(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】リチウム2次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/052 20100101AFI20240523BHJP
H01M 10/0585 20100101ALI20240523BHJP
H01M 10/0583 20100101ALI20240523BHJP
H01M 10/0587 20100101ALI20240523BHJP
H01M 50/536 20210101ALI20240523BHJP
H01M 50/534 20210101ALI20240523BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M10/0585
H01M10/0583
H01M10/0587
H01M50/536
H01M50/534
H01M4/66 A
(21)【出願番号】P 2023579778
(86)(22)【出願日】2023-04-26
(86)【国際出願番号】 JP2023016526
【審査請求日】2023-12-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522369728
【氏名又は名称】TeraWatt Technology株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】大山 剛輔
(72)【発明者】
【氏名】三宅 実
(72)【発明者】
【氏名】藤木 聡
(72)【発明者】
【氏名】緒方 健
【審査官】梅野 太朗
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/05-10/0587
H01M50/50
H01M4/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム2次電池であって、
(a)第1積層体であって、第1絶縁層を一対の第1導電層で挟んで構成される第1集電体と、前記第1集電体上に配置される第1電極とを含み、前記第1集電体が、前記第1電極が配置されない第1端部を備える、第1積層体と、
(b)前記第1電極と極性の異なる電極及びセパレータを含む中間積層体と、
(c)前記第1積層体に対し前記中間積層体を介して積層方向に離間して配置される第2積層体であって、第2絶縁層を一対の第2導電層で挟んで構成される第2集電体と、前記第2集電体上に配置され、前記第1電極と同一極性の第2電極とを含み、前記第2集電体が、前記第2電極が配置されない第2端部を備える、第2積層体と、
(d)前記第1端部及び前記第2端部に対して前記積層方向に並んで配置される金属シートであって、前記第1端部及び前記第2端部のいずれか一方との接合による第1接合痕を有する金属シートと、
(e)前記第1積層体及び前記第2積層体に電気的に接続される電極タブであって、前記第1端部、前記金属シート及び前記第2端部との接合による第2接合痕を有し、前記第2接合痕は、前記積層方向からみて前記第1接合痕と異なる位置にある、電極タブと、を備える、
リチウム2次電池。
【請求項2】
前記第1接合痕は、溶接痕である、請求項1に記載のリチウム2次電池。
【請求項3】
前記第1接合痕は、1又は複数のライン状である、請求項2に記載のリチウム2次電池。
【請求項4】
前記第1接合痕は、1又は複数のドット状である、請求項2に記載のリチウム2次電池。
【請求項5】
前記第2接合痕は、溶接痕である、請求項1に記載のリチウム2次電池。
【請求項6】
前記第2接合痕は、1又は複数のライン状である、請求項5に記載のリチウム2次電池。
【請求項7】
前記第2接合痕は、1又は複数のドット状である、請求項5に記載のリチウム2次電池。
【請求項8】
前記第2接合痕は、前記積層方向の断面において、前記一対の第1導電層、前記金属シート及び前記一対の第2導電層が一体化した領域を含む、請求項1に記載のリチウム2次電池。
【請求項9】
前記第1接合痕と前記第2接合痕とは、前記積層方向からみて互いに重ならない、請求項1に記載のリチウム2次電池。
【請求項10】
前記第1積層体と前記第2積層体とが前記中間積層体を挟んで前記積層方向に交互に複数配置される、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のリチウム2次電池。
【請求項11】
前記第1積層体は平板状のシートで構成され、前記第2積層体は、前記第1積層体とは別体の平板状のシートで構成される、請求項10に記載のリチウム2次電池。
【請求項12】
前記第1積層体と前記第2積層体は、一枚のシートを折りたたんで又は巻回して構成される、請求項10に記載のリチウム2次電池。
【請求項13】
前記第1積層体及び前記第2積層体があわせて10層以上配置される、請求項10に記載のリチウム2次電池。
【請求項14】
前記金属シートは、複数の前記第1端部及び複数の前記第2端部のうちの少なくとも1つの端部に設けられる、請求項10に記載のリチウム2次電池。
【請求項15】
前記金属シートは、前記少なくとも一つの端部の片面に設けられる、請求項14に記載のリチウム2次電池。
【請求項16】
前記金属シートは、前記少なくとも一つの端部の両面に一つずつ設けられる、請求項14に記載のリチウム2次電池。
【請求項17】
前記金属シートの数は、前記第1端部及び前記第2端部の合計数の3倍以下である、請求項10に記載のリチウム2次電池。
【請求項18】
前記金属シートは、前記第1導電層及び前記第2導電層と同一の材料で構成される、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のリチウム2次電池。
【請求項19】
前記第1電極及び前記第2電極が正極である、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のリチウム2次電池。
【請求項20】
前記第1電極及び前記第2電極が負極である、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のリチウム2次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の例示的実施形態は、リチウム2次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、樹脂フィルムの両面に金属層が形成された集電体を用いることで電池セルの安全性を向上させることが開示されている。樹脂フィルムは、フィルムの表/裏が絶縁性の樹脂層により隔てられており、電気的な導通がとれない。そのため配線を引き出す用の電極タブと電極フィルムを接続する際に、電極の表/裏、さらに、複数電極と電極タブ間での導通がとれない。この点、特許文献2では、樹脂層を隔てた各金属層を配線引き出し用の電極タブに接続するために、集電体を複数折り畳んで各金属層に積層させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-102711号公報
【文献】特開2013-016321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、リチウム2次電池の出力特性及び生産性の低下を抑制する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一つの例示的実施形態において、リチウム2次電池であって、(a)第1積層体であって、第1絶縁層を一対の第1導電層で挟んで構成される第1集電体と、第1集電体上に配置される第1電極とを含み、第1集電体が、第1電極が配置されない第1端部を備える、第1積層体と、(b)第1電極と極性の異なる電極及びセパレータを含む中間積層体と、(c)第1積層体に対し中間積層体を介して積層方向に離間して配置される第2積層体であって、第2絶縁層を一対の第2導電層で挟んで構成される第2集電体と、第2集電体上に配置され、第1電極と同一極性の第2電極とを含み、第2集電体が、第2電極が配置されない第2端部を備える、第2積層体と、(d)第1端部及び第2端部に対して積層方向に並んで配置される金属シートであって、第1端部及び第2端部のいずれか一方との接合による第1接合痕を有する金属シートと、(e)第1積層体及び第2積層体に電気的に接続される電極タブであって、第1端部、金属シート及び第2端部との接合による第2接合痕を有し、第2接合痕は、積層方向からみて第1接合痕と異なる位置にある、電極タブと、を備えるリチウム2次電池が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一つの例示的実施形態によれば、リチウム2次電池の出力特性及び生産性の低下を抑制する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】2次電池1の構成例を説明するための分解斜視図である。
【
図3】正極積層体30と金属シートMSの一例を示す斜視図である。
【
図4B】接合痕の他の例を説明するための図である。
【
図4C】接合痕の他の例を説明するための図である。
【
図4D】接合痕の他の例を説明するための図である。
【
図5】正極電極タブ40、端部P及び金属シートMSの接合状態を説明するための図である。
【
図6】第2接合痕WR2を説明するための図である。
【
図8A】
図7の工程ST1を説明するための図である。
【
図8B】
図7の工程ST1を説明するための図である。
【
図9A】
図7の工程ST2を説明するための図である。
【
図9B】
図7の工程ST2を説明するための図である。
【
図9C】
図7の工程ST2を説明するための図である。
【
図9D】
図7の工程ST2を説明するための図である。
【
図10】
図7の工程ST3を説明するための図である。
【
図13】リチウム2次電池の他の構成例を説明するための要部断面図である。
【
図14】リチウム2次電池の他の構成例を説明するための要部断面図である。
【
図15】正極積層体の他の構成例を説明するための斜視図である。
【
図16】正極積層体の他の構成例を説明するための斜視図である。
【
図17】実施例及び比較例の構成及び結果を示す図である。
【
図18】実施例及び比較例における金属シートの積層パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の各実施形態について説明する。
【0009】
一つの例示的実施形態において、リチウム2次電池であって、(a)第1積層体であって、第1絶縁層を一対の第1導電層で挟んで構成される第1集電体と、第1集電体上に配置される第1電極とを含み、第1集電体が、第1電極が配置されない第1端部を備える、第1積層体と、(b)第1電極と極性の異なる電極及びセパレータを含む中間積層体と、(c)第1積層体に対し中間積層体を介して積層方向に離間して配置される第2積層体であって、第2絶縁層を一対の第2導電層で挟んで構成される第2集電体と、第2集電体上に配置され、第1電極と同一極性の第2電極とを含み、第2集電体が、第2電極が配置されない第2端部を備える、第2積層体と、(d)第1端部及び第2端部に対して積層方向に並んで配置される金属シートであって、第1端部及び第2端部のいずれか一方との接合による第1接合痕を有する金属シートと、(e)第1積層体及び第2積層体に電気的に接続される電極タブであって、第1端部、金属シート及び第2端部との接合による第2接合痕を有し、第2接合痕は、積層方向からみて第1接合痕と異なる位置にある、電極タブと、を備えるリチウム2次電池が提供される。
【0010】
一つの例示的実施形態において、第1接合痕は、溶接痕である。
【0011】
一つの例示的実施形態において、第1接合痕は、1又は複数のライン状である。
【0012】
一つの例示的実施形態において、第1接合痕は、1又は複数のドット状である。
【0013】
一つの例示的実施形態において、第2接合痕は、溶接痕である。
【0014】
一つの例示的実施形態において、第2接合痕は、1又は複数のライン状である。
【0015】
一つの例示的実施形態において、第2接合痕は、1又は複数のドット状である。
【0016】
一つの例示的実施形態において、第2接合痕は、積層方向の断面において、一対の第1導電層、金属シート及び一対の第2導電層が一体化した領域を含む。
【0017】
一つの例示的実施形態において、第1接合痕と第2接合痕とは、積層方向からみて互いに重ならない。
【0018】
一つの例示的実施形態において、第1積層体と第2積層体とが中間積層体を挟んで積層方向に交互に複数配置される。
【0019】
一つの例示的実施形態において、第1積層体は平板状のシートで構成され、第2積層体は、第1積層体とは別体の平板状のシートで構成される。
【0020】
一つの例示的実施形態において、第1積層体と第2積層体は、一枚のシートを折りたたんで又は巻回して構成される。
【0021】
一つの例示的実施形態において、第1積層体及び第2積層体があわせて10層以上配置される。
【0022】
一つの例示的実施形態において、金属シートは、複数の第1端部及び複数の第2端部のうちの少なくとも1つの端部に設けられる。
【0023】
一つの例示的実施形態において、金属シートは、少なくとも一つの端部の片面に設けられる。
【0024】
一つの例示的実施形態において、金属シートは、少なくとも一つの端部の両面に一つずつ設けられる。
【0025】
一つの例示的実施形態において、金属シートの数は、第1端部及び第2端部の合計数の3倍以下である。
【0026】
一つの例示的実施形態において、金属シートは、第1導電層及び第2導電層と同一の材料で構成される。
【0027】
一つの例示的実施形態において、第1電極及び第2電極が正極である。
【0028】
一つの例示的実施形態において、第1電極及び第2電極が負極である。
【0029】
以下、図面を参照して、本開示の各実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一または同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づいて上下左右等の位置関係を説明する。図面の寸法比率は実際の比率を示すものではなく、また、実際の比率は図示の比率に限られるものではない。
【0030】
上述したとおり、特許文献2には、樹脂層を隔てた各金属層を配線引き出し用の電極タブに接続するために、集電体を複数折りたたんで各金属層に積層させることが提案されている。しかし、この方法では、金属層毎に集電体端部を折り返しながら積層する新たな装置機構が必要となる。また積層と連動させながら集電体端部を折り返す必要があり、生産性が著しく悪化する。またこの方法では、電極タブと集電体及び各金属層とを機械的に接合できたとしても、接合部の抵抗が高くなり出力特性が低下する。一実施形態にかかるリチウム2次電池1(以下「2次電池1」ともいう。)では、このような問題を解消し得る。
【0031】
<2次電池の構成例>
図1は、2次電池1の構成例を説明するための分解斜視図である。
図1に示すように、2次電池1は、負極10、セパレータ20、第1正極積層体30A、第2正極積層体30B、金属シートMS、正極電極タブ40及び負極電極タブ42等を含んで構成される。以下、各構成について詳細を説明する。
【0032】
(負極10)
図2Aは、負極10の一例を示す斜視図である。一実施形態において、負極10は、負極集電体12と負極集電体12上に配置される負極活物質14を含んで構成される。
【0033】
一実施形態において、
図2Aに示すように、負極活物質14は、負極集電体12の両面にそれぞれ配置される。一実施形態において、負極活物質14は、負極集電体12の片面にのみ配置されてよい。
【0034】
一実施形態において、負極集電体12は、Cu、Ni、Ti、Fe及びLiと反応しない金属、及び、これらの合金、並びに、ステンレス鋼からなる群より選択される少なくとも1種から形成される。
【0035】
負極活物質14は、負極において電極反応、すなわち酸化反応及び還元反応を生じる物質である。負極活物質14は、例えば、リチウム金属及びリチウム金属を含む合金、炭素系物質、金属酸化物、並びにリチウムと合金化する金属及び該金属を含む合金等でよい。上記炭素系物質は、例えば、グラフェン、グラファイト、ハードカーボン、カーボンナノチューブ等でよい。上記金属酸化物は、例えば、酸化チタン系化合物、酸化コバルト系化合物等でよい。上記リチウムと合金化する金属は、例えば、ケイ素、酸化ケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛、アルミニウム、及びガリウム、及びこれらにリチウムがプレドープされたものでよい。
【0036】
図2Bは、負極10の他の例を示す斜視図である。
図2Bに示すように、負極10は、負極集電体16と、負極集電体16の両面にそれぞれ配置される負極活物質14とを含んで構成されてよい。負極活物質14の材質は、
図2Aで説明したものと同様でよい。負極集電体16は、負極絶縁層160と負極絶縁層160を挟むように配置される一対の負極導電層162とで構成されてよい。
【0037】
一実施形態において、負極絶縁層160は、シート状(フィルム状)又は繊維状の樹脂で構成されてよい。負極導電層162は、Cu、Ni、Ti、Fe及びLiと反応しない金属、及び、これらの合金、並びに、ステンレス鋼からなる群より選択される少なくとも1種から形成される。負極導電層162は、一例ではCuである。負極集電体16は、負極絶縁層160を含むことで、負極集電体16として必要な厚み(剛性)を担保しつつ、負極集電体16を導電層のみで構成する場合と比較して軽量化され得る。
【0038】
図2A及び
図2Bに示すように、負極集電体(12、16)は、負極端部Qを有する。一実施形態において、負極端部Qは、負極集電体の一部として、負極集電体の側面から外側(x方向)に延出して構成される。負極端部Q上には、負極活物質14は形成されない。負極端部Qには、負極電極タブ42との接合痕WL2が形成されている。
【0039】
(負極電極タブ42)
図1に示すように、負極電極タブ42は、各負極端部Qに対して積層方向(z方向)に並ぶように配置される。一実施形態において、負極電極タブ42は、各負極端部Qよりも上方又は下方に配置されてよい。一実施形態において、負極電極タブ42は、ある負極端部Qとこれに隣接する負極端部Q間に配置されてもよい。
【0040】
負極電極タブ42は、各負極端部Qと接合される。そして負極端部42は、各負極端部Qを介して各負極10と電気的に接続される。負極電極タブ42には、各負極端部Qとの接合による接合痕WL2が形成されている。接合痕WL2は、1又は複数の点(スポット)であってよく、また連続する線や面であってもよい。一実施形態において、負極電極タブ42と各負極端部Qとは溶接により接合されてよい。この場合、接合痕WL2は溶接痕である。溶接は、例えば、超音波溶接、レーザ溶接、抵抗溶接又はスポット溶接であってよい。
【0041】
(セパレータ20)
セパレータ20は、負極10上に配置される。
図1に示す例では、セパレータ20は、負極10の両面に配置される。セパレータ20は、負極10と正極積層体30とを物理的及び/又は電気的に隔離するとともに、リチウムイオンのイオン伝導性を確保する。一実施形態において、セパレータ20は、絶縁性の多孔質部材、ポリマー電解質、ゲル電解質、及び、無機固体電解質からなる群より選択される少なくとも1種でよい。セパレータ20は、1種の部材を単独で用いてよく、2種以上の部材を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
セパレータ20が絶縁性の多孔質部材を含む場合、多孔質部材の細孔にイオン伝導性を有する物質(電解液、ポリマー電解質、及び/又はゲル電解質等)が充填される。これによりセパレータ20はイオン伝導性を発揮する。絶縁性の多孔質部材を構成する材料としては、特に限定されず、例えば絶縁性高分子材料が挙げられ、具体的には、ポリエチレン(PE)、及びポリプロピレン(PP)が挙げられる。すなわち、セパレータ20は、多孔質のポリエチレン(PE)膜、多孔質のポリプロピレン(PP)膜、又はこれらの積層構造であってよい。
【0043】
一実施形態において、セパレータ20は、一面又は両面がセパレータ被覆層によりコーティングされてよい。これにより、2次電池1のサイクル特性が向上し得る。一実施形態において、セパレータ被覆層は、セパレータ20の表面の50%以上の面積において均一の厚みで連続する膜でよい。一実施形態において、セパレータ被覆層は、ポリビニリデンフロライド(PVDF)、スチレンブタジエンゴムとカルボキシメチルセルロースの合材(SBR-CMC)、及びポリアクリル酸(PAA)のようなバインダーを含むものでよい。一実施形態において、セパレータ被覆層は、上記バインダーにシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア又は水酸化マグネシウム等の無機粒子が添加されて構成されてよい。
【0044】
一実施形態において、セパレータ20の厚さ(セパレータ20が被覆層を含む場合当該被覆層を含む)は、3.0μm以上40μm以下でよい。これにより、負極10と正極積層体30とを隔離しつつ、セパレータ20の占める体積を減少させ得る。一実施形態において、セパレータ20の厚さは、5.0μm以上、7.0μm以上、10μm以上であってよい。一実施形態において、セパレータ20の厚さは、30μm以下、20μm以下、10μm以下であってよい。
【0045】
(中間積層体LM)
図1に示すように、一実施形態において、負極10とセパレータ20とは中間積層体LMを構成する。中間積層体LMは、セパレータ20、負極10、セパレータ20がこの順で積層方向(z方向)に積層された構造であってよい。2次電池1は、複数の中間積層体LMを含む。一実施形態において、複数の中間積層体LMは、
図1に示すように、それぞれ一枚の平板状のシートとして構成されてよい。一実施形態において、複数の中間積層体LMは、一枚のシートから構成されてもよい(当該態様の一例については、
図13及び
図14を用いて後述する)。
【0046】
(正極積層体30及び金属シートMS)
図1に示すように、第1正極積層体30Aは、集電体32Aと正極34Aを含む。第1正極積層体30Aは、第1積層体の一例である。一実施形態において、第1正極積層体は、正極34A、集電体32A、正極34Aがこの順で積層方向に積層された構造であってよい。集電体32Aは、正極34Aから露出する第1端部P1を有する。すなわち第1端部P1上には、正極34Aが形成されない。第1端部P1は、集電体32Aの一部として、集電体32Aの側面から外側(x方向)に延出する。
【0047】
第2正極積層体30Bは、集電体32Bと正極34Bを含む。第2正極積層体30Bは、第2積層体の一例である。一実施形態において、第2正極積層体30Bは、正極34B、集電体32B、正極34Bがこの順で積層方向に積層された構造であってよい。集電体32Bは、正極34Bから露出する第2端部P2を有する。すなわち第2端部P2上には、正極34Bが形成されない。第2端部P2は、集電体32Bの一部として、集電体32Bの側面から外側(x方向)に延出する。
【0048】
第1正極積層体30Aと第2正極積層体30Bとは、中間積層体LMを介して積層方向に交互に複数積層される(以下、第1正極積層体30Aと第2正極積層体30Bとを区別する必要がない場合、両者をあわせて「正極積層体30」ともいう)。一実施形態において、複数の正極積層体30は、
図1に示すように、それぞれ一枚の平板状のシートとして構成されてよい。一実施形態において、複数の正極積層体30は、一枚のシートから構成されてもよい(当該態様の一例については、
図15及び
図16を用いて後述する)。
【0049】
一実施形態において、2次電池1に含まれる正極積層体30の総数は、5以上、10以上、又は、20以上でよい。一実施形態において、2次電池1に含まれる正極積層体30の総数は、50以下、40以下又は30以下でよい。一実施形態において、2次電池1のエネルギー密度は、300Wh/kg以上であってよい。一実施形態において、2次電池1の定格容量は、1.5Ah以上であってよく、また5Ah以上であってもよい。
【0050】
図1に示すように、金属シートMSは、第1端部P1及び第2端部P2(以下、両者を区別する必要がない場合、あわせて「端部P」ともいう。)上に配置される。一実施形態において、全ての端部P上に金属シートMSが配置されてよい。一実施形態において、一部の端部P上に金属シートMSが配置され、その余の端部P上には金属シートMSが配置されなくてもよい。例えば、複数の端部Pおきに金属シートMSが配置されてよい。
【0051】
一実施形態において、端部Pの積層方向における位置に基づいて、当該端部P上に配置される金属シートの数や厚さが設定されてよい。例えば、2次電池1の積層方向中央の端部P上に金属シートMSが2以上配置され、積層方向上部及び下部の端部P上に金属シートMSが1つ配置されるようにしてよい。また例えば、2次電池1の積層方向中央の端部P上に配置する金属シートMSの厚さを、積層方向上部及び下部の端部P上に配置する金属シートの厚さより大きくしてよい。これにより中央の端部P間における抵抗のばらつきが抑制され得る。
【0052】
一実施形態において、金属シートMSの数は、端部Pの総数の3倍以下でよく、また2倍以下でもよい。一実施形態において、金属シートMSの数は、端部Pの総数と同数でよく、端部Pの総数よりも少なくてもよく、例えば、端部Pの総数の半分以下でもよい。
【0053】
図3は、正極積層体30と金属シートMSの一例を示す斜視図である。一実施形態において、正極積層体30は、集電体32と、集電体32の両面にそれぞれ配置される正極34とを有してよい。集電体32は、絶縁層320と、絶縁層320を挟むように形成される導電層322とを有する。
【0054】
集電体32の絶縁層320は、例えば、シート状(フィルム状)又は繊維状の樹脂で構成されてよい。樹脂は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル又はポリアミド等の熱可塑性樹脂の少なくとも1つであってよい。絶縁層320は、当該樹脂の少なくとも1つ以上が複数積層されて構成されてもよい。一実施形態において、絶縁層320は、融点が150℃以上300℃以下の材料から形成される。一実施形態において、絶縁層320の厚さは、3μm以上10μm以下でよく、また4μm以上8μm以下でもよい。
【0055】
絶縁層320は、過充電状態や高温状態で異常発熱が発生した場合等に溶融し、正極積層体30を破損させ、電池内部の短絡電流を遮断するように機能し得る。これにより、2次電池1内部の急激な温度上昇を抑制し、電池の発火を抑制し得る。すなわち、絶縁層320は2次電池1の安全性向上に寄与し得る。
【0056】
集電体32の導電層322は、絶縁層320を挟むようにその両面に形成される。導電層322は、正極34に物理的及び/又は電気的に接触し、正極34に対して電子を授受するように機能する。導電層322は、電池においてリチウムイオンと反応しない導電体から構成される。一実施形態において、導電層322は、アルミニウム、チタン、ステンレス、ニッケル及びこれらの合金からなる群から選択される少なくとも一種の材料から構成される。一例では、導電層322は、アルミニウム又はアルミニウム合金である。一実施形態において、導電層322は、上記材料を絶縁層320の両側の表面に、蒸着、スパタリング、電解めっき又は貼り合わせすることで形成される。一実施形態において、各々の導電層322の厚さは、0.5μm以上5μm以下、0.7μm以上3μm以下、0.8μm以上2.0μm以下でよい。
【0057】
正極34は、集電体32の両面に形成される。正極34としては、用途に応じて公知の材料が適宜選択されてよい。正極34の厚さは、所望する電池の容量やレート特性に応じて適宜調整されてよい。一実施形態において、各々の正極34の厚さは、例えば、20μm以上150μm以下である。
【0058】
一実施形態において、正極34は正極活物質を有する。正極活物質は、キャリア金属を正極34に保持するための物質であり、キャリア金属のホスト物質ということもできる。正極活物質は、リチウムイオンを正極34に保持するための物質でよく、この場合、電池の充放電により正極活物質にリチウムイオンが充填及び脱離される。これにより、電池の安定性及び出力電圧が向上され得る。
【0059】
一実施形態において、正極活物質は、金属酸化物又は金属リン酸塩である。金属酸化物は、例えば、酸化コバルト系化合物、酸化マンガン系化合物、又は、酸化ニッケル系化合物でよい。金属リン酸塩は、例えば、リン酸鉄系化合物、又はリン酸コバルト系化合物でよい。一実施形態において、正極活物質は、LiCoO2、LiNixCoyMnzO(x+y+z=1)、LiNixCoyAlzO(x+y+z=1)、LiNixMnyO(x+y=1)、LiNiO2、LiMn2O4、LiFePO4、LiCoPO4、LiFeOF、LiNiOF、及びLiTiS2からなる群から選択される少なくとも1つでよい。正極活物質は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられてよい。一実施形態において、正極34における正極活物質の含有量は、正極34全体に対して50質量%以上100質量%以下でよい。
【0060】
一実施形態において、正極34は、正極活物質以外の成分を1つ以上含んでよい。
【0061】
一実施形態において、正極34は犠牲正極材を含んでよい。正極活物質の充放電電位範囲において酸化反応を生じ、かつ、還元反応を実質的に生じないリチウム含有化合物である。
【0062】
一実施形態において、正極34はゲル電解質を含んでよい。ゲル電解質は、正極34と集電体32との接着力を向上させうる。一例では、ゲル電解質は、高分子と、有機溶媒と、リチウム塩とを含む。ゲル電解質における高分子は、例えば、ポリエチレン及び/又はポリエチレンオキシドの共重合体、ポリビニリデンフロライド、並びにポリビニリデンフロライド及びヘキサフロロプロピレンの共重合体等でよい。
【0063】
一実施形態において、正極34は導電助剤及び/又はバインダーを含んでよい。一例では、導電助剤は、カーボンブラック、シングルウォールカーボンナノチューブ(SWCNT)、マルチウォールカーボンナノチューブ(MWCNT)、カーボンナノファイバー(CF)等である。一例では、バインダーは、ポリビニリデンフロライド、ポリテトラフルオロエチレン、スチレンブタジエンゴム、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂等である。一実施形態において、導電助剤の含有量は、正極34全体に対して0.5質量%30質量%以下である。一実施形態において、バインダーの含有量は、正極34全体に対して0.5質量%30質量%以下でよい。
【0064】
一実施形態において、正極34はポリマー電解質を含んでよい。一例では、ポリマー電解質は、高分子及び電解質を主に含む固体ポリマー電解質、並びに高分子、電解質、及び可塑剤を主に含む半固体ポリマー電解質である。一実施形態において、ポリマー電解質の含有量の合計は、正極34全体に対して、0.5質量%30質量%以下でよい。
【0065】
一実施形態において、
図3に示すように、金属シートMSは、集電体32の端部Pの一面(1対の導電層322のうちの一方の表面)に接合されてよい。一実施形態において、金属シートMSは、集電体32の端部Pの他面(1対の導電層322のうちの他方の表面)に接合されてもよい。一実施形態において、金属シートMSは、端部Pに一つ以上設けられてもよい。例えば、金属シートMSは、集電体32の端部Pの一面及び他面にそれぞれ1つずつ接合されてもよい。
【0066】
図3に示すように、金属シートMSと端部Pとの接合により、金属シートMSと端部Pとの間には第1接合痕WR1が形成されている。一実施形態において、第1接合痕WR1は溶接による接合痕、すなわち溶接痕であってよい。溶接は、例えば、超音波溶接、レーザ溶接、抵抗溶接又はスポット溶接であってよい。溶接は、一例では、超音波溶接である。一実施形態において、金属シートMSと端部Pの導電層322とは、第1接合痕WR1において一部又は全部が熱等により融合して一体化されてよい。また金属シートMS及び端部Pには、第2接合痕WR2も形成されている。詳細は後述するが、第2接合痕WR2は、端部P及び金属シートMSと正極電極タブ40との接合痕である。
【0067】
一実施形態において、
図3に示すように、金属シートMSは、集電体32の端部Pの全部ではなく一部のみを覆うように構成されてよい。例えば、金属シートMSは、正極34から所定の距離だけ離間した位置に配置されてよい。このとき、端部Pの導電層322上の金属シートMSが配置されていない領域に絶縁層を設けてよい。この場合、セパレータ20が破損等した場合において、負極10が端部Pの導電層322及び/又は金属シートMSを介して正極34と短絡することが抑制され、2次電池1の安全性が向上し得る。絶縁層は、例えば、シート状(フィルム状)又は繊維状の樹脂で構成されてよい。樹脂は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル又はポリアミド等の熱可塑性樹脂の少なくとも1つであってよい。なお、一実施形態において、金属シートMSは、集電体の端部Pの全面を覆うように構成されてもよい。
【0068】
一実施形態において、金属シートMSは、アルミニウム、チタン、ステンレス、ニッケル及びこれらの合金からなる群から選択される少なくとも一種の材料から構成される。金属シートMSは、一例では、硬質アルミ箔である。金属シートMSは、一例では、軟質アルミ箔である。軟質アルミ箔は、硬質アルミ箔に高温(400℃前後)の熱処理を施すことで形成されてよい。一実施形態において、金属シートMSは、導電層322と同一の材料で構成されてよい。
【0069】
一実施形態において、金属シートMSの厚さは、絶縁層320の厚さ及び導電層322の厚さに基づいて設定されてよい。例えば、各金属シートMSの合計厚さ(A)と各導電層322の合計厚さ(B)との和をX(=A+B)とし、各絶縁層320の合計厚さをYとした場合に、0.85<X/Y<2.3の関係が成り立つように、金属シートMSの厚さが設定されてよい。一実施形態において、1.0<X/Y<2.0であってもよい。一実施形態において、金属シートMSの厚さは、絶縁層320の厚さよりも厚くてよい。一実施形態において、各金属シートMSは全てが同じ厚さであってよく、また一部が異なる厚さあってもよい。一実施形態において、金属シートMSの厚さは、3μm以上、5μm以上又は7μm以上でよい。一実施形態において、金属シートMSの厚さは、15μm以下、12μm以下又は10μm以下でよい。
【0070】
図4Aは、接合痕の一例を説明するための図である。
図4Aは、
図3に示す正極積層体30の端部P近傍の平面図である。
図3に示すように、第1接合痕WR1は、端部Pの幅方向(y方向)に沿って、ライン状に複数列(例えば2列)形成されてよい。
図4Aに示すように、第1接合痕WR1は、第2接合痕WR2と積層方向からみて異なる位置に形成される。すなわち第1接合痕WR1と第2接合痕WR2とは平面視において重ならない。
【0071】
図4B~
図4Dは、接合痕の他の例を説明するための図である。一実施形態において、第1接合痕WR1は、
図4Bに示すように、端部Pの幅方向(y方向)に沿って、ライン状に1列形成されてよい。一実施形態において、第1接合痕WR1は、
図4C及び
図4Dに示すように、複数のドット状であってよく、端部Pの幅方向(y方向)に沿って一列(
図4C)又は複数列(
図4C)形成されてよい。
図4B~
図4Dのいずれにおいても、第1接合痕WR1は、第2接合痕WR2と積層方向からみて異なる位置に配置される。すなわち、
図4B~
図4Dのいずれにおいても、第1接合痕WR1と第2接合痕WR2とは平面視において重ならない。
【0072】
(正極電極タブ40)
図1に示すように、正極電極タブ40は、集電体32(32A、32B)の各端部P(P1、P2)及び各金属シートMSに対して積層方向(z方向)に並ぶように配置される。一実施形態において、正極電極タブ40は、各集電体32の端部P及び各金属シートMSよりも上方又は下方に配置されてよい。一実施形態において、正極電極タブ40は、ある端部Pとこれに隣接する端部Pとの間に配置されてもよい。
【0073】
正極電極タブ40は、導電性材料で構成される。正極電極タブ40は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金で構成されてよい。一例では、正極電極タブ40は、硬質アルミで構成されてよい。一実施形態において、正極電極タブ40の厚さは、0.05mm以上1mm以下でよく、0.1mm以上0.5mm以下であってもよい。
【0074】
正極電極タブ40は、各集電体32の各端部P及び各金属シートMSと接合される。これにより、正極電極タブ40は、各端部Pを介して各正極34と電気的に接続される。正極電極タブ40には、各端部Pとの接合による第2接合痕WR2が形成されている。第2接合痕WR2は、平面視で1又は複数の点(スポット)であってよく、また連続する線や面であってもよい。
【0075】
一実施形態において、正極電極タブ40と各端部P及び各金属シートMSとは溶接により接合されてよい。溶接は、例えば、超音波溶接、レーザ溶接、抵抗溶接又はスポット溶接であってよい。溶接は、一例では、超音波溶接である。
【0076】
図5は、正極電極タブ40、端部P及び金属シートMSの接合状態を説明するための図である。
図5は、端部Pのうち第1接合痕WR1及び第2接合痕WR2を含む箇所をxz面に沿って切った断面を模式的に示す。
【0077】
図5に示すように、第1接合痕WR1と第2接合痕WR2とは、積層方向からみて互いに異なる位置に設けられる。第1接合痕WR1は、端部Pごとに形成される。言い換えると、一つの第1接合痕WR1は、複数の端部Pにまたがって形成はされない。これに対し、第2接合痕WR2は、正極電極タブ40、各端部P及び各金属シートMS全体にわたって形成される。すなわち、第2接合痕WR2は、正極電極タブ40から最下層の端部Pまで積層方向に一気通貫して形成される。
【0078】
図6は、第2接合痕WR2を説明するための図である。
図6は、第2接合痕WR2をzy面に沿って切った断面(
図5のA-A断面)を模式的に示す。
図6に示すように、第2接合痕WR2の断面は、第1領域R1と第2領域R2とを含む。一実施形態において、第2接合痕WR2の断面は、積層方向の一方に窪んだ凹部を有してよい。
【0079】
第1領域R1では、導電層322と金属シートMSとが一体化して積層され、正極電極タブ40に接合される。ここで、一体化して積層されることは、各導電層322及び金属シートMSの一部又は全部が熱等により融合した状態(各層の区別がつかない状態)を含む。
【0080】
一実施形態において、第1領域R1は、積層方向に沿って絶縁層320を実質的に含まなくてよい。第1領域R1は、電極タブ40と各導電層322及び金属シートMSとの間を電気的に接続するための物理的なパスを提供する。
【0081】
一実施形態において、第1領域R1は、2つの第2領域R2の間に構成されてよい。一実施形態において、第1領域R1の最大厚さは、第2領域R2の最大厚さの半分以下であってよい。
【0082】
第2領域R2では、絶縁層320を挟む一対の導電層322と金属シートMSとが積層される。すなわち、第2領域R2は、積層方向に沿って絶縁層320を含む領域である。
【0083】
一実施形態において、第2接合痕WR2は、溶接により形成されてよい。この場合、第2接合痕WR2は、溶接痕である。溶接に際し、正極電極タブ40、端部P及び金属シートMSが積層方向に沿って押圧されてよい。これにより、溶接箇所において絶縁層320が軟化して溶接箇所から幅方向(
図6の左右方向)外側に向かって押し出される。また溶接箇所において、各導電層322と金属シートMSとが熱溶融して一体化される。これにより第1領域R1及び第2領域R2が形成され得る。
【0084】
ところで、上述のとおり、絶縁層320は、過充電状態や高温状態で異常発熱が発生した場合等に2次電池1内部の急激な温度上昇を抑制し、電池の発火を抑制し得る。絶縁層を導電層で挟む構成の集電体は、集電体の数が増えるに従い、または絶縁層の厚さが増すに従い、集電体の端部と電極タブとの接合や各層における安定した接合品質の担保(バラつき制御)が困難になる。例えば、電極タブと全ての端部を溶接しようとして強い力で押圧すると、導電層が薄い場合等において、端部の導電層が破損、破断してしまうおそれがある。一方、導電層を破損させない程度の力で電極タブと溶接すると、接合が不十分で集電体の端部と電極タブとの間の抵抗が増大してしまうおそれがある。
【0085】
この点、一実施形態にかかる2次電池1は、少なくとも1つの端部P間に金属シートMSが配置される。金属シートMSは、第2接合痕WR2において、導電層322の追加の導電層として機能し、絶縁層320に対する導電層の割合を増加させる。そのため第2接合痕WR2における抵抗増加が抑制されうる。これにより2次電池1の出力特性が向上され得る。また金属シートMSは、正極電極タブ40と端部Pとの接合に際し、端部Pの導電層322の保護層としても機能し得る。これにより、2次電池1の正極積層体30の総数(積層数)が多い場合等において、正極電極タブ40と各端部Pと強い力で押圧して接合したとしても、導電層322の破損、破断が抑制され得る。これにより2次電池1の生産歩留まりが向上され得る。一実施形態において、第2接合痕WR2の抵抗は、5.0mΩ以下であってよく、3.0mΩ以下であってよく、1.0mΩ以下であってよく、また0.5mΩ以下であってもよい。
【0086】
(電解液)
一実施形態において、2次電池1は電解液を含んでよい。電解液は、溶媒及び電解質を含む液体であり、イオン伝導性を有する。電解液は、液体電解質と換言してもよく、リチウムイオンの導電経路として作用する。このため、2次電池1が電解液を有する場合、内部抵抗が低下し、エネルギー密度、容量、及びサイクル特性が向上し得る。
【0087】
電解液は、例えば、2次電池1の筐体(パウチ)を充填する溶液であってよい。また例えば、電解液は、セパレータ20に浸潤されてよく、また高分子に保持されることでポリマー電解質又はゲル電解質を構成していてもよい。
【0088】
電解液に含まれる電解質は、例えば、リチウム塩でよい。リチウム塩は、例えば、LiI、LiCl、LiBr、LiF、LiBF4、LiPF6、LiAsF6、LiSO3CF3、LiN(SO2F)2、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2CF3CF3)2、LiB(O2C2H4)2、LiB(C2O4)2、LiB(O2C2H4)F2、LiB(OCOCF3)4、LiNO3、及びLi2SO4からなる群から選択される1種又は2種以上の組み合わせであってよい。
【0089】
電解液に含まれる溶媒として、例えばフッ素原子を有する非水溶媒(以下、「フッ素化溶媒」という。)及びフッ素原子を有しない非水溶媒(以下、「非フッ素溶媒」という。)を添加してもよい。
【0090】
フッ素化溶媒は、例えば、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル、及び1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル-1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル等でよい。
【0091】
非フッ素溶媒は、例えば、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、ジメトキシエタン、ジメトキシプロパン、ジメトキシブタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、アセトニトリル、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、及び12-クラウン-4でよい。
【0092】
上記フッ素化溶媒及び/又は非フッ素溶媒は1種を単独で、又は2種以上を任意の割合で自由に組み合わせて用いてよい。フッ素化溶媒と非フッ素溶媒の含有量は特に限定されず、溶媒全体に対するフッ素化溶媒の割合が0~100体積%であってよく、溶媒全体に対する非フッ素溶媒の割合が0~100体積%であってもよい。
【0093】
<2次電池の製造方法>
次に
図7~
図10を用いて、2次電池1の製造方法の一例(以下「本製法」ともいう。)を説明する。
図7は、本製法の一例を示すフローチャートである。
図8A及び
図8Bは、
図7の工程ST1を説明するための図である。
図9A~
図9Dは、
図7の工程ST2を説明するための図である。
図10は、
図7の工程ST3を説明するための図である。
【0094】
図7に示すように、本製法は、正極積層体シートを準備する工程ST1と、正極積層体シートの金属シートを接合する工程ST2と、正極積層体シートか正極積層体を切り出す工程ST3と、成形体を組み立てる工程ST4と、電極タブと集電体とを接合する工程ST5と、成形体を密閉容器に封入する工程ST6とを含む。
【0095】
まず、工程ST1において、
図8A及び
図8Bに示すように、正極積層体シートS1が準備される。
図8Aは正極積層体シートS1の平面図である。
図8Bは、
図8AのB-B断面図である。
図8Aに示すように、正極積層体シートS1は、長手方向(y方向)と短手方向(x方向)を有する帯状のシートであってよい。一実施形態において、正極積層体シートS1は、
図8A及び
図8Bに示すように、集電体32と、集電体32の両面に塗布された正極34とで構成されてよい。集電体32は、絶縁層320と、絶縁層320を挟むように形成される導電層322とを有してよい。正極積層体シートの短手方向(x方向)の一端は、正極34が形成されておらず、集電体32の導電層322が露出されている。
【0096】
次に、工程ST2において、
図9A~
図9Dに示すように、正極積層体シートS1の短手方向一端に金属シートMSが接合される。
図9Aは、金属シートMSが接合された正極積層体シートS1の平面図である。
図9B~
図9Dは、
図9AのC-C断面の一例である。
【0097】
工程ST2における接合により、
図9Aに示すように、第1接合痕WR1が長手方向に沿って例えばライン状に形成される。金属シートMSは、正極積層体シートS1に溶接により接合されてよい。溶接は、例えば、超音波溶接、レーザ溶接、抵抗溶接又はスポット溶接であってよい。溶接は、一例では、超音波溶接である。
【0098】
一実施形態において、工程ST2における接合は、金属シートMSを集電体32に対して押し付けることで実行されてよい。例えば、
図9Bや
図9Cに示すように、第1接合痕WR1は、金属シートMSが集電体32側に向かって窪むように形成されてよい。一実施形態において、第1接合痕WR1は、
図9Bに示すように、金属シートMSと(当該金属シートMSが接する)一方の導電層322との間に設けられてよい。この場合、第1接合痕WR1においては、金属シートMSは他方の導電層322とは電気的に接続されない。一実施形態において、第1接合痕WR1は、
図9Cに示すように、金属シートMSと双方の導電層322との間に設けられてよい。この場合、第1接合痕WR1において、金属シートMSは、双方の導電層322と電気的に接続される。
【0099】
一実施形態において、工程ST2における接合は、集電体32を金属シートMSに対して押し付けることで実行されてよい。例えば、
図9Dに示すように、第1接合痕WR1は、集電体32が金属シートMS側に向かって窪むように形成されてよい。この場合、第1接合痕WR1において、金属シートMSは、双方の導電層322と電気的に接続される。
【0100】
次に工程ST3において、正極積層体30が切り出される。具体的には、カット刃やレーザ等を用いて、
図10に示すように、正極積層体シートS1に金属シートMSが接合された状態から所与の形状の正極積層体30が複数切り出される。これにより、複数の正極積層体30が得られる。
【0101】
次に工程ST4において、正極積層体30と中間積層体LMとが交互に積層された成形体が組み立てられる。具体的には、工程ST3で準備した複数の正極積層体30を、
図1に示すように、中間積層体LMを介して、積層方向に互いに離間するように配置する。なお、後述するように負極10及びセパレータ20がシート状に構成される場合、当該シートをジグザグ状(つづら状)に折りたたむことで形成されるセパレータ20間に(
図9参照)、又は、当該シートを巻回することで形成されるセパレータ20間に(
図10参照)、各正極積層体30を配置させてよい。
【0102】
次に工程ST5において、電極タブと集電体とが接合される。具体的には、各集電体32の端部P及び金属シートMSが電極タブ40に上述した第2接合痕WR2を形成するように接合される。第2接合痕WR2は、積層方向において第1接合痕WR1とは重ならないように接合される。
また負極端部Qが負極電極タブ42に接合痕WL2を形成するようにして接合される。接合は、超音波溶接、レーザ溶接、抵抗溶接又はスポット溶接によりなされてよい。
【0103】
次に工程ST6において、工程ST5で準備した成形体が密閉容器へ封入される。一実施形態において、電解液が密閉容器に封入されてよい。密閉容器は、例えばラミネートフィルムであってよい。以上により、2次電池1が製造される。
【0104】
本製法においては、工程ST2において、正極積層体シートMSに金属シートMSを事前に接合しておく。そのため、工程ST3において、金属シートMSを、正極積層体シートS1の端部Pの形状にあわせて同時に切り出すことが可能になる。すなわち金属シートMSを端部Pの形状にあわせて切り出す別の工程が不要になる。また工程ST5において、金属シートMSと集電体32の端部Pとの位置合わせが不要になるので、正極電極タブ40と端部Pとの接合が容易になる。さらに工程ST5において、第2接合痕WR2を、第1接合痕WR1と積層方向において重ならないように設けることが原理的に可能になる。第2接合痕WR2を第1接合痕WR1と積層方向において重ならないように設けることで、両者を重ねて設ける場合に比べて、第2接合痕WR2の接合状態が改善され、第2接合痕WR2の抵抗の増加が抑制され得る。
【0105】
<2次電池の使用方法>
2次電池1は、正極電極タブ40を外部回路の一端に接続し、負極電極タブ42を外部回路の他端に接続することで充放電される。外部回路は、例えば抵抗、電源、装置、デバイス、別の電池、又はポテンショスタット等でよい。複数の正極積層体30の各端部Pは、外部回路に互いに同電位で接続されてよい。また複数の負極10の各負極端部Qは、外部回路に互いに同電位で接続されてよい。
【0106】
正極電極タブ40と負極電極タブ42との間に、負極電極タブ42から外部回路を通り正極電極タブ40への電流が流れるような電圧を印加すると、2次電池1が充電され、負極10にリチウム金属が析出する。充電後の2次電池1について、所望の外部回路を介して正極電極タブ40及び負極電極タブ42を接続すると、2次電池1が放電され、負極10のリチウム金属が電解溶出する。
【0107】
一実施形態において、2次電池1は、電池の組み立て後の第1回目の充電(初期充電)により、負極10の表面又はセパレータ20の表面(すなわち、負極10とセパレータ20との界面)に固体電解質界面層(SEI層)が形成されてよい。SEI層は、例えば、リチウムを含む無機化合物、又はリチウムを含む有機化合物等を含んでよい。一実施形態において、SEI層の厚さは、1.0nm以上10μm以下である。2次電池1にSEI層が形成されている場合、充放電により、負極10及び/又はセパレータ20とSEI層との界面においてリチウム金属が析出又は溶解する。
【0108】
以上説明した2次電池1によれば、電池の出力特性及び生産性が向上され得る。
【0109】
<変形例>
2次電池1は、本開示の範囲及び趣旨から逸脱することなく種々の変形をなし得る。
【0110】
(負極10)
図11は、負極10の他の例を示す斜視図である。一実施形態において、負極10の負極端部Qに、金属シートが設けられてよい。
図11に示す例は、
図2Bに示す負極10の負極端部Qの一面に負極用の金属シートMS2が設けられた例である。一実施形態において、負極用の金属シートMS2は、負極導電層162と同一の材料であってよい。負極用の金属シートMS2は、一例では、Cuである。
【0111】
図11に示すように、負極用の金属シートMS2と負極端部Qとの接合により、両者の間に第1接合痕WL1が形成されてよい。また負極端部Q及び負極用の金属シートMS2と、負極電極タブ42との接合により、第2接合痕WL2が形成されてよい。負極端部Qの第1接合痕WL1及び第2接合痕WL2の接合形態や位置関係は、端部Pにおける第1接合痕WR1及び第2接合痕WR2と同様であってよく、説明は省略する。
【0112】
図12は、負極10の他の例を示す斜視図である。一実施形態において、負極10は、負極活物質を実質的に有しなくてよい。
図12に示す例では、負極10は、Cu、Ni、Ti、Fe、及び、その他Liと反応しない金属、及び、これらの合金、並びに、ステンレス鋼(SUS)からなる群より選択される少なくとも1種から構成される。「Liと反応しない金属」は、2次電池1の作動状態においてリチウムイオン又はリチウム金属と反応して合金化することがない金属でよい。負極10は集電体としても機能する。
【0113】
なお、負極10が「負極活物質を実質的に有しない」ことは、例えば、放電終了時(例えば電池の開回路電圧が2.5V以上3.6V以下である状態)に負極10に析出する負極活物質の層厚が、25μm以下であることを含む。一実施形態において、放電終了時の負極活物質の層厚は、20μm以下、15μm以下、10μm以下、又は、5μm以下であってよく、また0μmであってもよい。負極10が負極活物質を実質的に有しないことにより、重量エネルギー密度に加え、体積当たりのエネルギー密度が向上し得る。なお、この場合、2次電池1は、「アノードフリーリチウム電池」、「ゼロアノードリチウム電池」、又は「アノードレスリチウム電池」ということもできる。
【0114】
一実施形態において、負極10は、電池の初期充電前(電池が組み立てられてから第1回目の充電をするまでの状態)に負極活物質を有しない。すなわち、2次電池1は、初期充電後に、リチウム金属が負極上に析出し、及び、その析出したリチウム金属が電解溶出することにより充放電が行われてよい。この場合、負極活物質が占める体積及び質量が抑制され、電池全体の体積及び質量が小さくなり、エネルギー密度が原理的に高くなる。なお、「リチウム金属が負極上に析出」することは、負極の表面にリチウム金属が析出することだけでなく、後述する固体電解質界面(SEI)層の表面や緩衝機能層の表面又は内部にリチウム金属が析出することも包む。
【0115】
一実施形態において、電圧が4.2Vの状態において負極上に析出しているリチウム金属の質量をM4.2とし、電圧が3.0Vの同質量をM3.0とした場合、M3.0/M4.2は、40%以下又は35%以下であってよい。一実施形態において、比M3.0/M4.2は、1.0%以上、2.0%以上、3.0%以上、又は、4.0%以上であってよい。
【0116】
一実施形態において、負極10の厚さは、1.0μm以上30μm以下でよい。これにより、2次電池1において負極10の占める体積を減少させ、エネルギー密度を向上させ得る。負極10の厚さは、2.0μm以上20μm以下、2.0μm以上18μm以下、又は、3.0μm以上15μm以下でもよい。
【0117】
一実施形態において、負極10は、正極積層体30に対向する表面の少なくとも一部に、N、S、及びOからなる群より選択される元素が各々独立に2つ以上結合した芳香環を含む化合物(以下、「負極コーティング剤」ともいう。)がコーティングされてよい。負極コーティング剤は、上記の元素が負極10を構成する金属原子に配位結合することで負極10上に保持され得る。この態様によれば、負極10の表面において、リチウム金属の不均一な析出反応を抑制され、負極10上に析出するリチウム金属がデンドライト状に成長することが抑制され得る。
【0118】
一実施形態において、負極コーティング剤は、負極10の表面の少なくとも一部にコーティングされる。一実施形態において、面積比で10%以上の表面が負極コーティング剤を有していてよく、20%以上、40%以上、60%以上、又は、80%以上の表面が負極コーティング剤を有してもよい。
【0119】
一実施形態において、負極コーティング剤に含まれる芳香環は、ベンゼン、ナフタレン、アズレン、アントラセン、及びピレン等の芳香族炭化水素、並びに、フラン、チオフェン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、及びピラジン等のヘテロ芳香族化合物でよい。一例では芳香環は芳香族炭化水素である。一例では芳香環はベンゼン又はナフタレンである。一例では芳香環はベンゼンである。
【0120】
一実施形態において、負極コーティング剤は、芳香環に1つ以上の窒素原子が結合して構成されてよい。一実施形態において、負極コーティング剤は、芳香環に窒素原子が結合し、かつ、かかる窒素原子以外にN、S、及びOからなる群より選択される元素が各々独立に1つ以上結合している構造を有する化合物であってよい。窒素原子が芳香環に結合している化合物を負極コーティング剤として用いると、電池のサイクル特性が向上し得る。
【0121】
負極コーティング剤は、例えば、ベンゾトリアゾール、ベンズイミダゾール、ベンズイミダゾールチオール、ベンゾオキサゾール、ベンゾオキサゾールチオール、ベンゾチアゾール、及びメルカプトベンゾチアゾール、並びにこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種でよい。一例では、負極コーティング剤は、ベンゾトリアゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾオキサゾール、及びメルカプトベンゾチアゾール、並びにこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種である。
【0122】
(緩衝機能層)
一実施形態において、負極10とセパレータ20との間に、多孔質状又はファイバ状の緩衝機能層が設けられてよい。緩衝機能層は、イオン伝導性及び電気伝導性を有する固体部分(ゲル状の部分を含む)と、この固体部分の隙間により構成される空孔部分とを有する。この場合、リチウム金属は、負極10の表面(負極10と緩衝機能層との界面)及び/又は緩衝機能層の内部(緩衝機能層の固体部分の表面)に析出しうる。
【0123】
(中間積層体)
図13及び
図14は、それぞれ、リチウム2次電池の他の構成例を説明するための要部断面図である。一実施形態において、負極10と負極10の両面に配置されたセパレータ20とが一枚のシートSHとして構成されてよい。
【0124】
一実施形態において、
図13に示すように、シートSHが複数回鋭角で交互に折り曲げられて中間積層体を構成し、各正極積層体30(30A、30B)が中間積層体の互いに対向するセパレータ20間にそれぞれ配置されてよい。
【0125】
一実施形態において、
図14に示すように、シートSHが複数回巻回されて中間積層体を構成し、各正極積層体30(30A、30B)が中間積層体の互いに対向するセパレータ20間にそれぞれ配置されてよい。なお、
図14に示す例においては、各正極積層体30も、後述するように一枚のシートが巻回されて構成されてもよい(
図15参照)。
【0126】
図13や
図14に示す例では、負極10やセパレータ20が非常に薄い場合でもこれらをシートSHとして一体に取り扱うことができるので、電池の生産性が向上され得る。またシートSHにおいて、セパレータ20に挟まれる負極10には両面から物理的圧力がかかるため、シートSHを積層させる際に負極10にシワが生じにくく、これにより、電池のサイクル特性が向上し得る。
【0127】
(正極積層体)
図15及び
図16は、それぞれ、正極積層体の他の構成例を説明するための斜視図である。一実施形態において、各正極積層体30は、
図15に示すように、一枚のシートSH2が複数回巻回されて構成されてよい。一実施形態において、各正極積層体30は、
図16に示すように、一枚のシートSH2が複数回鋭角で交互に折り曲げられて構成されてよい。シートSH2は、例えば、集電体32と集電体32の両面に配置された正極34を含んで構成されてよい。15や
図16に示す例では、集電体32や正極34が非常に薄い場合でもこれらをシートSH2として一体に取り扱うことができるので、電池の生産性が向上され得る。
【0128】
<実施例>
次に、実施例及び比較例について説明する。本開示は、以下の実施例及び比較例によって何ら限定されるものではない。
【0129】
図17は、実施例及び比較例の構成及び結果を示す図である。
図18は、実施例及び比較例における金属シートの積層パターンを示す図である。
図18の「パターン1」ないし「パターン4」は、
図17の「積層パターン」で示される「パターン1」ないし「パターン4」に対応する。
【0130】
(実施例1)
実施例1として、
図1に示す構造のリチウム2次電池を作成した。まず
図2Bに示す構造の負極10を準備した。負極集電体16の負極絶縁層160として6μm厚のポリエチレンテレフタレート(PET)を用い、負極導電層162として、1.0μmのCuを蒸着させた。負極活物質14としては、溶剤としての水に、グラファイトを97質量部、導電助剤としてカーボンブラックを0.5質量部、およびバインダーとして、カルボキシメチルセルロース(CMC)を1.5質量部、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)を1.0質量部混合した混合材料を用いた。以上により、負極10を21個準備した。そして各負極10の負極端部Qに、それぞれ負極用の金属シートMS2(厚さ4μmの銅箔)を超音波溶接して取り付け、
図11に示す構造とした。次にセパレータ20として、ポリビニリデンフロライド(PVDF)及びAl
2O
3の混合物で表面がコーティングされたシート(厚み:15μm)を準備した。そして負極10の両面をセパレータ20で挟み押圧することで、中間積層体LMを得た。
【0131】
正極積層体30の集電体32としては、6μm厚のフィルム状のポリエチレンテレフタレート(PET、絶縁層320)の両面にAl(導電層322)を1.0μm蒸着したものを用いた。正極34としては、溶剤としてのN-メチル-ピロリドン(NMP)に、正極活物質としてLiNi
0.8Co
0.15Al
0.05O
2を96質量部、導電助剤としてカーボンブラックを2質量部、及びバインダーとしてポリビニリデンフロライド(PVDF)を2質量部混合したものを用いた。この正極34を集電体32の両面にそれぞれ目付が23mg/cm
2で塗布することで、正極積層体30を得た。正極積層体30は20個準備した。そして10個の正極積層体30の集電体32の端部Pに、
図17の「実施例1」に示す構成の金属シートMS(12μmの硬質アルミ)をそれぞれ超音波溶接して取り付けた。また
図17の「実施例1」に示す材質(硬質アルミ)の正極電極タブ40(厚さ0.2mm)を準備した。負極電極タブ42としては、厚さ0.2mmのニッケル鍍金が施された銅を用いた。
【0132】
次に中間積層体LMと正極積層体30とを交互に積層させた。このとき、
図18に示す積層パターン(パターン1)となるように、金属シートMSが端部Pに取り付けられた正極積層体30と、金属シートMSが取り付けられていない正極積層体30とを適宜選択した。そして、集電体32の各端部Pと金属シートMSとを重ねて、正極電極タブ40に超音波溶接により接合した。また負極端部Qと負極用の金属シートMS2とを重ねて負極電極タブ42に超音波溶接により接合した。かかる構造体をラミネート外装体に挿入し、電解液とともに封止してリチウム2次電池を得た。電解液は、炭酸エチレン(EC)、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸エチルメチル(EMC)を30:35:35質量部で混合した溶媒に1Mとなるように、六フッ化リン酸リチウム(LiPF
6)を溶解した電解液に炭酸ビニレン(VC)を2重量部添加したものを用いた。
【0133】
(実施例2~8)
実施例2~8は、
図17及び
図18に示すように、金属シートMSの材質、厚さ、正極電極タブ40の材質及び金属シートMSの積層パターンが異なる点を除き、実施例1と同様にしてリチウム2次電池を作成した。
【0134】
(比較例1)
比較例1では、金属シートMSを用いない点を除き、実施例1と同様にしてリチウム2次電池を作成した。
【0135】
図17において、「X/Y」は、実施例1~8については、各金属シートMSの合計厚さ(A)と各導電層322の合計厚さ(B)との和をX(=A+B)とし、各絶縁層320の合計厚さをYとした場合に、XをYで除した値である。比較例1では、金属シートMSを用いていないため、Xは各導電層の合計厚さである。
【0136】
図17において、「抵抗[mΩ]」は、第2接合痕WR2における抵抗であり、実施例及び比較例にかかるリチウム2次電池をそれぞれ解体し、4端子法で測定した。具体的には、HIOKI社製の抵抗計BT3561のクリップ型リードのプラス極を正極電極タブ40とつなぎ、マイナス極を20個の正極積層体30の内の一つにおいて、正極積層体の正極活物質が塗工されていない箇所をクリップではさみ、1kHzのインピーダンスを4端子リードで測定した。次にマイナス極を別の正極積層体に繋ぎ変えて測定を行い、20個の平均値を求めた。かかる平均値が、
図17に示す「抵抗(mΩ)」である。
図17に示すとおり、実施例1~実施例8における第2接合痕WR2における抵抗は、比較例1に比べて顕著に低かった。
【0137】
なお、実施例1~8及び比較例1にかかるリチウム2次電池に対し、釘刺試験を行ったところ、いずれも発火や爆発は生じなかった。ここで、釘刺試験は、各電池に釘を貫通させ内部短絡を擬似的に発生させた場合の電池の発火又は破裂の有無を確認する試験である。
【0138】
(比較例2)
比較例2では、負極用の金属シートMS2を用いない点を除き、実施例1と同様にしてリチウム2次電池を作成した。
【0139】
実施例1と比較例2において、上述したと同様に、負極電極タブ42と負極端部Qとの接合領域における抵抗を測定した。比較例2では、抵抗は、19.4[mΩ]であった。これに対し、実施例1では、抵抗は、0.88mΩであり、比較例2に比べて顕著に低かった。
【0140】
本開示の実施形態は、以下の態様をさらに含む。
【0141】
(付記1)
リチウム2次電池であって、
(a)第1積層体であって、第1絶縁層を一対の第1導電層で挟んで構成される第1集電体と、前記第1集電体上に配置される第1電極とを含み、前記第1集電体が、前記第1電極が配置されない第1端部を備える、第1積層体と、
(b)前記第1電極と極性の異なる電極及びセパレータを含む中間積層体と、
(c)前記第1積層体に対し前記中間積層体を介して積層方向に離間して配置される第2積層体であって、第2絶縁層を一対の第2導電層で挟んで構成される第2集電体と、前記第2集電体上に配置され、前記第1電極と同一極性の第2電極とを含み、前記第2集電体が、前記第2電極が配置されない第2端部を備える、第2積層体と、
(d)前記第1端部及び前記第2端部に対して前記積層方向に並んで配置される金属シートであって、前記第1端部及び前記第2端部のいずれか一方との接合による第1接合痕を有する金属シートと、
(e)前記第1積層体及び前記第2積層体に電気的に接続される電極タブであって、前記第1端部、前記金属シート及び前記第2端部との接合による第2接合痕を有し、前記第2接合痕は、前記積層方向からみて前記第1接合痕と異なる位置にある、電極タブと、を備える、
リチウム2次電池。
【0142】
(付記2)
前記第1接合痕は、溶接痕である、付記1に記載のリチウム2次電池。
【0143】
(付記3)
前記第1接合痕は、1又は複数のライン状である、付記1又は付記2に記載のリチウム2次電池。
【0144】
(付記4)
前記第1接合痕は、1又は複数のドット状である、付記1又は付記2に記載のリチウム2次電池。
【0145】
(付記5)
前記第2接合痕は、溶接痕である、付記1から付記4のいずれか1つに記載のリチウム2次電池。
【0146】
(付記6)
前記第2接合痕は、1又は複数のライン状である、付記1から付記5のいずれか1つに記載のリチウム2次電池。
【0147】
(付記7)
前記第2接合痕は、1又は複数のドット状である、付記1から付記5のいずれか1つに記載のリチウム2次電池。
【0148】
(付記8)
前記第2接合痕は、前記積層方向の断面において、前記一対の第1導電層、前記金属シート及び前記一対の第2導電層が一体化した領域を含む、付記1から付記7のいずれか1つに記載のリチウム2次電池。
【0149】
(付記9)
前記第1接合痕と前記第2接合痕とは、前記積層方向からみて互いに重ならない、付記1から付記8のいずれか1つに記載のリチウム2次電池。
【0150】
(付記10)
前記第1積層体と前記第2積層体とが前記中間積層体を挟んで前記積層方向に交互に複数配置される、付記1から付記9のいずれか1項に記載のリチウム2次電池。
【0151】
(付記11)
前記第1積層体は平板状のシートで構成され、前記第2積層体は、前記第1積層体とは別体の平板状のシートで構成される、付記10に記載のリチウム2次電池。
【0152】
(付記12)
前記第1積層体と前記第2積層体は、一枚のシートを折りたたんで又は巻回して構成される、付記10に記載のリチウム2次電池。
【0153】
(付記13)
前記第1積層体及び前記第2積層体があわせて10層以上配置される、付記10から付記12のいずれか1つに記載のリチウム2次電池。
【0154】
(付記14)
前記金属シートは、複数の前記第1端部及び複数の前記第2端部のうちの少なくとも1つの端部に設けられる、付記10から付記13のいずれか1つに記載のリチウム2次電池。
【0155】
(付記15)
前記金属シートは、前記少なくとも一つの端部の片面に設けられる、付記14に記載のリチウム2次電池。
【0156】
(付記16)
前記金属シートは、前記少なくとも一つの端部の両面に一つずつ設けられる、付記14に記載のリチウム2次電池。
【0157】
(付記17)
前記金属シートの数は、前記第1端部及び前記第2端部の合計数の3倍以下である、付記10から付記16のいずれか1つに記載のリチウム2次電池。
【0158】
(付記18)
前記金属シートは、前記第1導電層及び前記第2導電層と同一の材料で構成される、付記1から付記17のいずれか1つに記載のリチウム2次電池。
【0159】
(付記19)
前記第1電極及び前記第2電極が正極である、付記1から付記18のいずれか1つに記載のリチウム2次電池。
【0160】
(付記20)
前記第1電極及び前記第2電極が負極である、付記1から付記18のいずれか1つに記載のリチウム2次電池。
【符号の説明】
【0161】
1……リチウム2次電池、10……負極、20……セパレータ、30……正極積層体、32……集電体、320……絶縁層、322……導電層、34……正極、40……正極電極タブ、42……負極電極タブ、MS……金属シート、LM……中間積層体、WR1……第1接合痕、WR2……第2接合痕
【要約】
リチウム2次電池の出力特性及び生産性の低下を抑制する技術を提供する。リチウム2次電池が提供される。リチウム2次電池は、(a)第1端部を備える第1積層体と、(b)含む中間積層体と、(c)第2端部を備える第2積層体と、(d)第1端部及び第2端部に対して積層方向に並んで配置される金属シートであって、第1端部及び第2端部のいずれか一方との接合による第1接合痕を有する金属シートと、(e)第1積層体及び第2積層体に電気的に接続される電極タブとを含む。電極タブは、第1端部、金属シート及び第2端部との接合による第2接合痕を有する。第2接合痕は、積層方向からみて第1接合痕と異なる位置にある。