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特許7492772咽頭反射の処置のための組成物および治療
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】咽頭反射の処置のための組成物および治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 33/14 20060101AFI20240523BHJP
   A61K 31/19 20060101ALI20240523BHJP
   A61P 11/04 20060101ALI20240523BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
A61K33/14
A61K31/19
A61P11/04
A61K9/14
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022539396
(86)(22)【出願日】2020-12-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-21
(86)【国際出願番号】 US2020064604
(87)【国際公開番号】W WO2021138025
(87)【国際公開日】2021-07-08
【審査請求日】2023-12-04
(31)【優先権主張番号】62/954,966
(32)【優先日】2019-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/100,677
(32)【優先日】2020-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522254893
【氏名又は名称】オリオン イノベーションズ インク.
(74)【復代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】プロボスト,ウェイン
(72)【発明者】
【氏名】オルソン,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】オルソン,デシカ
【審査官】三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04634591(US,A)
【文献】The Journal of prosthetic dentistry,1995年,Vol.73, No.3,pp.319
【文献】日摂食嚥下リハ会誌,2012年,Vol.16, No.1,pp.13-19
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00- 33/44
A61P 1/00- 43/00
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00- 47/69
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の咽頭反射(gag reflex)を制御するための組成物であって、該組成物は、3:1の体積割合の塩化ナトリウムおよびクエン酸からなり、粉末形態にある、組成物。
【請求項2】
患者の咽頭反射を制御するための方法に使用するための組成物であって、該方法は、
3:1の体積割合の塩化ナトリウムおよびクエン酸から実質的になる前記組成物を提供する工程、ならびに
前記患者の舌の上面と治療量の前記組成物を接触させることで、前記治療量の前記組成物を前記患者に投与する工程
を含み、
前記組成物は粉末形態にある、組成物
【請求項3】
前記治療量の前記組成物を前記患者に投与する工程後20秒未満の遅れまで口腔内処理を遅らせる工程を含む、請求項2に記載の組成物
【請求項4】
前記治療量の前記組成物を前記患者に投与する工程後12時間以内に口腔内処理を開始する工程を含む、請求項2に記載の組成物
【請求項5】
患者の咽頭反射を制御するための方法に使用するための組成物であって、該方法は、
3:1の体積割合の塩化ナトリウムおよびクエン酸から実質的になる組成物を提供する工程、
アプリケータを濡らす工程、
前記組成物と、濡らした前記アプリケータを接触させることで、治療量の前記組成物を、濡らした前記アプリケータに付着させる工程、ならびに
前記患者の舌の上面と、濡らした前記アプリケータおよびそこに付着させた前記治療量の前記組成物を接触させることで、前記治療量の前記組成物を前記患者に投与する工程を含む、組成物
【請求項6】
前記治療量の前記組成物を前記患者に投与する工程後20秒未満の遅れまで口腔内処理を遅らせる工程を含む、請求項5に記載の組成物
【請求項7】
前記治療量の前記組成物を前記患者に投与する工程後12時間以内に口腔内処理を開始する工程を含む、請求項5に記載の組成物
【請求項8】
前記組成物は粉末形態にある、請求項5に記載の組成物
【請求項9】
前記アプリケータを濡らす工程は、前記アプリケータを前記患者の舌に当てることを含む、請求項5に記載の組成物
【請求項10】
前記アプリケータを濡らす工程は、前記アプリケータを前記患者の唾液で濡らすことを含む、請求項5に記載の組成物
【請求項11】
前記アプリケータは、舌圧子、綿棒、手袋をはめた指、および手袋をはめていない患者の指からなる群から選択される、請求項5に記載の組成物
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
咽頭反射(pharyngeal reflex, gag reflex)、あるいは喉頭痙攣(laryngeal spasm)(本明細書ではまとめて「咽頭反射(gag reflex)」と言う)は、口蓋、扁桃のまわりの領域、口蓋垂および咽喉の後部に触れることにより引き起こされた咽喉の後部の反射収縮である。咽頭反射は、反射をもたらすために矢継ぎ早に起こる一連の生理的なステップで構成される反射弓の最終的な結果である。一般に、感覚受容器は、咽喉の後ろの神経に達する物などの環境の刺激を受け取り、それは次に中枢神経系(CNS)に求心性神経を介してメッセージを送る。CNSはこのメッセージを受け取り、当初の刺激と同じ領域にあるエフェクター細胞へ遠心性神経を介して適切な反応を送り、それは適切な物理的な反応(すなわち咽頭反射)を実行する。咽頭反射は咳の一種であり、反射的咽頭のえん下などの他の通気消化性の反射と共に、通常のえん下を除き、口腔内の物が咽喉に入ることを防ぐためのものである。したがって、咽頭反射は窒息を防ぐための重要な生理反応である。
【0002】
咽頭反射感度は広く変動することがある。例えば、一部の人は咽頭反射を欠く一方で、他の人は過敏性咽頭反射を経験する。この過敏症は、錠剤の薬を飲み込もうとするとき、大きな食べ物を飲み込むとき、さらには歯医者に行くときなどに口腔内の検査を受けるときなど、さまざまな場面で問題になり得る。多くの場合において、過敏症の咽頭反射は窒息、吐き気および嘔吐の結果をもたらす。
【0003】
咽頭反射を減らそうとする様々なシステムおよび方法が現在存在する。例えば、局所麻酔薬は咽頭反射を制御するために一般的に用いられ、ここで、薬剤は咽頭反射の開始の原因である感覚受容器を麻痺させる。いくつかの例において、この方法は、患者の口腔および咽を全体的に麻痺させるため(患者にさらなる不安をもたらす可能性がある)、好ましくない、および/または、効果がない。精神安定剤などの他の薬物も咽頭反射に寄与することがある不安および緊張を和らげるために使用されてもよい。しかしながら、この解決策は、患者の特定のニーズに基づいて有効性が制限され、患者が服用する他の薬物と互換性がないことがある。刺鍼術と鍼療法の技術も空嘔吐の処置のために存在するが、これらの方法は時間がかかり、すべての患者に有効ではない。
【0004】
米国特許第4,634,591(Westerman)は、患者の血流および/または胃液中に存在するのと同じ割合の電解質を含む水溶性錠剤を舌下投与することにより、患者の空嘔吐または吐き気を治療または抑制する方法を提供する。これらの電解質はナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、塩化物、重炭酸塩およびリン酸塩を含み得る。この方法は、錠剤の実質的な部分溶かされおよび患者の体系へ吸収されるように、2~5分間上記錠剤を患者の舌の下に置くことを要求する。患者が空嘔吐がひどい場合、必要な結果を得るために続いて2つ目の錠剤を用いることが必要となり得る。したがって、Westermanの製剤は、咽頭反射を抑えて止めることが報告されているものの、これらの方法は、非能率的で退屈であり、舌下投与が困難な小児および他の患者が使用するには適さない可能性がある。
【0005】
したがって、咽頭反射を処置するシステムおよび方法は現在存在するものの、課題は残ったままである。本発明はこれらの課題に満たし、克服する。
【発明の概要】
【0006】
本明細書に記載されているいずれの特徴も、本発明の明示的に明言され、かつ意図した作用に従う希望の構造に送達するために組み合わせてもよい。本明細書における「いくつかの実施形態において」および「いくつかの例において」という移行句の使用は、任意の実施形態の範囲を、特定の特徴にまたはそれによって開示された特徴のセットに限定することを意図していない。むしろ、本明細書に記載されているすべての様々な実施形態の意図は、特定の特徴または特徴のセットが、発明概念の文脈で全体として理解される文脈のフレームワークを提供することである。したがって、本開示の全体は、本明細書に開示される、全体としての発明概念の範囲内で、装置、システムまたは方法を達成するために選択され組み合わせられ得る、(当業者に要求される範囲に合わせて)、交換可能かつモジュールの要素の本体として理解されるものである。
【0007】
本発明の第1の態様において、患者の咽頭反射を制御するための組成物が提供され、ここで、組成物は、塩化ナトリウムと酸味剤を含む。いくつかの例において、組成物は塩化ナトリウムと酸味剤を1:4の割合で含む。いくつかの例において、組成物は粉末形態を含む。いくつかの例において、組成物は、粉末、液体、溶解性フィルムおよび口腔内崩壊錠の群から選択される形態を含む。いくつかの例において、酸味剤としてクエン酸を含む組成物が提供される。
【0008】
本発明の第2の態様において、患者の咽頭反射を制御する方法が特徴され上記方法は、i)本発明に係る組成物を調製する工程、およびii)患者の舌に組成物を投与する工程を含む。いくつかの例において、本発明の方法は、患者の舌に組成物を投与する工程の後に、口腔内処理を遅らせるためのさらなる工程を含む。いくつかの例において、口腔内処理を遅らせるための工程は、20秒未満の遅れを含む。いくつかの例において、本発明の組成物の治療効果は、12時間よりも長く持続する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、患者の咽頭反射を制御するための組成物および方法に関する。特に、本発明は、特に咽頭反射を引き起こし得る方法で、患者の口腔にアクセスする直前に、患者の舌に適用される経口組成物に関する。一般に、本発明の組成物は、塩化ナトリウムおよび酸味剤の混合物を含む速効力のある経口製剤である。いかなる特定の理論に拘束されることを望むことはないが、本発明が作動する潜在的なメカニズムの1つは、i)塩化ナトリウムによる唾液分泌の増加、およびii)酸味剤によるえん下反射の刺激の組み合わせであって、ここで、これらの組み合わせた生理的反応が、患者の咽頭反射をマスクするか、さもなければ抑えると考えられる。
【0010】
本発明に係る組成物は、塩化ナトリウムを含む。塩化ナトリウムは、限定されないが、粉末形態、結晶性形態、液体の懸濁形態、およびスラリー形態を含む、いかなる適切な形態で用いられてもよい。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、食塩の形態の塩化ナトリウムを含む。
【0011】
本発明に係る組成物は、酸味剤をさらに含む。本明細書で使用されるように、「酸味剤」という用語は、任意の化合物、成分、化学物質、または患者の舌に置かれた時、患者に酸っぱい、または酸性の味を与える他の物質を記述するように解される。酸味剤は、限定されないが、粉末形態、液体形態、結晶性形態、液体の懸濁形態、およびスラリー形態を含む、適切な形態で用いられてもよい。酸味剤の非制限的な例には、クエン酸、レモン果汁、レモン果汁粉末、ライム果汁、ライム果汁粉末、マンゴー粉末(amchur)、スモモ(sour plum)、スモモ果汁(sour plum juice)、スモモ果汁粉末(sour plum juice powder)、スマック、タマリンド、タマリンド粉末、酢、酢粉末、梅干し酢、梅干し酢粉末、ヴェルジュ、ヴェルジュ粉末など含まれる。いくつかの実施形態において、組成物は、塩化ナトリウムおよび2つ以上の酸味剤の混合物を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、塩化ナトリウムおよび1つの酸味剤の混合物を含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、塩化ナトリウムと酸味剤の混合物を含む組成物が提供され、ここで、この2つの成分の割合は、患者の咽頭反射を抑制する治療利益をもたらすように選択される。いくつかの実施形態において、塩化ナトリウムと酸味剤の混合物を含む組成物が提供され、ここで、塩化ナトリウムと酸味剤との割合は、20:1、15:1、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、または1:1である。いくつかの実施形態において、塩化ナトリウムと酸味剤の混合物を含む組成物が提供され、ここで、酸味剤と塩化ナトリウムの割合は、20:1、15:1、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、または1:1である。
【0013】
いくつかの実施形態において、塩化ナトリウムとクエン酸とを含む組成物が提供される。
【0014】
いくつかの実施形態において、塩化ナトリウムは、組成物の100体積部に基づいて、約90体積部、約80体積部、約70体積部、約60体積部、約50体積部、または50体積部未満の量で組成物に存在する。いくつかの実施形態において、塩化ナトリウムは、組成物の100体積部に基づいて、約80体積部の量で組成物に存在する。
【0015】
いくつかの実施形態において、クエン酸は、組成物の100体積部に基づいて、約5体積部、約10体積部、約15体積部、約20体積部、約25体積部、約30体積部、約35体積部、約40体積部、約45体積部、約50体積部、または50体積部を超える量で、組成物に存在する。いくつかの実施形態において、クエン酸は、組成物の100体積部に基づいて、約20体積部の量で組成物に存在する。
【0016】
いくつかの実施形態において、塩化ナトリウムは、組成物の100体積部に基づいて、約80体積部の量で組成物に存在し、クエン酸は、組成物の100体積部に基づいて、約20体積部の量で組成物に存在する。
【0017】
いくつかの実施形態において、組成物は、組成物の総重量に対して約15重量%、約20重量%、約25重量%、約30重量%、約35重量%、約40重量%、約45重量%、約50重量%、または50重量%を超える塩化ナトリウムを含む。いくつかの実施形態において、組成物は、組成物の総重量に対して約38重量%の塩化ナトリウムを含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、組成物は、組成物の総重量に対して、約90%重量%、約80重量%、約75重量%、約70重量%、約65重量%、約60重量%、約55重量%、約50重量%、または50重量%未満のクエン酸を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、組成物の総重量に対して約62重量%のクエン酸を含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、組成物は、組成物の総重量に対して、約38重量%の塩化ナトリウム、および組成物の総重量に対して、約62%重量%のクエン酸を含む。
【0020】
いくつかの実施形態において、乾燥粉末形態を含む組成物が提供される。いくつかの実施形態において、組成物は、本明細書に開示される1つ以上の割合による、塩化ナトリウムと酸味剤の混和の感想粉末形態である。いくつかの例において、組成物は、塩化ナトリウムとクエン酸の混和物の乾燥粉末形態である。
【0021】
いくつかの実施形態において、乾燥粉末組成物は、最終組成物中の成分の所望の割合を達成するために、特定の体積および/または特定の重量の塩化ナトリウムと酸味剤を混合することによって提供される。混和することは、機械によって達成されるか、または手作業で行われてもよい。いくつかの実施形態において、組成物の成分の1つ以上は、最終組成物へその成分を混和する前に、成分の所望の物理的状態を達成するために予め処理される。例えば、いくつかの実施形態において、望ましい顆粒の大きさを達成するために、例えば成分を粉砕し、磨砕し、および/または篩に通してろ過することによって、成分の1つ以上を予め処理することが望ましい。いくつかの実施形態では、酸味剤の液体形態を脱水または凍結乾燥させるなど、酸味剤の粉末形態を産生するために1つ以上の処理工程が必要とされる場合がある。以下に議論されるように、本発明のいくつかの実施形態は、添加物または他の賦形剤をさらに含む。
【0022】
いくつかの実施形態において、患者の舌の上で速やかに溶解する溶解性フィルムまたは口腔内薬物ストリップを含む組成物が提供される。いくつかの例において、溶解性フィルムは、塩化ナトリウムと、例えばクエン酸などの酸味剤とを含むポリマーである。いくつかの例において、溶解性フィルムは、ストリップを形成するポリマー、可塑剤、甘味料、唾液を刺激する薬剤、香料、着色料、安定化剤、粘稠化剤、および他の適切な賦形剤からなる群から選択された1つ以上の賦形剤をさらに含み、この賦形剤は、経口医薬品の投与剤形で使用するのに適している。
【0023】
いくつかの実施形態において、患者の舌の上で速やかに溶解するように構成された口腔内崩壊錠剤を含む組成物が提供される。いくつかの実施形態において、本発明の口腔内崩壊錠は、塩化ナトリウムと、クエン酸などの酸味剤を含む低圧縮錠(loose compression)である。いくつかの実施形態において、本発明の口腔内崩壊錠は、錠剤を損傷、湿気、および酸化から保護するために、密封したブリスターパック中単回用量の投与剤形で提供される。
【0024】
いくつかの実施形態において、口腔内スプレーを含む組成物が提供され、このスプレーは塩化ナトリウムとクエン酸などの酸味剤とを液体形態で含み、口腔内スプレーは患者の舌への適用のために構成される。
【0025】
いくつかの実施形態において、塩化ナトリウムと、クエン酸などの酸味剤とを含む経口ペーストまたは軟膏を含む組成物が提供され、この経口ペーストまたは軟膏は、患者の舌への適用のために構成される。
【0026】
いくつかの実施形態において、塩化ナトリウムと、クエン酸などの酸味剤とを含む洗口剤を含む組成物が提供され、この洗口剤は、有効な治療期間の間、患者の口の中に受動的に保持されるか、または患者の口の中に入れてゆすぐことによって、患者の舌に適用するために形成される。いくつかの実施形態において、有効な治療期間は、1秒未満、およそ1秒、およそ2秒、およそ3秒、およそ4秒、およそ5秒、およそ6秒、およそ7秒、およそ8秒、およそ9秒、およそ10秒、10秒よりも長い時間、または20秒未満である。いくつかの実施形態において、本発明の洗口剤の有効量は、1ml、およそ1ml、およそ2ml、およそ3ml、およそ4ml、およそ5ml、およそ6ml、およそ7ml、およそ8ml、およそ9ml、およそ10ml~20ml、およそ10ml~30ml、およそ15ml~25ml、またはおよそ15ml~20mlである。いくつかの例において、患者は、処置後に洗口剤を飲み込んでもよい。いくつかの例において、患者は、処置後に洗口剤を吐き出すように指示される。
【0027】
いくつかの実施形態において、咽頭反射を予防する、または抑制する方法が提供され、この方法は、患者の口腔にアクセスする直前に、本発明の組成物を患者の舌に適用する工程を含む。組成物が粉末形態で提供される実施形態において、組成物は、アプリケータを濡らした後、粉末組成物と接触させることによって患者の舌に適用してもよく、ここで、アプリケータの濡らされた状態が、治療量の粉末組成物を濡れたアプリケータに付着することをもたらす。その後、濡れたアプリケータ、および付着した粉末組成物は、患者の舌に適用される。いくつかの実施形態において、アプリケータは、舌圧子、綿棒、手袋をはめた指、または患者の手袋をはめていない指の少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態において、粉末組成物の計量部分は、患者の舌に直接適用される。


【0028】
組成物がペースト、軟膏またはゲル形態で提供される実施形態において、組成物は、適切なアプリケータを直接用いて、患者の舌に適用される。組成物が液体形態で提供される実施形態において、組成物の計量用量は、患者の舌に直接スプレーされてもよい。組成物が溶解性フィルム形態、または口腔内崩壊錠形態で提供される実施形態において、これらの投与剤形は治療上有効用量の組成物で調製され、ここで、これらの投与剤形は、患者の舌に直接適用される。
【0029】
本組成物の治療上有効用量は、患者のニーズおよび/または選択された投与剤形に依存して変化し得る。いくつかの実施形態において、本発明の組成物の治療上有効用量は、小さじ0.125杯、すなわち0.616mlの体積において0.5g未満の塩化ナトリウムと0.12g未満のクエン酸、小さじ0.0625杯、すなわち0.308mlの体積において0.25g未満の塩化ナトリウムと0.06g未満クエン酸、小さじ0.03125杯、すなわち0.154mlの体積において0.125g未満の塩化ナトリウムと0.003g未満のクエン酸、または小さじ0.015625杯、すなわち0.077mlの体積において0.0625g未満の塩化ナトリウムと0.0015g未満のクエン酸を含む。
【0030】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、患者の舌への組成物の適用または投与と、患者の口腔へのアクセスの間の遅れを含む。いくつかの例において、この遅れは、10秒未満、8秒未満、5秒未満、3秒未満、あるいは1秒未満である。いくつかの実施形態では、組成物の治療効果は、30分よりも長く、1時間よりも長く、2時間よりも長く、4時間よりも長く、8時間よりも長く、12時間よりも長く、16時間よりも長く、20時間よりも長く、あるいは24時間よりも長く持続する。
【実施例
【0031】
抗咽頭反射組成物(Anti-Gag Composition)
抗咽頭反射組成物は、塩化ナトリウムとエン酸の乾燥成分を1:4の割合で混合することによって、調製した。抗咽頭反射組成物の単回用量が調製され、個々の単回使用包装容器に密閉した。
【0032】
抗咽頭反射処理
急性咽頭過敏症を有する患者は、歯科治療の一部として口腔内の検査を受ける前に、本発明の抗咽頭反射組成物で処置された。舌圧子を濡らして抗咽頭反射組成物と接触させ、それによって、治療上有効用量の抗咽頭反射組成物が濡らされた舌圧子に付着した。その後、舌圧子および治療上有効用量の抗咽頭反射組成物は、患者の舌の上面に適用され、そうすると、抗咽頭反射組成物は、患者の舌の上で溶した。患者の口腔内の検査は、抗咽頭反射組成物を投与する30秒未満以内に始まった。患者は咽頭反射を明示せずに、口腔内の検査を受け、歯科治療を完了することができた。
【0033】
当業者であれば、本発明の様々な実施形態の様々な特徴および要素を本発明の精神の範囲内で変更および/または組み合わせて、患者の咽頭反射を防止または抑制するための組成物を提供することができることを理解する。例えば、本発明の活性薬剤は、エナンチオマー形態およびジアステレオマー形態を含む任意の立体異性体を含む、その任意の適合する類似体もしく薬学的に許容可能な塩を含むか、および/またはそれらで置換されてもよく、これらの全ては、本開示の範囲内で企図されるものである。本開示の化合物の個々の立体異性体は、例えば、他の異性体を本質的に含まなくてもよく、あるいはは、例えば、ラセミ体として、またはすべての他の、もしくは他の選択された立体異性体と、適用され得るように混和してもよい。特定の成分割合は、本明細書に開示されるように、および、患者の特定のニーズを満たすために所望されるように調整してもよい。本開示の範囲内において、様々な添加剤を含めること、および/または除外することも企図される。
【0034】
本発明は、本明細書に広く記載され、および以下に特許請求される、その構造、方法または他の本質的特徴から逸脱せず、他の特定形態で実施されてもよい。したがって、記載された実施形態は、すべての点で例示としてのみ考慮され、限定としては考慮されない。本発明の範囲はしたがって、前述の説明によりもむしろ添付された特許請求の範囲によって示される。特許請求の範囲の意味と均等性の範囲内にあるすべての変更は、それらの範囲内に包含されることになる。