剤(C)で表面修飾する方法は、混合撹拌が特に好ましい。
【0037】
本発明の一実施形態において、少なくとも前記溶解組成物と、前記分散組成物と、を含む上記の液相は、多層系であってよく、例えば、二層系、三層系、四層系であり得るが、これらに限定されない。
本発明の一実施形態において、例えば、二層系を調製する場合、前記溶解組成物を含む容器に前記分散組成物を添加する方法、前記分散組成物を含む容器に前記溶解組成物を添加する方法、又は、前記溶解組成物と前記分散組成物とを同時に容器に添加する方法が挙げられる。そうすると、極性の違いにより、前記溶解組成物と前記分散組成物とは二層に分離する。この分離した二層を常法により混合撹拌し、静置すると、これらは再び二層を構成する。
この撹拌操作により、金属酸化物微粒子(D)は、重合性硫黄系組成物(A)(溶解組成物)に含まれる硫黄系分散剤(C)と接触し、その後一定時間静置されることで該硫黄系分散剤(C)と相互作用を形成する。そのため、再び二層に分離した後の重合性硫黄系組成物(A)(溶解組成物)には、硫黄系分散剤(C)により表面修飾された金属酸化物微粒子(D)が分散される。
なお、撹拌後に静置する時間は特に制限されず、再び重合性硫黄系組成物(A)と溶媒(B)とが分離するのを待てばよいが、目安として、1~48時間、好ましくは12~24時間を例示することができる。
【0038】
また、表面修飾を施した金属酸化物微粒子(D)は、表面修飾前の金属酸化物微粒子(D)100質量部に対し、前記硫黄系分散剤(C)を0.1質量部以上200質量部以下にて表面修飾を施したものであることが好ましく、前記硫黄系分散剤(C)を10質量部以上100質量部以下にて表面修飾を施したものであることがより好ましい。
【0039】
なお、上記では二層系を調製する場合について説明したが、本発明の製造方法は、必ずしも二層系を調製する場合に限定されるものではない。所望により、三層系、四層系などの多層系を構成するように調整してもよい。
【0040】
4.微粒子分散型重合性組成物を得る工程
本発明の製造方法は、前記重合性硫黄系組成物(A)に分散された表面修飾金属酸化物微粒子(D)を含む微粒子分散型重合性組成物を得る工程を含む。
上述の「3.金属酸化物微粒子(D)を硫黄系分散剤(C)で表面修飾する工程」により、表面修飾が施された金属酸化物微粒子(D)が分散した重合性硫黄系組成物(A)を、溶媒(B)と分離し、回収することで、微粒子分散型重合性組成物を得ることができる。回収した微粒子分散型重合性組成物は、有機溶媒による洗浄をさらに行うことが好ましい。
【0041】
本発明の製造方法は、表面修飾金属酸化物微粒子(D)が重合性硫黄系組成物(A)に十分に分散するよう、回収した微粒子分散型重合性組成物を追加的に撹拌または均一化してもよい。例えば、2本ロール、3本ロール等のロールミル;ボールミル、振動ボールミル等のボールミル;ペイントシェーカー;連続ディスク型ビーズミル、連続アニュラー型ビーズミル等のビーズミル;サンドミル;ジェットミル;等を用いる方法を挙げることができるが、特に限定されない。また、超音波発生浴の中で分散処理を行うこともできる。
【0042】
こうして得られた微粒子分散型重合性組成物は、硫黄系分散剤(C)の構造内の親水基と親油基によって、金属酸化物微粒子(D)と重合性硫黄系組成物(A)との間に相互作用が形成されたものである。
【0043】
[微粒子分散型重合性組成物]
本発明は、上述した各工程を経て作製された、微粒子分散型重合性組成物にも関する。本発明の好ましい実施形態において、微粒子分散型重合性組成物は、25℃での粘度が100,000mPa・s以下であり、より好ましくは20,000mPa・s以下である。
【0044】
本発明の一実施形態において、微粒子分散型重合性組成物の作製に用いられる主な4つの成分、すなわち重合性硫黄系組成物(A)、溶媒(B)、硫黄系分散剤(C)、及び金属酸化物微粒子(D)の組み合わせとしては、以下の態様があり得る。
重合性硫黄系組成物(A):前記構造式(1)を含む化合物、溶媒(B):メタノール、硫黄系分散剤(C):前記一般式(9)中、K-(n1)-(m1)で表される構造を有する化合物、金属酸化物微粒子(D):酸化ジルコニウム。
重合性硫黄系組成物(A):前記構造式(1)を含む化合物、溶媒(B):メタノール、硫黄系分散剤(C):前記一般式(9)中、K-(n3)-(m1)で表される構造を有する化合物、金属酸化物微粒子(D):酸化ジルコニウム。
重合性硫黄系組成物(A):前記構造式(1)を含む化合物、溶媒(B):メタノール、硫黄系分散剤(C):前記一般式(9)中、K-(n1)-(m3)で表される構造を有する化合物、金属酸化物微粒子(D):酸化ジルコニウム。
重合性硫黄系組成物(A):前記構造式(1)を含む化合物、溶媒(B):エタノール、硫黄系分散剤(C):前記一般式(9)中、K-(n1)-(m1)で表される構造を有する化合物、金属酸化物微粒子(D):酸化亜鉛。
重合性硫黄系組成物(A):前記構造式(2)を含む化合物、溶媒(B):メタノール、硫黄系分散剤(C):前記一般式(9)中、K-(n1)-(m1)で表される構造を有する化合物、金属酸化物微粒子(D):酸化ジルコニウム。
重合性硫黄系組成物(A):前記構造式(2)を含む化合物、溶媒(B):エタノール、硫黄系分散剤(C):前記一般式(9)中、K-(n1)-(m1)で表される構造を有する化合物、金属酸化物微粒子(D):酸化亜鉛。
重合性硫黄系組成物(A):前記構造式(1)を含む化合物、溶媒(B):メタノール、硫黄系分散剤(C):前記一般式(9)中、K-(n1)-(m1)で表される構造を有する化合物、金属酸化物微粒子(D):酸化チタン。
【0045】
また、重合性硫黄系組成物(A)、溶媒(B)、硫黄系分散剤(C)、及び金属酸化物微粒子(D)の組み合わせとしては、以下の態様もあり得る。
重合性硫黄系組成物(A):前記構造式(2)を含む化合物、溶媒(B):メタノール、硫黄系分散剤(C):前記一般式(9)中、K-(n3)-(m1)で表される構造を有する化合物、金属酸化物微粒子(D):酸化ジルコニウム。
重合性硫黄系組成物(A):前記構造式(2)を含む化合物、溶媒(B):メタノール、硫黄系分散剤(C):前記一般式(9)中、K-(n1)-(m3)で表される構造を有する化合物、金属酸化物微粒子(D):酸化ジルコニウム。
重合性硫黄系組成物(A):前記構造式(2)を含む化合物、溶媒(B):メタノール、硫黄系分散剤(C):前記一般式(9)中、K-(n3)-(m1)で表される構造を有する化合物、金属酸化物微粒子(D):酸化亜鉛。
重合性硫黄系組成物(A):前記構造式(2)を含む化合物、溶媒(B):メタノール、硫黄系分散剤(C):前記一般式(9)中、K-(n1)-(m3)で表される構造を有する化合物、金属酸化物微粒子(D):酸化亜鉛。
【0046】
また本発明の一実施形態において、微粒子分散型重合性組成物には、上述した硫黄系分散剤(C)、表面修飾金属酸化物微粒子(D)、及び重合性硫黄系組成物(A)以外の成分が含まれてもよい。その他の成分としては、具体的には、例えば、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、レベリング剤、消泡剤等のように既知の様々な添加剤を挙げることができる。
【0047】
本発明の微粒子分散型重合性組成物は、重合開始剤を含むことが好ましく、なかでも熱重合開始剤及び光重合開始剤のいずれか1つ以上を含有することがより好ましい。
重合開始剤としては、イオンを発生するアニオン重合開始剤やカチオン重合開始剤、加熱により重合開始ラジカルを発生する熱重合開始剤、紫外線の照射により重合開始ラジカルを発生する光重合開始剤などが挙げられる。これらの重合開始剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。また、熱重合促進剤、光増感剤、光重合促進剤などをさらに添加することも好ましい。
【0048】
本発明の微粒子分散型重合性組成物において、上述した、硫黄系分散剤(C)、表面修飾金属酸化物微粒子(D)、及び重合性硫黄系組成物(A)の各成分の配合量(含有量または添加量)は特に限定されず、各成分の種類、物性、微粒子分散型重合性組成物の用途等の諸条件に応じて、適宜好適な範囲を設定することができる。このうち、硫黄系分散剤(C)については、金属酸化物微粒子(D)を良好に分散させるために、所定の範囲内で配合することが好ましい。
【0049】
具体的には、微粒子分散型重合性組成物の全固形分を100質量%としたときに、硫黄系分散剤(C)の配合量は、全固形分の0.1~30質量%の範囲内が好ましく、0.2~20質量%の範囲内がより好ましい。硫黄系分散剤(C)の配合量が全固形分に対して少なすぎると、前記諸条件にもよるが、得られる微粒子分散型硬化物の表面平滑性が低下する場合がある。また、硫黄系分散剤(C)の配合量が全固形分に対して多すぎると、前記諸条件にもよるが、得られる微粒子分散型硬化物の透明性が低下し、当該硬化物の物性(例えば、耐擦傷性、耐アルカリ性等)が十分でなくなる場合がある。
【0050】
また、金属酸化物微粒子(D)の配合量も特に限定されないが、微粒子分散型重合性組成物の全量を100質量%としたときに、5~90質量%が好ましく、10~80質量%がより好ましい。前記諸条件にもよるが、金属酸化物微粒子(D)がこの範囲内であれば、得られる微粒子分散型硬化物の光学特性及び物性を良好なものにできるとともに、硫黄系分散剤(C)との組合せにより表面平滑性の向上にも寄与することができる。
【0051】
同様に、重合性硫黄系組成物(A)の配合量も特に限定されないが、微粒子分散型重合性組成物の全量を100質量%としたときに、1~95質量%が好ましく、4~90質量%がより好ましい。前記諸条件にもよるが、重合性硫黄系組成物(A)がこの範囲内で配合されれば、膜状または層状の微粒子分散型硬化物(硬化膜または硬化層)を形成したときに、金属酸化物微粒子(D)を良好に分散した状態で、微粒子分散型硬化物として良好な物性を実現することができる。また、硫黄系分散剤(C)との組合せにより当該硬化物の表面平滑性の向上にも寄与することができる。
【0052】
さらに、本発明の微粒子分散型重合性組成物は、重合性硫黄系組成物(A)の100質量部に対し、表面修飾を施した金属酸化物微粒子(D)が、5~900質量部含まれることが好ましく、10~400質量部含まれることがより好ましい。
【0053】
なお、溶媒(B)の配合量は特に制限されず、金属酸化物微粒子(D)が分散されるために十分な量を配合すればよい。また、その他の成分は、当該成分の添加により所望の機能を発揮できる範囲内で添加すればよい。
【0054】
[微粒子分散型硬化物の製造方法]
本発明は、上述した各工程により微粒子分散型重合性組成物を作製する工程を含む、微粒子分散型硬化物の製造方法にも関する。
本発明の微粒子分散型硬化物の製造方法は、上記の微粒子分散型重合性組成物を熱または活性エネルギーにより硬化させる工程をさらに含む。本発明の製造方法は、微粒子分散型重合性組成物における上記一般式(1)~(8)で示される化合物からなる群より選択される1種以上を含む重合性成分を架橋させて、硬化させることが好ましい。
【0055】
[微粒子分散型硬化物]
本発明の微粒子分散型硬化物は、上記の微粒子分散型重合性組成物を硬化させることにより得ることができる。ここで、「微粒子分散型硬化物」とは、本発明に係る微粒子分散型重合性組成物の硬化性成分を架橋させて、硬化させたものを意味する。
【0056】
(硬化物の耐熱性)
本発明の好ましい実施形態において、微粒子分散型硬化物は、光学材料として使用するために、一定以上の耐熱性を有する。耐熱性を示す指標としては、硬化物のガラス転移温度が挙げられる。好ましい耐熱性は、微粒子分散型重合性組成物を塗布する基板の種類によって決定される。例えば、微粒子分散型重合性組成物の線膨張係数に近い線膨張係数を有する樹脂シートとガラス基板との間に、微粒子分散型重合性組成物を一対の基板の隙間を封止する光学接着剤として使用する場合、本発明の微粒子分散型重合性組成物を硬化させて得られる微粒子分散型硬化物のガラス転移温度は、30℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましい。微粒子分散型硬化物のガラス転移温度が上記範囲であれば、各基板と接着剤との間での界面剥離等が生じる可能性が少ない。
【0057】
なお、ここでいう樹脂シートとは、透明性が高い樹脂から構成されることが好ましく、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン(COC)、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、透明ABS樹脂、透明ナイロン、透明ポリイミド、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。
【0058】
(硬化物のその他の物性)
本発明の微粒子分散型硬化物は、d線屈折率が1.73以上であり、厚さ0.25mmの可視光領域の光透過率が80%以上であり、ヘーズ値が2.0%以下であることが好ましい。より好ましいd線屈折率は1.75以上であり、より好ましい光透過率は85%以上であり、より好ましいヘーズ値は1.0%以下である。
【実施例】
【0059】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。但し、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の記載における「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0060】
(硫黄系分散剤(C)の合成)
100mlバイアル瓶にチオール化合物である4-メルカプトメチル-3,6-ジチア-1,8-オクタンジチオール(GST)を73.7g仕込み、触媒としてトリフェニルホスフィンを0.08g添加した。50℃で30分撹拌した後、4-ペンテン酸を8.1g添加した。更に、80℃4日間撹拌した。反応終点は赤外吸収スペクトル(IR)分析により行い、4-ペンテン酸の化学構造内にある1650-1630cm
-1付近のアルケンに起因する吸収の消失により確認した。反応後、生成物を含む混合液を中圧分取精製装置にて、未反応GSTを除去し親水性構造と親油性構造を有する下記構造式(10)で表される化合物を得た。
【化29】
【0061】
(実施例1)
(表面修飾方法、及び微粒子分散型重合性組成物の調製方法:エピスルフィド系)
下記構造式(11)で表される(チオ)エポキシ化合物2.0gと、前記構造式(10)で表される分散剤2.0mmol/g(粒子1gに対して2.0mmol)とを10mlガラス容器に用意した。ここに、ジルコニア粒子メタノール分散液(堺化学工業、ジルコニア粒子30質量%、SZR-CM、平均一次粒子径16.9nm)を1.35g加えた。分散剤はエポキシ化合物に可溶だが、メタノール分散液はエポキシ化合物に不溶であり、二層を形成した。
この二層をマグネチックスターラーにて混合撹拌した後、24時間静置した。静置後に再び二層に分離したことを目視で確認した。このうち下層を回収し、表面修飾を施したジルコニア粒子と重合性硫黄系組成物(A)からなる微粒子分散型重合性組成物を得た。後述の方法により、当該微粒子分散型重合性組成物の外観の透明性を目視にて評価したところ、透明であった(表1)。
微粒子分散型重合性組成物の調製時、組成比は、表面修飾を施したジルコニア微粒子15質量%と重合性硫黄系組成物(A)85質量%に設定した(15質量%分散体)。
【化30】
【0062】
(微粒子分散型硬化物の作製方法:エピスルフィド系、熱硬化)
実施例1として得た微粒子分散型重合性組成物99.5質量%に、熱硬化剤としてテトラn-ブチルホスホニウムブロマイド0.5質量%を混合し、均一になるまで撹拌した。離型処理した板状ガラス(松浪硝子工業、型番S9213)で厚み0.25mmスペーサと共に挟み、その後乾燥機で100℃、240分加熱硬化させた。二枚の板状ガラスに挟んで透過側を視認できた硬化膜をガラス板から剥がし、後述する光学物性の評価に供した。
【0063】
(比較例1~5)
以下のとおり分散剤の種類を変更し、それ以外は実施例1と同様の方法で、比較例1~5の組成物を調製した。比較例1~5の組成物の外観の透明性を評価したところ、ジルコニア粒子が凝集し、組成物全体が白濁していた(表1)。そのため、比較例1~5は硬化物を作製しなかった。なお、比較例1~5の組成物において、白濁の程度に大きな差異はなく、いずれの組成物も全体が一様に白濁していた。
比較例1:4-ペンテン酸(東京化成工業、型番P0645)
比較例2:デシルトリメトキシシラン(信越化学、型番KBM-3103C)
比較例3:7-オクテニルトリメトキシシラン(信越化学、型番KBM-1083)
比較例4:3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(信越化学、型番KBE-9007N)
比較例5:3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越化学、型番KBM-803)
【0064】
(微粒子分散型重合性組成物の外観評価方法)
実施例1として作製した微粒子分散型重合性組成物および比較例1~5として作製した組成物について、外観の透明性を目視にて評価した。透明性の評価は、微粒子分散型重合性組成物の濁りの有無に基づいて評価した。表面修飾金属酸化物微粒子(D)が凝集し、組成物の一部または全部に白濁が生じているものを「白濁」、組成物に全く白濁が生じていないものを「透明」とした。結果を表1に示す。
【0065】
(硬化物の光学物性の測定方法)
実施例1として作製した微粒子分散型硬化物について、光学物性を評価した。ヘーズ値の測定には、分光測色計(コニカミノルタ、CM-5)を用いた。透過率測定には、紫外可視分光光度計(日本分光、V-630)を用いた。透過率測定において、厚み0.25mmにて、波長450nmから750nmの可視光領域で80%以上の透過率のものを「○」、80%未満の透過率のものを「×」とした。また、ヘーズ値が2.0%以下のものを「〇」2.0%超のものを「×」とした。結果を表1に示す。
【0066】
【0067】
表1に示すとおり、本発明の製造方法により作製された実施例1の微粒子分散型重合性組成物は、比較例1~5に比して高い透明性を有していた。また、当該微粒子分散型重合性組成物を用いて作製された微粒子分散型硬化物は、曇りがなく、光学材料として好ましい透明性を有するものであったことが目視で確認された。この結果から、本発明に係る微粒子分散型重合性組成物および該微粒子分散型重合性組成物を用いて作製された微粒子分散型硬化物は、光学材料として優れ、回折格子、光導波路、光ファイバー、レンズ等の光学素子に有用であるといえる。