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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】マーキング治具
(51)【国際特許分類】
   B25H 7/04 20060101AFI20240523BHJP
   G01C 15/00 20060101ALI20240523BHJP
   E04G 21/18 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
B25H7/04 E
G01C15/00 103C
E04G21/18 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023047474
(22)【出願日】2023-03-24
【審査請求日】2023-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000163419
【氏名又は名称】株式会社きんでん
(73)【特許権者】
【識別番号】591083772
【氏名又は名称】株式会社永木精機
(74)【代理人】
【識別番号】100118924
【弁理士】
【氏名又は名称】廣幸 正樹
(72)【発明者】
【氏名】日高 一幸
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 智春
【審査官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-280967(JP,A)
【文献】特開2021-021197(JP,A)
【文献】特開2008-030156(JP,A)
【文献】特開2007-118165(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25H 7/04
G01C 15/00
E04G 21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
十字形にレーザーを照射するレーザーマーカーを利用して遠隔位置の対象物にマーキングを行うマーキング治具であって、
位置合わせの印影を前記対象物に転写するスタンプと、
前記スタンプを転写方向へ出没可能に収容する収容部と、
前記収容部の収容口から前記スタンプの転写面と平行に外側へ延設され、前記対象物に当接させる当接板と、
前記当接板上の少なくとも2箇所に設けられ、当接時において前記当接板の広がる面方向への滑りを抑えることができる部材を用いており、前記対象物に対して選択的に当接させることにより方向転換用の軸となる軸足部と
前記転写面を中心角90度の4区画に分割する4本の仮想直線のうち、前記当接板上で、少なくとも隣接する2本と重なる位置に励起発光性の発光部とを備えたことを特徴とするマーキング治具。
【請求項2】
少なくとも前記収容部の前記収容口側が透明部材で形成されていることを特徴とする請求項に記載のマーキング治具。
【請求項3】
前記収容口の内側から前記スタンプの可動域に向けて前記転写面と平行に延設され、前記4本の仮想直線のうち、少なくとも隣接する2本と重なる位置に前記発光部を有する内接板を備えたことを特徴とする請求項に記載のマーキング治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、十字形にレーザーを照射するレーザーマーカーを利用して、遠隔の作業位置にマーキングを行うマーキング治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
天井等の遠隔の作業対象にダウンライト等の埋め込み型の照明器具を設置する際、天井に開口を形成する必要がある。このような開口を天井に形成する場合には、建物の規模や天井面に取り付ける機器類の大小に関わらず、脚立などの仮設足場が必要となる。
【0003】
作業箇所が多い場合には、脚立への昇降回数も多く、作業者は重労働となる。そして、穿孔作業ごとに墨付けが必要であり、その分だけ昇降回数が増える。さらに、作業現場の床には、工具類や資材等が仮置されていることが多いため、脚立を設置する際の足場の確保が煩雑になる。
【0004】
このように疲労が蓄積しやすい作業環境の中、高所で上を向いて作業を行うため、平衡感覚を失って転落する事故なども多く発生していた。典型的な事故例としては、脚立の天板に乗ってバランスを崩して転落する事故、脚立にまたがってバランスを崩して転落する事故、手に工具などを持ちながら昇り降りしたことによりバランスを崩して転落する事故などが多く見られる。
【0005】
このような事情があり、現在では、転落の危険性が相対的に低い、手すり付きの脚立や可搬式作業台などの使用が推奨されている。
【0006】
上述のように、脚立上ではバランスを崩しやすいという問題がある。また、昇降の繰り返しによる疲労の蓄積が原因となり、注意力が低下することによって事故の発生に繋がる可能性もある。少なくとも、脚立天板への昇降を伴う作業は禁止しなければならない。加えて、脚立や可搬式作業台の設置場所の確保の問題や、設置後における他の作業者の通行障害の問題も考慮する必要がある。これらの問題点を改善するためには、脚立等の足場の使用頻度を減らす作業方法を検討する必要がある。このため、遠隔作業により天井に墨付けをする工具も考えられている。
【0007】
図6は、従来の天井墨付装置101を示している。天井墨付装置101は、天井100に印を付けるマーカーペン103を内蔵した墨付装置102を備えている。墨付装置102から斜め下方に向けて作業者が支持する握持棒体104が延設されている。この握持棒体104には、マーカーペン103に繋がる操作杆105が内蔵されている。この操作杆105を墨付操作部106により操作することにより、墨付装置102内のマーカーペン103を上昇させて天井100に墨付けを行うことができる。なお、マーキングの位置決めをするために、墨付装置102の下方に下げ糸107を介して下げ振108を備えている。この下げ振108を墨付け位置に合わせた上で、上述のようなマーキングが行われる。このような技術については、特許文献1に記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】実開平5-62656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、図6のような天井墨付装置101を用いる場合、下げ振108を停止させるのは容易ではない。特に、天井の高さが3mを超えると、下げ糸107もそれに応じて長くなるので、完全に停止させるのにある程度の時間を要する。そして、完全に停止した位置が設置すべき位置から外れている場合は、上方の墨付装置102の位置を修正した上で、再び下げ糸107を停止させて確認する必要がある。このように、一箇所の墨付を行うごとに一定の時間を要する上に、下げ糸107が停止するまで墨付装置102を支え続ける必要があるので、作業者に生じる負担は大きい。
【0010】
また、下げ振108を利用して位置調整を行う場合であっても、握持棒体104を介して天井100の目標位置にマーカーペン103を近付けるために微調整を行うのは容易ではない。作業者が支える握持棒体104には一定の振れが生じてしまうため、この振れ幅よりも小さい移動が非常に困難である。よって、それぞれの作業対象ごとに正確な位置決めを行うためには、全体として多くの作業時間が必要となる。
【0011】
そこで、本発明は、遠隔位置からでも作業目標近傍の微調整を容易に行うことができるマーキング治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明のマーキング治具は、十字形にレーザーを照射するレーザーマーカーを利用して遠隔位置の対象物にマーキングを行うマーキング治具であって、位置合わせの印影を前記対象物に転写するスタンプと、前記スタンプを転写方向へ出没可能に収容する収容部と、前記収容部の収容口から前記スタンプの転写面と平行に外側へ延設され、前記対象物に当接させる当接板と、前記当接板上の少なくとも2箇所に設けられ、当接時において前記当接板の広がる面方向への滑りを抑えることができる部材を用いており、前記対象物に対して選択的に当接させることにより方向転換用の軸となる軸足部とを備えたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明のマーキング治具は、上記構成に加えて、前記転写面を中心角90度の4区画に分割する4本の仮想直線のうち、前記当接板上で、少なくとも隣接する2本と重なる位置に励起発光性の発光部を備えたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明のマーキング治具は、上記構成に加えて、少なくとも前記収容部の前記収容口側が透明部材で形成されていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明のマーキング治具は、上記構成に加えて、前記収容口の内側から前記スタンプの可動域に向けて前記転写面と平行に延設され、前記4本の仮想直線のうち、少なくとも隣接する2本と重なる位置に前記発光部を有する内接板を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、対象物に当接板を当接させた仮の位置決め状態において、少なくとも2つの軸足部のうちの1つを軸足に選んで代わる代わる軸回転を行い、目的のマーキング位置とスタンプとが一致するまで細かな円弧運動により微調整を繰り返すことができる。
【0017】
また、本発明によれば、上記効果に加えて、十字形に照射されるレーザーの少なくとも2本の線に対して発光部を重ねると、発光により目的のマーキング位置にスタンプが一致したことを判別できる。
【0018】
また、本発明によれば、上記効果に加えて、収容部内のスタンプと対象物との位置関係が外側から確認できるので、正確なマーキングが可能となる。
【0019】
また、本発明によれば、上記効果に加えて、収容部の内側に延設された内接板にも発光部が設けられているので、目的のマーキング位置に近い収容部内でも、レーザー光に対する発光部の発光の有無により位置ずれの正確な判別が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】スタンプが押し出された状態のマーキング治具の斜視図である。
図2】スタンプが収容された状態のマーキング治具を示す斜視図である。
図3】マーキング治具の中央縦断面図である。
図4】収容部を一部破断させて示したマーキング治具の斜視図である。
図5】マーキング治具を用いた位置合わせの手順を示すものであり、(a)は仮置きの状態、(b)は1回目の回転動作後の状態、(c)は2回目の回転動作後の状態、(d)は3回目の回転動作後の状態を示した図である。
図6】従来の天井墨付装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態に係るマーキング治具について、図を用いて説明する。
【0022】
図1は、スタンプ4が押し出された状態のマーキング治具1の斜視図である。また、図2は、スタンプ4が収容された状態のマーキング治具1を示す斜視図である。まず、これら図1、2を併用して、全体の構成についての説明を行う。ここでは、遠隔操作を行うための操作棒24については、手元側の一部を省略して表している。
【0023】
本発明のマーキング治具1は、十字形にレーザーを照射するレーザーマーカー装置を利用して対象物の目的の位置にマーキングを行うために用いられる治具である。マーキング治具1は、内側に収容されているスタンプ4を操作棒24で作業対象側へ押し出して、その対象物の目標位置に印影を転写させるように構成されている。本実施の形態に係る構成では、筒状の収容部2の内側にスタンプ4が出没可能に収容されている。
【0024】
また、収容部2の内側には、スタンプ4の転写方向へスライド可能に連結部22が設けられている。連結部22の側面にはスライドピン16が立設されており、このスライドピン16をガイドするガイド孔18が収容部2側に形成されている。ガイド孔18によるスライドピン16のガイドによって、連結部22が転写方向へスムーズに移動可能となり、移動範囲が規定される。このような連結部22に対してスタンプ4及び操作棒24が一体に構成されており、操作棒24を収容部2に対して相対的に進退移動させることにより、スタンプ4が出没方向へ操作される。
【0025】
図1は、操作棒24を作業対象側へ向けて押し出した状態を示しており、スタンプ4の先端の転写面4aが収容部2の収容口2aから露出している様子を表している。
【0026】
一方、図2は、操作棒24が手元側に戻されて、マーキング治具1に外力が加わっていない状態を示している。このように外力が加わっていないときにスタンプ4を内側へ収容するスプリング20が、収容部2の内側に備わっている。図1、2においてスプリング20は点線で表されている。
【0027】
図1及び図2に表れているように、収容部2の収容口2a側には、矩形の当接板6が設けられている。この当接板6は、対象物に当接させてマーキング治具1を安定させるための構造である。当接板6が延設されている方向は、図1に表れているように、スタンプ4の転写面4aと平行であり、筒状の収容部2の半径方向の外向きである。なお、本実施の形態に係る構成において、転写面4aの向きは、スタンプ4がどのような位置であっても一定である。操作棒24を基準とすると、操作棒24の軸方向に対して直交する方向に当
接板6が延設されている。
【0028】
上述のように、矩形に形成された当接板6のうち、対象物に接する作業対象側の四隅には、それぞれ軸足部8が設けられている。この軸足部8には、当接時において当接板6の広がる面方向への滑りを抑えることができる部材が選択される。本実施の形態に係る構成では、シート状のゴム部材が用いられている。
【0029】
次に、マーキング治具1の内部構造について、図3を用いて説明する。
【0030】
図3は、マーキング治具1の中央縦断面図である。ここでは、スタンプ4が押し出された図1の状態を点線で表し、スタンプ4が収容部2内に収容された図2の状態を実線で表している。
【0031】
図1、2を用いて上述したように、外力が加わっていない状態では、スプリング20の付勢によりスタンプ4は収容部2の内側へ収容される。
【0032】
また、上述した連結部22は、手元側に操作棒24を連結し、先端側にスタンプ4を固定することにより操作棒24とスタンプ4とを一体に操作できるように構成されている。スタンプ4の固定には、スタンプ固定具26が用いられる。スタンプ固定具26は連結部22に対して螺合により配置されており、締め込むことによってスタンプ4を連結部22に固定することが可能である。このように構成されているので、スタンプ固定具26を緩めることによって、別のスタンプに交換することが可能である。
【0033】
当接板6について詳しく見ると、当接板6は、上述のように収容部2の収容口2aから外側に延設されているが、収容部2の内側にも延設されている構造が見て取れる。この内側に延設された部分を内接板14と呼ぶこととする。
【0034】
当接板6及び内接板14の手元側の面に薄く形成されているのは、蓄光部10、12である。当接板6側に設けられているのが蓄光部10であり、内接板14側に設けられているのは蓄光部12である。内接板14は、スタンプ4の転写面4aが通過可能な空間を形成している。
【0035】
次に、これら当接板6及び内接板14を中心に、立体的な位置関係について、図4を用いて説明する。
【0036】
図4は、収容部2を一部破断させたマーキング治具1の斜視図である。ここでは、説明の便宜のため、蓄光部10、12に対して格子状のハッチングを施して表している。
【0037】
図4中に一点鎖線で示した4本の仮想直線L1、L2、L3及びL4は、スタンプ4の転写面4aを中心角90度の4区画に等分割する位置に描かれている。
【0038】
蓄光部10、12は、レーザーマーカーのレーザーが照射されると、励起発光する物質を含んでいる。よって、レーザーマーカーでマーキング位置が示されている場合、マーキング治具1の蓄光部10、12がレーザー照射と重なる位置に配置されると、蓄光部10、12が励起発光する。すなわち、レーザーの照射位置と蓄光部10、12とが一致したことを発光により視認することが可能である。十字形のレーザーマーカーに対して、4箇所の蓄光部10、12が一致してすべての発光が視認されると、遠隔位置であってもスタンプ4の中心がレーザーマーカーの交差位置に一致したことを明確に判別することができる。
【0039】
なお、本実施の形態に係る構成では、蓄光部10、12がスタンプ4を中心角90度で4分割する仮想直線上に配置されているので、少なくとも、隣接する2箇所の蓄光部10、12の発光が認められれば、十字形のレーザーマーカーの交差位置とスタンプ4の中心位置とが極めて近い位置にあることが分かる。
【0040】
収容部2の外側に延設された当接板6上に蓄光部10が設けられ、収容部2の内側に延設された内接板14上に蓄光部12が設けられているのは上述の通りである。この蓄光部10、12のうち、内側の蓄光部12に対してもレーザーが照射され、発光を視認できるように、本実施の形態に係る構成における収容部2は、透明部材で形成されている。このような構成により、収容部2の内側の蓄光部12による発光量が総発光量に加わるので、視認性を低下させることなく、収容部2の外側に延設される当接板6の面積を小さく抑えて設計することが可能となる。
【0041】
次に、本実施の形態に係るマーキング治具1の使用方法について、図5を用いて説明する。
【0042】
図5は、マーキング治具1を用いた位置合わせの手順を示すものであり、(a)は仮置きの状態、(b)は1回目の回転動作後の状態、(c)は2回目の回転動作後の状態、(d)は3回目の回転動作後の状態を示した図である。ここでは、説明の便宜のために、マーキング治具1を手元側から見た模式図によって表している。
【0043】
図5では、レーザーマーカーによる十字形の照射位置を二点鎖線で表し、十字形の交差位置を点Pで表している。また、レーザー照射位置と重なることにより発光している蓄光部10、12については、他と区別するために黒色で塗り潰して表している。さらに、マーキング治具1の回転動作の中心となる軸足部8にはハッチングを施すことにより他の3箇所と区別している。
【0044】
マーキング治具1の位置合わせにおいて、まず、図5(a)に示すように、できるだけレーザーマーカーの交差位置である点Pに近くなる位置に当接板6が当接される。この段階では、レーザー光と蓄光部10、12との間に重なりが生じていなくても構わない。図5(a)では、何れの蓄光部10、12もレーザー照射されていないので発光していない。
【0045】
図5(b)では、図5(a)の状態から最も効率良くスタンプ4の中心を点Pに近付けることができそうな軸足部8が選ばれる。図5(b)においてハッチングが施された軸足部8を中心に方向転換動作によってスタンプ4の中心を点P側へ回転させた状態が示されている。点線で表した矩形の領域は、マーキング治具1が元に存在していた場所である。この1回の方向転換動作によって2箇所の蓄光部10が発光し、レーザー光と重なったことが遠隔位置から視認される。
【0046】
図5(c)では、図5(b)とは別のハッチングを施された軸足部8が回転中心として選択され、スタンプ4の中心が点Pに近付くように回転されている。点線で表した矩形の領域は、図5(b)のときのマーキング治具1の位置である。図5(c)でも2箇所の蓄光部10、12が発光している。4箇所に設けられた蓄光部10、12のうち、隣接する2箇所が同時に発光している状態を維持すれば、スタンプ4の中心が点Pから大きく外れることを防止できる。図5(c)では、図5(b)とは異なる組み合わせで互いに隣接する蓄光部10、12が発光している。このように、隣接関係にある少なくとも2つの蓄光部10又は蓄光部12の何れかが発光するように軸足部8で回転させると、スタンプ4の中心が点Pから大きく外れて作業が後退してしまうことを防止できる。
【0047】
図5(d)では、図5(c)よりもスタンプ4の中心を点Pに近付けることが可能と考えられる軸足部8が新たに選択され、蓄光部10、12の発光状態を維持しながら微小な回転が加えられている。点線で表した矩形の領域は、図5(c)のときのマーキング治具1の位置である。
【0048】
図5(d)の段階になって、ある程度の位置合わせが達成されているが、本実施の形態に係るマーキング治具1によれば、回転中心となる軸足部8を選び直すことによって微小回転を繰り返すという微調整が、遠隔操作であっても容易に行うことが可能である。よって、図5(d)の状態から同様の動作を繰り返すことで、更に理想の位置にスタンプ4を近付けることが可能である。本実施の形態に係る構成では、4箇所の蓄光部10、12の全てがレーザー照射により発光するような位置へ微調整することにより、最適な位置へマーキングを行うことができる。
【0049】
以上に述べてきたような構成は本発明の一例であり、以下のような変形例も含まれる。
【0050】
(1)上記の実施の形態では、スタンプ4を収容部2の内側に戻すための付勢手段として、スタンプ4の外周を囲うように配置したコイル状のスプリング20を例として示した。しかし、外力が加わっていない状態でスタンプ4を内側へ戻すことができる構成であれば、例えば、磁気による反発力を利用した構成であっても構わない。
【0051】
(2)上記の実施の形態では、収容部2の内側で進退移動するスタンプ4の転写面4aの向きが一定となる構成を例として示した。しかし、このような構成以外にも、使用しない場合に収容部2の内側へ収容され、且つ、操作棒24で押し出すことにより転写面を露出させることが可能な構成であれば、転写面が進退移動に伴って反転するようなスタンプで置き換えることも可能である。この場合、当接板の延設方向を規定する際の基準となる転写面の向きは、対象物に接している状態の転写面の向きとする。すなわち、対象物に印影を転写可能な状態の転写面と平行な方向に当接板が延設されているものとする。
【0052】
(3)上記の実施の形態では、蓄光部10、12は、スタンプ4を中心角90度に4分割する4本の仮想直線L1~L4上のそれぞれと重なる4箇所に設けられている構成を例として示した。しかし、4本の仮想直線L1~L4のうち、少なくとも、隣接する2本と重なる位置に設けられていると、図5に示した方向転換動作によって、スタンプ4の中心位置を対象物のマーキング目標へ正確に位置合わせすることが可能である。
【0053】
(4)上記の実施の形態では、蓄光部10、12が、当接板6の四隅に設けられた軸足部8の間に配置されている構成を例として示した。しかし、スタンプ4を中心角90度に4分割する仮想直線上であれば、蓄光部10、12の配置は、軸足部8の間に限定されない。例えば、4本の仮想直線を軸足部8と重なる位置に取れば、蓄光部10、12を軸足部8の裏面側に位置するように設けても構わない。
【0054】
(5)上記の実施の形態では、当接板6に蓄光部10、12を配置した構成を例として示した。しかし、レーザー励起発光性の発光体であれば、蓄光部材に限らず、蛍光部材を用いても構わない。
【0055】
(6)上記の実施の形態では、矩形の当接板6が収容部2から延設されている構成を例として示した。しかし、蓄光部10、12がスタンプ4を中心角90度に4分割する仮想直線上に配置できる構成であれば、外形が矩形以外の形状であっても構わない。例えば円形でも良い。
【0056】
(7)上記の実施の形態では、軸足部8が当接板6の四隅に配置された構成を例として
示した。しかし、少なくとも2箇所に設けられていれば、回転中心となる軸足部8を交互に選択することにより、スタンプ4の中心を自在に移動させることが可能である。
【0057】
(8)上記の実施の形態では、軸足部8の部材として、シート状のゴム部材を採用した構成を例として示した。しかし、当接板6の延設される面方向への滑りを防止し、方向転換動作による回転時に軸を安定させることが可能な構成であれば、ゴムシート以外の構成でも構わない。
【0058】
(9)上記の実施の形態では、収容部2が透明部材で形成された構成を例として示した。しかし、内接板14上の蓄光部12にレーザーを照射することができ、遠隔位置から発光を視認できる構成であれば、当接板6及び内接板14の近傍のみを透明部材で形成した構成であっても構わない。更に、収容部2の周方向すべてを透明部材に形成する必要もない。また、内接板14を設けない構成であれば、収容部2を透明部材で形成する必要はない。
【0059】
(10)上記の実施の形態では、収容部2が円筒状に形成された構成を例として示した。しかし、スタンプ4を出没可能に収容できる構成であれば、円筒以外の形状であっても構わない。
【0060】
(11)上記の実施の形態では、蓄光部10、12がスタンプ4を中心角90度に4分割する仮想直線に沿った直線状に形成されている構成を例として示した。しかし、蓄光部10、12は、中心角90度の間隔を置いて配置されていれば、十字形に照射されるレーザーマーカーとの位置関係を特定できるので、直線状に形成されていなくても構わない。視認可能な大きさであれば、丸形の発光体を配置しても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明のマーキング治具は、作業対象物に当接させた状態でピボット回転を繰り返し、目標となるマーキング位置に対して微調整を行うことができるので、天井などに限らず、距離をおいた壁面や溝内の底面などの遠隔作業にも有用である。
【符号の説明】
【0062】
1 マーキング治具
2 収容部
2a 収容口
4 スタンプ
4a 転写面
6 当接板
8 軸足部
10 蓄光部(外側)
12 蓄光部(内側)
14 内接板
16 スライドピン
18 ガイド孔
20 スプリング
22 連結部
24 操作棒
26 スタンプ固定具
L1~4 仮想直線
【要約】
【課題】遠隔位置からでも作業目標近傍の微調整を容易に行うことができるマーキング治具を提供する。
【解決手段】マーキング治具1は、筒状の収容部2内にスタンプ4を出没可能に設ける。操作棒24でスタンプ4を押し出すことにより転写面4aが露出される。スタンプ4と操作棒24とは、連結部22を介して一体に構成されている。収容部2の収容口2aから外側に向けて転写面4aと平行に当接板6が延設されている。当接板6の作業対象側の四隅には作業対象上でピボット動作を行う軸足部8が設けられている。また、収容部2内には、スタンプ4を内側へ戻すように付勢するスプリング20が設けられている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6