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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】処理装置
(51)【国際特許分類】
   F23G 7/06 20060101AFI20240523BHJP
   E03F 7/10 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
F23G7/06 101F
E03F7/10 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024025912
(22)【出願日】2024-02-22
【審査請求日】2024-02-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512044817
【氏名又は名称】株式会社福島県南環境衛生センター
(74)【代理人】
【識別番号】100146732
【弁理士】
【氏名又は名称】横島 重信
(72)【発明者】
【氏名】本多 昌雄
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】実開昭48-039772(JP,U)
【文献】特公昭60-009211(JP,B2)
【文献】実開昭60-016827(JP,U)
【文献】実開昭50-100105(JP,U)
【文献】実公平06-032172(JP,Y2)
【文献】特開平07-171333(JP,A)
【文献】特開2011-021779(JP,A)
【文献】米国特許第4378334(US,A)
【文献】中国特許出願公開第111503647(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 7/06
E03F 7/10
B01D 53/34 - 53/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バキューム車による汲取り作業の際に真空ポンプの二次側から放出される臭気ガスを加熱して処理するための処理室を有する処理装置であって、
当該処理室には、当該臭気ガスを処理室に導入するための臭気ガス導入経路と、燃焼により燃焼火炎を形成するための燃料ガスを供給するための燃料ガス供給経路と、当該燃料ガスと混合して燃焼可能な形態で大気中から空気を供給可能な空気供給経路と、供給された燃料ガスを含む混合気体に点火するための点火装置が設けられており、
上記空気供給経路には、当該処理室と大気との間の連通を閉鎖することが可能な経路閉鎖手段を有することを特徴とする処理装置。
【請求項2】
上記経路閉鎖手段は、開閉バルブであることを特徴とする請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
上記処理装置は処理室内の圧力を検知するための圧力計を有し、当該圧力計の測定値が所定の圧力以上になった際に上記開閉バルブが閉じられることを特徴とする請求項2に記載の処理装置。
【請求項4】
上記経路閉鎖手段は逆止弁であり、上記処理室内から気体が流出しようとする際に上記空気供給経路を閉鎖することを特徴とする請求項1に記載の処理装置。
【請求項5】
上記経路閉鎖手段は経路切換バルブであって、上記空気供給経路を大気又は臭気ガス導入経路のいずれか一方と連通可能であることを特徴とする請求項1に記載の処理装置。
【請求項6】
上記請求項1~5のいずれかに記載の処理装置を有することを特徴とするバキューム車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家畜の糞尿や生ゴミ等の有機廃棄物を堆肥化する際、或いは、特にヒトの糞尿の回収の際に発生する各種の有害なガス成分を含む臭気ガス等に対して、これを高温に晒すことによって当該有害なガス成分を分解等して、その濃度を低減するための処理装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
ヒトや家畜の糞尿や生ゴミ等の有機廃棄物からは、その分解などの過程で生じる硫化水素やアンモニア等の有害な成分を含む臭気ガスが生じ、これらの環境中への発散を極力防止することが望まれる。特に、ヒトの糞尿について、下水道施設の完備していない地域においては、いわゆるバキューム車を使用して糞尿を貯留する貯留槽から真空ポンプを使用してバキューム車に搭載されるタンク内に回収して、所定の汚水処理施設に移送して処理することが一般的であり、その際にヒトの住環境に臭気ガスを発散させることは望ましくない。
【0003】
バキューム車による糞尿の回収は、糞尿を貯留するタンク内、及び、当該タンクに接続された汲取りホース内を真空ポンプによって減圧して大気圧との間に圧力差を生じさせ、この圧力差によって貯留槽から糞尿を吸引することにより行われ、その際に真空ポンプの二次側に有害成分を含む臭気ガスが放出される。
【0004】
従来から、当該バキューム車の真空ポンプから放出される臭気ガスを各種の構造を有する燃焼装置内に導いて、燃焼装置内の高温に晒すことで有害なガス成分を分解等して濃度を低減するための臭気ガス処理装置が使用されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、軽油等の液体状の燃料を使用して、これを燃焼用の空気中に噴霧する等して空気と混合した状態で、燃焼室内において着火機構を用いて着火することで燃焼させるバーナーを用いて、バーナーから生じる燃焼火炎を二次燃焼室内に噴射すると共に、バキューム車の真空ポンプの二次側から放出される臭気ガスを当該二次燃焼室内に導入して燃焼火炎に混合することにより臭気ガスを高温化し、臭気ガスに含まれる各種のガス成分の濃度を低下させる脱臭装置が記載されている。
【0006】
特許文献1に記載されるような軽油等を燃料として使用する脱臭装置においては、これを搭載するバキューム車の燃料(軽油)を脱臭用の燃焼火炎の生成のために転用して使用することが可能であるため、脱臭装置用の燃料を個別に準備する必要無しに連続稼働することが可能であり、広く一般に使用されている。
【0007】
一方、上記のような軽油等の液体の燃料を使用するバーナーにおいては、軽油等を完全燃焼させることでタールや煤等の発生を抑制しながら、NOxの発生を抑制すること等が要請されるが、当該要請を満足することは必ずしも容易でない。このため、例えば、特許文献2に記載されるバーナーにおいては、送風機によって所定の割合で燃焼用空気を燃焼室に導入しながら、当該燃焼用空気に対して燃料を噴霧する際に、その流路に各種の機構等を設ける等、両者を良好に混合して理想的な燃焼状態を維持するための各種の制御等が必要とされる。
【0008】
特許文献1に記載の脱臭装置では、特許文献2に記載されるようなバーナー装置によって生じる燃焼火炎に対して、バキューム車の真空ポンプの二次側から放出される臭気ガスを混合することにより臭気ガスの脱臭等が行われるが、糞尿の一部等を含む臭気ガスを処理する過程でバーナー内部に汚れが蓄積して良好な燃焼状態の維持が困難になる等の原因で、定期的にバーナーの構成部品を交換する等のメンテナンスが必要となる。
【0009】
他方、特許文献3、特許文献4等に記載されるように、LPガス等の可燃性ガスを燃料として、当該可燃性ガスを空気と混合・燃焼して得られる燃焼火炎を利用して、臭気ガスを高温化することにより、臭気ガスに含まれる各種のガス成分の濃度を低下させる脱臭装置が知られている。
【0010】
LPガス等の可燃性ガスは容易に燃焼用空気と混合すると共に、広い空燃比の範囲で燃焼可能であり、不完全燃焼に起因するタール等の発生も抑制される。このため、特許文献3,4に記載の脱臭装置のように、可燃性ガスを噴出するノズルの周囲に、外部の空間(大気)と連通する通気孔を設ける等の簡易な構造によっても良好な燃焼状態を維持可能であり、上記の軽油等の液体の燃料を使用する脱臭装置と比較して、燃料の噴霧等を行う複雑な補記類が不要である等、脱臭装置の構造を簡素化することが可能である。
【0011】
このため、LPガス等の可燃性ガスを燃料とする脱臭装置では、導入のためのコストが軽減される他、脱臭装置の維持管理コストを軽減することができる。また、灯油(軽油)等を使用する場合に比較して、単位操業当たりの燃料費が抑制される等のメリットが存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開平9-137933号公報
【文献】特開平9-72511号公報
【文献】特開平10-54515号公報
【文献】特開平7-293850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
バキューム車の真空ポンプが発揮する仕事量は、バキューム車のタンク内の圧力を所定の圧力に減圧することにより、流動性を有する糞尿を汲み取りホースを介して所定の速度で定常的に吸引可能な程度に設定される。このような定常的な運転がされている状態では、真空ポンプの二次側(排気側)は大気圧に対して若干の陽圧になるように設定され、当該圧力によってタンク内の臭気ガスが真空ポンプの二次側から脱臭装置に供給される。
【0014】
当該脱臭装置では、その内部の処理室等における臭気ガス等の流通抵抗が、真空ポンプの二次側からの排気を妨げない程度以下になるように設定されるが、臭気ガスを効率的に加熱すると共に、脱臭装置内での滞留時間を長くする目的で、臭気ガスの流通経路を延長するための隘路等が設けられることが一般的であって、当該臭気ガスの流通経路に起因して所定の流通抵抗を示すことが避けられない。
【0015】
一方、糞尿等の汲取り作業においては、例えば、貯留槽の内部の糞尿の残量が減少して汲取りホースから大気が流入した際には、真空ポンプの一次側であるバキューム車のタンク内の圧力が大気圧に近づくことで、真空ポンプによって排出されて脱臭装置に投入される臭気ガスの単位時間当たりの体積(標準状態での体積)が上記定常状態に比べて増加する等、脱臭装置に供給される臭気ガスの量が変動することが避けられない。
【0016】
そして、特に真空ポンプから特許文献1,3,4等に記載される脱臭装置に供給される臭気ガスの量が増加した際には、脱臭装置内の流通抵抗に起因して脱臭装置内の圧力が大気圧を越える範囲に上昇する現象を生じる。
【0017】
特許文献1に記載されるような軽油等を燃料とする脱臭装置の場合には、軽油等を良好に燃焼するために、燃焼用空気を加圧して供給する送風機を有することが一般である。このため、上記のように真空ポンプの二次側の圧力上昇に起因して脱臭装置内の圧力が上昇した際にも、当該送風機により生じる供給圧力によって燃焼用空気をバーナー内に供給可能であり、当該燃焼用空気を供給する経路を臭気ガスが逆流して環境中に放出される等の問題を生じにくい。
【0018】
一方、特許文献3,4に記載されるような構造を有して、大気中から取り入れた無加圧の燃焼用空気によってLPガス等の可燃性ガスを燃焼させる従来の脱臭装置においては、臭気ガスによって脱臭装置内の圧力が上昇した際には、当該燃焼用空気を吸入する経路(例えば、図1(b)の連通孔7,31等)を通じて臭気ガスが脱臭装置の外部に漏出して、周囲の環境を害する現象を生じるという問題を含んでいた。
【0019】
上記のような問題を解決するために、本発明はLPガス等の可燃性ガスを燃料とする臭気ガスの脱臭等を行う処理装置であって、処理装置に供給される臭気ガスが処理装置の外部への漏出することを防止可能な処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決するために、本発明は以下の様な処理装置を提供する。
(1)バキューム車による汲取り作業の際に真空ポンプの二次側から放出される臭気ガスを加熱して処理するための処理室を有する処理装置であって、当該処理室には、当該臭気ガスを処理室に導入するための臭気ガス導入経路と、燃焼により燃焼火炎を形成するための燃料ガスを供給するための燃料ガス供給経路と、当該燃料ガスと混合して燃焼可能な形態で大気中から空気を供給可能な空気供給経路と、供給された燃料ガスを含む混合気体に点火するための点火装置が設けられており、上記空気供給経路には、当該処理室と大気との間の連通を閉鎖することが可能な経路閉鎖手段を有する処理装置。
(2)上記経路閉鎖手段は、開閉バルブである上記の処理装置。
(3)上記処理装置は処理室内の圧力を検知するための圧力計を有し、当該圧力計の測定値が所定の圧力以上になった際に上記開閉バルブが閉じられる上記の処理装置。
(4)上記経路閉鎖手段は逆止弁であり、上記処理室内から気体が流出しようとする際に上記空気供給経路を閉鎖する上記の処理装置。
(5)上記経路閉鎖手段は経路切換バルブであって、上記空気供給経路を大気又は臭気ガス導入経路のいずれか一方と連通可能である上記の処理装置。
(6)上記の処理装置のいずれかを有するバキューム車。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、従来のLPガス等の可燃性ガスを燃料とする脱臭処理装置と比較して、臭気ガスの漏出を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】従来の臭気ガスの脱臭装置の構造を示す図である。
図2】バキューム車によって、貯留槽の内部の糞尿等をタンク内に回収する際の様子を示す模式図である。
図3】本発明に係る処理装置の一例(実施例1)を示す模式図である。
図4】本発明に係る処理装置の一例(実施例2)を示す模式図である。
図5】本発明に係る処理装置の一例(実施例3)を示す模式図である。
図6】本発明に係る処理装置の一例(実施例4)を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
特許文献3に記載の脱臭装置を例にして、従来の臭気ガスの脱臭装置の構造等を説明する。図1には、特許文献3に記載の脱臭装置(図1(a))、及び、当該脱臭装置で使用されるバーナー部(図1(b))を示す。
【0024】
当該脱臭装置においては、燃焼筒(符号17)の底部付近にガスの燃焼によって火炎を生じるバーナー装置(符号1)を設けて、当該バーナー装置の火炎部に、気水分離室(符号12)から導気官(符号14)を通じて臭気ガスを導入することで、当該臭気ガスを高温に晒して硫化水素やアンモニア等の有害成分を分解して悪臭を除去している(図1(a))。
【0025】
当該バーナー装置(符号1)は、燃料噴射ノズル(符号3)から可燃性ガスを噴出すると共に、大気に連通する通気孔(符号7,31,35)を燃料噴射ノズルの近傍に配置することで空気を吸入して可燃性ガスと混合し、点火プラグ(符号4)により着火することで火炎を上方に放出可能とされている(図1(b))。
【0026】
LPガス等の可燃性ガスは容易に空気と混合し、また、軽油等と比べて一般に分子量の小さい分子によって構成されるために空気中の酸素と結合して容易に燃焼反応を完了可能である。つまり、LPガス等の可燃性ガスを燃料として使用することで、比較的広い空気との混合比率の範囲でタールや煤などを生じることなく燃焼可能であるために、図1(b)に示すように、石油バーナー等と比較して簡便な構造によって有効なバーナー装置を構成することができる。
【0027】
図1(a)に示す構造では、上方に開放された燃焼筒の底部付近にバーナー装置を設けることにより、ガスの燃焼で生じた高温の気体が燃焼筒内部を経て上方に放出されることによりバーナー付近に負圧が発生する等により、外気(大気)に連通する通気孔から継続して新鮮な空気が吸入されて連続して燃焼が継続される。
【0028】
図2には、バキューム車を用いて、貯留槽22の内部の糞尿26等をバキューム車のタンク21内に回収する際の様子を模式的に示す。糞尿26等の回収は、真空ポンプ20を作動することにより吸引管24内を介して吸引管24に連通するタンク21の内部を減圧し、当該タンク21に連通する汲取ホース23の先端を貯留槽22の内部の糞尿26に差し込むことにより行われる。一方、真空ポンプ20の動作によりタンク21内から排気された気体(臭気ガス)は、排気管25を介して脱臭を行うための処理装置100に導かれて脱臭された後に大気中に放出される。
【0029】
真空ポンプ20は、単位時間にタンク21内に吸入しようとする糞尿26の体積に応じた仕事量を発生するために、大気圧とタンク21内との間に所定の圧力差を維持可能な能力を有するものが使用される。そして、真空ポンプ20の二次側に接続されて臭気ガスを処理する処理装置100は、使用する真空ポンプ20が通常の能力で排気した際に、その二次側の圧力を略大気圧に維持できる程度の通気性(処理能力)を有することが好ましい。
【0030】
一方、処理装置100の設置に使用できる空間には制限が存在すると共に、良好な脱臭等の処理を行う目的で処理装置に設けられる処理室の内部には各種の隘路等を設けることで臭気ガスの滞留時間を長くする等の機構が設けられており、これに起因して処理室内部での臭気ガスの通気性の低下が生じることとなる。このため、実際に脱臭に使用される処理装置では、真空ポンプ20が定常的に機能する間においてはその二次側を略大気圧に維持可能である一方で、何らかの理由でタンク21の圧力が上昇して真空ポンプ20の排気体積が増加した場合には、その二次側の圧力が大気圧を越える場合が発生する。
【0031】
大気圧を越える圧力で臭気ガスが図1に示すような処理装置に供給された際には、処理装置の内部が陽圧になり、バーナー付近も陽圧になるため、本来が外部の新鮮な空気を取り入れるための経路から臭気ガスが流出して悪臭の原因となるという問題を生じていた。
【0032】
上記のような問題を解決するために、本発明者が各種の検討を行ったところ、燃料である燃料ガスと混合して燃焼に使用するための燃焼用の空気(以下、「新鮮空気」と呼ぶことがある。)を大気中から取り入れて処理室に供給するための空気供給経路に、処理室と大気との間の連通を閉鎖することのできる経路閉鎖手段を設けて、例えば、真空ポンプが動作して臭気ガスが処理室に導入されている間、或いは、特に臭気ガス等によって処理装置の内部が陽圧になった場合等に新鮮空気の導入経路を閉鎖することにより、臭気ガスの流出を防止して悪臭の発生を抑制しながら臭気ガスの脱臭処理を行うことができることを見出し、本発明に至ったものである。
【0033】
つまり、可燃性ガスは比較的広範な条件において燃焼可能であること、及び、糞尿等の汲み取りの際に発生する臭気ガスは大気と略同等の割合で酸素を含有することから、LPガス等の燃料ガスの燃焼用に使用する燃焼ガスとして臭気ガスを使用することが可能である。このため、真空ポンプの動作状態等に応じて、燃焼用の新鮮空気の導入経路を閉鎖して臭気ガスの流出を防止した状態で、臭気ガスの脱臭等の処理が可能であることを見出したものである。
【0034】
本発明によれば、可燃性ガスを燃料として臭気ガスの脱臭処理を行う際に臭気ガスの流出を防止可能であると共に、特に処理装置の内部を陽圧に維持した状態での脱臭等の処理が可能となり、処理装置の小型化や、処理装置の内部での臭気ガスの流通経路を延長することにより高い脱臭効果を得ることが可能となる。
【0035】
以下、実施例を参照して、本発明について更に詳しく説明する。なお、以下に示す実施例は本発明を例示的に示すものであって、本発明は当該実施例に限定して理解されるものではない。
【実施例
【0036】
(実施例1)
図3には、本発明の実施例1に係る処理装置についての模式図を示す。図3(a)は処理装置の縦断面、図3(b)は処理装置の横断面をそれぞれ示す。なお、図3は、本発明に係る処理装置の例について模式的に示す図であって、特に図面に記載される各部材の断面図は、必ずしも処理装置における単一の断面における形態等を示すものでない。以下、他の実施例について示す模式図においても同様である。
【0037】
図3に示す処理装置では、上方が大気に開放された臭気ガスの処理室110の底部に、所定の圧力で燃料ガス導入路121から供給されるLPガス等の燃料ガスを所定の流出量で流出するためのオリフィス120を含む燃焼室118が設けられる。当該オリフィス120の近傍には、導入される新鮮空気等が燃料ガスと容易に混合して燃焼可能となるような形態で、新鮮空気等の燃焼ガスを導入する手段として燃焼空気導入口123が設けられており、当該燃焼空気導入口123を大気に連通するための空気供給経路119が接続されている。
【0038】
図3に示す処理装置では、当該空気供給経路119に、当該経路を介した処理室と大気との間の連通を閉鎖することが可能な経路閉鎖手段として、手動式の開閉バルブ122を設けられている。当該開閉バルブ122の構造は特に限定されず、ボールバルブやバタフライバルブの他、ゲートバルブやグローブバルブ、ニードルバルブ等を適宜使用することができる。
【0039】
開閉バルブ122,124が開いた状態では、燃料ガスと新鮮空気が所定の割合で処理室110内部の燃焼室118に供給されて混合気体が生成され、高電圧装置117により点火プラグ116に電圧を印加して放電を生じさせることにより当該混合気体が着火し、燃焼火炎を生じて臭気ガス処理室110内に放出可能である。
【0040】
なお、図3では、処理室110の内部に主に燃焼火炎を生じさせるための燃焼室118を設ける形態について記載するが、本発明はこれに限定されず、処理室110の内部に燃焼火炎を供給可能な範囲において、個別の燃焼室118を設ける必要はなく、処理室110の内部にオリフィス120を適宜配置すると共に、各オリフィスから放出される燃料ガスに対して燃焼ガスを供給する燃焼空気導入口123を設けることで、燃料ガスと燃焼ガスを混合して燃焼火炎を供給することができる。
【0041】
また、図3では、燃焼室118内に放出された燃料ガスと周囲から供給される燃焼ガス(酸素)との間での混合と燃焼が同時に生じる、いわゆる拡散燃焼によって燃焼火炎を生成する形態について記載するが、本発明はこれに限定されず、予め所定の割合で燃焼ガス(酸素)と混合した燃料ガスをノズルから放出しながら燃焼させる形態のバーナーを使用して処理室110の内部に燃焼火炎を供給することができる。
【0042】
その際に、燃料ガスの流束によって燃焼ガスを吸引して混合する、いわゆるブンゼンバーナー状の火口を使用することで、無加圧の燃焼ガスの吸入を安定化すると共に、燃焼温度の向上等を行うことができる。
【0043】
また、臭気ガス処理室110内には適宜の拡散板113等が配置されることで、上記燃焼火炎によって拡散板113等が加熱されて臭気ガス処理室110の内部を高温に維持することを補助すると共に、臭気ガス導入管112から導入される臭気ガスが臭気ガス処理室110の内部を流通する経路を延長して、燃焼火炎との混合や、臭気ガスに含まれる各種の成分の酸化除去や分解の程度を高めることができる。
【0044】
また、図3に示す処理装置により臭気ガスの処理を開始する際には、臭気ガスの導入を開始する以前に、燃料ガスと新鮮空気との燃焼によって臭気ガス処理室110の内部を所定の温度に加熱しておくことにより、臭気ガスの導入初期から有害成分を効率的に分解することが可能となる。
【0045】
図3に示す処理装置では、燃焼室118の周囲に環状部を有する臭気ガス導入経路112が設けられ、当該臭気ガス導入管が真空ポンプの二次側に接続されることで臭気ガスが臭気ガス処理室110内に供給される。図3に示す臭気ガス導入経路112では、管の上部に複数の臭気ガス噴出口114と、それに対応した整流板115を設けることで、臭気ガス処理室110内に噴出した臭気ガスが渦を形成するようにされており、燃焼火炎と混合された臭気ガスが処理室110の内部を流通する経路が長くなるようにされている。
【0046】
また、臭気ガス導入経路112には、糞尿等に起因する臭気ガス以外の液体状、微粉状等の飛沫に加えて、真空ポンプから放出されるオイル成分が導入され、これらが臭気ガス導入経路の内部などに付着してタール状に変化して堆積する現象が観察される。このようなタール状の物質の堆積を防止するために、臭気ガス導入経路に適宜のミストトラップを設けたり、臭気ガス導入経路の所定の箇所を所定の温度に加熱可能な手段を設けることができる。
【0047】
図3に示す処理装置は、例えば、以下のように使用することができる。真空ポンプを起動してバキューム車のタンク内の減圧を開始する前に、空気供給経路の開閉バルブ122と燃料ガスの開閉バルブ124を開放して燃焼室118付近で燃料ガスと新鮮空気とを混合し、その状態で点火プラグ116からの火花によって燃焼火炎を生じさせて、臭気ガス処理室110の内部を臭気ガスの脱臭に適した温度に加熱することが好ましい。
【0048】
その後、燃焼火炎を維持した状態で、真空ポンプを起動してバキューム車のタンク内を徐々に減圧し、真空ポンプの二次側から排気される臭気ガスを臭気ガス処理室110に導入することで、当該臭気ガスの脱臭処理を行うことができる。また、バキューム車のタンク内が減圧された後、タンクに接続された汲取りホースを介して糞尿等をタンク内に吸引して回収する際にも、燃焼火炎を維持することで臭気ガス処理室110に導入される臭気ガスの脱臭処理を行うことができる。
【0049】
上記のように図3に示す処理装置を使用する過程で、真空ポンプの働きによって臭気ガスが臭気ガス処理室110に導入されている間は、空気供給経路の開閉バルブ122を閉じた場合にも、臭気ガスに含まれる酸素を燃焼ガスとして、オリフィス120から供給される燃料ガスとの間で燃焼を生じさせて、燃焼火炎を維持させることが可能である。
【0050】
臭気ガスと燃料ガスとの間ではいわゆる拡散燃焼による燃焼を生じることが可能であり、燃料ガスが燃焼可能な濃度の下限値を上回る範囲で燃焼を生じることができる。このため、例えば、着火に使用する点火プラグ116を臭気ガスと燃料ガスの混合を生じる箇所よりもオリフィス120に近い側に設置することにより、空気供給経路の開閉バルブ122を閉じて新鮮空気の供給を止めた状態でも、臭気ガスと燃料ガスとの混合気体の燃焼により燃焼火炎を維持可能であると共に、何らかの理由で燃焼火炎が失われた場合にも再着火を行うことが可能である。
【0051】
また、図3に示す処理装置は、空気供給経路の開閉バルブ122を開放した状態で通常の汲取り作業を行うと共に、例えば、汲取る糞尿が減少して汲取りホースが大気を吸い込む可能性が高まった際に開閉バルブ122を閉鎖する等、真空ポンプの二次圧に大きな変動が見込まれる場合に開閉バルブ122を閉鎖するようにして使用することも可能である。
上記のように、新鮮空気の開閉バルブ122の開閉によって、燃料ガスとの間で燃焼する燃焼ガスを新鮮空気から臭気ガスに変更する際には、臭気ガス処理室110の特性等に応じて、燃焼火炎を良好に維持するために供給する燃料ガスの量等を適宜変更することができる。
【0052】
(実施例2)
図4には、本発明の実施例2に係る処理装置についての模式図を示す。実施例2に係る処理装置は、上記実施例1に係る処理装置と比較して、空気供給経路に設ける開閉バルブ122を逆止弁125に変更した点で相違する。
【0053】
逆止弁125は、外部の大気が燃焼室118の側に吸引されて流れる際には流通抵抗が低い一方で、燃焼室118の側から気体が流出しようとする場合には流通抵抗が高くなって、実質的に空気供給経路を閉鎖して燃焼室118の側からの気体の流出を防止するように機能するものである。
【0054】
図4に示すように、空気供給経路119に設けられる経路閉鎖手段として逆止弁125を使用することにより、空気供給経路を介して新鮮空気が吸入されて燃焼を生じる範囲において、燃焼室118の内部においては新鮮空気によって安定した燃焼火炎を生じる一方で、何らかの理由で処理室110に供給される臭気ガスの量が増加して燃焼室118周辺の圧力が高まった場合には、逆止弁125により空気供給経路が閉鎖されることで臭気ガスの漏出が防止され、臭気ガスを燃焼ガスとした燃焼が開始される。このため、処理装置の使用の際に、特に臭気ガスの漏出を防止するための逆流防止手段の操作に注意を払うこと無く、容易に臭気ガスの漏出を防止することが可能となる。
【0055】
上記逆止弁125は、上記機能を果たす範囲で適宜の構造を有するものを使用可能であり、例えば、フロートボール型や、スイングチャッキ型、リフトチャッキ型、ウエハチャッキ型、ノーバル型等の構造を有するものを使用することができる。
【0056】
(実施例3)
図5には、本発明の実施例3に係る処理装置についての模式図を示す。実施例3に係る処理装置は、上記実施例1に係る処理装置と比較して、空気供給経路に設ける開閉バルブ122を電気的な信号によって動作する電磁弁にすると共に、臭気ガス処理室110の内部の圧力を検知可能な圧力計126を設けて、当該圧力計126からの信号に応じて開閉バルブ122を動作させるように変更した以外は、実施例1に係る処理装置と同様である。
【0057】
空気供給経路119を介した臭気ガスの漏出は、臭気ガス処理室110の内部の、特に燃焼室118付近の圧力が大気圧を越えることによって生じるものであり、その漏出量は燃焼室118付近の圧力の上昇によって増大する。
【0058】
このため、図5に示すように空気供給経路119に設けられる経路閉鎖手段として、臭気ガスの処理室110の内部の適宜の位置に設けた圧力計126によって検出される圧力に応じて動作する開閉バルブ122を設けることによって、真空ポンプの二次側の圧力が高まった際に空気供給経路119を閉鎖して臭気ガスの漏出を防止することができる。
【0059】
図5に示す開閉バルブ122は、圧力計126によって検出された圧力が、例えば、大気圧を越えた際に閉じられて臭気ガスの漏出を防止すると共に、臭気ガス処理室110の気体が排出されて当該圧力が大気圧程度に低下した際に再び開いて燃焼室118付近に新鮮空気を供給可能とすることができる。圧力の上昇時に開閉バルブ122を閉じる際の圧力のしきい値と、再び圧力が低下した際に開閉バルブ122を開く際の圧力のしきい値は、臭気ガスの漏出の程度などに応じて適宜決定することができる。
【0060】
上記開閉バルブ122として、主にボールバルブやバタフライバルブの他、ゲートバルブやグローブバルブ、ニードルバルブ等を適宜使用することができる。また、開閉バルブ122を開閉するための信号として、上記処理室110の内部に設けた圧力計で生成される信号の他に、例えば、真空ポンプの動作状況など、目的に応じて適宜の信号を使用して電磁弁である開閉バルブ122の開閉をすることができる。
【0061】
(実施例4)
図6には、本発明の実施例4に係る処理装置についての模式図を示す。実施例4に係る処理装置は、上記実施例1に係る処理装置と比較して、新鮮空気の導入経路に設ける開閉バルブとして、空気供給経路119を(a)大気(新鮮空気)と連通させる、(b)閉鎖する、との動作以外に、(c)臭気ガス導入管112等の臭気ガス導入経路と連通させることが可能な経路切換バルブ(三方弁)127を使用した点で実施例1に係る処理装置と相違する。
【0062】
上記で説明したように、真空ポンプが動作することで臭気ガス処理室110の内部に臭気ガスが流入する状態においては、燃料ガスを燃焼させるための燃焼ガスとして新鮮空気は必ずしも必要とされず、臭気ガスを燃焼ガスとして燃焼火炎を生成することが可能である。一方、実施例1に係る処理装置において、開閉バルブ122によって新鮮空気の供給を遮断した際には、燃料ガスに対して酸素を含む燃焼ガスの混合形態や混合割合等が大きく変化するため、臭気ガス処理室110等の構成によっては、一次的な燃焼火炎の消失等を生じることが予想される。
【0063】
これに対して、図6に示すように、空気供給経路119に設けられて処理室と大気との間の連通を閉鎖することが可能な経路閉鎖手段として、空気供給経路を大気又は臭気ガス導入経路のいずれか一方と連通可能な経路切換バルブ127を設けることで、燃焼室118の燃焼空気導入口123に供給される燃焼ガスを新鮮空気と臭気ガスの間で切り換える際にも燃料ガスと燃焼ガスの混合位置等が同様になるために、当該切り換えによって生じる燃焼火炎の変化を抑制することが可能である。
【0064】
開閉バルブ127の切換は、真空ポンプの動作状況等に応じて手動で切り換えても良く、また図5に示すような臭気ガス処理室110内の圧力を検知するための圧力計の出力に応じて自動的に切り換えを行うことも可能である。また、真空ポンプの動作に連動して開閉バルブ127を切り換えて、真空ポンプの動作中は常に臭気ガスを燃料ガスとする等も可能である。
【0065】
上記経路切換バルブ127としては、ボールバルブを構成するボール状部材にL字形の経路を設けたLポート型の三方弁を使用する他、それぞれ大気と臭気ガス経路に連通する二つのバタフライバルブの一方を開/他方を閉となるように構成し、これらを同時に動作(開閉)させることで三方弁と同様の機能を構成してもよい。
【0066】
臭気ガスを燃焼室118の燃焼空気導入口123に供給して燃焼ガスとして使用する際には、当該臭気ガスの経路に所定の容量を有する拡張室128を設ける等により、短周期の真空ポンプの二次圧の変化を平準化することにより燃焼室118付近の燃焼火炎を安定化できる点で好ましい。
【0067】
また、図6に示す構成によれば、燃焼ガスを新鮮空気と臭気ガスのいずれにした場合にも、燃焼室118に対する燃焼ガスの供給位置を一定にできるため、予め混合した燃料ガスと燃焼ガスの混合気を燃焼させるブンゼンバーナー状の火口を使用する場合にも、燃焼火炎の安定化を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明によれば可燃性ガスを燃料として臭気ガスの脱臭処理を行う際にも処理装置の外部への臭気ガスの漏洩が防止されることで、良好な臭気ガスの脱臭処理が可能となる。
【符号の説明】
【0069】
20 真空ポンプ
21 タンク
22 貯留槽
23 汲取ホース
24 吸引管
25 排気管
26 糞尿
100 処理装置
110 臭気ガス処理室(二次燃焼筒)
112 臭気ガス導入経路
113 拡散板
114 臭気ガス噴出口
115 整流板
116 点火プラグ
117 高電圧装置
118 燃焼室
119 空気供給経路
120 オリフィス
121 燃料ガス導入路
122 開閉バルブ(新鮮空気)
123 燃焼空気導入口
124 開閉バルブ(燃料ガス)
125 逆止弁
126 圧力計
127 経路切換バルブ(三方弁)
128 拡張室
130 新鮮空気
131 臭気ガスの流れ
132 燃料ガス
【要約】
【課題】LPガス等の可燃性ガスを燃料として臭気ガスの脱臭等を行う処理装置であって、処理装置に供給される臭気ガスが処理装置の外部への漏出することを防止可能な処理装置を提供すること。
【解決手段】 バキューム車による汲取り作業の際に真空ポンプの二次側から放出される臭気ガスを加熱して処理するための処理室を有する処理装置であって、当該処理室には、当該臭気ガスを処理室に導入するための臭気ガス導入経路と、燃焼により燃焼火炎を形成するための燃料ガスを供給するための燃料ガス供給経路と、当該燃料ガスと混合して燃焼可能な形態で大気中から空気を供給可能な空気供給経路と、供給された燃料ガスを含む混合気体に点火するための点火装置が設けられており、上記空気供給経路には、当該処理室と大気との間の連通を閉鎖することが可能な経路閉鎖手段を有することを特徴とする処理装置。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6