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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】コマ発射装置
(51)【国際特許分類】
   A63H 1/04 20060101AFI20240523BHJP
【FI】
A63H1/04
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022132508
(22)【出願日】2022-08-23
(65)【公開番号】P2024029993
(43)【公開日】2024-03-07
【審査請求日】2023-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003584
【氏名又は名称】株式会社タカラトミー
(73)【特許権者】
【識別番号】591056846
【氏名又は名称】株式会社東京ユニーク
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村木 誠
(72)【発明者】
【氏名】西澤 慧
(72)【発明者】
【氏名】前田 竹明
【審査官】鈴木 崇雅
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-067182(JP,A)
【文献】登録実用新案第3160658(JP,U)
【文献】登録実用新案第3071356(JP,U)
【文献】特開2017-169775(JP,A)
【文献】中国実用新案第202410138(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63H 1/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転力が入力される入力回転体と、自身の中心軸をコマの中心軸と致心させた状態で前記コマを保持し前記コマに回転力を付与する出力回転体と、前記入力回転体から前記出力回転体に回転力を伝達する連結回転体と、が設けられた装置本体と、
前記装置本体に対して差込み可能に構成され、差込み状態で前記入力回転体に係合可能な棒状の操作ベルトと、を備え、
前記入力回転体に係合させた状態から前記操作ベルトを前記装置本体から引き出すことによって前記入力回転体に回転力を入力して前記出力回転体と一緒に前記コマを回転させるとともに、前記出力回転体による前記コマの保持を解除させることによって、回転付勢されたコマを発射させる、コマ発射装置において、
前記装置本体には、前記入力回転体として、変速比が互いに異なる複数の個別入力回転体が設けられ、
前記操作ベルトは、前記複数の個別入力回転体の1つに選択的に係合可能となっている、
ことを特徴とするコマ発射装置。
【請求項2】
前記個別入力回転体は個別入力歯車である、ことを特徴とする請求項1に記載のコマ発射装置。
【請求項3】
前記複数の個別入力歯車は、互いに径が異なるとともに、径の大きさに対応した歯数を有し、且つ、第1軸に一体的に回転可能に取り付けられている、ことを特徴とする請求項2に記載のコマ発射装置。
【請求項4】
前記出力回転体を下にした状態で見たとき、前記第1軸は上下方向に延在し、
前記複数の個別入力歯車は、径の大きい方から前記第1軸の下から上に向けて順に取り付けられている、ことを特徴とする請求項3に記載のコマ発射装置。
【請求項5】
前記装置本体にはベルト差込み口が設けられ、
前記ベルト差込み口には、
前記個別入力歯車と前記操作ベルトとを所定位置で噛合させて前記出力回転体を一方向に回転させる第1差込み孔が前記個別入力歯車と同数設けられている、ことを特徴とする請求項3に記載のコマ発射装置。
【請求項6】
さらに、前記ベルト差込み口には、
前記所定位置とは前記第1軸を挟んで反対側の位置で前記個別入力歯車と前記操作ベルトとを噛合させて前記出力回転体を他方向に回転させる第2差込み孔が前記個別入力歯車と同数設けられている、ことを特徴とする請求項5に記載のコマ発射装置。
【請求項7】
前記出力回転体に対して前記コマの回転付勢方向とは反対の方向に相対回転させることにより、前記出力回転体と前記コマとを係合させて前記出力回転体によって前記コマを保持するとともに、回転している前記出力回転体を途中で停止させて、前記出力回転体に対して前記コマを回転付勢方向に相対回転させることにより、前記出力回転体による前記コマの保持を解除する保持解除機構を備え、
前記保持解除機構は、
前記個別入力歯車と一体的に回転する被係止部と、
前記被係止部の回転経路に進入して前記被係止部の回転を停止させる第1位置と、回転経路から退避して前記被係止部の回転を許容する第2位置と、を取り得る係止部材と、
前記係止部材を前記第1位置に向けて付勢する付勢部材と、を備え、
前記係止部材は、
前記装置本体への前記操作ベルトの差込み時に前記操作ベルトによって押圧されて前記第2位置を取る、
ことを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のコマ発射装置。
【請求項8】
前記出力回転体に対して前記コマの回転付勢方向とは反対の方向に相対回転させることにより、前記出力回転体と前記コマとを係合させて前記出力回転体によって前記コマを保持するとともに、回転している前記出力回転体を途中で停止させて、前記出力回転体に対して前記コマを回転付勢方向に相対回転させることにより、前記出力回転体による前記コマの保持を解除する保持解除機構を備え、
前記保持解除機構は、
前記個別入力歯車と一体的に回転する被係止部と、
前記ベルト差込み口の直後に設けられ、前記回転体の軸方向に動作可能で、前記被係止部の回転経路に進入して前記被係止部の回転を停止させる第1位置と、回転経路から退避して前記被係止部の回転を許容する第2位置と、を取り得る係止部材と、
前記係止部材を前記第1位置に向けて付勢する付勢部材と、を備え、
前記係止部材は、
前記装置本体への前記操作ベルトの差込み時に前記操作ベルトによって押圧されて前記第2位置を取る、
ことを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のコマ発射装置。
【請求項9】
回転力が入力される入力回転体と、自身の中心軸をコマの中心軸と致心させた状態で前記コマを保持し前記コマに回転力を付与する出力回転体と、前記入力回転体から前記出力回転体に回転力を伝達する連結回転体と、が設けられた装置本体と、
前記装置本体に対して差込み可能に構成され、差込み状態で前記入力回転体に係合可能な棒状の操作ベルトと、を備え、
前記入力回転体に係合させた状態から前記操作ベルトを前記装置本体から引き出すことによって前記入力回転体に回転力を入力して前記出力回転体と一緒に前記コマを回転させるとともに、前記出力回転体による前記コマの保持を解除させることによって、回転付勢されたコマを発射させる、コマ発射装置において、
前記装置本体には、前記入力回転体として、変速比が互いに異なる複数の個別入力回転体が設けられ、
前記操作ベルトとして、前記複数の個別入力回転体の1つに選択的に係合可能な複数の個別操作ベルトが設けられている、
ことを特徴とするコマ発射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コマ発射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コマ発射装置として、操作手段の操作により回転力が入力される入力回転体を有する入力ユニットと、自身の中心軸をコマの中心軸と致心させた状態で前記コマを保持し前記コマに回転力を付与する出力回転体を有する出力ユニットと、入力回転体と出力回転体とを連結して回転力を伝達する連結回転体を有する連結ユニットと、を備えたコマ発射装置が知られている(特許文献1参照)。
このコマ発射装置によれば、操作手段の操作により入力回転体に回転力を入力して出力回転体と共にコマを回転させ、コマの回転中に出力回転体によるコマの保持を解除させることによって、回転付勢されたコマを発射させる、ようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6960644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1記載のコマ発射装置では、発射されるコマの回転速度を変更するため、連結ユニットの交換を通じて、連結回転体である連結歯車の歯数を変更して、入力回転体から伝達される回転の変速比を変更するように構成されている。
しかしながら、連結ユニットの交換には、元の連結ユニットの取外し、加えて、新たな連結ユニットの装着等の作業が必要であり、その作業が面倒であった。また、嵩張る連結ユニットを複数用意しておく必要があり、保管や持ち運びが大変であった。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みなされたものであり、主に、簡単に変速比を変化させることができるコマ発射装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の手段は、
回転力が入力される入力回転体と、自身の中心軸をコマの中心軸と致心させた状態で前記コマを保持し前記コマに回転力を付与する出力回転体と、前記入力回転体から前記出力回転体に回転力を伝達する連結回転体と、が設けられた装置本体と、
前記装置本体に対して差込み可能に構成され、差込み状態で前記入力回転体に係合可能な棒状の操作ベルトと、を備え、
前記入力回転体に係合させた状態から前記操作ベルトを前記装置本体から引き出すことによって前記入力回転体に回転力を入力して前記出力回転体と一緒に前記コマを回転させるとともに、前記出力回転体による前記コマの保持を解除させることによって、回転付勢されたコマを発射させる、コマ発射装置において、
前記装置本体には、前記入力回転体として、変速比が互いに異なる複数の個別入力回転体が設けられ、
前記操作ベルトは、前記複数の個別入力回転体の1つに選択的に係合可能となっている、
ことを特徴とするコマ発射装置である。
【0007】
第2の手段は、第1の手段であって、前記個別入力回転体は個別入力歯車である、ことを特徴とする。
【0008】
第3の手段は、第2の手段であって、前記複数の個別入力歯車は、互いに径が異なるとともに、径の大きさに対応した歯数を有し、且つ、第1軸に一体的に回転可能に取り付けられている、ことを特徴とする。
【0009】
第4の手段は、第3の手段であって、
前記出力回転体を下にした状態で見たとき、前記第1軸は上下方向に延在し、
前記複数の個別入力歯車は、径の大きい方から前記第1軸の下から上に向けて順に取り付けられている、ことを特徴とする。
【0010】
第5の手段は、第3の手段であって、
前記装置本体にはベルト差込み口が設けられ、
前記ベルト差込み口には、
前記個別入力歯車と前記操作ベルトとを所定位置で噛合させて前記出力回転体を一方向に回転させる第1差込み孔が前記個別入力歯車と同数設けられている、ことを特徴とする。
【0011】
第6の手段は、第5の手段であって、
さらに、前記ベルト差込み口には、
前記所定位置とは前記第1軸を挟んで反対側の位置で前記個別入力歯車と前記操作ベルトとを噛合させて前記出力回転体を他方向に回転させる第2差込み孔が前記個別入力歯車と同数設けられている、ことを特徴とする。
【0012】
第7の手段は、第5又は第6の手段であって、
前記出力回転体に対して前記コマの回転付勢方向とは反対の方向に相対回転させることにより、前記出力回転体と前記コマとを係合させて前記出力回転体によって前記コマを保持するとともに、回転している前記出力回転体を途中で停止させて、前記出力回転体に対して前記コマを回転付勢方向に相対回転させることにより、前記出力回転体による前記コマの保持を解除する保持解除機構を備え、
前記保持解除機構は、
前記個別入力歯車と一体的に回転する被係止部と、
前記被係止部の回転経路に進入して前記被係止部の回転を停止させる第1位置と、回転経路から退避して前記被係止部の回転を許容する第2位置と、を取り得る係止部材と、
前記係止部材を前記第1位置に向けて付勢する付勢部材と、を備え、
前記係止部材は、
前記装置本体への前記操作ベルトの差込み時に前記操作ベルトによって押圧されて前記第2位置を取る、
ことを特徴とする。
【0013】
第8の手段は、第5又は第6の手段であって、
前記出力回転体に対して前記コマの回転付勢方向とは反対の方向に相対回転させることにより、前記出力回転体と前記コマとを係合させて前記出力回転体によって前記コマを保持するとともに、回転している前記出力回転体を途中で停止させて、前記出力回転体に対して前記コマを回転付勢方向に相対回転させることにより、前記出力回転体による前記コマの保持を解除する保持解除機構を備え、
前記保持解除機構は、
前記個別入力歯車と一体的に回転する被係止部と、
前記ベルト差込み口の直後に設けられ、前記回転体の軸方向に動作可能で、前記被係止部の回転経路に進入して前記被係止部の回転を停止させる第1位置と、回転経路から退避して前記被係止部の回転を許容する第2位置と、を取り得る係止部材と、
前記係止部材を前記第1位置に向けて付勢する付勢部材と、を備え、
前記係止部材は、
前記装置本体への前記操作ベルトの差込み時に前記操作ベルトによって押圧されて前記第2位置を取る、
ことを特徴とする。
【0014】
第9の手段は、
回転力が入力される入力回転体と、自身の中心軸をコマの中心軸と致心させた状態で前記コマを保持し前記コマに回転力を付与する出力回転体と、前記入力回転体から前記出力回転体に回転力を伝達する連結回転体と、が設けられた装置本体と、
前記装置本体に対して差込み可能に構成され、差込み状態で前記入力回転体に係合可能な棒状の操作ベルトと、を備え、
前記入力回転体に係合させた状態から前記操作ベルトを前記装置本体から引き出すことによって前記入力回転体に回転力を入力して前記出力回転体と一緒に前記コマを回転させるとともに、前記出力回転体による前記コマの保持を解除させることによって、回転付勢されたコマを発射させる、コマ発射装置において、
前記装置本体には、前記入力回転体として、変速比が互いに異なる複数の個別入力回転体が設けられ、
前記操作ベルトとして、前記複数の個別入力回転体の1つに選択的に係合可能な複数の個別操作ベルトが設けられている、
ことを特徴とするコマ発射装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、装置本体に、変速比が互いに異なる複数の個別入力回転体が設けられ、複数の個別入力回転体の1つに操作ベルトを選択的に係合させ、操作ベルトを装置本体から引き出すことによって、簡単に、発射されるコマの回転速度を変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態に係るコマ発射装置及びコマの斜視図である。
図2】コマの斜視図である。
図3】操作ベルトの斜視図である。
図4】装置本体の斜視図である。
図5】装置本体を下方から見た斜視図である。
図6】装置本体の内部構造を示す斜視図である。
図7】ベルト差込み口及び係止部材を示す斜視図である。
図8】第1入力歯車、第2入力歯車及び連結歯車の斜視図である。
図9】係止部材及び連結歯車の下面図である。
図10】第1入力歯車及び第2入力歯車からコマホルダまでの動力伝達機構を示した斜視図である。
図11】出力歯車、クラッチ及びコマホルダの分解斜視図である。
図12】第2実施形態に係るコマ発射装置の装置本体の斜視図である。
図13】装置本体の内部構造の斜視図である。
図14】第1入力歯車に噛合する操作ベルトの斜視図である。
図15】第2入力歯車に噛合する操作ベルトの斜視図である。
図16】第3入力歯車に噛合する操作ベルトの斜視図である。
図17】第3実施形態に係るコマ発射装置の装置本体の前面図である。
図18】第1入力歯車及び第2入力歯車に噛合する操作ベルトの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に係るコマ発射装置を説明する。
【0018】
《第1実施形態》
図1は、第1実施形態に係るコマ発射装置100及びコマ70の斜視図である。
コマ発射装置100は、装置本体10と、操作手段である操作ベルト50とを備える。装置本体10は、片手で持てる程度の大きさであり、この装置本体10のコマホルダ(出力回転体)31には、コマ70が保持される。そして、装置本体10に操作ベルト50のベルト部51を差し込んだ後、コマ70を下側にして操作ベルト50を装置本体10から引き出すと、コマ70が回転付勢され、装置本体10から発射される。
以下、コマ70、操作ベルト50及び装置本体10をこの順に詳述する。
【0019】
《コマ70》
図2は、コマ70の斜視図である。
コマ70は、軸部71及び胴部72を備えている。胴部72の上面にはコマ70の回転軸(コマ軸)を挟んで対峙する2つの位置に、当該回転軸と同心的な弧状溝73が1つずつ形成されている。孤状溝73の延在方向の一端は幅狭となっている。幅狭部73aの縁壁の下には、後述の装置本体10の係止突起31dが潜り込み可能となっている。この幅狭部73aの縁壁の下への係止突起31cの潜り込みによって、コマ70が装置本体10に保持される。
なお、幅狭部73aは、時計回り回転用のコマ70では、孤状溝73の時計方向側の端部に、反時計回り回転用のコマ70では、孤状溝73の反時計方向側の端部に設けられる。また、幅狭部73aは、両回転用のコマ70では、孤状溝73の両端部に設けられる。図2に示すコマ70は、孤状溝73の時計方向側の端部に幅狭部73aが設けられているので、時計回り回転用のコマである。
【0020】
《操作ベルト50》
図3は、操作ベルト50の斜視図である。
操作ベルト50は、操作部52と、操作部52に連結されたベルト部51とを備える。操作部52は、例えば右手の人差し指や中指を掛ける指掛け部52a、52bを有する。ベルト部51は、棒状の基体51aの長手方向に沿って多数の歯51bを形成したものである。
【0021】
《装置本体10》
図4は装置本体10の斜視図、図5は装置本体10を下方から見た斜視図、図6は装置本体10の内部構造を示す斜視図である。なお、装置本体10の説明において、「前後」、「左右」及び「上下」は図4に示す方向を言うものとする。
装置本体10は筐体11を備えている。筐体11は、下側筐体11aと上側筐体11bとから構成されている。上側筐体11bは下側筐体11aよりも前後方向の寸法が大きくなっている。
下側筐体11aと上側筐体11bの前半部とは、図示しないねじによって互いに結合されている。下側筐体11aと上側筐体11bの前半部とによって挟まれた空間には、機構部品収容部12とベルト通路13の一部とが形成されている。また、結合状態で下側筐体11aよりも後方に突出する上側筐体11bの後半部は、片手で把持可能なハンドル14を構成し、そこには、ベルト通路13の一部が形成されている。
【0022】
筐体11の前部には、操作ベルト50のベルト部51を差し込むためのベルト差込み口15が設けられている。ベルト差込み口15には、矩形の4つの差込み孔16L、16R、17L、17Rが上下左右に振り分けられて形成されている。このうち差込み孔16L、16Rはベルト差込み口15の上段左右に、他の差込み孔17L、17Rはベルト差込み口15の下段左右に形成されている。差込み孔16L、16Rの間の距離は、後述の第1入力歯車24の径に対応しており、第2入力歯車25の径に対応する差込み孔17L、17Rの間の距離よりも小さく設定されている。これら差込み孔16L、16R、17L、17Rには、操作ベルト50のベルト部51が選択的に差し込まれる。
ここで、上段の差込み孔16L、16Rは、コマ70を高速回転付勢させるために使用される孔であり、下段の差込み孔17L、17Rは、コマ70を低速回転付勢させるために使用される孔である。また、左の差込み孔16L、17Lは、コマ70を時計回りに回転付勢させるための孔であり、右の差込み孔16R、17Rは、コマ70を反時計回りに回転付勢させるための孔である。
【0023】
図7は、ベルト差込み口15及びスライド部材18を示す斜視図である。
図6に示すように、筐体11の内部には、ベルト差込み口15の後面に接して、上下動可能なスライド部材(係止部材)18が設けられている。このスライド部材18は、上側筐体11bとの間に介装されたコイルばね19によって下方に付勢されている。なお、図7には、説明の便宜上、ベルト差込み口15とスライド部材18とが離して示してある。
スライド部材18は、保持解除機構の一部を構成し回転付勢したコマ70を装置本体10から離脱させる働きをするとともに、操作ベルト50を装置本体10から引き出した状態ではコマホルダ31の回転を阻止する働きをする。
スライド部材18には、上段の差込み孔16L、16Rに対応して2つの挿通孔20L、20Rが左右に形成されている。各挿通孔20L、20Rの上壁下面は傾斜面21L、21Rとなっている。傾斜の方向は、上段の差込み孔16L、16Rから操作ベルト50のベルト部51が差し込まれた際、傾斜面21L、21Rへのベルト部51の摺接によって、スライド部材18がコイルばね19の付勢力に抗して持ち上げられる方向である。
一方、スライド部材18の下側にも、上記差込み孔17L、17Rに対応して傾斜面22L、22Rが形成されている。傾斜の方向は、下段の差込み孔17L、17Rから操作ベルト50のベルト部51が差し込まれた際、傾斜面22L、22Rへのベルト部51の摺接によって、スライド部材18がコイルばね19の付勢力に抗して持ち上げられる方向である。
さらに、スライド部材18の下側には、傾斜面22L、22Rの間に係止部23が下方に突出して形成されている。
なお、スライド部材18の上下動の技術的意義と、係止部23の技術的意義については後述する。
【0024】
図8は、第1入力歯車24、第2入力歯車25及び連結歯車26の斜視図である。
筐体11の内部には、スライド部材18の奥(後ろ)に、第1入力歯車24、第2入力歯車25及び連結歯車26が上から下へこの順に設けられている。第1入力歯車24、第2入力歯車25及び連結歯車26は、上下方向に延びる軸(第1軸)27に設けられ、一体的に回転するように構成されている。この場合の連結歯車26は、第1入力歯車24及び第2入力歯車25と後述のコマホルダ31とを連結する連結回転体を構成する。
ここで、第1入力歯車24は第2入力歯車25よりも径が小さく、その分、歯数も少なくなっている。第1入力歯車24には、上段の差込み孔16L、16Rから差し込まれた操作ベルト50のベルト部51の歯51bが噛合する。一方、第2入力歯車25には、下段の差込み孔17L、17Rから差し込まれた操作ベルト50のベルト部51の歯51bが噛合する。なお、操作ベルト50を差込み孔16L、17Lから差し込む場合と、操作ベルト50を差込み孔16R、17Rから差し込む場合とでは、操作ベルト50の向きを違えることが必要とされる。
【0025】
図9は、スライド部材18及び連結歯車26の下面図である。
第2入力歯車25と連結歯車26とは、特に制限はされないが、同径且つ同歯数で被係止片28を挟んで一体に構成されている。被係止片28は、第2入力歯車22及び連結歯車26の外周から張り出すように円周方向に等間隔に3個設けられている。この被係止片28は、スライド部材18と共に保持解除機構を構成する。
隣り合う被係止片28、28の隙間はスライド部材18の係合部23よりも大きい。そして、隣り合う被係止片28、28の間には、コイルばね19の付勢力によって、スライド部材18の係止部23が上方から入り込み可能に構成されている。スライド部材18が下降して隣り合う被係止片28、28の間に係止部23が入り込んだときには、係止部23によって第1入力歯車24、第2入力歯車25及び連結歯車26の回転が止められる。つまり、操作ベルト50が装置本体10から引き出されたときに、コマホルダ31の回転が停止される。これにより、回転付勢されたコマ70をコマホルダ31から離脱させることができる。一方、スライド部材18が上昇した状態では、第1入力歯車24、第2入力歯車25及び連結歯車26の回転が許容される。つまり、操作ベルト50が装置本体10から引き出されまでは、コマホルダ31が回転される。これにより、コマ70を回転付勢することが可能となる。
【0026】
図10は、第1入力歯車24及び第2入力歯車25からコマホルダ31までの動力伝達機構を示した斜視図、図11は、連結歯車29、クラッチ30及びコマホルダ31の分解斜視図である。この場合の連結歯車29及びクラッチ30は、第1入力歯車24及び第2入力歯車25と後述のコマホルダ31とを連結する連結回転体を構成する。
筐体11の内部には、第1入力歯車24、第2入力歯車25及び連結歯車26の奥(後ろ)に、連結歯車26に噛合する連結歯車29が設けられている。連結歯車29は軸35に付設されている。この連結歯車29は、噛み合いクラッチ30を介して、コマホルダ31に連結されている。
すなわち、連結歯車29の下面には、中心部に、ダブルDカットされた軸部29aが設けられている。この軸部29aは、噛み合いクラッチ30を構成する一方の回転要素32に連結されている。回転要素32は、上記軸部29aが嵌合する嵌合孔32aが形成された芯体32bと、芯体32bの半径方向外側に膨出し中間部外側に突起32cを有する帯状の弾性係止部32dとを備えている。この弾性係止部32dは、円周方向に等間隔で3個形成されている。一方、コマホルダ31には、上記回転要素32が着座する円形凹部31aが形成されている。円形凹部31aの周壁には上記突起32cに噛み合う歯31bが円周方向に多数形成されている。当該歯31bが形成された円形凹部31aの周壁は他の回転要素を構成する。そして、突起32cと歯31bが噛み合うことで連結歯車29の回転力がコマホルダ31に伝達され、コマホルダ31に過負荷が作用したときには、突起32cと歯31bとの噛み合いが解除される。
【0027】
図5に示すように、コマホルダ31には、軸35を挟んで対峙する部分に、2つの差込み片31c、31cが付設されている。2つの差込み片31c、31cは、コマ70を装着する際、コマ70の胴部72の上面に設けた対応の弧状溝73に差し込まれる。そして、2つの差込み片31c、31cが対応の弧状溝73に差し込まれたときには、コマの中心線と軸35の中心線とが合致する。各差込み片31cの内側には係止突起31dが形成されている。そして、各差込み片31cをコマ70の弧状溝73に差し込み、コマ70をコマホルダ31に対してコマ70の回転付勢方向とは反対の方向へ相対回転させることにより、係止突起31dが弧状溝73の幅狭部73aの縁壁下に潜り込み係合される。これにより、コマ70がコマホルダ31に保持される。
【0028】
次に、このコマ発射装置100の使用例を説明する。
コマ70を装置本体10に装着し、操作ベルト50のベルト部51を差込み孔16L、16R、17L、17Rのいずれか1つに差し込む。
この場合、コマ70が反時計回り回転用のコマであるならば、歯51bがベルト部51の左に位置するようにベルト部51を差込み孔16R、17Rのいずれかに差し込み、一方、コマ70が時計回り回転用のコマであるならば、歯51bがベルト部51の右に位置するようにベルト部51を差込み孔16L、17Lのいずれかに差し込む。なお、差込み孔16R、17Rのいずれに差し込むか、或いは、差込み孔16L、17Lのいずれに差し込むかは、コマ70を高速回転させたいか低速回転させたいかによって決定される。
【0029】
そして、操作ベルト50のベルト部51を差込み孔16L、16R、17L、17Rのいずれか1つに差し込むと、スライド部材18がコイルばね19の付勢力に抗して持ち上げられ、第1入力歯車24及び第2入力歯車25が回転可能な状態となる。
この状態で、コマ70を下側にして操作ベルト50を装置本体10から威勢よく引き出す。これにより、コマ70が所望方向に回転付勢され、操作ベルト50が装置本体10から離脱されると、スライド部材18がコイルばね19の付勢力によって下降し、コマホルダ31の回転に伴って、係止部23が隣り合う被係止片28、28の間に入り込む。これによって、コマホルダ31の回転が止められる一方でコマ70が慣性力によって回転するため、係止突起31dが弧状溝73の幅狭部73aの縁壁下から出て、コマ70が装置本体10から発射される。
【0030】
《第2実施形態》
図12は、第2実施形態に係るコマ発射装置100Aの装置本体110の斜視図、図13は、装置本体110の内部構造の斜視図である。
第2実施形態のコマ発射装置100Aが第1実施形態のコマ発射装置100と異なる点は、第1に、装置本体110に第1入力歯車111、第2入力歯車112及び第3入力歯車113が設けられるとともに、操作ベルト150、151、152を有し、この操作ベルト150、151、152のベルト部150b、151b、152bが装置本体110のベルト差込み口114の1つの差込み孔115に選択的に差込み可能となっている、ことである。
【0031】
第1入力歯車111、第2入力歯車112及び第3入力歯車113は、1つの軸(第1軸)116に付設されており、上から下へこの順に径及び歯数が大きくなっている。つまり、第1入力歯車111、第2入力歯車112、第3入力歯車113は、回転の変速比が互いに異なっている。
【0032】
操作ベルト150、151、152は、第1入力歯車111、第2入力歯車112、第3入力歯車113に対応するものである。
図14は、第1入力歯車111に噛合する操作ベルト150の斜視図、図15は、第2入力歯車112に噛合する操作ベルト151の斜視図、図16は、第3入力歯車113に噛合する操作ベルト152の斜視図である。
操作ベルト150は、第1入力歯車111に噛合しコマ70を高速回転させるためのベルト、操作ベルト151は、第2入力歯車112に噛合しコマ70を中速回転させるためのベルト、操作ベルト152は、第3入力歯車113に噛合しコマ70を低速回転させるためのベルトである。この操作ベルト150、151、152にはリング状の指掛け部150a、151a、152aが設けられている。
【0033】
ここで、操作ベルト150、151、152は、ベルト部150b、151b、152bの形が互いに異なっている。
操作ベルト150のベルト部150bは、長手方向に直交する断面が逆L字状となっている。具体的には、ベルト部150bは、差込み孔115の右壁に右面が当接する起立部分150cと、起立部分150cの上端部から左方に張り出し、差込み孔115の上壁に上面が当接する張出し部150dとから構成され、張出し部150dの自由端面に歯150eが形成されている。この歯150eは、第1入力歯車111に噛合する。
また、操作ベルト151のベルト部151bは、差込み孔115の右壁に右面が当接する起立部分151cと、起立部分151cの上下方向の中間部から左方に張り出す張出し部151dとから構成され、張出し部151dの自由端面に歯151eが形成されている。この歯151eは、第2入力歯車112に噛合する。
また、操作ベルト152のベルト部152bは、差込み孔115の右壁に右面が当接する起立部分152cを有し、起立部分152cの左面の下端部に歯152eが形成されている。この歯152eは、第3入力歯車113に噛合する。
【0034】
また、第2実施形態のコマ発射装置100Aが第1実施形態のコマ発射装置100と異なる点は、第2に、保持解除機構130が、周囲がのこぎり歯状をした爪車131と、爪132と、爪132を爪車131に係合する方向に付勢するばね(図示せず)と、によって構成されている、ことである。
【0035】
この保持解除機構130によれば、爪132は、図示しないばねの付勢力によって、歯車131に噛合されている。そして、操作ベルト150、151、152のいずれかが装置本体110のベルト差込み口114の差込み孔115から差し込まれたとき、ベルト部150b、151b、152bによって押されて爪132が歯車131から離れる。また、操作ベルト150、151、152が装置本体110から引き出されたとき、図示しないばねの付勢力によって、歯車131に噛合され、第1入力歯車111、第2入力歯車112及び第3入力歯車113の回転が停止される。
【0036】
また、第2実施形態のコマ発射装置100Aが第1実施形態のコマ発射装置100と異なる点は、第3に、第1入力歯車111、第2入力歯車112及び第3入力歯車113の軸116の中心線とコマホルダ130の軸(図示せず)の中心線とが合致している、ことである。すなわち、第2実施形態のコマ発射装置100Aでは、第1実施形態のコマ発射装置100の連結歯車26及び連結歯車29に相当する歯車が設けられていない。一方、図示はしないが、第2実施形態のコマ発射装置100Aでは、第1入力歯車111、第2入力歯車112及び第3入力歯車113が、第1実施形態のコマ発射装置100のクラッチ30と同様のクラッチによって、コマホルダ130に連結されている。
【0037】
また、第2実施形態のコマ発射装置100Aが第1実施形態のコマ発射装置100と異なる点は、第4に、コマホルダ130が時計回り用のコマ70だけを装着可能とされている、ことである。すなわち、コマホルダ130の2つの差込み片130c、130cの各々にはフック130dが形成され、各差込み片130cをコマ70の孤状溝73に差し込んだ後、コマ70をコマホルダ130に対して反時計回りに相対回転させることで、フック130dを孤状溝73の端縁下に潜り込ませ、コマ70をコマホルダ130に保持させるようにしたものである。
【0038】
なお、第2実施形態のコマ発射装置100Aの装置本体110には、図示しないハンドルが着脱可能となっている。
【0039】
《第3の実施形態》
図17は、第3実施形態に係るコマ発射装置100Bの装置本体210の前面図、図18は、第1入力歯車24及び第2入力歯車25に噛合する操作ベルト250の斜視図である。第1入力歯車24及び第2入力歯車25は、第1実施形態のコマ発射装置100と同じなので説明上同一符号を用い、図示は省略する。
【0040】
第3実施形態のコマ発射装置100Bが第1実施形態のコマ発射装置100と異なる点は、第1に、装置本体210に設けられたベルト差込み口211の差込み孔212が1つである、こと、第2に、1つの操作ベルト250のベルト部251に、操作ベルト250の引き出しの際に、第1入力歯車24と第2入力歯車25とに選択的に噛合する歯253a、253bが長手方向の異なる場所に形成されている、ことである。
【0041】
操作ベルト250のベルト部251は、長手方向に直交する断面が逆L字状となっている。具体的には、ベルト部251は、差込み孔212の右壁に右面が当接する起立部分251aと、起立部分251aの上端部から左方に張り出す張出し部分251bとから構成され、起立部分251aの左面と張出し部分251bには、歯253a、253bが長手方向の異なる場所に形成されている。具体的には、起立部分251aの左面のベルト部251の基端側半部には、第2入力歯車25に噛合する歯253aが形成され、張出し部分251bの先端側半部には、第1入力歯車24に噛合する歯253aが形成されている。
【0042】
このコマ発射装置100Bによれば、操作ベルト250の引き出しに伴って、先ず、ベルト部251の歯253aとの噛合により第2入力歯車25が回転され、その後に、ベルト部251の歯253bとの噛合により第1入力歯車24が回転される。その結果、比較的に小さい力でコマ70を高速回転させることができる。
すなわち、操作ベルト250を同じ速度で引き出すとき、径及び歯数が大きい第2入力歯車25を動かす場合の方が、径及び歯数が小さい第1入力歯車24を動かす場合と比べて、コマ70の回転速度は小さいが、引く力は小さくて済む。そこで、引く力が小さくて済む第2入力歯車25を先に動かしておき、第2入力歯車25と一体的に回転する第1入力歯車24に助走を付けたところで、回転力を入力する歯車を第1入力歯車24に切り替えることとした。これにより、第1入力歯車24に助走が付けられ、比較的に小さい力でも第1入力歯車24を回転させることができるとともに、コマ70を高速回転させることができる。
【0043】
《変形例》
上記実施形態では、コマ70を出力回転体に対して一方向に相対回転させることにより、コマ70を出力回転体に保持させ、出力回転体を停止させることで、コマ70を出力回転体に対して他方向に相対回転させることにより、出力回転体によるコマ70の保持を解除させるようにしたが、保持解除の仕組みはそれに限定されない。
例えば、コマ70の外周を咥える爪により、コマ70を保持し、ボタン操作により爪を動作させることにより、出力回転体によるコマ70の保持を解除させたり、或いは、出力回転体に嵌合させることにより、コマ70を保持し、ボタン操作によりコマ70を押し出すことにより、出力回転体によるコマ70の保持を解除させたりしてもよい。
【0044】
また、上記実施形態では、入力回転体を入力歯車としたが、入力ローラとし操作ベルトとの摩擦によって回転力を入力させるようにしてもよい。
【0045】
また、上記実施形態では、様々な構造を提示しているが、それらの構造は矛盾しない範囲で種々の組み合わせが可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0046】
10 装置本体
11 筐体
15 差込み口
16L、16R、17L、17R 差込み孔
18 スライド部材(係止部材)
23 係止部
27 軸(第1軸)
28 被係止片
31 コマホルダ(出力回転体)
50 操作ベルト
51 ベルト部
70 コマ
100 コマ発射装置
図1
図2
図3
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