(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】プリン誘導体を調製するための方法
(51)【国際特許分類】
C07D 473/16 20060101AFI20240523BHJP
C07C 213/00 20060101ALI20240523BHJP
C07C 215/08 20060101ALI20240523BHJP
A61K 31/52 20060101ALN20240523BHJP
A61P 9/00 20060101ALN20240523BHJP
A61P 11/00 20060101ALN20240523BHJP
A61P 13/12 20060101ALN20240523BHJP
A61P 25/00 20060101ALN20240523BHJP
A61P 25/18 20060101ALN20240523BHJP
A61P 27/02 20060101ALN20240523BHJP
A61P 29/00 20060101ALN20240523BHJP
A61P 31/12 20060101ALN20240523BHJP
A61P 35/00 20060101ALN20240523BHJP
A61P 37/02 20060101ALN20240523BHJP
A61P 43/00 20060101ALN20240523BHJP
【FI】
C07D473/16 CSP
C07C213/00
C07C215/08
A61K31/52
A61P9/00
A61P11/00
A61P13/12
A61P25/00
A61P25/18
A61P27/02
A61P29/00
A61P31/12
A61P35/00
A61P37/02
A61P43/00 111
(21)【出願番号】P 2022122616
(22)【出願日】2022-08-01
(62)【分割の表示】P 2019538384の分割
【原出願日】2018-01-25
【審査請求日】2022-08-29
(32)【優先日】2017-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2017-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2017-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2017-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】506138030
【氏名又は名称】サイクラセル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【氏名又は名称】園元 修一
(72)【発明者】
【氏名】スケード ベン
(72)【発明者】
【氏名】ウェストウッド ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ロンデスボロー デレク
(72)【発明者】
【氏名】ノーザン ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】アサートン クリス
【審査官】鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-518041(JP,A)
【文献】特許第7122759(JP,B2)
【文献】特表2010-523534(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
C07C
CAplus/REGISTRY/CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物[1]の結晶性L-酒石酸塩を調製するための方法であって、前記方法が、エタノール中の化合物[1]の溶液を還流するステップ、及びそれに水とエタノールの混合物中のL-酒石酸の溶液を滴下するステップを含み、L-酒石酸溶液を添加後の最終混合物中のエタノール:水の比が、少なくとも15:1である、前記方法。
【化1】
【請求項2】
L-酒石酸溶液を添加後の最終混合物中のエタノール:水の比が、37.5:1である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
L-酒石酸溶液の添加の間中温度を75~78℃に維持することを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
混合物をポリッシュろ過し、ろ液を60~65℃の温度に加温し、結晶性[1]-L-酒石酸II型の種を加えるステップをさらに含む、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
種を入れたろ液を60~65℃の温度で少なくとも1時間撹拌することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
混合物を15~20℃の温度に冷却し、その温度で少なくとも1時間撹拌して、化合物[1]-L-酒石酸の結晶化を誘導するステップをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
冷却速度が、5~10℃/時である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
化合物[1]-L-酒石酸をろ過し、エタノールで洗浄し、真空乾燥する、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
式[IV]又は[III]の化合物を調製するための方法であって、
【化2】
式中:
R
1’が、アルキル又はハロアルキルであり;
R
3’が、アルキル、ハロアルキル又はアリールであり;及び
PGが、保護基であり;
前記方法が、
(a’)式[V]の化合物を、THFを含む溶媒中の(S)-2-Me-CBS-オキサザボロリジン及びボラン-N,N-ジエチルアニリン錯体で処理して、式[IV]の化合物を形成するステップ;及び
(b’)任意選択で前記式[IV]の化合物から保護基PGを除去して、式[III]の化合物を生じるステップ
を含む、前記方法。
【請求項10】
(S)-2-Me-CBS-オキサザボロリジンが、トルエン溶液である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(a’)が、(i)ボラン-N,N-ジエチルアニリン錯体を、THF中の(S)-2-Me-CBS-オキサザボロリジンの混合物に滴下すること;及び(ii)THF中の式[V]の化合物を、ステップ(i)で形成される混合物に滴下すること
を含む、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(ii)で形成される混合物を室温で少なくとも12時間撹拌することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(a’)が、式[IV]の化合物をヘプタンから結晶化することをさらに含む、請求項9~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
ステップ(b’)が、式[IV]の化合物をメタノール中のガス状HClで処理し、真空濃縮し、酢酸エチルに溶解し、次いでNH
3を注入することを含む、請求項9~13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
【化3】
(a’)化合物[5]を、THFを含む溶媒中の(S)-2-Me-CBS-オキサザボロリジン及びボラン-N,N-ジエチルアニリン錯体で処理して、化合物[4]を形成するステップ;及び
(b’)任意選択で前記化合物[4]から保護基PGを除去して、化合物[3]を生じるステップ
を含む、請求項9~14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
化合物[3]が、少なくとも85%のジアステレオマー過剰率を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
化合物[4]が、少なくとも85%のジアステレオマー過剰率を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
式[6]の化合物。
【化4】
【請求項19】
請求項1で定義される式[1]の化合物の調製における中間体としての、請求項18で定義される式[6]の化合物の使用。
【請求項20】
【化5】
(i)化合物[6]をHF、ピリジン及び
tBuONOで処理して、化合物[7]を形成するステップ;及び(ii)前記化合物[7]をDMSO及びK
2CO
3中の臭化イソプロピルで処理して、化合物[2]を形成するステップ
により化合物[2]を調製するための方法。
【請求項21】
化合物[1]を調製するための方法であって、
(i)請求項20に記載の式[6]の化合物から化合物[2]を調製するステップ;及び
(ii)化合物[2]を、化合物[3]と反応させて、化合物[1]を形成するステップを含み、
【化6】
ステップ(ii)は、
(ii)(a) (a)式[2]の化合物、(b)式[3]の化合物、及び(c)1,2-プロパンジオール又はポリエチレングリコール、又はそれらの混合物を含む反応混合物を形成するステップ;
(ii)(b) 前記反応混合物を少なくとも150℃の温度に加熱して、式[1]の化合物を形成するステップ;
(ii)(c) 前記式[1]の化合物を単離するステップ;及び
(ii)(d) 任意選択で前記式[1]の化合物を塩の形態に変換するステップ
のステップを含む方法による、
前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリン誘導体、並びにそれに関連する中間体及び誘導体を調製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CDK阻害活性を示すプリン誘導体が、国際公開第2008/122767号パンフレット(Cyclacel Limited社;Cancer Research Technology Limited社)で開示されている。例として、化学名(2R、3S)-3-(6-((4,6-ジメチルピリジン-3-イルメチルアミノ)-9-イソプロピル-9H-プリン-2-イルアミノ)ペンタン-2-オールを有する化合物[1]は、強いCDK阻害活性を示し、したがって、増殖性疾患、免疫介在性及び炎症性疾患、自己免疫性及び自己免疫介在性疾患、腎障害、心血管障害、眼科疾患、神経変性疾患、精神障害、ウイルス性疾患、代謝障害並びに呼吸器疾患の治療で、潜在的な治療上の利用法を有することが報告されている。
【0003】
【0004】
有利なことに、化合物[1]は、様々な細胞株の範囲の細胞毒性研究で驚くほど高い効力を示す。
【0005】
化合物[1]の合成による調整は、最初に国際公開第2008/122767号パンフレットに記載された。反応スキームを
図1に示す。調製は、フルオロ-置換プリン誘導体[2]を合成すること、及び(2R,3S)-3-アミノペンタン-2-オール、[3]とカップリングすることを含む。カップリング反応は、DMSO及びDIEAの存在下の
nBuOHで実施された。反応には、加熱140℃の温度で72時間の加熱が必要であり、所望の生成物の収率はわずか12%であった。中間体化合物[3]を(S)-2-(トリチル-アミノ)-ブタン-1-オールのスワーン酸化(Swern oxidation)、及びその
後のMeLi及びCuBr.SMe
2を用いる還元により調製した。次いで、得られる中間体をTFAで処理して、化合物[3]を得た。しかし、MeLi/CuBr.SMe
2還元ステップは、立体選択性が不十分であり、75%のみのジアステレオマー過剰率(d.e, diastereomeric excess)を有する生成物を生じた。
【0006】
カップリングステップの代替条件は、
図2に示すように国際公開第2011/089401号パンフレット(Cyclacel Limited社)で開示された。これらの代替条件は、化合物[2]が、DIEA及びエチレングリコール中で化合物[3]と125℃の温度で48時間反応することを含む。この結果、粗化合物[1]の収率に顕著な改善(国際公開第2008/122767号パンフレットでは12%に比べ59%)が見られ、これは、次いで
MTBEから結晶化して、全収率49.4%が得られた。次いで、エタノール/水混合物から再結晶することにより、結晶性遊離塩基材料を結晶性L-酒石酸塩(II型(Form II)
;E型(Form E)とも呼ばれる)に収率72%で変換した。
【0007】
本発明は、CDK阻害剤用の代替となる、合成による調整、例えば化合物[1]、並びにそれに関連する中間体及び誘導体を提供することを目指す。より具体的には、これに限定されないが、本発明は、スケールアップに適した合成経路、及び/又は収率の向上、純度の改善、立体選択性の改善、調製のしやすさの改善、反応時間の短縮、副生物の減量/減少、及び/又は必要な試薬量の低減の1又は2以上を生じる合成経路を提供することを目指す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2008/122767号パンフレット(WO2008/122767)
【文献】国際公開第2011/089401号パンフレット(WO2011/089401)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一の態様は、式[I]の化合物を調製するための方法に関し、
【0010】
【0011】
式中:
R1及びR2が、それぞれ独立にH、アルキル又はハロアルキルであり;
R3及びR4が、それぞれ独立にH、アルキル、ハロアルキル又はアリールであり;
R5が、アルキル、アルケニル、シクロアルキル又はシクロアルキル-アルキルであり、それらの各々が、任意選択で1又は2以上のOH基と置換されていてもよく;
R6が、シクロプロピルアミノ、シクロプロピルメチルアミノ、シクロブチルアミノ、シクロブチルメチルアミノ及び
【0012】
【0013】
から選択され、X、Y及びZの1つが、Nであり、残りが、CR9であり;
R7、R8及び各R9が、独立にH、アルキル又はハロアルキルであり、R7、R8及び
各R9の少なくとも1つが、H以外であり;
前記方法が、
(i)(a)式[II]の化合物、(b)式[III]の化合物及び(c)1,2-プロパン
ジオール又はポリエチレングリコール、又はそれらの混合物を含む反応混合物を形成するステップ;
(ii)前記反応混合物を少なくとも約150℃の温度に加熱して、式[I]の化合物を形成するステップ;
(iii)前記式[I]の化合物を単離するステップ;及び
(iv)任意選択で前記式[I]の化合物を塩の形態に変換するステップ
を含む。
【0014】
有利なことに、本出願人は、上記のカップリング条件により、顕著な収率の改善が生じることを示した。例えば、化合物[1](以下に示す構造)では、ステップ(i)で1,2-プロパンジオールを使用して、結晶性遊離塩基の全収率は、国際公開第2011/089401号パンフレットの59%と比較して約79%である。
【0015】
本発明の第二の態様は、化合物[1]の結晶性L-酒石酸塩を調製するための方法に関し、前記方法は、エタノール中の化合物[1]の溶液を還流するステップ、及びそれに水とエタノールの混合物中のL-酒石酸の溶液を滴下するステップを含み、L-酒石酸溶液を添加後の最終混合物中のエタノール:水の比は、少なくとも約15:1である。
【0016】
【0017】
有利なことに、本出願人は、結晶化ステップにおいて水に比べてエタノールの割合を高めると、当該技術分野で開示される収率に比べて化合物[1]の結晶性酒石酸塩の収率に顕著な改善がみられることを示した(国際公開第2011/089401号パンフレットの実施例5.5の72%と比較して約87%)。
【0018】
本発明の第三の態様は、式[IV]又は[III]の化合物を調製するための方法に関し:
【0019】
【0020】
式中:
R1’は、アルキル又はハロアルキルであり;
R3’は、アルキル、ハロアルキル又はアリールであり;及び
PGは、保護基であり;
前記方法は、
(a’)式[V]の化合物をTHFを含む溶媒中の(S)-2-Me-CBS-オキサザボロリジン及びボラン-N,N-ジエチルアニリン錯体で処理して、式[IV]の化合物を形成するステップ;及び
(b’)任意選択で保護基PG(protecting group,PG)を前記式[IV]の化合物から
除去して、式[III]の化合物を生じるステップ
を含む。
【0021】
有利なことに、本出願人は、上記の条件により、高いジアステレオ選択の減少が生じ、得られる中間体は非常に高いジアステレオマー過剰率(約99%)を有することを示した。このジアステレオマー過剰率は、従来技法による中間体の調製で観察されるレベルをはるかに超えている;例えば、国際公開第2003/002565号パンフレット(Cyclacel Limited社)又は国際公開第2008/122767号パンフレット(Cyclacel Limited社;Cancer Research Technology Limited社)を参照のこと。
【0022】
本発明の第四の態様は、
【0023】
【0024】
(i)式[VI]の化合物をHF、ピリジン及びtBuONOで処理して、式[VII]の化
合物を形成するステップ;及び
(ii)前記式[VII]の化合物をDMSO及びK2CO3中のR5Br(R5Br in DMSO and K2CO3)で処理して、式[II]の化合物を形成するステップ;
により、式[II]の化合物を調製するための方法に関し、R5及びR6は、本発明の第一の態様のために上記で定義したとおりである。
【0025】
本発明の第五の態様は、
【0026】
【0027】
(i)化合物[6]をHF、ピリジン及びtBuONOで処理して、化合物[7]を形成するステップ;及び
(ii)前記化合物[7]をDMSO及びK2CO3中の臭化イソプロピルで処理して、化合物[2]を形成するステップ
により化合物[2]を調製するための方法に関する。
【0028】
本発明の第六の態様は、化合物[6]に関する。
【0029】
【0030】
本発明の第七の態様は、化合物[1]の調製における中間体としての使用のための化合物[6]に関する。
【0031】
本発明の第八の態様は、化合物[1]を調製するための方法に関し、前記方法は、
(i)化合物[2]を上記の式[6]の化合物から調製するステップ;及び
(ii)化合物[2]を上記の化合物[3]と反応させて、化合物[1]を形成するステップ
を含む。
【発明を実施するための形態】
【0032】
式[I]の化合物を調製するための方法
本発明は、一般式[I]の化合物、及び特に、特定の化合物[1]の合成のための新しい手順を提供する。実例として、本出願人は、高純度中間体[2]の使用が、化合物[1]-L-酒石酸塩の目標の仕様を得るための十分な純度の遊離塩基化合物[1]を得るために重要であることを示した。化合物[1]の遊離塩基の結晶化は、手順に種添加を含め
た後に達成される。化合物[1]-L-酒石酸塩を生じる最終段階の全収率を改善するために、酒石酸塩形成/結晶化も、従来技術条件に対して修正を加えることに成功した。
【0033】
記載するように、本発明の第一の態様は、式[I]の化合物を調製するための方法に関し、前記方法は、
(i)(a)式[II]の化合物、(b)式[III]の化合物及び(c)1,2-プロパン
ジオール又はポリエチレングリコール、又はそれらの混合物を含む反応混合物を形成するステップ;
(ii)前記反応混合物を少なくとも約150℃の温度に加熱して、式[I]の化合物を形成するステップ;
(iii)前記式[I]の化合物を単離するステップ;及び
(iv)任意選択で前記式[I]の化合物を塩の形態に変換するステップ
を含む。
【0034】
好ましい一実施形態では、ステップ(i)の反応混合物は、塩基、より好ましくは第三級脂肪族アミン塩基を任意選択でさらに含む。より好ましくは、塩基は、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA,diisopropylethylamine)、トリ-Nプロピルアミン
、及びトリ-Nブチルアミンから選択される。さらにより好ましくは、塩基は、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)である。
【0035】
好ましくは、反応混合物が塩基を含む場合は、塩基は、式[II]の化合物に対して少なくとも約2モル当量、より好ましくは、式[II]の化合物に対して約2~約6モル当量、より好ましくは、式[II]の化合物に対して約2~約4モル当量の量で存在する。好ましい一実施形態では、塩基は、式[II]の化合物に対して約2モル当量の量で存在する。別の好ましい実施形態では、塩基は、式[II]の化合物に対して約3モル当量の量で存在する。別の好ましい実施形態では、塩基は、式[II]の化合物に対して約4モル当量の量で存在する。別の実施形態では、塩基は欠如している。
【0036】
好ましい一実施形態では、ステップ(i)は、(a)式[II]の化合物、(b)式[III]の化合物、(c)1,2-プロパンジオール、及び(d)塩基、好ましくはDIEA
を含む反応混合物を形成するステップを含む。
【0037】
別の好ましい実施形態では、ステップ(i)は、(a)式[II]の化合物、(b)式[III]の化合物、及び(c)1,2-プロパンジオールを含む反応混合物を形成するステ
ップを含む。
【0038】
別の好ましい実施形態では、ステップ(i)は、(a)式[II]の化合物、(b)式[III]の化合物、(c)ポリエチレングリコール、及び(d)塩基、好ましくはDIEA
を含む反応混合物を形成するステップを含む。
【0039】
別の好ましい実施形態では、ステップ(i)は、(a)式[II]の化合物、(b)式[III]の化合物、及び(c)ポリエチレングリコールを含む反応混合物を形成するステッ
プを含む。
【0040】
好ましくは、ポリエチレングリコールは、液体ポリエチレングリコールである。当業者は、様々な形態のポリエチレングリコールに精通しているであろう。より好ましくは、ポリエチレングリコールは、PEG-200又はPEG-400、より好ましくはPEG-200である。PEG-200及びPEG-400並びに類似のそのような液体ポリエチレングリコールを、市販供給源から得ることができる(例えば、Sigma Aldrich社;Dow社、商品名CARBOWAX(商標))。
【0041】
好ましい一実施形態では、R1及びR2の1つは、Hであり、他は、アルキルである。
【0042】
より好ましくは、R1及びR2の1つは、Hであり、他は、メチル、エチル又はイソプロピルである。
【0043】
さらにより好ましくは、R1は、エチルであり、R2は、Hである。
【0044】
好ましい一実施形態では、R3及びR4は、それぞれ独立にH、アルキル、ハロアルキル又はアリールであり、R3及びR4の少なくとも1つは、H以外である。
【0045】
好ましい一実施形態では、R3及びR4の1つは、Hであり、他は、アルキル又はハロアルキルである。
【0046】
好ましい一実施形態では、R3は、Hであり、R4は、アルキル又はハロアルキルである。
【0047】
好ましい一実施形態では、R3は、Hであり、R4は、メチルである。
【0048】
好ましい一実施形態では、R6は、
【0049】
【0050】
である。
【0051】
好ましい一実施形態では、Yは、Nである。好ましくは、この実施形態では:
Xは、CHであり、Zは、C-Meであり、R7は、Hであり、R8は、Meであり;又は
Xは、CHであり、Zは、C-Meであり、R7及びR8は、どちらもHであり;又は
Xは、CHであり、Zは、C-CF3であり、R7及びR8は、どちらもHである。
【0052】
別の好ましい実施形態では、Xは、Nである。好ましくは、この実施形態では:
Yは、C-Meであり、Zは、CHであり、R7及びR8は、どちらもHであり;又は
Y及びZは、CHであり、R7は、Hであり、R8は、Meである。
【0053】
別の好ましい実施形態ではZは、Nである。好ましくは、この実施形態では、Xは、CHであり、Yは、C-Meであり、R7は、Meであり、R8は、Hである。
【0054】
別の好ましい実施形態では、R6は、シクロプロピルアミノ、シクロプロピルメチルアミノ、シクロブチルアミノ又はシクロブチルメチルアミノである。
【0055】
好ましい一実施形態では、R5は、イソプロピル又はイソプロペニル、より好ましくは、イソプロピルである。
【0056】
非常に好ましい一実施形態では、式[I]の化合物は、以下の
【0057】
【0058】
から選択される。
【0059】
好ましい一実施形態では:
一般式[I]の化合物は、化合物[1]であり;
一般式[II]の化合物は、化合物[2]であり;及び
一般式[III]の化合物は、化合物[3]であり;
すなわち、本発明は、
【0060】
【0061】
(i)(a)式[2]の化合物、(b)式[3]の化合物及び(c)1,2-プロパンジオール又はポリエチレングリコール、又はそれらの混合物を含む反応混合物を形成するステップ;
(ii)前記反応混合物を少なくとも約150℃の温度に加熱して、式[1]の化合物を形成するステップ;
(iii)前記式[1]の化合物を単離するステップ;及び
(iv)任意選択で前記式[1]の化合物を塩の形態に変換するステップ
を含む方法に関する。
【0062】
好ましい一実施形態では、ステップ(i)の反応混合物は、塩基、好ましくは、第三級脂肪族アミン塩基を任意選択でさらに含む。より好ましくは、塩基は、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)、トリ-Nプロピルアミン、及びトリ-Nブチルアミンから選択される。さらにより好ましくは、塩基は、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)である。
【0063】
好ましくは、反応混合物が塩基を含む場合、塩基は、式[2]の化合物に対して少なくとも約2モル当量、より好ましくは、式[2]の化合物に対して約2~約6モル当量、より好ましくは、式[2]の化合物に対して約2~約4モル当量の量で存在する。好ましい一実施形態では、塩基は、式[2]の化合物に対して約2モル当量の量で存在する。別の好ましい実施形態では、塩基は、式[2]の化合物に対して約3モル当量の量で存在する。別の好ましい実施形態では、塩基は、式[2]の化合物に対して約4モル当量の量で存在する。
【0064】
好ましい一実施形態では、ステップ(i)は、(a)式[2]の化合物、(b)式[3]の化合物、(c)1,2-プロパンジオール、及び(d)塩基、好ましくはDIEAを含む反応混合物を形成するステップを含む。
【0065】
別の好ましい実施形態では、ステップ(i)は、(a)式[2]の化合物、(b)式[3]の化合物、及び(c)1,2-プロパンジオールを含む反応混合物を形成するステップを含む。
【0066】
別の好ましい実施形態では、ステップ(i)は、(a)式[2]の化合物、(b)式[3]の化合物、(c)ポリエチレングリコール、及び(d)塩基、好ましくはDIEAを含む反応混合物を形成するステップを含む。好ましくは、ポリエチレングリコールは、PEG-200又はPEG-400、より好ましくは、PEG-200である。
【0067】
別の好ましい実施形態では、ステップ(i)は、(a)式[2]の化合物、(b)式[3]の化合物、及び(c)ポリエチレングリコールを含む反応混合物を形成するステップを含む。好ましくは、ポリエチレングリコールは、PEG-200又はPEG-400、より好ましくは、PEG-200である。
【0068】
好ましい一実施形態では、反応混合物は、約150℃~約180℃、より好ましくは約150℃~約170℃、より好ましくは約150℃~約160℃、さらにより好ましくは約150℃~約155℃の温度に加熱される。
【0069】
さらにより好ましくは、反応混合物は、約150℃の温度に加熱される。
【0070】
別の好ましい実施形態では、反応混合物は、少なくとも48時間加熱される。より好ましい実施形態では、反応混合物は、少なくとも24時間加熱される。別の好ましい実施形態では、反応混合物は、少なくとも12時間加熱される。別の好ましい実施形態では、反応混合物は、少なくとも72時間加熱される。非常に好ましい一実施形態では、反応混合物は、約24時間加熱される。非常に好ましい別の実施形態では、反応混合物は、約48時間加熱される。別の非常に好ましい実施形態では、反応混合物は、約72時間加熱され
る。
【0071】
別の好ましい実施形態では、反応混合物は、約24~約96時間、より好ましくは、約24~約72時間、又は約24~約48時間加熱される。別の好ましい実施形態では、反応混合物は、約48~約96時間、より好ましくは、約48~約72時間加熱される。
【0072】
好ましい一実施形態では、1,2-プロパンジオール又はポリエチレングリコールは、式[II]の化合物(又は式[2])に対して少なくとも約2容積当量、より好ましくは、式[II]の化合物(又は式[2])に対して約2~約20容積当量、より好ましくは、式[II]の化合物(又は式[2])に対して約2~約10容積当量の量で存在する。好ましい一実施形態では、塩基は、式[II]の化合物(又は式[2])に対して約5~約10容積当量の量で存在する。別の好ましい実施形態では、塩基は、式[II]の化合物(又は式[2])に対して約5容積当量の量で存在する。好ましい一実施形態では、塩基は、式[II]の化合物(又は式[2])に対して約9当量の量で存在する。
【0073】
有利なことに、本方法では、当該技術分野で記載される方法と比較して、化合物[II]に対して少ないモル当量の式[III]の化合物が使用される(化合物[1]の調製で5.
7当量の化合物[3]を必要とする国際公開第2008/122767号パンフレット、及び3.5当量を必要とする国際公開第2011/089401号パンフレットを参照のこと)。これは、試薬の使用の最小化及び精製の容易さ、並びにスケールアップ時の経済的理由の点で有益である。
【0074】
したがって、好ましい一実施形態では、反応混合物は、化合物[II]に対して約2~約3モル当量の化合物[III]を含む。より好ましくは、反応混合物は、化合物[II]に対
して約2~約2.5又は約2~約2.2モル当量の化合物[III]を含む。さらにより好
ましくは、反応混合物は、化合物[II]に対して約2モル当量の化合物[III]を含む。
【0075】
特に好ましい一実施形態では、化合物[1]の調製の状況で、反応混合物は、化合物[2]に対して約2~約3モル当量の化合物[3]を含む。より好ましくは、反応混合物は、化合物[2]に対して約2~約2.5又は約2~約2.2モル当量の化合物[3]を含む。さらにより好ましくは、反応混合物は、化合物[2]に対して約2モル当量の化合物[3]を含む。
【0076】
非常に好ましい一実施形態では、方法は、(a)式[II]の化合物、(b)式[III]
の化合物(2当量)、(c)1,2-プロパンジオール(5容量)、及び(d)DIEA(4当量)を含む反応混合物を形成するステップ、並びに前記反応混合物を約150℃の温度に約72時間加熱するステップを含む。別の好ましい一実施形態では、DIEAは省く。
【0077】
非常に好ましい一実施形態では、方法は、(a)式[II]の化合物、(b)式[III]
の化合物(2当量)、(c)ポリエチレングリコール、好ましくは、PEG-400又はPEG-200(5容量)、及び(d)DIEA(4当量)を含む反応混合物を形成するステップ、並びに前記反応混合物を約150℃の温度に約72時間加熱するステップを含む。別の好ましい一実施形態では、DIEAは省く。
【0078】
非常に好ましい一実施形態では、方法は、(a)式[2]の化合物、(b)式[3]の化合物(2当量)、(c)1,2-プロパンジオール(5容量)、及び(d)DIEA(4当量)を含む反応混合物を形成するステップ、並びに前記反応混合物を約150℃の温度に約72時間加熱するステップを含む。別の好ましい一実施形態では、DIEAは省く。
【0079】
非常に好ましい一実施形態では、方法は、(a)式[2]の化合物、(b)式[3]の化合物(2当量)、(c)ポリエチレングリコール、好ましくは、PEG-400又はPEG-200(5容量)、及び(d)DIEA(4当量)を含む反応混合物を形成するステップ、並びに前記反応混合物を約150℃の温度に約72時間加熱するステップを含む。別の好ましい一実施形態では、DIEAは省く。
【0080】
好ましい一実施形態では、ステップ(iii)は、ステップ(ii)からの反応混合物を水
及び酢酸エチルに抽出するステップ、酢酸エチル相を分離するステップ、並びに乾燥剤で乾燥し、ろ過し、ろ液を濃縮するステップを含む。適切な乾燥剤(例えば、硫酸マグネシウム)は、当業者によく知られているであろう。
【0081】
好ましい一実施形態では、ステップ(iii)は、濃縮ろ液を第三級ブチルメチルエーテ
ル(TBME, tertiary butyl methyl ether)と共沸させるステップをさらに含む。
【0082】
好ましい一実施形態では、化合物[1]を調製する状況で、ステップ(iii)は、化合
物[1]を第三級ブチルメチルエーテル(TBME)から結晶化するステップをさらに含む。好ましくは、このステップは、加熱還流するステップ、及び国際公開第2011/089401号パンフレットの手順により調製される化合物[1]の結晶の種を加えるステップを含み、その内容は、参照により本明細書に組み込まれる(特に、実施例1を参照されたい)。好ましくは、種を入れた混合物は、約50~約55℃の温度に冷却される。
【0083】
好ましくは、混合物をこの温度で約30分間撹拌し、次いで室温まで冷却する。
【0084】
塩形成
好ましい一実施形態では、方法は、前記式[1]の化合物をL-酒石酸塩、より好ましくは、結晶の形態のL-酒石酸塩に変換するステップを含む。さらにより好ましくは、L-酒石酸塩は、結晶形II(国際公開第2011/089401号パンフレットに記載されるE型に対応する)であり、そこで記載される方法(実施例5.5を参照されたい)により調製することができる。
【0085】
したがって、好ましい一実施形態では、方法は、ステップ(iii)で単離した生成物を
エタノール中で還流し、それに水とエタノールの混合物中のL-酒石酸の溶液を滴下することを含む結晶化ステップを含む。
【0086】
特に好ましい一実施形態では、L-酒石酸溶液を添加後の最終混合物中のエタノール:水の比は、少なくとも15:1、より好ましくは、少なくとも20:1、より好ましくは少なくとも25:1、さらにより好ましくは、少なくとも30:1である。有利なことに、結晶化ステップにおいて水に比べてエタノールの割合を高めると、当該技術分野で開示される収率に比べて化合物[1]の結晶性酒石酸塩の収率に顕著な改善がみられる(国際公開第2011/089401号パンフレットの実施例5.5の72%と比較して約87%)。
【0087】
特に好ましい一実施形態では、L-酒石酸溶液を添加後の最終混合物中のエタノール:水の比は、約37.5:1である。
【0088】
好ましい一実施形態では、方法は、L-酒石酸の溶液の添加時に、温度を75~78℃に維持することを含む。
【0089】
好ましい一実施形態では、結晶化ステップは、混合物をポリッシュろ過するステップ、
ろ液を約60~約65℃の温度に加温するステップ、及び結晶性[1]-L-酒石酸II型の種を加えるステップをさらに含む。結晶性[1]-L-酒石酸II型(E型とも呼ばれる)は、国際公開第2011/089401号パンフレットの教示により調製することができ、その内容は、参照により本明細書に組み込まれる(Cyclacel Limited社)。
【0090】
好ましい一実施形態では、種を入れたろ液を約60~約65℃の温度で少なくとも1時間撹拌する。
【0091】
好ましい一実施形態では、方法は、化合物[1]-L-酒石酸の結晶化を誘発するために、混合物を約15~約20℃の温度に冷却し、その温度で少なくとも1時間撹拌するステップをさらに含む。好ましくは、冷却速度は、約5~約10℃/時、より好ましくは約10℃/時である。
【0092】
好ましい一実施形態では、化合物[1]-L-酒石酸をろ過し、エタノールで洗浄し、真空乾燥する。
【0093】
前述のように、カップリング反応の状況では、本出願人は、式[II]の高純度中間体の使用が、化合物[I]-L-酒石酸塩の目標の仕様を得るための十分な純度の遊離塩基式[I]の化合物を得るために重要であることを示した。
【0094】
好ましい一実施形態では、式[II]の化合物(例えば、化合物[2])を、ステップ(i)の前に、シリカパッドを通過させ、ジエチルエーテルでスラリー化し、ろ過し、乾燥する。
【0095】
好ましい一実施形態では、式[II]の化合物(例えば、化合物[2])は、少なくとも97%、より好ましくは、少なくとも97.5%、さらにより好ましくは、少なくとも98%のHPLCによる純度を有する。
【0096】
本出願人は、高いジアステレオマー純度(すなわち、高いd.e.)を有する式[III
]の化合物の使用が、式[II]の化合物とのカップリング反応で良好な収率を得るためにも重要であることをさらに示した。この点で、本発明は、優れたジアステレオ選択、例えば、99%以上のd.e.値をもたらす、式[III]の化合物を調製するための代替の方
法を提供する。カップリングステップで高いジアステレオマー純度を有する一般式[III
]の化合物を使用すると、その立体異性体からのクロマトグラフ分離をすることなしに高い収率で式[I]の化合物を調製することができる。代わりに、粗生成物を、MTBEからの結晶化により簡単に単離し、精製することができ、これは、スケールアップの効率の点で明らかに有利である。
【0097】
好ましい一実施形態では、式[III]の化合物(例えば、化合物[3])は、少なくと
も85%、より好ましくは、少なくとも90%、さらにより好ましくは、少なくとも95%のジアステレオマー過剰率を有する。
【0098】
非常に好ましい一実施形態では、式[III]の化合物(例えば、化合物[3])は、少
なくとも96、97、98又は99%のジアステレオマー過剰率を有する。
【0099】
好ましい一実施形態では、式[III]の化合物は、
【0100】
【0101】
のステップにより調製し、式中:
R1は、アルキル又はハロアルキルであり;
R3は、アルキル、ハロアルキル又はアリールであり;及び
PGは、保護基であり;
前記方法は、
(a)式[V]の化合物を、THFを含む溶媒中の(S)-2-Me-CBS-オキサザボロリジン及びボラン-N,N-ジエチルアニリン錯体で処理して、式[IV]の化合物を形成するステップ;及び
(b)保護基PGを前記化合物[IV]から除去して、式[III]の化合物を生じるステッ
プ
を含む。
【0102】
好ましい一実施形態では、ステップ(b)は、前記化合物[IV]をメタノール中のガス状HClで処理するステップ、真空濃縮するステップ、酢酸エチルに溶解するステップ、次いでNH3を注入するステップを含む。
【0103】
非常に好ましい一実施形態では、式[III]の化合物は、化合物[3]であり、これは
、
【0104】
【0105】
(a)化合物[5]を、THFを含む溶媒中の(S)-2-Me-CBS-オキサザボロリジン及びボラン-N,N-ジエチルアニリン錯体で処理して、化合物[4]を形成するステップ;及び
(b)保護基PGを前記化合物[4]から除去して、化合物[3]を生じるステップ
により調製される。
【0106】
適切なアミン保護基は、当業者によく知られているであろう;例えば、
Theodora W.Greene及びPeter G.M.WutsによるProtective Groups in Organic Synthesis
を参照のこと。好ましくは、保護基PGは、t-ブチルオキシカルボニル(Boc, butyloxycarbonyl)基である。
【0107】
式[II]の化合物を調製するための方法
本発明の別の態様は、
【0108】
【0109】
(i)式[VI]の化合物をHF、ピリジン及びtBuONOで処理して、式[VII]の化
合物を形成するステップ;及び
(ii)前記式[VII]の化合物をDMSO及びK2CO3中のR5Brで処理して、式[II]の化合物を形成するステップ;
により式[II]の化合物を調製するための方法に関し、
R5及びR6は、上記で定義したとおりである。
【0110】
非常に好ましい実施形態では、本発明は、
【0111】
【0112】
(i)化合物[6]をHF、ピリジン及びtBuONOで処理して、化合物[7]を形成するステップ;及び
(ii)前記化合物[7]をDMSO及びK2CO3中の臭化イソプロピルで処理して、化合物[2]を形成するステップ
により化合物[2]を調製するための方法に関する。
【0113】
本発明の別の態様は、化合物[6]に関する。
【0114】
本発明の別の態様は、化合物[1]の調製における中間体としての使用のための化合物[6]に関する。
【0115】
本発明の別の態様は、化合物[1]を調製するための方法に関し、前記方法は、
(i)化合物[2]を上記の式[6]の化合物から調製するステップ;及び
(ii)化合物[2]を上記の化合物[3]と反応させて、化合物[1]を形成するステップ
を含む。
【0116】
さらに、本発明の合成方法の詳細を、スキーム1で定めた反応スキームに関連して以下に記載する。
【0117】
【0118】
反応を115gのスケールで首尾よく行い、白色固体の所望の生成物、化合物[4]を収率85%(99.2g)で得た。
【0119】
化合物[4]のBoc脱保護は、所望の化合物[3]のHCl塩へと手際よく進んだ。次いで遊離塩基の形成は、酢酸エチルのHCl塩の懸濁液にアンモニアを注入することにより達成されて、淡黄色オイルの化合物[3]が全収率95%(48.7g)で得られた。1H NMR分析は、単離した材料がカップリングステップでの使用に適することを示した。
【0120】
本出願人は、化合物[2]の純度も最終カップリング反応に重要な影響を及ぼすことを見出した。最終カップリング反応プロファイルにおけるより純度の高い[2]の影響を評価するために、55gの化合物[2](HPLCによる純度96.80%)を、15%M
eOH/DCMを用いて溶出することでシリカパッドを通過させた。次いで、得られる生成物をジエチルエーテル中でスラリー化し、ろ過し、乾燥して、化合物[2]49.3gを得た。HPLCによる純度は98.46%であった。
【0121】
最終カップリング反応は、1,2-プロパンジオール(5容量)と2当量の化合物[3]で150℃にて行った。
【0122】
精製した化合物[2]及びバルクバッチの化合物[3]の使用試験を1gスケールで行った(2当量の化合物[3]/5容量の1,2-プロパンジオール、150℃)。18時間後、HPLCは、化合物[1]94.13%、化合物[2]1.74%及びプロパンジオール付加体1.66%を示した。反応は完全ではないが、上記の結果から、高純度の化合物[2]の使用は、90%超の生成物への変換率を達成するために重要であることがわかった(純度96.80%の化合物[2]を使用した場合の化合物[1]への変換率87%と比べて)。
【0123】
10gスケールの最終カップリング反応を行い、生成物への変換率は93.11%であり(1.4%1,2-プロパンジオール付加体)、後処理後にHPLCによる純度95.54%を有する粗遊離塩基化合物[1]が得られた(1.3%1,2-プロパンジオール付加体)。1H NMRは、後処理で1,2-プロパンジオールの除去が順調だったことを確認した。粗生成物(12.2g)をTBME(2容量のTBME)から再結晶した。結晶性遊離塩基化合物[1]の種を添加した時に結晶化が起こった(国際公開第2011/089401号パンフレット;Cyclacel Limited社;A型、実施例1の教示により調製した種)。得られる固体をろ過し、乾燥して、遊離塩基化合物[1]を得た。全収率は81%(化合物[2]投入から、目標79%)であり、HPLCによる純度は97.84%であった(0.95%1,2-プロパンジオール付加体、目標純度97%超)。この材料を酒石酸塩形成までもっていった。
【0124】
次いで、大規模最終カップリング反応を36.2gのスケールで実施した。反応は予定通り進み、生成物への変換率は95.01%であった(0.29%1,2-プロパンジオール付加体)。後処理により、HPLCによる純度95.22%を有する白色の発泡性固体(46.9g)の粗遊離塩基化合物[1]が得られた(0.20%1,2-プロパンジオール付加体、1.74%RRT0.98)。TBMEからの種を入れた再結晶化(上記のA型の種結晶を使用)により、全収率79%、純度97.32%で結晶性遊離塩基化合物[1]を得た(0.14%1,2-プロパンジオール付加体、1.10%RRT0.98)。
【0125】
次いで、化合物[1](87.6%純度)を対応する結晶性L-酒石酸塩に変換した。大規模カップリング反応からの材料を使用して5gのスケールで塩形成の試行を行った。エタノール:水の比37.5:1を使用した。酒石酸を添加後に、II型の種を60~65℃で添加したが、種は溶解しなかった。反応を60~65℃で1時間撹拌し(その間に結晶化が始まった)、次いで15~20℃に1時間かけて冷却した。15~20℃で撹拌後、得られる固体を分離し、乾燥した。これにより、化合物[1]-L-酒石酸塩を得て、収率は83%(遊離塩基から、化合物[2]投入からの全収率65%)、純度は98.57%(0.15%1,2-プロパンジオール付加体、0.37%RRT0.98)であった。1H NMRで1:1塩を確認し、XRPDでII型を確認した。
【0126】
次いで、方法を確認するために上記の条件を使用して29.9gのスケールで大規模塩形成を実施した。単離により、化合物[1]-L-酒石酸塩を得て、収率は87%(遊離塩基から、化合物[2]投入からの全収率69%)、純度は98.80%(0.37%1,2-プロパンジオール付加体、0.02%RRT0.98)であった。1H NMRで
1:1塩を確認し、XRPDでII型を確認した。
【0127】
したがって、本出願人は、最終カップリング反応におけるより高い純度の化合物[2]の使用が、最大で95%の化合物[1]への変換率を得るのに重要であることを示した。次いで、遊離塩基化合物[1]を、対応する結晶性L-酒石酸の形態に良好な収率で変換することができる。
【0128】
化合物[1]の結晶性L-酒石酸塩を調製するための方法
本発明の別の態様は、化合物[1]の結晶性L-酒石酸塩を調製するための方法に関する。方法は、エタノール中の化合物[1]の溶液を還流し、それに水とエタノールの混合物中のL-酒石酸の溶液を滴下するステップを含み、エタノールの水に対する比は、少なくとも15:1である。
【0129】
【0130】
好ましい一実施形態では、L-酒石酸溶液を添加後の最終混合物中のエタノール:水の比は、少なくとも20:1、より好ましくは、少なくとも25:1、さらにより好ましくは少なくとも30:1、さらにより好ましくは、少なくとも35:1である。
【0131】
好ましい一実施形態では、L-酒石酸溶液を添加後の最終混合物中のエタノール:水の比は、約37.5:1である。
【0132】
好ましくは、温度は、L-酒石酸溶液の添加時に75~78℃に維持される。
【0133】
好ましい一実施形態では、方法は、混合物をポリッシュろ過し、ろ液を約60~約65℃の温度に加温し、結晶性[1]-L-酒石酸II型の種を加えるステップを含む。
【0134】
好ましい一実施形態では、方法は、種を入れたろ液を約60~約65℃の温度で少なくとも1時間撹拌するステップを含む。
【0135】
好ましい一実施形態では、方法は、化合物[1]-L-酒石酸の結晶化を誘発するために、混合物を約15~約20℃の温度に冷却し、その温度で少なくとも1時間撹拌するステップをさらに含む。
【0136】
好ましくは、冷却速度は、約5~約10℃/時、より好ましくは、約10℃/時である。
【0137】
好ましい一実施形態では、化合物[1]-L-酒石酸をろ過し、エタノールで洗浄し、真空乾燥する。
【0138】
式[III]の化合物を調製するためのジアステレオ選択方法
本発明の別の態様は、高ジアステレオマー過剰率を有する式[III]の化合物を調製す
るためのジアステレオ選択方法に関する。
【0139】
したがって、一態様では、本発明は、式[IV]又は[III]の化合物を調製するための
方法に関し:
【0140】
【0141】
式中:
R1’は、アルキル又はハロアルキルであり;
R3’は、アルキル、ハロアルキル又はアリールであり;及び
PGは、保護基であり;
前記方法は、
(a’)式[V]の化合物を、THFを含む溶媒中の(S)-2-Me-CBS-オキサザボロリジン及びボラン-N,N-ジエチルアニリン錯体で処理して、式[IV]の化合物を形成するステップ;及び
(b’)任意選択で保護基PGを前記式[IV]の化合物から除去して、式[III]の化合
物を生じるステップ
を含む。
【0142】
非常に好ましい一実施形態では、方法は、
【0143】
【0144】
(a’)化合物[5]を、THFを含む溶媒中の(S)-2-Me-CBS-オキサザボロリジン及びボラン-N,N-ジエチルアニリン錯体で処理して、化合物[4]を形成するステップ;及び
(b’)任意選択で保護基PGを前記化合物[4]から除去して、化合物[3]を生じるステップ
を含む。
【0145】
有利なことに、上記の条件により、高いジアステレオ選択の減少が生じ、得られる中間体は、非常に高いジアステレオマー過剰率(約99%)を有する。このジアステレオマー過剰率は、従来技法による中間体の調製で観察されるレベルをはるかに超えている;例え
ば、国際公開第2003/002565号パンフレット(Cyclacel Limited社;d.e.80%)又は国際公開第2008/122767号パンフレット(Cyclacel Limited社;Cancer Research Technology Limited社;d.e.75%)を参照のこと。
【0146】
好ましい一実施形態では、(S)-2-Me-CBS-オキサザボロリジンは、トルエン溶液である。
【0147】
好ましい一実施形態では、ステップ(a’)は、(i)THF中の(S)-2-Me-CBS-オキサザボロリジンの混合物にボラン-N,N-ジエチルアニリン錯体を滴下するステップ、及び(ii)ステップ(i)で形成される混合物にTHF中の式[V]の化合物(例えば、化合物[5])を滴下するステップを含む。
【0148】
好ましくは、ステップ(ii)で形成される混合物は、室温で少なくとも12時間撹拌される。
【0149】
好ましい一実施形態では、ステップ(a’)は、式[IV]の化合物(例えば、化合物[4])をヘプタンから結晶化するステップをさらに含む。
【0150】
好ましい一実施形態では、ステップ(b’)は、前記式[IV]の化合物(例えば、化合物[4])をメタノール中のガス状HClで処理するステップ、真空濃縮するステップ、酢酸エチルに溶解するステップ、次いでNH3を注入するステップを含む。
【図面の簡単な説明】
【0151】
本発明は、以下の図に関連してさらに記載される。
【
図1】国際公開第2008/122767号パンフレットで開示される化合物[1]を調製するための反応スキームを示す図である。
【
図2】国際公開第2011/089401号パンフレットで開示される化合物[1]-L-酒石酸を調製するための反応スキームを示す図である。[実施例]
【0152】
本発明は、以下の非限定的な実施例に関連してさらに記載される。
【0153】
略語
THF: テトラヒドロフラン
EtOAc: 酢酸エチル
PMA: リンモリブデン酸
MeOH: メタノール
DCM: ジクロロメタン
TBME: 第三級ブチルメチルエーテル
DCM: ジクロロメタン
DIEA: N,N-ジイソプロピルエチルアミン
【0154】
1H NMR:オートサンプラーを具備したJEOL ECX 400MHz分光計を使用して、1H
NMRスペクトルを収集した。分析用のD6-DMSOに試料を溶解し、Delta NMR Processing and Control Softwareバージョン4.3を使用して16スキャンを獲得する標
準プロトン実験を使用して、室温でスペクトルを獲得した。次いで、ACD labs 1D NMRプ
ロセッサーバージョン12.0を使用して、データを加工した。
【0155】
DSC:45ポジションサンプルホルダを具備するPerkinElmer Pyris 6000 DSCでDSCデータを収集した。認証インジウムを使用して装置のエネルギー及び温度校正を検証した。事前に定めた量の試料0.5~3.0mgを小さな穴の開いたアルミニウムパンに入
れ、20℃/分で30~350℃に加熱し、又は実験法が定めるように変えた。試料に対し乾燥窒素によるパージを20ml/分で維持した。装置制御、データ取得及び分析をPyris Software v11.1.1 Revision Hを用いて実施した。
【0156】
XRPD:CuKα照射(45kV、40mA)、θ-θゴニオメーター、集束ミラー、発散スリット(1/2’’)、入射及び発散ビームでのソーラスリット(4mm)及びPIXcel検出器を使用するPANalytical回折計でX線粉末回折パターンを収集した。データ
収集で使用するソフトウェアは、X’Pert Data Collector、バージョン2.2fであり、X’Pert Data Viewer、バージョン1.2dを使用してデータを表示した。
PANalytical X’Pert PROを使用する周囲条件下、透過箔サンプルステージ(ポリイミ
ドカプトン、厚さ12.7μmのフィルム)により周囲条件下でXRPDパターンを獲得した。データ収集範囲は2.994~35°2θであり、連続スキャンスピードは0.202004°s-1であった。
【0157】
HPLC:方法A
試料溶液調製:
試料50mgを正確に秤量し、100mlメスフラスコに入れる。メタノール50mlをフラスコに加え、必要なら超音波処理により溶解し、精製水を加えて希釈し、得られる溶液を十分に混合する。
カラム: 150x4.6mm Luna C18(2)、5μm粒径、(ex-Phenomenex社;# OOF-4252-EO)
移動相: A-0.01M酢酸アンモニウム緩衝液(pH8.0)
B-アセトニトリル
流速: 1.0ml/分
注入量: 5μl
検出: UV@254nm
カラム温度: 30℃
ポストラン: 5分間
【0158】
HPLC:方法B
試料溶液調製:
試料50mgを正確に秤量し、100mlメスフラスコに入れる。メタノール50mlをフラスコに加え、必要なら超音波処理により溶解し、精製水を加えて希釈し、得られる溶液を十分に混合する。
カラム: 150x4.6mm XBridge Phenyl、3.5μm粒径、(ex-Waters社;# 186003335)
移動相: A-精製水:トリフルオロ酢酸(100:0.1)
B-アセトニトリル:トリフルオロ酢酸(100:0.1)
流速: 1.0ml/分
注入量: 5μl
検出: UV@268nm
カラム温度: 30℃
ポストラン: 5分間
【0159】
キラルHPLC
カラム: 250x4.6mm Chiralpak AD-H、5μm粒径、(ex-Daicel Chemical Industries社, ;# DAIC 19325)
移動相: エタノール:ヘキサン(50:50)
流速: 1.0ml/分
注入量: 20μl
検出: UV@268nm
カラム温度: 40°C
ランタイム: 20分間
【0160】
HRGC:
試料溶液調製
試料50mgを正確に秤量し10mlメスフラスコに入れる。必要なら超音波処理を使用してジクロロメタン5mlに溶解し、ジクロロメタンを加えて希釈し、得られる溶液を十分に混合する。
カラム: DB-1 30mx0.32mm;1.0μm膜厚(ex-J&W Scientific社#123-1033)
オーブンプログラム:40℃(5分間保持)、次に10℃/分で300℃に(10分間保持)
注入温度: 200℃、スプリット
カラム温度: 250℃、F.I.D.
ヘッド圧: 12psi、一定圧力
キャリアガス: 窒素
スピリット比: 50:1
注入量: 2μl
ライナー: グラスウールインサートを有するSGE Focusliner
【0161】
HRGCによる鏡像体過剰率:
標準溶液調製
各エナンチオマー[(2R,3S);(2S,3R);(2R,3R);(2S,3S)]10mgを正確に秤量し、適切な容器に入れる。必要なら超音波処理を行いHPLCグレードのジクロロメタン約1mlに溶解する。無水トリフルオロ酢酸500μl及びトリフルオロ酢酸500μlを加え、15~30分間室温で誘導体化する。この溶液を注入する。
【0162】
試料溶液調製
2連で、試料10mgを正確に秤量して適切な容器に入れる。必要なら超音波処理を行い、HPLCグレードのジクロロメタン約1mlに溶解する。無水トリフルオロ酢酸500μl及びトリフルオロ酢酸500μlを加え、15~30分間室温で誘導体化する。この溶液を注入する。
カラム: Gamma-TA Cyclodextrin 30mx0.32mm;
0.125μmフィルム(ex-Astec社; Cat no. 73033)
オーブンプログラム:80℃(10分間保持)、次に2℃/分で90℃に(20分間保持)、次に10℃/分で80℃に
注入温度: 200℃、スプリット
カラム温度: 250℃、F.I.D.
ヘッド圧: 20psi、一定圧力
キャリアガス: 窒素
スピリット比: 50:1
注入量: 1μl
ライナー: グラスウールインサートを有するSGE Focusliner
【0163】
【0164】
【0165】
(2R,3S)-3-アミノペンタン-2-オール合成
化合物[4]の調製
【0166】
【0167】
窒素パージした乾燥容器で(S)-2-メチル-CBS-オキサザボロリジン(1Mトルエン溶液、59.6mL、0.06mol)をTHF(171mL)で希釈した。ボランN,N-ジエチルアニリン錯体(102mL、0.57mol)を室温で滴下し、溶液を15分間撹拌した。化合物[5](115.0g、0.57mol)をTHF(345mL)に溶解し、4.5時間かけて滴下した。添加が終了した後、反応を窒素雰囲気下、室温で一晩撹拌した。薄層クロマトグラフィー(20%EtOAc/ヘプタン、PMAにより可視化)は、出発物質の完全な消費を示唆した。メタノール(174mL)を1時間かけて滴下して、反応を注意深く停止した。反応停止中、温度を20℃未満に維持した。さらにメタノール(174mL)を添加する前に、溶液を真空濃縮した。溶液を減圧下濃縮して、白色のワックス状固体を得た。粗生成物をヘプタン(202mL)から再結晶した。再結晶した生成物をろ過し、ヘプタン(2x156mL)で洗浄して、白色固体を得た。これを40℃の減圧オーブンで一晩乾燥して、白色固体の化合物[4]を得た(99.2g、85%)。上記のHRGC及びキラルHRGCにより分析した。
【0168】
化合物[4]の脱保護
【0169】
【0170】
N2下の20LフラスコでMeOH(645mL)にHClを20℃未満で1時間注入した。滴定の結果、溶液は3.85Mであった。フラスコを15℃未満に冷却した。化合物[4](101.1g、0.50mol)を15℃未満で少しずつ加えた。溶液を終夜撹拌した。TLC(5%MeOH/DCM、PMAで可視化)の結果、反応は完了していた。溶液を35~40℃で真空濃縮した。オイルをEtOAc(4x75mL)と共沸させ、粉砕して、白色固体を得た。固体をEtOAc(588mL)に加えた。反応混合物を0~5℃に冷却し、NH3(g)をN2下、0~5℃で1時間注入した。添加終了時にpHは8であった。混合物をろ過し、ろ過ケーキをEtOAc(147mL)で洗浄した。ろ液を35~40℃で真空濃縮して、淡黄色オイルとしての所望の生成物[3](50.7g)を得た。1H NMRで生成物の同定を確認し、最大4%の残留EtOAcが存在し、活性収率は48.7g、95%であった。
【0171】
化合物[7]の調製
【0172】
【0173】
60%HF/ピリジン(2982.3g)を6LのPTFE容器に加え、-35~-30℃の間まで冷却した。化合物[6](322.2g、1mol当量)を容器に加え、バッチ温度を-35~-30℃の間に維持した。容器内容物を-15~-10℃の間まで加温し、次いでtert-亜硝酸ブチル(160ml、1mol当量)を滴下し、温度を-15~-5℃の間に維持した。バッチを室温(15~20℃の間)まで加温し、17時間撹拌した。バッチをサンプリングしてHPLCにより完了を調べ、その結果、11.3%の化合物[6]が存在していた。追加のtert-亜硝酸ブチル(48ml、0.3mol当量)を添加し、3時間撹拌し、完了の確認で、2.3%の化合物[6]が残っていた。追加のtert-亜硝酸ブチルを添加し(48ml、0.3mol当量)、終夜撹拌した。最終完了で、0.7%の化合物[6]が残存した。反応混合物をK2CO3の飽和水溶液(12000ml)に入れて反応停止し、さらなるK2CO3の飽和水溶液(3500ml)を加えてpH8に調整し、バッチを90分間撹拌し、次いでろ過した。フィルターを精製水(3200ml)で洗浄した。固体を反応停止容器に戻し、精製水(3200ml)で34分間スラリー化し、ろ過した。フィルターを精製水(3200ml)で洗浄した。固体を反応停止容器に戻し、精製水(3200ml)で34分間スラリー化し、ろ過した。フィルターを精製水(3200ml)及びTBME(3x1600ml)で洗浄した。固体を真空下45℃で乾燥した。収量:222.5g(68.3%);HPLC(方法A)による純度:94.9%。
【0174】
化合物[2]の調製
【0175】
【0176】
反応を1バッチで行い、これを後処理のために4つの部分に分割し、次いで、2つの部分を精製して、全収量は2261.6g(79%、目標85%)であった。
【0177】
N2下でDMSO(25000ml)、化合物[7](2479.9g、1モル当量)及び炭酸カリウム(2504.7g、2モル当量)を加えた。2-ブロモプロパン(8520ml、10mol当量)を添加し、バッチ温度を15~25℃の間に維持した。反応混合物を60℃に加熱し、35分間撹拌し、温度を58~62℃の間に維持した。完了分析のために反応混合物をサンプリングした。HPLC(方法A)は、反応が完了したことを示した(残りの化合物[7]0.14%)。反応混合物を18~25℃の間まで冷却した。バッチを4つのほぼ等しい部分に分割した。各部分を精製水(11200ml)及び酢酸エチル(11200ml)と共に容器に戻し、10分間撹拌し、層を分離した。
【0178】
反応の後処理
水層を容器に入れ、酢酸エチル(3x6200ml)を用い抽出した。有機層を合わせて容器に入れ、精製水(6x9300ml)で洗浄した。硫酸マグネシウム(1014.1g)を用い有機層を乾燥し、ろ過した。ろ過ケーキを酢酸エチル(3x2500ml)で洗浄した。HPLC分析のためにバッチ溶液をサンプリングし、その結果、粗純度は94.1%であった。
【0179】
精製
乾燥有機層を合わせて、2つの部分にした。各部分を最小の撹拌になるまで50L容器から蒸留し、次いで、濃縮を完了させるため2Lロータリーエバポレータに移した。カーボイ中で粗化合物[2](1480.5g)を15%MeOH/EtOAc(3000ml)に溶解した。シリカ(2961.3g)をカーボイに入れ、内容物を15分間撹拌した。さらなる15%MeOH/EtOAc(2000ml)をカーボイに加えて、シリカのスラリー化を手助けした。プレートフィルターを設定し、シリカ(4441.5g)/15%MeOH/EtOAcを充填した。粗化合物[2]/シリカスラリーをフィルタープレートに移し、充填した。次いで、シリカパッドを15%MeOH/EtOAc(88800ml)で洗浄し、5画分に回収し、15%MeOH/EtOAc(44360ml)を2画分に回収し、15%MeOH/EtOAc(44360ml)を2画分に回収した。化合物[2]を含有する画分をポリッシュろ過し、濃縮した。得られる固体をEtOAc(3x3000ml)と共沸させ、30℃の減圧オーブンで一晩乾燥した。収量:1090.3g;HPLC(方法A)による純度:96.9%。
【0180】
対応する化合物[2]のアルケニル類似体は、以下のように調製することができる。化合物[7](1.0g)及び五酸化リン(1.04g、2当量)/トルエン(40ml)、コリジン(0.9g、2当量)及びアセトン(2.1g、10当量)の懸濁液を撹拌し
ながら一晩還流加熱した。反応を室温まで冷却し、ろ過した。ろ過ケーキをNaHCO3の飽和水溶液(30ml)及びトルエン(30ml)と共に5分間撹拌し、次いで再びろ過した。相を分離し、水溶液をトルエン(30ml)で抽出した。合わせた有機物を乾燥(硫酸ナトリウム)し、ろ過し、真空濃縮した。生成物をクロマトグラフィー(シリカ65g、溶離液=EtOAc→10%MeOH/EtOAc)により精製し、1H NMRによる純度最大90%の生成物190mg、及び追加の純度の低い物質0.1gを得た。純度の低い生成物を再びカラム(シリカ51g、溶離液=4%MeOH/DCM)に通して、追加の生成物(70mg)を得た。総収量は260mg(22.7%)であった。[2]のアルケニル類似体は、一晩120~130℃で加熱することにより、PEG200及びDIPEA中の化合物[3](3~10当量)と反応することができる。溶離液として4%MeOH/DCMを使用するカラムクロマトグラフィーにより生成物を精製することができ、1H NMRによる純度95%超の生成物を得た。
【0181】
化合物[2]の精製
【0182】
【0183】
最終カップリング反応プロファイルにおける化合物[2]のより高い純度の影響を評価するために、化合物[2](HPLCによる純度96.80%)55gを、15%MeOH/DCMを用いて溶出することでシリカパッドを通過させた。次いで、得られる生成物をジエチルエーテル中でスラリー化し、ろ過し、乾燥して、HPLC(方法A)による純度98.46%の化合物[2]49.3gを得た。
【0184】
ステップ(i)で1,2-プロパンジオールを使用する化合物[1]の調製
【0185】
【0186】
化合物[2](36.2g、115.15mmol)と化合物[3](24.7g、活性23.8g、230.71mmol)の1,2-プロパンジオール(181mL)の溶液を150℃で一晩加熱した。HPLC(方法B)による分析の結果、プロパンジオール付加体0.29%、化合物[1]95.01%及び化合物[4]0.57%であった。また、1,2-プロパンジオールの代わりに、PEG-200を使用することができる。場合によっては反応混合物は、DIEA(2モル当量)をさらに含む。15~20℃に冷却後、水(250mL)及び酢酸エチル(120mL)を容器に加え、バッチを10分間撹拌した。層を分離し、水層を酢酸エチル(4x100mL)で抽出した。有機層を合わせて、2.5w/w%ブライン(3x160mL)、次いで水(3x160mL)で洗浄した。MgSO4を使用して有機層を乾燥し、ろ過した。次いで、ろ液を濃縮し、TBME(2x250mL)と共沸させ、粗化合物[1]遊離塩基(46.9g)を単離した。HPLC分析の結果、純度は95.22%であった(方法B)。
【0187】
粗材料(46.9g)をTBME(94mL)に加え、還流加熱した。結晶性化合物[1]の種(0.009g;国際公開第2011/089401号パンフレットの教示により調製;A型;Cyclacel Limited社)を添加し、得られる濁りを帯びた溶液を50~55℃に冷却し、30分間撹拌した。種結晶を国際公開第2011/089401号パンフレット(Cyclacel Limited社)の実施例1に従い調製した。次いで、反応混合物を室温まで一晩冷却した。得られる固体をろ過し、TBME(3x47mL)で洗浄し、乾燥した。オフホワイト色の固体を40℃で真空乾燥して、結晶性化合物[1]遊離塩基(36.0g、79%;A型)を得た。XRPD及びDSCの物性評価はA型、国際公開第2011/089401号パンフレットと一致した;参照XRPDピークについては表1を参照のこと)。場合によっては、化合物[1]の第二級ヒドロキシル基は、酸化剤、例えば、溶媒としてのMeCN中のピリジニウムクロロクロメート(0.2当量)及び過ヨウ素酸(2.5当量)との処理により酸化することができ、例えば、反応を完了させるために、室温で21時間撹拌し、次いで必要ならさらなるピリジニウムクロロクロメート及び過ヨウ素酸を再添加する(その後、カラムクロマトグラフィーを使用して精製を行う)。
【0188】
ステップ(i)でPEG-200及びDIEAを使用する化合物[1]の調製
1,2-プロパンジオールと直接比べて、PEG-200を使用した反応のHPLC反応プロファイルを比較するため、小規模の反応を実施した。したがって、化合物[2](1.0g、3.181mmol)及び反応溶媒(9.0mL、9容量)をN2下で加えた。次いで、DIEA(2.2mL、4当量)及び化合物[3](0.66g、6.362mol)の添加前に、混合物を5分間撹拌し、次いで、反応を温度(150℃)に加熱した。72時間後に示される反応プロファイルを以下の表に示す。
【0189】
【0190】
化合物[1]-L-酒石酸塩の合成
【0191】
【0192】
結晶性化合物[1]遊離塩基(29.9g、75.22mmol)をエタノール(420mL)に溶解し、得られる溶液を還流加熱した。水(12mL)/エタノール(30mL)中のL-酒石酸(11.29g、75.22mmol)の溶液を滴下し、バッチ温度を75~78℃に維持した。溶液をポリッシュろ過した(ろ過時に57℃に冷却し、結晶化の証拠はない)。ろ過した溶液を60~65℃に加温し、国際公開第2011/089401号パンフレット(Cyclacel Limited社)の実施例5により調製される化合物[1]-L-酒石酸塩、II型の種(0.003g)を加えた。混合物を60~65℃で1時間撹拌した。その際に、結晶化が始まった。次いで、懸濁液を10℃/hで15~20℃に冷却した。15~20℃で1時間撹拌後、固体をろ過し、エタノール(3x60mL)で洗浄し、乾燥した。さらに、減圧オーブンでの乾燥により、白色固体の[1]-L-酒石酸塩を得た(36.0g、87%(遊離塩基から))。1H NMRにより生成物の同定を確認し、HPLC(方法B)の結果、純度は98.80%であった。生成物は、キラルHPLCによる分析も行った。DSC分析(ピーク182.73℃、開始179.61℃)及びXRPDにより、国際公開第2011/089401号パンフレットによるII型を確認した(参照XRPDピークについて表2を参照のこと)。
【0193】
記載した本発明の態様の様々な改変及び変形形態は、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、当業者に明らかであろう。本発明を特定の好ましい実施形態に関連して記述
してきたが、主張される本発明は、そのような特定の実施形態に過度に限定されるべきではないことを理解されたい。実際、記載された本発明を実施する様式の様々な改変は、当業者に明白であり、以下の請求項の範囲内にあるものである。
【0194】
【0195】