(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】中空構造体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 3/10 20060101AFI20240523BHJP
B32B 3/02 20060101ALI20240523BHJP
B29C 65/02 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
B32B3/10
B32B3/02
B29C65/02
(21)【出願番号】P 2020030687
(22)【出願日】2020-02-26
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000010054
【氏名又は名称】岐阜プラスチック工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】伊東 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】新海 達也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 紘規
【審査官】川井 美佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-006118(JP,A)
【文献】国際公開第2020/171208(WO,A1)
【文献】特開2019-077066(JP,A)
【文献】特開2001-018289(JP,A)
【文献】特開2019-181880(JP,A)
【文献】特表2008-520456(JP,A)
【文献】米国特許第6372322(US,B1)
【文献】特開平9-309163(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0273787(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 51/00-51/46
B29C 53/00-53/84
B29C 63/00-63/48
B29C 65/02
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセルが内部に並設された板状のコア層を有する中空板材と、前記中空板材の少なくとも一方の主面に接合された表層とを備えた熱可塑性樹脂製の中空構造体であって、
前記セルは、前記コア層の厚み方向に延びる側壁部によって区画されており、
前記中空板材の側面には、一方の前記主面に接合された前記表層が他方の前記主面に向かって曲げられてなる曲げ部が設けられており、
前記中空板材において前記曲げ部に隣接する領域には、前記中空板材が厚み方向に圧縮されてなり、前記他方の主面側から前記一方の主面側に凹んだ形状で前記中空板材の厚みが薄くされた薄肉部が形成されて
おり、
前記曲げ部の厚みは、前記表層における前記薄肉部に接合された部分の厚みより薄くされていることを特徴とする中空構造体。
【請求項2】
前記曲げ部の内面は、前記薄肉部での前記表層の内面よりも、コア層の中空部分における熱可塑性樹脂の密度が高く構成された前記中空板材の主面に接合されていることを特徴とする請求項1に記載の中空構造体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の中空構造体の製造方法であって、
前記中空板材に前記表層を接合して中間体を形成する接合工程と、
上型及び下型を有する金型内で、前記中間体をプレスして前記曲げ部及び前記薄肉部を成形するプレス工程を備え、
前記上型には、前記中空板材の厚み以上の突出長の第1凸部が形成されており、
前記下型において前記金型の型締め時に前記第1凸部に隣接する位置には、前記中空板材の厚みより突出長が少ない第2凸部が形成されており、
前記プレス工程では、前記第1凸部で前記中間体をプレスすることにより前記曲げ部を成形するとともに、前記第2凸部で前記中間体をプレスすることにより前記薄肉部を成形することを特徴とする中空構造体の製造方法。
【請求項4】
前記中空板材及び前記表層を加熱する加熱工程を備え、
前記プレス工程では、加熱状態の前記中空板材及び前記表層を前記金型内でプレスして、前記曲げ部及び前記薄肉部の成形を前記接合工程と同時に行うことを特徴とする請求項3に記載の中空構造体の製造方法。
【請求項5】
前記中空板材及び前記表層を加熱する加熱工程を備え、
前記接合工程では、加熱された前記中空板材に加熱された前記表層を接合して前記中間体を形成し、
前記プレス工程では、加熱状態の前記中間体を前記金型内でプレスして、前記曲げ部及び前記薄肉部を成形することを特徴とする請求項3に記載の中空構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空構造体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂製の中空構造体は軽量であって適度な剛性を備えていることから、種々の立体形状に成形することにより、家具、建材、車両内装部材等、様々な分野で幅広く利用されている。特許文献1には、凹凸形状が賦形されたプラスチックハニカム体を、住宅等の内装部材として使用することが記載されている。
【0003】
特許文献1に記載される内装部材は、熱可塑性樹脂製のプラスチックハニカム体をプレス成形することにより、所望の凹凸形状が賦形されて形成されている。プラスチックハニカム体は、中空板状のエンボス層、エンボス層の両主面に接合された一対の外面層、及び一方の外面層上に接合された不織布よりなる繊維層を備えている。
【0004】
特許文献1に記載の発明では、プレス成形に使用する金型は、凹部が形成された受け型と、受け型の形状に合わせて長さの異なる複数の板状の熱刃が立設された押し型を備えている。プレス成形では、プラスチックハニカム体を、繊維層が下になるようにして受け型上に載置して押し型を下降させる。プラスチックハニカム体は、複数の熱刃に押されて受け型の凹部の形状に沿うように変形して凹凸形状が賦形されるとともに、繊維層が接合されていない外面層側には、熱刃により複数の凹溝が形成される。凹溝の周囲では熱刃によって樹脂が溶融して溶融側壁が形成され、凹溝以外の部分では、プラスチックハニカム体の側壁が座屈することなく中空部分が保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、複数のセルが並設された中空構造体に凹凸形状が賦形されると、表面の層(表層)には、プレス成形時に引き伸ばされるようにして曲げられた曲げ部が形成され、その曲げ部において表層が薄くなる場合がある。そして、表層の曲げ部は、セルの側壁が存在する部分では、側壁に支持されてその形状が保持されるものの、セルの側壁が存在しない中空部分では、引き伸ばされた表層がセルの中空部分に向かって窪んだような形状となる。これにより、中空構造体の曲げ部の表面に、凸凹が形成されることになる。
【0007】
特許文献1に記載されるプラスチックハニカム体でも、押し型の熱刃に押されて凹部が賦形されると、繊維層が下方に曲げられて引き伸ばされるため、繊維層が曲げられた曲げ部において、不織布の厚みが薄くなり易い。このプラスチックハニカム体では、熱刃によってエンボス層に溶融側壁が形成されているとは言え、エンボス層の側壁が座屈することなく残存している部分では中空部分が存在しているため、中空部分では不織布に窪みが発生することになる。これにより、プラスチックハニカム体の曲げ部での外観形状が低下してしまう。
【0008】
こうした問題は、特に凹部の深さが深くて、曲げ部での表層の引張幅が大きいような場合や、曲げ部での曲げ角度が急であるような場合に顕著である。
本発明は、従来のこうした課題を解決するためになされたものであり、その目的は、表層の曲げ部での外観形状が良好な中空構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明は、複数のセルが内部に並設された板状のコア層を有する中空板材と、前記中空板材の少なくとも一方の主面に接合された表層とを備えた熱可塑性樹脂製の中空構造体であって、前記セルは、前記コア層の厚み方向に延びる側壁部によって区画されており、前記中空板材の側面には、一方の前記主面に接合された前記表層が他方の前記主面に向かって曲げられてなる曲げ部が設けられており、前記中空板材において前記曲げ部に隣接する領域には、前記中空板材が厚み方向に圧縮されてなり、前記他方の主面側から前記一方の主面側に凹んだ形状で前記中空板材の厚みが薄くされた薄肉部が形成されており、前記曲げ部の厚みは、前記表層における前記薄肉部に接合された部分の厚みより薄くされている。
【0010】
中空板材の側面に設けられた曲げ部は、一方の主面に接合された表層が他方の主面に向かって曲げられて形成されている。また、コア層では、その厚み方向に延びる側壁部によってセルが区画されている。そのため、コア層において、表層の曲げ部が設けられた部分では、側壁部が存在する部分と、側壁部が存在しない中空部分とが混在している。
【0011】
上記の構成によれば、中空板材において表層の曲げ部に隣接する領域には、中空板材が厚み方向に圧縮されてなり、他方の主面側から一方の主面側に凹んだ形状とされた薄肉部が形成されている。薄肉部では、中空板材が圧縮されているため、コア層の厚み方向に延びる側壁部が、その途中で座屈したり折り曲げられたりしている。これにより、薄肉部では、中空部分における熱可塑性樹脂の密度が、薄肉部以外の部分より高くなっている。そのため、側壁部が存在している曲げ部では、側壁部により、表層が支持されてその形状が保持される一方で、側壁部が存在していない部分でも、中空部分に向かって表層が凹むことが抑制される。中空構造体の曲げ部の表面に、凸凹が形成されることが抑制され、表層の曲げ部での外観形状が良好な中空構造体が得られる。
【0012】
上記の構成において、前記曲げ部の内面は、前記薄肉部での前記表層の内面よりも、コア層の中空部分における熱可塑性樹脂の密度が高く構成された前記中空板材の主面に接合されていることが好ましい。
上記の構成によれば、コア層の厚み方向に延びる側壁部が座屈したり折り曲げられたりして、薄肉部以外の部分よりその密度が高くなっており、薄肉部に隣接する曲げ部の内面にはこうした側壁部が多く当接又は接合している。曲げ部の内面は、曲げ部以外での表層の内面より多くの側壁部で支持されていることにより、曲げ部の形状が保持され易い。表層の曲げ部での外観形状が良好な中空構造体が得られる。
【0013】
上記の課題を解決するため、本発明は、上記の中空構造体の製造方法であって、前記中空板材に前記表層を接合して中間体を形成する接合工程と、上型及び下型を有する金型内で、前記中間体をプレスして前記曲げ部及び前記薄肉部を成形するプレス工程を備え、前記上型には、前記中空板材の厚み以上の突出長の第1凸部が形成されており、前記下型において前記金型の型締め時に前記第1凸部に隣接する位置には、前記中空板材の厚みより突出長が少ない第2凸部が形成されており、前記プレス工程では、前記第1凸部で前記中間体をプレスすることにより前記曲げ部を成形するとともに、前記第2凸部で前記中間体をプレスすることにより前記薄肉部を成形する。
【0014】
上記の構成によれば、上型に形成され、中空板材の厚み以上の突出長の第1凸部により、中空板材をプレスすると、中空板材の一方の主面に接合された表層が、他方の主面側へ引き伸ばされるように曲げられて曲げ部が形成される。このとき、下型に形成され、第1凸部より突出長が少ない第2凸部により中空板材の他方の主面側が押圧されるため、曲げ部が形成される際には、曲げ部近傍が、第2凸部によって他方の主面側から下支えされるような状態となる。そのため、一方の主面側に接合された表層が引き伸ばされるように曲げられても、曲げ部が、コア層の中空部分に向かって凹むことが抑制される。曲げ部に凹凸形状が発生することを容易に抑制することができる。
【0015】
上記の構成において、前記中空板材及び前記表層を加熱する加熱工程を備え、前記プレス工程では、加熱状態の前記中空板材及び前記表層を前記金型内でプレスして、前記曲げ部及び前記薄肉部の成形を前記接合工程と同時に行うことが好ましい。
【0016】
上記の構成によれば、中空板材及び表層の接合と、封止部及び薄肉部の成形とを同時に行うことができる。製造工程が簡略化され、製造コストを抑制することができる。
上記の構成において、前記中空板材及び前記表層を加熱する加熱工程を備え、前記接合工程では、加熱された前記中空板材に加熱された前記表層を接合して前記中間体を形成し、前記プレス工程では、加熱状態の前記中間体を前記金型内でプレスして、前記曲げ部及び前記薄肉部を成形することが好ましい。
【0017】
上記の構成によれば、プレス工程では、中空板材に表層が接合された中間体を加熱状態でプレスする。そのため、中空板材と表層との接合精度が向上する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、表層の曲げ部での外観形状が良好な中空構造体が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態の中空構造体である収容板が収納された工具箱の斜視図。
【
図2】(a)は収容板の斜視図、(b)は(a)におけるA‐A線断面図。
【
図3】(a)は
図2(a)のB‐B線断面における斜視図、(b)は
図2(a)のB‐B線断面における断面図。
【
図4】(a)はコア層の斜視図、(b)は(a)におけるβ‐β線断面図、(c)は(a)におけるγ‐γ線断面図。
【
図5】(a)はコア層を構成するシート材の斜視図、(b)は同シート材の折り畳み途中の状態を示す斜視図、(c)は同シート材を折り畳んだ状態を示す斜視図。
【
図6】中空板材を製造する方法について説明する図。
【
図7】(a)~(f)は収容板を製造する方法について説明する図。
【
図8】第2実施形態の中空構造体である棚板を下面から見た部分斜視図。
【
図9】(a)~(d)は棚板を製造する方法について説明する図。
【
図10】変更例のコア層を構成するシート材の斜視図であり、(a)はコア層を構成するシート材の斜視図、(b)は同シート材の折り畳み途中の状態を示す斜視図、(c)は同シート材を折り畳んだ状態を示す斜視図。
【
図11】(a)~(
c)は変更例の収容板について説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
第1実施形態の中空構造体について、
図1~
図4に基づいて説明する。
第1実施形態の中空構造体は、工具類を収納するための工具箱1の内部に設けられた収容板7として利用される。
【0021】
図1に示すように、工具箱1は、直方体形状の本体部2に蓋部3が回動可能に取り付けられて構成されている。蓋部3には係合部4が設けられているとともに、本体部2には被係合部5が設けられており、係合部4を被係合部5に係合することで、本体部2が蓋部3で閉塞される。
【0022】
図1に示す工具箱1の内部右側には、複数の収容トレー6が、本体部2の上下方向に複数段重なった状態で収納されている。また、収容トレー6の左側には、収容板7が収納されている。収容板7は、本体部2の周壁に一体に突出形成された図示しない支持部上に載置されて位置決め状態で支持されている。収容板7は、例えば電動ドリル等、不規則な形状で比較的嵩張るような工具を安定して収容するための構成であり、本実施形態の収容板7は電動ドリルを収容するために設けられている。収容板7は、約25cm×約30cmの略長方形板状に形成されており、その厚みは約2cmである。
【0023】
ここで、収容板7の上下とは、収容板7に電動ドリルを収容可能な状態で工具箱1内に収納したときの上下を言うものとする。そして、
図2に示すように、この状態で収容板7の上方に位置する面を上面7a、下方に位置する面を下面7bと言うものとする。
【0024】
図2(b)に示すように、収容板7は、内部に複数のセルSが並設された略長方形板状の中空板状体10に凹部12が賦形されて形成されている。
まず、収容板7を構成する中空板状体10の構造について説明する。中空板状体10は、中空板材11と、その両主面に接合された表層としての加飾層32、42を備えている。
【0025】
図3(a)及び(b)に示すように、中空板材11は、コア層20と、その両主面に接合されたスキン層31、41を備えている。中空板材11を構成するコア層20及びスキン層31、41は、従来周知の熱可塑性樹脂で構成されている。コア層20及びスキン層31、41を構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン共重合体樹脂、アクリル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等が挙げられる。コア層20及びスキン層31、41は同じ材質の熱可塑性樹脂であることが好ましく、本実施形態ではポリプロピレン樹脂製とされている。また、スキン層31、41を構成する熱可塑性樹脂材料のメルトマスフローレート(MFR)は、コア層20を構成する熱可塑性樹脂材料のMFRより小さい。
【0026】
図4(a)~(c)に示すように、コア層20は、熱可塑性樹脂製のシートを所定形状に成形した1枚のシート材を折り畳んで形成されている。コア層20を構成するシート材の厚みは、約0.3mm~1.0mmであることが好ましく、本実施形態では、約0.5mmとされている。
【0027】
図4(a)~(c)に示すように、コア層20は、上壁部21と下壁部22と、上壁部21及び下壁部22の間に立設されて六角筒状の壁部を構成する側壁部23とから構成されている。上壁部21、下壁部22、及び側壁部23によって、コア層20の内部には六角柱状のセルSが区画形成されている。
【0028】
コア層20の内部に区画形成されるセルSには、構成の異なる第1セルS1と第2セルS2とが存在する。
図4(b)に示すように、第1セルS1は、その上端が上壁部21によって閉塞されるとともに、その下端は閉塞されることなく下方に開口している。つまり、第1セルS1では、コア層20の上面20aは、上壁部21で構成され、下面20bは側壁部23の下端縁で構成されている。
【0029】
一方、
図4(c)に示すように、第2セルS2は、その下端が下壁部22によって閉塞されるとともに、その上端は閉塞されることなく上方に開口している。つまり、第2セルS2では、コア層20の下面20bは、下壁部22で構成され、上面20aは側壁部23の上端縁で構成されている。
【0030】
図4(a)に示すように、第1セルS1及び第2セルS2は、X方向において第1セルS1同士又は第2セルS2同士が隣接して列を形成するように配置されている。また、X方向に直交するY方向において、第1セルS1の列と第2セルS2の列とが交互に配置されている。つまり、上端が閉塞されることなく中空部分が上方に開口している第2セルS2と、上端が上壁部21によって閉塞されて中空部分が上方に開口していない第1セルS1が、Y方向において交互に配置されていることになる。そして、これら第1セルS1及び第2セルS2により、コア層20は、全体としてハニカム構造をなしている。
【0031】
図4(b)及び(c)に示すように、隣接する第1セルS1同士の間、及び隣接する第2セルS2同士の間は、上壁部21及び下壁部22に対して垂直に形成され、第1側壁部23a及び第2側壁部23bを備える2層構造の側壁部23によって区画されている。一方、隣接する第1セルS1と第2セルS2の間は、上壁部21及び下壁部22に対して垂直に形成される1層構造の側壁部23によって区画されている。
【0032】
図4(b)及び(c)に示すように、第1側壁部23aと第2側壁部23bは、その上端縁及び下端縁で互いに熱融着されている。これは、後に説明するコア層成形工程において、折り畳まれたコア層20が加熱されて、側壁部23の上端縁及び下端縁で熱可塑性樹脂が熱溶融することにより、2層構造の第1側壁部23a及び第2側壁部23bの上端縁及び下端縁が接合されることによる。
【0033】
また、第1側壁部23a及び第2側壁部23bは、上下方向の中間部において接合部23cを介して互いに接合されている。本実施形態の接合部23cは、接着層で構成されており、第1側壁部23aの全面及び第2側壁部23bの全面が接合部23c(接着層)を介して接合(接着)されている。これは、後に説明するコア層成形工程において、ホットメルト系接着剤からなる低融点フィルムが溶融状態で供給されることにより、低融点フィルムが第1側壁部23a及び第2側壁部23bと接着されて接合部23cが形成されることによる。
【0034】
そのため、第1側壁部23a及び第2側壁部23bは、その上端縁及び下端縁では、接着層を介して接合された接合部23cと、熱可塑性樹脂が熱溶融して熱融着された部分とが共存した状態となっている。
【0035】
接着層を構成する接着剤の材質は、従来周知のものであって特に限定されない。例えば、コア層20及びスキン層31、41がポリプロピレン樹脂で構成されている本実施形態の中空板状体10の場合では、接着剤は、ポリプロピレン樹脂と相溶性があり、スキン層31、41より低融点の樹脂で構成されたホットメルト系接着剤とされている。他のホットメルト系接着剤としては、例えば、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等で構成されたものが挙げられる。なお、接着剤とは、溶融状態のものが、熱、光、化学反応、湿気等によって硬化し、硬化することによって被着材同士を固定された状態とするものを言うものとする。
【0036】
図3(a)及び(b)に示すように、スキン層31、41は、コア層20の上壁部21の上面及び下壁部22の下面にそれぞれ接合されている。具体的には、スキン層31は、コア層20の上面20aでは、第1セルS1の上壁部21及び第2セルS2の側壁部23の上端に接合されている。また、スキン層41は、コア層20の下面20bでは、第1セルS1の側壁部23の下端及び第2セルS2の下壁部22に接合されている。そのため、中空板材11の上面は、第1セルS1では、コア層20の上壁部21とスキン層31からなる2層構造とされ、第2セルS2では、スキン層31のみの1層構造とされている。また、中空板材11の下面は、第1セルS1では、スキン層41のみの1層構造とされ、第2セルS2では、コア層20の下壁部22とスキン層41からなる2層構造とされている。
【0037】
図3(a)及び(b)に示すように、加飾層32、42は、収容板7の外面に意匠性を付与するために設けられている。加飾層32、42は、それぞれ図示しない接着層を介して中空板材11に接合されている。加飾層32は、スキン層31に接合され、加飾層42は、スキン層41に接合されている。
【0038】
加飾層32、42の材質としては、従来周知の合成樹脂、合成皮革、合成繊維、金属、天然皮革、天然繊維、炭素繊維、フォーム材等が挙げられる。その形態としては、不織布、織物、編物や、合成樹脂シート(例えば、合成樹脂を延伸してなる平滑な延伸シート)、金属シート等が挙げられる。さらに、意匠性を付与する観点からは、模様や文字がプリントされていたり、異なる色の繊維で構成されていたりしてもよい。本実施形態の加飾層32、42は、不織布シートとされている。加飾層32、42の厚みは、いずれも約0.3mm~1.0mmであることが好ましく、本実施形態では、約0.5mmとされている。
【0039】
図2(a)及び(b)に示すように、収容板7の略中央部には、上面7aから下方に凹む凹部12が形成されている。凹部12は電動ドリルの形状に凹設されており、本実施形態では、収容板7の上面7aからの凹部12の深さは、約4cmとされている。つまり、凹部12は収容板7の厚み以上に凹設されており、そのため、凹部12の底壁14は、収容板7の下面7bより下方に位置している。凹部12の深さは、収容板7の厚みの約1.5~4倍が好ましく、約2~4倍がより好ましく、約2~3倍がさらに好ましい。収容板7の上面7a及び下面7bは、凹部12以外の部分は平坦面として形成されている。
【0040】
図2(a)及び(b)に示すように、凹部12には、側壁13及び底壁14が形成されている。凹部12において相対する一対の側壁13は、下方ほど互いに接近するように傾斜する急斜面として形成されている。収容板7の上面7aに対する側壁13の傾斜角度θ1は、70゜以上であることが好ましく、80゜以上であることがより好ましく、85゜以上であることがさらに好ましい。傾斜角度が90゜に近づくほど、凹部12内に電動ドリルを安定して収容することができる。
【0041】
また、
図3(a)及び(b)に示すように、凹部12において、収容板7の上面7aと側壁13との境界部分には、R形状の湾曲部15が形成されている。湾曲部15の曲率半径は約1~5mmとされている。
【0042】
図3(a)及び
図4(a)に示すように、収容板7は、その長手方向が
図4(a)のX方向に一致するように形成されている。そのため、
図3(a)の右側に示される湾曲部15を湾曲部15aとすると、湾曲部15aの延びる方向には、第1セルS1と第2セルS2とが交互に並んでいることになる。つまり、湾曲部15aでの中空板材11は、上面がスキン層31のみの第2セルS2と、上面が上壁部21及びスキン層31の2層構造からなる第1セルS1が交互に並んでいることになる。
【0043】
凹部12は、後に説明するプレス工程において、中空板状体10を上型81の凸部81cで押圧して成形される部分である。そのため、
図3(b)に示すように、凹部12の湾曲部15から側壁13の領域13Aにかけての部分では、中空板材11は、コア層20の上壁部21及びスキン層31が溶融一体化して引き伸ばされた状態でコア層20の側面を封止している。湾曲部15から側壁13の領域13Aにかけての部分では、溶融一体化した中空板材11は、全体としてほぼ隙間のない中実状になっている。
【0044】
また、側壁13の領域13Bの部分では、中空板材11は、コア層20の側壁部23が厚み方向に圧縮された部分と、コア層20の上壁部21、下壁部22、及びスキン層31、41とが、溶融一体化して引き伸ばされた状態となっている。領域13Bの部分では、溶融一体化した中空板材11は、全体としてほぼ隙間のない中実状になっている。
【0045】
湾曲部15から領域13Aの部分では、上壁部21及びスキン層31が溶融一体化して引き伸ばされた状態となっているのに対し、領域13Bの部分では、コア層20の側壁部23が厚み方向に圧縮された部分と、上壁部21、下壁部22、及びスキン層31、41とが、溶融一体化して引き伸ばされた状態となっている。そのため、溶融一体化した中空板材11は、湾曲部15から領域13Aの部分の方が、領域13Bの部分よりその厚みが薄い。
【0046】
凹部12の底壁14では、コア層20の側壁部23が厚み方向に圧縮された部分と、コア層20の上壁部21、下壁部22、及びスキン層31、41とが、溶融一体化した状態となっている。底壁14では、中空板材11は、全体としてほぼ隙間のない中実状になっている。溶融一体化した中空板材11は、底壁14の部分と領域13Bの部分と同程度の厚みである。
【0047】
一方、中空板材11の上側に接合されている加飾層32は、後に説明するプレス工程において、上型81の凸部81cによる下方への押圧により引っ張られて引き伸ばされた状態となっている。そのため、
図3(b)に示すように、凹部12の湾曲部15から側壁13の領域13Aにかけての部分では、コア層20の上面20a側でスキン層31に接合されている部分よりその厚みが薄くなっている。
【0048】
加飾層32が引き伸ばされて薄くなった湾曲部15から領域13Aにかけての部分は、上壁部21及びスキン層31が溶融一体化して引き伸ばされた部分とともに、コア層20の側面を封止している。本実施形態の中空構造体である収容板7では、表層としての加飾層32における湾曲部15から領域13Aにかけての部分が、請求項で言う曲げ部に相当する。加飾層32における曲げ部16は、中空板材11の一方の主面に接合された加飾層32から他方の主面側に向かって曲げられて、コア層20の側面に対して、溶融一体化した中空板材11を介して当接又は接合されている。コア層20の上面20a側でスキン層31に接合されている加飾層32の厚みが約0.5mmであるのに対して、加飾層32における曲げ部16の厚みは、約0.2mmである。
【0049】
また、凹部12の側壁13の領域13Bから底壁14にかけての領域でも、加飾層32は引っ張られて引き伸ばされた状態となっており、その厚みは領域13Aでの厚みと同程度であり、約0,2mmとなっている。
【0050】
中空板材11の下側に接合されている加飾層42も同様に、上型81の凸部81cによる下方への押圧により引っ張られて引き伸ばされた状態となっている。そのため、
図3(b)に示すように、側壁13の領域13Bから底壁14にかけての部分では、加飾層42は、コア層20の下面20b側でスキン層41に接合されている部分よりその厚みが薄くなっている。領域13Bから底壁14にかけての部分での、引き伸ばされた加飾層42の厚みは、曲げ部16での加飾層32の厚みと同程度であり、約0,2mmとなっている。
【0051】
凹部12の側壁13の領域13Bから底壁14にかけての部分では、溶融一体化した中空板材11を、加飾層32、42が引き伸ばされた部分が挟み込むようにして一体化した状態となっている。その厚みは、側壁13の領域13Aの部分より厚く、これにより、凹部12の強度が保持されている。
【0052】
図3(a)及び(b)に示すように、収容板7において凹部12の側壁13に隣接する領域には、下方から凹んだ形状で薄肉化された薄肉部17が形成されている。薄肉部17は、凹部12の側壁13に沿って凹部12を取り囲むように凹部12の全周に亘って形成されており、その幅L1は約1cmである。また、薄肉部17の下面17aは、平坦面として形成されている。
【0053】
薄肉部17は、後に説明するプレス工程において、中空板状体10を下型82の凸部82cで押圧して成形される部分であり、その厚みは、中空板状体10の厚みの約半分程度の約1cmである。そのため、
図3(b)に示すように、薄肉部17では、コア層20の側壁部23が厚み方向に圧縮されて、その途中で座屈したり折り曲げられたりしている。側壁部23は、例えば、上下方向の1~2箇所で座屈したり折り曲げられたりしている。これにより、薄肉部17では、コア層20の中空部分における熱可塑性樹脂の密度が、薄肉部17以外の部分より高くなっている。また、薄肉部17に隣接する曲げ部16の内面には、中空板材11の上壁部21やスキン層31を介して、こうした側壁部23が多く当接又は接合している。
【0054】
図3(a)及び(b)に示すように、収容板7のすべての端部には端面7cが形成されている。端面7cは、後に説明するプレス工程において、中空板状体10が下型82に向けて押圧されて成形される部分である。そのため、
図3(b)に示すように、端面7cでは、コア層20の下壁部22及びスキン層41が溶融一体化したものが、加飾層32側へ向けて曲げられて引き伸ばされた状態となっている。また、加飾層42も加飾層32側へ向けて曲げられて引き伸ばされた状態となっている。一方、収容板7のすべての端部では、上側のスキン層31及び加飾層32は、曲げられることなく水平方向に向かって延びている。
【0055】
加飾層42が引き伸ばされた先端部分と加飾層32との間には、中空板材11が厚み方向に圧縮されて溶融一体化された圧縮部20cが形成されている。圧縮部20cでは、中空板材11が厚み方向に押し潰されて圧縮されることによりセルSはその形状を識別できない程度に変形している。溶融一体化した熱可塑性樹脂は密集した状態とされており、ほぼ隙間のない中実状とされている。
【0056】
図3(b)に示すように、端面7cは、下方ほど収容板7の内方側へ傾斜する急斜面として形成されている。収容板7の下面7bに対する端面7cの傾斜角度θ2は、70゜以上であることが好ましく、80゜以上であることがより好ましく、85゜以上であることがさらに好ましい。傾斜角度が90゜に近づくほど、収容板7を工具箱1の周壁に突出形成された支持部上に載置したとき、収容板7を支持部で安定して支持することができる。
【0057】
また、収容板7の下面7bと端面7cとの境界部分には、R形状の湾曲部43が形成されている。湾曲部43の曲率半径は約1~5mmとされている。
次に、本実施形態の収容板7の作用について説明する。
【0058】
収容板7は、複数のセルSが並設された中空板材11に表層としての加飾層32、42が接合されてなる中空板状体10の略中央部に、電動ドリルを収容するための凹部12が形成されている。凹部12は、電動ドリル形状に凹設されて、その深さは約4cmである。そのため、凹部12内に電動ドリルを収容すると、電動ドリルは凹部12内でがたつくことなく安定して保持される。また、収容板7のすべての端部では、下側のスキン層41、加飾層42が上方に曲げられた端面7cが急斜面として形成されている。そのため、収容板7は工具箱1内の支持部上で安定して支持される。
【0059】
図3(b)に示すように、凹部12の湾曲部15から側壁13の領域13Aにかけての部分では、中空板材11は、コア層20の上壁部21及びスキン層31が溶融一体化して引き伸ばされた状態でコア層20の側面を封止している。湾曲部15に隣接する領域では、凹部12の近傍のコア層20は、側壁部23が厚み方向に圧縮されて上壁部21及びスキン層31とともに溶融一体化した部分も存在するが、コア層20の中空構造はなお保持されている。そして、中空構造が保持されたコア層20では、側壁部23は凹部12側へ傾いた状態となっている場合がある。側壁部23が傾いた状態となっていても、側壁部23によりある程度の強度が保持されている。
【0060】
また、凹部12の湾曲部15から側壁13の領域13Aにかけての部分では、加飾層32には、引っ張られて引き伸ばされた曲げ部16が形成されている。曲げ部16に対しては、加飾層32が引き伸ばされることにより、コア層20の中空構造部分に向かって凹むような力が作用する。特に湾曲部15aでは、第1セルS1と第2セルS2とが交互に並んでいるため、中空板材11の上面の厚みが、薄い部分と厚い部分とが交互に並んでいることになる。そのため、曲げ部16では、中空板材11の上面の厚みに応じて、凹みの程度が異なり、曲げ部16の表面に凸凹を発生させるような力が働く。
【0061】
一方、曲げ部16に隣接する領域には、下方から凹んだ形状で薄肉化された薄肉部17が、凹部12の側壁13に沿って凹部12を取り囲むように凹部12の全周に亘って形成されている。薄肉部17では、コア層20の側壁部23が厚み方向に圧縮されて、その途中で座屈したり折り曲げられたりしており、コア層20の中空部分における熱可塑性樹脂の密度が、薄肉部17以外の部分より高くなっている。また、曲げ部16の内面には、中空板材11の上壁部21やスキン層31を介して、座屈したり折り曲げられたりした側壁部23が多く当接又は接合している。
【0062】
そのため、曲げ部16に隣接する領域でコア層20に中空部分が残存していたとしても、曲げ部16は、中空板材11の上壁部21やスキン層31を介して、座屈したり折り曲げられたりした側壁部23に支持されることになる。薄肉部17に下支えされるような状態となることにより、曲げ部16の表面に凸凹を発生させるような力が働いたとしても、その発生が抑制される。第1セルS1と第2セルS2が混在することにより、曲げ部16の部分で、中空板材11の上面の厚みに差が生じている場合であっても、曲げ部16の表面での外観形状が良好になる。また、曲げ部16に隣接する領域では、中空構造が保持されたコア層20での中空部分で側壁部23が傾いた状態となっている場合があるが、側壁部23によりある程度の強度が保持されている。これによっても、曲げ部16が側壁部23に支持されて、その表面に凸凹の発生することが抑制される。
【0063】
図3(a)に示すように、直線状に延びる湾曲部15(例えば、
図1で紙面の略上下方向に延びる湾曲部15a)では、プレス工程において凹部12を成形する際に、加飾層32が、湾曲部15の両端部より中央部で、より引っ張られて引き伸ばされ易い。そのため、湾曲部15の中央部では、曲げ部16の厚みが薄くなり易く、両端部より中央部の方がセルSの内方へ引き込まれ易くなる。この点、曲げ部16は、湾曲部15の全長に亘って薄肉部17により下支えされるような状態となっているため、湾曲部15の中央部での凸凹の発生が抑制され、直線状に延びる湾曲部15の全体において、外観形状に差が生じることが抑制される。
【0064】
凹部12の側壁13の領域13Bから底壁14にかけての部分は、中空板材11が厚み方向に圧縮されて溶融一体化して、全体としてほぼ隙間のない中実状に形成されている。そのため、凹部12に何らかの衝撃が加わったとしても、凹部12の側壁13や底壁14がその衝撃に耐えうるだけの強度を有しており、衝撃の影響を受けにくい。凹部12での変形が抑制される。
【0065】
また、側壁13の領域13Aの部分、側壁13の領域13Bの部分、底壁14、及び圧縮部20cでは、中空板材11が厚み方向に圧縮されて溶融一体化されてほぼ隙間のない中実状になっている。そのため、これらの部分では、熱可塑性樹脂の密度が他の部分と比較して高くなっており、他の部分に比較して高い強度を有している。また、収容板7の上面7aと側壁13との境界部分の湾曲部15に隣接する領域でも、凹部12の近傍において中空板材11が厚み方向に圧縮されて溶融一体化された部分が存在する。こうした部分も、圧縮されていない部分に比較して熱可塑性樹脂の密度が高くなっており、高い強度を有している。
【0066】
つまり、収容板7では、中空板材11が厚み方向に圧縮される度合いに応じて熱可塑性樹脂の密度が高くなっている。具体的には、中空板材11が最も圧縮されてほぼ中実状とされた部分である側壁13、底壁14、圧縮部20cでは、最も熱可塑性樹脂の密度が高く、薄肉部17は次に高く、中空板材11が圧縮されていない部分では最も密度が低い。
【0067】
次に、収容板7を製造する方法を、
図5~
図7に従って、その作用とともに説明する。
収容板7を製造する方法は、一枚のシート材100からコア層20を成形するコア層成形工程、コア層20にスキン層31、41を接合して中空板材11を形成する第1接合工程、中空板材11及び加飾層32、42を加熱する加熱工程、中空板材11に加飾層32、42を接合して中空板状体10を形成する第2接合工程、中空板状体10を金型内でプレスして曲げ部16及び薄肉部17を有する中間体50を成形するプレス工程、中間体50の端面の形状を整えて収容板7を得る後加工工程に分けることができる。
【0068】
先ず、コア層20を成形するコア層成形工程、及び中空板材11を形成する第1接合工程について説明する。本実施形態では、コア層成形工程及び第1接合工程は、
図6に示すような装置Tによって一連の流れで行う。
【0069】
図6では、装置Tを模式図として示しており、左側が上流側、右側が下流側である。装置Tには、上流側から順に、熱可塑性樹脂製のシートが巻回されたシートロール61、シート材100を成形するための真空成形用ドラム62、シート材100に接着剤を塗布するための搬送ロール63、コア層成形工程のための第1のコンベヤ64、コア層20の側壁部23に接合部23cを形成するための第2のコンベヤ65、スキン層31、41の原材料となるシートが巻回されたシートロール66、67、及び第1接合工程のための第3のコンベヤ68が配置されている。
【0070】
図6に示すように、シートロール61には、コア層成形工程でのシート材100の材料となる平坦なシートが巻回されている。シートロール61から巻き出されたシートは、真空成形用ドラム62に供給されて、所定の凹凸形状が形成されたシート材100に成形される。真空成形用ドラム62は、回転駆動可能に軸支されるとともに所定温度に加熱可能に構成されている。真空成形用ドラム62の回転速度は、シートロール61の回転速度と等しくなるように設定されている。さらに、真空成形用ドラム62の外周部には、円筒状をなす成形金型が取り付けられており、成形金型に形成されている貫通孔を通じた真空引きが可能に構成されている(図示略)。真空成形用ドラム62に供給されたシートは、その外周部に取り付けられた成形金型の形状に賦形されて、シート材100が成形される。
【0071】
図5(a)に示すように、成形金型により成形されたシート材100には、帯状をなす第1膨出部110及び第2膨出部120がその幅方向(Y方向)に交互に配置されている。第1膨出部110は、上方へ突出する形状に形成され、第2膨出部120は、下方へ突出する形状に形成されている。第1膨出部110と第2膨出部120はX方向に延びるように交互に配置されている。シート材100を上面視した場合の第1膨出部110と、シート材100を下面視した場合の第2膨出部120は、同形状であってX方向に1/2ピッチずつずれた位置に形成されている。
【0072】
第1膨出部110は、上面110aと、一対の側面110bと、一対の端面110cからなり、Y方向断面形状が、正六角形を最も長い対角線で二分して得られる台形状をなしている。一対の端面110cは、
図5(a)に示す折り畳み線Pの位置に形成されている。端面110cと上面110aとのなす角度は約90゜である。
【0073】
一方、第2膨出部120は、下面120aと一対の側面120bと、一対の端面120cからなり、Y方向断面形状が、正六角形を最も長い対角線で二分して得られる台形状をなしている。一対の端面120cは、
図5(a)に示す折り畳み線Qの位置に形成されている。端面120cと下面120aとのなす角度は約90゜である。第2膨出部120のX方向の長さ、つまり、一対の端面120c間の長さは、第1膨出部110のX方向の長さ、つまり、一対の端面110c間の長さと同じである。第2膨出部120の端面120cは、第1膨出部110のX方向の中央に位置している。なお、第1膨出部110の側面110bと第2膨出部120の側面120bは説明の便宜上分けているが、同じ構成である。
【0074】
図6に示すように、シート材100は、一対の搬送ロール63の間に搬送される。搬送ロール63の回転速度は、真空成形用ドラム62の回転速度と等しくなるように設定されている。また、搬送ロール63の上流側には、ホットメルト系接着剤からなる図示しない低融点フィルムが順次供給されるように構成されている。これにより、一対の搬送ロール63の間を通過したシート材100の表面には、低融点フィルムが溶融状態とされたホットメルト接着剤が塗布される。接着剤は、シート材100の上面においては、第1膨出部110の上面110a全体に薄膜状に塗布され、シート材100の下面においては、第2膨出部120の下面120a全体に薄膜状に塗布される。
【0075】
図6に示すように、接着剤が塗布されたシート材100は、コア層成形工程のための第1のコンベヤ64に供給されてコア層20の形状に成形される。シート材100は、第1のコンベヤ64によって、その上下方向の移動を規制された状態で下流側へと搬送される。第1のコンベヤ64には、第1のコンベヤ64間の温度を所定温度に加熱するための加熱装置64aが設けられている。また、第1のコンベヤ64による搬送速度は、搬送ロール63の回転速度よりも遅くなるように設定されている。これにより、シート材100は、第1のコンベヤ64間を搬送されるに際して、加熱されつつ下流方向へ圧縮されながら折り畳まれて、コア層20が成形される。
【0076】
具体的には、
図5(a)、(b)に示すように、シート材100は、折り畳み線Pに沿って山折りされ、折り畳み線Qに沿って谷折りされる。
図5(c)に示すように、一つの第1膨出部110では、X方向の中央部分に設けられた折り畳み線Qで谷折りされて、X方向右側の上面110aとX方向左側の上面110aが立設状態で当接する。折り畳まれた第1膨出部110では、立設状態で当接したX方向右側の上面110aとX方向左側の上面110aにより、コア層20の2層構造の側壁部23が形成され、側面110bにより、コア層20の1層構造の側壁部23が形成される。側壁部23の上端には、隣り合う第1膨出部110の端面110cからなる上壁部21が形成される。
【0077】
また、一つの第2膨出部120では、隣り合う折り畳み線QのX方向中央に設けられた折り畳み線Pで山折りされ、X方向右側の下面120aとX方向左側の下面120aが立設状態で当接する。折り畳まれた第2膨出部120では、立設状態で当接したX方向右側の下面120aとX方向左側の下面120aにより、コア層20の2層構造の側壁部23が形成され、側面120bにより、コア層の20の1層構造の側壁部23が形成される。側壁部23の下端には、隣り合う第2膨出部120の端面120cからなる下壁部22が形成される。
【0078】
第1のコンベヤ64は加熱装置64aにより加熱されている。そのため、折り畳まれて形成されたコア層20は、第1のコンベヤ64を通過する時点では、接着層の接着剤は溶融された状態となっている。また、第1のコンベヤ64の加熱装置64aによって加熱されるコア層20は、第1のコンベヤ64によって押圧される。そのため、2層構造の側壁部23の上端縁及び下端縁は熱融着された状態となる。
【0079】
図6に示すように、折り畳まれたコア層20は、第2のコンベヤ65に向かって移動する。第2のコンベヤ65による搬送速度は第1のコンベヤ64による搬送速度と等しくなるように設定されている。そのため、折り畳まれたコア層20は、その形状を保持しながら第2のコンベヤ65を通過する。第2のコンベヤ65を通過する際には、2層構造の側壁部23に塗布された溶融状態の接着剤は冷却されて固化される。これにより、2層構造をなす第1側壁部23aと第2側壁部23bは、接着剤が冷却固化して形成された接合部23cを介して接合される。以上の工程を経て、コア層20が得られる。
【0080】
第2のコンベヤ65通過したコア層20は、第3のコンベヤ68に向かって移動する。第3のコンベヤ68による搬送速度は第2のコンベヤ65による搬送速度と等しくなるように設定されている。第3のコンベヤ68の搬入口近傍には、スキン層31、41の原材料となる熱可塑性樹脂製のシートが巻回されたシートロール66、67がそれぞれ配置されている。シートロール66、67に巻回されたシートには図示しない接着剤が塗布されている。ここでの接着剤も、接合部23cを構成する接着層と同様、ポリプロピレン樹脂と相溶性のある樹脂で構成されたホットメルト系接着剤であることが好ましい。
【0081】
第3のコンベヤ68の間を通過することにより、コア層20の両面には、シートロール66、67に巻回されたシートが順次供給される。この状態では、シートロール66、67からのシートに塗布された接着剤は溶融状態とされている。一方、第3のコンベヤ68には加熱装置が設けられていないため、コア層20の両面に供給されたシートは、塗布された接着剤が冷却固化されて接合される。これにより、コア層20の両面に、接着層を介してスキン層31、41が接合された中空板材11が得られる。
【0082】
次に、中空板材11、及び加飾層32、42を加熱する加熱工程について説明する。
図7(a)に示すように、まず、収容板7に使用する中空板材11として、装置Tにより得られた中空板材11を、収容板7より大きな形状に切断したものを準備する。例えば、収容板7の大きさより、長手方向及び短手方向にそれぞれ約50mm大きな長方形状に切断したものを準備する。なお、
図7では、中空板材11の中空構造を省略して示している。また、
図7では、
図2(a)のA‐A線断面図に対応する部分を模式図として示している。
【0083】
収容板7に使用する加飾層32、42としては、図示しない接着層があらかじめ積層一体化されたものを使用する。加飾層32、42に積層された接着層は、中空板材11を構成するポリプロピレンと相溶性のある樹脂であることが好ましい。加飾層32、42は、収容板7より大きな形状、具体的には中空板材11と同程度の大きさに切断したものを準備する。
【0084】
図7(b)に示すように、中空板材11、及び加飾層32、42をそれぞれ加熱する。中空板材11を加熱する場合には、所定温度に設定された加熱炉71内に中空板材11を入れて、所定時間保持する。また、加飾層32、42も同様に、所定温度に設定された加熱炉72内に加飾層32、42を入れて、所定時間保持する。加熱炉71、72内の温度は、中空板材11、及び加飾層32、42に積層一体化された接着層を構成する熱可塑性樹脂(本実施形態では、ポリプロピレン或いはポリプロピレンと相溶性のある樹脂)が溶融する程度に設定されている。
【0085】
本実施形態では、加熱工程において、加熱炉71内に保持された中空板材11の表面温度が、部位によって異なるように調整している。また、加熱炉72内に保持された加飾層32、42の表面温度も、部位によって異なるように調整している。これは、中空板材11や加飾層32、42の表面に、部分的に遮蔽材を設置することによって行う。遮蔽材には複数の細かな孔が形成されており、孔の大きさや数を調整することによって、遮蔽材を設置した部分の表面温度が、加熱炉71、72内の温度より低くなるよう調整することができる。なお、表面温度の調整は、孔が形成された遮蔽材に限らず、孔が形成されていない遮蔽材を設置することによって行ってもよい。
【0086】
遮蔽材は、後のプレス工程において、中空板材11の厚みが薄くプレス成形される部分以外の部分に設置する。
図7(d)に示すように、後のプレス工程では、中空板材11がプレス成形されて、中央部に凹部12及び薄肉部17が形成されるとともに周辺部に圧縮部20cが形成された中間体50が得られるが、遮蔽材を設置するのは、中間体50における凹部12、薄肉部17、及び圧縮部20cに対応する部分以外の部分である。
【0087】
遮蔽材を設置することにより、加熱炉71内での加熱温度に対して、中空板材11のうち、コア層20の潰し幅が小さいかほとんど潰さない部分の表面温度を相対的に低く調整し、コア層20の潰し幅が大きい部分の表面温度を相対的に高く調整する。コア層20の潰し幅が最も大きい部分の表面温度は、加熱炉71内の加熱温度と同程度である。本実施形態の収容板7では、凹部12及び圧縮部20cで最も潰し幅が大きく、次いで、薄肉部17での潰し幅が大きく、その他の部分ではほとんど潰さない。加飾層32、42の表面温度を調整する方法についても、中空板材11の場合と同様であるためここでは省略する。
【0088】
次に、中空板材11に加飾層32、42を接合して中空板状体10を形成する第2接合工程、中空板状体10を金型内でプレスして曲げ部16及び薄肉部17を成形された中間体50を得るプレス工程について説明する。本実施形態では、第2接合工程とプレス工程を一つのプレス工程として同時に行っている。そのため、中空板状体10が形成されると同時に中間体50が成形されることになる。
【0089】
図7(c)に示すように、プレス工程(第2接合工程及びプレス工程)に使用する金型は、上型81及び下型82を備えている。本実施形態の上型81及び下型82は、全体が加熱されることなく常温に保持されている。
【0090】
下型82には、凹部82a、82b、及び凸部82cが形成されている。凹部82aは、上面視長方形状をなしている。その長手方向の長さは、収容板7の長手方向の長さとほぼ同一とされ、その短手方向の長さは、収容板7の短手方向の長さとほぼ同一とされている。凹部82aの深さは、収容板7の厚みより少し浅く形成されている。
【0091】
凹部82bは、収容板7の凹部12を形成するための部分であり、上面視が電動ドリル形状をなしている。凹部82bの深さは、凹部82aの底面に対して約2cm深く形成されている。
【0092】
凸部82cは、収容板7の薄肉部17を形成するための部分であり、上面視が電動ドリル形状をなしている。凸部82cは、凹部82bの周囲を取り囲むようにその全周に亘って約1cmの幅で形成されている。また、凹部82aの底面に対して約1cmの突出長で形成されている。
【0093】
なお、凹部82a、82bの大きさ、深さや、凸部82cの大きさ、高さは、中空板材11及び加飾層32、42の熱収縮を考慮して設定することが好ましい。以下、同様である。
【0094】
上型81には、凹部81a、81b、及び凸部81cが形成されている。凹部81a、81bは、上面視長方形環状をなしている。凹部81a、81bの深さは、後に説明する中間体50の圧縮部51の厚みとほぼ同一とされている。凹部81aは、上型81及び下型82を型締めしたときに収容板7の上面7aを成形するための部分であり、凹部81bは、中間体50の圧縮部51を成形するための部分である。つまり、
図7(c)に点線で示すように、凹部81aとは、型締めしたときに下型82の凹部82aの外縁より内方に位置する部分を言い、凹部81bとは、下型82の凹部82aの外縁より外方に位置する部分を言う。また、凸部81cは、収容板7の凹部12を形成するために突設された部分であり、上面視電動ドリル形状をなしている。凸部81cの高さは、凹部81aより約4cm突出するように形成されている。
【0095】
図7(c)に示すように、まず、加熱された中空板材11及び加飾層32、42を、下から、加飾層42、中空板材11、加飾層32の順に、下型82上に載置する。中空板材11及び加飾層32、42は、収容板7より大きな長方形状に切断されていることから、下型82上に載置した状態では、長手方向両端部及び短手方向両端部が凹部82aから外方に突出した状態となる。
【0096】
また、先の加熱工程では、遮蔽材を使用することによって中空板材11及び加飾層32、42の表面温度を、部位に応じて異ならせていることから、中空板材11及び加飾層32、42を載置する際には、それぞれの表面温度に応じて、金型81、82に対して位置決めする。
【0097】
具体的には、中間体50の凹部12、薄肉部17、及び圧縮部51以外の部分として表面温度を低く調整した部分を、上型81の凹部81a及び下型82の凹部82aの位置に合わせる。また、中間体50の凹部12に対応する部分として表面温度を最も高く調整した部分を、上型81の凸部81c及び下型82の凹部82bの位置に合わせる。同様に、中間体50の圧縮部51に対応する部分として表面温度を最も高くした部分を、上型81の凹部81bの位置に合わせる。さらに、中間体50の薄肉部17に対応する部分として表面温度を次に高く調整した部分を、下型82の凸部82cの位置に合わせる。
【0098】
つまり、中空板材11及び加飾層32、42の位置決めは、加熱工程で調整したそれらの表面温度に基づいてなされる。本実施形態では、型締めしたときの空間の高さは、下型82の凹部82a及び上型81の凹部81aの位置が最も高く、約2cmである。また、下型82の凸部82c及び上型81の凹部81aの位置が次に高く、約1cmである。一方、下型82の凹部82b及び上型81の凸部81cの位置、及び上型81の凹部81bの位置が最も低く、約3.5mmである。型締めしたときに空間の高さが最も高い凹部81a、82aの部分には、先の加熱工程で被覆材を載置して最も低い表面温度に調整した部分を配置し、空間の高さが次に高い凹部81a、凸部82cの部分には、遮蔽材を載置して次に低い表面温度に調整した部分を載置し、空間の高さが最も低い凹部81b、凸部81c、凹部82bの部分には、先の加熱工程で被覆材を載置せずに高い表面温度に調整した部分を配置する。裏返せば、加熱工程では、型締め時の上型81と下型82の間の空間の高さに応じて、中空板材11及び加飾層32、42の表面温度を調整することになる。
【0099】
中空板材11及び加飾層32、42を下型82の上に載置した状態では、加熱された加飾層32、42にコーティングされた接着層の熱可塑性樹脂の一部が熱溶融された状態となっている。そのため、中空板材11及び加飾層32、42は、下型82の上で仮接合された状態で位置決めされる。
【0100】
図7(d)に示すように、上型81を下型82に向けて下降させて型締めして、第2接合工程とプレス工程を同時に行う。これにより、中空板材11に加飾層32、42が接合された中空板状体10が得られるとともに、中空板状体10に凹部12、薄肉部17、及び圧縮部51が形成された中間体50が得られる。上型81及び下型82には図示しない吸引孔が複数形成されており、型締め時には中空板材11及び加飾層32、42を吸引することで、金型81、82内部に位置決め状態で密着させることができる。プレス時の圧力、プレス時間は、適宜設定すればよい。中空板状体10は、上型81及び下型82の内面形状、すなわち、凹部81a、81b、82a、82b、及び凸部81c、82cの形状に成形されて中間体50となる。
【0101】
図7(d)に示すように、型締め時の空間の高さが約3.5mmとされた上型81の凸部81c及び下型82の凹部82bには、加熱工程において、表面温度が最も高くなるように調整された部分が配置されている。型締め時には、中空板材11及び加飾層32、42が、上型81の凸部81cからの押圧力を受けて下型82の凹部82b内に押し込まれると、中間体50の凹部12が形成される。凹部12が形成される部分では、表面温度が最も高いことから、型締めにより中空板材11を構成するポリプロピレン樹脂が熱溶融されて、コア層20及びスキン層31、41は溶融一体化した状態となる。溶融一体化した状態で上型81の凸部81cによって下方へ押圧された中空板材11は、下方へ向かって引き伸ばされる。同様に、加熱された状態の加飾層32も下方に向かって引き伸ばされる。これにより、
図3(b)に示す湾曲部15から側壁13の領域13Aにかけての部分では、上型81の凹部81a及び下型82の凹部82aに対応する部分に比べて、加飾層32の厚みが薄くなる。このようにして湾曲部15から側壁13の領域13Aにかけての部分では、加飾層32の厚みが薄い曲げ部16が形成される。
【0102】
型締め時の空間の高さが約1cmとされた上型81の凹部81a及び下型82の凸部82cの位置には、加熱工程において、表面温度が次に高くなるように調整された部分が配置されている。型締め時には、中空板材11及び加飾層32、42が、下型82の凸部82cからの押圧力を受けて上方に押圧されると、中間体50の薄肉部17が形成される。薄肉部17が形成される部分では、表面温度が凹部12が形成される部分に次いで高いことから、中空板材11を構成するポリプロピレン樹脂の一部が熱溶融される。その一方で、コア層20の中空部分は残存しているものの、凸部82cからの押圧力により、コア層20の側壁部23が座屈したり折り曲げられたりする。座屈したり折り曲げられたりした側壁部23は、中空板材11の上壁部21やスキン層31を介して曲げ部16の内面に当接又は接合する。これにより、中空板材11の上壁部21やスキン層31を支持する箇所が多くなる。また、中空板材11の下壁部22やスキン層41もより多くの箇所が支持される。さらに、側壁部23が座屈したり折り曲げられたりすることにより、薄肉部17では、コア層20の中空部分における熱可塑性樹脂の密度が高くなる。そのため、凹部12が形成される部分では、凸部81cによる押圧により加飾層32が引き伸ばされて、曲げ部16が薄肉部17に残存している中空部分に向かって引っ張られるような状態となっても、曲げ部16は薄肉部17の側壁部23で支持されて、引き伸ばされた曲げ部16がコア層20の中空部分へ引っ張られることが抑制される。
【0103】
薄肉部17が形成される部分では、凹部12が形成される部分より低い表面温度に調整されている。そのため、加飾層32が曲げられるとき、凹部12と薄肉部17との温度差が大きくなって、熱可塑性樹脂の溶融状態に差ができる。これにより、湾曲部15は、小さなR形状で曲げられることになる。
【0104】
凹部12が形成される部分では、上述のとおり、型締め時には、中空板材11及び加飾層32、42が、上型81の凸部81cからの押圧力を受けて下型82の凹部82b内に押し込まれる。このとき、加飾層32は、下型82の凹部82b内に引き込まれるように引っ張られる。型締め時には、上型81に形成された吸引孔によって、加飾層32側を上方に引っ張るような力が作用するが、吸引力よりも凹部82b内に引き込む力が強い場合には、湾曲部15の外面と上型81との間に隙間が生じるような力が作用することになる。その結果、金型形状に沿った曲げ部16が成形され難いといったことが生じることが考えられる。そうすると、曲げ部16の表面に凸凹が発生する要因となり易い。この点、薄肉部17が成形される際の凸部82cからの押圧力により、湾曲部15の外面と上型81との間の隙間の発生が抑制され、曲げ部16の外観形状を良好に成形することができる。
【0105】
型締め時の空間の高さが約3.5mmとされた上型81の凹部81bには、加熱工程において、表面温度が最も高くなるように調整された部分が配置されている。この部分では、型締めによって、中空板材11を構成する熱可塑性樹脂が熱溶融されて、コア層20及びスキン層31、41は溶融一体化して、加飾層32、42に挟まれた状態となった圧縮部51が形成される。
【0106】
型締め時の空間の高さが約2cmとされた上型81の凹部81a及び下型82の凹部82aには、加熱工程において、表面温度が最も低くなるように調整された部分が配置されている。この部分は、型締めによって、下型82の凹部82a内に押し込まれる。この部分では、表面温度が最も低いため、中空板材11を構成する熱可塑性樹脂がほとんど溶融せず、コア層20が上下方向に変形することなく、その高さ寸法を維持した形状となる。また、上壁部21、下壁部22と比較して、内部の側壁部23には熱が伝わりにくいことから、側壁部23は上壁部21、下壁部22と一体化することなくその形状を維持しており変形しない。
【0107】
また、型締めによって、下型82の凹部82a内に押し込まれると、中間体50の端部では、下方に位置する加飾層42が上方の加飾層32側に曲げられて、その曲げられた部分にR形状の湾曲部43が形成される。このとき、中空板材11及び加飾層32、42は、最も低い表面温度に調整されており、中間体50の圧縮部51に対応する部分は最も高い表面温度に調整されている。そのため、下方に位置する加飾層42が曲げられるとき、下型82の凹部82aに位置する部分と、上型の凹部81bに位置する部分との温度差が大きくなって、熱可塑性樹脂の溶融状態に差ができる。これにより、加飾層42に形成される湾曲部43が、小さなR形状で曲げられ、中間体50の端部には、加飾層42が上方に曲げられてなる端面が急斜面として形成される。加飾層42が上方に曲げられてなる端面は、収容板7の端面7cとなる。一方、上方に位置する加飾層32は曲げられることなく、水平方向に向かって延びる状態に維持される。
【0108】
図7(e)に示すように、下型82から上型81を離間させて中間体50を冷却した後、中間体50を下型82から取り出す。第2接合工程、プレス工程を経て得られた中間体50は、中空板材11の両面に加飾層32、42が接合され、収容板7に相当する大きさ、形状を有する部分の端部の全周に亘って圧縮部51が形成されている。また、その中央部に凹部12が形成され、凹部12を取り囲むように薄肉部17が形成された形状となる。中間体50は、凹部12及び圧縮部51での厚みが約3.5mmであり、薄肉部17での厚みが約1mcであり、それ以外の部分での厚みが約2cmである。
【0109】
次に、中間体50の端面の形状を整えて収容板7を得る後加工工程について説明する。
図7(f)に示すように、中間体50に形成された圧縮部51を、図示しない切断冶具で切断する。
図3(a)、(b)に示すように、切断された部分では、加飾層32の端縁と加飾層42の端縁との間に中空板材11が圧縮されて溶融一体化した圧縮部20cが介在している。加飾層32の端縁、加飾層42の端面、及び圧縮部20cによって、収容板7の端面7cが形成されている。その後、切断された部分を研磨、塗装等して、端面7cの形状を整える。なお、圧縮部51を切断する切断冶具としてトムソン刃やレーザー等を使用し、研磨、塗装等を行わなくてもよい。
【0110】
以上の各工程を経て、収容板7が得られる。
第1実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態の収容板7では、中空板材11の側面に、加飾層32が引っ張られるように曲げられてその厚みが薄くされた曲げ部16が形成されており、曲げ部16に隣接する領域には、中空板材11が厚み方向に圧縮されて加飾層32側へ凹んだ形状の薄肉部17が形成されている。薄肉部17では、コア層20の厚み方向に延びる側壁部23が、その途中で座屈したり折り曲げられたりしており、中空部分における熱可塑性樹脂の密度が、薄肉部17以外の部分より高くなっている。
【0111】
そのため、曲げ部16では、側壁部23が残存している部分は側壁部23により加飾層32が支持されてその形状が保持される一方、側壁部23が存在していない部分でも、中空部分に向かって加飾層32が凹むことが抑制される。曲げ部16の表面に、凸凹が形成されることが抑制され、加飾層32の曲げ部16での外観形状が良好な収容板7が得られる。
【0112】
(2)曲げ部16の内面には、中空板材11の上壁部21やスキン層31を介して、薄肉部17において座屈したり折り曲げられたりした側壁部23が多く当接又は接合している。
【0113】
そのため、曲げ部16に隣接する領域でコア層20に中空部分が残存していたとしても、曲げ部16は、座屈したり折り曲げられたりした側壁部23に支持される。薄肉部17に下支えされるような状態で曲げ部16での凸凹の形成が抑制される。
【0114】
(3)曲げ部16は、薄肉部17において座屈したり折り曲げられたりした側壁部23によって支持されている。
そのため、凹部12の深さが深くて曲げ部16の厚みが薄い場合や、湾曲部15での曲率半径が小さく、急角度で曲げられているような場合であっても、曲げ部16での凸凹の形成が抑制される。
【0115】
(4)湾曲部15aの部分では、第1セルS1と第2セルS2が交互に並んでいることにより、曲げ部16の部分で、中空板材11の上面の厚みに差が生じている。この点、湾曲部15aの部分でも、座屈したり折り曲げられたりした側壁部23で曲げ部16が下支えされるため、上面の厚みの差に基づく凸凹の発生が抑制される。
【0116】
(5)凹部12では、コア層20が押し潰されて、セルSの形状が識別できない程度に変形しており、中空板材11を構成する熱可塑性樹脂が溶融一体化して、全体に亘ってほぼ隙間がない中実状になっている。
【0117】
そのため、凹部12は、衝撃に対して高い強度を備えている。
(6)薄肉部17は、収容板7の裏側に形成されている。
そのため、収容板7の表側から薄肉部17が視認されない。外観形状が良好である。
【0118】
(7)収容板7の端面7c下部に形成された湾曲部43は、曲率半径が約5~10mmのR形状とされ、端面7cは急斜面として形成されている。
そのため、収容板7を工具箱1の周壁に突出形成された支持部上に載置したとき、収容板7を支持部で安定して支持することができる。また、支持部と収容板7との間にゴミや埃等が溜まることを抑制することができる。
【0119】
(8)収容板7の端面7cは、コア層20を側方から覆っている。
そのため、コア層20内に並設されたセルS内にゴミや埃等が入ることを抑制することができる。
【0120】
(9)収容板7はポリプロピレン製である。ポリプロピレンは、他の汎用熱可塑性樹脂に比べて比重が小さく、強度に優れているため、軽量で衝撃強度に優れた中空構造体が得られる。
【0121】
(10)上記実施形態の収容板7の製造方法は、中空板材11に加飾層32、42を接合して中空板状体10を形成する接合工程と、上型81及び下型82を有する金型内で、中空板状体10をプレスして曲げ部16及び薄肉部17を有する中間体50を成形するプレス工程を備えている。そして、プレス工程では、上型81の凸部81cで中空板状体10をプレスすることにより曲げ部16を成形し、下型82の凸部82cで中空板状体10をプレスすることにより薄肉部17を成形する。
【0122】
こうした構成によれば、プレス成形時に中空板状体10は凸部82cで下支えされた状態となり、上型81の凸部81cに押されて下方に向かって引き伸ばされた加飾層32が、コア層20の中空部分に向かって凹むことが抑制される。外観形状の良好な収容板7を容易に成形することができる。
【0123】
(11)加熱工程では、中空板材11と加飾層32、42を加熱し、加熱状態の中空板材11及び加飾層32、42を金型内でプレスして、第2接合工程とプレス工程を同時に行っている。
【0124】
そのため、製造工程が簡略化され、作業性、コスト面において有利である。
(12)加熱工程では、曲げ部16、薄肉部17、及び圧縮部51となる部分以外を遮蔽材で被覆して加熱している。
【0125】
そのため、曲げ部16、薄肉部17、及び圧縮部51となる部分では、それ以外の部分に比べて相対的に表面温度が高くすることができる。遮蔽材での被覆により、第2接合工程、プレス工程での表面温度を適宜に調整することができる。中空板材11及び加飾層32、42の表面温度に応じて、加飾層32、42を曲げたり中空板材11を薄肉化したりすることが容易に行える。
【0126】
(13)プレス工程では、曲げ部16、薄肉部17、及び圧縮部51となる部分の表面温度がそれ以外の部分の表面温度と比べて高温になるような加熱状態でプレス成形する。
そのため、曲げ部16、薄肉部17、及び圧縮部51となる部分での中空板材11を構成する熱可塑性樹脂が、それ以外の部分での中空板材11を構成する熱可塑性樹脂に比べてより溶融されやすい。加熱状態を部位によって異なるように調整することで、それぞれの部分での機能を発揮させることができる。
【0127】
(14)加熱工程では、遮蔽材を設置することにより、中空板材11や加飾層32、42の表面温度を調整している。
そのため、その後に続く第2接合工程、プレス工程において、金型81、82を加熱することなく、一度のプレス成形により、中間体50を成形することができる。工程が簡略化され、作業性、コスト面において有利である。
【0128】
(15)中空板材11及び加飾層32、42は、加熱工程であらかじめ加熱した後、下型82上に載置している。このとき、加飾層32、42にコーティングされた熱可塑性樹脂製の接着層は、熱溶融された状態となっている。
【0129】
そのため、中空板材11及び加飾層32、42がそれぞれ仮接合された状態となり、中空板材11に対して、加飾層32、42を精度よく位置決めすることができる。
(16)加熱工程では、中空板材11及び加飾層32、42をそれぞれ別個の加熱炉71、72で加熱している。
【0130】
そのため、各部材の温度調整、温度管理がしやすい。また、各部材を均質な温度に加熱することができる。
(17)金型81、82には、吸引孔が複数形成されている。
【0131】
そのため、型締め時には中空板材11及び加飾層32、42を、金型81、82内部に位置決め状態で密着させることができる。中空板材11及び加飾層32、42の位置ずれを抑制することができ、精度の高い収容板7を製造することができる。
【0132】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の中空構造体及びその製造方法について、
図8及び
図9に基づいて説明する。
【0133】
第2実施形態の中空構造体は、本棚や収容棚等の内部に設けられる棚板8として利用される。以下では、棚板8及びその製造方法について、第1実施形態の収容板7と共通する事項については説明を省略し、異なる事項を中心として説明する。
【0134】
図8に示すように、棚板8は、中空板材11に、不織布シートからなる加飾層32、42が接合されており、長方形板状に形成されている。
棚板8の端部には、全周に亘って端面8cが形成され、端面8cによって中空板材11の中空部分、つまりコア層20の中空部分が封止されている。端面8cは、上方ほど棚板8の内方側へ傾斜する急斜面として形成されている。棚板8の上面8aに対する端面8cの傾斜角度θ3は、70゜以上であることが好ましく、80゜以上であることがより好ましく、85゜以上であることがさらに好ましい。傾斜角度が90゜に近づくほど、棚板8の端部上に埃等が溜まることが抑制される。棚板8の上面8aと端面8cとの境界部分には、R形状の湾曲部18が形成されている。湾曲部18の曲率半径は約1~5mmとされている。
【0135】
端面8cは、後に説明するプレス工程において、中空板状体10が下型92に向けて押圧されて成形される部分である。そのため、端面8cでは、コア層20の上壁部21、側壁部23、及びスキン層31が溶融一体化したものが、加飾層42側へ向けて曲げられて引き伸ばされた状態となっている。端面8cでは、溶融一体化した上壁部21、側壁部23、及びスキン層31は、全体としてほぼ隙間のない中実状になっている。端面8cの下端部では、コア層20の下壁部22及びスキン層41も、上壁部21、側壁部23、及びスキン層31とともに溶融一体化して、圧縮部20cが形成されている。
【0136】
一方、加飾層32は、プレス工程による下方への押圧により引っ張られて引き伸ばされた状態となっている。そのため、
図8に示すように、端面8cの加飾層32は、スキン層31に接合されている部分よりその厚みが薄くなっている。本実施形態の中空構造体である棚板8では、表層としての加飾層32における湾曲部18から端面8cにかけての部分が、請求項で言う曲げ部に相当する。加飾層32における曲げ部19は、中空板材11の一方の主面に接合された加飾層32から他方の主面側に向かって曲げられて、コア層20の側面に対して、溶融一体化した中空板材11を介して当接又は接合されている。スキン層31に接合されている加飾層32の厚みが約0.5mmであるのに対して、加飾層32における曲げ部19の厚みは、約0.2mmである。
【0137】
また、端面8cの下端部では、加飾層42は下方へ引っ張られて引き伸ばされた状態となっており、その厚みは約0,2mm、或いは約0.2mmより薄くなっている。端面8cの下端部では、溶融一体化した中空板材11を、加飾層32、42が引き伸ばされた部分が挟み込むようにして一体化した状態となっている。
【0138】
図8に示すように、端面8cに隣接する領域には、下方から凹んだ形状で薄肉化された薄肉部17bが形成されている。薄肉部17bは、端面8cに沿って棚板8の全周に亘って形成されている。また、薄肉部17bの厚みは、中空板状体10の厚みの約半分程度の約1cmである。
【0139】
次に、本実施形態の棚板8の作用について説明する。
端面8cでは、中空板材11は、コア層20の上壁部21及びスキン層31が溶融一体化して引き伸ばされた状態でコア層20の側面を封止している。湾曲部18に隣接する領域では、コア層20の中空構造をなお保持している。また、加飾層32には、引っ張られて引き伸ばされた曲げ部19が形成されている。曲げ部19に対しては、加飾層32が引き伸ばされることにより、コア層20の中空部分に向かって凹むような力が作用するが、曲げ部19に隣接する領域に形成された薄肉部17によって、曲げ部16が下支えされた状態となり、曲げ部19の表面に凸凹が発生することが抑制される。
【0140】
棚板8を製造する方法は、第1実施形態の金型の構造が異なるのみで、他の工程は共通である。そのため、
図9に基づいて、第2接合工程以降について説明する。
図9(a)に示すように、プレス工程(第2接合工程及びプレス工程)に使用する金型は、上型91及び下型92を備えている。下型92には、凸部92aが形成されている。凸部92aは、薄肉部17bを形成するための部分であり、上面視長方形状に延びる約1cmの幅の突条として形成されている。その突出長は、約1cmである。
【0141】
上型91には、凹部91a、91bが形成されている。凹部91a、91bは、上面視長方形環状をなしている。凹部91aは、棚板8の全体形状を成形する部分であり、その深さは、約2cmとされている。凹部91bは、後に説明する中間体50aの圧縮部51aを成形するための部分であり、その深さは、圧縮部51aの厚みとほぼ同一とされている。
【0142】
図9(a)に示すように、加熱された中空板材11及び加飾層32、42を、下から、加飾層42、中空板材11、加飾層32の順に、下型92上に載置する。中空板材11及び加飾層32、42は、先の加熱工程では、遮蔽材を使用することによって中空板材11及び加飾層32、42の表面温度を、部位に応じて異ならせている。そのため、その表面温度に応じて下型92上で位置決めする。
【0143】
図9(b)に示すように、上型91を下型92に向けて下降させて型締めして、第2接合工程とプレス工程を同時に行う。これにより、中空板材11に加飾層32、42が接合された中空板状体10が得られるとともに、中空板状体10に薄肉部17b、及び圧縮部51aが形成された中間体50aが得られる。
【0144】
図9(b)に示すように、型締め時の空間の高さが約3.5mmとされた上型81の凹部91bには、加熱工程において、表面温度が最も高くなるように調整された部分が配置されている。型締め時には、中空板材11及び加飾層32、42が、上型91の凹部91a内に押し込まれると、凹部91bの部分では、中間体50aの圧縮部51aが形成される。圧縮部51aが形成される部分では、表面温度が最も高いことから、型締めにより中空板材11を構成するポリプロピレン樹脂が熱溶融されて、コア層20及びスキン層31、41は溶融一体化した状態となる。溶融一体化した状態で上型81の凸部81cによって下方へ押圧された中空板材11は、下方へ向かって引き伸ばされる。同様に、加熱された状態の加飾層32も下方に向かって引き伸ばされる。これにより、
図8に示す湾曲部18から端面8cにかけての部分では、加飾層32の厚みが薄い曲げ部19が形成される。
【0145】
下型92の凸部92aの位置には、加熱工程において、表面温度が次に高くなるように調整された部分が配置されている。型締め時には、中空板材11及び加飾層32、42が、下型92の凸部92aからの押圧力を受けて上方に押圧されると、中間体50aの薄肉部17bが形成される。薄肉部17bが形成される部分では、表面温度が圧縮部51aが形成される部分に次いで高いことから、中空板材11を構成するポリプロピレン樹脂の一部が熱溶融される。その一方で、コア層20の中空部分は残存しているものの、凸部92aからの押圧力により、コア層20の側壁部23が座屈したり折り曲げられたりする。座屈したり折り曲げられたりした側壁部23は、中空板材11の上壁部21やスキン層31を介して曲げ部19の内面に当接又は接合する。これにより、中空板材11の上壁部21やスキン層31を支持する箇所が多くなる。また、中空板材11の下壁部22やスキン層41もより多くの箇所が支持される。さらに、側壁部23が座屈したり折り曲げられたりすることにより、薄肉部17bでは、コア層20の中空部分における熱可塑性樹脂の密度が高くなる。そのため、端面8cでは、曲げ部19が薄肉部17bに残存している中空部分に向かって引っ張られるような状態となっても、曲げ部19は薄肉部17bの側壁部23で支持されて、引き伸ばされた曲げ部19がコア層20の中空部分へ引っ張られることが抑制される。
【0146】
図9(c)に示すように、下型82から上型81を離間させて中間体50aを冷却した後、中間体50aを下型92から取り出す。これにより、圧縮部51aが形成された中間体50aが得られる。
【0147】
図9(d)に示すように、中間体50aに形成された圧縮部51aを切断冶具で切断し、必要に応じて切断された部分を研磨、塗装等して、端面8cの形状を整える。
第1実施形態によれば、第1実施形態による(1)~(4)、(6)、(8)~(17)と同様の効果に加えて次の効果を得ることができる。
【0148】
(18)棚板8の端面8cは、上方ほど棚板8の内方側へ傾斜する急斜面として形成されている。
そのため、棚板8の端部上にゴミや埃等が溜まることが抑制される。また、視認した時に凹凸感が生じず、外観形状を良好にすることができる。
【0149】
上記実施形態は、次のように変更することができる。なお、上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて適用することができる。
・薄肉部17、17bの厚みは特に限定されない。上記実施形態では、約1cmとしているが、これより厚くても薄くてもよい。例えば、薄肉部17、17bにおいても、中空板材11が厚み方向に圧縮されて溶融一体化状態にされていてもよい。厚みが薄いと、熱可塑性樹脂の密度がより高くなり、曲げ部16、19の下支えの効果がより大きくなる。こうした効果を得やすくするためには、薄肉部17、17bの厚みは、中空板材11の厚みの1/2以下であることが好ましく、1/3以下であることがより好ましい。
【0150】
・薄肉部17、17bの幅L1は約1cmに限定されない。例えば、
図11(a)に示すように狭くてもよい、また、広くてもよい。
・第1実施形態では、薄肉部17の下面17aが平坦面として形成されているが、その形状はこれに限定されない。例えば、
図11(b)に示すように、上方へ向かって凹むような湾曲面として形成されていてもよい。第2実施形態の薄肉部17bについても同様である。
【0151】
なお、薄肉部17、17bが形成されていることで、薄肉部17では、下側のスキン層41や加飾層42の厚みが、中空板材11が上下方向に圧縮されていない部分と比較して薄くなっている部分が生じる場合がある。この点、第1実施形態の収容板7や、
図11(b)に示す変更例の薄肉部17、17bのように、下面17aが平坦面や緩やかな湾曲面として形成されていると、スキン層41や加飾層42での急激な肉厚の変化が抑制され、極端に薄肉化されることが抑制される。これにより、薄肉部17、17bにおいて、スキン層41や加飾層42の強度を保持することができる。
【0153】
・中空板材11は、コア層20にスキン層31、41が接合されたものを使用したが、これに限定されない。コア層20の一方の主面のみにスキン層31、或いはスキン層41が接合されたものであってもよく、いずれの主面にもスキン層31、41が接合されていないものであってもよい。
【0154】
・コア層20と、スキン層31、41が異なる材質であってもよい。また、スキン層31とスキン層41が異なる材質であってもよい。
・加飾層32、42の少なくともいずれかが接合されていなくてもよい。加飾層32、42が接合されておらず、中空板材11がコア層20のみで構成されている場合には、スキン層31、41が請求項で言う表層として構成される。この場合、コア層20の一方の主面に接合されたスキン層31が、他方の主面側へ引き伸ばされるように曲げられて、スキン層31に曲げ部が形成されることになる。
【0155】
・加飾層32、42は不織布シートでなくてもよい。
・加飾層32、42の少なくとも一方の材質が熱可塑性樹脂製でなくてもよく、従来周知の他の合成樹脂、合成皮革、合成繊維、金属、天然皮革、天然繊維等であってもよい。
【0156】
・加飾層32、42がそれぞれ異なる材質、形態であってもよい。
・加飾層32、42は、コア層20と同じ材質であってもよい。
・収容板7や棚板8の剛性を高めるために、スキン層31とコア層20の間や、スキン層41とコア層20の間等に、薄板状の鋼板を接合してもよい。鋼板の材質としては、例えばアルミニウム合金、鉄合金、銅合金などの金属製の薄板が挙げられる。また、その厚みは約0.05mm~0.5mmであることが好ましい。鋼板を接合する位置は、プレス工程のしやすさを考慮すると、凹部12、薄肉部17、17b以外の部分に設けることが好ましいが、特に限定されるものではない。
【0157】
・収容板7や棚板8の剛性を高めるために、コア層20内に複数の金属棒材を圧入したり、コア層20のセルS内にウレタン等の樹脂材を注入したりしてもよい。金属棒材を圧入する場合、その断面形状は特に限定されず、例えば、断面円形状や断面コ字状の棒材、H鋼、L鋼等が挙げられる。また、金属棒材を圧入した後、金属棒材の周囲に接着剤を注入してさらなる補強をすることもできる。
【0158】
・収容板7や棚板8の剛性を高めるために、コア層20やスキン層31、41を構成する熱可塑性樹脂に炭素繊維やガラス繊維等の引張弾性率の高い素材を含有させるようにしてもよい。また、コア層20やスキン層31、41を構成する熱可塑性樹脂にタルク等の補強材を添加してもよい。
【0159】
・コア層20及びスキン層31、41を構成する熱可塑性樹脂として、各種機能性樹脂を添加したものを使用してもよい。例えば、熱可塑性樹脂に難燃性の樹脂を添加することにより、難燃性を高めることが可能である。この場合、コア層20及びスキン層31、41のすべてに対して各種機能性樹脂を添加したものを使用することも可能であり、また、コア層20及びスキン層31、41を構成する少なくともいずれかの構成に対して使用することも可能である。
【0160】
・コア層20、スキン層31、41、及び加飾層32、42の厚みは、上記実施形態のものに限定されず、適宜変更することができる。また、コア層20を形成するためのシート材100の厚みも適宜変更することができる。
【0161】
・第1実施形態の収容板7では、凹部12の側壁13は急斜面として形成されているが、緩斜面として形成されていてもよい。また、端面7cも緩斜面として形成されていてもよい。さらに、凹部12の側壁13に薄肉部17を介して対向する面についても、
図11(
c)に示すような緩斜面であってもよく、或いは、急斜面であってもよい。
【0162】
・第1実施形態の収容板7の形状は、特に限定されない。凹部12の深さが上記のものより浅くてもよく、深くてもよい。また、凹部12以外に凹凸形状が形成されていてもよい。
【0163】
・第1実施形態の収容板7において、薄肉部17は、凹部12の全周に亘って形成されていなくてもよい。その一部に形成されていてもよい。凹部12の近傍のコア層20において薄肉部17が形成されていない部分では、側壁部23が座屈している場合と座屈していない場合とが生じる。
【0164】
・第2実施形態の棚板8においても、薄肉部17bは、端部全周に亘って形成されていなくてもよい。例えば、短辺側の端部にのみ形成されていてもよい。この場合も、凹部12の近傍のコア層20において薄肉部17が形成されていない部分では、側壁部23が座屈している場合と座屈していない場合とが生じる。
【0165】
・第2実施形態の棚板8では、端面8cは急斜面として形成されているが緩斜面として形成されていてもよい。
・第2実施形態の棚板8の形状は、特に限定されない。凹凸形状が形成されていてもよい。
【0166】
・コア層20は、一枚のシート材100を折り畳み成形して構成するものに限定されない。例えば、複数の帯状のシートを所定間隔毎に屈曲させて配置してセルの側壁を構成し、これら帯状のシートの上下両側にシート層を配置してセルの上壁及び下壁を構成するようにしてもよい。
【0167】
・上記実施形態では、コア層20として、一枚のシート材100を折り畳み成形して、コア層20の内部に六角形状のセルSが区画形成されたハニカム構造体を形成したが、コア層20はこれに限定されない。例えば、
図10(a)に示すようなシート材200からコア層24を形成してもよい。
【0168】
図10(a)に示すように、シート材200は、帯状をなす平面領域210及び膨出領域220が、シート材200の長手方向(X方向)に交互に配置されている。膨出領域220には、上面と一対の側面とからなる断面下向溝状をなす第1膨出部221が膨出領域220の延びる方向(Y方向)の全体にわたって形成されている。なお、第1膨出部221の上面と側面とのなす角は90゜であることが好ましく、その結果として、第1膨出部221の断面形状は下向コ字状となる。また、第1膨出部221の幅(上面の短手方向の長さ)は平面領域210の幅と等しく、かつ第1膨出部221の膨出高さ(側面の短手方向の長さ)の2倍の長さとなるように設定されている。
【0169】
また、膨出領域220には、その断面形状が正六角形を最も長い対角線で二分して得られる台形状をなす複数の第2膨出部222が、第1膨出部221に直交するように形成されている。第2膨出部222の膨出高さは第1膨出部221の膨出高さと等しくなるように設定されている。また、隣り合う第2膨出部222間の間隔は、第2膨出部222の上面の幅と等しくなっている。
【0170】
図10(a)及び(b)に示すように、上述のように構成されたシート材200を、折り畳み線P、Qに沿って折り畳むことでコア層24が形成される。具体的には、シート材200を、平面領域210と膨出領域220との折り畳み線Pにて谷折りするとともに、第1膨出部221の上面と側面との折り畳み線Qにて山折りしてX方向に収縮する。そして、
図10(b)及び(c)に示すように、第1膨出部221の上面と側面とが折り重なるとともに、第2膨出部222の端面と平面領域210とが折り重なることによって、一つの膨出領域220に対して一つのY方向に延びる角柱状の区画体230が形成される。こうした区画体230がX方向に連続して形成されていくことにより中空板状のコア層24が形成される。
【0171】
上記のようにシート材200を折り畳み形成するとき、第1膨出部221の上面と側面とによってコア層24の上壁部25が形成されるとともに、第2膨出部222の端面と平面領域210とによってコア層24の下壁部26が形成される。
【0172】
また、第2膨出部222が折り畳まれて区画形成される六角柱形状の領域がコア層24における第2セルS2´となるとともに、隣り合う一対の区画体230間に区画形成される六角柱形状の領域がコア層24における第1セルS1´となる。本実施形態では、第2膨出部222の上面及び側面が第2セルS2´の側壁部27を構成するとともに、第2膨出部222の側面と、膨出領域220における第2膨出部222間に位置する平面部分とが第1セルS1´の側壁部27を構成する。そして、第2膨出部222の上面同士の当接部位、及び膨出領域220における上記平面部分同士の当接部位が2層構造をなす側壁部27となる。
【0173】
こうしたシート材200を用いて装置Tにより接着層を塗布する場合、シート材200における第2膨出部222の上面及び膨出領域220における平面部分の下面に接着層が塗布されるように装置Tを設定すればよい。
【0174】
・本実施形態では、コア層20の内部に六角柱状のセルSが区画形成されているが、セルSの形状は、特に限定されるものでない。例えば、四角柱状、八角柱状等の多角形状や円柱状としてもよい。また、セルSの形状は、接頭円錐形状であってもよい。その際、異なる形状のセルが混在していてもよい。また、各セルは隣接していなくともよく、セルとセルとの間に隙間(空間)が存在していてもよい。
【0175】
・コア層20は、柱形状のセルSが区画されたものに限らない。例えば、所定の凹凸形状を有するコア層の上下両面にシート層を接合したものであってもよい。このような構成のコア層としては、例えば特開2014-205341号公報に記載のものが挙げられる。また、断面がハーモニカ状のプラスチックダンボール等であってもよく、円柱形状や接頭円錐形状のセルが形成された板材を互いに向かい合わせて一体に形成したものであってもよい。
【0176】
・上記実施形態では、コア層成形工程及び第1接合工程を装置Tによる一連の流れで行って中空板材11を形成しているが、装置Tを用いることなく別個の流れで行ってもよい。例えば、コア層接合工程でコア層20を得た後、所定の大きさにコア層20及びスキン層31、41を切断し、それぞれを加熱炉内で過熱して接合するようにしてもよい。
【0177】
・上記実施形態では、第2接合工程及びプレス工程を同時に行っているが、別個の工程として行ってもよい。例えば、中空板材11及び加飾層32、42を加熱した後接合して中空板状体10を形成し、中空板状体10を加熱炉内で加熱し、加熱状態の中空板状体10を金型内でプレスして、中間体50、50aを成形するようにしてもよい。こうすると、プレス工程に先立って、中空板材11に加飾層32、42が接合されるため、位置決めが良好となり、中空板材11と加飾層32、42との接合精度が向上する。
【0178】
・加熱工程における加熱温度は適宜設定することができる。コア層20、スキン層31、41、及び加飾層32、42を構成する熱可塑性樹脂の材質、スキン層31、41や加飾層32、42にコーティングされた接着層を構成する熱可塑性樹脂の材質等により適宜設定することができる。
【0179】
・加熱工程では、中空板材11と加飾層32、42とをそれぞれ別個の加熱炉71、72内で加熱したが、これに限定されない。中空板材11と加飾層32、42を同じ加熱炉内で加熱してもよい。
【0180】
・加熱工程での加熱は、加熱炉71、72内での加熱ではなく、開放された環境下での加熱であってもよい。例えば、IHヒータで加熱してもよいし、赤外線ヒータで加熱してもよい。
【0181】
・加熱工程での加熱の際に遮蔽材を使用しなくてもよい。中空板材11及び加飾層32、42の表面温度が部位によって異なるように調整できれば、その調整方法は遮蔽材を使用する方法に限定されない。
【0182】
・加飾層32、42には接着層があらかじめコーティングされているが、これに限定されず、接合する際に、接着剤を塗布するようにしてもよい。
・第2接合工程及びプレス工程で使用する上型81、91及び下型82、92には、吸引孔が複数形成されているものを使用したが、吸引孔の形状は特に限定されない。スリット状の吸引溝であってもよい。また、吸引孔を省略することもできる。
【0183】
・第2接合工程及びプレス工程は、上型81、91及び下型82、92を加熱した状態で行ってもよい。
・第2接合工程及びプレス工程で使用する金型として、上記実施形態の上型81及び下型82、或いは上型91及び下型92とは異なる形状のものを使用してもよい。例えば、
図7(d)の下型82に一点鎖線で示したように、下型として、薄肉部17を形成する位置に対応するように可動型83を備えたものを使用してもよい。曲げ部16の下部を下支えするような状態で可動型83を挿入することにより、曲げ部16での凸凹の発生を抑制することができる。
【0184】
・上記実施形態では、中空構造体として電動ドリルを収容する収容板7や、本棚や収容棚等の内部に設けられる棚板8を例に挙げて説明したが、中空構造体はこれに限定されない。例えば、自動車の内装部材や建材等に適用してもよい。例えば、自動車の後部に設けられたラゲッジルームの底面を形成するラゲッジボードに適用することもできる。
【符号の説明】
【0185】
1…工具箱、7…収容板(中空構造体)、8…棚板(中空構造体)、10…中空板状体、11…中空板材、12…凹部、13…側壁、14…底壁、16、19…曲げ部、17、17b…薄肉部、20、24…コア層、20c、20c…圧縮部、23、27…側壁部、31、41…スキン層、32、42…加飾層、50…中間体、81、91…上型(金型)、82、92…下型(金型)、100、200…シート材、S…セル、S1、S1´…第1セル、S2、S2´…第2セル。