IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社サニカの特許一覧 ▶ 株式会社シブタニの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】室内利用管理システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/00 20230101AFI20240523BHJP
   G06Q 20/40 20120101ALI20240523BHJP
【FI】
G06Q10/00
G06Q20/40
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020089619
(22)【出願日】2020-05-22
(65)【公開番号】P2021184192
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2023-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】503253079
【氏名又は名称】株式会社サニカ
(73)【特許権者】
【識別番号】000131511
【氏名又は名称】株式会社シブタニ
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】IAT弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】石田 滋
(72)【発明者】
【氏名】谷村 俊彰
(72)【発明者】
【氏名】村田 泰久
(72)【発明者】
【氏名】高木 善洋
(72)【発明者】
【氏名】小笠 貴博
(72)【発明者】
【氏名】前田 利浩
【審査官】佐藤 敬介
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-233740(JP,A)
【文献】特開2009-002088(JP,A)
【文献】特開2019-219941(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の室内のユーザによる利用を管理する室内利用管理システムにおいて、
前記ユーザの認証情報、または前記室内を利用するための決済用具のうち、少なくとも一つを受け付ける受付手段と、
前記受付手段により受け付けられた前記認証情報に基づいてユーザ認証を実行する認証手段、または前記受付手段により受け付けられた前記決済用具に基づいて決済を行う決済手段のうち少なくとも一つと、
所定時間内に利用予約が設定されており、かつ前記室内に人がいるときには、前記認証手段によるユーザ認証が成功した場合においてのみ、または前記決済手段による決済が行われた場合においてのみ、ドアの施錠または閉扉を実行するドア制御手段とを有する、
ことを特徴とする室内利用管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の室内利用管理システムにおいて、
前記認証手段によるユーザ認証結果または前記決済手段による決済状況に関わらず、前記室内にいる前記ユーザが、前記ドア制御手段により施錠または閉扉された前記ドアを解錠または開扉できる、
ことを特徴とする室内利用管理システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の室内利用管理システムにおいて、
前記ドア制御手段により前記ドアを施錠する錠装置は、壁側及びドア側のいずれか一方に設けられ、アクチュエータにより作動する施錠部材と、壁側及びドア側のいずれか他方に設けられた受け部材と、室内から手動で操作可能な手動解錠手段を有し、
前記施錠部材は、前記受け部材に受け入れられた施錠状態と前記受け部材から離れた解錠状態の間を遷移可能に構成され、前記手動解錠手段を操作することによって前記施錠部材を施錠状態から解錠状態に遷移させることができるように構成されている、
ことを特徴とする室内利用管理システム。
【請求項4】
請求項3に記載の室内利用管理システムにおいて、
前記錠装置は、前記手動解錠手段を操作しても、前記施錠部材を解錠状態から施錠状態に遷移させることができないように構成されている、
ことを特徴とする室内利用管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内利用管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
外出先において例えば個室トイレを必要な時に確実に利用したいとの要望があり、そのために予約制トイレ又は有料制トイレが普及している。
【0003】
特許文献1には、利用者の携帯端末及びトイレに設けられたコントローラにパスワードを送信して、予約者のみに利用を許可する予約システムが記載されている。特許文献2には、携帯端末に個室トイレの空き情報を提供し、携帯端末から個室トイレの予約を受け付けるトイレ設備利用情報管理システムの例が記載されている。
【0004】
特許文献3には、トイレブースの内部に設けられたドア閉鎖用操作センサとドア開放用操作センサを操作することによって、利用者がトイレの内側からドアの開閉操作を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-233740号公報
【文献】特開2009-002088号公報
【文献】特開2017-201448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の予約式公衆トイレでは、例えば予約者が利用終了後に退室する際に開けたドアから、未予約者が入れ替わりにトイレブース内に入って、そのまま不正利用する可能性が残り、その結果、次の正規の予約者が利用できなくなるなどのトラブルが発生しており、権限の無い者の利用を確実に排除し、権限の有る者の利用を確実に可能にすることが困難であった。
【0007】
本発明の目的は、権限の無い者の利用を確実に排除し、権限の有る者の利用を確実に可能にする室内利用管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の室内利用管理システムの一側面は、所定の室内のユーザによる利用を管理する室内利用管理システムにおいて、ユーザの認証情報、または前記室内を利用するための決済用具のうち、少なくとも一つを受け付ける受付手段と、受付手段により受け付けられた認証情報に基づいてユーザ認証を実行する認証手段、または受付手段により受け付けられた決済用具に基づいて決済を行う決済手段のうち少なくとも一つと、所定時間内に利用予約が設定されており、かつ室内に人がいるときには、認証手段によるユーザ認証が成功した場合においてのみ、または決済手段による決済が行われた場合においてのみ、ドアの施錠または閉扉を実行するドア制御手段とを有することである。
【0009】
上記した構成によれば、所定時間内に利用予約がされており、かつ室内に人がいるときは、認証手段によるユーザ認証が成功した場合においてのみ、または決済手段による決済が行われた場合においてのみ、ドアの施錠または閉扉を実行するようにしたので、事前予約したユーザ、特権的利用権限のある特定ユーザ、またはトイレ等が設置された現地で利用決済をした人は、室内の利用権限が認められて、室内に入ってからドアを閉扉・施錠して利用することができる。また、これら利用権限がある正規のユーザが退室する際に、利用権限の無い非正規の非権限者が、開いたドアから入れ違いに入室したとしても、非権限者は室内からドアを施錠または閉扉することができない。したがって、室外からは、非権限者以外の誰でもドアを開けることができるので、非権限者は第三者に見せたくない作業を室内で行うことが難しくなる。
【0010】
また、例えば以後の所定時間以内に利用予約が無い場合は、非権限者も自由に利用できるようにすることもできる。なおこの場合、利用権限がある正規のユーザと非権限者の間に、室内の設備やアメニティグッズ等の備品の利用条件等に差を設けることで、有料利用への動機付けを高めても良い。
【0011】
本発明の室内利用管理システムの他の側面は、認証手段によるユーザ認証結果または前記決済手段による決済状況に関わらず、室内にいるユーザが、ドア制御手段により施錠または閉扉されたドアを解錠または開扉できることである。
【0012】
上記した構成によれば、ユーザ認証結果または決済状況に関わらず、室内にいるユーザが前記ドアを解錠または開扉できるようにしたので、すなわち室内からは誰でも、解錠または開扉できるようにしたので、例えば、利用1回あたりの料金が固定されている場合は、退室時に改めてユーザ認証や決済の手間をかけることなく、ドアを開いてすばやく室外に出ることができる。また例えば入室(または閉扉)から退室(または解錠)までの利用時間に応じた料金体系として、解錠又は開扉する前に再度認証または追加料金支払いをしてもらうように利用管理システムを構築した場合において、地震や災害など緊急事態における停電などが発生し、認証や課金ができない場合にも、緊急避難的に解錠または開扉して、利用者は室外に退避することができる。
【0013】
また、認証しても、所定時間経過すると、警報音を発した後に、解錠し、その後手動で開扉できるように構成しても良い。
【0014】
本発明の室内利用管理システムの他の側面は、ドア制御手段によりドアを施錠する錠装置は、壁側及びドア側のいずれか一方に設けられ、アクチュエータにより作動する施錠部材と、壁側及びドア側のいずれか他方に設けられた受け部材と、室内から手動で操作可能な手動解錠手段を有し、施錠部材は、受け部材に受け入れられた施錠状態と受け部材から離れた解錠状態の間を遷移可能に構成され、ユーザが手動解錠手段を操作することによって施錠部材を施錠状態から解錠状態に遷移させることができるように構成されている。
【0015】
錠装置は、施錠状態と解錠状態の間を遷移可能に構成され、かつ、ユーザが手動解錠手段を操作することによって錠装置を施錠状態から解錠状態に遷移させることができるように構成されているため、個室トイレに入室してドア内側から施錠した後に、ユーザの携帯電話又は後述するドアのユーザインターフェース部の不具合や錠装置のアクチュエータ等が作動しなくなった場合等により、錠装置の電子的な解錠処理が不能(異常事態)になった場合でも手動でドアを確実に開閉することができる。このため、個室トイレ内に閉じ込められることを回避することができる。
【0016】
本発明の室内利用管理システムの他の側面は、錠装置は、手動解錠手段を操作しても、錠装置を解錠状態から施錠状態に遷移させることができないように構成されている。
【0017】
このように構成することによって、利用者権限の無い者が個室トイレ内に入っても錠装置を施錠することができないから、権限の無い者の利用を排除することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、権限の無い者の利用を確実に排除し、権限の有る者の利用を確実に可能にする室内利用管理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は本実施形態に係る室内利用管理システムの例を説明する図である。
図2A図2Aは本実施形態に係るドアロック装置の構成例を説明する図である。
図2B図2Bは本実施形態に係るドアロック装置の制御部の構成例を説明する図である。
図3A図3Aは本実施形態に係るトイレ管理装置の構成例を説明する図である。
図3B図3Bは本実施形態に係るトイレ管理データベースに格納されたデータの例を説明する図である。
図4A図4Aは利用者が個室トイレの利用を開始する場合を説明する図である。
図4B図4Bは利用者が個室トイレの利用を終了する場合を説明する図である。
図5A図5Aは、利用者が個室トイレの内部に入る前の状態を示す図である。
図5B図5Bは、利用者が個室トイレの内部に入った状態を示す図である。
図6A図6Aは、利用者が個室トイレの内部からドアを閉め、錠装置を施錠する状態を示す図である。
図6B図6Bは、利用者が個室トイレの便器を使用する状態を示す図である。
図7A図7Aは、利用者が個室トイレの内部から錠装置を解錠する状態を示す図である。
図7B図7Bは、利用者が個室トイレの内部からドアの外に出る状態を示す図である。
図8A図8Aは解錠状態にある本実施形態に係る錠装置の透過図である。
図8B図8Bは施錠状態にある本実施形態に係る錠装置の透過図である。
図9A図9Aは本実施形態に係る錠装置の手動解錠部材の操作方法を説明する透過図である。
図9B図9Bは本実施形態に係る錠装置の手動解錠部材の操作方法を説明する透過図である。
図10A図10Aは本実施形態に係る錠装置の手動解錠部材の操作方法を説明する透過図である。
図10B図10Bは本実施形態に係る錠装置の手動解錠部材の操作方法を説明する透過図である。
図11図11は本実施形態に係る室内利用管理システムの例における信号の流れを説明する図である。
図12図12は、利用者の携帯端末の表示部に示された地図上の個室トイレの位置を示す画面の例を示す図である。
図13A図13Aは、利用者の携帯端末の表示部に示された個室トイレの位置を検索するための画面の例を示す図である。
図13B図13Bは、利用者の携帯端末の表示部に示された個室トイレを選択する画面の例を示す図である。
図14A図14Aは、利用者の携帯端末の表示部に示された個室トイレの平面図を示す画面の例を示す図である。
図14B図14Bは、利用者の携帯端末の表示部に示された個室トイレの空き状態を示す画面の例を示す図である。
図15A図15Aは、利用者の携帯端末の表示部に示された認証コードの例を示す図である。
図15B図15Bは、利用者の携帯端末の表示部に示された認証コードの他の例を示す図である。
図16図16は、利用者の携帯端末の表示部に示された認証コードの他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る実施形態に関して、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中、同一の要素に対しては同一の参照符号を付して、重複した説明を省略する。
【0021】
図1を参照して本実施形態に係る室内利用管理システムの例を説明する。本例の室内利用管理システム1は、個室トイレ2に設けられたドアロック装置20とトイレ管理サーバ3を有する。個室トイレ2には便器22が設けられている。ドアロック装置20とトイレ管理サーバ3は通信ネットワーク6を介して通信可能に接続されている。トイレ管理サーバ3は、個室トイレ2を管理するトイレ管理装置30とトイレ管理装置30に接続されたトイレ管理データベース32を有する。
【0022】
本実施形態に係る室内利用管理システムは、利用者5は、事前に遠隔予約を行う場合、携帯端末4等を介してトイレ管理サーバ3と通信し、個室トイレ2を利用する権限が与えられる。または、現地で空いているトイレブースで認証または決済を行い、その場で利用権限を取得することもできる。なお利用権限の取得には、携帯端末4に限られず、マイナンバーカード、クレジットカード、交通系ICカード、電子マネーカード、仮想通貨、生体情報、マイクロチップ・インプラント、ICカード付き社員証等個人に紐付いた情報を扱うことができるものや、個人に紐付かない現金、専用メダル等を用いることもできる。こうして、所定の権限を有する利用者5のみが、個室トイレ2を利用することができる。本実施形態では、所定の権限を有する利用者5のみが、個室トイレの外側からドア21の解錠を行うことができ、さらにトイレの利用時にドア21の解錠を行った所定の権限を有する利用者5のみが、個室トイレのドアを全閉して、内側からドア21の施錠を行うことができる。
【0023】
本実施形態では、事前に遠隔予約を行う場合は、トイレ管理サーバ3は二要素認証により、利用者の認証を行う。二要素認証は第1認証と第2認証を含む。第1認証では、ユーザIDとログインパスワードを用いてユーザ認証を行う。第2認証ではワンタイムパスワードを用いて利用者権限認証を行う。本実施形態で用いる認証方式については後に詳細に説明する。
【0024】
トイレ管理サーバ3には、利用者5の認証を行う認証サーバ7と個室トイレ2の利用料金を決済する決済サーバ8が接続されてもよい。以下の説明では、トイレ管理サーバ3は認証機能及び決済機能を備えているものとして説明するが、認証サーバ7及び決済サーバ8と提携し、又は、認証サーバ7及び決済サーバ8が代行して認証を行ってもよい。例えば、トイレ管理サーバ3は、認証サーバ7及び決済サーバ8が提供するAPI(Application Programming Interface)を利用してもよい。なお、トイレ管理サーバ3は請求項1に記載された「認証手段」に相当する。
【0025】
携帯端末4は、CPU(Central Processing Unit)を備え、モバイルオペレーティングシステム(モバイルOS)を搭載し、通信機能を備えた携帯型の電子機器であればよく、どの様な名称で呼ばれてもよい。例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレット、モバイル端末等の名称で呼ばれるが、必ずしもこれらの名称に限らない。モバイルOSとして、iOS、Android、Firefox OS、Tizen、Harmoney等が知られている。なお、携帯端末4は、小型のラップトップ型コンピュータであってもよい。また、事前予約時はデスクトップコンピュータで行い、認証端末として携帯端末4を指定しても良いし、事前予約時に特定のメールアドレスにワンタイムパスワードを送るように指定しておき、当該ワンタイムパスワードを記述したメールを受信できる端末を用いて利用しても良い。もしくは事前予約時をデスクトップコンピュータで行ったときにデスクトップコンピュータ上に表示される暗証番号(Pin-No)をメモしておき、後述する個室トイレのユーザインターフェース部に入力しても良い。
【0026】
トイレ管理サーバ3は、サービス運営会社9を介して個室トイレ2の清掃、維持等の管理を行ってもよい。サービス運営会社9は、個室トイレ2及びドアロック装置20の不具合、利用不能等をトイレ管理サーバ3に通知してもよい。
【0027】
図2Aを参照して本実施形態に係るドアロック装置20の例を説明する。本例のドアロック装置20は、ドアロック装置20の各機能を制御する制御部200、トイレ管理サーバ3との間でデータの交信を行うネットワーク通信部201、個室トイレ2の内側に設けられた室内ユーザインターフェース部202、個室トイレ2の外側に設けられた室外ユーザインターフェース部203、個室トイレ2のドア21の施錠及び解錠を行う錠装置204、個室トイレ2の内部に設けられた人感センサ206、個室トイレ2のドア21を自動的に開閉するオートドア装置207、トイレが空いているときに事前予約を行わずに、直接利用料金を決済するための決済装置208を有する。なお、室内ユーザインターフェース部202と室外ユーザインターフェース部203は請求項1に記載された「受付手段」に相当し、制御部200は請求項1に記載された「ドア制御手段」に相当する。ユーザインターフェースの方法としては、二次元コードリーダ、非接触ICリーダ、生体認証、BLE(Bluetooth Low Energy)(登録商標)、WiFi、テンキー入力、等があるが、これに限定はされない。
【0028】
図2Bを参照して本実施形態に係るドアロック装置20の制御部200の例を説明する。本例の制御部200は、トイレ管理サーバ3、利用者5の携帯端末4等から提供された情報を格納する情報格納部2001、室内ユーザインターフェース部202又は室外ユーザインターフェース部203を介して利用者から提供された認証コードとトイレ管理サーバ3から提供された認証コードを照合して利用者権限の認証を行う利用者権限認証部2002、錠装置204を駆動する駆動信号を生成する錠駆動信号生成部2003、及び、オートドア装置207を駆動するオートドア駆動信号を生成するオートドア駆動信号生成部2004を有する。
【0029】
本例では、個室トイレ内に利用者がいない場合は、オートドア装置207によりドア21は自動閉鎖され、ドアロック装置20により自動施錠される。
【0030】
ここで現時点より第1の所定時間内(例えば現時点より15分未満)に個室トイレの利用予約が設定されている場合は、利用予約した者のみが、ドア21を解錠・開扉し、室内に入室後に、ドア21を閉鎖・施錠することができる。この時間帯においては、利用予約者以外は,利用権限がない者として扱われ、オートドア装置207によるドアの開閉扉や錠装置204の施解錠はできない。また前の利用者が退出するときに、利用権限のない者が入れ違いで室内に入り込んだとしても、利用権限のない者は当該個室の施錠または閉扉を行えない。
【0031】
より詳細に説明すると、まず利用予約者は室外ユーザインターフェース部203を介して認証コードを提供し、後述する第2認証処理において一致が確認されると、錠駆動信号生成部2003によって解錠命令信号が生成されて錠装置204に送信され、解錠命令信号を受けた錠装置204は解錠処理を開始する。引き続き、同様にオートドア装置207にも開扉命令信号が送信されて、ドア21の開扉処理を開始する。ドア21が開扉し、個室トイレ2の内部に設けられた人感センサ206によって利用者5が入室したことが検知されるか、室内ユーザインターフェース部202を介して認証コードを提供することで、錠駆動信号生成部2003によって、まず解錠命令信号が生成されて錠装置204に送信され、オートドア装置207に閉扉命令信号が送信されて、ドア21の閉扉処理が開始され、閉扉完了後に、錠駆動信号生成部2003によって施錠命令信号が生成されて錠装置204に送信され、施錠命令信号を受けた錠装置204は施錠処理を行う。
【0032】
利用者5による個室トイレの利用終了は、制御部200によって判定される。制御部200は、例えば、退出時に利用者権限のある利用者5からの認証コードの送信に対してトイレ管理サーバ3から送信される開錠解錠命令信号の送信時、人感センサ206による検出時刻、オートドア装置207の開閉時刻、または室内において利用者が室内ユーザインターフェース部202を介して認証コードを提供した時刻、の少なくとも一つに基づいて、個室トイレの利用終了が判定される。例えば、人感センサ206によって個室トイレ内に利用者が存在していることが検出された状態で、上述した第2認証に基づく解錠命令信号によって錠装置204が解錠された場合には、個室トイレの利用が終了したと判定してよい。なお上記において入退室に際して計2回以上、認証コードの提供を行うことを例示したが、これは利用開始時刻と利用終了時刻とを特定するためである。ただし利用開始時点で個人の特定はできているので、退室時の認証は行わず、単に終了時点では図示しない解錠・開扉スイッチ(非接触型が好ましい)の操作を行い、解錠・開扉を行った時刻を終了時刻としても良い。こうして、個室トイレの利用が終了と判定された場合には、例えば利用者5の退出完了をもってドア21の閉扉処理が開始され、閉扉完了後に、錠駆動信号生成部2003によって施錠命令信号が生成されて錠装置204に送信され、施錠命令信号を受けた錠装置204は施錠処理を行う。
【0033】
上記は事前予約したものによる利用開始~終了の流れを記述したが、事前予約者以外の利用もできるように構成してもよい。個室トイレ内に利用者がおらず、現時点より第2の所定時間内(例えば15分以上3日未満)に個室トイレの利用予約が設定されている場合は、事前予約した者、事前に登録承認済で利用権限が付与されている者、または当該個室トイレのドアロック装置20の決済装置208にて、利用料金を決済した者のみが、ドア21を解錠・開扉し、室内に入室後に、ドア21を閉鎖・施錠することができる。ここで、事前に登録承認済で利用権限が付与されている者とは、例えば会社の役員以上であるとか、例えばサブスクリプション(月額課金)の利用者(例えば図16に示す定期利用用認証コードが表示される)などがあげられる。
【0034】
上記第2の所定時間内で、上記権限者の利用を可能にするために、室外ユーザインターフェース部203には、さらにマイナンバーカード、クレジットカード、交通系ICカード、電子マネーカード、仮想通貨、生体情報、マイクロチップ・インプラント、ICカード付き社員証等個人に紐付いた情報を読み取り可能なリーダ(図示せず)や、現金や当該個室トイレ利用のための専用メダルの投入孔(図示せず)を備えても良い。専用メダルとは、例えば、レストラン街などで共有管理するトイレをレストラン利用者は店で申し出ることで、渡してもらえる無料利用を可能にするためのメダルである。
【0035】
なお、事前の遠隔予約を行わずに、現地の個室トイレに設置されたユーザインターフェース部202,203で認証または決済する際は、二要素認証を用いず、一要素認証で簡略に行ってもよい。認証情報要素としては、上記携帯端末4以外に、マイナンバーカード、クレジットカード、交通系ICカード、電子マネーカード、仮想通貨、生体情報、マイクロチップ・インプラント、ICカード付き社員証等、個人を特定できる情報を備えたツールを用いることもできる。個人を特定する情報は室外ユーザインターフェース部203で受け付けられ、後述の認証手段でユーザ認証が成功した場合は、個室トイレを利用できる。
【0036】
また個人認証を行わず、室外ユーザインターフェース部203で決済することで個室トイレを利用することもできる。決済するための決済用具としては、クレジットカード、交通系ICカード、電子マネーカード、仮想通貨、現金、専用メダル等である。なおクレジットカードから仮想通貨までの情報は携帯端末4等にインストールされたアプリケーション上で扱える情報であっても良い。これら決済用具が室外ユーザインターフェース部203で受け付けられると、後述の決済手段にて決済され、個室トイレを利用できる。
【0037】
こうしてユーザ認証が成功した場合においてのみ、または前記決済手段による決済が行われた場合においてのみ、利用のためにドア21を閉扉・施錠できるが、認証できず、決済もしていない者は、たとえ入室できたとしてもドア21を閉扉・施錠できない。
【0038】
なお本例においては、原則として事前予約、特定の権限者、または決済をした者のみが個室トイレを利用できるものとしたが、現時点より第2の所定時間内(例えば15分以上3日未満)に個室トイレの利用予約が設定されていない場合や、第3の所定時間内(例えば過去3日間から今後15分以内)にわたって予約設定がされていない場合は、利用頻度が低い施設と見なすことができるから、施設の有効活用のために、無料での利用を可能にしても良い。そのよう場合は、室外ユーザインターフェース部203近傍等に、図示しない解錠・開扉スイッチ(非接触型が好ましい)を設置すると共に、室内ユーザインターフェース部202近傍等に、図示しない閉扉・施錠スイッチと解錠・開扉スイッチを設置する。この解錠・開扉スイッチ、閉扉・施錠スイッチ(非接触型が好ましい)を操作することで、権限のない者でも個室トイレを利用することが可能になる。ただし、現時点より第1の所定時間内(例えば現時点より15分未満)に個室トイレの利用予約が設定されている場合や、現時点より第2の所定時間内(例えば15分以上3日未満)に利用予約が設定されている場合、または第3の所定時間内(例えば過去3日間から今後15分以内)に予約設定された場合は、無料利用できないように設定しても良い。なお無料利用者の場合は、例えば1回あたりの利用可能時間に制限を設けるとか、室内のアメニティ等の備品類は使用できないとかの、差を設けても良い。
【0039】
また、通勤時間帯など、利用者が多いときのみ所定時間帯のみを事前予約可能な所定時間帯のみ、または単なるトイレとして使用する時間帯をシステム上設定しても良い。また、上記説明においては、「現時点より第2の所定時間内(例えば15分以上3日未満)」等と例示しているが、第2の所定時間を例えば「15分以上3650日未満」などと長期に設定してもよい。こうすれば、実質的に無料での利用、または無権限者の利用を排除することもできる
【0040】
図3Aを参照して本実施形態に係るトイレ管理装置30の例を説明する。本例のトイレ管理装置30は、ドアロック装置20とデータの交信を行う通信部301、利用者の携帯端末4から送信されたユーザ情報に基づいて、ユーザID及びログインパスワードを設定し、それをトイレ管理データベース32に登録するユーザ登録部302、利用者の携帯端末4から送信されたユーザID及びログインパスワードをトイレ管理データベース32に登録されたユーザID及びログインパスワードと照合してユーザ認証(第1認証)を行うユーザ認証部303、ユーザ認証の結果に基づいて認証コードを生成する認証コード生成部304、ドアロック装置20及びサービス運営会社9から送信されたトイレに関する情報をトイレ管理データベース32に格納するトイレ情報管理部305、及び、個室トイレの利用料金に関する決済を管理する決済管理部306を有する。なお、決済管理部306は請求項1に記載された「決済手段」に相当する。
【0041】
図3Bを参照して本実施形態に係るトイレ管理データベース32に格納されたデータの例を説明する。トイレ管理データベース32には、ユーザ情報321、トイレ情報322、トイレ予約利用情報323、及び、トイレ料金情報324が格納されている。ユーザ情報321はユーザID、ログインパスワード、氏名、住所、年齢等の個人情報を含む。トイレ情報322は、登録された個室トイレの識別番号、位置、メンテナンス履歴等を含む。トイレ予約利用情報323は、個室トイレの利用状況、使用履歴等を含む。トイレ料金情報324は、個室トイレの料金に関する情報を含む。
【0042】
図4A図4B図5A図5B図6A図6B図7A、及び、図7Bを参照して本実施形態に係るドアロック装置20の錠装置204の施錠解錠操作方法及び利用者5の個室トイレの利用開始から利用終了までの施錠解錠処理について説明する。ここで、錠装置204はソレノイドを用いた機構を有する電気錠であり、ソレノイドに一時的に電流を流すことで解錠と施錠を可能とするものである。
【0043】
[個室トイレの利用開始時]
図4A及び図5Aを参照して、個室トイレの利用を開始する際の錠装置204の施錠解錠処理について説明する。利用者5は、先ず、ユーザ認証である第1認証と利用者権限認証である第2認証の2つの認証を行う。ここでは第1認証がすでに完了し、第2認証を行う場合を説明する。図4A及び図5Aの例は、室外ユーザインターフェース部203を介して第2認証を行う例である。第1認証が完了すると利用者5の携帯端末4には認証コードを表す二次元コード(図15A図16参照)又は所定の数字列(図15B参照)が表示される。個室トイレの外部に室外ユーザインターフェース部203が設けられている。更に、監視カメラ23、及び、表示装置24を設けるようにしてもよい。監視カメラ23は、個室トイレの中に入る利用者を撮像するように構成され、表示装置24は個室トイレが使用中、空室、予約中、緊急事態などを示すように構成されている。監視カメラ23は、例えば長時間在室したままの場合など、急病の可能性があるため、入室者の状況を記録し、救急対応を行えるようにするため等に用いたり、本来のトイレとしての利用ではなく、不審物を持ち込んだ形跡がある場合等の場合に、不審者を特定するために用いられたりする。また表示装置24は、個室トイレの利用状況を室外で容易に判断できるようにするためである。通常は、使用中、空室、予約中のいずれかを表示するが、監視カメラの状況などから緊急事態である判断された場合は、表示装置24は緊急事態と表示され、警告音が発せられるように構成しても良い。
【0044】
以下では、認証コードとして二次元コードを用いた場合の具体的な解錠操作処理について説明する。利用者5は携帯端末4の画面に表示された認証コードを、リーダとして機能する室外ユーザインターフェース部203にかざす。室外ユーザインターフェース部203は携帯端末4に表示された二次元コードを読み取り、読み取られた二次元コードは、制御部200の利用者権限認証部2002を介してトイレ管理サーバ3に送信され照合処理が行われる。トイレ管理サーバ3によって、送信された二次元コードとあらかじめ利用者5へ伝えた二次元コードとが一致する判定がなされたら、トイレ管理サーバ3から一致認証信号が制御部200の錠駆動信号生成部2003に送信される。一致認証信号を受けた錠駆動信号生成部2003は解錠命令信号を生成し錠装置204に送信する。解錠命令信号を受けた錠装置204は解錠処理を開始する。そして錠装置204に駆動電流が流れ錠装置が解錠される。認証コードの認証については後に詳細に説明する。尚、本例においては、トイレ個室の利用終了後は常にドア21を閉じるように構成したため、上記した第2認証は室外ユーザインターフェース部203を用いるようにしたが、例えば利用時のみドア21が閉扉・施錠され、利用されないときは常にドア21は開いた状態にシステムを構成した場合は、室外ユーザインターフェース部203の代わりに室内ユーザインターフェース部202を介して認証を行ってもよい。その場合、室外ユーザインターフェース部203は排除しても良い。
【0045】
[個室トイレ入室後]
錠装置204の解錠後、利用者5がトイレ室内に入室した場合(図4B図6A参照)に、利用者5は携帯端末4の画面に表示された認証コードを、リーダとして機能する室内ユーザインターフェース部202にかざす。室内ユーザインターフェース部202は認証コードを読み取り、読み取られた認証コードはトイレ管理サーバ3に送出され照合処理が行われる。認証コードによる第2認証で認証コード一致の判定がなされると錠装置204に駆動電流が流れ錠装置が施錠される。本実施形態では、所定の権限を有する利用者5のみが、個室トイレの錠装置204を施錠可能な状態にすることができ、所定の権限を有しない者は仮に入室できたとしても施錠処理を行うことができないのでトイレ利用は事実上不可能である。
【0046】
[個室トイレ退室時(利用終了時)]
次に、図4B及び図7Aを参照して、利用者5が利用を終了しトイレから退出したい場合の錠装置204の解錠処理について説明する。個室トイレ1回あたりの利用料金が利用開始から利用終了までの時間に比例する従量制の場合、利用者5は、先ず、利用者権限認証である第2認証を行う(第1認証は入室時にすでに完了済)。図4B及び図7Aの例は、室内ユーザインターフェース部202を介して第2認証を行う例である。利用者は携帯端末4の画面に表示された認証コードとしての二次元コードを、リーダとして機能する室内ユーザインターフェース部202にかざす。室内ユーザインターフェース部202は二次元コードを読み取り、読み取られた二次元コードは、制御部200の利用者権限認証部2002を介してトイレ管理サーバ3に送信され照合処理が行われる。トイレ管理サーバ3によって、送信された二次元コードとあらかじめ利用者5へ伝えた二次元コード(トイレ入室時において発行された二次元コードとは原則異なるが同じであってもよい。)とが一致する判定がなされたら、トイレ管理サーバ3から一致認証信号が制御部200の錠駆動信号生成部2003に送信される。一致認証信号を受けた錠駆動信号生成部2003は解錠命令信号を生成し錠装置204に送信する。解錠命令信号を受けた錠装置204は解錠処理を開始する。そして錠装置204に駆動電流が流れ錠装置が解錠される。尚、上記した第2認証は室内ユーザインターフェース部202の代わりに室外ユーザインターフェース部202を介して認証を行ってもよい。したがって、本実施形態では、所定の権限を有する利用者5のみが、トイレ利用終了後退出したい場合に、個室トイレの錠装置204を解錠可能な状態にすることができる。なお、上記した例は利用者5が認証を経た後に解錠が可能となる例であるが、認証処理を経ることなく解錠に必要な例えば簡単な解錠(退出)パスワード等を発行してもらう等、煩雑な認証処理を経ることなく解錠できるようにしてもよい。このようにすればシステムの簡素化が図れ、利用時間の短縮等が図れる。
【0047】
なお、図7Bは、利用者が個室トイレから外に出る状態を示すが、人感センサ206によって利用者5がドア21を通ったことが検出され、人感センサ206からの検出信号は、トイレ管理装置30に送信される。この検出信号をもって錠装置204の駆動状態は解除され、他の人が入れ違いに入室して手動でドア21を閉じても、認証成功または決済完了していない場合にはドア21は施錠できない状態となる。
【0048】
[変形例]
上記した実施例は、ドア外側から利用権限を有する利用者が上記した認証を経て解錠し、トイレに入室した利用者が上記した認証を経て施錠し、トイレ利用終了後に上記した認証を経て解錠するといった認証操作及び施錠/解錠処理を実行するものであったが、これに限定されない。例えば、ドア21は、利用されていないときは、常に開くように構成し、トイレ入室時において認証処理を不要とするいわゆる認証フリーの状態に置き、トイレ入室後において上記した認証、または後述の決済用具を用いた決済を経て施錠し、トイレ利用終了後に認証処理をすることなく解錠してトイレから退出するというシステムにしてもよい。この場合は、たとえば施錠時刻と開場時刻をドアロック装置20で読み取り、これにより利用時間を算出して課金しても良い。本変形例の場合は、仮に不正入室されたとしても、トイレ室内からは利用者権限を有する利用者のみしか施錠することができないので、不正利用者はそもそも施錠することができないため実質的にトイレを利用することができない。この変形例は上記した第1認証、第2認証を行う手間が省け、システムの簡素化を図るとともに実質的に不正利用者を抑制できるといった効果が図れる。このように事前予約を行うことなく、1回の認証で行う方法としては、携帯端末4を利用する以外に、マイナンバーカード、クレジットカード、交通系ICカード、電子マネーカード、仮想通貨、生体情報、マイクロチップ・インプラント、ICカード付き社員証等を用いることができる。また決済のための用具としては、クレジットカード、交通系ICカード、電子マネーカード、仮想通貨、現金、専用メダル等を用いることができる。
【0049】
[錠装置の構造及び動作]
図8A及び図8Bを参照して本実施形態に係る錠装置204の構造及び動作の例を説明する。錠装置204は、施錠部材2041、回転軸2042、受け部材2043、手動解錠手段である手動解錠部材2044、及び、手動解錠部材案内溝2045を有し、受け部材2043および手動解錠部材2044を除いて壁25の内部に隠して設けられている。なお、図8A図10Bは壁25及びドア21の内部の錠装置204の構造を説明するための透過図である。受け部材2043はドア21の内部に設けられ、手動解錠部材2044はトイレ室内側に突出するようになっている。施錠部材2041は、図示しないモータ等のアクチュエータにより回転軸2042周りに回転可能に構成されている。ここでアクチュエータとしては、モータ以外にもソレノイド、動力シリンダ、リニアアクチュエータ、電磁石等、適宜選定しうる。なお、施錠部材2041、回転軸2042、及び、手動解錠部材案内溝2045がドア21の内部に設けられ、受け部材2043が壁25の内部に設けるようにしてもよい。手動解錠部材2044と手動解錠部材案内溝2045の機能については後に図9A及び図9Bを参照して説明する。
【0050】
施錠部材2041は、解錠状態と施錠状態の間を遷移することができる。図8Aは解錠状態を示す。解錠状態では、施錠部材2041は垂直に直立した状態となり、ドア21に係合していない。従ってドア21を自由に開けることができる。図8Bは施錠状態を示す。施錠状態では、受け部材2043に支持され、水平に配置された状態となり、ドア21に係合している。従ってドア21を自由に開けることはできない。
【0051】
図9A及び図9Bを参照して本実施形態に係る錠装置204の手動解錠部材2044の操作方法の例を説明する。上述のように、施錠部材2041は、図示しないアクチュエータにより枢動するが、アクチュエータの故障等で施錠部材2041が作動しなくなった場合や、携帯端末4の充電切れ等何らかのトラブルで通信できない状態となり解錠処理が行えない場合には利用者は個室トイレ内に閉じ込められた状態となる。そこで、本例では、上記した非常時において施錠部材2041を手動で操作し解錠できるように構成されている。施錠部材2041は、円弧状の切り欠き2041Gを備える。切り欠き2041Gは、回転軸2042を中心とする円弧状に形成された円弧部2041bとその両端の第1のストッパ部2041a及び第2のストッパ部2041cを有する。手動解錠部材案内溝2045の軌道は、回転軸2042を中心とする円弧状に形成されている。
【0052】
図9Aは錠装置204が施錠状態にあることを示す。手動解錠部材2044は、手動解錠部材案内溝2045に沿って手動により往復自在に可動に構成されている。手動解錠部材2044を図9Aに示す状態から図9Bに示す状態まで、手動解錠部材案内溝2045に沿って移動させると、手動解錠部材2044は切り欠き2041Gの第2のストッパ部2041cに係合した状態で、施錠部材2041は回転軸2042周りに枢動する。施錠部材2041は水平の施錠状態から垂直の解錠状態に遷移する。
【0053】
図9Bは錠装置204が解錠状態にあることを示す。こうして本例では、手動で錠装置204を施錠状態から解錠状態に遷移させることができるから、施錠部材2041を枢動させるアクチュエータが動かなくなった場合でも、個室トイレに閉じ込められることはない。
【0054】
ここで図10A及び図10Bを参照して本実施形態に係る錠装置204の手動解錠部材2044を、上記手動解錠時と反対方向に手動解錠部材2044を操作したときの挙動を説明する。図10Aは、図9Aと同様に、錠装置204が解錠状態にあることを示し、手動解錠部材2044が切り欠き2041Gの第2のストッパ部2041cに係合した状態にある。ここで、手動解錠部材2044を手動解錠部材案内溝2045に沿って上方に移動させようとしても施錠部材2041は動かない。図10Bに示すように、施錠部材2041は垂直な解錠状態のままである。したがって上記構成によれば、手動で錠装置204を解錠状態から施錠状態に遷移させることはできない。したがって、利用権限のない者は、トイレの施錠を行うことはできない。なお手動解錠部材2044は図示しないバネ部材によって、図10Bにおいて常に時計方向に付勢されていても良い。このようにすると、手動解錠操作後に手を離せば、手動解錠部材2044は自動的に図10Aに示す位置まで戻すことができる。
【0055】
図11を参照して本実施形態に係る室内利用管理システム1の利用例を説明する。ここでは、利用者の携帯端末4、個室トイレに設けられたドアロック装置20、トイレ管理サーバのトイレ管理装置30及び決済サーバ8の間のデータの交信を説明する。
【0056】
先ずユーザ登録を行う。ステップ401及びステップ301にて、ユーザID及びログインパスワードを設定する。ユーザIDは携帯端末4のメールアドレス、又は、電話番号であってもよい。ユーザID及びログインパスワードは、トイレ管理データベース32のユーザ情報321に格納される。
【0057】
ユーザ登録が完了すると利用者5は、所定の個室トイレを利用できる。利用方法には、予約による利用と予約なしの利用が可能であるが、ここでは、予約なしの利用の場合を説明する。ステップ402にて、利用者5は、携帯端末4に入力画面を表示し、ステップ403にて、個室トイレの利用を申し込む。本実施形態では、個室トイレを利用するために二要素認証を行う。二要素認証は第1認証と第2認証を含む。
【0058】
先ず、第1認証を説明する。利用者5は、先ず、携帯端末4を介してユーザID及びログインパスワードを入力する。ステップ302にて、トイレ管理装置30は第1認証を行う。トイレ管理装置のユーザ認証部303は、携帯端末4から送信されたユーザID及びログインパスワードをトイレ管理データベース32のユーザ情報321に格納されたユーザID及びログインパスワードと照合する。ステップ801にて、決済サーバ8は、トイレ管理装置30から提供されたユーザ情報に基づいて本人認証を行う。こうして、トイレ管理装置30と決済サーバ8によるユーザ認証が完了すると、次に、第2認証を行う。
【0059】
第2認証を説明する。ステップ404、ステップ201、及び、ステップ303にて、第2認証を行う。トイレ管理装置30のユーザ認証部303は、乱数列に基づいて認証コードを生成し、それを携帯端末4と個室トイレのドアロック装置20に送信する。利用者5は、認証コードを、トイレ管理装置30の室内ユーザインターフェース部202を介して入力する。
【0060】
室内ユーザインターフェース部202又は室外ユーザインターフェース部203は、認証コードの入力を受け入れる機能を有する。認証コードは二次元コードであってもよいが数字列又は文字列であってもよい。室内ユーザインターフェース部202又は室外ユーザインターフェース部203は、例えば、携帯端末4の画面に表示された認証コードである二次元コード又は数字列を読み取る機能を備えてもよく、又は、利用者が数字列又は文字列を入力するキー装置を設けてもよい。
【0061】
トイレ管理装置30のユーザ認証部303は、トイレ管理装置30から送信された認証コードと利用者の携帯端末4から提供された認証コードとを照合する。照合の結果、両者が一致したら、第2認証が完了する。こうして第1認証及び第2認証が完了すると、利用者は個室トイレを利用することができる。
【0062】
本実施形態では、第2認証はワンタイムパスワードを用いる。利用者の携帯端末4にて受信した認証コードは、ワンタイムパスワードである。従って、認証コードは、所定の時間が経過すると使用不可となる。
【0063】
ステップ405にて、利用者は個室トイレの利用を開始する。ステップ202にて、利用者は個室トイレのドアの開閉を行い、錠装置の解錠又は施錠を行う。ステップ406にて、利用者は個室トイレの利用を終了する。ステップ203にて、個室トイレのドアの開閉を行い、錠装置の解錠又は施錠を行う。
【0064】
個室トイレの利用開始及び利用終了は、ドアロック装置20の制御部200によって判定される。本例では、第2認証が完了した時刻を個室トイレの利用開始時刻とする。上述のように第2認証が完了すると錠駆動信号が生成され、錠装置204は駆動可能状態となる。従って、錠装置204が駆動可能状態になった時点が個室トイレの利用開始時刻である。
【0065】
一方、個室トイレの利用終了の判定は、退出時に利用者権限のある利用者5からの認証コードの送信に対してトイレ管理サーバ3から送信される解錠命令信号の送信時、人感センサ206による検出時刻、オートドア装置207の開閉時刻の内の少なくとも一つに基づいて行われる。こうして複数の情報に基づいて個室トイレの利用終了を判定する。個室トイレの利用が終了したと判定されると錠駆動不可信号が生成され、他の人が入れ違いで入室してドア21を手動で閉じようとしても、錠装置204は施錠不可能な状態となる。従って、錠装置204が施錠不可能な状態になった時点が個室トイレの利用終了時刻と見なすこともできる。
【0066】
なお、オートドア装置207は、錠装置204が解錠、施錠することに連動して、開扉、閉扉を自動で行う構成としても良いし、開扉または閉扉の内の一方のみを行うものでも良い。また認証失敗や未決済などによりドア21が施錠されない状態の場合は、ドア21を全閉せずに、全開または半開の状態に保つように、図示しないストッパ手段等が作動するように構成しても良い。こうすると、非権限者は入室しても閉扉できないので、第三者に見せたくない作業を室内で行うことが難しくなる。これによりテロ・放火などの犯罪行為の予防も可能になる。また認証や決済等が行われた場合でも、閉扉完了直前に権限者がドアをすり抜けて退室して室内に人がいなくなったことを個室内の人感センサ206や個室外側の監視カメラ23等により検出した場合には、施錠や完全閉扉を行わない、または開扉するように設定しても良い。こうすることで、たとえば爆弾、毒ガスなど犯罪に関わる異物などを個室トイレ室内に放置することが困難になる。
【0067】
個室トイレの利用時間は、トイレ管理装置30を介して決済サーバ8に送信される。ステップ802にて、決済サーバ8は、料金を計算する。ステップ803にて、決済サーバ8は、トイレ管理装置30を介して料金を利用者の携帯端末4に送信する。ステップ407にて利用者の携帯端末4を介して決済を実行する。
【0068】
図12図13A図13B図14A図14B図15A、及び、図15Bを参照して利用者の携帯端末4の画面に表示される画像の例を説明する。これらの画像は、トイレ管理サーバ3から提供される。
【0069】
図12は、トイレ管理サーバ3が管理する個室トイレの位置を地図上に示した図であり、利用者は所望の個室トイレを選択することができる。図13Aは、トイレ管理サーバ3が管理する個室トイレの位置を都道府県の地区名から選択するための図であり、利用者は所望の個室トイレの位置を選択することができる。図13Bは、利用者が東京駅を選択した状態を示す図である。東京駅には多数の個室トイレがあるが、利用者はそれより所望の個室トイレを選択し、利用状況、予約状況をチェックすることができる。図14Aは、東京駅の丸の内中央口Aのトイレの平面図を示す。図14Bは、丸の内中央口Aのトイレの利用状況を示す図である。利用者は、どの個室トイレが利用可能かを知ることができる。
【0070】
図15Aは、利用者の携帯端末4の画面に表示された認証コードの例を示す。本例では、認証コードは二次元コードである。図15Bは、利用者の携帯端末4の画面に表示された認証コードの他の例を示す。本例では、認証コードは数字列である。上述のように、これらの認証コードは、室内ユーザインターフェース部202又は室外ユーザインターフェース部203によって読み取られ、又は、入力される。
【0071】
図16は、サブスクリプション(月額課金)の利用者の携帯端末4の画面に表示された認証コードの例を示す。本例では、認証コードは二次元コードである。図示するように、二次元コードと利用可能なトイレと有効期間が表示される。上述のように、これらの認証コードは、室内ユーザインターフェース部202又は室外ユーザインターフェース部203によって読み取られる。
【0072】
なお、ドア21は開き戸の構成を例示したが、引戸や他の構成であってもかまわない。
【0073】
また錠装置204は打ち掛け錠や鎌錠の構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば玄関ドアなどに用いられるラッチ錠や、一般的なトイレに多用されるスライドラッチ錠、その他電磁錠などでもかまわない。また施錠部材2041等はドアの内部に隠して配置した構成としたが、一般的なトイレのように施錠部材をドアの室内側に突出した構成として、ドア内部にアクチュエータや電磁石等が内蔵されており、非権限者が施錠しようとしても、施錠を阻止するとか、一旦施錠されても自動的に解錠されてしまうが、権限者が操作する場合は施錠できる構成としても良い。
【0074】
上記の実施形態において、ドアロック装置20はトイレ管理サーバ3とネットワーク接続されて、第2認証をトイレ管理サーバ3で行った事例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば以下のように2種類に構成しても良い。このように構成すると、利用するタイミングでトイレ管理サーバ3のネットワークの不調が生じても、予約者はネットワーク不調の影響を受けずに利用ができる。
【0075】
1)事前(予約時)にトイレ管理サーバ3から予約対象の錠装置204に、予約情報(予約日時、予約利用者ID情報、または認証コード)を転送し記憶させておき、また携帯端末4にも予約情報(予約日時、予約利用者ID情報、または認証コード)を事前送信しておく。このとき、錠装置204には認証コードを送信し、携帯端末4には予約日時、予約利用者ID情報のみを送っておき、携帯端末4は受信した予約日時、予約利用者ID情報から対応する認証コードを生成する(携帯端末4と錠装置204が受信する情報は反対でも良い)。そして、実際に利用する際の認証(照合)は、錠装置204がトイレ管理サーバ3を介さずに単独で行う。
【0076】
2)錠装置204はトイレ管理サーバ3とは接続されておらず、自らの錠端末情報や時刻情報を常時保持している。また第2認証用の認証コードは、予約する錠端末情報、予約日時を組み合わせたものとして構成されて、トイレ管理サーバ3から携帯端末4に事前(予約時)に送信される。錠装置204は携帯端末4から第2認証用の認証コードを取得して認証(照合)を行う。なお、ここで予約利用者を特定するID情報は使用しないが、認証コード作成方法は公開されておらず、また認証モード自体も暗号化されているため、事前に解読は困難であるため、第三者が特定の個室トイレの認証コードを作成することはほぼ不可能である。なお錠装置204の日時情報は、携帯端末4にローカル接続する際に、携帯端末4から取得更新するように構成すれば、錠装置204の内部クロックのずれを適宜補正することができる。
【0077】
また、日時予約せずに、個室トイレの現地で携帯端末4と錠装置204が直接認証して、利用する場合は、以下のように行っても良い。錠装置204は、例えば錠端末情報を所持しており、携帯端末4と錠装置204が認証動作を行う際に、携帯端末4がトイレ管理サーバ3から錠端末情報を受取り、携帯端末4側で認証を行い、認証成功した場合に携帯端末4から錠装置204に施錠信号を送信し、施錠処理を実行しても良い。この場合、錠装置204の錠端末情報は、たとえば錠装置204の梱包箱に同梱された説明書等に、二次元コードとして印刷されており、施工業者がスマートフォン上の専用アプリで、同二次元コードを読み取り、同時にスマートフォンの位置情報等も併せて、トイレ管理サーバ3にアップロードしておけばよい。こうすることでドアロック装置20がトイレ管理サーバ3とネットワーク接続していなくとも、室内管理を行うことが可能になる。
【0078】
また上記の実施形態の説明においては、ユーザインターフェース部を室内または室外に設けたが、これを用いない構成でも良い。例えば、図示しない鍵管理サーバを設置し、この鍵管理サーバに携帯端末4から施錠指示を送信し、鍵管理サーバが錠装置204に施錠指示を出して施錠するといった構成でもよい。
【0079】
以上、本実施形態に係る室内利用管理システムについて説明したが、これらは例示であって、本発明の範囲を制限するものではない。当業者が、本実施形態に対して容易になしえる追加・削除・変更・改良等は、本発明の範囲内である。本発明の技術的範囲は、添付の特許請求の記載によって定められる。
【符号の説明】
【0080】
1…室内利用管理システム、2…個室トイレ、3…トイレ管理サーバ、4…携帯端末、5…利用者、6…通信ネットワーク、7…認証サーバ、8…決済サーバ、9…サービス運営会社、20…ドアロック装置、21…ドア、22…便器、23…監視カメラ、24…表示装置、25…壁、30…トイレ管理装置、32…トイレ管理データベース、200…制御部、201…ネットワーク通信部、202…室内ユーザインターフェース部、203…室外ユーザインターフェース部、204…錠装置、206…人感センサ、207…オートドア装置、208…決済装置、301…通信部、302…ユーザ登録部、303…ユーザ認証部、304…認証コード生成部、305…トイレ情報管理部、306…決済管理部、321…ユーザ情報、322…トイレ情報、323…トイレ予約利用情報、324…トイレ料金情報、2001…情報格納部、2002…利用者権限認証部、2003…錠駆動信号生成部、2004…オートドア駆動信号生成部、2041…施錠部材、2041G…切り欠き、2042…回転軸、2043…受け部材、2044…手動解錠部材、2045…手動解錠部材案内溝
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11
図12
図13A
図13B
図14A
図14B
図15A
図15B
図16