(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】バイオ複合材料
(51)【国際特許分類】
D21H 17/02 20060101AFI20240523BHJP
D21J 1/00 20060101ALI20240523BHJP
C08L 1/02 20060101ALI20240523BHJP
C08L 97/00 20060101ALI20240523BHJP
C08L 101/16 20060101ALN20240523BHJP
【FI】
D21H17/02
D21J1/00
C08L1/02
C08L97/00
C08L101/16
(21)【出願番号】P 2021532830
(86)(22)【出願日】2019-12-13
(86)【国際出願番号】 SE2019051277
(87)【国際公開番号】W WO2020122805
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-11-17
(32)【優先日】2018-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】519058594
【氏名又は名称】オルガノクリック アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アイディン,ユハネス
【審査官】山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-162899(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0313039(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21H 11/00 - 27/42
D21J 1/00 - 7/00
B27N 3/00 - 3/28
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 - 101/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀類外皮及び/又はふすま由来のバイオ添加剤を含むバイオ複合材料を作製する方法であって、
(a)バイオ添加剤を提供するために、
前記穀類外皮又はふすまをアルカリ水溶
液と混合する工程と、
(b)前記バイオ添加剤をセルロースパルプの分散液と混合して、バイオ複合材を提供する工程と、
(c)前記バイオ複合材料を
、熱成形によ
り硬化させる工程と、
を含む方法。
【請求項2】
成形パルププロセス又は製紙プロセスを用いて前記バイオ複合材料を成形することを含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
工程(a)による前記バイオ添加剤の水溶性画分を収集し、工程(b)で
該水溶性画分を前記セルロースパルプの分散液と混合することを含む、請求項
1または
2に記載の方法。
【請求項4】
前記混合工程(a)における穀類外皮又はふすまと
アルカリ水溶液との
重量比が、少なくとも1:1~1:10
0である、請求項
1から
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記バイオ添加剤が、前記混合工程(b)における前記バイオ添加剤とセルロースパルプとの混合物の75%(重量)以
下である、請求項
1から
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記混合工程が、rpmが30,000rpm以
下での撹拌及び/又は均質化を含む、請求項
1から
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記穀類外皮又はふすまが、小麦ふすま及びえん麦外皮の少なくとも1つから選択される、請求項
1から
6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
工程(a)の前記
アルカリ水溶液が、少なくともNaOH0.5%(重量)を含む、請求項
1から
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程(a)及び工程(b)の少なくとも一方において添加剤を添加することを含む、請求項
1から
8のいずれか一項に記載の方法であって、前記添加剤が、カチオン化デンプン、AKD(アルキルケテンダイマー)、ASA(アルケニル無水コハク酸)、PLA(ポリ乳酸)、染料、填料、顔料、湿潤紙力増強剤、消泡剤、防腐剤、及びバイオサイドの少なくとも1つから選択される、方法。
【請求項10】
前記バイオ添加剤とセルロースパルプとの混合物を、乾燥繊維0.25~2
%(重量)のレベルに希釈する工程と、ふるい又はフィルタで前記混合物を収集する工程と、収集した該混合物を成形工程へと移す工程と、をさらに含む、請求項
1から
9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
請求項
1から
10のいずれか一項に記載の方法によって製造され
たバイオ複合材料で、
セルロース繊維と、穀物外皮又はふすま由来のバイオ添加剤とを含み、得られたバイオ複合材料が、同一重量の同じセルロース繊維を含むが前記バイオ添加剤を含まない対応する材料と少なくとも同じ強度を有し、前記強度が、ピークひずみ(%)、ピーク応力(MPa)、及びヤング率(MPa)の少なくとも1つとして測定される、バイオ複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、セルロース並びに小麦ふすま及び/又はえん麦外皮から作製されるバイオ複合材料、並びにこのような材料を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
小麦ふすま及びえん麦外皮又は殻は、将来的に持続可能な材料に使用される大きな可能性を有する、農産業由来の2つの興味深い安価な廃棄物材料である。最終製品の一部としての美的性質と共に、低価格であること及び入手しやすいことの両方が、該材料の魅力的な要素である。掲載論文における、非特許文献1において、小麦ふすまのさまざまな処理方法が分析・比較されている。水酸化ナトリウム及び硫酸の両方でヘミセルロースが可溶化されることが観察され、残りの画分はセルロース、リグニン、デンプン、脂肪及びタンパク質について分析された。しかしながら、好適な補強材料としての処理により得られる繊維の有用性の一般的な示唆を超えた、改良バイオ複合材料をどのように製造するかに関する特定のガイドラインは開示されていない。いくつかの文献において、単独で、又は複合板紙を作製するためのセルロース繊維への添加剤として有用なえん麦外皮が開示されている。特許文献1において、石灰で蒸解したえん麦外皮による箱用板紙が開示されている。特許文献2において、バインダーと共に圧縮した、未加工のえん麦外皮及び木材チップ、繊維又はストランドを含む板材が開示されている。特許文献3はまた、穀類ふすま、外皮又は殻から、結合剤を用いて熱可塑性加工工程で複合材を作製する方法を開示している。非特許文献2、特許文献4及び特許文献5において、製紙プロセスにおける填料としての穀類ふすま又はもみ殻の開示と共に、特定の強度パラメータの改善が報告されているが、ふすまが材料強度を改善するように加工された成形複合材料は開示されていない。特許文献6において、さまざまな形状を成形するのに有用な植物材料の熱可塑性プロセスが開示されている。したがって、従来の方法及び製紙プロセスで加工して、付加的な接着性バインダーなしにバインダーとして作用することができ、セルロース繊維単独の複合材料と比較して機械的特性の改善をもたらすセルロースと小麦ふすま及び/又はえん麦外皮との複合材料を提供することが残っている。本発明は、そのような方法、及び得られる成形バイオ複合材製品に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第675234号明細書
【文献】欧州特許第1967338号明細書
【文献】欧州特許第976790号明細書
【文献】米国特許出願公開第2018/0313039号明細書
【文献】特開平07-145592号公報
【文献】欧州特許第096790号明細書
【非特許文献】
【0004】
【文献】J.Renew Mater.Supplement、2017年6月、第63~73頁(A.Rahmanら)
【文献】Acta Sci Pol 2006、第5巻第175~184頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、高価な繊維の使用を減らし(コストを削減し)、機械的特性を向上又は少なくとも維持し、同時に、美的に優れた製品の外観を提供することにより、複合材料の改良をもたらすことである。
【0006】
本発明の目的は、パルプ産業及び製造業において従来通りであり、パルプ及び紙の製造のウェットエンドに適合する条件下及び方法で上記の改良を達成することである。
【0007】
本発明の目的は、化学的結合剤、又は接着剤の添加を用いることなく複合材料の改良を達成することである。
【0008】
本発明の目的はまた、パルプ及び紙の製造分野において公知の、現在使用されている化学薬品及び従来の手順との適合性を確保することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は一般に、バイオ複合材料及びこのような材料を製造する方法に関する。該方法は、木材からのセルロースパルプ又は繊維に添加するバイオ添加剤を(従来のプロセスで調製するように)調製するための、ふすま及び外皮又は殻の前処理工程を含む。
【0010】
本文脈におけるバイオ複合材料は、複合材料の通常の意味を有するが、複合材料とは、組み合わせると個々の成分の少なくとも1つとは異なる特性を有する材料が得られる、天然又はバイオ資源由来の、異なる物理的又は化学的特性を有する2つ以上の構成材料から作製される材料である。
【0011】
本発明の文脈において、ふすま及び外皮又は殻は、種子、果実又は野菜、特に穀類由来の外殻又は被覆物(穀粒の硬い外層であるふすまなど)の意味を有する。本発明で使用されるセルロースは、典型的には、木材、植物、並びに野菜、果実、藻類、真菌、細菌及び被嚢類の農業に由来する。
【0012】
第1の一般的な態様では、本発明は、セルロース繊維と、(好ましくは穀類の)外皮又はふすま由来のバイオ添加剤とを含むバイオ複合材料であって、同量の同じセルロース繊維を含むがバイオ添加剤を含まない対応する材料と少なくとも同じ強度を有し、任意の付加的なバインダーを含まず、強度がピークひずみ(%)、ピーク応力(%)及びヤング率(MPa)の少なくとも1つとして測定されるバイオ複合材料に関する。
【0013】
本文脈において、「任意の付加的なバインダーを含まない」という用語は、該バイオ複合材が、ブタジエンコポリマー、アクリレート、ビニルコポリマー(アクリル、スチレン化アクリル、ポリビニルアセテート、ビニルアクリル、エチレンビニルアセテート、スチレンブタジエン、ポリ塩化ビニル及びエチレン/塩化ビニル)、エポキシ、ポリエステル又はフェノール樹脂並びにイソシアネートなどの、複合材料の製造に従来用いられている任意の従来の化学薬品及び/又は接着剤を含まないことを意味する。したがって、当業者は、バインダーを含まないという用語に直ちに重要な意味を見出すであろう。好ましくは、この第1の態様では、バイオ複合材料は、小麦ふすま及びえん麦外皮の少なくとも1つに由来するバイオ添加剤を含む。好ましくは、バイオ複合材料は、75%(重量)以下、好ましくは5~50%(重量)のバイオ添加剤を含む。
【0014】
別の一般的な態様では、本発明は、穀類外皮及び/又はふすま由来のバイオ添加剤を含むバイオ複合材料を作製する方法に関する。この方法は、穀類ふすま及び/又は外皮の前処理に相当する工程によってバイオ添加剤を提供するために、外皮及び/又はふすまをアルカリ水溶液、すなわち少なくともpH7の水溶液と混合する工程と、続いて、バイオ添加剤をセルロースパルプの分散液と混合して、バイオ複合材の材料を提供する工程と、その後、バイオ複合材を成形する工程と、を含む。この方法において、アルカリ水溶液は、好ましくは少なくともNaOH0.5%(重量)、より好ましくはNaOH0.5~5%(重量)を含む。バイオ複合材の成形は、当該技術分野で従来用いられている、成形パルププロセス又は製紙プロセスで行うことができる。例えば、有用な成形パルププロセス(moulded pulp processes:MPP)は、国際成形繊維協会(International Molded Fiber Association:IMFA)によって「厚肉」、「移送成形」、「熱成形(薄肉)」、及び「加工」として分類されている。Packaging Technology and Scienceに掲載の、Didone,Mattia、Saxena,Prateek、Meijer,Ellen Brilhuis、Tosello,Guido、Bissacco,Giuliano、McAloone,Tim C.、Pigosso,Daniela Cristina Antelmi、Howard,Thomas J.による「Moulded Pulp Manufacturing:Overview and Prospects for the Process Technology」(論文へのリンクDOI:10.1002/pts.2289、公開日:2017)も参照。
【0015】
一態様では、上記で開示された方法は、熱成形工程を含む。
【0016】
一態様では、上記で開示された方法は、高温及び高圧で型内にてバイオ複合材料を圧縮し、それにより該バイオ複合材料を硬化させることをさらに含むことができる。例えば、材料内にさまざまな種類の結合を形成させることによる。
【0017】
本発明の方法の態様では、バイオ添加剤調製物の水溶性画分を収集し、該画分をセルロースパルプの分散液と混合することを含む。
【0018】
上述の方法の一態様では、混合工程における穀類外皮又はふすまとアルカリ水溶液との比は、少なくとも1:1~1:100、好ましくは1:3~1:20、最も好ましくは1:5~1:10である。好ましくは、混合工程は、rpmが30,000rpm以下での撹拌及び/又は均質化を含む。例えば、rpmは5,000~30,000の間であり得る。
【0019】
上述の方法の一態様において、穀類外皮又はふすまは、小麦ふすま及びえん麦外皮の少なくとも1つから選択される。
【0020】
該方法の一態様では、カチオン化デンプン、AKD(アルキルケテンダイマー)、ASA(アルケニル無水コハク酸)、PLA(ポリ乳酸)、染料、填料、顔料、湿潤紙力増強剤、消泡剤、防腐剤、バイオサイド、及び粘土、ワックス並びに類似の薬剤などの、パルプ産業で使用される他の従来の薬剤の少なくとも1つから選択される添加剤が添加される。先に開示された方法における、バイオ添加剤を提供する際の前処理工程、若しくはセルロース繊維とバイオ添加剤との混合工程、又は両方の工程でこのような添加剤を添加することができる。
【0021】
一態様において、バイオ複合材料を作製するための上記方法は、バイオ添加剤とセルロースパルプとの混合物を、乾燥繊維0.25~2%、好ましくは乾燥繊維1%のレベルに希釈する工程と、抄紙機で従来使用されている種類のふるい又はフィルタ若しくは織布で混合物を収集する工程と、収集した混合物を成形工程へと移す工程と、を含む。好ましくは、成形工程は前述のように熱成形である。この態様における希釈及び収集は、のようである。
【0022】
最後に、本発明は、上述の方法のいずれかにより製造される、開示される通りのバイオ複合材料に関する(言い換えると、プロダクト・バイ・プロセス)。
【発明を実施するための形態】
【0023】
発明の詳細な説明
以下、本発明の方法及び製品の詳細な説明を、本発明の実施形態と共に概説する。小麦ふすま及びえん麦外皮は、セルロース、リグニン、ヘミセルロース(キシラン及びアラビノキシラン)、フェルラ酸などのフェノール化合物、無機質及びタンパク質を含む。機械的及びアルカリ前処理により、ヘミセルロースの抽出が容易になり、本発明は、製造されるバイオ複合材の機械的特性の改善に寄与するバイオ添加剤としてのヘミセルロースの潜在力を活用する。前処理によりバイオ添加剤を調製するいくつかの異なる方法を試験し、異なるセルロース繊維も調査した。全ての実験を以下の表に要約する。
【0024】
異なる前処理
対照:PTI社(オーストリア)粉砕機を用いて、水道水2L中でケミ・サーモ・メカニカル・パルプ(Chemi thermomechanical pulp:CTMP)25gを30,000rpmにて粉砕した。Rapid Kothenを使用してハンドシートを作製した。成形後、湿ったハンドシートを10トンの圧力で5分間プレスし、95℃で10分間乾燥させた。最終オーブン乾燥170℃5分間。機械的特性は、Testometric社M25-2.5ATを使用して測定した。
【0025】
前処理:Lantmannenからの小麦ふすまの前処理を、以下の表に従って行った。小麦ふすま5gを表1の異なる化学薬品を含有する水35gと混合するために、IKA社Ultra Turraxを使用した。混合時間は30分であり、速度は2つの異なるレベルに調整した。混合が完了した後、該小麦ふすまをCTMPパルプに添加した。CTMPを25ではなく20g使用したことを除き、対照と全く同じ方法でハンドシートを製造した。
【0026】
【0027】
【0028】
機械的撹拌なしで、前処理なしの小麦ふすまについて、強度の増加は観察されなかった(表2 a)。しかし、繊維と小麦ふすまとの適合性は良好であり、繊維使用量の減少は約20%であった。添加剤なしの小麦ふすまは機械的混合のみで強度が増加した(表2 b及びc)。混合を激しくすると、ハンドシートの強度はより大きくなった。水酸化ナトリウム(0.5%)により前処理すると、中性条件と比較して強度はより大きくなった。ここでも、混合量は強度に影響を及ぼした。混合を激しくすると、より強いハンドシートが得られた(表2 d、e及びf)。酸前処理は最終強度に影響を及ぼさなかった(表2 h及びj)。1つの実験(表2 j-1及びj-2)では、0.5%水酸化ナトリウム前処理後の溶液から粒子を分離した。固体画分と水溶性画分の両方からハンドシートを作製した。強度増加の大部分が、小麦ふすま前処理による溶解物質に起因することは明らかである(表2 j-1)。アラビノキシランなどのヘミセルロースが、おそらく前処理中に小麦ふすまから抽出され、これらの多糖類が製紙中に「ウェットエンド」のセルロース繊維に吸着することで、製造されたハンドシートの機械的特性が改善される。水酸化ナトリウム濃度の違いは、ハンドシート強度に大きな影響を及ぼさなかった(表2 k、l及びm)。
【0029】
異なる繊維
小麦ふすまを0.5%NaOHで処理した。7:1の水-小麦ふすま比を使用した。混合は、IKA社Ultra Turraxを用いて20,000rpmで30分間行った。この前処理済み小麦ふすま40gを、以下の表3に従うさまざまなパルプ20gと混合した。上の段落に記載の通りハンドシートを製造した。前処理済み小麦ふすまと共に、パルプ20gを水道水2L中で30,000rpmにて粉砕した。Rapid Kothenを使用してハンドシートを作製した。成形後、湿ったハンドシートを10トンの圧力で5分間プレスし、95℃で10分間乾燥させた。最終オーブン乾燥170℃5分間。小麦ふすまなしの対照として25gのパルプを使用した。
【0030】
【0031】
前処理済み小麦ふすま及び異なる添加剤
以下の表(表4)には、「ウェットエンド」で添加されたさまざまな添加剤が、CTMPパルプ及び前処理済み小麦ふすまと共に最終複合材料にどのように影響するかが記載されている。カチオン化デンプンは、小麦ふすま対照と比較して機械的特性をさらに改善させる。エマルジョンとして添加したAKDも強度を増加させ、疎水性を劇的に向上させ、20未満のコッブ値(60秒)をもたらした。室温で2ヶ月間保存した防腐剤含有の古い小麦ふすまでは、新たに調製した前処理済み小麦ふすまと比較して、強度増加が小さかった。この理由は、強度増加をもたらす多糖類が、経時的に分解されるためである可能性がある。配合物中の消泡剤(Dispelair CF56)により、製造されたハンドシートの強度は低下する。
【0032】
【0033】
異なる濃度の前処理済み小麦ふすま及びCTMPパルプ。
異なる量の前処理済み小麦ふすまを、以下の表5に示す実験で使用した。小麦ふすまは、0.5%の水酸化ナトリウム濃度で、IKA社Ultra Turraxを使用して17,000rpmで30分間均質化することによる標準的な方法で前処理した。この前処理済み小麦ふすまバッチを、以下の表に従って異なる量でCTMPと共に使用した。最大50%の小麦ふすまで強度増加が観察される。その後、強度が低下する。小麦ふすまの量が多いほど、発泡も多くなる。小麦ふすま分率が高すぎる(99%)と、材料が弱くなりすぎ、最終的なハンドシートが破れることなく抄紙ワイヤから取り外すことができなかった。製造されたハンドシート重量の減少も観察された。これは、セルロース繊維に吸着しない可溶性生成物の量が増加することに起因する。
【0034】
【0035】
前処理済みえん麦外皮粉末及びシラカバクラフトパルプ複合材の成形。
えん麦外皮の前処理を、小麦ふすまの前処理と同様の方法で実施した。粉砕した微粉状えん麦外皮を0.75%NaOH中で水固形分比8:1にて混合し、バイオ添加剤を調製した。使用前にえん麦外皮を粉砕してえん麦粉末としたが、Ultra Turraxを使用して30分間混合して使用することもできる。このスラリー12.5g(乾燥重量)をシラカバパルプ12.5gと混合し、前の段落に記載の通り粉砕した。ハンドシートを記載の通り製造し、機械的特性を測定した。以下の表6及び7には、各サンプルの成分が記載されている。えん麦粉末の使用中に発泡が観察された。そのため、これらの実施例では、市販の消泡剤を使用した。
【0036】
【0037】
【0038】
前処理済みえん麦外皮粉末を50%使用すると、表5の強度増加が観察される。
【0039】
結論として、本明細書に記載の発明は、小麦ふすま及び/又はえん麦外皮とセルロースとをベースにしたバイオ複合材料である。繊維使用量の減少によるコスト削減に加え、さまざまな前処理、特にアルカリ前処理によって向上した機械的特性を得ることができる。