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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】編地および編地の編成方法
(51)【国際特許分類】
   D04B 1/10 20060101AFI20240523BHJP
   D04B 1/00 20060101ALI20240523BHJP
   A41D 31/00 20190101ALI20240523BHJP
   D04B 7/30 20060101ALI20240523BHJP
   D04B 7/04 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
D04B1/10
D04B1/00 B
D04B1/00 Z
A41D31/00 502D
D04B7/30
D04B7/04
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020181077
(22)【出願日】2020-10-29
(65)【公開番号】P2022071938
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-06-12
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2020年9月1日、株式会社エトワール海渡等における販売
(73)【特許権者】
【識別番号】514125994
【氏名又は名称】株式会社寺一
(74)【代理人】
【識別番号】110001704
【氏名又は名称】弁理士法人山内特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺井 新一朗
【審査官】大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-003589(JP,A)
【文献】実開昭52-058184(JP,U)
【文献】実開昭60-189584(JP,U)
【文献】特開2019-210581(JP,A)
【文献】実開昭62-088781(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2019/0223541(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04B1/00-1/28、21/00-21/20、
D04B3/00-19/00、23/00-39/08、
A41D31/00-31/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前編地と、
前記前編地に重ねられた後編地と、を備え、
前記前編地および前記後編地のコースに沿った一方向を正方向、他方向を負方向とし、
前記前編地の一のコースを構成する編目列を前編目列とし、該前編目列と重なる前記後編地の編目列を後編目列とし、
前記前編目列および前記後編目列が編成された区間のうち1または連続する複数の編目に相当する区間を第1穴区間とし、該第1穴区間の正方向に連接する1または連続する複数の編目に相当する区間を第1編区間とし、
前記前編目列の前記第1穴区間の編目が前記後編目列の前記第1編区間の編目に目移しされて重ね目が形成されており、
前記前編目列の前記第1穴区間にメッシュ穴が形成され、該メッシュ穴が前記後編目列で閉塞されている
ことを特徴とする編地。
【請求項2】
前記前編目列および前記後編目列が編成された区間のうち1または連続する複数の編目に相当する区間であって前記第1穴区間および前記第1編区間と異なる区間を第2穴区間とし、該第2穴区間の負方向に連接する1または連続する複数の編目に相当する区間であって前記第1穴区間と異なる区間を第2編区間とし、
前記前編目列の前記第2穴区間の編目が前記後編目列の前記第2編区間の編目に目移しされて重ね目が形成されており、
前記前編目列の前記第2穴区間にメッシュ穴が形成され、該メッシュ穴が前記後編目列で閉塞されている
ことを特徴とする請求項1記載の編地。
【請求項3】
前記第1穴区間と前記第2穴区間とが連接されている
ことを特徴とする請求項2記載の編地。
【請求項4】
前針床と後針床とを有する横編機により編地を編成する方法であって、
前記編地のコースに沿った一方向を正方向、他方向を負方向とし、
前記前針床により前編地の一のコースを構成する前編目列を編成するとともに、前記後針床により後編地の一のコースを構成する後編目列を編成する第1工程と、
前記前編目列および前記後編目列が編成された区間のうち1または連続する複数の編目に相当する区間を第1穴区間とし、該第1穴区間の正方向に連接する1または連続する複数の編目に相当する区間を第1編区間とし、前記前編目列の前記第1穴区間の編目を前記後編目列の前記第1編区間の編目に目移しして重ね目を形成する第2工程と、
前記前針床により前記前編地の次のコースの編目列を編成するとともに、前記後針床により前記後編地の次のコースの編目列を編成する第3工程と、を備える
ことを特徴とする編地の編成方法。
【請求項5】
前記第2工程において、前記前編目列および前記後編目列が編成された区間のうち1または連続する複数の編目に相当する区間であって前記第1穴区間および前記第1編区間と異なる区間を第2穴区間とし、該第2穴区間の負方向に連接する1または連続する複数の編目に相当する区間であって前記第1穴区間と異なる区間を第2編区間とし、前記前編目列の前記第2穴区間の編目を前記後編目列の前記第2編区間の編目に目移しして重ね目を形成する
ことを特徴とする請求項4記載の編地の編成方法。
【請求項6】
前記第1穴区間と前記第2穴区間とが連接されている
ことを特徴とする請求項5記載の編地の編成方法。
【請求項7】
前記第3工程において、前記前針床により前記前編地を編成するにあたり、空針区間において給糸順に最初の編針でニットし、残りの編針でミスすることで、前記空針区間を一針縮小する一コースの編成を、前記空針区間が無くなるまで繰り返し行なう
ことを特徴とする請求項4~6のいずれかに記載の編地の編成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、編地および編地の編成方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、メッシュ風の模様を有する編地、およびその編地の編成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コース方向およびウェール方向に編目を目移しして編地に穴を形成することでメッシュ状ジャガート柄を付す編地の編成方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-169648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された編成方法では、編地に貫通した穴が形成される。編地の穴から風が入り込むため、編地の保温機能が低くなる。そのため、マフラーなど保温のために着用される編物製品に適した編地とはいえない。
【0005】
本発明は上記事情に鑑み、塞がった穴により構成されるメッシュ風の模様を有する編地、およびその編地の編成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明の編地は、前編地と、前記前編地に重ねられた後編地と、を備え、前記前編地および前記後編地のコースに沿った一方向を正方向、他方向を負方向とし、前記前編地の一のコースを構成する編目列を前編目列とし、該前編目列と重なる前記後編地の編目列を後編目列とし、前記前編目列および前記後編目列が編成された区間のうち1または連続する複数の編目に相当する区間を第1穴区間とし、該第1穴区間の正方向に連接する1または連続する複数の編目に相当する区間を第1編区間とし、前記前編目列の前記第1穴区間の編目が前記後編目列の前記第1編区間の編目に目移しされて重ね目が形成されており、前記前編目列の前記第1穴区間にメッシュ穴が形成され、該メッシュ穴が前記後編目列で閉塞されていることを特徴とする。
第2発明の編地は、第1発明において、前記前編目列および前記後編目列が編成された区間のうち1または連続する複数の編目に相当する区間であって前記第1穴区間および前記第1編区間と異なる区間を第2穴区間とし、該第2穴区間の負方向に連接する1または連続する複数の編目に相当する区間であって前記第1穴区間と異なる区間を第2編区間とし、前記前編目列の前記第2穴区間の編目が前記後編目列の前記第2編区間の編目に目移しされて重ね目が形成されており、前記前編目列の前記第2穴区間にメッシュ穴が形成され、該メッシュ穴が前記後編目列で閉塞されていることを特徴とする。
第3発明の編地は、第2発明において、前記第1穴区間と前記第2穴区間とが連接されていることを特徴とする。
第4発明の編地の編成方法は、前針床と後針床とを有する横編機により編地を編成する方法であって、前記編地のコースに沿った一方向を正方向、他方向を負方向とし、前記前針床により前編地の一のコースを構成する前編目列を編成するとともに、前記後針床により後編地の一のコースを構成する後編目列を編成する第1工程と、前記前編目列および前記後編目列が編成された区間のうち1または連続する複数の編目に相当する区間を第1穴区間とし、該第1穴区間の正方向に連接する1または連続する複数の編目に相当する区間を第1編区間とし、前記前編目列の前記第1穴区間の編目を前記後編目列の前記第1編区間の編目に目移しして重ね目を形成する第2工程と、前記前針床により前記前編地の次のコースの編目列を編成するとともに、前記後針床により前記後編地の次のコースの編目列を編成する第3工程と、を備えることを特徴とする。
第5発明の編地の編成方法は、第4発明において、前記第2工程において、前記前編目列および前記後編目列が編成された区間のうち1または連続する複数の編目に相当する区間であって前記第1穴区間および前記第1編区間と異なる区間を第2穴区間とし、該第2穴区間の負方向に連接する1または連続する複数の編目に相当する区間であって前記第1穴区間と異なる区間を第2編区間とし、前記前編目列の前記第2穴区間の編目を前記後編目列の前記第2編区間の編目に目移しして重ね目を形成することを特徴とする。
第6発明の編地の編成方法は、第5発明において、前記第1穴区間と前記第2穴区間とが連接されていることを特徴とする。
第7発明の編地の編成方法は、第4~第6発明のいずれかにおいて、前記第3工程において、前記前針床により前記前編地を編成するにあたり、空針区間において給糸順に最初の編針でニットし、残りの編針でミスすることで、前記空針区間を一針縮小する一コースの編成を、前記空針区間が無くなるまで繰り返し行なうことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
第1発明によれば、前編地のメッシュ穴が後編地の編目で閉塞されているので、メッシュ風の模様を有しつつ保温機能を維持できる。
第2発明によれば、第1穴区間の編目と第2穴区間の編目とが逆方向に目移しされているので、複数のメッシュ穴が全体としてバランス良く見える。
第3発明によれば、第1穴区間と第2穴区間とが繋がった横長のメッシュ穴が得られる。また、編目を左右に開くように目移しすることでメッシュ穴が形成されるので、バランスのよい形のメッシュ穴となる。
第4発明によれば、前編地のメッシュ穴が後編地の編目で閉塞されるので、メッシュ風の模様を有しつつ保温機能を維持した編地を編成できる。
第5発明によれば、第1穴区間の編目と第2穴区間の編目とを逆方向に目移しするので、編機による編成の際に一方向に編地が引っ張られることがなく、編成不良を抑制できる。
第6発明によれば、第1穴区間と第2穴区間とが繋がった横長のメッシュ穴を形成できる。また、編目を左右に開くように目移しすることでメッシュ穴が形成されるので、バランスのよい形のメッシュ穴となる。
第7発明によれば、横長のメッシュ穴を形成した後でも、一針ずつ編目を増やすことで、無理なくメッシュ穴を閉じることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る編地の部分破断正面図である。
図2】実際に編成された編地の写真である。
図3】図(A)は第1実施形態の前編地の組織図である。図(B)は第1実施形態の後編地の組織図である。
図4】第1実施形態の編成工程図である。
図5】図(A)は第2実施形態の前編地の組織図である。図(B)は第2実施形態の後編地の組織図である。
図6】第2実施形態の編成工程図である。
図7】図(A)は第3実施形態の前編地の組織図である。図(B)は第3実施形態の後編地の組織図である。
図8】第3実施形態の編成工程図である。
図9】図(A)は第4実施形態の前編地の組織図である。図(B)は第4実施形態の後編地の組織図である。
図10】第4実施形態のダブルニットの場合の編成工程図である。
図11】第4実施形態のシングルニットの場合の編成工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
〔編地の全体像〕
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る編地1は前編地10と後編地20とからなる。前編地10は後編地20に重ねられており、それらが一体となって一つの編地1を構成している。
【0010】
前編地10には複数のメッシュ穴11が形成されている。これにより、編地1は複数のメッシュ穴11から構成されるメッシュ風の模様を有する。メッシュ穴11の配置は特に限定されず、三角格子状でもよいし、矩形格子状でもよい。メッシュ穴11をコース方向およびウェール方向に複数配置すれば平面的な広がりを有する模様となる。メッシュ穴11をコース方向およびウェール方向の一方に沿って複数配置すれば直線状の模様となる。コース方向およびウェール方向に対して斜めの直線状に複数のメッシュ穴11を配置してもよい。メッシュ穴11は通常複数であるが、一つでもよい。
【0011】
後編地20には、少なくともメッシュ穴11と重なる部分には、穴が形成されておらず、編目が形成されている。これにより、前編地10のメッシュ穴11が後編地20の編目で閉塞されている。すなわち、メッシュ穴11は編地1を貫通する穴ではない。メッシュ穴11から風が入り込みにくいため、編地1はメッシュ風の模様を有しつつ保温機能を維持できる。
【0012】
前編地10および後編地20を構成する編糸の素材、色などは特に限定されない。前編地10と後編地20とを同じ色の編糸で編成してもよいし、異なる色の編糸で編成してもよい。前編地10と後編地20とを異なる色の編糸で編成すれば、メッシュ穴11の周囲と内部とが異なる色となり、メッシュ風模様が強調されて見える。
【0013】
前編地10および後編地20のそれぞれを複数種類の編糸で編成してもよい。所定の段数ごとに給糸する編糸の種類を変えれば、ウェール方向に異なる種類の編糸を配置できる。
【0014】
図2は、実際に編成された編地の写真である。前編地は薄いグレーの編糸で編成されており、複数のメッシュ穴が形成されている。後編地は濃いグレーの編糸で編成されており、メッシュ穴を通して確認できる。
【0015】
なお、「前編地」、「後編地」の各名称における「前」、「後」は、重ねられた2枚の編地10、20を区別するために便宜上付したものであり、編地1の前後、表裏とは関係ない。メッシュ穴11が形成される編地が前編地10であり、前編地10に重ねられる編地が後編地20である。ただし、編地1の一部領域では重ねられた2枚の編地α、βのうち一方の編地αにメッシュ穴11を形成し、他の領域では他方の編地βにメッシュ穴11を形成してもよい。すなわち、編地1の両面にメッシュ風模様を付してもよい。この場合、編地1の一部領域と他の領域とでは、同一の編地αであっても、前編地10および後編地20の呼び方が入れ替わることになる。
【0016】
編地1により編物製品を形成できる。編物製品としては、特に限定されないが、マフラー、ネックウォーマー、スヌード、ニット帽、フード、ニット手袋などが挙げられる。
【0017】
以下、編地1の、特にメッシュ穴11のいくつかのバリエーションについて、詳細を説明する。
【0018】
〔第1実施形態〕
(編地)
つぎに、第1実施形態に係る編地1を説明する。
本実施形態の前編地10および後編地20の組織図をそれぞれ図3(A)、(B)に示す。説明の便宜上、前編地10を構成する編糸をハッチングなしで示し、後編地20を構成する編糸をハッチングありで示す。図中、C1~C3は第1~第3コースを示し、W1~W7は第1~第7ウェールを示す。前編地10の第1~第3コースC1~C3は、それぞれ後編地20の第1~第3コースC1~C3と重なっている。また、前編地10の第1~第7ウェールW1~W7は、それぞれ後編地20の第1~第7ウェールW1~W7と重なっている。
【0019】
前編地10および後編地20は、基本的に、平編で編成されている。前編地10および後編地20はそれぞれの裏目が現われる面が接触するよう重ねられている。図3(A)は前編地10の表目が現われる面、すなわち編地1の外側に現われる面を示している。図3(B)は後編地20の裏目が現われる面、すなわち編地1の内側に隠れる面を示している。
【0020】
以下では、編地1(前編地10および後編地20)のコースに沿った一方向(図3(A)、(B)における右方向)を正方向(+)、他方向(図3(A)、(B)における左方向)を負方向(-)とする。なお、正方向(+)、負方向(-)は、方向を区別するために便宜上付したものであり、「正」、「負」に特段の意味はない。
【0021】
図示の例では、前編地10の第2コースC2にメッシュ穴11が形成されている。前編地10を構成する編目列のうち、メッシュ穴11が形成される一のコース(第2コースC2)を構成する編目列を「前編目列12」とする。後編地20の一のコースを構成し、前編目列12と重なる編目列(第2コースC2の編目列)を「後編目列22」とする。
【0022】
また、前編目列12および後編目列22が編成された区間のうち、選択された1つの編目(第2ウェールW2の編目)に相当する区間を「第1穴区間H1」とする。第1穴区間H1の正方向(+)に連接する1つの編目(第3ウェールW3の編目)に相当する区間を「第1編区間K1」とする。
【0023】
さらに、前編目列12および後編目列22が編成された区間のうち、選択された1つの編目(第6ウェールW6の編目)に相当する区間を「第2穴区間H2」とする。第2穴区間H2は第1穴区間H1および第1編区間K1と異なる(重ならない)区間である。第2穴区間H2の負方向(-)に連接する1つの編目(第5ウェールW5の編目)に相当する区間を「第2編区間K2」とする。第2編区間K2は第1穴区間H1と異なる(重ならない)区間である。図示の例では第1編区間K1と第2編区間K2とは異なる区間であるが、第2編区間K2は第1編区間K1と重なってもよい。
【0024】
前編目列12の第1穴区間H1の編目(第2ウェールW2の編目)は、後編目列22の第1編区間K1の編目(第3ウェールW3の編目)に正方向(+)に目移しされている。これにより、前編目列12の第1穴区間H1にメッシュ穴11が形成されている。また、後編目列22の第1編区間K1(第3ウェールW3)は、前編目列12の編目と後編目列22の編目とが重なった重ね目となっている。これにより、前編地10と後編地20とが接合されている。
【0025】
前編目列12の第2穴区間H2の編目(第6ウェールW6の編目)は、後編目列22の第2編区間K2の編目(第5ウェールW5の編目)に負方向(-)に目移しされている。これにより、前編目列12の第2穴区間H2にメッシュ穴11が形成されている。また、後編目列22の第2編区間K2(第5ウェールW5)は、前編目列12の編目と後編目列22の編目とが重なった重ね目となっている。これにより、前編地10と後編地20とが接合されている。
【0026】
後編目列22の第1穴区間H1および第2穴区間H2には編目が形成されている。そのため、前編目列12に形成されたメッシュ穴11は後編目列の編目で閉塞されている。このように、前編地10のメッシュ穴11が後編地20の編目で閉塞されているので、編地1はメッシュ風の模様を有しつつ保温機能を維持できる。
【0027】
以上のように、前編目列12の編目を目移しすることでメッシュ穴11が形成される。ここで、目移しの量は、1ウェール分でもよいし、2ウェール分以上でもよい。ただし、目移しの量を多くしすぎると編糸に過大な力がかかり切れる恐れがある。編糸の種類にもよるが、3ウェール分までの目移しであれば編糸が切れる可能性は低いと考えられる。目移しの量を2ウェール分以上とする場合には、第1編区間K1および第2編区間K2として連続する複数の編目に相当する区間を設定すればよい。第1穴区間H1の編目を第1編区間K1に含まれる複数の編目のいずれかに目移しすればよい。同様に、第2穴区間H2の編目を第2編区間K2に含まれる複数の編目のいずれかに目移しすればよい。
【0028】
図示の例では、第1穴区間H1のメッシュ穴11、すなわち正方向(+)の目移しにより形成されるメッシュ穴11は1つであるが、これを複数としてもよい。同様に、第2穴区間H2のメッシュ穴11、すなわち負方向(-)の目移しにより形成されるメッシュ穴11を複数としてもよい。一のコースに複数のメッシュ穴11を形成する場合、隣り合うメッシュ穴11の間の編目は1ウェール分でもよいし、2ウェール分以上でもよい。
【0029】
ウェール方向に複数のメッシュ穴11を形成してもよい。一のウェールに複数のメッシュ穴11を形成する場合、隣り合うメッシュ穴11の間の編目は1コース分でもよいし、2コース分以上でもよい。
【0030】
負方向(-)の目移しにより形成されるメッシュ穴11を形成しなくてもよい。すなわち、第2穴区間H2および第2編区間K2を設けなくてもよい。この場合、正方向(+)の目移しのみにより複数のメッシュ穴11を形成することになる。
【0031】
ただし、図示の例のように、第1穴区間H1と第2穴区間H2とを設け、正方向(+)および負方向(-)の両方の目移しをすることが好ましい。そうすれば、第1穴区間H1の編目と第2穴区間H2の編目とが逆方向に目移しされることになるので、複数のメッシュ穴11が全体としてバランス良く見える。バランスの観点からすると、第1穴区間H1と第2穴区間H2とを交互に設けるなど、規則性を持って配置することが好ましい。
【0032】
前編地10および後編地20は基本的に平編で編成されるが、メッシュ穴11の形成に影響を及ぼさない範囲で、他の編み方で編成してもよい。例えば、メッシュ風模様が付される領域とは別の領域では、前編地10および後編地20を平編以外の編み方で編成してもよい。
【0033】
(編成方法)
つぎに、本実施形態の編地1の編成方法を説明する。
編地1は横編機により編成できる。横編機は互いに対向して配置された2つの針床を有する。2つの針床のうち少なくとも一方は左右にラッキング可能である。以下、一方の針床を「前針床FB」、他方の針床を「後針床BB」とする。「前針床」、「後針床」の各名称における「前」、「後」は、2つの針床を区別するために便宜上付したものであり、横編機の前後とは関係ない。後述のごとく、前針床FBで前編地10を編成し、後針床BBで後編地20を編成する。編地1の両面にメッシュ風模様を付す場合には、編成途中で前針床FBおよび後針床BBの呼び方が入れ替わることになる。
【0034】
図4は本実施形態の編成工程図である。図中の左欄には編成工程の番号、右欄には各編成工程における針床の状態が示されている。右欄の黒点は前針床FBおよび後針床BBの編針を示す。A~Gは前針床FBの編針の位置、a~gは後針床BBの編針の位置を示す。また、○は既に形成されている編目、●は新たに形成した編目、◎は重ね目を示す。前針床FBから後針床BBに向かう矢印は目移しの方向を示す。
【0035】
編地1は図4に示された第0~第3工程S0~S3をこの順に行なうことで編成される。編成工程の全体を通して、基本的には、前針床FBにより前編地10を編成し、後針床BBにより後編地20を編成する。すなわち、2枚の編地を重ねて編成する、いわゆる袋編みを行なう。前針床FBと後針床BBとに異なる色の編糸を給糸すれば、前編地10と後編地20とを異なる色の編糸で編成できる。
【0036】
・第0工程
第0工程S0では、前針床FBの各編針A~Gに編目が係止されている。この編目列は前編地10の第1コースC1の編目列である(図3(A))。同様に、後針床BBの各編針a~gに編目が係止されている。この編目列は後編地20の第1コースC1の編目列である(図3(B))。
【0037】
・第1工程
第1工程S1では、前針床FBに給糸して各編針A~Gでニットする。これにより、前編地10の一のコース(第2コースC2)を構成する前編目列12が編成される。同様に、後針床BBに給糸して各編針a~gでニットする。これにより、後編地20の一のコース(第2コースC2)を構成する後編目列22が編成される。
【0038】
・第2工程
図示の例では、編針B、bに相当する区間が第1穴区間H1、編針C、cに相当する区間が第1編区間K1である。また、編針F、fに相当する区間が第2穴区間H2、編針E、eに相当する区間が第2編区間K2である。
【0039】
第2工程S2では、前編目列12の第1穴区間H1の編目(編針Bに係止された編目)を後編目列22の第1編区間K1の編目(編針c)に目移しして、編針cに重ね目を形成する。また、前編目列12の第2穴区間H2の編目(編針Fに係止された編目)を後編目列22の第2編区間K2の編目(編針e)に目移しして、編針eに重ね目を形成する。
【0040】
より詳細には、まず、後針床BBを負方向(図4における左方向)に1ピッチラッキングして、編針Bと編針cを対向させる。この状態で編針Bに係止された編目を編針cに目移しする。つぎに、後針床BBを正方向(図4における右方向)に2ピッチラッキングして、編針Fと編針eを対向させる。この状態で編針Fに係止された編目を編針eに目移しする。最後に、後針床BBを負方向に1ピッチラッキングして、前針床FBと後針床BBとの関係を元の状態に戻す。なお、編針Bから編針cへの目移しと、編針Fから編針eへの目移しを逆の順番で行なってもよい。
【0041】
第1、第2工程により、前編地10および後編地20の第2コースが編成される。前編目列12のうち後針床BBに目移しされた部分(編針B、Fの部分)がメッシュ穴11となる。
【0042】
・第3工程
第3工程S3では、前針床FBに給糸して各編針A~Gでニットする。これにより、前編地10の次のコース(第3コースC3)を構成する編目列が編成される。同様に、後針床BBに給糸して各編針a~gでニットする。これにより、後編地20の次のコース(第3コースC3)を構成する編目列が編成される。
【0043】
前編地10に次のコースの編目列を編成することで、メッシュ穴11がウェール方向に閉じられる。また、第2工程で編針c、eに係止された重ね目は、第3工程で形成される次コースの編目により、まとめられた状態となる。
【0044】
前述のごとく、前編目列12の編目の目移しの量、および第1、第2穴区間H1、H2の数は特に限定されない。目移しする編針の位置を任意に設定すればよい。ウェール方向に複数のメッシュ穴11を形成するには、第0~第3工程S0~S3を繰り返し行なえばよい。
【0045】
第2穴区間H2を設けなくてもよい。ただし、第1穴区間H1および第2穴区間H2の両方を設け、正方向(+)および負方向(-)の両方の目移しをすることが好ましい。編機により同一方向の目移しを繰り返し行なうと、編地が目移しの方向に引っ張られ、逆側の縁に力がかかることがある。第1穴区間H1の編目と第2穴区間H2の編目とを逆方向に目移しすれば、編機による編成の際に一方向に編地が引っ張られることがなく、編成不良を抑制できる。
【0046】
編地1の縁において前編地10の編糸と後編地20の編糸とを絡めるよう編成してもよい。そうすれば、前編地10と後編地20とがより一体となる。
【0047】
〔第2実施形態〕
(編地)
つぎに、第2実施形態に係る編地1を説明する。
メッシュ穴11の大きさは、編目1つ分に限定されず、編目複数分でもよい。本実施形態の前編地10および後編地20の組織図をそれぞれ図5(A)、(B)に示す。
【0048】
本実施形態では、第1穴区間H1を連続する複数の編目(第2、第3ウェールW2、W3の編目)に相当する区間としている。第1編区間K1を第1穴区間H1の正方向(+)に連接し、連続する複数の編目(第4、第5ウェールW4、W5の編目)に相当する区間としている。
【0049】
また、第2穴区間H2を連続する複数の編目(第7、第8ウェールW7、W8の編目)に相当する区間としている。第2編区間K2を第2穴区間H2の負方向(-)に連接し、連続する複数の編目(第5、第6ウェールW5、W6の編目)に相当する区間としている。なお、第1編区間K1と第2編区間K2とは第5ウェールW5において重なっている。
【0050】
前編目列12の第1穴区間H1の編目(第2、第3ウェールW2、W3の編目)は、それぞれ、後編目列22の第1編区間K1の編目(第4、第5ウェールW4、W5の編目)に目移しされている。これにより、前編目列12の第1穴区間H1に編目2つ分のメッシュ穴11が形成されている。また、前編目列12の第2穴区間H2の編目(第7、第8ウェールW7、W8の編目)は、それぞれ、後編目列22の第2編区間K2の編目(第5、第6ウェールW5、W6の編目)に目移しされている。これにより、前編目列12の第2穴区間H2に編目2つ分のメッシュ穴11が形成されている。
【0051】
後編目列22の第1、第2編区間K1、K2の編目は前編目列12の編目と後編目列22の編目とが重なった重ね目となっている。ここで、第1編区間K1と第2編区間K2とが重なった第5ウェールW5は、前編目列12の2つの編目と後編目列22の1つの編目とが重なった三重の重ね目となっている。
【0052】
以上のように、連続する複数の編目を目移しすることで、横長のメッシュ穴11を形成できる。目移しする編目の数は特に限定されない。ただし、目移しの量を多くしすぎると編糸に過大な力がかかり切れる恐れがある。目移しの量を3ウェール分までとするならば、編目3つ分までのメッシュ穴11を形成できる。
【0053】
(編成方法)
つぎに、本実施形態の編地1の編成方法を説明する。
図6は本実施形態の編成工程図である。第0、第1工程S0、S1は第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0054】
・第2工程
図示の例では、編針B~C、b~cに相当する区間が第1穴区間H1、編針D~E、d~eに相当する区間が第1編区間K1である。また、編針G~H、g~hに相当する区間が第2穴区間H2、編針E~F、e~fに相当する区間が第2編区間K2である。
【0055】
第2工程では、前編目列12の第1穴区間H1の複数の編目(編針B、Cに係止された編目)を、それぞれ、後編目列22の第1編区間K1の編目(編針d、e)に目移しして、編針d、eに重ね目を形成する。また、前編目列12の第2穴区間H2の複数の編目(編針G,Hに係止された編目)を後編目列22の第2編区間K2の編目(編針e、f)に目移しして、編針e、fに重ね目を形成する。
【0056】
第1、第2工程により、前編地10および後編地20の第2コースが編成される。前編目列12のうち後針床BBに目移しされた部分(編針B~C、G~Hの部分)がメッシュ穴11となる。
【0057】
・第3工程
第3工程S3では、前針床FBに2回給糸して、前編地10の2コース分を編成する。これにより、編目2つ分のメッシュ穴11がウェール方向に閉じられる。また、後針床BBにも2回給糸して、後編地20の2コース分を編成する。この詳細は第4実施形態において説明する。
【0058】
なお、本実施形態では、第1、第2穴区間H1、H2をそれぞれ編目2つ分としたが、編目3つ分以上としてもよい。目移しにより編糸にかかる力を考慮して、目移しの量を3ウェール分までとするならば、第1、第2穴区間H1、H2それぞれを編目3つ分として、編目3つ分までの横長のメッシュ穴11を形成できる。
【0059】
また、本実施形態では、第1穴区間H1と第1編区間K1を同数編目分(編目2つ分)としたが、第1穴区間H1を第1編区間K1より広くしてもよいし、狭くしてもよい。例えば、第1穴区間H1を編目2つ分とし、第1編区間K1を編目1つ分としてもよい。この場合、前編目列12の第1穴区間H1の2つの編目を後編目列22の第1編区間K1の1つの編目に目移しすることになる。そのため、後編目列22の第1編区間K1には三重の重ね目が形成される。第2穴区間H2と第2編区間K2の関係も同様である。
【0060】
〔第3実施形態〕
(編地)
つぎに、第3実施形態に係る編地1を説明する。
本実施形態の前編地10および後編地20の組織図をそれぞれ図7(A)、(B)に示す。本実施形態では第1穴区間H1と第2穴区間H2とが連接されている。これにより、第1穴区間H1と第2穴区間H2とが繋がった横長のメッシュ穴11が形成されている。なお、第1穴区間H1と第2穴区間H2とは、第1穴区間H1を正方向側、第2穴区間H2を負方向側として、連接される。
【0061】
具体的には、第1~第2ウェールW1~W2、第3ウェールW3、第4ウェールW4、第5ウェールW5を、それぞれ、第2編区間K2、第2穴区間H2、第1穴区間H1、第1編区間K1としている。前編目列12の第1穴区間H1の編目(第4ウェールW4の編目)は後編目列22の第1編区間K1の編目(第5ウェールW5の編目)に目移しされている。前編目列12の第2穴区間H2の編目(第3ウェールW3の編目)は後編目列22の第2編区間K2の編目(第1ウェールW1の編目)に目移しされている。これにより、前編目列12の第1、第2穴区間H1、H2に編目2つ分のメッシュ穴11が形成されている。
【0062】
また、第5~第6ウェールW5~W6、第7ウェールW7、第8ウェールW8、第9ウェールW9を、それぞれ、第2編区間K2、第2穴区間H2、第1穴区間H1、第1編区間K1としている。前編目列12の第2穴区間H2の編目(第7ウェールW7の編目)は後編目列22の第2編区間K2の編目(第5ウェールW5の編目)に目移しされている。そのため、後編目列22の第5ウェールW5は、前編目列12の2つの編目と後編目列22の1つの編目とが重なった三重の重ね目となっている。
【0063】
本実施形態のメッシュ穴11は編目を左右に開くように目移しすることで形成されている。そのため、バランスのよい形のメッシュ穴11となる。
【0064】
(編成方法)
つぎに、本実施形態の編地1の編成方法を説明する。
図8は本実施形態の編成工程図である。第2工程S2以外は第2実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0065】
・第2工程
第2工程では、前針床FBの編針D、Hに係止された編目を、それぞれ、後針床BBの編針e、iに目移しする。また、前針床FBの編針C、Gに係止された編目を、それぞれ、後針床BBの編針a、eに目移しする。これにより、前編目列12の第1、第2穴区間H1、H2に編目2つ分のメッシュ穴11が形成される。
【0066】
なお、第1、第2穴区間H1、H2それぞれの長さを編目複数分としてもよい。目移しにより編糸にかかる力を考慮して、目移しの量を3ウェール分までとするならば、第1、第2穴区間H1、H2のそれぞれを編目3つ分として、編目6つ分までのメッシュ穴11を形成できる。また、第1穴区間H1と第2穴区間H2とを同じ長さとする必要はない。例えば、第1穴区間H1を編目1つ分とし、第2穴区間H2を編目2つ分としてもよい。
【0067】
〔第4実施形態〕
(編地)
つぎに、第4実施形態に係る編地1を説明する。
第2、第3実施形態の編地1は編目2つ分以上の横長のメッシュ穴11を有する。このような、横長のメッシュ穴11をウェール方向に無理なく閉じるには、メッシュ穴11を形成したコースの次段以降のコースの編成に工夫を要する。
【0068】
本実施形態の前編地10および後編地20の組織図をそれぞれ図9(A)、(B)に示す。本実施形態は第3実施形態において第1、第2穴区間H1、H2のそれぞれを編目2つ分としたものである。前編地10の第2コースC2には編目4つ分(第3~第6ウェールW3~W6)の横長のメッシュ穴11が形成されている。
【0069】
前編地10のメッシュ穴11は、メッシュ穴11が形成された第2コースC2に続く4つのコース(第3~第6コースC3~C6)の編成により、ウェール方向に閉じられている。
【0070】
(編成方法)
つぎに、本実施形態の編地1の編成方法を説明する。
キャリッジの一回の横行で前針床FBおよび後針床BBの両方に給糸する、いわゆるダブルニットの場合の編成工程図を図10に示す。第0、第1工程S0、S1は第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0071】
・第2工程
第2工程S2では、前針床FBの編針E、Fに係止された編目を、それぞれ、後針床BBの編針g、hに目移しする。また、前針床FBの編針C、Dに係止された編目を、それぞれ、後針床BBの編針a、bに目移しする。これにより、前編目列12の編針C~Fに相当する区間に編目4つ分のメッシュ穴11が形成される。第2工程により前編地10および後編地20の第2コースが編成される。
【0072】
目移しの結果、前針床FBの編針C~Fは編糸を保持していない空針となっている。以下、1または連続する複数の空針が位置する区間を「空針区間EN」とする。第2工程完了直後において、空針区間ENは、第1、第2穴区間H1、H2が連接されている場合にはそれらを合わせた区間である。第1、第2穴区間H1、H2が連接されていない場合には、空針区間ENは第1穴区間H1または第2穴区間H2と同じ区間である。
【0073】
・第3工程
本実施形態の第3工程S3は4つの小工程(1)~(4)を有する。各小工程で前編地10および後編地20の一コースが編成される。
【0074】
(1)キャリッジを正方向に横行させ前針床FBおよび後針床BBの両方に給糸する。前針床FBには編針A→Hの順に給糸されることになる。空針区間ENは編針C~Fである。空針区間EN外の編針A、Bでニットした後、空針区間ENにおいて給糸順に最初の編針Cでニットし、残りの編針D~Fでミスする。そして、空針区間EN外の編針G、Hでニットする。編針Bの編目は既に成形されているので、その隣の編針Cに編目を増やすことは容易にできる。この編成により空針区間ENが一針縮小される。
【0075】
また、後針床BBの各編針a~hでニットする。小工程(1)により、前編地10および後編地20の第3コースC3が編成される。
【0076】
(2)キャリッジを負方向に横行させ前針床FBおよび後針床BBの両方に給糸する。前針床FBには編針H→Aの順に給糸されることになる。空針区間ENは、小工程(1)で一針縮小されており、編針D~Fとなっている。空針区間EN外の編針H、Gでニットした後、空針区間ENにおいて給糸順に最初の編針Fでニットし、残りの編針E、Dでミスする。そして、空針区間EN外の編針C~Aでニットする。この編成により空針区間ENがさらに一針縮小される。
【0077】
また、後針床BBの各編針h~aでニットする。小工程(2)により、前編地10および後編地20の第4コースC4が編成される。
【0078】
(3)キャリッジを正方向に横行させ前針床FBおよび後針床BBの両方に給糸する。前針床FBには編針A→Hの順に給糸されることになる。空針区間ENは編針D~Eである。空針区間EN外の編針A~Cでニットした後、空針区間ENにおいて給糸順に最初の編針Dでニットし、残りの編針Eでミスする。そして、空針区間EN外の編針F~Hでニットする。この編成により空針区間ENがさらに一針縮小される。
【0079】
また、後針床BBの各編針a~hでニットする。小工程(3)により、前編地10および後編地20の第5コースC5が編成される。
【0080】
(4)キャリッジを負方向に横行させ前針床FBおよび後針床BBの両方に給糸する。小工程(3)までの編成により空針区間ENは一針分(編針E)となっている。最後の小工程(4)では前針床FBの各編針H~Aでニットする。これにより、空針区間ENが無くなる。
【0081】
また、後針床BBの各編針h~aでニットする。小工程(4)により、前編地10および後編地20の第6コースC6が編成される。また、メッシュ穴11がウェール方向に閉じらる。
【0082】
キャリッジの一回の横行で前針床FBおよび後針床BBの一方に給糸する、いわゆるシングルニットの場合には、図11に示すように編成すればよい。第0~第2工程S0~S2は図10と同様であるので、第3工程S3のみ説明する。また、キャリッジの正方向への横行で前針床FBに給糸し、負方向への横行で後針床BBに給糸すると仮定する。
【0083】
(1)キャリッジを正方向に横行させ前針床FBに給糸する。空針区間EN外の編針A、Bでニットした後、空針区間ENにおいて給糸順に最初の編針Cでニットし、残りの編針D~Fでミスする。そして、空針区間EN外の編針G、Hでニットする。この編成により空針区間ENが一針縮小される。つぎに、キャリッジを負方向に横行させ前針床FBに給糸し、各編針h~aでニットする。
【0084】
(2)キャリッジを正方向に横行させ前針床FBに給糸する。空針区間EN外の編針A~Cでニットした後、空針区間ENにおいて給糸順に最初の編針Dでニットし、残りの編針E、Fでミスする。そして、空針区間EN外の編針G、Hでニットする。つぎに、キャリッジを負方向に横行させ前針床FBに給糸し、各編針h~aでニットする。
【0085】
(3)キャリッジを正方向に横行させ前針床FBに給糸する。空針区間EN外の編針A~Dでニットした後、空針区間ENにおいて給糸順に最初の編針Eでニットし、残りの編針Fでミスする。そして、空針区間EN外の編針G、Hでニットする。つぎに、キャリッジを負方向に横行させ前針床FBに給糸し、各編針h~aでニットする。
【0086】
(4)最後に、キャリッジを正方向に横行させ前針床FBに給糸し、各編針A~Hでニットする。また、キャリッジを負方向に横行させ後針床BBに給糸し、各編針h~aでニットする。
【0087】
以上のように、第2工程S2の後、前針床FBにより前編地10を編成するにあたり、空針区間ENにおいて給糸順に最初の編針でニットし、残りの編針でミスすることで、空針区間ENを一針縮小する一コースの編成を、空針区間ENが無くなるまで繰り返し行なう。そうすれば、横長のメッシュ穴11を形成した後でも、一針ずつ編目を増やすことで、無理なくメッシュ穴11をウェール方向に閉じることができる。また、メッシュ穴11がきれいな形状となる。
【0088】
なお、メッシュ穴11の長さによって、メッシュ穴11を閉じるのに要するコース数が異なる。また、シンカーを有する編機用いれば、横長のメッシュ穴11を形成した後、シンカーで編地を押さえながら編目を編成することで、一コースまたは少ないコースの編成でメッシュ穴11をウェール方向に閉じることができる。
【符号の説明】
【0089】
1 編地
10 前編地
11 メッシュ穴
12 前編目列
20 後編地
22 後編目列
H1 第1穴区間
K1 第1編区間
H2 第2穴区間
K2 第2編区間
EN 空針区間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11