(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】歯科用水改質装置
(51)【国際特許分類】
A61C 19/00 20060101AFI20240523BHJP
B01F 23/2375 20220101ALI20240523BHJP
B01F 23/2326 20220101ALI20240523BHJP
B01F 23/232 20220101ALI20240523BHJP
B01F 25/312 20220101ALI20240523BHJP
B01F 25/314 20220101ALI20240523BHJP
B01F 25/53 20220101ALI20240523BHJP
B01F 25/452 20220101ALI20240523BHJP
B01F 35/71 20220101ALI20240523BHJP
C02F 1/68 20230101ALI20240523BHJP
B01F 101/22 20220101ALN20240523BHJP
【FI】
A61C19/00 Z
B01F23/2375
B01F23/2326
B01F23/232
B01F25/312
B01F25/314
B01F25/53
B01F25/452
B01F35/71
C02F1/68 510A
C02F1/68 520B
C02F1/68 520C
C02F1/68 530B
B01F101:22
(21)【出願番号】P 2023538556
(86)(22)【出願日】2022-07-26
(86)【国際出願番号】 JP2022028793
(87)【国際公開番号】W WO2023008433
(87)【国際公開日】2023-02-02
【審査請求日】2024-01-31
(31)【優先権主張番号】P 2021123275
(32)【優先日】2021-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511125892
【氏名又は名称】ホワイトエッセンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】坂本 佳昭
(72)【発明者】
【氏名】淺木 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】中畑 亜加音
【審査官】胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-055373(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第2060318(EP,A1)
【文献】特開2014-104441(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0251566(US,A1)
【文献】田口 千恵子 他7名,ナノバブル水を応用した歯科用チェアユニット給水システムの汚染対策の検討,日大口腔科学,日本,2019年,Vol. 45,pp. 105-109
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/68
A61C 19/00
B01F 23/2375
B01F 23/2326
B01F 23/232
B01F 25/312
B01F 25/314
B01F 25/53
B01F 25/452
B01F 35/71
B01F 101/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水供給部と、歯科施術部と、前記水供給部と前記歯科施術部との間に設置される水改質部を備える歯科用水改質装置であって、
前記水改質部は、
前記水供給部の配管部と接続される水流入部と、
前記水流入部から供給される水の圧力を減少させるオリフィス部と、
前記オリフィス部に接続されて流路断面積を拡大するオリフィス側拡大部と、
前記オリフィス側拡大部に接続され、前記オリフィス側拡大部に流入する水にガス
として空気を供給する第1ガス供給部と、
前記オリフィス側拡大部に接続され、前記オリフィス側拡大部に流入する水にガスとして窒素、酸素、または炭酸ガスを供給する第2ガス供給部と、
前記オリフィス側拡大部の下流に接続され流路断面積を拡大する径拡大部と、前記径拡大部の流路断面積を縮小する径縮小部を備え、前記オリフィス側拡大部から流入する水と前記第1ガス供給部
及び前記第2ガス供給部から供給されるガスとを混合して気泡を混合する気泡混合部と、
前記気泡混合部と前記水流入部を接続して前記気泡混合部から吐出される水を前記水流入部に流入させる配管部と、
前記配管部に設置され前記気泡混合部から吐出される水を貯留し前記歯科施術部に供給するタンク部と、を備え、
前記気泡混合部を通過した水が前記
タンク部から前記歯科施術部に供給され
、
前記第1ガス供給部または前記第2ガス供給部のいずれか、もしくは前記第1ガス供給部及び前記第2ガス供給部の両方から供給されるガスが前記タンク部に供給される
ことを特徴とする歯科用水改質装置。
【請求項2】
前記気泡混合部において、前記径拡大部と前記径縮小部が水の流路に沿って直列かつ交互に複数配置される請求項1に記載の歯科用水改質装置。
【請求項3】
前記水流入部の上流の前記配管部に圧送ポンプが備えられる請求項
1に記載の歯科用水改質装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用水改質装置に関し、特に歯科用設備に供給される水に微細な気泡を混入させる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水に微細な空気の気泡を含ませることにより、気泡を含む水は、水のみの状態とは異なる性質、挙動を示すことが報告されている。例えば、気泡を含む水は、各種物品の洗浄、食品の鮮度維持の分野において活用されている。中でも、ウルトラファインバブルと称される直径1μm未満の気泡を含む水は、高い洗浄効果を有することが知られている。そして、ウルトラファインバブルを含む水の生成装置が提案されている(例えば、特許文献1、2、3等)。
【0003】
しかしながら、従前のウルトラファインバブルを含む水の生成装置によると、洗浄用途を想定していることから、単位時間当たりの水の生成量の大きな大型設備であることが多い。また、高圧によりウルトラファインバブルを水に混合するため、配管、ポンプ、気泡の混合部分等の設備自体が大きく、しかも耐圧性を考慮して重くなっていた。
【0004】
ここで、歯科における施術を想定すると、ウルトラファインバブルを含む水による口腔内に期待が寄せられている。しかしながら、歯科施術用途では、1回当たりの使用量は限られ、大型設備である必要性は乏しい。また、歯科医院内に設置された既存の歯科用設備に接続する便宜からより小型かつ軽量であることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-099862号公報
【文献】特開2017-094300号公報
【文献】特開2008-289769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであり、特に歯科医院内への設置を考慮してウルトラファインバブルを含む水を生成する小型かつ軽量な歯科用水改質装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、実施形態の歯科用水改質装置は、水供給部と、歯科施術部と、水供給部と歯科施術部との間に設置される水改質部を備え、水改質部は、水供給部の配管部と接続される水流入部と、水流入部から供給される水の圧力を減少させるオリフィス部と、オリフィス部に接続されて流路断面積を拡大するオリフィス側拡大部と、オリフィス側拡大部に接続され、オリフィス側拡大部に流入する水にガスを供給する第1ガス供給部と、オリフィス側拡大部の下流に接続され流路断面積を拡大する径拡大部と、径拡大部の流路断面積を縮小する径縮小部を備え、オリフィス側拡大部から流入する水と第1ガス供給部から供給されるガスとを混合して気泡を混合する気泡混合部とを備え、気泡混合部を通過した水が歯科施術部に供給されることを特徴とする。
【0008】
さらに、気泡混合部において、径拡大部と径縮小部が水の流路に沿って直列かつ交互に複数配置されることとしてもよい。
【0009】
さらに、気泡混合部と水流入部を接続して気泡混合部から吐出される水を水流入部に流入させる配管部が備えられることとしてもよい。
【0010】
さらに、配管部に気泡混合部から吐出される水を貯留するタンク部が設置されていることとしてもよい。
【0011】
さらに、水流入部の上流の配管部に圧送ポンプが備えられることとしてもよい。
【0012】
さらに、第1ガス供給部はガスとして空気を貯留し、第1ガス供給部から空気をタンク部に供給することとしてもよい。
【0013】
さらに、ガスとして窒素、酸素、または炭酸ガスを貯留する第2ガス供給部が備えられ、第2ガス供給部から当該第2ガス供給部に貯留されているガスがタンク部に供給されることとしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の歯科用水改質装置によると、水供給部と、歯科施術部と、水供給部と歯科施術部との間に設置される水改質部を備え、水改質部は、水供給部の配管部と接続される水流入部と、水流入部から供給される水の圧力を減少させるオリフィス部と、オリフィス部に接続されて流路断面積を拡大するオリフィス側拡大部と、オリフィス側拡大部に接続され、オリフィス側拡大部に流入する水にガスを供給する第1ガス供給部と、オリフィス側拡大部の下流に接続され流路断面積を拡大する径拡大部と、径拡大部の流路断面積を縮小する径縮小部を備え、オリフィス側拡大部から流入する水と第1ガス供給部から供給されるガスとを混合して気泡を混合する気泡混合部とを備え、気泡混合部を通過した水が歯科施術部に供給されるため、歯科医院内への設置を考慮して小型かつ軽量なウルトラファインバブルを含む水を生成する歯科用水改質装置に仕上げることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態の歯科用水改質装置の概略構成図である。
【
図2】歯科用水改質装置内の水改質部の概略構成図である。
【
図5】モデル汚れサンプルに対する洗浄試験結果の写真である。
【
図6】洗浄試験結果を統計的に示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施形態の歯科用水改質装置は、主に歯科医院内の歯科用の水を用いる施術器具に接続される。そして、歯科用水改質装置により施術器具に供給する水がウルトラファインバブルを含む水に改質される。一般に、ウルトラファインバブルとは、直径が0.001mm未満の微細気泡をいう。ウルトラファインバブルを含む水の場合、水中に存在する気泡が破裂する際にキャビテーションと称される衝撃波が生じる。そうすると、水だけの洗浄と比較して歯、歯茎の洗浄効率が向上する。また、虫歯菌(ミュータンスレンサ球菌)の細胞膜がキャビテーションにより破壊されるため、虫歯(う蝕)の抑制にも効果的である。
【0017】
特に、ナノバブル、ウルトラファインバブルの大きさの気泡は、気泡として水中に残留し続けてほとんど水面から揮散しない。そこで、実施形態の歯科用水改質装置は歯科用にウルトラファインバブルを含む水を生成して供給するための設備として提案される。
【0018】
図1は実施形態の歯科用水改質装置1の概略構成図である。歯科用水改質装置1は、水供給部2の下流側に接続される。水供給部2には水道水等の上水または滅菌等された精製水のタンクが接続される。水供給部2には必要により濾過滅菌のフィルター等を実装しても良い。
【0019】
そして、水供給部2の下流側に歯科用水改質装置1が接続され、さらに、歯科用水改質装置1の下流側に歯科施術部3が接続される。歯科施術部3には、施術用のドリル、流水噴射器等の施術器具4が装備されている。
【0020】
なお、歯科設備であるため、図示の他に患者が座る椅子、うがい用の洗面台、無影灯等の各種機器(いずれも図示せず)が備えられる。
【0021】
歯科用水改質装置1には、ウルトラファインバブルを含む水を生成するための水改質部10が備えられる。
図2は水改質部10の概略構成図である。水改質部10は、水流入部21、オリフィス部22、オリフィス側拡大部23、第1ガス供給部25、第2ガス供給部26を有するガス混合部20と、径拡大部31と径縮小部32とを有する気泡混合部30を備える。
図2では、水改質部10の水流入部21と水供給部2(
図1参照)の接続部位は図示省略している。
【0022】
なお、第1ガス供給部25と第2ガス供給部26は、少なくともいずれかの設置としてもよい。第1ガス供給部25と第2ガス供給部26から供給されるガスの種類は後述する。
【0023】
水供給部2(
図1参照)の下流側の配管部に歯科用水改質装置1が接続され、水供給部2から供給される水は水流入部21へ供給される。水流入部21にはオリフィス部22が接続される。オリフィス部22は圧力損失部としての機能を有し、水流入部21から供給される水の圧力が減少、流速が上昇する。オリフィス部22の形状は図示のようにテーパ状に徐々に断面径を縮径する管路構成としてもよく、または、オリフィス部22の構造は穴の空いた板状部材(図示せず)としてもよい。
【0024】
オリフィス部22の下流側にオリフィス側拡大部23が接続される。オリフィス側拡大部23にガス供給配管24が接続され、第1ガス供給部25または第2ガス供給部26のいずれか、もしくは第1ガス供給部25及び第2ガス供給部26の両方からガス供給配管24にガスが供給される。第1ガス供給部25から供給されるガスは空気である。そして、第2ガス供給部26に貯留され、第2ガス供給部26から供給されるガスは空気以外であり、窒素、酸素、または炭酸ガスのいずれかである。また、笑気等の混合ガスも使用される。また、ガス供給配管24とオリフィス側拡大部23の接続部位には微細な網状物、多孔体等が備えられ、ガス供給配管24を通過したガスがオリフィス側拡大部23において泡状となる。
【0025】
図3はガス混合部20の拡大概略断面図である。水流入部21からオリフィス部22を通過した水は、流速が上昇した状態でオリフィス側拡大部23内に流入する。水はオリフィス部22を通過することに伴い圧力損失して水の圧力は低下する。また、水がオリフィス側拡大部23内に流入して内部に広がる際にも水自体の圧力損失は生じる。つまり、水の圧力は、オリフィス側拡大部23では水流入部21よりも低下した状態となる。そこで、第1ガス供給部25から供給されるガスは、ガス供給配管24を通じてオリフィス側拡大部23内に流入されやすくなる。結果、オリフィス側拡大部23内において、水とガスの気泡B1が混じりやすくなる。図中の矢印は水の流れを示す。
【0026】
図2参照のとおり、オリフィス側拡大部23内において、水と気泡B1が混じりあった後、さらに、気泡B1の混ざった水(以降、「気泡混合水」とする。)は、オリフィス側拡大部23の下流側の気泡混合部30に圧送される。気泡混合部30は径拡大部31と径縮小部32を備える。径拡大部31は、オリフィス側拡大部23の下流側に接続され、オリフィス側拡大部23の下流側の管路の流路断面積を拡大する。そして、径拡大部31には当該径拡大部31の流路断面積を縮小する径縮小部32が備えられる。実施形態において、気泡混合部30の径拡大部31と径縮小部32は水の流路に沿って直列に複数個(図示では3個)配置されている。
【0027】
第1ガス供給部25からは空気が供給されるため、気泡B1は空気の泡である。また、第2ガス供給部26からは窒素、酸素、または炭酸ガスのいずれかのガスが供給されるため、気泡B1は窒素、酸素、または炭酸ガスの泡である。なお、第1ガス供給部25と第2ガス供給部26の両方の設置とする場合、気泡B1は空気の泡に窒素、酸素、または炭酸ガスの泡も加わる。後出の気泡B2及び気泡B3のガスの種類は気泡B1と同様である。
【0028】
図4は気泡混合部30の拡大概略断面図である。径拡大部31と径縮小部32の組み合わせが3個直列かつ交互に配置されている。最も上流側(オリフィス側拡大部23に近い側)の径拡大部31に気泡混合水(気泡B1が含まれる。)が流入し、そして、気泡混合水が径縮小部32を通過することにより気泡混合水は圧縮され、同時に気泡B1も圧縮される。そして、気泡混合水が3個直列配置の中間の径拡大部31に流入した段階では、気泡B1よりも細かい気泡B2に気泡径が収縮する。
【0029】
さらに、中間の径拡大部31から最も下流側の径拡大部31に気泡混合水(気泡B2が含まれる。)が流入し、そして、気泡混合水が径縮小部32を通過することにより気泡混合水は圧縮され、同時に気泡B3も圧縮される。こうして、最も下流側の径拡大部31において、気泡B2よりも細かい気泡B3に気泡径が収縮する。径拡大部31と径縮小部32の組み合わさった流路を通過する毎に、気泡混合水に含まれる気泡は徐々に小さくなり、直径1μm未満のウルトラファインバブル生成に至る。
【0030】
気泡混合部30の径拡大部31と径縮小部32の組み合わせの個数は図示実施形態の3個に限られず、個数を減らすこと、または個数を増やすことも可能である。しかしながら、径拡大部31と径縮小部32の組み合わせの個数を増加させる場合、管路の構成が複雑となり大型となり、部品数も増加する。加えて、気泡混合水が径縮小部32を通過する毎に圧力損失の影響が多くなる。そのため、気泡混合水を圧送する流体圧力は高めに設定されなければならない。このことから配管の耐圧性、
図2の圧送ポンプ50の出力を上昇させる等の設備設計が過剰、装置重量の増加等となりやすい。従って、気泡混合部30の径拡大部31と径縮小部32の組み合わせの個数は2ないし4個、好ましくは図示の3個である。その他の形態として、径縮小部32の流路断面積を下流側になるにつれて縮小させることも可能である。
【0031】
実施形態の歯科用水改質装置1では、
図2から理解されるように、配管部40が備えられる。配管部40は気泡混合部30とガス混合部20の水流入部21を接続し、気泡混合部30から吐出される水(気泡混合水)を水流入部21に流入させる。実施形態の歯科用水改質装置1では、気泡混合部30から吐出される水(気泡混合水)は、再度ガス混合部20、気泡混合部30に流入し、水は循環する構成としている。水の循環に際しては、水流入部21の上流の配管部40に圧送ポンプ50が備えられ、水は圧送される。水の循環時、水供給部2からガス混合部20の水流入部21への水の供給は停止される。水供給部2からの水の供給と停止は、適宜の切替弁(電磁弁)等(図示せず)により行われる。
【0032】
気泡混合部30の1回の通過では、気泡混合部30における気泡混合水に含まれる気泡径の縮小、ウルトラファインバブルの生成は十分では無い。前述のとおり、気泡混合部30の径拡大部31と径縮小部32の組み合わせ個数を増やすにしても、気泡混合水の供給圧力を高める必要から、圧送ポンプ50の大型化が避けられない。そこで、気泡混合部30の径拡大部31と径縮小部32の流通回数を増やす簡便な方法として配管部40の設置が好適である。
【0033】
配管部40の途中にはタンク部45が設置される。タンク部45が設置されることにより、歯科用水改質装置1の下流側に接続される歯科施術部3の水使用量の変化に順応可能となる。適量のウルトラファインバブルを生成した水を貯留可能である。
図2のように、ウルトラファインバブルを生成した水は、タンク部45から歯科施術部3に供給される。なお、水供給部2にガス混合部20の水流入部21は管路接続されている(図示省略)。
【0034】
さらに、実施形態の歯科用水改質装置1では、第1ガス供給部25または第2ガス供給部26のいずれか、もしくは第1ガス供給部25及び第2ガス供給部26の両方から供給されるガスはタンク部45にも供給される。ガス混合部20のオリフィス側拡大部23へのガス供給としても、空気等のガスの気泡は水と混ざりにくい。そこで、オリフィス側拡大部23へのガス供給とともに、タンク部45に貯留されている循環中(オリフィス側拡大部23に向かう前)の水にも、予めガス供給を行うことによりウルトラファインバブルの元となる気泡量自体を増すことができる。
【0035】
一連の説明の歯科用水改質装置により生成されるウルトラファインバブルを含む水は、歯科施術部に供給され、当該歯科施術部に接続された歯科用のドリル等の施術器具から患者(被施術者)の口腔内に噴射される。ウルトラファインバブルを含む水も、通常の水も物質的には一切変わりが無いため、従前の水の場合と同様に使用可能である。また、ウルトラファインバブルを含む水のために歯科施術部の仕様を変更する必要が無いため、既存の歯科施術部に接続するのみで足りる。このことから、歯科用水改質装置の導入の障壁は低いと言える。
【0036】
第2ガス供給部26を通じて窒素、酸素、または炭酸ガスのウルトラファインバブルを含む水は、空気のウルトラファインバブルを含む水と比して次の効果が勘案、期待される。窒素のウルトラファインバブルを含む水は、水中の酸素量が相対的に少なくなる。そのため、好気性の菌類に対して嫌気的雰囲気を形成することが可能となる。酸素のウルトラファインバブルを含む水は、酸素に起因する酸化力が増し細菌の細胞膜への損傷から抗菌性が向上する。さらに、炭酸ガスのウルトラファインバブルを含む水は、炭酸水よりも酸性度が増すため、酸による細菌の細胞膜への損傷から抗菌性が向上する。
【実施例】
【0037】
[目的]
水にウルトラファインバブルを含ませることにより、水中に存在するウルトラファインバブルは微細な歯間・隙間に侵入し汚れに到達しやすいと考えられる。さらにウルトラファインバブルは超音波照射時の水中キャビテーションを促すことから、歯表面付着汚れの剥離・除去を増進するとも考えられる。それゆえ、歯科における超音波スケーラーとウルトラファインバブルを含む水との併用により高度な歯表面汚れ除去が期待される。
【0038】
そこで、発明者らは、通常の歯科における洗浄(クリーニング)では落ち難い着色汚れ、バイオフィルム除去に際し、ウルトラファインバブルを含む水の有効性を検証した。具体的には、平滑面に塗布した色素の洗浄除去効果について、低濃度のウルトラファインバブルを含む水(ウルトラファインバブル個数濃度:0.39億個/mL,以下「UFB水L」と称する。)と、高濃度のウルトラファインバブルを含む水(ウルトラファインバブル個数濃度:2.3億個/mL,以下「UFB水H」と称する。)を調製し、比較試験を行った。ウルトラファインバブル個数濃度の測定は、レーザ回析・散乱法を用いた。UFB水Lとは、一般的な水であり、UFB水Hに対する対照物を意味する。
【0039】
[材料・方法]
A4サイズのOHPフィルム(VF-1100N,コクヨ株式会社製)を用意し、同OHPフィルム上に、インクジェットプリンター(TS3330,キヤノン株式会社製)を用いてピンク色インク(色コードR:255,G:0,B:255)により、100個の円(直径9.98mm)を印刷した。印刷後、6時間静置して自然乾燥の後、同じ位置に同インクにより重ね印刷し、モデル汚れサンプルとした。
【0040】
歯科洗浄用エアフロープロフィラキシスマスター(S1エアフロー:EMS Japan株式会社製)の先端に長さ30mm×直径5mmのストローを接続し、モデル汚れとの距離と角度を固定して、UFB水LまたはUFB水Hをモデル汚れサンプルに対し3秒間噴射することにより洗浄を行った。洗浄前後のモデル汚れの色差ΔE及び明度差ΔLをハンディ型色彩計(NR-11A,日本電色工業株式会社製)により計測した。その後、Tukey’s test(テューキーの検定)により統計解析を行った。
【0041】
[結果・考察]
モデル汚れサンプルにおける100個のインク印刷円に対する洗浄結果について、UFB水LとUFB水HのそれぞれΔEの数値の低い順に並べ、同じ順位のサンプルを4個ずつ抜粋した。
図5は洗浄結果を示す写真である。上段はUFB水Hの使用時の洗浄結果を示す写真であり、下段はUFB水Lの使用時の洗浄結果を示す写真である。インク塗布円内の直径5mmのUFB水が衝突した円内におけるインクが除去されて白くなったことが観察された。UFB水LとUFB水Hの比較から、UFB水HはUFB水Lに比して白さが増し、より洗浄が促進したことが判明した。
【0042】
図6は洗浄試験結果を統計的に示したグラフである。グラフの横軸は色差(ΔE)であり、縦軸は統計上の度数である。洗浄前後での被洗浄面のΔEは、ウルトラファインバブル個数濃度が高いほど改善された。SPSS(Statistical Package for the Social Science)を用いてt検定を行ったところ、統計的な有意差が示された(p<0.001)。ΔE>20はUFB水LとUFB水Hの洗浄における双方に差が無いことから洗浄完了を示しており、ΔEが20から0に近いほど残存汚れサンプルが多いことを示している。UFB水Lでは残存汚れが多く、UFB水Hでは残存汚れが少なかった。このことから、ウルトラファインバブルが汚れの除去に寄与していることは統計的に明らかになった。
【0043】
従って、歯科の臨床における口腔内洗浄に際し、ウルトラファインバブルを高濃度で含む水を使用すると、歯に付着したプラーク等のより高い除去効果を得ることができると考えられる。さらに、空気以外のガスを用いることにより、ガスに起因する効果を加えることができと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の歯科用水改質装置によると、装置として小型かつ簡便な構成によりウルトラファインバブルを含む水が生成される。このため、患者の口腔内のための設備を既存の歯科診療施設に導入しやすくなる。
【符号の説明】
【0045】
1 歯科用水改質装置
2 水供給部
3 歯科施術部
4 施術器具
10 水改質部
20 ガス混合部
21 水流入部
22 オリフィス部
23 オリフィス側拡大部
24 ガス供給配管
25 第1ガス供給部
26 第2ガス供給部
30 気泡混合部
31 径拡大部
32 径縮小部
40 配管部
45 タンク部
50 圧送ポンプ
B1,B2,B3 気泡