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  • 特許-オレフィンの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】オレフィンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 1/24 20060101AFI20240523BHJP
   B01J 21/04 20060101ALI20240523BHJP
   B01J 35/60 20240101ALI20240523BHJP
   C07C 11/02 20060101ALI20240523BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240523BHJP
【FI】
C07C1/24
B01J21/04 Z
B01J35/60 G
C07C11/02
C07B61/00 300
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2018102278
(22)【出願日】2018-05-29
(65)【公開番号】P2019052132
(43)【公開日】2019-04-04
【審査請求日】2021-03-08
【審判番号】
【審判請求日】2022-10-19
(31)【優先権主張番号】P 2017174794
(32)【優先日】2017-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高田 慎吾
【合議体】
【審判長】阪野 誠司
【審判官】冨永 保
【審判官】齊藤 真由美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/175359(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/103898(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第103508476(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0158580(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0022124(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化アルミニウム触媒の存在下、炭素数が6以上の脂肪族アルコールの脱水反応によりオレフィンを製造する方法であって、
前記酸化アルミニウム触媒の平均細孔径が、12.5nm以上17.6nm以下であり、
前記酸化アルミニウム触媒の細孔容量が、0.55cm/g以上0.7cm/g以下である、オレフィンの製造方法。
【請求項2】
前記脂肪族アルコールの炭素数が、8以上22以下である、請求項1に記載のオレフィンの製造方法。
【請求項3】
前記脂肪族アルコールの炭素数が、14以上18以下である、請求項1又は2に記載のオレフィンの製造方法。
【請求項4】
前記脂肪族アルコールが、第一級アルコールである、請求項1~3のいずれかに記載のオレフィンの製造方法。
【請求項5】
前記脂肪族アルコールが、直鎖脂肪族アルコールである、請求項1~4のいずれかに記載のオレフィンの製造方法。
【請求項6】
前記脂肪族アルコールが、飽和直鎖脂肪族アルコールである、請求項1~5のいずれかに記載のオレフィンの製造方法。
【請求項7】
前記酸化アルミニウム触媒の使用量が、前記脂肪族アルコール100質量部に対して、0.1~20質量部である、請求項1~6のいずれかに記載のオレフィンの製造方法。
【請求項8】
前記酸化アルミニウム触媒が、γ-アルミナである、請求項1~7のいずれかに記載のオレフィンの製造方法。
【請求項9】
前記酸化アルミニウム触媒の平均細孔径が、13.0nm以上17.6nm以下である、請求項1~8のいずれかに記載のオレフィンの製造方法。
【請求項10】
前記酸化アルミニウム触媒の平均細孔径が、13.0nm以上16.0nm以下である、請求項1~9のいずれかに記載のオレフィンの製造方法。
【請求項11】
前記酸化アルミニウム触媒の平均細孔径が、13.5nm以上16.0nm以下である、請求項1~10のいずれかに記載のオレフィンの製造方法。
【請求項12】
前記酸化アルミニウム触媒のBET比表面積が、190m/g以上500m/g以下である、請求項1~11のいずれかに記載のオレフィンの製造方法。
【請求項13】
前記脱水反応を200℃以上350℃以下にて行う、請求項1~12のいずれかに記載のオレフィンの製造方法。
【請求項14】
前記脱水反応を液相反応で行う、請求項1~13のいずれかに記載のオレフィンの製造方法。
【請求項15】
前記脱水反応が、不活性ガス雰囲気下又は還元雰囲気下で行われる、請求項1~14のいずれかに記載のオレフィンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はオレフィンを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルコールの脱水反応によるオレフィン化合物の製造方法として種々の方法が知られている。例えば、特許文献1には、固体触媒としてのアルミノ珪酸塩の存在下、反応温度200~400℃、気相での第三級アルコールの脱水反応によるオレフィン化合物の製造方法が開示されている。
また、特許文献2には、活性アルミナにリン酸塩を添加して調製した触媒の存在下、気相でのエタノールの脱水反応によるエチレンの製造方法が開示されている。
更に、特許文献3には、特定の弱酸量を有するγ-アルミナ等の触媒を用いて脂肪族第一級アルコールの液相脱水反応を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-56671号公報
【文献】特公昭59-40057号公報
【文献】国際公開第2011/052732号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1又は2に記載の方法に代表される気相反応では、原料を全て気化させる必要があり、特に高沸点である長鎖脂肪族アルコールに関してはエネルギーの消費が大きく、コスト的にも不利である。更に、特許文献1で用いられるアルミノ珪酸塩触媒においてはアルキル転位による分岐化及びオレフィンの多量体化を併発しやすく、生成物の収率低下が問題となる。また、特許文献2ではカーボン質の析出の抑制について記載があるのみで、アルキル転位による分岐化又はオレフィンの多量体化の抑制については何ら記載がない。
【0005】
特許文献3に記載の方法で得られるオレフィンは、多量体化や分岐化等による副生成物が少ないものであるが、更に効率的な製造方法の開発が望まれている。
本発明は、脂肪族アルコールの脱水反応において、短い反応時間で高収率にオレフィンを製造する方法を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、特定の平均細孔径を有する酸化アルミニウム触媒の存在下に脂肪族アルコールの脱水反応を行うことにより、短い反応時間で高収率にオレフィンを製造することが可能となることを見出した。
すなわち、本発明のオレフィンの製造方法は、酸化アルミニウム触媒の存在下、炭素数が6以上の脂肪族アルコールの脱水反応によりオレフィンを製造する方法であって、前記酸化アルミニウム触媒の平均細孔径が、12.5nm以上20.0nm以下である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、脂肪族アルコールの脱水反応において、短い反応時間で高収率にオレフィンを製造する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1~4及び比較例1~3について、触媒の平均細孔径と、原料アルコールの転化率が100%となる反応時間との関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のオレフィンの製造方法は、酸化アルミニウム触媒の存在下、炭素数が6以上の脂肪族アルコールの脱水反応によりオレフィンを製造する方法であって、前記酸化アルミニウム触媒の平均細孔径が、12.5nm以上20.0nm以下である。
本発明者は、炭素数が6以上の脂肪族アルコールの脱水反応によりオレフィンを製造するに際し、特定の平均細孔径を有する酸化アルミニウム触媒を使用することにより、顕著に反応時間が短縮され、また、高収率でオレフィンが得られることを見出した。
上記の効果が得られる詳細な理由は不明であるが、以下のように考えられる。炭素数が6以上の脂肪族アルコールの脱水反応では、分子間脱水によるエーテル化を経て、オレフィンが得られると考えられる。このような反応においては、分子間脱水によるエーテル化反応に比べ、エーテル化合物のオレフィン化反応の活性化エネルギーが大きく、エーテル化合物のオレフィン化反応が律速反応となる。
ここで、エーテル化合物は、炭素数が12以上であり、比較的大きな分子サイズを有するものであり、このような反応では、上述のような特定の平均細孔径を有するアルミニウム触媒が特に高い触媒能を有するものと推定される。
なお、以下の説明において、触媒能又は触媒活性が高いとは、反応時間が短く、かつ、高収率にオレフィンを製造することができることを意味する。
【0010】
[酸化アルミニウム触媒]
本発明においては、脱水反応の触媒として、酸化アルミニウム触媒(以下、単に「酸化アルミニウム」ともいう。)を使用する。
酸化アルミニウム(Al)としては、高い触媒活性を得る観点から、γ-アルミナであることが好ましい。
酸化アルミニウムの平均細孔径は、高い触媒活性を得る観点から、12.5nm以上、好ましくは13.0nm以上、より好ましくは13.5nm以上である。また、入手容易性、及び高い触媒能を得る観点から、20.0nm以下、好ましくは18.0nm以下、より好ましくは16.0nm以下である。
酸化アルミニウム触媒の平均細孔径は、実施例に記載の方法により測定される。
【0011】
酸化アルミニウムの細孔径は、高い触媒活性を得る観点から、好ましくは5.0nm以上、より好ましくは6.0nm以上、更に好ましくは8.0nm以上であり、入手容易性、及び高い触媒能を得る観点から、好ましくは25.0nm以下、より好ましくは20.0nm以下、更に好ましくは18.0nm以下である。
酸化アルミニウムの細孔径の分布範囲は、高い触媒活性、入手容易性、及び高い触媒能を得る観点から、好ましくは5.0nm以上25.0nm以下、より好ましくは6.0nm以上20.0nm以下、更に好ましくは8.0nm以上18.0nm以下である。
酸化アルミニウムの細孔径は、酸化アルミニウム触媒の平均細孔径が本発明で規定する範囲にある限り、前記好ましい分布範囲外に分布していてもよい。
【0012】
酸化アルミニウムの細孔容量は、高い触媒活性を得る観点から、好ましくは0.50cm/g超、より好ましくは0.55cm/g以上であり、そして、好ましく2.0cm/g以下、より好ましくは1.5cm/g以下、更に好ましくは1.2cm/g以下、より更に好ましくは1.0cm/g以下、より更に好ましくは0.7cm/g以下である。
【0013】
酸化アルミニウムのBET比表面積は、高い触媒活性を得る観点から、好ましくは190m/g以上、より好ましくは200m/g以上である。また、触媒の耐久性及び高い触媒活性を得る観点から、好ましくは500m/g以下、より好ましくは400m/g以下、更に好ましくは300m/g以下、より更に好ましくは250m/g以下、より更に好ましくは220m/g以下である。
酸化アルミニウムの細孔容量及びBET比表面積は、実施例に記載の方法により測定される。
【0014】
酸化アルミニウムは、いずれの方法により調製してもよいが、所望の平均細孔径の酸化アルミニウムを調製し、高い触媒活性を得る観点から、好ましくは沈殿法、ゾルゲル法、アルコキシド法、pHスイング法等であり、より好ましくはpHスイング法である。
得られた酸化アルミニウムは、焼成することが好ましく、高い触媒活性を得る観点から、焼成温度は、好ましくは400℃以上、より好ましくは450℃以上、更に好ましくは480℃以上であり、そして、好ましくは900℃以下、より好ましくは850℃以下、更に好ましくは800℃以下である。
また、焼成時間は、高い触媒活性を得る観点から、好ましくは1時間以上、より好ましくは2時間以上、更に好ましくは3時間以上であり、そして、好ましくは10時間以下、より好ましくは7時間以下、更に好ましくは5時間以下である。
焼成の雰囲気は特に限定されず、不活性ガス下、酸化雰囲気下又は還元雰囲気下で行うことができる。また、密閉状態でも、気体の流通状態でもよい。本発明においては、触媒活性の観点から、空気又は酸素の気流下であることが好ましい。
【0015】
酸化アルミニウム触媒の平均細孔径を制御する方法の一例として、pHスイング法による方法が挙げられる。pHスイング法は沈殿法の1種であり、アルミニウム塩と無機塩基を原料として用いる沈殿法において、両原料の水溶液を交互に添加してpHを上下させながら沈殿を形成させる方法である。
例えば、塩化アルミニウムとアンモニアを原料として用いる場合、塩化アルミニウム水溶液にアンモニア水を徐々に加え続けるとpHが上昇し9を超える。その後、塩化アルミニウム水溶液を徐々に加え続けるとpHが下降し4未満になる。
このようにpH変化をアルミニウムの沈殿形成pHである4~9の範囲から外れる振り幅とすることで、沈殿形成pHである4~9の範囲で生じたアルミニウムの微細結晶が溶解し、pHが沈殿形成pH内に収まった際に結晶成長に使われ、徐々に結晶粒子径を大きくすることができる。その際の温度、保持時間、原料濃度、pHの振り幅、スイング回数等の調整により結晶粒子径、比表面積、細孔構造を調整でき、焼成後の結晶粒子径やその結晶粒子の間隙である細孔径、細孔容量、比表面積等を調整することができる。
pHスイング法による酸化アルミニウム(アルミナ)の合成については、例えば特公平1-16773号公報、特公平2-56283号公報、特公昭56-120508号公報、特公昭57-44605号公報、特開2003-292820号公報、特開昭56-115638号公報、「セラミックス」Vol.33、No.4、p.299-302(1998年)等の文献に詳細に記載されており、これらが参照される。
【0016】
本発明において、上述のようにして得られた触媒は、凝集状態にあるので、適当に粉砕して粉末状としたり、顆粒状としたり、ヌードル状、ペレット状等に成形して用いることが好ましい。
なお、ヌードル状に成形する場合には、押し出し成形によってヌードル状の成形体にすることが好ましく、ペレット状に成形する場合には、打錠成形によってペレット状の成形体にすることが好ましい。なお、顆粒状、ヌードル状、ペレット状等に成形する場合には、少量のバインダーと共に混練後、得られた混合物を必要に応じて乾燥後に成形し、更に焼成することにより製造してもよい。
ここで使用されるバインダーとしては、高分子化合物又は無機化合物が例示される。高分子化合物としては、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース系樹脂;ポリ四フッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂;ウレタン樹脂;エポキシ樹脂;ポリエステル樹脂;フェノール樹脂;メラミン樹脂;シリコーン樹脂;ポリカルボチタン;ポリチタノカルボシラン等が例示される。また、無機化合物としては、シリカ、アルミナ等の無機化合物ゾル等が挙げられる。バインダーとしては、触媒の生産性の観点から高分子化合物が好ましい。
【0017】
酸化アルミニウム触媒が粉末である場合、粉末の平均粒子径は、触媒回収の容易性の観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上、更に好ましくは10μm以上、より更に好ましくは20μm以上、より更に好ましくは30μm以上である。また、高い触媒活性を得る観点から、好ましくは300μm以下、より好ましくは250μm以下、更に好ましくは200μm以下、より更に好ましくは150μm以下、より更に好ましくは100μm以下、より更に好ましくは50μm以下、より更に好ましくは37μm以下である。
平均粒子径は、実施例に記載の方法により測定される。
【0018】
酸化アルミニウム触媒が顆粒である場合、顆粒の平均粒子径は、触媒回収の容易性の観点から、好ましくは0.2mm以上、より好ましくは0.4mm以上、更に好ましくは0.6mm以上であり、そして、高い触媒活性を得る観点から、好ましくは2.0mm以下、より好ましくは1.3mm以下、更に好ましくは0.8mm以下である。
酸化アルミニウム触媒が顆粒である場合、顆粒の平均粒子径は、以下のように測定される。すなわち、JISZ8801-1(2000年5月20日制定、2006年11月20日最終改正)規定の2000、1400、1000、710、500、355、250、180、125、90、63、45μmの篩を用いて5分間振動させた後、篩分け法による篩下質量分布について50%平均径を算出し、これを平均粒子径とする。具体的には、JISZ8801-1(2000年5月20日制定、2006年11月20日最終改正)規定の2000、1400、1000、710、500、355、250、180、125、90、63、45μmの篩を用いて受け皿上に目開きの小さな篩から順に積み重ね、最上部の2000μmの篩の上から100gの顆粒を添加し、蓋をしてロータップ型ふるい振とう機(HEIKO製作所製、タッピング156回/分、ローリング:290回/分)に取り付け、5分間振動させたあと、それぞれの篩及び受け皿上に残留した当該顆粒の質量を測定し、各篩上の当該顆粒の質量割合(%)を算出する。受け皿から順に目開きの小さな篩上の当該顆粒の質量割合を積算していき合計が50%となる粒子径を平均粒子径とする。
【0019】
酸化アルミニウム触媒がヌードル状である場合、高い触媒活性を得る観点から、平均直径は、好ましくは1.0mm以上、より好ましくは1.2mm以上、更に好ましくは1.4mm以上であり、そして、好ましくは2.5mm以下、より好ましくは2.0mm以下、更に好ましくは1.5mm以下である。
また、酸化アルミニウム触媒がヌードル状である場合、充填時の均一性の観点から、平均長さは、好ましくは8mm以下、より好ましくは6mm以下、更に好ましくは4.5mm以下であり、高い触媒活性を得る観点から、好ましくは2mm以上、より好ましくは3mm以上、更に好ましくは3.5mm以上である。
上記平均直径及び平均長さは、ノギスにより測定される。
【0020】
酸化アルミニウム触媒がペレット状である場合、高い触媒活性を得る観点から、平均直径及び平均高さは、好ましくは1.5mm以上、より好ましくは2.0mm以上、更に好ましくは2.5mm以上であり、そして、好ましくは5.0mm以下、より好ましくは4.0mm以下、更に好ましくは3.0mm以下である。
上記平均直径及び平均高さは、ノギスにより測定される。
【0021】
[原料アルコール]
本発明において、原料アルコールとして、炭素数が6以上の脂肪族アルコールを使用する。
原料アルコールは、炭素数が6以上の直鎖脂肪族アルコールであることが好ましい。ここで、直鎖脂肪族アルコールとは、直鎖脂肪族炭化水素に、少なくとも1つの水酸基が置換している化合物である。
本発明において、原料アルコールは、反応性の観点から、脂肪族炭化水素に、好ましくは直鎖脂肪族炭化水素に、1つ又は2つの水酸基が置換していることが好ましく、1つの水酸基が置換していることが好ましい。すなわち、原料アルコールは、好ましくは直鎖若しくは分岐のモノオール(モノアルコール)又は直鎖若しくは分岐のジオールであり、より好ましくは直鎖又は分岐のモノオール(モノアルコール)であり、更に好ましくは直鎖モノオール、より更に好ましくは飽和直鎖モノオールである。
脂肪族炭化水素に対する水酸基の置換位置は特に限定されない。脂肪族アルコールは、水酸基が脂肪族炭化水素の末端の炭素原子に置換した第一級アルコールであってもよく、また、水酸基が末端以外の炭素原子に置換した第二級アルコールであってもよい。直鎖脂肪族アルコール及び飽和直鎖脂肪族アルコールに対する水酸基の置換位置も同様である。これらの中でも、脂肪族アルコールは、水酸基が末端の炭素原子に置換した、好ましくは第一級アルコール、より好ましくは直鎖第一級アルコール、更に好ましくは飽和直鎖第一級アルコールである。
脂肪族アルコールは、好ましくは飽和脂肪族アルコール、より好ましくは飽和直鎖脂肪族アルコールである。
前述の各脂肪族アルコールの炭素数は、それぞれ、6以上であり、得られるオレフィンの有用性の観点から、炭素数は、好ましくは8以上、より好ましくは12以上、更に好ましくは14以上であり、そして、好ましくは22以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは18以下である。
【0022】
原料アルコールの具体例としては、オレフィンの有用性の観点から、1-ドデカノール、1-トリデカノール、1-テトラデカノール、1-ペンタデカノール、1-ヘキサデカノール、1-ヘプタデカノール、1-オクタデカノール、1-ノナデカノール、及び1-エイコサノールから選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
【0023】
[有機溶媒]
本発明の製造方法においては、生産性の観点から、有機溶媒を実質的に用いないことが望ましい。しかし、本発明の製造方法において、必要に応じて有機溶媒を用いてもよい。本発明に用いることができる有機溶媒としては、反応温度において液体であり、原料アルコール及び生成物であるオレフィンと相溶し、かつ反応を阻害しないものであれば特に限定されず、混合物であってもよい。また、反応後、沸点差を利用して生成物と分離できるものが好ましい。
本発明に使用することができる有機溶媒としては、飽和脂肪族炭化水素、不飽和脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素系有機溶媒が好ましい。
【0024】
飽和脂肪族炭化水素としては、直鎖状又は分岐状のいずれでもよい。
飽和脂肪族炭化水素の具体例としては、トリデカン、ヘキサデカン、オクタデカン、エイコサン、ドコサン、トリアコンタン、スクアラン等の炭素数10以上35以下の化合物が挙げられる。
また、飽和脂肪族炭化水素としては、流動パラフィンや、ナフテン系炭化水素、イソパラフィン系炭化水素のような混合物であってもよい。また、固形パラフィンのように、常温において固体であるが反応温度において液体であるものも使用することができる。
また、飽和脂肪族炭化水素としては、プロピレン、イソブテン等のオリゴマーを使用することもできる。
【0025】
不飽和脂肪族炭化水素としては、直鎖状又は分岐状のいずれでもよい。
不飽和脂肪族炭化水素の具体例としては、エイコセン、ヘンイコセン、ドコセン、トリコセン、スクアレン等の炭素数が好ましくは15以上、より好ましくは25以上であり、そして、好ましくは35以下、より好ましくは35以下の化合物が挙げられる。不飽和脂肪族炭化水素は混合物であってもよい。
【0026】
芳香族炭化水素の具体例としては、n-ドデシルベンゼン、n-トリデシルベンゼン、n-テトラデシルベンゼン、n-ペンタデシルベンゼン、n-ヘキサデシルベンゼン、ジイソプロピルナフタレン等のアルキルベンゼン及びアルキルナフタレンが挙げられる。
【0027】
[脱水反応(オレフィン化反応)]
本発明において、酸化アルミニウム触媒と、原料アルコールとの脱水反応(オレフィン化反応)の相状態は特に限定されず、液相で反応させてもよく、気相で反応させてもよい。これらの中でも、前記オレフィン化反応を液相反応とすることが好ましい。なお、液相反応とは、原料アルコールの沸点以下、すなわち液相が存在する温度以下での反応のことを指す。液相反応とした場合には、原料を全て気化させる必要がなく、生産性に優れ、また、製造コストを抑制することができる。また、オレフィンの多量体化を抑制することもできるため、高収率で目的とする生成物を得ることができる。
また、本発明において、反応の形式は特に限定されず、懸濁床反応でもよく、固定床反応でもよいが、懸濁床反応であることが好ましい。
また、上記の反応は、窒素等の不活性ガス雰囲気下で行ってもよく、また、還元雰囲気下で行ってもよい。
上記の反応は反応性の観点から、好ましくは不活性ガス雰囲気下で行う。不活性ガスとしては、経済性の観点から、好ましくはヘリウムガス、窒素ガス、アルゴンガス、より好ましくは窒素ガスである。
【0028】
本発明の方法における反応はアルコールの脱水反応であり、副生した水が系内に滞留すると反応速度が低下するおそれがある。従って、懸濁床反応である場合には、反応速度向上の観点から、撹拌下、通常0.03MPa以上0.09MPa以下の減圧下又は常圧で反応系内に窒素、アルゴン等の不活性ガスを導入し、生成する水を系外に除去しながら反応を行うことが好ましい。
【0029】
触媒の使用量は、懸濁床反応の場合、反応性の観点から、原料アルコール100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1質量部以上、より更に好ましくは2質量部以上であり、そして、反応後の精製の観点から、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは10質量部以下、より更に好ましくは5質量部以下である。
【0030】
反応時間としては、目的とするオレフィンの収率の観点から、原料アルコールの転化率(アルコール転化率)が好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、更に好ましくは98%以上になるような時間であり、アルコール転化率が100%であることも好ましい。そのような反応時間は、反応温度、有機溶媒の種類、触媒の種類及びその使用量、並びに原料アルコールの種類等によって変動し得る。
懸濁床反応においては、反応性の観点から、好ましくは0.1時間以上、より好ましくは0.5時間以上、更に好ましくは1時間以上であり、そして、副反応抑制の観点から、好ましくは20時間以下、より好ましくは15時間以下、更に好ましくは7時間以下である。なお、反応時間は、反応系の温度が目標温度に達した時点を0時間とする。
また、固定床反応におけるLHSV(液空間速度)は、反応性の観点から、好ましくは10/h以下、より好ましくは7/h以下、更に好ましくは5/h以下、より更に好ましくは3/h以下であり、生産性の観点から、好ましくは0.03/h以上、より好ましくは0.05/h以上、更に好ましくは0.1/h以上、より更に好ましくは0.2/h以上である。
【0031】
反応温度は、反応性の観点及び多量体化等の副反応抑制の観点から、好ましくは原料アルコールの沸点以下である。具体的な反応温度は、反応性の観点から、好ましくは200℃以上、より好ましくは220℃以上、更に好ましくは240℃以上、より更に好ましくは260℃以上であり、そして、副反応抑制の観点から、好ましくは350℃以下、より好ましくは330℃以下、更に好ましくは310℃以下、より更に好ましくは290℃以下である。
【0032】
反応圧力は特に限定されず、常圧下、減圧下、及び加圧下のいずれの圧力下で反応させてもよい。これらの中でも、生産性及び反応性の観点から、好ましくは常圧下又は減圧下であり、より好ましくは常圧下である。
【0033】
本発明の製造方法によれば、副生成物である二量化オレフィン(二量体)の生成が抑制され、二量体の生成率(収率)は、通常7%以下、好ましくは5%以下となる。
二量体の生成率(収率)は、実施例に記載の方法により測定される。
【0034】
本発明においては、上記のようにして得られた反応生成物から、オレフィンのみを蒸留精製してもよい。蒸留精製により得られた純度が高いオレフィンは、界面活性剤、有機溶媒、柔軟剤、サイズ剤等の原料又は中間原料として有用である。
【0035】
上述した実施の形態に加え、本発明は以下のオレフィンの製造方法を開示する。
<1> 酸化アルミニウム触媒の存在下、炭素数が6以上の脂肪族アルコールの脱水反応によりオレフィンを製造する方法であって、前記酸化アルミニウム触媒の平均細孔径が、12.5nm以上20.0nm以下である、オレフィンの製造方法。
<2> 前記脂肪族アルコールが、好ましくは第一級アルコール又は第二級アルコール、より好ましくは第一級アルコールである、<1>に記載のオレフィンの製造方法。
<3> 前記脂肪族アルコールが、好ましくは直鎖若しくは分岐のモノオール又は直鎖若しくは分岐のジオール、より好ましくは直鎖若しくは分岐のモノオール、更に好ましくは直鎖モノオール、より更に好ましくは飽和直鎖モノオールである、<1>又は<2>に記載のオレフィンの製造方法。
<4> 前記脂肪族アルコールが、好ましくは直鎖脂肪族アルコール、より好ましくは飽和直鎖脂肪族アルコールである、<1>~<3>のいずれかに記載のオレフィンの製造方法。
<5> 前記脂肪族アルコールの炭素数が、それぞれ、好ましくは8以上、より好ましくは12以上、更に好ましくは14以上であり、そして、好ましくは22以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは18以下である、<1>~<4>のいずれかに記載のオレフィンの製造方法。
<6> 前記脂肪族アルコールの炭素数が8以上22以下である、<1>~<5>のいずれかに記載のオレフィンの製造方法。
<7> 前記脂肪族アルコールの炭素数が12以上20以下である、<1>~<6>のいずれかに記載のオレフィンの製造方法。
<8> 前記脂肪族アルコールの炭素数が14以上18以下である、<1>~<7>のいずれかに記載のオレフィンの製造方法。
<9> 前記脂肪族アルコールが、好ましくは1-ドデカノール、1-トリデカノール、1-テトラデカノール、1-ペンタデカノール、1-ヘキサデカノール、1-ヘプタデカノール、1-オクタデカノール、1-ノナデカノール、及び1-エイコサノールから選ばれる1種又は2種以上である、<1>~<7>のいずれかに記載のオレフィンの製造方法。
【0036】
<10> 前記酸化アルミニウム触媒がγ-アルミナである、<1>~<9>のいずれかに記載のオレフィンの製造方法。
<11> 前記酸化アルミニウム触媒の平均細孔径が、好ましくは13.0nm以上、より好ましくは13.5nm以上であり、そして、好ましくは18.0nm以下、より好ましくは16.0nm以下である、<1>~<10>のいずれかに記載のオレフィンの製造方法。
<12> 前記酸化アルミニウム触媒の平均細孔径が、好ましくは13.0nm以上20.0nm以下である、<1>~<11>のいずれかに記載のオレフィンの製造方法。
<13> 前記酸化アルミニウム触媒の平均細孔径が、好ましくは13.0nm以上18.0nm以下である、<1>~<12>のいずれかに記載のオレフィンの製造方法。
<14> 前記酸化アルミニウム触媒の平均細孔径が、好ましくは13.5nm以上16.0nm以下である、<1>~<13>のいずれかに記載のオレフィンの製造方法。
<15> 前記酸化アルミニウム触媒の細孔容量が、好ましくは0.50cm/g超、より好ましくは0.55cm/g以上であり、そして、好ましく2.0cm/g以下、より好ましくは1.5cm/g以下、更に好ましくは1.2cm/g以下、より更に好ましくは1.0cm/g以下、より更に好ましくは0.7cm/g以下である、<1>~<14>のいずれかに記載のオレフィンの製造方法。
<16> 前記酸化アルミニウム触媒の細孔容量が、好ましくは0.50cm/g超2.0cm/g以下である、<1>~<15>のいずれかに記載のオレフィンの製造方法。
<17> 前記酸化アルミニウム触媒の細孔容量が、好ましくは0.55cm/g以上1.5cm/g以下である、<1>~<16>のいずれかに記載のオレフィンの製造方法。
<18> 前記酸化アルミニウム触媒の細孔容量が、好ましくは0.55cm/g以上1.2cm/g以下である、<1>~<17>のいずれかに記載のオレフィンの製造方法。
<19> 前記酸化アルミニウム触媒の細孔容量が、好ましくは0.55cm/g以上1.0cm/g以下である、<1>~<18>のいずれかに記載のオレフィンの製造方法。
<20> 前記酸化アルミニウム触媒の細孔容量が、好ましくは0.55cm/g以上0.7cm/g以下である、<1>~<19>のいずれかに記載のオレフィンの製造方法。
<21> 前記酸化アルミニウム触媒のBET比表面積が、好ましくは190m/g以上、より好ましくは200m/g以上であり、そして、好ましくは500m/g以下、より好ましくは400m/g以下、更に好ましくは300m/g以下、より更に好ましくは250m/g以下、より更に好ましくは220m/g以下である、<1>~<20>のいずれかに記載のオレフィンの製造方法。
<22> 前記酸化アルミニウム触媒のBET比表面積が、好ましくは190m/g以上500m/g以下である、<1>~<21>のいずれかに記載のオレフィンの製造方法。
<23> 前記酸化アルミニウム触媒のBET比表面積が、好ましくは190m/g以上400m/g以下である、<1>~<22>のいずれかに記載のオレフィンの製造方法。
<24> 前記酸化アルミニウム触媒のBET比表面積が、好ましくは200m/g以上300m/g以下である、<1>~<23>のいずれかに記載のオレフィンの製造方法。
<25> 前記酸化アルミニウム触媒のBET比表面積が、好ましくは200m/g以上250m/g以下である、<1>~<24>のいずれかに記載のオレフィンの製造方法。
<26> 前記酸化アルミニウム触媒のBET比表面積が、好ましくは200m/g以上220m/g以下である、<1>~<25>のいずれかに記載のオレフィンの製造方法。
【0037】
<27> 前記酸化アルミニウム触媒が粉末状、顆粒状、ヌードル状、又はペレット状である、<1>~<26>のいずれかに記載のオレフィンの製造方法。
<28> 前記酸化アルミニウム触媒が粉末状であり、粉末の平均粒子径が、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上、更に好ましくは10μm以上、より更に好ましくは20μm以上、より更に好ましくは30μm以上であり、そして、好ましくは300μm以下、より好ましくは250μm以下、更に好ましくは200μm以下、より更に好ましくは150μm以下、より更に好ましくは100μm以下、より更に好ましくは50μm以下、より更に好ましくは37μm以下である、<1>~<27>のいずれかに記載のオレフィンの製造方法。
<29> 前記酸化アルミニウム触媒が顆粒状であり、顆粒の平均粒子径が、好ましくは0.2mm以上、より好ましくは0.4mm以上、更に好ましくは0.6mm以上であり、そして、好ましくは2.0mm以下、より好ましくは1.3mm以下、更に好ましくは0.8mm以下である、<1>~<27>のいずれかに記載のオレフィンの製造方法。
<30> 前記酸化アルミニウム触媒がヌードル状であり、平均直径が、好ましくは1.0mm以上、より好ましくは1.2mm以上、更に好ましくは1.4mm以上であり、そして、好ましくは2.5mm以下、より好ましくは2.0mm以下、更に好ましくは1.5mm以下であり、かつ、平均長さが、好ましくは8mm以下、より好ましくは6mm以下、更に好ましくは4.5mm以下であり、好ましくは2mm以上、より好ましくは3mm以上、更に好ましくは3.5mm以上である、<1>~<27>のいずれかに記載のオレフィンの製造方法。
<31> 前記酸化アルミニウム触媒がペレット状であり、平均直径及び平均高さが、好ましくは1.5mm以上、より好ましくは2.0mm以上、更に好ましくは2.5mm以上であり、そして、好ましくは5.0mm以下、より好ましくは4.0mm以下、更に好ましくは3.0mm以下である、<1>~<27>のいずれかに記載のオレフィンの製造方法。
<32> 酸化アルミニウムの細孔径が、好ましくは5.0nm以上、より好ましくは6.0nm以上、更に好ましくは8.0nm以上であり、そして、好ましくは25.0nm以下、より好ましくは20.0nm以下、更に好ましくは18.0nm以下である、<1>~<31>に記載のオレフィンの製造方法。
<33> 酸化アルミニウムの細孔径の分布範囲が、好ましくは5.0nm以上25.0nm以下、より好ましくは6.0nm以上20.0nm以下、更に好ましくは8.0nm以上18.0nm以下である、<1>~<32>に記載のオレフィンの製造方法。
【0038】
<34> 前記脱水反応を気相反応又は液相反応、好ましくは液相反応で行う、<1>~<33>のいずれかに記載のオレフィンの製造方法。
<35> 前記脱水反応を懸濁床反応又は固定床反応、好ましくは懸濁床反応で行う、<1>~<34>のいずれかに記載のオレフィンの製造方法。
<36> 前記脱水反応が、好ましくは不活性ガス雰囲気下又は還元雰囲気下、より好ましくは不活性ガス雰囲気下、更に好ましくはヘリウムガス、窒素ガス、及びアルゴンガスから選択される少なくとも1つの不活性ガス雰囲気下、より更に好ましくは窒素ガス雰囲気下で行われる、<1>~<35>のいずれかに記載のオレフィンの製造方法。
【0039】
<37> 前記脱水反応が懸濁床反応であり、撹拌下に、0.03MPa以上0.09MPa以下の減圧下又は常圧下で、反応系内に不活性ガスを導入し、生成する水を系外に除去しながら反応を行う、<1>~<36>に記載のオレフィンの製造方法。
<38> 前記脱水反応が懸濁床反応であり、前記酸化アルミニウム触媒の使用量が、前記脂肪族アルコール100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1質量部以上、より更に好ましくは2質量部以上であり、そして、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは10質量部以下、より更に好ましくは5質量部以下である、<1>~<37>のいずれかに記載のオレフィンの製造方法。
<39> 前記脱水反応が懸濁床反応であり、前記酸化アルミニウム触媒の使用量が、前記脂肪族アルコール100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上20質量部以下である、<1>~<38>のいずれかに記載のオレフィンの製造方法。
<40> 前記脱水反応が懸濁床反応であり、前記酸化アルミニウム触媒の使用量が、前記脂肪族アルコール100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上15質量部以下である、<1>~<39>のいずれかに記載のオレフィンの製造方法。
<41> 前記脱水反応が懸濁床反応であり、前記酸化アルミニウム触媒の使用量が、前記脂肪族アルコール100質量部に対して、好ましくは1質量部以上10質量部以下である、<1>~<40>のいずれかに記載のオレフィンの製造方法。
<42> 前記脱水反応が懸濁床反応であり、前記酸化アルミニウム触媒の使用量が、前記脂肪族アルコール100質量部に対して、好ましくは2質量部以上5質量部以下である、<1>~<41>のいずれかに記載のオレフィンの製造方法。
<43> 前記脱水反応が懸濁床反応であり、反応時間が、好ましくは0.1時間以上、より好ましくは0.5時間以上、更に好ましくは1時間以上であり、そして、好ましくは20時間以下、より好ましくは15時間以下、更に好ましくは7時間以下である、<1>~<42>のいずれかに記載のオレフィンの製造方法。
<44> 前記脱水反応が固定床反応であり、LHSV(液空間速度)が、好ましくは10/h以下、より好ましくは7/h以下、更に好ましくは5/h以下、より更に好ましくは3/h以下であり、そして、好ましくは0.03/h以上、より好ましくは0.05/h以上、更に好ましくは0.1/h以上、より更に好ましくは0.2/h以上である、<1>~<36>のいずれかに記載のオレフィンの製造方法。
【0040】
<45> 前記脱水反応の反応温度が、好ましくは200℃以上、より好ましくは220℃以上、更に好ましくは240℃以上、より更に好ましくは260℃以上であり、そして、好ましくは350℃以下、より好ましくは330℃以下、更に好ましくは310℃以下、より更に好ましくは290℃以下である、<1>~<44>のいずれかに記載のオレフィンの製造方法。
<46> 前記脱水反応の反応温度が、好ましくは200℃以上350℃以下である、<1>~<45>に記載のオレフィンの製造方法。
<47> 前記脱水反応の反応温度が、好ましくは220℃以上330℃以下である、<1>~<46>のいずれかに記載のオレフィンの製造方法。
<48> 前記脱水反応の反応温度が、好ましくは240℃以上310℃以下である、<1>~<47>のいずれかに記載のオレフィンの製造方法。
<49> 前記脱水反応の反応温度が、好ましくは260℃以上290℃以下である、<1>~<48>のいずれかに記載のオレフィンの製造方法。
<50> 二量体の収率が、好ましくは7%以下、より好ましくは5%以下である、<1>~<49>のいずれかに記載のオレフィンの製造方法。
【実施例
【0041】
[測定方法]
<平均細孔径、細孔容量、及びBET比表面積>
平均細孔径、細孔容量、及びBET比表面積は、Micromeritics社製、比表面積・細孔分布測定装置「ASAP2020」を使用して測定した。試料を250℃、5時間の加熱前処理を行った後、細孔容量及び平均細孔径は、BJH法(Barrett-Joyner-Halenda法)により算出し、細孔径分布のピークトップの細孔径(細孔の直径)を平均細孔径とした。なお、BJH法とは、他の細孔と連結していない円筒形の細孔をモデルとして計算したもので、窒素ガスの毛管凝集と多分子層吸着から細孔分布を求める方法である。その詳細は、「島津評論」(第48巻、第1号、第35~44頁、1991年発行)に記載されている。なお、細孔径分布に複数のピークがある場合には、最大のピークトップの細孔径を平均細孔径とする。また、同じ高さのピークトップが複数あるときには、次の1、2のように平均細孔径を決める。
1.同じ高さのピークトップのいずれか1つの細孔径が12.5nm以上20.0nm以下にある場合、12.5nm以上20.0nm以下にあるピークトップの細孔径の最小値を平均細孔径とする。
2.同じ高さのピークトップのいずれの細孔径も12.5nm以上20.0nm以下にない場合、ピークトップの細孔径の最小値を平均細孔径とする。
BET比表面積は、同様の前処理を行った後、液体窒素を用いて多点法で測定し、パラメータCが正になる範囲で値を算出した。
【0042】
<平均粒子径>
酸化アルミニウム触媒の平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置「LA-920」(株式会社堀場製作所製)を用いて、測定溶媒であるエタノール(関東化学株式会社製、鹿一級)中に0.05gを撹拌させながら分散させて測定し(撹拌速度:レベル4)、屈折率を1.10としてメジアン径を算出した。
【0043】
触媒調製例1
2Lセパラブルフラスコに、イオン交換水500g、30質量%塩化アルミニウム6水和物水溶液(和光純薬工業株式会社製試薬をイオン交換水で希釈)100gを仕込み、撹拌しながら90℃に昇温した。その後、28質量%アンモニア水(和光純薬工業株式会社製)51.7gを一括添加した。5分間撹拌した後、30質量%塩化アルミニウム6水和物水溶液131.6gを添加した。更に5分間撹拌した後、28質量%アンモニア水71.7gを添加した。得られた懸濁液Aを濾過し、120℃で乾燥させた後、空気下、500℃で3時間焼成することで粉末状の触媒Aを調製した。
得られた酸化アルミニウム触媒Aは、BET比表面積164m/g、平均粒子径35μm、平均細孔径10.5nm、細孔容量0.41cm/gであった。
【0044】
触媒調製例2
前述の懸濁液Aに対して、90℃で30質量%塩化アルミニウム6水和物水溶液317.5gを添加して5分間撹拌し、28質量%アンモニア水137.0gを添加して5分間撹拌することで懸濁液Bを得た。懸濁液Bのうち809.0gを回収し、触媒Aと同様の後処理を行うことで粉末状の触媒Bを得た。
得られた酸化アルミニウム触媒Bは、BET比表面積231m/g、平均粒子径31μm、平均細孔径12.8nm、細孔容量0.61cm/gであった。
【0045】
触媒調製例3
前述の懸濁液Bの残存分に対して、90℃で30質量%塩化アルミニウム6水和物水溶液317.5gを添加して5分間撹拌し、28質量%アンモニア水95.6gを添加して5分間撹拌した。更に30質量%塩化アルミニウム6水和物水溶液を375.5g添加して5分間撹拌し、28質量%アンモニア水165.7g添加して5分間撹拌することで懸濁液Cを得た。懸濁液Cのうち1056gを回収し、触媒Aと同様の後処理を行うことで粉末状の触媒Cを得た。
得られた酸化アルミニウム触媒Cは、BET比表面積212m/g、平均粒子径32μm、平均細孔径13.4nm、細孔容量0.64cm/gであった。
【0046】
触媒調製例4
前述の懸濁液Cの残存分に対して、90℃で30%塩化アルミニウム6水和物水溶液70.3gを添加して5分間撹拌し、28%アンモニア水45.4gを添加して5分間撹拌した。更に30%塩化アルミニウム6水和物水溶液を163.2g添加して5分間撹拌し、28%アンモニア水83.9g添加して5分間撹拌した。更に30%塩化アルミニウム6水和物水溶液300.5gを添加して5分間撹拌し、28%アンモニア水156.7g添加して5分間撹拌することで懸濁液Dを得た。
懸濁液Dのうち607.3gを回収し、触媒Aと同様の後処理を行うことで粉末状の触媒Dを得た。
得られた酸化アルミニウム触媒Dは、BET比表面積205m/g、平均粒子径35μm、平均細孔径15.1nm、細孔容量0.66cm/gであった。
【0047】
触媒調製例5
前述の懸濁液Dの残存分に対して、90℃で30%塩化アルミニウム6水和物水溶液152.1gを添加して5分間撹拌し、28%アンモニア水96.7gを添加して5分間撹拌した。更に30%塩化アルミニウム6水和物水溶液を367.8g添加して5分間撹拌し、28%アンモニア水179.1g添加して5分間撹拌した。得られた懸濁液に対して触媒Aと同様の後処理を行うことで粉末状の触媒Eを得た。
得られた酸化アルミニウム触媒Eは、BET比表面積201m/g、平均粒子径36μm、平均細孔径17.6nm、細孔容量0.59cm/gであった。
【0048】
触媒F
触媒Fとして、Aluminum oxide,gamma-phase(Alfa Aesar社製)を使用した。
酸化アルミニウム触媒Fは、BET比表面積165m/g、平均粒子径38μm、平均細孔径8.7nm、細孔容量0.35cm/gであった。
【0049】
触媒G
触媒Gとして、GP-20(水澤化学工業株式会社製、γ-Al)を使用した。
酸化アルミニウム触媒Gは、BET比表面積189m/g、平均粒子径26μm、平均細孔径12.1nm、細孔容量0.50cm/gであった。
触媒A~触媒GのBET比表面積、平均粒子径、平均細孔径、及び細孔容量を、下記表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
実施例1[オレフィン化反応]
100mL撹拌装置付き四つ口フラスコに、1-オクタデカノール「カルコール8098」(花王株式会社製) 50.0g(0.19モル)、触媒調製例2にて調製した酸化アルミニウム触媒B 1.5g(アルコール100質量部に対して3質量部)を仕込み、撹拌下、窒素を系内に流通させながら(窒素流通量:50mL/min)、280℃にて反応を行った。
系内の温度が反応温度(280℃)に到達後、30分おきにサンプリングを実施して、ガスクロマトグラフィー(GC)にて反応挙動を追跡し、転化率が100%となるのに必要な時間を確認した。ここで、転化率が100%であるとは、原料アルコールと中間体のエーテルのGCシグナルが検出されなくなったことを意味する。なお、表2に示す反応時間は、転化率が100%となるまでの反応時間を意味する。
転化率が100%となったら反応を終了し、反応終了後の溶液はヘキサンにより希釈した後、ガスクロマトグラフ分析装置「HP6890」(HEWLETT PACKARD社製)にカラム「Ultra ALLOY-1」(フロンティア・ラボ株式会社製:キャピラリーカラム30.0m×250μm)を装着し、水素炎イオン検出器(FID)を用い、インジェクション温度:300℃、ディテクター温度:350℃、He流量:4.6mL/minの条件で分析し、生成物を定量した。結果を表2に示す。
なお、オレフィン収率は以下の式により算出した。また、二量体収率は、100%からオレフィン収率(%)を引いた値とした。
オレフィン収率(%)=[オレフィン量(モル)/原料アルコール仕込み量(モル)]×100
【0052】
実施例2~6、比較例1~5[オレフィン化反応]
用いる触媒及び原料アルコール、並びに反応条件を表2に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして反応を行い、反応終了後の溶液の測定を行った。使用した触媒及び原料アルコール、反応条件並びに結果を表2にまとめて示す。なお、表2中、「オクタデカノール」は、「1-オクタデカノール」であり、「ヘキサデカノール」は、「1-ヘキサデカノール」である。
また、実施例1~4及び比較例1~3の結果を、図1に示す。
【0053】
【表2】
【0054】
表2及び図1の結果より、平均細孔径が12.5nm以上20.0nm以下の酸化アルミニウム触媒を使用した実施例1~6では、平均細孔径が12.5nm未満である酸化アルミニウム触媒を使用した比較例1~5に比べて、原料アルコールの転化率が100%となる反応時間が短く、また、副生成物である二量体収率が低く、反応性に優れ、更に、副生成物の生成も抑制されていることが明らかとなった。
以上のとおり、本発明の製造方法は、短い反応時間で高収率にオレフィンを製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明によれば、炭素数6以上の脂肪族アルコールの脱水反応によりオレフィンを製造する方法において、短い反応時間で高収率にオレフィンを製造することができる。本発明により得られたオレフィンは、界面活性剤、有機溶媒、柔軟剤、サイズ剤等の原料又は中間原料として有用である。
図1