(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】アンモニア分解用触媒及び排ガスの処理方法
(51)【国際特許分類】
B01J 29/76 20060101AFI20240523BHJP
B01D 53/86 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
B01J29/76 A
B01D53/86 228
B01D53/86 ZAB
(21)【出願番号】P 2020562428
(86)(22)【出願日】2019-12-26
(86)【国際出願番号】 JP2019051219
(87)【国際公開番号】W WO2020138327
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-07-12
(31)【優先権主張番号】P 2018243993
(32)【優先日】2018-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000226219
【氏名又は名称】日揮ユニバーサル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100168066
【氏名又は名称】鈴木 雄太
(72)【発明者】
【氏名】生駒 知央
(72)【発明者】
【氏名】梨子田 敏也
【審査官】若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-246317(JP,A)
【文献】特開平10-249165(JP,A)
【文献】国際公開第2009/075311(WO,A1)
【文献】特開2008-062235(JP,A)
【文献】特表2016-532548(JP,A)
【文献】特開平09-271673(JP,A)
【文献】特開平07-227521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/73
53/86-53/90
53/94
53/96
B01J 21/00-38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガスに含まれるアンモニアを分解するアンモニア分解用触媒であって、
アンモニア分解用触媒が、
Pt及びPdを含む合金を担持した無機酸化物と、
ゼオライトと、
を含有し、
前記Ptと前記Pdとの質量比率(Pt/Pd)が2.3~10であり、
Pt及びPdを含む合金が、PtとPdとによる金属間化合物が形成されているものであり、XAFS分析により得られるPt原子の周囲のPd原子の配位数が
4.6以上である、アンモニア分解用触媒。
【請求項2】
前記無機酸化物が、チタニア、ジルコニア、シリカ、アルミナ、及びセリアジルコニア複合酸化物又は固溶体から選択される一種以上である、請求項1に記載のアンモニア分解用触媒。
【請求項3】
前記ゼオライトがβ型ゼオライトである、請求項1又は2に記載のアンモニア分解用触媒。
【請求項4】
前記ゼオライトが銅イオン交換ゼオライトである、請求項1~3のいずれかに記載のアンモニア分解用触媒。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれかに記載のアンモニア分解用触媒と、アンモニアを含む排ガスとを接触させて、アンモニアを分解する工程を含む、排ガスの処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニア分解用触媒及び排ガスの処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アンモニアを含む排ガスは、例えば電子材料製造工業、肥料製造工業、脱硝設備使用工場などで発生し、強い臭いを有することが多く、人体に影響を与える場合もあるため、その処理が求められている。これらの排出源から発生される排ガスは、通常空気を主成分として含み、アンモニアの他、さらに1~10体積%の水蒸気を含む。また、下水処理等で採用され始めているアンモニアストリッピングプロセスでは、アンモニアを含む水蒸気ガスが排出される。この排ガスは、アンモニアの他、水蒸気を多く含む。
【0003】
これらの排ガスを処理する触媒には、水蒸気存在下においても、アンモニア分解活性が高いことが求められる。また、窒素酸化物等の副生を抑制して、アンモニアを窒素と水に転化する、すなわち窒素選択性が高いことが求められる。さらに、長期間の使用においても、排ガス中に含まれる硫化水素等の影響を受けずに高いアンモニア分解活性を維持する、すなわち耐久性が高いことが求められる。
【0004】
アンモニアや有機窒素化合物の分解触媒として、例えば以下のような触媒が開示されている。特許文献1には、排水処理に伴って排出される、アンモニア以外の有機窒素化合物含有排ガスを接触酸化して、N2、CO2及びH2Oに転化する触媒として、チタニア及び/又はチタニア・シリカにVO2、WO3及びパラジウムを担持した触媒が開示されている。
【0005】
特許文献2には、アクリロニトリル等の有機窒素化合物を含む排ガス処理触媒として、ゼオライト、又はAl2O3、SiO2、TiO2、ZrO2等の金属酸化物の担体に、Fe、Cu、Ag及びCoから選ばれる1種または2種以上を担持した触媒が、アクリロニトリルを高選択率でN2に転化できることが開示されている。
【0006】
特許文献3及び4には、貴金属を使用しない触媒として、SiO2/Al2O3比が10以上のゼオライトにMnを担持し、または混合した触媒が、余剰の酸素存在下においてもNOやNO2の生成を抑制しながら、アンモニアをN2に転化できることが開示されている。
【0007】
特許文献5には、アンモニア分解触媒として、TiO2・SiO2又はTiO2・SiO2・ZrO2の複合酸化物に、V、W及びMoのいずれかと、貴金属とを担持した触媒が、アンモニア分解活性が高く、かつ硫黄化合物による活性低下が少ないことが開示されている。しかしながら、水分2%、NH3濃度50~400ppm、H2S濃度30ppmの排ガスを用いて、高い初期活性が得られる結果が示されているのみであり、耐久性に関しては具体的に示されていない。
【0008】
特許文献6には、TiO2に、V及びWのいずれかと、Pt又はIrとを担持したアンモニア分解触媒が開示されている。該触媒を用いた場合、水蒸気濃度が10%、NH3濃度が10ppm、SO2濃度が100ppmの排ガスを3000時間処理した後のアンモニア分解率が88~93%であることが示されている。
【0009】
特許文献7には、ゼオライト、γ-アルミナ、チタニア等に、白金、ロジウム、イリジウム、パラジウム又はルテニウムを担持したアンモニア除去触媒が開示されている。該触媒は酸素と水素の共存下でアンモニアを常温~200℃で除去するものである。
【0010】
特許文献8には、アルミナ、チタニア又はシリカ担体に、銅、コバルト、鉄、クロム、ニッケル、マンガンの金属またはその酸化物と、白金又はパラジウムとが担持された触媒を硫酸化した、アンモニア分解触媒が開示されており、硫酸化によりアンモニア分解活性とN2選択性が改善されることが示されている。しかしながら、水分濃度が2%における初期活性が示されているのみであって、耐久性に関しては示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2001-293480号公報
【文献】特開2004-58019号公報
【文献】特開2007-21482号公報
【文献】特開2007-216082号公報
【文献】特開平7-289897号公報
【文献】特開平8-131832号公報
【文献】特開平10-249165号公報
【文献】特開平8-173766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1~8に開示された技術では、例えば水蒸気濃度が10体積%程度の雰囲気下でのアンモニア分解活性、窒素酸化物等の副生抑制、及び耐久性が不十分であり、更なる改良が望まれている。
【0013】
本発明は、例えば水蒸気濃度が10体積%程度の雰囲気下であっても、高いアンモニア分解活性及び低い窒素酸化物生成率を維持しつつ、耐久性が高いアンモニア分解用触媒、及び該触媒を用いた排ガスの処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、排ガスに含まれるアンモニアを分解するアンモニア分解用触媒であって、Pt及びPdを含む合金を担持した無機酸化物と、ゼオライトと、を含有するアンモニア分解用触媒が提供される。
【0015】
本発明によれば、本発明に係るアンモニア分解用触媒と、アンモニアを含む排ガスとを接触させて、アンモニアを分解する工程を含む排ガスの処理方法が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、例えば水蒸気濃度が10体積%程度の雰囲気下であっても、高いアンモニア分解活性及び低い窒素酸化物生成率を維持しつつ、耐久性が高いアンモニア分解用触媒、及び該触媒を用いた排ガスの処理方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[アンモニア分解用触媒]
本発明に係るアンモニア分解用触媒は、排ガスに含まれるアンモニアを分解する触媒である。ここで、前記アンモニア分解用触媒は、Pt及びPdを含む合金を担持した無機酸化物と、ゼオライトと、を含有する。
【0018】
本発明に係るアンモニア分解用触媒では、PtとPdとが合金を形成しているため、例えば水蒸気濃度が10体積%程度の雰囲気下においても高いアンモニア分解活性及び低いNOxやN2O等の窒素酸化物生成率を維持しつつ、かつ耐久性が向上する。一般的に、一定以上(約500℃)の高温条件になると貴金属の凝集が進行するが、水蒸気存在下では凝集が起こる温度域が低下し、凝集が進行しやすくなる。PtとPdとが合金を形成することで、水蒸気存在下においても貴金属の凝集が抑制されるため、耐久性が向上すると推測される。
【0019】
また、本発明に係るアンモニア分解用触媒では、前記合金が無機酸化物上に担持されているため、前記合金が高分散状態になり、その結果、高い活性と耐久性が得られると推測される。以下、本発明の詳細について説明する。
【0020】
(Pt及びPdを含む合金)
本発明に係る触媒は、アンモニア分解活性成分としてPt及びPdを含む合金を含む。Pt及びPdを含む合金を用いることで、PtとPdとがそれぞれ単独で含まれる場合よりも、水蒸気濃度が比較的高い雰囲気下において耐久性が向上する。
【0021】
PtとPdの質量比率(Pt/Pd)は、0.1~10が好ましく、0.5~7.0がより好ましく、1.5~4.0がさらに好ましい。Pt/Pdが前記範囲内であることにより、水蒸気濃度が比較的高い雰囲気下における耐久性がより向上し、またNOxの副生を抑制することができる。
【0022】
PtとPdの合計含有量(担持量)は、無機酸化物とゼオライトの合計質量に対して10質量ppm~10000質量ppmであることが好ましく、100質量ppm~5000質量ppmであることがより好ましく、500質量ppm~3000質量ppmであることがさらに好ましい。前記担持量が10質量ppm以上であることにより、アンモニアが十分に分解される。また、前記担持量が10000質量ppm以下であることにより、触媒のコストを低減することができる。したがって、処理する排ガスの性状、反応条件および使用する時間(耐久性)に応じて、前記範囲内で前記担持量を適宜選択することができる。
【0023】
前記合金は少なくともPt及びPdを含むが、必要に応じて他の金属を含むことができる。他の金属としては、例えばIr、Rh、Ru、Au、Ag等が挙げられる。前記合金はこれらの他の金属を一種含んでもよく、二種以上含んでもよい。
【0024】
なお、本発明において「Pt及びPdを含む合金」とは、PtとPdとによる金属間化合物が形成されているものを言う。PtとPdとによる金属間化合物が形成されていることは、XAFS(X線吸収微細構造)分析により確認することができる。PtとPdとによる金属間化合物が形成されている場合、XAFS分析においてPt原子にPd原子が配位していることが示される。具体的には、Pt原子の周囲のPd原子について配位数(coordination number)が0より大きい値を示す。配位数は0.8以上が好ましく、3.0以上がより好ましい。配位数が前記範囲内で合金を形成していれば、本発明の効果がより得られる。XAFS分析は、例えば、科学技術交流財団あいちシンクロトロン光センターが所有する装置を用いることができる。また、触媒中のPtとPdの含有量は、ICP(Inductively Coupled Plasma)分析により測定することができる。
【0025】
(無機酸化物)
本発明に係る触媒は、Pt及びPdを含む合金の担体として無機酸化物を含む。前記合金が無機酸化物上に担持されていることで、耐久性が向上する。
【0026】
本発明に係る無機酸化物は、後述するゼオライト以外の無機酸化物であり、例えば、チタニア(TiO2)、ジルコニア(ZrO2)、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、セリアジルコニア複合酸化物又は固溶体(CeO2・ZrO2)(以下、「セリアジルコニア」ともいう。)等が挙げられる。ここで、セリアジルコニアとは、セリア及びジルコニアを含む複合酸化物又は固溶体を指すものであり、セリア及びジルコニア以外の物質が含まれていてもよい。例えば、セリアジルコニアはランタンを含んでいてもよい。これらの無機酸化物は一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0027】
これらの無機酸化物の中でも、初期のアンモニア分解活性及び耐久性がより高い観点から、セリアジルコニアが好ましい。また、Pt及びPdを含む合金を無機酸化物上に担持させる観点から、Pt及びPdの原料塩と親和性を有する無機酸化物が好ましい。すなわち、Pt及びPdが吸着しやすい無機酸化物が好ましい。このような無機酸化物としては、例えばアルミナ、チタニア、セリアジルコニア等が挙げられる。
【0028】
触媒中の無機酸化物の含有量は、無機酸化物とゼオライトの合計100質量部に対して0.5質量部~50質量部が好ましく、1質量部~25質量部がより好ましく、5質量部~20質量部がさらに好ましい。前記含有量が0.5質量部以上であることにより、前記合金が無機酸化物上に十分に担持される。また、前記含有量が50質量部以下であることにより、ゼオライトの含有量を確保できるため、アンモニア分解活性が向上し、またNOxの副生が抑制される。
【0029】
無機酸化物の平均粒径は、前記合金の機能を十分に発揮させる観点から、0.1μm~100μmが好ましく、0.5μm~20μmがより好ましい。なお、本発明において平均粒径は、レーザー回折・散乱法粒度分布測定装置LS-230(商品名、ベックマン・コールター製)により測定される値である。
【0030】
無機酸化物の比表面積は、5m2/g~600m2/gであることが好ましく、25m2/g~300m2/gであることがより好ましく、50m2/g~200m2/gであることがさらに好ましい。なお、本発明において比表面積はBET法により測定される値である。
【0031】
なお、本発明に係る触媒では、前記合金は少なくとも無機酸化物上に担持されているが、後述するゼオライト上にも担持されていてもよい。しかしながら、前記合金は無機酸化物上に主に担持されていることが好ましく、無機酸化物上のみに担持されていてもよい。
【0032】
(ゼオライト)
本発明に係る触媒は、前記合金が担持された無機酸化物とは別に、さらにゼオライトを含む。
【0033】
前記ゼオライトは特に制限されず、天然品であっても合成品であってもよい。天然品のゼオライトとしては、例えばモルデナイト、エリオナイト、フェリエライト、シャパサイト等が挙げられる。合成品のゼオライトとしては、例えばX型ゼオライト;Y型ゼオライト;ZSM-5等のMFI型ゼオライト;L型ゼオライト;A型ゼオライト;β型ゼオライト;SAPO-34等が挙げられる。代表的なゼオライトとしては、UOP社製LZY-84(商品名)として入手可能なHY型ゼオライト、UOP社製MFI-40(商品名)として入手可能なシリカライト、UOP社製BETA-ZEOLITEゼオライト(商品名)として入手可能なβ型ゼオライト、UOP社製LZM-8(商品名)として入手可能なモルデナイト等が例示される。これらのゼオライトは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。これらのゼオライトの中でも、アンモニアの分解率が高く、NOx、N2O、CO等の副生が少なく、N2への転化率が高い観点から、β型ゼオライトが好ましい。
【0034】
前記ゼオライトはプロトン型であってもよく、置換型であってもよい。ゼオライトとして、プロトン型ゼオライトと置換型ゼオライトとの混合物を使用してもよい。ここで、プロトン型ゼオライトとは、イオン交換可能なカチオンサイトの少なくとも一部がH+で占有されているゼオライトを指す。本明細書では、例えば、モルデナイトのプロトン型はH-モルデナイト、MFI型の一例としてのZSM-5のプロトン型はH-ZSM-5、Y型ゼオライトのプロトン型はHY型ゼオライト、β型ゼオライトのプロトン型はH-βゼオライトとそれぞれ表記する。
【0035】
置換型ゼオライトとは、イオン交換可能なカチオンサイトの少なくとも一部がプロトン以外のカチオン(置換カチオン)、例えばNH4
+や金属カチオンで占有されているゼオライトを指す。以下、置換カチオンが金属カチオンである場合、金属置換ゼオライトと表記する。本明細書では、例えば、Feカチオンがカチオンサイトを占有するY型ゼオライトはFe-Y型ゼオライト、NH4
+がカチオンサイトを占有するY型ゼオライトはNH4-Y型ゼオライトとそれぞれ表記する。他のゼオライトについても同様に表記する。また、Feカチオンで置換されたゼオライトはFe-ゼオライト、Cuカチオンで置換されたゼオライトはCu-ゼオライト、Coカチオンで置換されたゼオライトはCo-ゼオライトとそれぞれ表記する。
【0036】
金属置換ゼオライトのイオン交換可能なカチオンサイトを占有する置換金属は、特に制限されないが、例えばFe等の第8族元素;Co及びRh等の第9族元素;Ni及びPd等の第10族元素;Cu及びAg等の第11族元素等が挙げられる。これらの置換金属は一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。これらの置換金属の中でも、Fe、Cu、Ni、Co及びそれらの組み合わせが好ましい。特に、Cuで置換されたゼオライトである銅イオン交換ゼオライトは、アンモニアの分解率が高く、NOx、N2O、CO等の副生が少なく、N2への転化率が高いため好ましい。
【0037】
ゼオライトの種類と置換金属の種類との組み合わせは特に限定されず、上記に挙げたものを適宜組み合わせて用いることができる。例えば、Cuで置換されたSAPO-34ゼオライト(Cu-SAPO-34)、Feで置換されたβ型ゼオライト(Fe-βゼオライト)、Cuで置換されたβ型ゼオライト(Cu-βゼオライト)等が挙げられる。これらの中でもCu-βゼオライトは、アンモニアの分解率がより高く、NOx、N2O、CO等の副生がより少なく、N2への転化率がより高いため好ましい。
【0038】
金属置換ゼオライトに含まれる置換金属の量は、ゼオライトのSiO2/Al2O3モル比に応じて適宜選択されるが、例えば金属置換ゼオライトに対して置換金属の総量が1~6質量%であることができる。なお、金属置換ゼオライト中の置換金属の含有量は、XRF(X-ray Fluorescence、蛍光X線)により求めることができ、ZSX primusII(商品名、Rigaku製)を用いて測定することができる。
【0039】
ゼオライトの平均粒径は、1μm以上であることができ、2μm~50μmであることが好ましく、2μm~30μm以下がより好ましい。なお、ゼオライトの平均粒径は、前記無機酸化物の平均粒径と同様に測定することができる。
【0040】
触媒中のゼオライトの含有量は、無機酸化物とゼオライトの合計100質量部に対して50質量部~99.5質量部が好ましく、75質量部~99質量部がより好ましく、80質量部~95質量部がさらに好ましい。前記含有量が50質量部以上であることにより、アンモニア分解活性が向上し、またNOxの副生が抑制される。また、前記含有量が99.5質量部以下であることにより、無機酸化物の含有量を確保できるため、前記合金が無機酸化物上に十分に担持される。
【0041】
(バインダー)
本発明に係る触媒を成形又は支持体へ担持するために、前記触媒にバインダーを混合して用いることができる。バインダーとしては、無機バインダーを用いることができる。無機バインダーの具体例としては、コロイダルシリカ、シリカゾル、アルミナゾル、ケイ酸ゾル、チタニアゾル、ベーマイト、白土、カオリン、セピオライト等が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0042】
(支持体)
本発明に係る触媒は、そのまま用いてもよいが、ハニカム担体等の支持体に担持して使用することができる。支持体の形状は特に制限されないが、ガス流通時に発生する差圧が小さく、ガスとの接触面積が大きい形状が好ましい。具体的な形状としては、ハニカム、球体、シート、メッシュ、繊維、パイプ、フィルター等が挙げられる。支持体の種類も特に制限されないが、例えばコージェライト、アルミナ等の公知の触媒担体、炭素繊維、金属繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、チタン、アルミニウム、ステンレス等の金属が挙げられる。
【0043】
支持体がハニカム担体である場合、ハニカム担体1LあたりのPtの担持量は、10mg~200mgであることが好ましく、20mg~100mgであることがより好ましい。また、ハニカム担体1LあたりのPdの担持量は、3mg~200mgであることが好ましく、10mg~100mgであることがより好ましい。また、ハニカム担体1Lあたりの無機酸化物の担持量は、3g~50gであることが好ましく、5g~30gであることがより好ましい。また、ハニカム担体1Lあたりのゼオライトの担持量は、10g~200gであることが好ましく、30g~100gであることがより好ましい。
【0044】
(触媒の調製方法)
本発明に係る触媒の調製方法は特に限定されないが、例えば以下の(i)~(iii)に示される方法が挙げられる。
(i)無機酸化物及びゼオライトの粒子混合物に、Pt塩及びPd塩を含む水溶液を含浸させる方法。
(ii)無機酸化物及びゼオライトを含むスラリー中に、Pt塩及びPd塩を添加する方法。
(iii)予めPt及びPdを担持した無機酸化物を作製し、これを、ゼオライトを含む他の成分と混合する方法。
【0045】
Pt塩としては、例えばジニトロジアミン白金、塩化白金酸、テトラアンミン白金等が挙げられる。Pd塩としては、例えば硝酸パラジウム、塩化パラジウム、テトラアンミンパラジウム等が挙げられる。本発明では、得られる触媒がアンモニア分解活性及び耐久性により優れる観点から、前記(iii)の方法が好ましい。
【0046】
本発明に係る触媒は粉体状であっても、スラリー状であってもよい。また、実用においては、粒状など成形粒子として、又は前述したようにハニカム担体等の支持体に担持して使用することができる。以下に、支持体に担持した触媒について、該触媒の調製方法の具体例を説明する。
【0047】
例えば、前記(iii)のように、まず、水に無機酸化物粒子、Pt化合物及びPd化合物を添加してPt及びPdを担持した無機酸化物粒子を調製し、その後、ゼオライト粒子及び必要に応じてバインダーを添加してスラリーを調製する。または、前記(ii)のように、水に無機酸化物粒子、ゼオライト粒子を添加し、さらにPt塩、Pd塩、必要に応じてバインダーを添加してスラリーを調製してもよい。調製したスラリーを支持体に塗布し、乾燥する。塗布方法に特に制限はなく、ウォッシュコートやディッピング等の公知の方法を用いることができる。必要に応じてこれらの操作を繰り返して、触媒層の厚さを適宜調整することができる。
【0048】
[排ガスの処理方法]
本発明に係る排ガスの処理方法は、前記アンモニア分解用触媒と、アンモニアを含む排ガスとを接触させて、アンモニアを分解する工程を含む。該方法によれば、水蒸気濃度が比較的高い雰囲気下においても、高いアンモニア分解活性及び低い窒素酸化物生成率を維持しつつ、長期にわたりアンモニアを分解することができる。
【0049】
処理対象である排ガスとしては、アンモニアを含めば特に制限はなく、例えば半導体工場等の各種工場から排出されるアンモニアを含む排ガス、コークス炉排ガス、排煙脱硝プロセスから排出されるリークアンモニア含有ガス、下水処理場、汚泥処理施設等から排出されるアンモニア含有排水のストリッピングにより排出される排ガス等が挙げられる。
【0050】
以下、一例として下水処理場から排出される排ガスの処理方法について説明する。まず、下水処理場の汚泥を脱水機で脱水して、発生する排水を蒸留設備で蒸留する。必要であれば、さらに外部よりスチーム又はスチームと窒素ガスを吹き込んで、水分及びアンモニアの蒸発を促進するための分離装置に導入する。蒸留により分離されたアンモニアを含む水蒸気を分離槽にて水とアンモニアに分離し、排熱を回収する。高濃度水分とアンモニアを含む蒸気(アンモニア含有排ガス)を触媒反応装置に導入して、別途外部から必要量の空気を導入し、触媒に接触させてアンモニアを窒素と水蒸気に分解し、無害化処理する。このプロセスの概要は、例えば特開2002-28637号公報等に開示されている。
【0051】
本発明に係る方法は、特に活性汚泥処理からの排ガスの処理に好ましく適用される。該排ガスは、水蒸気を20体積%~70体積%、硫黄化合物を硫黄分として10質量ppm~200質量ppm、アンモニアを100体積ppm~3体積%、残部として窒素を含むことができる。このように、本発明に係る方法が特に有効な作用を発揮する排ガスは、アンモニア以外は、実質的に水蒸気と窒素を主成分として含むガスである。さらに、硫黄化合物が含まれる排ガス中のアンモニア処理に対しても、本発明に係る方法は好ましく適用される。なお、前記活性汚泥処理から排出される排ガスは、本発明に係る方法において使用できる排ガスの一例であり、これに限定されるものではない。本発明に係る方法は、例えば、空気を主成分とする通常のアンモニア含有排ガス処理に対しても適用することができる。
【0052】
本発明に係る方法は、処理対象である排ガス中の水蒸気濃度は特に限定されるものではないが、特に水蒸気濃度が10体積%以下である場合に有効であるため、水蒸気濃度は10体積%以下であることが好ましい。排ガスのアンモニア濃度は特に限定されないが、例えば10体積ppm~5体積%であることができる。触媒反応器に供給する排ガス中のアンモニア濃度は、好ましくは3体積%以下、より好ましくは2体積%以下となるように調整することが好ましい。アンモニア濃度を3体積%以下に調整して触媒反応器に供給することで、反応による発熱をより抑制でき、触媒層の温度が上がり過ぎることによる触媒の劣化を十分に抑制することができる。
【0053】
本発明に係る方法では、本発明に係る触媒にアンモニアを含む排ガスと空気とを接触させて、アンモニアを無害な窒素ガスと水に変換し、酸化分解することができる。アンモニアの酸化分解反応は下記式(1)により表される。
4NH3+3O2 → 6H2O+2N2 (1)
【0054】
したがって、酸化分解反応に必要な酸素が十分に含まれていない排ガスを処理する場合には、触媒反応器の入口において外部より空気又は酸素含有ガスを混入させることができる。排ガス中の酸素量は、該酸素量/理論必要酸素量の比率が好ましくは1.03以上、より好ましくは1.1以上を満たす酸素量であることが好ましい。ここで、理論必要酸素量とは、前記式(1)より算出される化学量論酸素量である。例えば、触媒反応器入口におけるアンモニア濃度が1.0体積%のとき、酸素濃度は好ましくは0.77体積%以上、より好ましくは0.838体積%以上である。
【0055】
前記酸化分解反応の温度は、排ガス中の性状(水蒸気濃度やアンモニア濃度)、反応条件(空間速度等)、触媒劣化度合い等により適宜決定されるが、200~500℃が好ましく、250~450℃がより好ましい。また、処理対象である排ガスの触媒に対する空間速度(SV)は、排ガスの性質(アンモニア濃度や水蒸気濃度)やアンモニア分解率の目標値などを考慮して適宜決定されるが、100~100000hr-1であることが好ましい。
【実施例】
【0056】
以下、本発明を実施例に基づき、詳細に説明する。しかし本発明はこれらに限定されるものではない。
【0057】
<実施例1>
(触媒の調製)
脱イオン水130gに、ジニトロジアミン白金の水溶液(Pt濃度:4.5質量%)を2.5g、及び硝酸パラジウムの水溶液(Pd濃度:10.0質量%)を0.16g加え、混ぜ合わせた。その後、セリアジルコニアを含む粉末(商品名:CZ-08、第一希元素工業(株)製、平均粒径:0.5~10μm、比表面積:70m2/g)を16.5g加え、約5時間撹拌した。次いで、バインダー成分であるスノーテックス-C(商品名、日産化学(株)製)を202g加え、良く撹拌した。その後、Cu-βゼオライト粉末(商品名:Cu-TZB223L、クラリアント触媒(株)製、平均粒径:1.3μm、Cu含有量:4.5質量%)を155.5g加えて良く撹拌し、スラリーを得た。前記スラリーを、コージライト製のハニカム担体(セル数:200セル/平方インチ、縦50mm×横50mm×高さ50mm、容積:0.125L)に、ウォッシュコート法により塗布し、150℃で2時間乾燥した後、500℃で1時間焼成して、ハニカム型触媒を得た。
【0058】
前記ハニカム型触媒には、ハニカム担体1Lあたり105gの触媒層(無機酸化物:10g、ゼオライト:70g、バインダー:25g)が担持されていた。なお、触媒層中の無機酸化物、ゼオライト及びバインダーの質量は、ハニカム担体に担持された触媒層の質量に、調製したスラリー中における各成分の固形分の比率を乗じて算出した。Ptの担持量はハニカム担体1Lあたり70mg、Pdの担持量はハニカム担体1Lあたり10mgであった。Pt及びPdの担持量は、無機酸化物とゼオライトの合計質量に対して、それぞれ875質量ppmと125質量ppm(合計1000質量ppm)であった。なお、PtとPdの担持量は、Pt原料及びPd原料の仕込み量から算出した。XAFS分析により、PtとPdは合金を形成していることが確認された(Pt原子の周囲のPd原子の配位数:0.8)。前記ハニカム型触媒の構成を表1に示す。
【0059】
(初期活性評価試験)
前記ハニカム型触媒から円柱状(直径21mm、長さ50mm)のハニカム型触媒を採取し、これを流通式反応装置に充填した。マスフローコントローラーにより流量を制御しながら所定のガスを流通した。電気炉にて触媒入口付近を加熱することで触媒を所定の温度としてアンモニア分解活性を評価した。前記評価におけるガス条件、ガス分析方法及び各種計算方法は以下の通りである。評価結果を表2に示す。
【0060】
[ガス条件]
SV=10,000h-1、NH3=1体積%、H2O=10体積%、O2=10体積%、N2バランス、340℃
【0061】
[ガス分析方法]
アンモニア:ガスクロマトグラフィー(TCD検出器)
NOx:ケミルミネッセンス(化学発光式)分析装置
N2O:ガスクロマトグラフィー(TCD検出器)
【0062】
[計算方法]
NH3分解率(%):100-{(出口NH3濃度)/(入口NH3濃度)×100}
NOx生成率(%):(出口NOx濃度)/(入口NH3濃度)×100
N2O生成率(%):{(出口N2O濃度)×2/(入口NH3濃度)}×100
【0063】
(耐久性評価試験)
前記円柱状のハニカム型触媒を流通式反応装置に充填して所定の温度とし、下記のガス条件にて継続してガスを流通した。アンモニア分解率の経時変化を調べ、アンモニア分解率が97%になるまでの時間(T97)を確認した。アンモニア濃度の分析、アンモニア分解率の算出方法は上記と同様である。評価結果を表2に示す。
【0064】
[ガス条件]
SV=10,000h-1、NH3=1体積%、H2O=10体積%、O2=10体積%、N2バランス、340℃
【0065】
<実施例2>
前記硝酸パラジウムの水溶液の添加量を0.32gに変更した以外は、実施例1と同様にハニカム型触媒を調製した。Ptの担持量はハニカム担体1Lあたり70mg、Pdの担持量はハニカム担体1Lあたり20mgであった。Pt及びPdの担持量は、無機酸化物とゼオライトの合計質量に対して、それぞれ875質量ppmと250質量ppm(合計1125質量ppm)であった。前記ハニカム型触媒の構成を表1に示す。
また、前記ハニカム型触媒を用いて実施例1と同様に初期活性評価試験及び耐久性評価試験を実施した。評価結果を表2に示す。
【0066】
<実施例3>
前記硝酸パラジウムの水溶液の添加量を0.48gに変更した以外は、実施例1と同様にハニカム型触媒を調製した。Ptの担持量はハニカム担体1Lあたり70mg、Pdの担持量はハニカム担体1Lあたり30mgであった。Pt及びPdの担持量は、無機酸化物とゼオライトの合計質量に対して、それぞれ875質量ppmと375質量ppm(合計1250質量ppm)であった。XAFS分析により、PtとPdは合金を形成していることが確認された(Pt原子の周囲のPd原子の配位数:5.5)。前記ハニカム型触媒の構成を表1に示す。
また、前記ハニカム型触媒を用いて実施例1と同様に初期活性評価試験及び耐久性評価試験を実施した。評価結果を表2に示す。
【0067】
<実施例4>
前記硝酸パラジウムの水溶液の添加量を0.60gに変更した以外は、実施例1と同様にハニカム型触媒を調製した。Ptの担持量はハニカム担体1Lあたり70mg、Pdの担持量はハニカム担体1Lあたり40mgであった。Pt及びPdの担持量は、無機酸化物とゼオライトの合計質量に対して、それぞれ875質量ppmと500質量ppm(合計1375質量ppm)であった。前記ハニカム型触媒の構成を表1に示す。
また、前記ハニカム型触媒を用いて実施例1と同様に初期活性評価試験及び耐久性評価試験を実施した。評価結果を表2に示す。
【0068】
<実施例5>
前記硝酸パラジウムの水溶液の添加量を0.72gに変更した以外は、実施例1と同様にハニカム型触媒を調製した。Ptの担持量はハニカム担体1Lあたり70mg、Pdの担持量はハニカム担体1Lあたり50mgであった。Pt及びPdの担持量は、無機酸化物とゼオライトの合計質量に対して、それぞれ875質量ppmと625質量ppm(合計1500質量ppm)であった。前記ハニカム型触媒の構成を表1に示す。
また、前記ハニカム型触媒を用いて実施例1と同様に初期活性評価試験及び耐久性評価試験を実施した。評価結果を表2に示す。
【0069】
<実施例6>
前記硝酸パラジウムの水溶液の添加量を1.13gに変更した以外は、実施例1と同様にハニカム型触媒を調製した。Ptの担持量はハニカム担体1Lあたり70mg、Pdの担持量はハニカム担体1Lあたり70mgであった。Pt及びPdの担持量は、無機酸化物とゼオライトの合計質量に対して、それぞれ875質量ppmと875質量ppm(合計1750質量ppm)であった。前記ハニカム型触媒の構成を表1に示す。
また、前記ハニカム型触媒を用いて実施例1と同様に初期活性評価試験及び耐久性評価試験を実施した。評価結果を表2に示す。
【0070】
<実施例7>
前記硝酸パラジウムの水溶液の添加量を1.62gに変更した以外は、実施例1と同様にハニカム型触媒を調製した。Ptの担持量はハニカム担体1Lあたり70mg、Pdの担持量はハニカム担体1Lあたり100mgであった。Pt及びPdの担持量は、無機酸化物とゼオライトの合計質量に対して、それぞれ875質量ppmと1250質量ppm(合計2125質量ppm)であった。XAFS分析により、PtとPdは合金を形成していることが確認された(Pt原子の周囲のPd原子の配位数:4.2)。前記ハニカム型触媒の構成を表1に示す。
また、前記ハニカム型触媒を用いて実施例1と同様に初期活性評価試験及び耐久性評価試験を実施した。評価結果を表2に示す。
【0071】
<実施例8>
前記ジニトロジアミン白金の水溶液の添加量を1.08g、前記硝酸パラジウムの水溶液の添加量を0.49gにそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にハニカム型触媒を調製した。Ptの担持量はハニカム担体1Lあたり30mg、Pdの担持量はハニカム担体1Lあたり30mgであった。Pt及びPdの担持量は、無機酸化物とゼオライトの合計質量に対して、それぞれ375質量ppmと375質量ppm(合計750質量ppm)であった。XAFS分析により、PtとPdは合金を形成していることが確認された(Pt原子の周囲のPd原子の配位数:3.5)。前記ハニカム型触媒の構成を表1に示す。
また、前記ハニカム型触媒を用いて実施例1と同様に初期活性評価試験及び耐久性評価試験を実施した。評価結果を表2に示す。
【0072】
<実施例9>
無機酸化物として、CZ-08の代わりにγアルミナパウダー(商品名:CBパウダー、日揮ユニバーサル(株)製、平均粒径:10μm、比表面積:147m2/g)16.5g、を用いた以外は、実施例3と同様にハニカム型触媒を調製した。Ptの担持量はハニカム担体1Lあたり70mg、Pdの担持量はハニカム担体1Lあたり30mgであった。Pt及びPdの担持量は、無機酸化物とゼオライトの合計質量に対して、それぞれ875質量ppmと375質量ppm(合計1250質量ppm)であった。XAFS分析により、PtとPdは合金を形成していることが確認された(Pt原子の周囲のPd原子の配位数:4.6)。前記ハニカム型触媒の構成を表1に示す。
また、前記ハニカム型触媒を用いて実施例1と同様に初期活性評価試験及び耐久性評価試験を実施した。評価結果を表2に示す。
【0073】
<実施例10>
無機酸化物として、CZ-08の代わりにCBパウダー16.5gを用いた以外は、実施例8と同様にハニカム型触媒を調製した。Ptの担持量はハニカム担体1Lあたり30mg、Pdの担持量はハニカム担体1Lあたり30mgであった。Pt及びPdの担持量は、無機酸化物とゼオライトの合計質量に対して、それぞれ375質量ppmと375質量ppm(合計750質量ppm)であった。前記ハニカム型触媒の構成を表1に示す。
また、前記ハニカム型触媒を用いて実施例1と同様に初期活性評価試験及び耐久性評価試験を実施した。評価結果を表2に示す。
【0074】
<実施例11>
ゼオライトとして、Cu-βゼオライトの代わりにFe-βゼオライト(商品名:MB-2F、東ソー(株)製、平均粒径:3.6μm、Fe含有量:3.0質量%)を用いた以外は、実施例8と同様にハニカム型触媒を調製した。Ptの担持量はハニカム担体1Lあたり30mg、Pdの担持量はハニカム担体1Lあたり30mgであった。Pt及びPdの担持量は、無機酸化物とゼオライトの合計質量に対して、それぞれ375質量ppmと375質量ppm(合計750質量ppm)であった。前記ハニカム型触媒の構成を表1に示す。
また、前記ハニカム型触媒を用いて実施例1と同様に初期活性評価試験及び耐久性評価試験を実施した。評価結果を表2に示す。
【0075】
<比較例1>
脱イオン水65gに、ジニトロジアミン白金の水溶液(Pt濃度:4.5質量%)を2.5g加えた。その後、セリアジルコニアを含む粉末(CZ-08)を8.3g加え、約5時間撹拌した。得られたPt含有溶液を溶液Aとする。一方、脱イオン水65gに、硝酸パラジウムの水溶液(Pd濃度:10.0質量%)を0.48g加えた。その後、セリアジルコニアを含む粉末(CZ-08)を8.3g加え、約5時間撹拌した。得られたPd含有溶液を溶液Bとする。前記溶液Aと前記溶液Bを混合した後、バインダー成分であるスノーテックス-Cを202g加え、良く撹拌した。その後、Cu-βゼオライト粉末(Cu-TZB223L)を155.5g加えて良く撹拌し、スラリーを得た。前記スラリーを用いた以外は、実施例1と同様の方法にてハニカム担体1Lあたり105gの触媒層が担持されたハニカム型触媒を得た。
【0076】
Ptの担持量はハニカム担体1Lあたり70mg、Pdの担持量はハニカム担体1Lあたり30mgであった。Pt及びPdの担持量は、無機酸化物とゼオライトの合計質量に対して、それぞれ875質量ppmと375質量ppm(合計1250質量ppm)であった。本比較例ではPtとPdはセリアジルコニアにそれぞれ別に担持されているため、XAFS分析においてPtとPdの合金は確認されなかった(Pt原子の周囲のPd原子の配位数:0)。前記ハニカム型触媒の構成を表1に示す。
また、前記ハニカム型触媒を用いて実施例1と同様に初期活性評価試験及び耐久性評価試験を実施した。評価結果を表2に示す。
【0077】
<比較例2>
前記ジニトロジアミン白金の水溶液の添加量を1.08gに変更した以外は、比較例1と同様にハニカム型触媒を調製した。Ptの担持量はハニカム担体1Lあたり30mg、Pdの担持量はハニカム担体1Lあたり30mgであった。Pt及びPdの担持量は、無機酸化物とゼオライトの合計質量に対して、それぞれ375質量ppmと375質量ppm(合計750質量ppm)であった。本比較例ではPtとPdはセリアジルコニアにそれぞれ別に担持されているため、XAFS分析においてPtとPdの合金は確認されなかった(Pt原子の周囲のPd原子の配位数:0)。前記ハニカム型触媒の構成を表1に示す。
また、前記ハニカム型触媒を用いて実施例1と同様に初期活性評価試験及び耐久性評価試験を実施した。評価結果を表2に示す。
【0078】
<比較例3>
脱イオン水130gに、ジニトロジアミン白金の水溶液(Pt濃度:4.5質量%)を1.08g加えた。その後、セリアジルコニアを含む粉末(CZ-08)を16.5g加え、約5時間撹拌した。その後、バインダー成分であるスノーテックス-Cを202g加え、良く撹拌した。その後、Cu-βゼオライト粉末(Cu-TZB223L)を155.5g加えて良く撹拌し、スラリーを得た。前記スラリーを用いた以外は、実施例1と同様の方法にてハニカム担体1Lあたり105gの触媒層が担持されたハニカム型触媒を得た。Ptの担持量はハニカム担体1Lあたり30mgであった。Ptの担持量は、無機酸化物とゼオライトの合計質量に対して375質量ppmであった。前記ハニカム型触媒の構成を表1に示す。
また、前記ハニカム型触媒を用いて実施例1と同様に初期活性評価試験及び耐久性評価試験を実施した。評価結果を表2に示す。
【0079】
<比較例4>
前記ジニトロジアミン白金の水溶液の添加量を2.5gに変更した以外は、比較例3と同様にハニカム型触媒を調製した。Ptの担持量はハニカム担体1Lあたり70mgであった。Ptの担持量は、無機酸化物とゼオライトの合計質量に対して875質量ppmであった。前記ハニカム型触媒の構成を表1に示す。
また、前記ハニカム型触媒を用いて実施例1と同様に初期活性評価試験及び耐久性評価試験を実施した。評価結果を表2に示す。
【0080】
<比較例5>
前記ジニトロジアミン白金の水溶液の代わりに、硝酸パラジウムの水溶液(Pd濃度:10.0質量%)を0.48g添加した以外は、比較例3と同様にハニカム型触媒を調製した。Pdの担持量はハニカム担体1Lあたり30mgであった。Pdの担持量は、無機酸化物とゼオライトの合計質量に対して375質量ppmであった。前記ハニカム型触媒の構成を表1に示す。
また、前記ハニカム型触媒を用いて実施例1と同様に初期活性評価試験及び耐久性評価試験を実施した。評価結果を表2に示す。
【0081】
【0082】
【0083】
表2に示されるように、本発明に係る触媒を用いた実施例1~11では、水蒸気濃度が比較的高い雰囲気下においても、高いNH3分解率、並びに低いNOx生成率及びN2O生成率を維持しつつ、高い耐久性を示すことがわかる。
本発明は以下の実施態様を含む。
[1]排ガスに含まれるアンモニアを分解するアンモニア分解用触媒であって、
Pt及びPdを含む合金を担持した無機酸化物と、
ゼオライトと、
を含有するアンモニア分解用触媒。
[2]前記無機酸化物が、チタニア、ジルコニア、シリカ、アルミナ、及びセリアジルコニア複合酸化物又は固溶体から選択される一種以上である、[1]に記載のアンモニア分解用触媒。
[3]前記ゼオライトがβ型ゼオライトである、[1]又は[2]に記載のアンモニア分解用触媒。
[4]前記ゼオライトが銅イオン交換ゼオライトである、[1]~[3]のいずれかに記載のアンモニア分解用触媒。
[5]前記Ptと前記Pdとの質量比率(Pt/Pd)が0.1~10である、[1]~[4]のいずれかに記載のアンモニア分解用触媒。
[6][1]~[5]のいずれかに記載のアンモニア分解用触媒と、アンモニアを含む排ガスとを接触させて、アンモニアを分解する工程を含む、排ガスの処理方法。