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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】電気手術器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20240523BHJP
【FI】
A61B18/14
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022533212
(86)(22)【出願日】2020-12-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-09
(86)【国際出願番号】 EP2020084128
(87)【国際公開番号】W WO2021110677
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2023-10-25
(31)【優先権主張番号】1917619.7
(32)【優先日】2019-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】512008495
【氏名又は名称】クレオ・メディカル・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CREO MEDICAL LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハンコック,クリストファー・ポール
(72)【発明者】
【氏名】ターナー,ルイス
(72)【発明者】
【氏名】メドウクロフト,サイモン
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ,ジョージ・クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ウェッブ,デイビッド・エドワード
【審査官】槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公開第02569812(GB,A)
【文献】特表2016-525902(JP,A)
【文献】特開2018-114299(JP,A)
【文献】特開2015-093100(JP,A)
【文献】特表2019-500948(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/14
A61B 18/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波(RF)エネルギー及びマイクロ波エネルギーを伝達するための同軸伝送線路、
前記同軸伝送線路の遠位端部に結合されるエネルギー送達チップ、を含む電気手術器具であって、
前記エネルギー送達チップは、
前記同軸伝送線路の内部導体に電気的に結合され、前記同軸伝送線路の外部導体の遠位端部を越えて突出する第一電極と、
前記同軸伝送線路の前記外部導体に電気的に結合され、前記第一電極の一部に沿って同軸に延在する第二電極と、
前記第一電極と前記第二電極との間に配置される誘電体と、を含み、
前記第一電極は前記誘電体の遠位端部を越えて突出する突出ニブを含み、
前記第二電極及び前記誘電体は前記エネルギー送達チップの前記遠位端部で露出する部分を含み、
前記エネルギー送達チップは遠位に面する端面を含み、前記遠位に面する端面は前記誘電体の露出部分、及び前記突出ニブを中心に同心円状に配置される前記第二電極の露出部分を含むため、前記電気手術器具は前記同軸伝送線路の長手方向中心軸の周りに回転対称性を有し、前記第一電極及び前記第二電極は(i)前記同軸伝送線路によって伝達される前記RFエネルギーを送達するためのバイポーラ構造体、及び(ii)前記同軸伝送線路によって伝達される前記マイクロ波エネルギーを放射するためのアンテナ、として構成される、前記電気手術器具。
【請求項2】
前記遠位に面する端面は、前記送達されたRFエネルギーを前記突出ニブに集束させる輪郭を示す、請求項1に記載の電気手術器具。
【請求項3】
前記遠位に面する端面は円錐形である、請求項1または2に記載の電気手術器具。
【請求項4】
前記遠位に面する端面は、前記突出ニブの長手方向軸に対して45°の角度をなす、請求項2に記載の電気手術器具。
【請求項5】
前記遠位に面する端面は丸みを帯びている、請求項1または2に記載の電気手術器具。
【請求項6】
前記第一電極は、前記内部導体の遠位に延在する部分によって形成される、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の電気手術器具。
【請求項7】
前記第一電極は、コネクタロッドを介して前記内部導体に結合される、請求項1から5のいずれか1項に記載の電気手術器具。
【請求項8】
前記コネクタロッドは、前記内部導体の外面に固定される近位シースを含む、請求項7に記載の電気手術器具。
【請求項9】
前記コネクタロッドは、圧着によって前記内部導体に接続される、請求項7または8に記載の電気手術器具。
【請求項10】
前記第二電極は、前記外部導体の遠位部分の上にある近位部分を有する導電性スリーブを含む、請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の電気手術器具。
【請求項11】
前記導電性スリーブは圧着によって前記外部導体に固定される、請求項10に記載の電気手術器具。
【請求項12】
前記同軸伝送線路の遠位部分、及び前記エネルギー送達チップの近位部分を覆うように配置される、外側絶縁ジャケットをさらに含む、請求項1~請求項11のいずれか1項に記載の電気手術器具。
【請求項13】
前記アンテナは、前記マイクロ波エネルギーを生体組織内に結合するためのインピーダンス変換器として構成される、請求項1~請求項12のいずれか1項に記載の電気手術器具。
【請求項14】
前記第一電極、前記誘電体、及び前記第二電極は、前記エネルギー送達チップを前記マイクロ波エネルギー用の1/4波長変換器として動作させるように選択される長さを有する、請求項13に記載の電気手術器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体組織を切断して凝固させるために、高周波及びマイクロ波エネルギーを生体組織に送達するための電気手術器具に関する。電気手術器具は、例えば、内視鏡の器具チャネルを通過するサイズに作られる、可撓性内視鏡検査での使用に特に適していることができる。ただし、本発明は、他のタイプの手技、例えば、剛性腹腔鏡検査または開腹術などにおいて適用性を見いだすことができる。
【背景技術】
【0002】
外科的切除術は、肝臓または脾臓または腸など、人体内または動物体内の臓器に関連する不要な組織の部分を除去する手段である。組織が切断されるとき(分割または切開される)、小動脈と称される小さな血管が損傷し、または破裂する。初期の出血に続いて、出血点をふさぐことを試みる際に血液がクロットに変化する凝固カスケードが起こる。手術の間、患者は、できるだけ血液を失わないことが望ましく、よって、出血がない切断をもたらすことの試みにおいて様々なデバイスが開発されてきた。
【0003】
例えば、Hemostatix(登録商標)サーマルスカルペルシステムは、鋭利なブレードを止血システムと組み合わせたものである。ブレードはプラスチック材料でコーティングされており、ブレードの温度を正確に制御する加熱ユニットに連結される。その意図は、加熱されたブレードが組織を切断するときに焼灼することである。
【0004】
切断して同時に出血を止める他の既知のデバイスは、ブレードを使用しない。一部のデバイスは、高周波(RF)エネルギーを使用して、組織を切断する、及び/または凝固させる。他のデバイス(ハーモニックスカルペルとして知られている)は、組織を切断するために迅速に振動するチップを使用する。
【0005】
RFエネルギーを使用して切断する方法は、電流が組織マトリックスを通過するときに(細胞のイオン含有量によって支援される)、組織を横切る電子の流れに対するインピーダンスが熱を発生するという原理を使用して動作する。純粋な正弦波が組織マトリックスに適用されると、組織の水分を気化させるのに十分な熱が細胞内で発生する。したがって、細胞の内圧が莫大に上昇して細胞膜では制御できなくなり、その結果、細胞が破裂する。これが広範囲にわたって発生すると、組織が切断されたことが見てとれる。
【0006】
RF凝固は、組織に効率の劣る波形を適用することで機能させ、それにより、気化させる代わりに、細胞の内容物が約65℃に加熱される。これはまた、乾燥によって組織を脱水させ、血管壁のタンパク質と細胞壁を構成するコラーゲンを変性させる。タンパク質の変性は凝固カスケードへの刺激として作用するため、凝固が促進される。同時に、その壁のコラーゲンは、棒状の分子からコイルに変性する。これにより、血管が収縮してサイズが小さくなり、血餅にアンカーポイントを付し、詰まる領域が小さくなる。
【0007】
生体組織に熱エネルギーを与えることも、細胞を死滅させる有効な方法である。例えば、マイクロ波を与えると、生体組織が加熱されることで、切除(破壊)されることができる。この方法は、癌性組織をこのように切除することができるため、特に癌の治療に使用されることができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
最も一般的には、本発明は、マイクロ波エネルギーで組織の領域を切断すると同時に、RFエネルギーで切除を行うことができる電気手術器具を提供する。この器具は、生体組織の正確な切断を容易にするために集束されたRF場を放出するペンのような輪郭を有する遠位バイポーラエネルギー送達チップを含む。
【0009】
本発明によれば、電気手術器具が提供されることができ、この電気手術器具は、高周波(RF)エネルギー及びマイクロ波エネルギーを伝達するための同軸伝送線路、及び同軸伝送線路の遠位端部に結合されるエネルギー送達チップを含み、このエネルギー送達チップは、同軸伝送線路の内部導体に電気的に結合され、同軸伝送線路の外部導体の遠位端部を越えて突出する第一電極と、同軸伝送線路の外部導体に電気的に結合され、第一電極の一部に沿って同軸に延在する第二電極と、第一電極と第二電極との間に配置される誘電体と、を含み、ここで、第一電極は誘電体の遠位端部を越えて突出する突出ニブを含み、第二電極及び誘電体はエネルギー送達チップの遠位端部で露出する部分を含み、第一電極及び第二電極は(i)同軸伝送線路によって伝達されるRFエネルギーを送達するためのバイポーラ構造体、及び(ii)同軸伝送線路によって伝達されるマイクロ波エネルギーを放射するためのアンテナ、として構成される。
【0010】
上記の構造体により、本発明の器具は、突出ニブでのRFエネルギーの集束された送達を提供することにより、デバイスをペンとして操作して切断線を「描画」することで、正確な切断が容易になる。有利なことに、エネルギー送達ユニットは、出血の場合のすべての迅速な凝固にもマイクロ波エネルギーを送達するように構成される。RF及びマイクロ波エネルギーは別々に、または同時に与えられることができる。
【0011】
RFエネルギーの最適な集束を達成するために、エネルギー送達チップは、遠位に面する端面を含むことができ、この遠位に面する端面は、誘電体の露出部分と、突出ニブを中心に同心円状に配置される第二電極の露出部分とを含む。したがって、正面から見ると、器具は、突出ニブがその中央にあるので、ブルズアイに似ていることができる。したがって、この器具は、長手方向中心軸(例えば、同軸伝送線路の軸)の周りに回転対称性を有することができるため、電流効果は、器具の向きに関係なく均一になる。
【0012】
遠位に面する端面は、突出ニブに送達されたRFエネルギーを集束させる輪郭を示すことができる。この遠位端面の輪郭は、視認性を助ける、すなわち、突出ニブがオペレータに見えることを確実にすることで助けることができる。
【0013】
一例では、遠位に面する端面は円錐形であることができる、すなわち、突出ニブに向けて直線的にテーパ状になることができる。この円錐面の角度は、視認性、及び場の集束を助けるように選択されることができる。一例では、遠位に面する端面は、突出ニブの長手方向軸に対して45°の角度をなすことができる。
【0014】
別の例では、遠位に面する端面は、丸みのある、例えば、ドーム状または半球状であることができる。突出ニブにより、この構造は、エネルギー送達チップにボトルノーズの外観を与えることができる。誘電体の露出部分は、好ましくは、第二電極の露出部分の遠位端部よりもさらに遠位に突出する。
【0015】
第一電極は、内部導体の遠位に延在する部分によって形成されることができる。換言すれば、内部導体は、エネルギー送達チップを通して連続して同軸伝送線路から延出することができることにより、突出ニブが形成されることができる。
【0016】
ただし、他の例では、第一電極は、内部導体とは別の構成要素であってもよい。それは、コネクタロッドを介して内部導体に結合されることができる。コネクタロッドは、さらなる構成要素であってもよい、または第一電極と一体化して形成されてもよい。この構成の利点は、コネクタロッド及び/または第一電極の寸法が独立して選択されることができることである。これは、以下で議論されるように、マイクロ波エネルギー用のエネルギー送達チップのインピーダンスを調整するのを助けることができる。
【0017】
コネクタロッドは、内部導体の遠位端部の外面に固定される近位シースを含むことができる。したがって、第一電極は、内部導体の延長部として接続されることができる。コネクタロッドは、圧着などの機械的接続が好ましい場合があるが、任意の適切な技術によって内部導体に接続されることができる。
【0018】
第二電極は、外部導体の遠位部分の上にある近位部分を有する導電性スリーブを含むことができる。導電性スリーブは、近位部分内の外部導体に電気的に接続され、物理的に固定されることができる。例えば、導電性スリーブは、圧着によって外部導体に固定されることができる。
【0019】
器具は、同軸伝送線路の遠位部分、及びエネルギー送達チップの近位部分を覆うように配置される、外側絶縁ジャケットをさらに含むことができる。ジャケットは、同軸伝送線路及びエネルギー送達チップを保護し、遠位チップを除いて構造体からエネルギーが漏れるのを防ぐことができる。
【0020】
アンテナは、マイクロ波エネルギーを生体組織内に結合するためのインピーダンス変換器として構成されることができる。換言すれば、エネルギー送達チップは、同軸伝送線路のインピーダンスをマイクロ波エネルギーの典型的な組織インピーダンスに変換するように構成されることができる。例えば、第一電極、誘電体、及び第二電極は、エネルギー送達チップをマイクロ波エネルギー用の1/4波長変換器として動作させるように選択される長さを有することができる。
【0021】
この器具は、外科用スコープデバイスの器具チャネルを通り抜ける寸法に作られることができる。例えば、器具は、2.0mm以下の最大外径を有することができる。いくつかの例では、器具は、1.0mm以下の最大外径を有するようにさらに小型化されることができる。突出ニブは、0.2mm以下の直径を有してもよい。突出ニブは、1.0mm以下の長さを有してもよい。
【0022】
本明細書では、用語「外科用スコープデバイス」は、侵襲的処置中に患者の体内に導入される剛性または可撓性の(例えば、操作可能な)導管である挿入管を備えた任意の外科用デバイスという意味で使用されてよい。挿入管は、器具チャネルと(例えば、光を伝えて挿入管の遠位端で治療部位を照らす、及び/または治療部位の画像をキャプチャするための)光チャネルとを含み得る。器具チャネルは、侵襲的な手術道具を受け入れるのに適した直径を有し得る。器具チャネルの直径は5mm以下であり得る。本発明の実施形態では、外科手術用スコープデバイスは、超音波対応の内視鏡であり得る。
【0023】
本明細書において、用語「内部」とは、器具チャネル及び/または同軸ケーブルの中心(例えば、軸)に対して半径方向により近いことを意味する。用語「外部」は、器具チャンネル及び/または同軸ケーブルの中心(軸)から半径方向により遠いことを意味する。
【0024】
本明細書では、用語「導電性」は、文脈による別段の指示がない限り、電気伝導性という意味で使用される。
【0025】
本明細書では、用語「近位」及び「遠位」とは、細長いプローブの端のことをいう。使用の際に、近位端は、RF及び/またはマイクロ波エネルギーを供給するための発生器により近く、その一方で遠位端は発生器からより遠い。
【0026】
本明細書では、「マイクロ波」は、400MHz~100GHzの周波数範囲を指して広く使われてよいが、好ましくは1GHz~60GHzの範囲を指す。マイクロ波EMエネルギーの好ましいスポット周波数は、915MHz、2.45GHz、3.3GHz、5.8GHz、10GHz、14.5GHz、及び24GHzを含む。5.8GHzが好ましい場合がある。デバイスは、これらのマイクロ波周波数のうちの複数の周波数でエネルギーを送達してよい。
【0027】
「高周波」または「RF」という用語は、300kHz~400MHzの周波数を示すために使用される場合がある。
【0028】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の一実施形態である、電気手術装置を示す概略図である。
図2】本発明で使用できる内視鏡の器具コードを通した概略断面図である。
図3】本発明の一実施形態である電気手術器具の遠位端部の断面図である。
図4】本発明の別の実施形態である電気手術器具の遠位端部の断面図である。
図5図4の電気手術器具の斜視図である。
図6】本発明の別の実施形態である電気手術器具の遠位端部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、侵襲的電気手術器具の遠位端部に高周波エネルギー及びマイクロ波エネルギーを与えることができる電気手術装置100の概略図である。この例では、装置は、流体、例えば冷却流体を送達するように構成されることもできるが、それは必須ではない。システム100は、高周波(RF)及びマイクロ波エネルギーを制御可能に与えるための発生器102を含む。この目的のために好適な発生器は、WO2012/076844に記載されており、参照により本明細書に援用される。発生器は、送達に適切な電力レベルを判定するために、器具から戻って受信される反射信号を監視するように構成されてよい。例えば、発生器は、最適な供給電力レベルを判定するために、器具の遠位端でわかるインピーダンスを計算するように構成され得る。
【0031】
発生器102は、インタフェースケーブル104によってインタフェースジョイント106に接続されている。インタフェースジョイント106はまた、流体流路107を介して注射器などの流体送達デバイス108に接続されている。いくつかの例では、装置は、追加的または代替的に、治療部位から流体を吸引するように配置され得る。このシナリオでは、流体流路107は、流体をインタフェースジョイント106から離れて適切なコレクタ(図示せず)に運ぶことができる。吸引機構は、流体流路107の近位端に接続することができる。
【0032】
必要に応じて、インタフェースジョイント106は、例えば、1つ以上の制御ワイヤまたはプッシュロッド(図示せず)の縦方向(前後)の動きを制御するために、トリガをスライドさせることによって動作可能な器具制御機構を収容することができる。複数の制御ワイヤがある場合、完全な制御をもたらすために、インタフェースジョイントに複数のスライド式トリガが存在し得る。インタフェースジョイント106の機能は、発生器102、流体送達装置108及び器具制御機構からの入力を、インタフェースジョイント106の遠位端から延伸する単一の可撓性シャフト112に結合することである。
【0033】
可撓性シャフト112は、外科用スコープデバイス114の器具チャネル(作業チャネルとしても知られている)の全長を通して挿入可能であり、外科用スコープデバイス114は、本発明の実施形態では、内視鏡を含み得る。
【0034】
外科手術用スコープデバイス114は、いくつかの入力ポートと、器具コード120がそこから延びる出力ポートとを有する本体116を備える。器具コード120は、複数のルーメンを取り囲む外装を備える。複数のルーメンは、本体116から器具コード120の遠位端まで様々なものを移送する。複数のルーメンのうちの1つは、上で論じた器具チャネルである。他のルーメンは、光放射を伝達するためのチャネルを含み、例えば、遠位端部に照明を提供し得る、または遠位端部から画像を収集し得る。本体116は、遠位端を見るための接眼鏡122を含み得る。
【0035】
可撓性シャフト112は、外科用スコープデバイス114の器具チャネルを通過し、器具コードの遠位端部で(例えば、患者の内部へ)突出する形に作られた遠位アセンブリ118(図1では縮尺どおりに描かれていない)を有する。
【0036】
遠位端部アセンブリ118は、以下で論じられる電気手術器具のいずれかであり得る。遠位端部アセンブリ118は、従来の内視鏡での使用のために特に設計され得る。例えば、遠位端部アセンブリ118の最大外径は、2.0mm以下、例えば1.9mm未満(より好ましくは、1.5mm未満)であり得、可撓性シャフトの長さは1.2m以上であり得る。他の例では、構造体は、さらに小さいスペースでの使用のために構成され得る。例えば、遠位端部アセンブリ118の最大外径は、1.0mm以下であり得る。
【0037】
本体116は、可撓性シャフト112に接続するための電源入力ポート128を含む。以下に説明するように、可撓性シャフトの近位部は、高周波及びマイクロ波エネルギーを発生器102から遠位アセンブリ118に伝達することができる従来の同軸ケーブルを備え得る。内視鏡の器具チャネルに物理的に嵌め込むことができる同軸ケーブルは、以下の外径、1.19mm(0.047インチ)、1.35mm(0.053インチ)、1.40mm(0.055インチ)、1.60mm(0.063インチ)、1.78mm(0.070インチ)で利用可能である。直径がさらに小さい、例えば0.8mm以下のカスタムサイズの同軸ケーブルも使用されることができる。
【0038】
上記のように、器具コード120の少なくとも遠位端の位置を制御できることが望ましい。本体116は、器具コード120を通して延在する1本以上の制御ワイヤ(図示せず)により、器具コード120の遠位端に機械的に結合された制御アクチュエータを備えてもよい。制御ワイヤは、器具チャネル内を移動することができ、または独自の専用チャネル内で移動することができる。制御アクチュエータは、レバーもしくは回転可能なノブ、またはその他知られている任意のカテーテル操作デバイスであってもよい。器具コード120の操作は、例えばコンピュータ断層撮影(CT)画像を組み合わせられた仮想3次元マップを使用して、ソフトウェアで支援してもよい。
【0039】
図2は、器具コード120の軸を見下ろした図である。この実施形態では、器具コード120内に4つのルーメンがある。最大のルーメンは、器具チャネル132である。その他のルーメンは、一対の照明チャネル136、138及びカメラチャネル134を含み得る。ただし、本発明はこの構成に限定されない。例えば、他のルーメン、例えば、制御ワイヤまたは流体の送達もしくは吸引のためのものがあり得る。
【0040】
図3は、本発明の一実施形態である電気手術器具200の遠位端部の断面図である。器具200は、可撓性同軸伝送線路202及び遠位エネルギー送達チップ212を含む、概して円筒形の細長い部材である。可撓性同軸伝送線路202は、発生器に戻るように(例えば、外科用スコープデバイスの器具チャネルを通して)延在する同軸ケーブルであり得る。同軸伝送線路202は、高周波(RF)エネルギー及びマイクロ波エネルギーを、別々か同時か、いずれかで伝達するように構成され得る。以下でより詳細に説明されるように、遠位エネルギー送達チップ212は、組織の切断及び凝固のために集束されたRFエネルギーの送達のために、バイポーラ要素を提供するように構成され得る。遠位エネルギー送達チップ212は、マイクロ波エネルギーを組織内に放射して、凝固させる、または切断するためのアンテナとしてさらに構成され得る。
【0041】
同軸伝送線路202は、内部(中心)導体204を含み、この内部導体は、誘電体(電気絶縁)層206によって同心円状に配置された外部導体208から分離される。外部導体208の外面はジャケット210によって覆われることで、保護が提供され、外部導体208が電気的に絶縁される。
【0042】
同軸伝送線路202の遠位端部は、遠位エネルギー送達チップ212に接続される。遠位エネルギー送達チップ212は、器具の遠位端部に向けて長手方向に延在する誘電体216を含む。長手方向は、その遠位端部で同軸ケーブルの軸とアライメントされる。誘電体216は、概して円筒形であり得、同軸伝送線路202の外径よりも小さい外径を有し得る。誘電体216は、同軸伝送線路202内の誘電体層206と、同じ材料または異なる材料から作製されてもよい。
【0043】
誘電体216は、それを通って延びる中空の長手方向に延在する通路を含む。この通路は、適切な寸法を有するように機械加工されることができる。近位端部では、誘電体216内の通路は、誘電体層206の遠位端部を越えて延出する内部導体204の一部を受容する。内部導体204は、第一電極220に電気的に結合される。第一電極220は、ロッド要素を含み、このロッド要素は、誘電体216の通路内に配置される遠位部分、及びエネルギー送達チップ212の最遠位端部で突出する(露出する)近位部分を含む。この例では、第一電極220は、コネクタロッド218によって内部導体204に電気的に(かつ物理的に)結合される。コネクタロッド218は、導電性材料、例えば、内部導体204及び/または第一電極220と同じ材料から作製され得る。コネクタロッド218は、内部導体204の遠位部品に(例えば、圧着部224を介して)固定される近位スリーブ部品を含み得る。第一電極220は、コネクタロッド218と一体化して形成されてもよい、またはそれに固定される別個の構成要素であってもよい。
【0044】
実際には、遠位エネルギー送達チップ212は、以下の、
内部導体204の遠位の長さから誘電体層206及び外部導体208を剥くことと、
コネクタロッド218を露出した内部導体204に固定することと、
コネクタロッドの周りに誘電体216を、例えば、ラップ、成形などによって形成することと、
というステップによって製造され得る。
【0045】
エネルギー送達チップ212は、第二電極214をさらに含み、この第二電極は、誘電体216の周りに取り付けられる導電性スリーブを含む。導電性スリーブは、同軸伝送線路の外部導体208に電気的に結合される。この例では、導電性スリーブの近位部分は、圧着部222を介して外部導体208の遠位部分に電気的にも物理的にも結合される。
【0046】
絶縁材料から作製されるジャケット210は、同軸伝送線路202を越えて延出し、導電性スリーブの一部を覆う。ただし、ジャケット210はエネルギー送達チップ212の遠位端部の手前で終わることにより、第二電極214の遠位端部の部分230が露出する。
【0047】
したがって、エネルギー送達チップ212の遠位端部は、ブルズアイに似ており、第一電極220の一部である中心の突出ニブと、誘電体216の露出部分232と、誘電体216によって第一電極から分離される第二電極214の露出部分230とを含む。突出ニブ220の最遠位端部は、例えば、使用中に生体組織に引っ掛かるのを防ぐために、丸くし得る。
【0048】
この構造体は、RFエネルギーを送達するためのバイポーラ構造体を提供する。第一電極220及び第二電極214は、バイポーラ構造体のためのアクティブ電極及びリターン電極を形成する。ブルズアイ構成は、最遠位の表面に沿って優先的なエネルギーの流れを発生するように機能し、中央のニブとその周辺でエネルギー密度が増加する。そのようなエネルギー分布は、切断に有利である。切断効果が突出ニブで優先的に発生するため、器具はペンのように操作され得る。突出ニブ220の導電性表面積が露出部分230の表面積よりも小さいため、RFエネルギーの集束が起こり得る。集束されたエネルギー分布は、切断が突出ニブから始まることを意味し得る。したがって、デバイスは直感的に使える。
【0049】
エネルギー送達チップ212の遠位端部は、エネルギー送達または操作を容易にする方法で輪郭が作られ得る。例えば、図3では、ブルズアイは尖った(例えば、円錐形の)輪郭を有し、この輪郭では、第二電極214の露出部分230、及び誘電体216の露出部分232は突出ニブ220に向けて傾斜する。傾斜の角度は、好ましくは30~60°の範囲内、好ましくは45°であり得る。
【0050】
RFエネルギーを送達して生体組織を切断することに加えて、遠位エネルギー送達チップ212は、凝固のためにマイクロ波エネルギーを送達する、マイクロ波アンテナとして構成されることができる。コネクタロッド218及び第一電極220、誘電体216、ならびに第二電極214の相対的な寸法は、エネルギー送達チップ212がマイクロ波エネルギーを生体組織内に結合するのに適したインピーダンスを有することを確保するように選択され得る。一例では、エネルギー送達チップ212は、同軸伝送線路202によって伝達するマイクロ波エネルギーの周波数では、1/4波長変換器として構成され得る。この構成は、マイクロ波エネルギーの組織内への結合を促進するように機能する。
【0051】
この構造体は、外科用スコープデバイス、例えば内視鏡などの器具チャネルを通した挿入に適しているサイズを有し得る。例えば、同軸伝送線路202は、1.6mmの外径を有する同軸ケーブルであり得る。第二電極214は、2.0mmの最大外径を有し得る。第二電極214の内面と第一電極220(またはコネクタロッド218)との間の半径方向のギャップ、すなわち、第一電極と第二電極との間の誘電体216の半径方向の最小の厚さは、0.4mmであり得る。突出ニブ220は、0.2mmの最大直径を有し得る。
【0052】
この器具は、さらに小型化できる可能性がある。例えば、同軸ケーブルは、デバイス全体が1.0mmの直径を有する通路を通り抜け得るように、0.8mmの外径を有し得る。
【0053】
図4は、本発明の別の実施形態である電気手術器具240の遠位端部の断面図である。図3と共通する特徴には同じ参照番号を付け、改めて説明しない。
【0054】
図4の電気手術器具240は、エネルギー送達チップ212の輪郭がボトルノーズ形状を有するという点で図3とは異なる。これは、第二電極の露出端面244によって画定され、この露出端面は、誘電体216の丸みのある露出部分242と接合するように丸く湾曲している、丸みのある、例えばドーム状の遠位端部を有する。誘電体216の露出部分242は、第二電極214の露出部分244の遠位端部を越えて遠位に延出する。
【0055】
図5は、図4の電気手術器具240の斜視図である。
図6は、本発明の別の実施形態である電気手術器具250の遠位端部の断面図である。図4と共通する特徴には同じ参照番号を付け、改めて説明しない。
【0056】
図6の電気手術器具240は、突出ニブ220の最遠位チップがその上に形成される絶縁キャップ252を含むという点で図4とは異なる。絶縁キャップ252は、第二電極214の露出部分244と突出ニブ220の露出部分との間にRF場を形成するのを助け得る。例えば、それは、RFエネルギーが器具の最遠位端部を越える経路を取るのを妨げ得る。また、絶縁キャップ252は、器具が治療部位にナビゲートするときに望ましくない組織損傷を回避する滑らかな(例えば、丸みのある)表面を提供し得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6