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<図1>
  • 特許-融雪装置 図1
  • 特許-融雪装置 図2
  • 特許-融雪装置 図3
  • 特許-融雪装置 図4
  • 特許-融雪装置 図5
  • 特許-融雪装置 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】融雪装置
(51)【国際特許分類】
   E01H 5/10 20060101AFI20240523BHJP
   E01C 11/26 20060101ALI20240523BHJP
   H05B 3/10 20060101ALI20240523BHJP
   H05B 3/44 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
E01H5/10 Z
E01C11/26 Z
H05B3/10 B
H05B3/44
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020095624
(22)【出願日】2020-06-01
(65)【公開番号】P2021188399
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-05-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003757
【氏名又は名称】東芝ライテック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】502390474
【氏名又は名称】株式会社ユニ・ロット
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西原 隆史
(72)【発明者】
【氏名】大橋 剛
(72)【発明者】
【氏名】中野 浩輝
(72)【発明者】
【氏名】相原 和也
(72)【発明者】
【氏名】余根田 義幸
(72)【発明者】
【氏名】宮谷 繁
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-007436(JP,A)
【文献】特開2000-082573(JP,A)
【文献】特開2001-284032(JP,A)
【文献】特開2005-108686(JP,A)
【文献】特開平03-280382(JP,A)
【文献】特開2004-172103(JP,A)
【文献】特開2013-139691(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01H 5/10
E01C 11/26
H05B 3/10
H05B 3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
融雪用管状ヒータと、筐体とを備え、
前記融雪用管状ヒータは、
筒状の両端で密封され、内部にカーボン発熱体が設けられた所定の外径を有するガラス製のヒータ管と、前記ヒータ管の両端部を内嵌して一体的に支持する穴部からなる第1嵌合部を有する両側のキャップと、前記キャップに支持され、内径が前記ヒータ管の外径より1mm以上の所定寸法だけ大きなガラス筒状体とを備えた2重管構造を持ち、前記ガラス筒状体の外面が550℃以下の所定温度となるように前記ヒータ管が加熱される融雪用管状ヒータであって、
前記キャップは、前記第1嵌合部の入口側に径方向外側への段差部を介して同心で形成された穴部からなる第2嵌合部を有し、
前記第1嵌合部は、周方向の対向する外面位置から中心に向けて形成された、接着剤流し込み用の一対の孔を有し、
前記第2嵌合部は、前記ガラス筒状体の筒方向の端部が前記段差部に当止された状態で前記ガラス筒状体を内嵌して支持するものであり、
前記筐体は、
前記融雪用管状ヒータの長尺方向寸法に対応し、横断面視で略放物線形状をなして開口する反射板を有するものであり、
前記融雪用管状ヒータは、前記反射板の焦点の位置に設置された融雪装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線を照射して融雪を行うための融雪用管状ヒータ及び融雪装置に関する。
【背景技術】
【0002】
主に寒冷な地域では、冬季に路面に雪が積もったり、霜が発生したり、また水分が凍結して氷が発生したりすると、交通に障害が生じるおそれがあるため、その対策として、従来、凍結防止剤や融雪剤の散布、除雪車による除雪作業、またヒータ管を用いた融雪装置による融雪処理が行われている。
【0003】
融雪装置は、ヒータ管内の発熱体(フィラメント)から路面に向けて赤外線を放射して路面に降雪した雪を融解するものである(例えば特許文献1)。また、融雪装置は、トンネルの出入り口や坑口の側壁にも設置されており、坑口に吹き込んだ雪や車両の走行によって持ち込まれた雪を融解する(例えば特許文献2)。
【0004】
融雪装置は、路側帯の所定高さ、またトンネル内側壁の所定高さに設置される。そのため、路面までは距離があり、路面上の雪を効果的に融解するためには、数KW(キロワット)の放射量の赤外線を放射するヒータが要求される。かかる要請に応えるヒータとして、昨今、融雪効率の高い赤外線を発生する管状のハロゲンヒータが採用されている。ハロゲンヒータは、透明石英ガラスからなる長尺の密封管を有し、密封管の内部には、中心軸に沿ったニッケル・クロム線などのフィラメントが張設され、かつ不活性ガスが封入されたものである。また今日、ハロゲンヒータよりも発熱効率が良好なカーボン(炭素繊維など)を密封管に封入して赤外線を放射するヒータを用いた融雪装置も用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-162907号公報
【文献】特開2018-25031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ヒータ管から赤外線を路面に照射して融雪を行う融雪装置は、所望の放射量が要求される一方、寒冷環境下で、かつ車両走行に伴う振動や突風の影響を受けるため、使用環境は厳しい。従来、ある期間に亘って使用した融雪装置のうち、例えば主にトンネルに設置された融雪装置の一部について、ヒータ管の表面が白く変色した現象が見られ、さらにはひび割れの発生が認められ、最終的には発熱体(フィラメント)が断線、すなわち破損したりする現象が生じている。本発明者は、誠意原因を追求した結果、前記現象の発生原因及びそれに伴う破損のメカニズムを突き止め、かかる不良の発生を防止するための対策構造を案出した。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたもので、ヒータ管の長寿命化を図って長期の安定使用を可能にする融雪用管状ヒータ及び融雪装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に至る契機として、発明者は従来のヒータ管の不良発生原因の解明を試みた。まず、不良が生じたヒータ管の外表面を分析し、白濁及びヒータ管の破損(割れ)を確認した。また、ヒータ管の破損は白濁部で発生していることが判明した。さらに、破損したヒータ管については発熱体(フィラメント)の断線が確認された。次いで、ヒータ管表面の白濁部について、EPMA(ElectronProbe Micro Analyzer(日本電子社製、成分分析装置)で成分分析を行った結果、Na、Cl、K、Caの元素成分が異物として検出された。これらは、融雪剤や凍結防止剤(融雪剤や凍結防止剤としては、主に塩化カルシウム(CaCl2)、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)、酢酸カルシウム(C4H6CaO4)、酢酸カリウム(CH3COOK)がある。)であり、これらが積雪時に路面に散布されて、さらに走行車両によって巻き上げられて、ヒータ管のガラス表面に長期に亘って蓄積的に付着した可能性がある。さらに、白濁を生じた部位のガラス管断面の観察をレーザ顕微鏡で行った結果、表面の他、肉厚内部まで結晶化が進行していることが確認された。また、脆くなった部分は消失しており、ガラス管の肉厚が薄くなっていることも確認した。
【0009】
一方、ガラス管の主成分は石英(二酸化ケイ素:SiO2)であることから、このガラス管と、付着した融雪剤や凍結防止剤のアルカリ金属(Na)及びアルカリ土類(Ca)とが反応する温度域を確認する実験を行った。ヒータ管の点灯状態における現行仕様ではガラス管表面温度は約770℃と高温であり、その結果、この温度では付着物との間で化学反応を促進することを確認した。
【0010】
図6は、異物とガラス管との反応温度の実験結果(ガラス表面状態)を示す図である。実験は、石英ガラスに3種類の異物(薬剤)を付着させ、電気炉を用いて5段階の各温度条件で加熱(時間:20h)したもので、図6は、加熱後に放置した状態のガラス管の表面状態をそれぞれ撮像したものである。図6において、塩化カルシウム(CaCl2)では、500℃で部分的に白く変色し、600℃を超えると全体的に白く変色していることが認められた。塩化ナトリウム(NaCl)及び塩化カリウム(KCl)では、700℃を超えると表面にひび割れが生じることが認められた。さらに、別途、ガラス管のごく一部を人工的にリークさせて大気を流入するようにした状態で点灯させると、数分でフィラメントが破損することを確認した。
【0011】
以上の結果から、発明者は、ヒータ管の外表面への異物の付着を防止すると共にガラス管の表面温度を結晶化反応温度以下に低減する構成を案出した。すなわち、本発明に係る融雪用管状ヒータは、筒状の両端で密封され、内部にカーボン発熱体が張設された所定の外径を有するガラス製のヒータ管と、前記ヒータ管の両端部を内嵌して一体的に支持する第1嵌合部を有する両側のキャップとを備えた融雪用管状ヒータにおいて、内径が前記ヒータ管の外径より大きなガラス筒状体を備えるものとした。前記キャップは、前記第1嵌合部の外周に同心で形成された第2嵌合部を有しており、第2嵌合部に前記ガラス筒状体を嵌合して支持するものである。
【0012】
本発明によれば、ヒータ管の外側にガラス筒状体を配置して、外界と接する構造としたので、ヒータ管表面への外界からの異物の付着が防止される。また、ガラス筒状体の横断面を大サイズにして、その内面とヒータ管の外面との間に隙間空間を介在させることで、外側のガラス筒状体の表面温度が、付着した異物による結晶化反応温度以下に低減される。また、ガラス筒状体をヒータ管と別個にキャップに嵌合して組み付けて支持させるようにして、点灯時の膨張によってもヒータ管に応力が掛かることのないようにした。従って、ヒータ管の長寿命化が図れて長期の安定使用を可能にする融雪用管状ヒータが提供できる。
【0013】
また、前記ヒータ管と前記キャップとは、一体的に固定されているものである。この構成によれば、治具等を介して固定する場合に比して構造簡易となる。
【0014】
また、前記ヒータ管及び前記ガラス筒状体は、透明石英ガラス製である。この構成によれば、同一材料を採用することで、放射光の吸収が少なく、照射強度を低下させずに外部へ放出できる。また、同材料で熱膨張係数が略同一のため、ヒータ管とガラス筒状体への熱ストレスによる応力を低減できる。
【0015】
また、前記ヒータ管と前記ガラス筒状体との隙間は、前記カーボン発熱体の発熱時に、前記ガラス筒状体の外面の温度が550℃以下となる寸法に設定されていることを特徴とする。この構成によれば、ガラス筒状体の外面に異物が付着しても結晶化反応をほとんど生じないので、長寿命化が図れる。
【0016】
また、前記ヒータ管と前記ガラス筒状体とは、1mm以上の隙間空間を有するものである。この構成によれば、ガラス筒状体の外面が異物と化学反応を生じないので、結晶化が阻止されて長寿命化が図れる。
【0017】
また、前記ヒータ管及び前記ガラス筒状体は、円筒である。この構成によれば、円周方向全域への赤外線の放射強度を均一化することが可能となる。
【0018】
また、前記カーボン発熱体は、長尺方向に棒状で、かつ所定長さの螺旋部を少なくとも一対有する。この構成によれば、加熱が必要な箇所を集中して照射できるため、効率良く被照射物を加熱することができる。
【0019】
また、本発明に係る融雪装置は、前記記載の融雪用管状ヒータと、前記融雪用管状ヒータの長尺方向寸法に対応し、横断面視で略放物線形状をなして開口する反射板を有する筐体とを備え、前記融雪用管状ヒータを前記反射板の焦点の位置に設置したものである。本発明によれば、長期の安定使用を可能にする融雪装置を提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ヒータ管の長寿命化を図って長期の安定使用を可能にする融雪用管状ヒータ及び融雪装置が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係る融雪装置がトンネル内坑口の路側帯に設置された適用例を示す図である。
図2】本発明に係る融雪装置の一実施形態を示す図で、(A)は斜視図、(B)は縦断面図である。
図3】融雪用管状ヒータの概略構造を示す図で、(A)は本願発明に係る融雪用管状ヒータの縦断面図、(B)は従来の融雪用管状ヒータの縦断面図である。
図4】キャップの詳細構造図で、(A)はキャップの側面縦断面図、(B)は(A)の左側面図に対応する図であり、(C)は融雪用管状ヒータが内装された状態の側面縦断面図、(D)は(C)のD-D線矢視図に対応する図である。
図5】本願発明に係る融雪用管状ヒータと従来の融雪用管状ヒータとの波長に対する放射強度の特性を示す図である。
図6】従来の融雪用管状ヒータで行った不良発生実験で生じた現象を説明する結果図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本発明に係る融雪装置1がトンネルの坑口の路側帯に設置された適用例を示す図である。道路100は車両走行路面であり、走行方向の一部にトンネル101が建設されている。トンネル101内の左右の走行車線の両端側には路側帯102が設けられている。
【0023】
融雪装置1は、トンネル101の坑口辺りであって、車両進行方向の路側帯102に沿って所要台数が配置されている。融雪装置1は、ここでは支柱11の上部に支持され、後述するように所要の高さ位置から赤外線を路面の放射エリア1aに向けて放射するもので、放射された赤外線によって、吹き込みによって堆積した雪、また走行車両によって持ち込まれた雪を融解する。なお、図中では見えていないが、対向車線側(図1の右側の車線)にも同様に進入側の坑口辺りの路肩帯に所要台数の融雪装置1が配置されている。また、融雪装置1の配置位置は、路側帯102の他、トンネル101の側壁であってもよい。
【0024】
図2は、本発明に係る融雪装置1の一実施形態を示す図で、(A)は斜視図、(B)は縦断面図である。融雪装置1は、長尺の筐体2を備えている。筐体2は、横断面が略台形状を有し、内部には、長尺の融雪用管状ヒータ3を平行に内装する構造を有すると共に、一方面(図2(B)では下方)に開口21が形成されている。融雪用管状ヒータ3は、電力供給を受けて赤外線を開口21から外方へ放射する。
【0025】
筐体2の内部には、曲げ加工などによって、横断面が例えば放物線状に形成された内面を有する板状の反射板4が長手方向に沿って取り付けられている。反射板4は、筐体2の開口21と対向する側(図2(B)の上側)から、開口21に向けて末広がり(ホーン)状に延びて、開口21を形成している。
【0026】
また、筐体2の内側の長手方向の両端部には、開口21側に近いほど広角となる傾斜面を有する側面反射板5,6が設置されている。また、融雪装置1は、融雪用管状ヒータ3の略中央部に、縦断面がV字型(図2(B)参照)で筐体2の開口21側に先窄まり形状の対向傾斜面を有する仕切り反射板7を備えている。融雪用管状ヒータ3は、側面反射板5、仕切り反射板7及び側面反射板6に穿設されている図略の孔を貫通されて筐体2に内装されることで筐体2に支持される。融雪用管状ヒータ3は、前記図略の孔を貫通して、反射板4の放物線の焦点の位置に沿って設置されている。また、融雪装置1には、筐体2の開口21に格子状の防護網8が張られている。なお、筐体2の裏面側(図2(B)の上側)には、融雪用管状ヒータ3の固定用治具などが必要に応じて取り付けられている。また、反射板4は、放物線形状の他、ホーン形状、円や楕円の一部の形状を略放物線形状として採用してもよい。
【0027】
図3は、融雪用管状ヒータの構造を示す図で、(A)は本願発明に係る融雪用管状ヒータの縦断面図、(B)は従来の融雪用管状ヒータの縦断面図である。
【0028】
図3(B)に示すように、従来の融雪用管状ヒータ30は、透明石英からなる直径Φ13mmの密封されたヒータ管31と、ヒータ管31の両端を支持するΦ23mmの口金(キャップ)135と、外部電源との接続用のリード線部36とを備えている。なお、キャップ135の端部側は、筐体2側の側面反射板5,6との取付部位として機能し、Φ21.5mmに設定されている。
【0029】
ヒータ管31の内部には、線状(棒状)に形成された例えばカーボン(炭素繊維)を材料とする螺旋部32bを有する発熱体32が長手方向に張設されている。また、ヒータ管31の内部は、低圧で所要量の不活性ガスが封入されている。螺旋部32bは、電力供給を受けて発熱し、赤外線を放射する。発熱体32は、本実施形態では、左右両側に螺旋部32bが少なくとも一対形成されており、螺旋部32bは、非発光の接続用ウエルズ(非発光接続部32a)で接続される。螺旋部32bは非発光接続部の32aで分割され、加熱が必要な箇所を集中して照射できるため、非発光接続部32aを設けない場合に比して効率良く被照射物の加熱が可能となる。発熱体32の両端部には、リード線部36との接続用としてのウエルズ部32cが形成されている。
【0030】
発熱体32及びその螺旋部32bからヒータ管31の全方向に向けて放射された赤外線は、筐体2の開口21方向に直接向かう成分と、反射板4で反射して開口21方向に向かう成分との合計からなり、効率的に開口21から外方に放射される。反射板4の曲率乃至は開口サイズを予め設計することで、放射される赤外線の指向幅が適宜設定され、また供給電力も含めて到達距離が設定される。例えば、図1に示す放射エリア1aに所要量の放射エネルギーが照射され、好適な融雪が実現される。
【0031】
次に、図3(A)に示す本実施形態に係る融雪用管状ヒータ3は、従来の融雪用管状ヒータ30のヒータ管31の径方向の外側に所要の隙間を置いてガラス筒状体37を配置したものである。本実施形態では、ガラス筒状体37は、材質がヒータ管31と同様の石英であり、両端が開口しており、外径がΦ21.5mmで、肉厚が1.5mmである。従って、本実施形態では、ヒータ管31の外面とガラス筒状体37の内面とは、2.75mmの隙間を有する。
【0032】
キャップ35は、両端側の、筐体2側の側面反射板5,6との取付部位が従来と同一径寸法(Φ21.5mm)である一方、ヒータ管31の両端を支持する内側の部位はΦ25.5mmに設計されている。ヒータ管31の両端を支持する部位に対して長尺方向の内側の部位をより大径とすることで、図4に示すようにガラス筒状体37の取り付けを可能にしている。
【0033】
図4は、キャップの詳細構造図で、(A)はキャップの側面縦断面図、(B)は(A)の左側面図に対応する図であり、(C)は融雪用管状ヒータが内装された状態の側面縦断面図、(D)は(C)のD-D線断面図に対応する図である。キャップ35は、筒状、ここでは全体として円筒形状のキャップ本体350を有する。キャップ本体350の外周端部には筐体2側との取付部位となる縮径部3501が形成されている。また、キャップ本体350は、長手方向の内側から外側(図4(A)の左側から右側)に向けて同心状に大径穴部(第2嵌合部)351、中径穴部352(第1嵌合部)、及びより小寸法サイズの長方形の配線路部353の各内部空間を有する。中径穴部352は、横断面視において、内壁の周方向対向位置に径方向に突出した例えば半円状の切欠部3521が一対穿設されている。
【0034】
また、本実施形態では、キャップ本体350の周方向の対向する外面位置から中径穴部352に向けて一対の孔354が形成されている。孔354は、後述するように接着剤を外から中径穴部352に流し込ませるためのものである。孔354は切欠部3521に対して周方向で直交する位置に形成されている。
【0035】
図4(C)、(D)に示すようにキャップ35は、融雪用管状ヒータ3の端部を遊嵌状態で内装する。本実施形態では、融雪用管状ヒータ3のヒータ管31は、略全長に亘って円筒部311が形成され、一方、両端部に扁平部312が形成されている。ヒータ管31をキャップ本体350に内装する場合、円筒部311が大径穴部351に内嵌され、かつ扁平部312が切欠部3521を含む中径穴部352に内嵌乃至遊嵌されている。
【0036】
融雪用管状ヒータ3の扁平部312の内部には、発熱体32の端部のウエルズ部32cとリード線部36とを連結させる中継用の例えば金属板状の端子部313が配置されており、この端子部313を経由してリード線部36側から発熱体32に発熱用の電力供給が行われる。
【0037】
また、ヒータ管31のキャップ本体350への内装時には、併せてガラス筒状体37のキャップ本体350への装着も行われる。ガラス筒状体37は、大径穴部351に内嵌され、中径穴部352との段差で端部が当止される長さ寸法に設計されており、これによって内装位置が決められる。ガラス筒状体37は、内嵌に限定されないが、内嵌の場合、外方からガラス筒状体37の端部への衝撃をキャップ本体350で受け止めることができる。ガラス筒状体37は、ヒータ管31とは別体で、かつ個別に支持される。ガラス筒状体37とヒータ管31とを接着剤や構造的部材を介して一体的に構成する態様も可能であるが、互いに個別で自由に配設するものでもよい。ヒータ管31は、発熱体32のオン、オフでの温度変化により熱膨張・収縮する。従って、ガラス筒状体37との間をセメント等で一体的に固定した構造の場合、膨張時にヒータ管31の外面の逃げ場がなくなってヒータ管31に応力が掛かる結果、破損に繋がる可能性がある。
【0038】
また、図4(C)、(D)において、キャップ本体350の中径穴部352には、孔354から、例えば熱硬化性樹脂等の接着剤38が流入され、加熱処理を経て硬化される。接着剤38で固化することで、キャップ本体350とヒータ管31とが構造的な結合に比して柔軟に固定される。
【0039】
図5は、本願発明に係る融雪用管状ヒータと従来の融雪用管状ヒータとの波長に対する放射強度の特性を示す図である。測定に当たり、発熱体32の「点灯電圧」は定格200Vであり、「測定装置」はPWSR-4000S(プリード社製)であり、測定装置の「受光器位置」はヒータ管31の表面から50cmとした。図5は、横軸に波長(nm)を、縦軸に放射強度を示している。図5に示されているように、従来の融雪用管状ヒータ30及び本実施形態に係る融雪用管状ヒータ3のいずれも、800(nm)(=0.8μm)以上の赤外線を放射しており、1800~2000(nm)辺りで高出力となっている。ガラス筒状体37を保護外管として使用したヒータ3の実施形態においても、赤外線放射の低下はなく、ヒータ30と同等以上の特性が得られている。
【0040】
<実験例>
従来の融雪用管状ヒータ30(いわゆる「シングル」管)と本発明に係る融雪用管状ヒータ3(いわゆる「2重」管)との最外面の表面温度についてそれぞれ測定実験を行った。また、本発明に係る融雪用管状ヒータ3として、ヒータ管31の外径をΦ13mm一定として、外側のガラス筒状体37のサイズ(主に直径)を変更して最外面の表面温度についてそれぞれ測定した。表1は、その結果を示している。
【0041】
【表1】
【0042】
表1において、「シングル」は比較例であり、2重(1)~2重(6)が各実施例である。前記したように500℃から600℃の間で、主材料である石英と融雪剤や凍結防止剤とが化学反応を生じることから、ヒータ表面の最大温度も500℃~600℃辺りに上限温度があると考えられる。「シングル」では、ヒータ点灯時の発熱条件と同一で、ヒータ管31の表面の最大温度は770℃であり、上限温度の500℃~600℃を大きく上回る。
【0043】
一方、2重(1)~2重(6)の各実施例で、ガラス筒状体37を外管に用いることで、最外周面と螺旋部32bの接触を防止でき、温度低減効果が得られた。使用時間5000hにおいて、最外周面となるガラス筒状体37の外面の最大温度が600℃では、融雪剤との反応によるガラス割れはないものの、表面の白濁によりガラスの透過率が低下し、ヒータの加熱効率が低下した。550℃以下では融雪剤との反応によるガラスの割れや、ヒータの加熱効率低下はなく、寿命を満足しており、ヒータ管31とガラス筒状体37との隙間寸法は1mm以上を確保する必要がある。
【0044】
なお、ガラス筒状体37は、断面円形の他、楕円、多角形状でもよい。また、ガラス筒状体37の厚さは、適宜設計可能である。また、螺旋部32bは2か所の他、少なくとも1か所、あるいは複数個所に設けることが発熱効率上好ましい。また、発熱体としてカーボンを用いることで、放射する光の波長域が融雪に適しており、加熱効率が改善される。なお、カーボンに限らず、赤外線や遠赤外線を放射する材料であれば適宜採用可能であり、また混合材としてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 融雪装置
2 筐体
3 融雪用管状ヒータ
31 ヒータ管
32 発熱体
32a 非発光部
32b 螺旋部
32c ウエルズ部
35 キャップ
351 大径穴部(第2嵌合部)
352 中径穴部(第1嵌合部)
37 ガラス筒状体
38 接着剤
4 反射板
図1
図2
図3
図4
図5
図6