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  • 特許-内接ギヤポンプ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】内接ギヤポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04C 2/10 20060101AFI20240523BHJP
   F04C 15/00 20060101ALI20240523BHJP
   F04C 18/10 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
F04C2/10 341H
F04C15/00 L
F04C18/10
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024513985
(86)(22)【出願日】2023-09-14
(86)【国際出願番号】 JP2023033627
【審査請求日】2024-03-13
(31)【優先権主張番号】P 2022202209
(32)【優先日】2022-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593016411
【氏名又は名称】住友電工焼結合金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116366
【弁理士】
【氏名又は名称】二島 英明
(72)【発明者】
【氏名】高田 翔一
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-30215(JP,A)
【文献】特開2012-41868(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 2/10
F04C 15/00
F04C 18/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の外歯を有するインナーロータと、
前記複数の外歯に噛み合う複数の内歯を有するアウターロータと、
前記インナーロータおよび前記アウターロータを回転自在に収容したハウジングと、
ステータおよびモータロータを有するアキシャルギャップモータと、を備え、
前記アウターロータが前記モータロータであり、
前記ハウジングは、
前記アウターロータの外周を囲むように円筒状に設けられた周壁部と、
前記周壁部の両端部を塞いでいる第一蓋部および第二蓋部と、を備え、
前記第一蓋部は、前記ステータと前記アウターロータとの間に配置されており、
前記第二蓋部は、前記ハウジング内に連通する吸入ポートおよび吐出ポートを備える、
内接ギヤポンプ。
【請求項2】
前記第一蓋部が非磁性材料で構成されている、請求項1に記載の内接ギヤポンプ。
【請求項3】
前記第一蓋部の厚さが0.3mm以上5mm以下である、請求項1または請求項2に記載の内接ギヤポンプ。
【請求項4】
前記第一蓋部と前記アウターロータとの間のクリアランスが0.01mm以上0.20mm以下である、請求項1または請求項に記載の内接ギヤポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内接ギヤポンプに関する。
本出願は、2022年12月19日付の日本国出願の特願2022-202209に基づく優先権を主張し、前記日本国出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、アキシャルギャップ型のロータを備える電動ポンプが開示されている。このアキシャルギャップ型のロータは、インペラ、およびインペラに支持されたマグネットを備えるインペラ一体型のロータである。インペラとマグネットとは、インペラの回転軸に沿って並んで配置されている。つまり、ロータの回転力が伝達されるインペラとロータとがロータの回転軸に沿って並んで配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-182269号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示の内接ギヤポンプは、複数の外歯を有するインナーロータと、前記複数の外歯に噛み合う複数の内歯を有するアウターロータと、前記インナーロータおよび前記アウターロータを回転自在に収容したハウジングと、ステータおよびモータロータを有するアキシャルギャップモータと、を備え、前記アウターロータが前記モータロータであり、前記ハウジングは、前記アウターロータの外周を囲むように円筒状に設けられた周壁部と、前記周壁部の両端部を塞いでいる第一蓋部および第二蓋部と、を備え、前記第一蓋部は、前記ステータと前記アウターロータとの間に配置されており、前記第二蓋部は、前記ハウジング内に連通する吸入ポートおよび吐出ポートを備える。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1図1は、実施形態に係る内接ギヤポンプの概略断面図である。
図2図2は、実施形態に係る内接ギヤポンプに備わるステータの説明図である。
図3図3は、実施形態に係る内接ギヤポンプに備わるインナーロータおよびアウターロータの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
[本開示が解決しようとする課題]
インペラとロータとがロータの回転軸に沿って並んで配置されていると、インペラが一体になったロータであっても、ロータ全体が大型化し易い。小型化が可能な電動ポンプが求められている。
【0007】
本開示は、小型化が可能な内接ギヤポンプを提供することを目的の一つとする。
【0008】
[本開示の効果]
本開示の内接ギヤポンプは、小型化が可能である。
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
(1)本開示の実施形態に係る内接ギヤポンプは、複数の外歯を有するインナーロータと、前記複数の外歯に噛み合う複数の内歯を有するアウターロータと、前記インナーロータおよび前記アウターロータを回転自在に収容したハウジングと、ステータおよびモータロータを有するアキシャルギャップモータと、を備え、前記アウターロータが前記モータロータであり、前記ハウジングは、前記アウターロータの外周を囲むように円筒状に設けられた周壁部と、前記周壁部の両端部を塞いでいる第一蓋部および第二蓋部と、を備え、前記第一蓋部は、前記ステータと前記アウターロータとの間に配置されており、前記第二蓋部は、前記ハウジング内に連通する吸入ポートおよび吐出ポートを備える。
【0011】
上記内接ギヤポンプでは、アウターロータがモータロータとして機能するので、小型化が可能である。上記内接ギヤポンプでは、アウターロータが駆動源であり、そのアウターロータの駆動に伴ってインナーロータが受動する。上記内接ギヤポンプは、第一の構成および第二の構成を満たしている。第一の構成は、駆動源である環状のモータロータの内部空間に、モータロータの回転力が伝達される部品が配置されている点である。第一の構成を満たす内接ギヤポンプは、モータロータとアウターロータとが独立した部材で構成される場合に比較して、モータロータの回転軸に沿った方向のサイズを小さくし易い。第二の構成は、モータロータとステータとが第一蓋部を挟んで向かい合って配置されている点である。第二の構成を満たす内接ギヤポンプは、モータロータとアウターロータとが独立した部材で構成され、かつ環状のステータの内部空間にインナーロータおよびアウターロータが配置される場合に比較して、モータロータの直径に沿った方向のサイズを小さくし易い。
【0012】
上記内接ギヤポンプでは、アウターロータが周壁部に囲まれており、かつモータロータとステータとの間に第一蓋部が配置されているため、ハウジングのシール性が良好に確保される。よって、上記内接ギヤポンプは、電動ポンプとして適切に機能する。
【0013】
上記内接ギヤポンプでは、上記第一の構成によって、インナーロータおよびアウターロータによる作動音がハウジングの外部に伝搬し難い。よって、上記内接ギヤポンプは、静粛性に優れる。上記作動音は、例えば、インナーロータの外歯とアウターロータの内歯との歯打ち音または振動音である。
【0014】
上記内接ギヤポンプでは、上記第一の構成によって、モータロータの発熱つまりアウターロータの発熱が流体に伝わり易く、流体の温度が上昇し易い。流体の温度が上昇すると、流体の粘度が低下する。その結果、アキシャルギャップモータの負荷が低減され、アキシャルギャップモータの消費電力が下がる。モータロータの発熱が流体に伝わることで、モータロータの発熱を抑制することもできる。
【0015】
(2)上記(1)の内接ギヤポンプにおいて、前記第一蓋部が非磁性材料で構成されていてもよい。
【0016】
第一蓋部が非磁性材料で構成されていると、第一蓋部が磁性材料で構成されている場合に比べて、ステータからモータロータ、すなわちステータからアウターロータに至る磁束への影響が少ない。第一蓋部が非磁性材料で構成されていると、ステータにおける回転磁界によってアウターロータが適切に回転し易い。
【0017】
(3)上記(1)または上記(2)の内接ギヤポンプにおいて、前記第一蓋部の厚さが0.3mm以上5mm以下であってもよい。
【0018】
第一蓋部の厚さが0.3mm以上であれば、第一蓋部の強度を確保でき、第一蓋部にアウターロータが摺動しても変形し難い。第一蓋部が変形し難いと、ハウジングのシール性が良好に確保され易い。第一蓋部の厚さが0.3mm以上であれば、インナーロータおよびアウターロータによる作動音がハウジングの外部に伝搬し難い。第一蓋部の厚さが5mm以下であれば、ステータにおける回転磁界によってモータロータが回転し易い。
【0019】
(4)上記(1)から上記(3)のいずれかの内接ギヤポンプにおいて、前記第一蓋部と前記アウターロータとの間のクリアランスが0.01mm以上0.20mm以下であってもよい。
【0020】
上記クリアランスが0.01mm以上であれば、第一蓋部とアウターロータとが摺動し難く、第一蓋部とアウターロータとの間で摩耗または焼付きが生じることが抑制され易い。上記クリアランスが0.20mm以下であれば、流体がクリアランスを通ってアウターロータの外周へ漏れ難く、内接ギヤポンプの機能が良好に発揮される。
【0021】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の内接ギヤポンプの具体例を、図面を参照して説明する。図中の同一符号は同一または相当部分を示す。各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張または簡略化して示す場合がある。図面における各部の寸法比も実際と異なる場合がある。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0022】
<概要>
実施形態の内接ギヤポンプ1は、図1に示すように、インナーロータ2、アウターロータ3、ハウジング4、およびアキシャルギャップモータ5を備える。実施形態の内接ギヤポンプ1の特徴の一つは、アウターロータ3がアキシャルギャップモータ5のモータロータ7である点にある。実施形態の内接ギヤポンプ1の別の特徴の一つは、アキシャルギャップモータ5のモータロータ7とステータ6との間にハウジング4の第一蓋部41が配置されている点にある。
【0023】
<アキシャルギャップモータ>
アキシャルギャップモータ5は、ステータ6とモータロータ7とを備える。ステータ6とモータロータ7とは、モータロータ7の回転軸と同軸状に配置されている。ステータ6とモータロータ7とは、上記回転軸に沿った方向にギャップをあけて向かい合っている。アキシャルギャップモータ5は、一つのステータ6と一つのモータロータ7とを備えるシングルステータ・シングルロータ型である。
【0024】
≪ステータ≫
ステータ6は、図1および図2に示すように、ステータコア60と複数のコイル65とを備える。
【0025】
ステータコア60は、ヨーク61と複数のティース62とを備える。ヨーク61は、例えば円板である。ヨーク61は、環状板であってもよい。各ティース62は柱状体である。各ティース62は、ヨーク61の表裏面を構成するいずれかの面から突出している。各ティース62は、ヨーク61の全周に沿って間隔をあけて配置されている。各ティース62は、例えば等間隔に配置されている。各ティース62の形状および大きさは同じである。各ティース62の形状は例えば角柱状または円柱状である。ヨーク61とティース62とは、例えば一体の圧粉成形体で構成されている。ヨーク61とティース62は、独立した部材であって、互いに接着されていてもよい。ヨーク61は、複数のティース62のうち、隣り合うティース62同士を磁気的に結合する。
【0026】
各ティース62の先端面は、後述するモータロータ7に向いている。各ティース62にはコイル65が配置されている。図1および図2では、コイル65を構成する巻線の端部は図示されていない。
【0027】
本例のステータコア60は、ヨーク61の周縁部に配置された環状の周壁部63を備える。周壁部63は、ヨーク61における各ティース62が突出した面に設けられている。周壁部63の高さは、各ティース62の高さと同等以上である。周壁部63の先端面は、後述するハウジング4の第一蓋部41に接続されている。周壁部63は、ヨーク61と一体の圧粉成形体で構成されていてもよいし、ヨーク61とは独立した部材で構成されていてもよい。ヨーク61と独立した部材である周壁部63は、例えば接着剤またはねじによってヨーク61に固定されている。
【0028】
≪モータロータ≫
モータロータ7は、図1および図3に示すように、基部71と磁石72とを備える。
【0029】
基部71は、図3に示すように、貫通孔を有する筒体である。基部71は、基部71の内周面に設けられた複数の内歯30を備える。基部71の貫通孔には、後述するインナーロータ2が配置されている。内歯30は、インナーロータ2の外歯20に対応した形状および寸法を有する。基部71は、基部71の外周面が後述するハウジング4の周壁部40に押さえられながら回転する。基部71の外周面と周壁部40の内周面との間にはクリアランスが設けられている。上記クリアランスには、液体の膜が存在していてもよい。この場合、基部71は、上記膜の反力で支えられながら流体潤滑状態で回転する。上記クリアランスに上記膜がない場合、基部71は、境界潤滑状態で回転する。
【0030】
基部71は、第一面と第二面と内周面と外周面とを備える。第一面が後述するハウジング4の第一蓋部41に向かい合う面である。第二面が後述するハウジング4の第二蓋部42に向かい合う面である。内周面は、後述するインナーロータ2に向かい合う面である。外周面は、後述するハウジング4の周壁部40に向かい合う面である。内周面および外周面の各々は、第一面と第二面とをつないでいる。基部71は、例えば鉄系材料で構成されている。
【0031】
磁石72は、基部71の第一面に配置されている。言い換えると、磁石72は、基部71における第一蓋部41に向かい合う面に配置されている。ステータ6とモータロータ7との関係においては、磁石72はティース62の先端面に向かい合っている。
【0032】
磁石72は、基部71に固定されている。基部71の第一面と磁石72の表面とは面一である。磁石72は、例えば接着剤によって基部71に固定されている。例えば、基部71の第一面に凹部を設け、その凹部内に磁石72を接着剤で貼り付けてもよい。凹部内に磁石72が配置されることで、基部71の第一面と磁石72の表面とを面一にできる。磁石72は、基部71の構成材料に埋まるように固定されていてもよい。基部71は、樹脂成形体で構成されていてもよい。この場合、磁石72の表面が露出されるように磁石72を樹脂でインサート成形すればよい。樹脂は、熱可塑性樹脂でもよいし、熱硬化性樹脂でもよい。
【0033】
磁石72の数は一つでもよいし、複数でもよい。磁石72が一つである場合、磁石72の形状は円環状である。円環状の磁石72では、S極とN極とが時計回りまたは反時計回りに交互に配置されている。磁石72が複数である場合、複数の磁石72が基部71の全周に沿って並んで配置されている。アウターロータ3の内歯30の数が偶数であれば、磁石72の数は、内歯30の数と同じであってもよいし、内歯30の数の倍数であってもよい。磁石72の数は、内歯30の数と異なっていてもよい。各磁石72の形状は、例えば平板状である。各磁石72の平面形状は、例えば各ティース62の先端面の平面形状と同じである。磁石72は永久磁石である。
【0034】
各磁石72は、モータロータ7の回転軸に沿った方向に着磁されている。基部71の全周に沿って隣り合う磁石72の磁化方向は互いに逆である。ステータ6においてコイル65に電流を流して励磁させることで発生した回転磁界によって、磁石72が各ティース62に対して吸引と反発を繰り返すことで、ステータ6に対してモータロータ7が回転する。
【0035】
<インナーロータ>
インナーロータ2は、図1および図3に示すように、モータロータ7の内部空間に配置されている。モータロータ7の内部空間とは、貫通孔を有する基部71における貫通孔で構成された空間のことである。インナーロータ2は、複数の外歯20を有する筒状体またはブロック体である。各外歯20は、例えばトロコイド曲線による歯形を有する。本例では、外歯20の数は、内歯30の数よりも1つ少ない。
【0036】
インナーロータ2は、ピン9に対して回転自在に支持されている。ピン9は、インナーロータ2の中心に配置されている。ピン9は、後述するハウジング4の第二蓋部42に固定されている。インナーロータ2とピン9とが一体であり、第二蓋部42に対してピン9が回転自在に支持されていてもよい。インナーロータ2は、ピン9の代わりに、図示しないシャフトに対して回転自在に支持されていてもよい。
【0037】
インナーロータ2は、アウターロータ3の中心に対して偏心している。つまり、インナーロータ2は、環状に配置された複数のティース62の中心に対しても偏心している。
【0038】
<アウターロータ>
アウターロータ3は、上述したモータロータ7である。アウターロータ3は、複数の外歯20に噛み合う複数の内歯30を備える。内歯30の数は、外歯20の数よりも1つ多い。外歯20と内歯30の各歯先によって実質的に密閉された空間が作られている。内歯30の数は、偶数でもよいし、奇数でもよい。
【0039】
アウターロータ3が駆動源である。アウターロータ3がモータロータ7であるため、ステータ6に対してモータロータ7が回転する、すなわちステータ6に対してアウターロータ3が回転する。アウターロータ3が回転すると、内歯30と外歯20とが噛み合うことにより、インナーロータ2がアウターロータ3に従動して同じ方向に回転する。一般的な内接ギヤポンプは、インナーロータにシャフトが設けられており、インナーロータが回転することで、インナーロータの回転に従動してアウターロータが同じ方向に回転する。つまり、本例の内接ギヤポンプ1における駆動側のロータと従動側のロータとは、従来の内接ギヤポンプにおける駆動側のロータと従動側のロータと逆である。本例の内接ギヤポンプ1は、従来におけるインナーロータに設けられたシャフトがない。シャフトレス構造であれば、シャフトをハウジング4に回転自在に支持するベアリングがいらない。
【0040】
<ハウジング>
ハウジング4は、図1に示すように、周壁部40と第一蓋部41と第二蓋部42とを備える。ハウジング4は、インナーロータ2およびアウターロータ3を回転自在に収容している。周壁部40と第一蓋部41と第二蓋部42とでポンプ室が構成されている。本例では、周壁部40と第一蓋部41と第二蓋部42とは、互いに独立した部材で構成されている。
【0041】
周壁部40は、アウターロータ3の外周を囲んでいる筒体である。つまり、周壁部40は、筒状の形状を有する。筒状の横断面形状は円形である。周壁部40の内径は、アウターロータ3の外径よりも若干大きい。よって、周壁部40の内周面とアウターロータ3の間には若干のクリアランスが形成されている。このクリアランスは、アウターロータ3が周壁部40に押さえられながら回転でき、かつ周壁部40とアウターロータ3との間で摩耗または焼き付きが生じ難い範囲で適宜選択される。周壁部40の軸に沿った長さは、アウターロータ3の回転軸に沿った長さよりも若干長い。周壁部40は、例えばアルミニウム系の材料で構成されている。周壁部40がアルミニウム系の材料で構成されていると、ハウジング4の軽量化を図ることができる。
【0042】
第一蓋部41は、周壁部40の第一端部を塞いでいる円板である。第一蓋部41は、ステータ6とアウターロータ3との間に配置されている。第一蓋部41は、表裏面を貫通する孔を備えない。第一蓋部41は、外側領域と内側領域とを備える。外側領域は、周壁部40の端面に接する領域である。第一蓋部41は、例えば外側領域がボルトで周壁部40に固定されている。本例の第一蓋部41は、外側領域の一部が周壁部63に固定されている。第一蓋部41は、周壁部40と一体の部材であってもよい。第一蓋部41は、ステータコア60の周壁部63と一体の部材であってもよい。第一蓋部41と周壁部40と周壁部63とが一体の部材であってもよい。
【0043】
内側領域は、ステータ6とアウターロータ3との間に配置された領域を含む。第一蓋部41とアウターロータ3との間の第一クリアランスは、例えば0.01mm以上0.20mm以下である。第一クリアランスが0.01mm以上であれば、第一蓋部41とアウターロータ3とが摺動し難く、第一蓋部41とアウターロータ3との間で摩耗または焼付きが生じることが抑制され易い。第一クリアランスは、0.03mm以上、または0.05mm以上であってもよい。第一クリアランスが0.20mm以下であれば、流体がクリアランスを通ってアウターロータ3の外周へ漏れ難く、内接ギヤポンプ1の機能が良好に発揮される。第一クリアランスは、0.17mm以下、または0.15mm以下であってもよい。第一クリアランスは、0.03mm以上0.17mm以下、または0.05mm以上0.15mm以下であってもよい。
【0044】
第一クリアランスは、後述する第二蓋部42とアウターロータ3との間の第二クリアランスと相関関係にある。第一クリアランスおよび第二クリアランスの各々は、アウターロータ3の位置によって変わる。アウターロータ3は、アウターロータ3の回転軸に沿って動く。例えば、アウターロータ3が第一蓋部41の近くにあれば、相対的に第一クリアランスが小さなり、第二クリアランスが大きくなる。第一クリアランスの上記範囲の値は、第二蓋部42とアウターロータ3とが接している状態、つまり第二クリアランスがゼロである場合の値である。言い換えると、第一クリアランスと第二クリアランスとの合計が、例えば0.01mm以上0.20mm以下である。
【0045】
第一蓋部41は、例えば非磁性材料で構成されている。モータロータ7は、上述したように、ステータ6においてコイル65に電流を流して励磁させることで発生した回転磁界によって回転する。コイル65に流す電流は、例えば交流電流である。第一蓋部41が非磁性材料で構成されていると、第一蓋部41が磁性材料で構成されている場合に比べて、ステータ6からモータロータ7、すなわちステータ6からアウターロータ3に至る磁束への影響が少ない。第一蓋部41が非磁性材料で構成されていると、ステータ6における回転磁界によってアウターロータ3が適切に回転し易い。
【0046】
非磁性材料は、例えばアルミニウム系の材料である。第一蓋部41がアルミニウム系の材料で構成されていると、ハウジング4の軽量化も図ることができる。アルミニウム系の材料は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる。アルミニウムは、純度が99質量%以上の純アルミニウムである。アルミニウム合金は、添加元素を含有し、残部がアルミニウムおよび不可避的不純物からなる。アルミニウム合金からなる第一蓋部41は、軽量である上に、耐摩耗性に優れる。
【0047】
第一蓋部41は、フェノール樹脂で構成されていてもよい。フェノール樹脂からなる第一蓋部41は、軽量である。
【0048】
第一蓋部41の厚さは、例えば0.3mm以上5mm以下である。第一蓋部41の厚さが0.3mm以上であれば、第一蓋部41の強度を確保でき、第一蓋部41にアウターロータ3が摺動しても変形し難い。第一蓋部41が変形し難いと、ハウジング4のシール性が良好に確保され易い。第一蓋部41の厚さが0.3mm以上であれば、インナーロータ2およびアウターロータ3による作動音がハウジング4の外部に伝搬し難い。第一蓋部41の厚さは、0.5mm以上、または1mm以上であってもよい。第一蓋部41の厚さが5mm以下であれば、ステータ6における回転磁界によってアウターロータ3が回転し易い。第一蓋部41の厚さは、4mm以下、または3mm以下であってもよい。第一蓋部41の厚さは、0.5mm以上4mm以下、または1mm以上3mm以下であってもよい。
【0049】
第二蓋部42は、周壁部40の第二端部を塞いでいる円板である。第二蓋部42は、外側領域と内側領域とを備える。外側領域は、周壁部40の端面に接する領域である。第二蓋部42は、例えば外側領域がボルトで周壁部40に固定されている。第二蓋部42は、周壁部40と一体の部材であってもよい。内側領域は、インナーロータ2およびアウターロータ3に向かい合う領域である。第二蓋部42は、第一蓋部41と同様に、アルミニウム系の材料を含む非磁性材料で構成されていてもよいし、フェノール樹脂を含む樹脂で構成されていてもよい。第二蓋部42がアルミニウム系の材料で構成されていると、ハウジング4の軽量化を図ることができる。アルミニウム合金からなる第二蓋部42は、軽量である上に、耐摩耗性に優れる。第一蓋部41と第二蓋部42とは、同じ材料で構成されていてもよいし、異なる材料で構成されていてもよい。
【0050】
第二蓋部42は、ハウジング4内に連通する吸入ポート421と吐出ポート422とを備える。吸入ポート421および吐出ポート422は流路である。吸入ポート421および吐出ポート422は、互いにアウターロータ3の中心を挟んで向かい合う位置に設けられている。吸入ポート421および吐出ポート422は、インナーロータ2とアウターロータ3との間の隙間に臨むように設けられている。本例の吸入ポート421および吐出ポート422は、いずれも円弧状の孔である。本例の吸入ポート421および吐出ポート422は、アウターロータ3の回転軸に沿って延びており、第二蓋部42の端面に開口している。吸入ポート421および吐出ポート422は、例えばL字状に屈曲していてもよい。その場合、吸入ポート421および吐出ポート422は、アウターロータ3の回転軸に交差する方向に開口する。吸入ポート421および吐出ポート422は、内接ギヤポンプ1につながる配管の形状に応じて任意の方向に開口できる。
【0051】
本例の内接ギヤポンプ1は、以下のように作動する。まず、ステータ6においてコイル65に電流を流して励磁させることで発生した回転磁界によってアウターロータ3が回転する。アウターロータ3が回転すると、内歯30と外歯20とが噛み合うことにより、インナーロータ2がアウターロータ3に従動して同じ方向に回転する。アウターロータ3とインナーロータ2との回転によって、内歯30と外歯20の各歯先で構成された空間の容積が増減する。この増減によって吸入ポート421から吸入された流体が吐出ポート422から吐出される。流体は、例えばオイルである。流体は、ウォーターでもよいし、冷媒でもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 内接ギヤポンプ
2 インナーロータ
20 外歯
3 アウターロータ
30 内歯
4 ハウジング
40 周壁部
41 第一蓋部
42 第二蓋部
421 吸入ポート
422 吐出ポート
5 アキシャルギャップモータ
6 ステータ
60 ステータコア
61 ヨーク
62 ティース
63 周壁部
65 コイル
7 モータロータ
71 基部
72 磁石
9 ピン
【要約】
複数の外歯を有するインナーロータと、前記複数の外歯に噛み合う複数の内歯を有するアウターロータと、前記インナーロータおよび前記アウターロータを回転自在に収容したハウジングと、ステータおよびモータロータを有するアキシャルギャップモータと、を備え、前記アウターロータが前記モータロータであり、前記ハウジングは、前記アウターロータの外周を囲むように円筒状に設けられた周壁部と、前記周壁部の両端部を塞いでいる第一蓋部および第二蓋部と、を備え、前記第一蓋部は、前記ステータと前記アウターロータとの間に配置されており、前記第二蓋部は、前記ハウジング内に連通する吸入ポートおよび吐出ポートを備える、内接ギヤポンプ。
図1
図2
図3