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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】嚥下機能検査用錠剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 49/04 20060101AFI20240523BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20240523BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20240523BHJP
   A61K 47/40 20060101ALI20240523BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240523BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
A61K49/04 100
A61K9/20
A61K47/22
A61K47/40
A61K47/26
A61K47/38
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023032741
(22)【出願日】2023-03-03
【審査請求日】2023-11-21
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和4年3月4日日本薬学会第142回年会のWEB要旨集(https://confit.atlas.jp/guide/event/pharm142/advanced)にて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和4年3月28日オンラインで開催された日本薬学会142回年会にて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和4年4月6日一般社団法人日本臨床栄養代謝学会発行学会誌JSPEN4巻Supplement1号第335頁にて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和4年5月31日パシフィコ横浜において開催された第37回日本臨床栄養代謝学会年会学術集会にて発表
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520415177
【氏名又は名称】株式会社スモールビレッジ
(74)【代理人】
【識別番号】100183461
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 芳隆
(74)【代理人】
【識別番号】100121005
【弁理士】
【氏名又は名称】幸 芳
(72)【発明者】
【氏名】徳村 忠一
(72)【発明者】
【氏名】後藤 拓朗
(72)【発明者】
【氏名】篠永 浩
(72)【発明者】
【氏名】合田 佳史
【審査官】池上 文緒
(56)【参考文献】
【文献】Front. Surg.,2019年,vol.6,Article 43, p.1-4
【文献】第62回日本薬学会関東支部大会 日本薬学会関東支部 若手シンポジウム 要旨集,2018年,p.168(P-156)
【文献】E-Z-DISKTM(Barium Sulfate Tablets),Bracco Diagnostics Inc.,2016年12月05日,https://www.bracco.com/sites/default/files/2022-11/us-en-2019-04-18-spc-ezdisk.pdf
【文献】矢羽々豊編,添加剤の特性・選び方・使い方ノウハウ集,株式会社技術情報協会,2012年,p.3-16
【文献】第十四改正 日本薬局方解説書 通則 製剤総則 一般試験法,廣川書店,2001年,p.A-61-A-70
【文献】Neurogastroenterol. Motil.,2019年,vol.31, issue 3,e13512, p.1-9
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 49/04
A61K 9/20
A61K 47/22
A61K 47/40
A61K 47/26
A61K 47/38
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)バリウム化合物、並びに、
(B)ポリビニルピロリドン、シクロデキストリン、ソルビトール、メチルセルロース、結晶セルロース、及び、ヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選ばれる少なくとも2種のバリウム錠剤化用添加剤を含有する、嚥下機能検査用錠剤であって、
前記2種のバリウム錠剤化用添加剤が、
ポリビニルピロリドン、及び、シクロデキストリンの組合せ;
シクロデキストリン、及び、ソルビトールの組合せ;
シクロデキストリン、及び、メチルセルロースの組合せ;又は、
結晶セルロース、及び、ヒドロキシプロピルセルロースの組合せを含み、かつ、
前記2種のバリウム錠剤化用添加剤の合計量は、前記バリウム化合物100質量部に対して、66~150質量部である、嚥下機能検査用錠剤
【請求項2】
前記2種のバリウム錠剤化用添加剤が、ポリビニルピロリドン及びシクロデキストリンの組合せである、請求項1に記載の嚥下機能検査用錠剤。
【請求項3】
さらに、賦形剤を含有する請求項1に記載の嚥下機能検査用錠剤。
【請求項4】
さらに、滑沢剤を含有する請求項1に記載の嚥下機能検査用錠剤。
【請求項5】
硬度が、3kg以上である、請求項1に記載の嚥下機能検査用錠剤。
【請求項6】
崩壊時間が、3分以上20分以下である、請求項1に記載の嚥下機能検査用錠剤。
【請求項7】
ポリビニルピロリドン、及び、シクロデキストリンの組合せ;
シクロデキストリン、及び、ソルビトールの組合せ;
シクロデキストリン、及び、メチルセルロースの組合せ;又は、
結晶セルロース、及び、ヒドロキシプロピルセルロースの組合せを含有する、バリウム錠剤用硬度向上剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、嚥下機能検査用錠剤に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢化社会の到来を迎えて、脳血管機能障害等の疾患、加齢の影響等により、摂食嚥下機能が低下した摂食嚥下障害患者が増加している。
近年、嚥下機能を検査する有力な方法として、嚥下造影検査(Videofluoroscopic examination of swallowing、以下、「VF」という場合もある。)が普及している。嚥下造影検査(VF)とは、レントゲンをあてがいながら、バリウムの入った模擬食品を実際に口から食べて、口から食べる機能に異常がないかを調べる検査である。
【0003】
嚥下造影検査(VF)を行うにあたり、普段の食事の能力にできるだけ近い状態を評価するために、造影剤(硫酸バリウム)入りの模擬食品(例えば、ゼリー)を各施設で調製している(例えば、特許文献1)。
特許文献1には、前記硫酸バリウムが入った模擬食品として、例えば、硫酸バリウムとアルギン酸類及び/又はペクチンとカルシウム塩とを含む、嚥下造影検査食が記載されている(特許文献1)。特許文献1に記載の嚥下造影検査食を用いることで、再現性のある正確な嚥下造影検査を行うことができ、その結果、患者ごとに水分粘性等が適切に調整された嚥下調整食を提供することが可能となる。
【0004】
しかしながら、嚥下造影検査(VF)で一定の嚥下機能があると判断された摂食嚥下障害患者であっても、錠剤を服用することが難しく服用していないこと、錠剤の誤飲事故等が起こることがあった。これは、「食品を食べることができるかどうか」ということと、「錠剤を飲み込めるかどうか」ということとを同じではないため、前記嚥下造影検査食を用いた検査によって、摂食嚥下障害患者が食品を食べることができるかを評価することはできたとしても、錠剤を飲み込めるかどうかについては評価できなかったためである。
【0005】
そこで、錠剤を飲み込めるかどうかを検査でき、かつ、錠剤として良好な硬度及び崩壊性を有する嚥下機能検査用錠剤が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-000870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
かかる状況において、本発明は、錠剤を飲み込めるかどうかを検査でき、かつ、錠剤として良好な硬度及び崩壊性を有する嚥下機能検査用錠剤を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが、鋭意検討した結果、バリウム化合物と、ポリビニルピロリドン、シクロデキストリン、ソルビトール、メチルセルロース、結晶セルロース、及び、ヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選ばれる少なくとも2種の化合物とを混合することにより、上記課題を解決できることを見出した。本発明はこのような知見に基づき完成されたものである。
【0009】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
項1.
(A)バリウム化合物、並びに、
(B)ポリビニルピロリドン、シクロデキストリン、ソルビトール、メチルセルロース、結晶セルロース、及び、ヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選ばれる少なくとも2種のバリウム錠剤化用添加剤を含有する、嚥下機能検査用錠剤。
項2.
前記バリウム錠剤化用添加剤が、ポリビニルピロリドン及びシクロデキストリンである、項1に記載の嚥下機能検査用錠剤。
項3.
さらに、賦形剤を含有する項1に記載の嚥下機能検査用錠剤。
項4.
さらに、滑沢剤を含有する項1に記載の嚥下機能検査用錠剤。
項5.
硬度が、3kg以上である、項1に記載の嚥下機能検査用錠剤。
項6.
崩壊時間が、3分以上20分以下である、項1に記載の嚥下機能検査用錠剤。
項7.
ポリビニルピロリドン、シクロデキストリン、ソルビトール、メチルセルロース、結晶セルロース、又は、ヒドロキシプロピルセルロースを含有する、バリウム錠剤用硬度向上剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、錠剤を飲み込めるかどうかを検査でき、かつ、錠剤として良好な硬度及び崩壊性を有する嚥下機能検査用錠剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の嚥下機能検査用錠剤は、バリウム化合物を含有する。
バリウム化合物は、X線造影剤として作用する。バリウム化合物としては、X線に対する高い吸収率、水に不溶性で化学的に安定、人体に無害、廉価等の観点から、硫酸バリウムが好ましく用いられる。なかでも、硫酸バリウムとしては、高含量(90%以上)のものが好ましく、例えば、市販品のバリトゲン(登録商標)HD(98.6%)等を用いるのがより好ましい。
【0012】
バリウム化合物の含有量は、X線造影能力及び成形性の観点から、錠剤全質量に対して通常25~50質量%であり、好ましくは28~47質量%であり、より好ましくは30~45質量%である。
【0013】
バリウム化合物(硫酸バリウム)は、下記実施例において詳述するように、成形性が低く、それ自体を圧縮しても錠剤とはならない。よって、バリウム化合物を用いて錠剤を調製するためには、添加剤と混合する必要がある。
本発明者らは、バリウム化合物と、ポリビニルピロリドン、シクロデキストリン、ソルビトール、メチルセルロース、結晶セルロース、及び、ヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選ばれる少なくとも2種の化合物とを混合することにより、良好な硬度及び崩壊性を有する錠剤を調製することができ、得られた錠剤で錠剤の嚥下能力を検査することができることを見出した。
【0014】
よって、本発明の嚥下機能検査用錠剤は、バリウム化合物、並びに、ポリビニルピロリドン、シクロデキストリン、ソルビトール、メチルセルロース、結晶セルロース、及び、ヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選ばれる少なくとも2種の化合物を含有する。
ここで、ポリビニルピロリドン、シクロデキストリン、ソルビトール、メチルセルロース、結晶セルロース、及び、ヒドロキシプロピルセルロースは、バリウム化合物を錠剤化するための添加剤である。以下、これらをまとめて「バリウム錠剤化用添加剤」という場合もある。
【0015】
前記バリウム錠剤化用添加剤は、具体的には、硫酸バリウムと前記化合物とを1:1の質量比で混合し、得られた混合粉体400mgから打錠圧5kNで直径10mmの錠剤を作製したときに、錠剤の硬度が3kg以上になる添加剤である。
下記実施例において詳述するように、ポリビニルピロリドン、シクロデキストリン、ソルビトール、メチルセルロース、結晶セルロース、又は、ヒドロキシプロピルセルロースは、バリウム化合物を含有する錠剤(バリウム錠剤)の硬度を向上させる効果を有する。よって、ポリビニルピロリドン、シクロデキストリン、ソルビトール、メチルセルロース、結晶セルロース、又は、ヒドロキシプロピルセルロースは、バリウム錠剤用硬度向上剤として作用することができる。
【0016】
上記の6種の添加剤から少なくとも2種の添加剤を選び、バリウム化合物と混合して錠剤化することで、市場の流通において問題ない強度及び適度な崩壊性を有する錠剤を得ることができる。
【0017】
ポリビニルピロリドン(PVP)は、製薬学的に許容され、バリウム化合物の安定性に影響を及ぼさないもの、あるいは影響の少ないものであれば、特に制限されない。ポリビニルピロリドンの平均分子量で5000以上、3000000以下のものを使用できる。具体的には、例えば、ポリビニルピロリドンK25(富士フィルム和光純薬株式会社製、平均分子量:25000)、ポリビニルピロリドンK30(富士フィルム和光純薬株式会社製、平均分子量40000)、ポリビニルピロリドンK90(概略分子量:約100000)等を使用することができる。ポリビニルピロリドンの分子量は、特に限定はない。また、ポリビニルピロリドンのK値(粘性特性値)も特に限定はなく、例えば、10以上、120以下のものを使用することができる。第十八改正日本薬局方では、ポリビニルピロリドンは「ポビドン」と称され、ポビドンK17、ポビドンK25、ポビドンK30、及び、ポビドンK90収載されており、いずれも用いることができる。なお、これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
ここで、上記平均分子量は、質量平均分子量であり、液体クロマトグラフィーにより測定したものである。上記質量平均分子量の測定には、島津製作所製のLC-6AD pump、RID-10A RI detector、CLASS-LC10 Chromatopac data processor、及び、DGU-20A3 degasserを使用する。また、カラムとして、TSK-GEL G1000H、G2000H及びG2500Hを用い、オーブン温度を40℃としてテトラヒドロフラン(THF)を流速1.0mL/分で流す。上記質量平均分子量は、ポリスチレンを標準としてキャリブレーションすることで算出することができる。
前記嚥下機能検査用錠剤中のポリビニルピロリドンの含有量は、バリウム化合物100質量部に対して、通常16~134質量部であり、好ましくは20~120質量部であり、より好ましくは30~110質量部である。
【0018】
シクロデキストリン(以下、「CD」という場合もある)は、α-1,4-グルコシド結合を介して接続されたグルコース分子から形成される環状オリゴ糖である。シクロデキストリンは、シクロデキストリンを構築するグルコース分子の数に応じて接頭語としてギリシャ文字を含む。
このようなシクロデキストリンとしては、特に限定はなく、例えば、6個のグルコース分子を有するα-シクロデキストリン、7個のグルコース分子を有するβ-シクロデキストリン、8個のグルコース分子を有するγ-デキストリン、9個のグルコース分子を有するδ-シクロデキストリン等が挙げられる。シクロデキストリン(CD)としては、β-シクロデキストリンが好ましい。なお、これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記嚥下機能検査用錠剤中のシクロデキストリンの含有量は、バリウム化合物100質量部に対して、通常16~134質量部であり、好ましくは20~120質量部であり、より好ましくは30~110質量部である。
【0019】
ソルビトールは、製薬学的に許容され、バリウム化合物の安定性に影響を及ぼさないもの、あるいは影響の少ないものであれば、特に制限されない。ソルビトールとしては、D-ソルビトールが好ましい。具体的に、市販品のソルビトールとしては、例えば、ソルビトール(富士フィルム和光純薬株式会社製)、ソルビトールSG(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)、ソルビットDP-10M(三菱商事ライフサイエンス株式会社製)等の公知の原料を使用することができる。なお、これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記嚥下機能検査用錠剤中のソルビトールの含有量は、バリウム化合物100質量部に対して、通常16~134質量部であり、好ましくは20~120質量部であり、より好ましくは30~110質量部である。
【0020】
メチルセルロースは、製薬学的に許容され、バリウム化合物の安定性に影響を及ぼさないもの、あるいは影響の少ないものであれば、特に制限されない。メチルセルロースは、メトキシ基の置換率、分子量、粘度等が異なるいずれのメチルセルロースを使用してもよく、これらを単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。メチルセルロースのメトキシ基の置換率としては、通常、約20~約40%の範囲のもの、好ましくは26~33%の範囲のものが挙げられる。また、メチルセルロースの粘度(20℃、2質量%水溶液の粘度を指す)としては、通常1~10000mPa・s、好ましくは3~3000mPa・s、より好ましくは4~1500mPa・sのものが挙げられる。市販品としては例えば、メトローズ(登録商標)SM-4、メトローズ(登録商標)SM-15、メトローズ(登録商標)SM-25、メトローズ(登録商標)SM-100、メトローズ(登録商標)SM-400、メトローズ(登録商標)SM-1500、メトローズ(登録商標)SM-4000(信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。なお、これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記嚥下機能検査用錠剤中のメチルセルロースの含有量は、バリウム化合物100質量部に対して、通常16~134質量部であり、好ましくは20~120質量部であり、より好ましくは30~110質量部である。
【0021】
結晶セルロースは、製薬学的に許容され、バリウム化合物の安定性に影響を及ぼさないもの、あるいは影響の少ないものであれば、特に制限されない。少なくとも、食品添加物公定書第9版に記載の微結晶セルロースの確認試験に適合するものであり、第十八改正日本薬局方に記載の結晶セルロースの確認試験に適合するものがより好ましい。具体的には、例えば、セオラス(登録商標)OD-20P、UF-702、UF-711、KG-802、KG-1000、PH-101、PH-102、PH-200、PH-301、PH-302、及び、PH-F20JP(旭化成株式会社製)、PHARMACEL(登録商標)101、102、及び、112(DFEファーマ株式会社製)、VIVAPUR(登録商標)12、101、102、105、及び、301(レッテンマイヤージャパン株式会社製)、結晶セルロース(住友ファーマフード&ケミカル株式会社製)、Avicel(登録商標)PH-101、PH-102、PH-200、PH-200LM、PH-102SCG、HFE-102、PH-301、PH-302、PH-103、PH-113、PH-112、及び、DG(DuPont製)等が挙げられる。なお、これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記嚥下機能検査用錠剤中の結晶セルロースの含有量は、バリウム化合物100質量部に対して、通常16~134質量部であり、好ましくは20~120質量部であり、より好ましくは30~110質量部である。
【0022】
ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)は、製薬学的に許容され、バリウム化合物の安定性に影響を及ぼさないもの、あるいは影響の少ないものであれば、特に制限されない。
ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)としては、例えば、20℃における2質量%水溶液の粘度が約1~約10mPa・sの低粘度ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-L)、20℃における2質量%水溶液の粘度が約150~約400mPa・sの中粘度ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-M)、20℃における2質量%水溶液の粘度が約1000~約4000mPa・sの高粘度ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-H)等を用いることができる。入手可能なヒドロキシプロピルセルロースとしては、例えば、NISSO HPC(L、M、H)(日本曹達株式会社)等が挙げられる。
なお、前記粘度は、ブルックフィールド型粘度計(LVDVII+PRO(ブルックフィールド社製:単一円筒型回転粘度計)、スピンドルNo.ULA、回転数:60rpm、測定時間:4分間、測定温度:20℃)により測定される値である。
また、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)としては、上記粘度とは異なる観点で、置換度によって定義することもでき、例えば、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、中置換度ヒドロキシプロピルセルロース、高置換度ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。
本明細書において、「低置換度」とは、置換基(ヒドロキシプロポキシ基)の質量パーセントが5.0~16.0%のものをいう。低置換度ヒドロキシプロピルセルロースとして、具体的には、例えば、L-HPC(登録商標)(信越化学工業株式会社製)等を使用することができる。
ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)としては、水溶性である点から、低粘度ヒドロキシプロピルセルロースが好ましい。
低粘度ヒドロキシプロピルセルロースとして、具体的には、例えば、NISSO HPC-L(日本曹達株式会社製、2質量%水溶液の20℃における粘度:8mPa・s)、NISSO HPC-SL(日本曹達株式会社製、2質量%水溶液の20℃における粘度:5.5mPa・s)、NISSO HPC-SSL(日本曹達株式会社製、2質量%水溶液の20℃における粘度:2.5mPa・s)等を使用することができ、NISSO HPC-Lが好ましい。ここで、NISSO HPC-Lは、崩壊時間を延長する作用を有しているので、下記崩壊時間延長剤としても作用する。なお、これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記嚥下機能検査用錠剤中のヒドロキシプロピルセルロースの含有量は、バリウム化合物100質量部に対して、通常16~134質量部であり、好ましくは20~120質量部であり、より好ましくは30~110質量部である。
【0023】
前記バリウム錠剤化用添加剤は、ポリビニルピロリドン、シクロデキストリン、ソルビトール、メチルセルロース、結晶セルロース、及び、ヒドロキシプロピルセルロースからなる群から少なくとも2種を選択して使用される。
【0024】
前記バリウム錠剤化用添加剤の2種の組合せは、
ポリビニルピロリドン、及び、シクロデキストリンの組合せ;
ポリビニルピロリドン、及び、ソルビトールの組合せ;
ポリビニルピロリドン、及び、メチルセルロースの組合せ;
ポリビニルピロリドン、及び、結晶セルロースの組合せ;
ポリビニルピロリドン、及び、ヒドロキシプロピルセルロースの組合せ;
シクロデキストリン、及び、ソルビトールの組合せ;
シクロデキストリン、及び、メチルセルロースの組合せ;
シクロデキストリン、及び、結晶セルロースの組合せ;
シクロデキストリン、及び、ヒドロキシプロピルセルロースの組合せ;
ソルビトール、及び、メチルセルロースの組合せ;
ソルビトール、及び、結晶セルロースの組合せ;
ソルビトール、及び、ヒドロキシプロピルセルロースの組合せ;
メチルセルロース、及び、結晶セルロースの組合せ;
メチルセルロース、及び、ヒドロキシプロピルセルロースの組合せ;並びに、
結晶セルロース、及び、ヒドロキシプロピルセルロースの組合せを含む。
これらの中で、いずれも水溶性であることから、ポリビニルピロリドン及びシクロデキストリンの組合せが好ましい。
【0025】
前記バリウム錠剤化用添加剤の3種の組合せは、
ポリビニルピロリドン、シクロデキストリン、及び、ソルビトールの組合せ;
ポリビニルピロリドン、シクロデキストリン、及び、メチルセルロースの組合せ;
ポリビニルピロリドン、シクロデキストリン、及び、結晶セルロースの組合せ;
ポリビニルピロリドン、シクロデキストリン、及び、ヒドロキシプロピルセルロースの組合せ;
ポリビニルピロリドン、ソルビトール、及び、メチルセルロースの組合せ;
ポリビニルピロリドン、ソルビトール、及び、結晶セルロースの組合せ;
ポリビニルピロリドン、ソルビトール、及び、ヒドロキシプロピルセルロースの組合せ;
ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、及び、結晶セルロースの組合せ;
ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、及び、ヒドロキシプロピルセルロースの組合せ;
ポリビニルピロリドン、結晶セルロース、及び、ヒドロキシプロピルセルロースの組合せ;
シクロデキストリン、ソルビトール、及び、メチルセルロースの組合せ;
シクロデキストリン、ソルビトール、及び、結晶セルロースの組合せ;
シクロデキストリン、ソルビトール、及び、ヒドロキシプロピルセルロースの組合せ;
シクロデキストリン、メチルセルロース、及び、結晶セルロースの組合せ;
シクロデキストリン、メチルセルロース、及び、ヒドロキシプロピルセルロースの組合せ;
シクロデキストリン、結晶セルロース、及び、ヒドロキシプロピルセルロースの組合せ;
ソルビトール、メチルセルロース、及び、結晶セルロースの組合せ;
ソルビトール、メチルセルロース、及び、ヒドロキシプロピルセルロースの組合せ;
ソルビトール、結晶セルロース、及び、ヒドロキシプロピルセルロースの組合せ;並びに、
メチルセルロース、結晶セルロース、及び、ヒドロキシプロピルセルロースの組合せを含む。
【0026】
前記バリウム錠剤化用添加剤の4種の組合せは、
ソルビトール、メチルセルロース、結晶セルロース、及び、ヒドロキシプロピルセルロースの組合せ;
シクロデキストリン、メチルセルロース、結晶セルロース、及び、ヒドロキシプロピルセルロースの組合せ;
シクロデキストリン、ソルビトール、結晶セルロース、及び、ヒドロキシプロピルセルロースの組合せ;
シクロデキストリン、ソルビトール、メチルセルロース、及び、ヒドロキシプロピルセルロースの組合せ;
シクロデキストリン、ソルビトール、メチルセルロース、及び、結晶セルロースの組合せ;
ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、結晶セルロース、及び、ヒドロキシプロピルセルロースの組合せ;
ポリビニルピロリドン、ソルビトール、結晶セルロース、及び、ヒドロキシプロピルセルロースの組合せ;
ポリビニルピロリドン、ソルビトール、メチルセルロース、及び、ヒドロキシプロピルセルロースの組合せ;
ポリビニルピロリドン、ソルビトール、メチルセルロース、及び、結晶セルロースの組合せ;
ポリビニルピロリドン、シクロデキストリン、結晶セルロース、及び、ヒドロキシプロピルセルロースの組合せ;
ポリビニルピロリドン、シクロデキストリン、メチルセルロース、及び、ヒドロキシプロピルセルロースの組合せ;
ポリビニルピロリドン、シクロデキストリン、メチルセルロース、及び、結晶セルロースの組合せ;
ポリビニルピロリドン、シクロデキストリン、ソルビトール、及び、ヒドロキシプロピルセルロースの組合せ;
ポリビニルピロリドン、シクロデキストリン、ソルビトール、及び、結晶セルロースの組合せ;並びに、
ポリビニルピロリドン、シクロデキストリン、ソルビトール、及び、メチルセルロースの組合せを含む。
【0027】
前記バリウム錠剤化用添加剤の5種の組合せは、
ポリビニルピロリドン、シクロデキストリン、ソルビトール、メチルセルロース、及び、結晶セルロースの組合せ;
ポリビニルピロリドン、シクロデキストリン、ソルビトール、メチルセルロース、及び、ヒドロキシプロピルセルロースの組合せ;
ポリビニルピロリドン、シクロデキストリン、ソルビトール、結晶セルロース、及び、ヒドロキシプロピルセルロースの組合せ;
ポリビニルピロリドン、シクロデキストリン、メチルセルロース、結晶セルロース、及び、ヒドロキシプロピルセルロースの組合せ;
ポリビニルピロリドン、ソルビトール、メチルセルロース、結晶セルロース、及び、ヒドロキシプロピルセルロースの組合せ;並びに、
シクロデキストリン、ソルビトール、メチルセルロース、結晶セルロース、及び、ヒドロキシプロピルセルロースの組合せを含む。
【0028】
前記バリウム錠剤化用添加剤の6種の組合せは、ポリビニルピロリドン、シクロデキストリン、ソルビトール、メチルセルロース、結晶セルロース、及び、ヒドロキシプロピルセルロースを含む。
【0029】
前記バリウム錠剤化用添加剤は、前記化合物の中から2種以上を、錠剤全質量に対して通常20~45質量%、好ましくは23~40質量%、より好ましくは25~38質量%の割合が含有することが好ましい。
【0030】
前記バリウム錠剤化用添加剤としてポリビニルピロリドン及びシクロデキストリンを使用する場合、前記嚥下機能検査用錠剤中にポリビニルピロリドン及びシクロデキストリンの合計量が、バリウム化合物100質量部に対して、通常66~150質量部、好ましくは75~135質量部、より好ましくは80~130質量部となるように、それぞれの配合量を調整すればよい。
例えば、前記嚥下機能検査用錠剤中のポリビニルピロリドンの含有量は、バリウム化合物100質量部に対して、通常16~134質量部であり、好ましくは20~120質量部であり、より好ましくは30~110質量部である。
また、前記嚥下機能検査用錠剤中のシクロデキストリンの含有量は、バリウム化合物100質量部に対して、通常16~134質量部であり、好ましくは20~120質量部であり、より好ましくは30~110質量部である。
【0031】
本発明の嚥下機能検査用錠剤は、バリウム化合物、及び、2種以上のバリウム錠剤化用添加剤に加えて、賦形剤を含有してもよい。前記賦形剤は、製剤前の分量を増やすために加えられる添加剤であり、増量剤ともいわれるものである。
前記賦形剤として、例えば、乳糖、乳糖水和物、マンニトール、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム(CMC-Ca)、ブドウ糖、スクロース、トレハロース、ローカストビーンガム、リン酸水素カルシウム無水物、リン酸水素カルシウム水和物、コーンスターチ等が挙げられる。これらの中で、水溶性であることから、乳糖、乳糖水和物、マンニトール、ブドウ糖、スクロース、トレハロース、ローカストビーンガム、リン酸水素カルシウム無水物、リン酸水素カルシウム水和物、コーンスターチ等が好ましい。
ここで、上記化合物のうち、乳糖水和物、マンニトール、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム(CMC-Ca)、ブドウ糖、スクロース、又は、トレハロースを用いて、前記バリウム錠剤化用添加剤と同様の条件で直径10mmの錠剤を作製して硬度を測定したところ、0.6~2.3kgであった。なお、ローカストビーンガム、リン酸水素カルシウム水和物、及び、コーンスターチは、硫酸バリウムと1:1の質量比で混合しても錠剤にはならなかった。
また、クロスカルメロースナトリウム及びカルボキシメチルセルロースカルシウム(CMC-Ca)は、崩壊時間を短縮する作用を有しているので、下記崩壊剤としても作用する。
【0032】
本発明の嚥下機能検査用錠剤が賦形剤を含む場合、前記賦形剤の含有量は、錠剤全質量に対して5~50質量%が好ましく、25~40質量%がより好ましい。
【0033】
本発明の嚥下機能検査用錠剤には、さらに滑沢剤を配合することができる。
ここで、前記滑沢剤は、有効成分(バリウム化合物)を圧縮成形しやすくするために加えられるものである。前記滑沢剤は、粉末、固体、又は顆粒状の素材を加工する際に、素材と加工機、又は、素材の粒子同士の摩擦を軽減させる目的で使用される。前記滑沢剤を配合することにより、流動性又は離型性を高め、加工性を向上させることができる。
【0034】
前記滑沢剤として、例えば、前記滑沢剤は、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、デンプン(小麦、米、トウモロコシ又はジャガイモデンプン)、タルク、高分散(コロイド状)シリカ、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、ベヘン酸グリセリル、グルセリルモノステアレート、二酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム等が挙げられ、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等が好ましい。
【0035】
本発明の嚥下機能検査用錠剤が滑沢剤を含む場合、滑沢剤の含有量は、錠剤全質量に対して0.5~5質量%が好ましい。
【0036】
本発明の嚥下機能検査用錠剤には、さらに崩壊時間延長作用を有する化合物(崩壊時間延長剤)を配合することができる。
前記崩壊時間延長剤は、本発明の嚥下機能検査用錠剤の崩壊時間を延長したい場合に配合することができる。
前記崩壊時間延長剤として、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)等が挙げられる。また、前記バリウム錠剤化用添加剤として挙げられているHPC-Lを、崩壊時間延長剤として使用することもできる。
前記崩壊時間延長剤の配合量は、設定したい崩壊時間となるように適宜調整することができる。前記崩壊時間延長剤を、錠剤全質量に対して、例えば、0.5~5質量%配合することができる。
【0037】
本発明の嚥下機能検査用錠剤には、さらに崩壊時間を短縮する化合物(崩壊剤)を配合することができる。
前記崩壊剤は、本発明の嚥下機能検査用錠剤の崩壊時間を短縮したい場合に配合することができる。
前記崩壊剤としては、前記賦形剤として挙げられているクロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム(CMC-Ca)等を使用することができる。前記崩壊剤として、クロスカルメロースナトリウムが好ましい。これらを配合することで崩壊時間を適宜短縮することができる。
前記崩壊剤の配合量は、設定したい崩壊時間となるように適宜調整することができる。前記崩壊剤を、錠剤全質量に対して、例えば、0.5~5質量%配合することができる。
前記バリウム錠剤化用添加剤としてHPC-Lを配合する場合、HPC-Lは崩壊時間延長作用を有しており、崩壊時間が長くなる傾向があることから、崩壊時間を短縮する作用を有するクロスカルメロースナトリウムを一緒に配合することで崩壊時間が所望の時間となるように調整することができる。
【0038】
本発明の嚥下機能検査用錠剤の硬度は、通常2kg以上であり、好ましくは3kg以上である。嚥下機能検査用錠剤の硬度が2kg以上であれば、X線造影検査において、X線による透視時に嚥下機能検査用錠剤の形状を維持することができる。硬度が3kg以上であれば市場の流通においても問題が発生することがない。硬度の上限は特に限定されず、20kg以下であればよい。
前記硬度は、モンサント型錠剤硬度計により測定した値である。
【0039】
本発明の嚥下機能検査用錠剤の崩壊時間は、通常3分以上20分以下であり、好ましくは5分以上18分以下であり、より好ましくは5分以上10分以下である。上記範囲とすることにより、X線造影検査において、X線による透視時には嚥下機能検査用錠剤の形状を維持して、錠剤を飲み込むことができるかを確認することができるとともに、X線による透視終了後は速やかに崩壊することで、錠剤が飲み込めなかった場合でも錠剤が口、喉、気管、又は、食道内に留まることを防ぐことができる。
前記崩壊時間は、第十七改正日本薬局方記載の崩壊試験法に記載の装置を使用し、試験液として水を用い、試料の残留物がガラス管内に認められなくなるまでの時間を測定した。
【0040】
前記錠剤の形状及び大きさ等は、特に限定されない。錠剤の形状として、例えば、丸型、楕円型、三角型、四角型等が挙げられる。錠剤の直径は、丸型錠の場合にあっては、通常4~12mm、好ましくは5~11mm、より好ましくは6~10mmである。錠剤の厚みは、通常1.5~8mm、好ましくは2~6mm、より好ましくは2.5~5mmである。一錠当たりの質量としては、通常50~600mg、好ましくは70~500mg、より好ましくは90~460mgである。
【0041】
錠剤の製造方法として、医薬品、医薬部外品、獣医科製品、食品、サプリメント等の分野で従来用いられる方法を用いることができる。製造方法として、例えば、直接粉末圧縮法(直打法又はセミ直打法)、顆粒圧縮法(乾式顆粒圧縮法又は湿式顆粒圧縮法)等が挙げられる。これらの中で、直打法及び湿式顆粒圧縮法が好ましい。
直打法を用いる場合、例えば、バリウム化合物、2種以上の添加剤、必要に応じて賦形剤、滑沢剤等を混合した粉末を直接圧縮成形することにより錠剤を製造することができる。
湿式顆粒圧縮法を用いる場合、例えば、バリウム化合物、2種以上の添加剤、必要に応じて賦形剤等を混合した粉末(滑沢剤を除く)に、水等の溶媒を加えて湿式造粒した後、滑沢剤等を加えて混和し、圧縮成形することにより錠剤を製造することができる。
直打法又は湿式顆粒圧縮法において圧縮成形する際の打錠圧として、通常1~10kN、好ましくは2~8kN、より好ましくは3~6kNが挙げられる。
【0042】
本発明の嚥下機能検査用錠剤には、必要に応じて、安定剤、保存剤、流動化剤、着色剤等を、本発明の効果に影響しない範囲で適宜配合してもよい。
【0043】
本発明の嚥下機能検査用錠剤は、錠剤の嚥下能力(錠剤を飲み込むことができるか)の検査に利用することができる。本発明の嚥下機能検査用錠剤を被験者に経口投与し、嚥下機能検査用錠剤中のバリウム化合物を検出することにより、被験者の錠剤嚥下能力(錠剤を飲み込むことができるかどうか)を診断することができる。
【実施例
【0044】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【0045】
使用する原料は、以下のとおりである。
【0046】
(1)バリウム化合物
・硫酸バリウム(株式会社伏見製作所製、バリトゲン(登録商標)HD)
(2)バリウム錠剤化用添加剤
・ポリビニルピロリドン(富士フィルム和光純薬株式会社製、ポリビニルピロリドンK30、和光特級)
・シクロデキストリン(β-CD)(日本食品化工株式会社製、セルディックス(登録商標)B-100、純度(98%以上))
・ソルビトール(富士フィルム和光純薬株式会社製、D-ソルビトール、試薬一級)
・メチルセルロース(信越化学工業株式会社製、メトローズ(登録商標)SM-4)
・結晶セルロース(旭化成株式会社製、セオラス(登録商標)PH-102又はセオラス(登録商標)UF-702)
・ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達株式会社製、NISSO HPC-L)
(3)賦形剤
・乳糖水和物(マイラン製薬株式会社製、日局乳糖「ホエイ」結晶)
・マンニトール(三菱商事フードテック株式会社製、マンニット)
・クロスカルメロースナトリウム(ニュートリションアンドバイオサイエンス社製、Ac-Di-Sol(登録商標))
・コーンスターチ(日本食品化工株式会社製、日食コーンスターチW)
(4)滑沢剤
・タルク(丸石製薬株式会社製、日局タルク タルク原末「マルイシ」)
【0047】
<試験例1>
実施例1
硫酸バリウム3g、ポリビニルピロリドン1g、結晶セルロース1.5g、乳糖水和物4g、及びタルク0.5gを乳鉢に入れ、乳棒により乳鉢中で混合した。混合した粉末混合物を500mg量り取り、打錠機(市橋精機株式会社製、HANDTAB-100)を用い、打錠条件として5kNで約1秒間圧力を加えて、直径10mm、厚み約4.8mmの錠剤を作製した。
【0048】
実施例2~11
硫酸バリウムの配合量、バリウム錠剤化用添加剤の種類及び配合量、並びに、賦形剤の種類及び配合量を、下記表2の記載に従って変更した以外は、実施例1と同様として、実施例2~11の錠剤を作製した。
【0049】
比較例1~4
バリウム錠剤化用添加剤の種類及び配合量、並びに、賦形剤の種類及び配合量を、下記表2の記載に従って変更した以外は、実施例1と同様として、比較例1~4の錠剤を作製した。
【0050】
錠剤の寸法及び物性値の測定方法
(1)錠剤の直径及び厚み
上記実施例1~11及び比較例1~4で製造した錠剤の厚みを、テクロックダイヤルシックネスゲージ(株式会社テクロック製)で測定した。
下記実施例12~17で製造した錠剤の直径及び厚みを、前記テクロックダイヤルシックネスゲージで測定した。
(2)錠剤の重さ
下記実施例12~17で製造した錠剤の重さを電子天秤(メトラー・トレド株式会社製、XS205)で測定した。
(3)硬度
モンサント型錠剤硬度計(大岩薬品機械株式会社製)により、実施例1~17及び比較例1~4で製造した錠剤の硬度を測定した。
【0051】
(4)崩壊時間
崩壊試験機(富山産業株式会社製、製品名:NT-1M)を用いて、実施例1~17及び比較例1~4で製造した錠剤の崩壊時間を測定した。具体的には、ウォーターバスに水を入れ、崩壊試験を行うビーカーに精製水を1L加え、ビーカー内の水温が37±2℃になったらガラス管1本に上記錠剤1個を投入し、崩壊するまでの時間(ガラス管内にある網から錠剤粒子がすべて通り抜けた時間)を測定した。
結果を表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
表1より、バリウム化合物、並びに、ポリビニルピロリドン、シクロデキストリン、ソルビトール、メチルセルロース、結晶セルロース、及び、ヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選ばれる2種のバリウム錠剤化用添加剤を含む、実施例1~11の嚥下機能検査用錠剤は、2kg以上の硬度、及び、3分以上20分以内の崩壊時間を有することがわかった。
【0054】
<試験例2>(製造方法の違いが錠剤の物性に及ぼす影響)
製造方法の違いが錠剤の物性に及ぼす影響を検討するため、上記実施例1~11及び比較例1~4で用いた直打法と、湿式顆粒圧縮法とにより、直径が異なる3種類の錠剤(直径6mm、8mm、及び10mm)を調製し、錠剤の形状(質量及び厚み)、及び物性(硬度及び崩壊時間)を測定した。
【0055】
実施例12(直打法による直径6mmの錠剤の製造)
硫酸バリウム3g、ポリビニルピロリドン1g、シクロデキストリン1.5g、及びマンニトール4gを乳鉢中で混合した。混合物3.325gを取り出し、そこにタルク175mgを加え、乳鉢中で混合した。この混合物を直打用粉体とし、実施例1と同じ直打機(市橋精機株式会社製、HANDTAB-100)を用いて打錠圧5kNで直径6mmの錠剤を製造した。
【0056】
実施例13(湿式顆粒圧縮法による直径6mmの錠剤の製造)
上記直打法による製造工程において、混合物3.325gを取り出した後、乳鉢中に残った混合物にエタノール2mLを加えて練り合わせた。得られた練合物を一夜放置して乾燥させた。乾燥後の粉末5.287gにタルク0.278gを添加して乳鉢中で混合し、湿式顆粒圧縮用顆粒とした。得られた湿式顆粒圧縮用顆粒を、実施例1と同じ直打機を用いて打錠圧5kNで直径6mmの錠剤を製造した。
【0057】
実施例14(直打法による直径8mmの錠剤の製造)
実施例12で調製した直打用粉体を用い、実施例1と同じ直打機を用いて打錠圧5kNで直径8mmの錠剤を製造した。
【0058】
実施例15(湿式顆粒圧縮法による直径8mmの錠剤の製造)
実施例13で調製した湿式顆粒圧縮用顆粒を用い、実施例1と同じ直打機(市橋精機株式会社製、HANDTAB-100)を用いて打錠圧5kNで直径8mmの錠剤を製造した。
【0059】
実施例16(直打法による直径10mmの錠剤の製造)
実施例12で調製した直打用粉体を用い、実施例1と同じ直打機(市橋精機株式会社製、HANDTAB-100)を用いて打錠圧5kNで直径10mmの錠剤を製造した。
【0060】
実施例17(湿式顆粒圧縮法による直径10mmの錠剤の製造)
上記直打法による製造工程において、混合物3.325gを取り出した後、乳鉢中に残った混合物にエタノール2mLを加えて練り合わせた。得られた練合物を一夜放置して乾燥させた。乾燥後の粉末5.287gにタルク0.278gを添加して乳鉢中で混合し、湿式顆粒圧縮用顆粒とした。得られた湿式顆粒圧縮用顆粒を、実施例1と同じ直打機(市橋精機株式会社製、HANDTAB-100)を用いて打錠圧5kNで直径10mmの錠剤を製造した。
【0061】
上記実施例12~17で製造した錠剤の寸法及び物性値を、試験例1と同じ測定方法で測定した。それらの結果を表2に示す。
【0062】
【表2】
【0063】
上記表2の結果から、本発明の嚥下機能検査用錠剤は、直打法以外の製造方法(湿式顆粒圧縮法)を用いても、直打法で作製した錠剤と同程度の質量及び厚みを有し、同程度の硬さ及び崩壊時間を有する錠剤が製造できることがわかった。
【0064】
<試験例3>(硫酸バリウムの成形性を確認する実験)
硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素カルシウム無水物、リン酸水素カルシウム水和物、及び、有機化合物の医薬品の代表的有効成分であるアセトアミノフェンを直接打錠した場合の硬度、並びに、これらの化合物に結晶セルロースを添加した場合の硬度を測定し、各化合物の成形性を検討した。
【0065】
実験方法
硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素カルシウム無水物、リン酸水素カルシウム水和物、及び、アセトアミノフェンをそれぞれ400mg量り取り、5kNの圧力で直径10mmの錠剤を調製した。
また、上記の各化合物に、結晶セルロースを表3に記載の添加量となるように添加し、乳鉢中で十分に混合した。その後、混合した粉末を400mg量り取り、5kNの圧力で直径10mmの錠剤を調製した。
錠剤の硬度をモンサント型錠剤硬度計(大岩薬品機械株式会社製)により測定した場合には、表3にその硬度を示した。なお、錠剤が強度不足のため、硬度計で硬度を測定できなかった場合には「×」とし、錠剤を調製しなかった場合には「-」とした。
【0066】
【表3】
【0067】
表3より、硫酸バリウムは、硫酸バリウム単独(結晶セルロース添加量0)では錠剤とすることができず、結晶セルロースを10質量%添加しても錠剤化できないことがわかった。結晶セルロースを40質量%添加、すなわち、硫酸バリウムと結晶セルロースとを60:40の質量比で混合することによって、2kg以上の硬度を有する錠剤とすることができた。
これに対して、硫酸マグネシウムは、結晶セルロースを添加しなくても、それ自体で2kg以上の硬度を有する錠剤を調製することができた。
リン酸水素カルシウム無水物も、結晶セルロースの添加なしで錠剤を調製することが可能であった。しかしながら、錠剤の硬度を2kg以上にするためには、結晶セルロースを20%添加することが必要であった。
リン酸水素カルシウム水和物は、リン酸水素カルシウム水和物単独では錠剤を調製できず、結晶セルロースを20質量%添加、すなわち、リン酸水素カルシウム水和物と結晶セルロースとを80:20の質量比で混合することによって、2kg以上の硬度を有する錠剤とすることができた。
アセトアミノフェンは、アセトアミノフェン単独でも錠剤を調製することが可能であった。しかしながら、錠剤の硬度を2kg以上にするためには、結晶セルロースを30%添加することが必要であった。
以上の結果から、硫酸バリウムは、医薬品で使用される他の化合物に比べて成形性が低いことが明らかとなった。
【0068】
<試験例4>(硫酸バリウムを錠剤化することができる添加剤を確認する実験)
硫酸バリウムと、下記に示す化合物とを1:1の質量比で混合し、得られた混合粉体400mgから打錠圧5kNで直径10mmの錠剤を作製し、モンサント型錠剤硬度計(大岩薬品機械株式会社製)により、錠剤の硬度を測定した。結果を下記表4に示す。
・ポリビニルピロリドンK30(富士フィルム和光純薬株式会社製)
・β-シクロデキストリン(日本食品化工株式会社製、セルディックス(登録商標)B-100、純度(98%以上))
・D-ソルビトール(富士フィルム和光純薬株式会社製、試薬一級)
・メチルセルロース(信越化学工業株式会社製、メトローズ(登録商標)SM-4)
・結晶セルロース(旭化成株式会社製、セオラス(登録商標)PH-102)
・低粘度ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達株式会社製、NISSO HPC-L)
・低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学工業株式会社製、L-HPC(登録商標))
【0069】
【表4】
【0070】
表4より、硫酸バリウムと、ポリビニルピロリドンK30等のポリビニルピロリドン;β-シクロデキストリン等のシクロデキストリン;D-ソルビトール等のソルビトール;メチルセルロース;結晶セルロース;又は、低粘度ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等のヒドロキシプロピルセルロースとを混合して錠剤化することにより、3kg以上の硬度を有する錠剤が得られることがわかった。

【要約】
【課題】本発明は、錠剤を飲み込めるかどうかを検査でき、かつ、錠剤として良好な硬度及び崩壊性を有する嚥下機能検査用錠剤を提供することを目的としている。
【解決手段】(A)バリウム化合物、並びに、
(B)ポリビニルピロリドン、シクロデキストリン、ソルビトール、メチルセルロース、結晶セルロース、及び、ヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選ばれる少なくとも2種のバリウム錠剤化用添加剤を含有する、嚥下機能検査用錠剤。
【選択図】なし