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▶ ユニバーシティ オブ アルスターの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】神経疾患の治療での使用のための組成物
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/575 20060101AFI20240523BHJP
   A61K 38/22 20060101ALI20240523BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240523BHJP
   A61P 3/10 20060101ALN20240523BHJP
【FI】
C07K14/575 ZNA
A61K38/22
A61P25/28
A61P3/10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018545661
(86)(22)【出願日】2017-02-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-05-16
(86)【国際出願番号】 EP2017054665
(87)【国際公開番号】W WO2017148960
(87)【国際公開日】2017-09-08
【審査請求日】2020-02-28
【審判番号】
【審判請求日】2022-03-14
(31)【優先権主張番号】1603510.7
(32)【優先日】2016-02-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】505211710
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ アルスター
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】マクレーン,ポーラ
【合議体】
【審判長】冨永 みどり
【審判官】光本 美奈子
【審判官】原口 美和
(56)【参考文献】
【文献】特表2022-527093(JP,A)
【文献】Acta Diabetol,2015,vol.52,p.461-471
【文献】医学のあゆみ、2015、vol.253、p.833-837
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K14/575
A61K38/00-38/58
A61P1/00-43/00
REGISTRY/CAPLUS/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経障害の治療においてアミロイドβを減少させることにおける使用のための組成物であって、xeninのペプチド類似体、および薬学的に許容される担体を含み、前記ペプチド類似体が、C-8オクタノイル基、C-10デカノイル基、C-12ラウロイル基、C-14ミリストイル基、C-16パルミトイル基、C-18ステアロイル基、およびC-20アシル基からなる群から選択される脂肪酸基の付加から選択される、xeninの少なくとも1つのアミノ酸修飾を含む、組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1つのアミノ酸修飾がC-16パルミトイル基の付加を含む、請求項1に記載の使用のための組成物
【請求項3】
前記脂肪酸基がリジン残基で結合される、請求項1または2に記載の使用のための組成物
【請求項4】
前記ペプチド類似体が前記ペプチド類似体の13位にてリジン残基で結合されるC-16パルミトイル基を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の使用のための組成物
【請求項5】
前記使用が前記ペプチド類似体または前記組成物の薬学的に有効な量の投与を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項6】
前記神経障害が神経変性疾患である、請求項1~5のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項7】
前記神経障害がアルツハイマー病(AD)である、請求項1~6のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
アルツハイマー病(AD)は、現在、世界的に4400万人に影響を及ぼす脳の慢性変性疾患であり、3.2秒毎に新しい症例が診断されている。この疾患は、アミロイドβプラークの蓄積、著しい神経炎症、シナプスの構造と機能の劣化と認知機能低下によって特徴づけられる神経変性状態である。疾患および認知症の他の型の発生率は著しく増加し続け、2050年までに全世界で約1億の人々が影響を受けると予想される。
【背景技術】
【0002】
医学雑誌、American Academy of Neurologyに掲載された最近の研究は、ADを米国における主な死因の第3位に置いており、この疾患のグローバルコストは世界のGDPの1%(6050億米ドル)と推定される。
【0003】
ADの治療法の開発は遅いことで知られており、わずかに5種類の薬物が現在市販されているが、それらは症状緩和をもたらすだけである。ADの治療法は現在これらの5種類の薬物に限定されており、それらは2つの異なるクラス(コリンエステラーゼ阻害薬とNMDA受容体拮抗薬)に由来する。ADの複雑な多因子的病態生理は、現在市販されている薬物でさえ限定的で一貫性のない効力を有することを意味する。ドネペジルなどのコリンエステラーゼ阻害薬は症状緩和をもたらすだけであり、軽度認知障害(MCI)患者での臨床試験は、コリンエステラーゼ阻害薬がADへの進行を停止することができないことを示した。
【0004】
アミロイドカスケード仮説の予測に基づく治療法の開発を目標とする臨床試験もほとんど失敗に終わっている。アミロイド-β(Aβ)免疫化は、Aβのミクログリア食作用を活性化する、または毒性Aβオリゴマーを直接中和すると考えられており、前臨床モデルにおいて、アミロイドプラークの成長を低下させるか、または防止する。臨床試験はしかし、能動免疫化または受動免疫化がAD患者における限定された治療効果を有し、および有害な副作用をもたらし得ることも示唆している。
【0005】
Aβを取り除くために免疫療法は免疫系を強化する一方で、神経炎症がADの病態生理に寄与することはよく知られている。したがって、免疫系の抑制は、ADの代替治療手段と考えられていた。非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の使用がADを発症する可能性を有意に低下させることが観察されてきたが、しかしNSAIDの使用とADリスクとの関係の正確な本質についての議論が進行中であり、観察的かつ縦断的な集団ベースの研究は防御効果を示唆し続けているが、AD患者における処置としてNSAIDを検査するランダム化比較試験はほとんど成功していない。
【0006】
γセクレターゼの阻害剤は、ADの認知障害マウスモデルにおける記憶機能の修復とともに、in vivoおよびinvitroでAPPプロセシングに影響しかつAβ産生を減少させることが示されている。しかし、AD患者においてγセクレターゼ阻害剤を検査するいくつかの臨床試験は、重篤な有害作用のため、示された限定的な有効性のためのいずれか、または両方の理由から停止されている。同様に、βセクレターゼの阻害は前臨床モデルにおいてAD症状の調節因子としての有望性を示すが、βセクレターゼ阻害剤についての臨床試験の成功は比較的まれである。いずれにせよ、βおよびγセクレターゼ酵素は、CNSの通常の生理的機能に必須であり、およびアミロイド前駆体タンパク質(APP)は、多数のセクレターゼ基質のうちのほんの1つであり、これらの酵素がいくつかの重要な生理的役割を有することは明らかである。これは、セクレターゼ阻害剤の臨床試験の期待はずれの結果を説明し得る。これらの臨床試験において示された重篤な有害作用および限られた有効性は、βおよびγセクレターゼ阻害剤が限られた臨床適応を有し得ることを示唆する。Aβ産生がセクレターゼ酵素の調節を通して中枢神経系で抑制され得ることを示すエビデンスがあるが、βおよびγセクレターゼを阻害することは実行可能な治療手段でないかもしれない。
【0007】
総合すると、既存の療法は対症療法を提供するだけであり、開発中の有望な薬物は少ない。このように、この破壊的な疾患を防止するために、疾患修飾性能力および差別化された作用機構を有する新しい療法の開発について明らかに満たされていないニーズがある。
【0008】
生物学的ペプチドは、小分子および/または生物に比べてそれらの数多い利点、例えば、高効力、低毒性、高特異性、臓器蓄積および薬物相互作用の低リスクのために、多数の治療指標について現在開発されている最も魅力的な新進候補の1つである。
【発明の概要】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、神経障害の治療での使用のためのxeninのペプチド類似体が提供される。
【0010】
任意選択で、ペプチド類似体は、ヒトxeninのペプチド類似体である。
【0011】
任意選択で、ペプチド類似体は、GenBank受入番号AAB23907を有するxeninの類似体である。
【0012】
さらに任意選択で、ペプチド類似体は、GenBank受入番号AAB23907.1を有するxeninの類似体である。
【0013】
任意選択で、ペプチド類似体は、アミノ酸配列MLTKFETKSARVKGLSFHPKRPWILを有するxeninの類似体である。
【0014】
任意選択で、ペプチド類似体は、xeninおよび少なくとも1つのアミノ酸置換または修飾を含む。
【0015】
任意選択で、ペプチド類似体は、xeninおよび少なくとも1つのアミノ酸修飾を含む。
【0016】
任意選択で、少なくとも1つのアミノ酸修飾は、C-8オクタノイル基、C-10デカノイル基、C-12ラウロイル基、C-14ミリストイル基、C-16パルミトイル基、C-18ステアロイル基およびC-20アシル基を含む群から選択される脂肪酸の付加を含む。
【0017】
さらに任意選択で、少なくとも1つのアミノ酸修飾は、C-16パルミトイル基の付加を含む。
【0018】
任意選択で、ペプチド類似体は、xeninおよびC-16パルミトイル基を含む。
【0019】
任意選択で、この脂肪酸または各脂肪酸は、ペプチド類似体のN末端アミノ酸残基に隣接してもしくはこの残基で結合される、ペプチド類似体のC末端アミノ酸残基に隣接してもしくはこの残基で結合される、またはペプチド類似体のアミノ酸配列の任意の他のアミノ酸残基で結合される。
【0020】
任意選択で、この脂肪酸または各脂肪酸は、リジン残基で結合される。
【0021】
さらに任意選択で、この脂肪酸または各脂肪酸は、リジン残基のαアミノ基またはεアミノ基で結合される。
【0022】
任意選択で、ペプチド類似体はxeninと、リジン残基で結合されるC-16パルミトイル基とを含む。
【0023】
さらに任意選択で、ペプチド類似体はxeninと、ペプチド類似体の13位にてリジン残基で結合されるC-16パルミトイル基とを含む。
【0024】
本発明の第2の態様によれば、神経障害の治療での使用のための、胃抑制ポリペプチドのペプチド類似体、またはそのフラグメントが提供される。
【0025】
任意選択で、ペプチド類似体は、ヒト胃抑制ポリペプチドのペプチド類似体、またはそのフラグメントである。
【0026】
任意選択で、ペプチド類似体は、GenBank受入番号AAA88043またはそのフラグメントを有する胃抑制ポリペプチドの類似体である。
【0027】
さらに任意選択で、ペプチド類似体は、GenBank受入番号AAA88043.1を有する胃抑制ポリペプチドの類似体、またはそのフラグメントである。
【0028】
任意選択で、ペプチド類似体は、アミノ酸配列MVATKTFALLLLSLFLAVGLGEKKEGHFSALPSLPVGSHAKVSSPQPRGPRYAEGTFISDYSIAMDKIHQQDFVNWLLAQKGKKNDWKHNITQREARALELASQANRKEEEAVEPQSSPAKNPSDEDLLRDLLIQELLACLLDQTNLCRLRSRを有する胃抑制ポリペプチドの類似体、またはそのフラグメントである。
【0029】
任意選択で、ペプチド類似体は、アミノ酸配列MVATKTFALLLLSLFLAVGLGEKKEGHFSALPSLPVGSHAKVSSPQPRGPRYAEGTFISDYSIAMDKIHQQDFVNWLLAQKGKKNDWKHNITQREARALELASQANRKEEEAVEPQSSPAKNPSDEDLLRDLLIQELLACLLDQTNLCRLRSRの52~93位でアミノ酸残基を含む胃抑制ポリペプチドのフラグメントの類似体である。
【0030】
さらに任意選択で、ペプチド類似体は胃抑制ポリペプチドのフラグメントの類似体であり、フラグメントがアミノ酸配列YAEGTFISDYSIAMDKIHQQDFVNWLLAQKGKKNDWKHNITQを含む。
【0031】
さらに任意選択で、ペプチド類似体は、アミノ酸配列YAEGTFISDYSIAMDKIHQQDFVNWLLAQKGKKNDWKHNITQを有する胃抑制ポリペプチドのN末端の最後から少なくとも12のアミノ酸残基を含む類似体である。
【0032】
任意選択で、ペプチド類似体は、アミノ酸配列YAEGTFISDYSIAMDKIHQQDFVNWLLAQKGKKNDWKHNITQを有する胃抑制ポリペプチドの類似体である。
【0033】
任意選択で、ペプチド類似体は、胃抑制ポリペプチドと、少なくとも1つのアミノ酸置換または修飾とを含む。
【0034】
任意選択で、ペプチド類似体は、胃抑制ポリペプチドと、少なくとも1つのアミノ酸修飾とを含む。
【0035】
任意選択で、少なくとも1つのアミノ酸修飾は、アミノ酸残基のアシル化を含む。
【0036】
任意選択で、少なくとも1つのアミノ酸修飾は、アミノ酸残基のアセチル化を含む。
【0037】
さらに任意選択で、少なくとも1つのアミノ酸修飾は、ペプチド類似体のN末端アミノ酸残基のアセチル化、ペプチド類似体のC末端アミノ酸残基のアセチル化、またはペプチド類似体のアミノ酸配列の任意の他のアミノ酸残基のアセチル化を含む。
【0038】
またさらに任意選択で、少なくとも1つのアミノ酸修飾は、ペプチド類似体のN末端アミノ酸残基のアセチル化を含む。
【0039】
任意選択で、ペプチド類似体は、胃抑制ポリペプチドを含み、ペプチド類似体のN末端アミノ酸残基がアセチル化される。
【0040】
任意選択で、ペプチド類似体は、C-8オクタノイル基、C-10デカノイル基、C-12ラウロイル基、C-14ミリストイル基、C-16パルミトイル基、C-18ステアロイル基、およびC-20アシル基を含む群から選択される脂肪酸の付加を含む少なくとも1つのアミノ酸修飾をさらに含む。
【0041】
さらに任意選択で、少なくとも1つのアミノ酸修飾は、C-16パルミトイル基の付加を含む。
【0042】
任意選択で、ペプチド類似体は、胃抑制ポリペプチドと、C-16パルミトイル基とを含む。さらに任意選択で、ペプチド類似体は、ペプチド類似体のN末端アミノ酸残基がアセチル化される胃抑制ポリペプチドと、C-16パルミトイル基とを含む。
【0043】
任意選択で、この脂肪酸または各脂肪酸は、ペプチド類似体のN末端アミノ酸に隣接してもしくはこの残基で結合される、ペプチド類似体のC末端アミノ酸残基に隣接してもしくはこの残基で結合される、またはペプチド類似体のアミノ酸配列の任意の他のアミノ酸残基で結合される。
【0044】
任意選択で、この脂肪酸または各脂肪酸は、リジン残基に結合される。
【0045】
さらに任意選択で、この脂肪酸または各脂肪酸は、リジン残基のαアミノ基またはεアミノ基に結合される。
【0046】
任意選択で、ペプチド類似体は、胃抑制ポリペプチドと、リジン残基に結合されるC-16パルミトイル基とを含む。さらに任意選択で、ペプチド類似体は、ペプチド類似体のN末端アミノ酸残基がアセチル化される胃抑制ポリペプチドと、リジン残基に結合されるC-16パルミトイル基とを含む。
【0047】
さらに任意選択で、ペプチド類似体は、胃抑制ポリペプチドと、ペプチド類似体の37位でリジン残基に結合されるC-16パルミトイル基とを含む。さらに任意選択で、ペプチド類似体は、ペプチド類似体のN末端アミノ酸残基がアセチル化される胃抑制ポリペプチドと、ペプチド類似体の37位でリジン残基に結合されるC-16パルミトイル基とを含む。
【0048】
さらに任意選択で、ペプチド類似体は、胃抑制ポリペプチドと、ペプチド類似体の位37でリジン残基に結合されるC-16パルミトイル基とを含む。さらに任意選択で、ペプチド類似体は、ペプチド類似体のN末端アミノ酸残基がアセチル化される胃抑制ポリペプチドと、アミノ酸配列YAEGTFISDYSIAMDKIHQQDFVNWLLAQKGKKNDWKHNITQを有するペプチド類似体の37位でリジン残基に結合されるC-16パルミトイル基とを含む。
【0049】
任意選択で、ペプチド類似体は、一般式HO-(CH2-O-CH2)n-H(式中、nは1と22の間の整数である)のポリマー部分の結合を含む少なくとも1つのアミノ酸修飾をさらに含む。
【0050】
さらに任意選択で、ペプチド類似体は、xeninと、少なくとも1つのアミノ酸の置換または修飾とを含み、およびペプチド類似体は、一般式HO-(CH2-O-CH2)n-H(式中、nは1と22の間の整数である)のポリマー部分の結合を含む少なくとも1つのアミノ酸修飾をさらに含む。
【0051】
あるいは、ペプチド類似体は、胃抑制ポリペプチドまたはそのフラグメントと、少なくとも1つのアミノ酸の置換または修飾とを含み、およびペプチド類似体は、一般式HO-(CH2-O-CH2)n-H(式中、nは1と22の間の整数である)のポリマー部分の結合を含む少なくとも1つのアミノ酸修飾をさらに含む。
【0052】
任意選択で、nは1と約10の間の整数である。
【0053】
さらに任意選択で、nは約2と約5の間の整数である。
【0054】
任意選択で、ポリマー部分は枝分れ構造を有する。枝分れ構造は、線形構造の少なくとも2つのポリマー部分の結合を含み得る。
【0055】
あるいは、分岐点は各ポリマー部分の構造内に位置することもある。
【0056】
あるいは、ポリマー部分は線形構造を有する。
【0057】
任意選択で、このポリマー部分または各ポリマー部分は、ペプチド類似体のN末端アミノ酸残基に隣接してもしくはこの残基で結合される、ペプチド類似体のC末端アミノ酸残基に隣接してもしくはこの残基で結合される、またはペプチド類似体のアミノ酸配列の任意の他のアミノ酸残基で結合される。
【0058】
任意選択で、このポリマー部分または各ポリマー部分は、C末端アミノ酸残基に隣接してもしくはこの残基で結合される。
【0059】
さらに任意選択で、このポリマー部分または各ポリマー部分は、C末端アミノ酸残基で結合される。
【0060】
任意選択で、このポリマー部分または各ポリマー部分は、リジン残基で結合される。
【0061】
さらに任意選択で、このポリマー部分または各ポリマー部分は、リジン残基のαアミノ基もしくはεアミノ基で結合される。
【0062】
本発明の第3の態様によれば、本発明の第1または第2の態様によるペプチド類似体と、薬学的に許容される担体とを含む組成物が提供される。
【0063】
任意選択で、組成物は、本発明の第1または第2の態様による薬学的に有効量のペプチド類似体と、薬学的に許容される担体とを含む。
【0064】
任意選択で、使用は、本発明の第1または第2の態様によるペプチド類似体または本発明の第3の態様による組成物の投与を含む。
【0065】
さらに任意選択で、使用は、対象への本発明の第1または第2の態様によるペプチド類似体または本発明の第3の態様による組成物の投与を含む。
【0066】
さらに任意選択で、使用は、神経障害を患う対象への本発明の第1または第2の態様によるペプチド類似体または本発明の第3の態様による組成物の投与を含む。
【0067】
さらに任意選択で、使用は、本発明の第1または第2の態様による薬学的に有効量のペプチド類似体または本発明の第3の態様による組成物の投与を含む。
【0068】
またさらに任意選択で、使用は、本発明の第1または第2の態様によるペプチド類似体の0.25~25.00nmol/kg体重の、または本発明の第3の態様による組成物の同等量の投与を含む。
【0069】
またさらに任意選択で、使用は、本発明の第1または第2の態様によるペプチド類似体の2.50~25.00nmol/kg体重の、または本発明の第3の態様による組成物の同等量の投与を含む。
【0070】
またさらに任意選択で、使用は、本発明の第1または第2の態様によるペプチド類似体の25.00nmol/kg体重の、または本発明の第3の態様による組成物の同等量の投与を含む。
【0071】
本発明の第4の態様によれば、神経障害を治療するための方法が提供され、方法は本発明の第1または第2の態様によるペプチド類似体または本発明の第3の態様による組成物を投与することを含む。
【0072】
本発明の第5の態様によれば、神経障害を治療するための薬物の製造における本発明の第1または第2の態様によるペプチド類似体の使用が提供される。
【0073】
任意選択で、神経障害は、認知機能に影響を及ぼす障害、および機能障害性認知過程の群から選択される障害である。
【0074】
任意選択で、認知機能に負に影響を及ぼす障害としては、認知症、脳卒中、統合失調症、双極性障害、および神経変性疾患が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0075】
任意選択で、認知機能に正に影響を及ぼす障害としては、心的外傷後ストレス障害、てんかん、トゥレット症候群、および幻覚が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0076】
任意選択で、神経変性疾患は、アルツハイマー病(AD)、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、ハンチントン病、およびパーキンソン病から選択されるが、これらに限定されるものではない。
【0077】
任意選択で、機能障害性認知過程としては、注意集中、計算、記憶、判断、洞察、学習、および推論が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0078】
任意選択で、神経障害はアルツハイマー病である。
【0079】
任意選択で、ペプチド類似体は、認知機能を改善することにおける使用のためである。
【0080】
任意選択でまたは追加的に、ペプチド類似体は、記憶を改善することにおける使用のためである。さらに任意選択でまたは追加的に、ペプチド類似体は、認識または空間記憶を改善することにおける使用のためである。
【0081】
任意選択で、ペプチド類似体は、アミロイドβを減少させることにおける使用のため、任意選択で、アミロイドβ高密度コアプラーク数を減少させることにおける使用のためである。
【0082】
任意選択で、ペプチド類似体は、炎症を軽減させることにおける使用のためである。さらに任意選択で、ペプチド類似体は、脳内炎症を軽減させることにおける使用のためである。
【0083】
任意選択で、ペプチド類似体は、シナプス密度または数を増加させることにおける使用のためである。
【0084】
任意選択で、ペプチド類似体は、神経発生を増加させることにおける使用のためである。
【0085】
ここで、本発明の各実施形態を添付する図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0086】
図1】APP/PS1マウスにおいてシナプス密度がXenin-25[Lys(13)PAL]およびリラグルチドによって部分的に維持されることを示すグラフである。シナプトフィジンレベルは、一日1回10週間、生理食塩水、リラグルチドおよびXenin-25[Lys(13)PAL]で処置された野生型マウスおよびAPP/PS1マウスにおいて測定された。多形層(A)、顆粒層(B)、分子層(C)、放線状層(D)、錐体細胞層(E)、多形細胞層(F)、皮質内層(G)および皮質外層(H)の数量化を図示する。データは、群当たりn=6マウスについて、8~12切片の平均値±SEMを表す。**/***p<0.01~p<0.0001 APP/PS1マウスのすべての群と比較した。Δp<0.05、ΔΔp<0.01、ΔΔΔ<0.001およびΔΔΔΔp<0.0001生理食塩水で処置されたAPP/PS1マウスと比較した。Ψ<0.05およびΨΨp<0.01Xenin-25[Lys(13)PAL]で処置された野生型マウスと比較した。
図2】APP/PS1マウスにおいてシナプス密度がNAcGIP[Lys(37)PAL]およびリラグルチドによって部分的に維持されることを示すグラフである。シナプトフィジンレベルは、一日1回、10週間、生理食塩水、リラグルチドおよびNAcGIP[Lys(37)PAL]で処置された野生型マウスおよびAPP/PS1マウスにおいて測定された。多形層(A)、顆粒層(B)、分子層(C)、放線状層(D)、錐体細胞層(E)、多形細胞層(F)、皮質内層(G)および皮質外層(H)の数量化を図示する。データは、群当たりn=6マウスについて、8~12切片の平均値±SEMを表す。****P<0.0001対すべてのAPP/PS1群。Δp<0.05、ΔΔp<0.01、およびΔΔΔΔp<0.0001生理食塩水で処置されたAPP/PS1マウスと比較した。
図3】APP/PS1マウスモデルにおける重要なバイオマーカーに対するXenin-25[Lys(13)PAL]の保護効果を示すグラフである。生理食塩水(A)、リラグルチド(B)およびXenin-25[Lys(13)PAL]で処置されたAPP/PS1マウス(C)におけるβアミロイドプラーク負荷の代表的な画像、ならびに群当たりn=6動物での数量化(D)。生理食塩水(E)、リラグルチド(F)およびXenin-25[Lys(13)PAL]で処置されたA/PS1マウス(G)の高密度コアコンゴーレッドプラーク負荷の代表的な画像、ならびに群当たりn=6動物での数量化(H)。生理食塩水(I)、リラグルチド(J)およびXenin-25[Lys(13)PAL]で処置されたAPP/PS1マウス(K)におけるIBA-1染色の代表的な画像、ならびに群当たりn=6動物での数量化(L)。生理食塩水(M)、リラグルチド(N)およびXenin-25[Lys(13)PAL]で処置されたAPP/PS1マウス(O)におけるダブルコルチン染色(神経発生のマーカー)の代表的な画像、ならびに群当たりn=6動物での数量化(P)。データは、群当たりn=6マウスについて、8~12切片の平均値±SEMを表す。p<0.05、***p<0.001および****p<0.0001対生理食塩水で処置されたAPP/PS1マウス。ΔΔp<0.001、ΔΔΔp<0.001およびΔΔΔΔp<0.0001対リラグルチドで処置されたAPP/PS1マウス。
図4】APP/PS1マウスモデルにおける重要なバイオマーカーに対するNAcGIP[Lys(37)PAL]の保護効果を示すグラフである。生理食塩水(A)、リラグルチド(B)およびNAcGIP[Lys(37)PAL]で処置されたAPP/PS1マウス(C)におけるβアミロイドプラーク負荷の代表的な画像、ならびに群当たりn=6動物での数量化(D)。生理食塩水(E)、リラグルチド(F)およびNAcGIP[Lys(37)PAL]で処置されたA/PS1マウス(G)の高密度コアコンゴーレッドプラーク負荷の代表的な画像、ならびに群当たりn=6動物での数量化(H)。生理食塩水(I)、リラグルチド(J)およびNAcGIP[Lys(37)PAL]で処置されたAPP/PS1マウス(K)におけるダブルコルチン染色(神経発生のマーカー)の代表的な画像、ならびに群当たりn=6動物での数量化(L)。データは、群当たりn=6マウスについて、8~12切片の平均値±SEMを表す。p<0.05と****p<0.0001対生理食塩水で処置されたAPP/PS1マウス。ΔΔp<0.001、ΔΔΔp<0.001、Δp<0.05対リラグルチドで処置されたAPP/PS1マウス。
図5】可溶性オリゴマーレベルにおける減少を示すグラフである。生理食塩水、リラグルチドまたはXenin-25[Lys(13)PAL]による10週間の処置後、総脳APP(A)、凝集βアミロイドオリゴマー(B)、Aβ1-40(C)、Aβ1-42(D)およびAβ42/40の比率(E)をELISAで測定した。値は、群当たりn=6の脳についての平均値±SEMを表す。**p<0.01および***p<0.001対生理食塩水で処置されたAPP/PS1マウス。Δ<0.05、ΔΔp<0.01およびΔΔΔp<0.001対リラグルチドで処置されたAPP/PS1マウス。
図6】βアミロイドオリゴマーレベルにおける減少を示すグラフである。生理食塩水、リラグルチドまたはNAcGIP(Lys37PAL)による10週間の処置後、総脳APP(A)、凝集βアミロイドオリゴマー(B)、Aβ1-40(C)、Aβ1-42(D)およびAβ42/40の比率(E)をELISAで測定した。値は、群当たりn=6の脳についての平均値±SEMを表す。**p<0.01および***p<0.001対生理食塩水で処置されたAPP/PS1マウス。Δ<0.05、ΔΔp<0.01およびΔΔΔp<0.001対リラグルチドで処置されたAPP/PS1マウス。
図7】高頻度刺激後ベースラインの分析であり、生理食塩水で処置されたマウスと比較すると、0.25、2.5および25nmol/kg(群当たりn=8)で一日1回3週間注射されたリラグルチド(A)はC57B1/6マウスにおいて海馬のCA1でLTP(長期増強)の誘導と維持を増強し、低用量で優れた効果が観察され、N-AcGIP(Lys37PAL)(B)は2.5および25nmol/kgでLTPの誘導と維持を増強したが、それは0.25nmol/kgでLTPの誘導を阻害し、xenin25(Lys13PAL)は25nmol/kgでLTPの誘導と維持を増強したが、それは2.5および0.25nmol/kgでLTPの誘導を阻害したことを示す。
図8】野生型マウスおよびAPP/PS1マウスにおける生理食塩水、リラグルチド、NAcGIP[Lys(37)PAL]またはXenin-25[Lys(13)PAL]の急性投与後の、オープンフィールド課題でのベースライン動作を示すグラフである。オープンフィールド課題では、野生型マウスおよびAPP/PS1マウスにおいてそれぞれの処置の各々の急性注射後、経路長(A)、ラインクロス(B)、速度(C)、立ち上がり(D)、毛づくろい(E)、糞塊(F)、およびアリーナ中央での滞在時間(G)を30分間測定した。Δp<0.05対野生型生理食塩水、p<0.05対APP/PS1生理食塩水、op<0.05、oop<0.01、ooop<0.001、oooop<0.0001対APP/PS1リラグルチド。データは、群当たり11~13匹のマウスについての平均値±SEMを表す。
図9】野生型マウスおよびAPP/PS1マウスにおける生理食塩水、リラグルチド、NAcGIP[Lys(37)PAL]またはXenin-25[Lys(13)PAL]の急性投与後の、新規物体認識課題の習得段階におけるベースライン動作を示すグラフである。オープンフィールドアリーナへの曝露から24時間後、上記のそれぞれの処置の注射を野生型マウスおよびAPP/PS1マウスに施して30分後、新規物体認識課題を同じアリーナを使用して行った。10分間の習得段階において、野生型マウス(A)またはAPP/PS1(B)マウスのいずれかを2つの同じ物体、白いボールまたは赤い立方体のいずれかに曝した。データは、群当たり11~13匹のマウスについての平均値±SEMを表す。
図10】野生型マウスおよびAPP/PS1マウスにおける生理食塩水、リラグルチド、NAcGIP[Lys(37)PAL]またはXenin-25[Lys(13)PAL]の急性投与後の、新規物体認識記憶のベースラインを示すグラフである。新規物体認識課題の試験段階は、習得段階の3時間後に行われた。試験段階において、習得段階からの物体の1つを、これまでに出会わなかった新規物体と置き換えた。それぞれの処置の急性投与後の試験段階での野生型マウス(A)およびAPP/PS1マウス(B)における新規物体と比較した、見慣れた物体についての認識指数を図示する。p<0.05、**p<0.01および****p<0.0001対新規物体。データは、群当たり11~13匹のマウスについての平均値±SEMを表す。
図11】野生型マウスにおける空間学習に対するリラグルチド、NAcGIP[Lys(37)PAL]およびXenin-25[Lys(13)PAL]による長期処置の効果を示すグラフである。モリス水迷路訓練は、生理食塩水、リラグルチド、NAcGIP[Lys(37)PAL]およびXenin-25[Lys(13)PAL]による56日間の処置後、開始した。習得段階は、4日連続して1日当たり4種の訓練セッションを含んだ。訓練日当たりの平均逃避潜時(A)、経路長(B)および遊泳速度(C)を図示する。データは、群当たり11~12匹のマウスについての平均値±SEMを表す。
図12】野生型マウスにおける空間記憶に対するリラグルチド、NAcGIP[Lys(37)PAL]およびXenin-25[Lys(13)PAL]による長期処置の効果を示すグラフである。空間記憶の尺度としてモリス水迷路の最終訓練セッションから24時間後の5日目にプローブ試験を行った。それぞれの薬物の各々による60日間の処置の後、生理食塩水(A)、リラグルチド(B)、NAcGIP[Lys(37)PAL](C)およびXenin-25[Lys(13)PAL](D)で処置された野生型マウスによるプローブ試験中の各象限での滞在時間を上に示す。p<0.05、++p<0.01、+++p<0.001および++++p<0.0001対目標象限。データは、群当たり11~12匹のマウスについての平均値±SEMを表す。
図13】野生型マウスにおけるリラグルチド、NAcGIP[Lys(37)PAL]およびXenin-25[Lys(13)PAL]による長期処置後の空間視力を示すグラフである。それぞれの薬物による60日間の処置の後の野生型マウスにおける空間視力の指標として、最終モリス水迷路訓練セッションから24時間後に行ったプローブ試験中の、逃避プラットフォームの以前の位置から半径1cm以内での滞在時間の長さを上に示す。データは、群当たり11~12匹のマウスについての平均値±SEMを表す。
図14】APP/PS1マウスにおける空間学習に対するリラグルチド、NAcGIP[Lys(37)PAL]およびXenin-25[Lys(13)PAL]による長期処置の効果を示すグラフである。モリス水迷路訓練は、生理食塩水、リラグルチド、NAcGIP[Lys(37)PAL]およびXenin-25[Lys(13)PAL]による56日間の処置後に開始した。習得段階は、4日連続して1日当たり4種の訓練セッションを含んだ。それぞれの薬物による長期処置後のAPP/PS1マウスの、訓練日当たりの平均逃避潜時(A)、逃避プラットフォームへの経路長(B)、および遊泳速度(C)を示す。p<0.05対APP/PS1生理食塩水、p<0.05対APP/PS1 Xenin-25[Lys(13)PAL]。データは、群当たり11~12匹のマウスについての平均値±SEMを表す。
図15】APP/PS1マウスにおける空間記憶に対するリラグルチド、NAcGIP[Lys(37)PAL]およびXenin-25[Lys(13)PAL]による長期処置の効果を示すグラフである。空間記憶の尺度としてモリス水迷路の最終訓練セッションから24時間後にプローブ試験を行った。60日間の処置の後、生理食塩水(A)、リラグルチド(B)、NAcGIP[Lys(37)PAL](C)およびXenin-25[Lys(13)PAL](D)で処置されたAPP/PS1マウスによる各象限での滞在時間の長さを上に示す。p<0.05、++p<0.01対目標象限。データは、群当たり11~12匹のマウスについての平均値±SEMを表す。
図16】APP/PS1マウスにおける空間視力に対するリラグルチド、NAcGIP[Lys(37)PAL]およびXenin-25[Lys(13)PAL]による長期処置の効果を示すグラフである。それぞれの薬物による60日間の処置の後のAPP/PS1マウスにおける空間視力の指標として、最終モリス水迷路訓練セッションから24時間後に行ったプローブ試験中の、逃避プラットフォームの以前の位置から半径1cm以内での滞在時間の長さを上に示す。データは、群当たり11~12匹のマウスについての平均値±SEMを表す。
図17】野生型マウスにおける逆転学習に対するリラグルチド、NAcGIP[Lys(37)PAL]およびXenin-25[Lys(13)PAL]による長期処置の効果を示すグラフである。逆転水迷路訓練は、生理食塩水、リラグルチド、NAcGIP[Lys(37)PAL]およびXenin-25[Lys(13)PAL]による61日間の処置後に開始した。習得段階は、4日連続して1日当たり4種の訓練セッションを含んだ。訓練日当たりの平均逃避潜時(A)、経路長(B)、および遊泳速度(C)を示す。Δp<0.05、ΔΔp<0.01およびΔΔΔΔp<0.0001対野生型生理食塩水。データは、群当たり11~12匹のマウスについての平均値±SEMを表す。
図18】野生型マウスにおける逆転記憶に対するリラグルチド、NAcGIP[Lys(37)PAL]およびXenin-25[Lys(13)PAL]による長期処置の効果を示すグラフである。逆転記憶の尺度として逆転水迷路の最終訓練セッションから24時間後に逆転プローブ試験を行った。それぞれの薬物の各々による65日間の処置の後、生理食塩水(A)、リラグルチド(B)、NAcGIP[Lys(37)PAL](C)およびXenin-25[Lys(13)PAL](D)で処置された野生型マウスによる逆転プローブ試験中の各象限での滞在時間を上に示す。p<0.05、++p<0.01、+++p<0.001および++++p<0.0001対目標象限。データは、群当たり11~12匹のマウスについての平均値±SEMを表す。
図19】野生型マウスにおける逆転空間視力に対するリラグルチド、NAcGIP[Lys(37)PAL]およびXenin-25[Lys(13)PAL]による長期処置の効果を示すグラフである。それぞれの薬物による65日間の処置の後の野生型マウスにおける空間視力の指標として、最終逆転水迷路訓練セッションから24時間後に行ったプローブ試験中の、逃避プラットフォームの以前の位置から半径1cm以内での滞在時間の長さを上に示す。データは、群当たり11~12匹のマウスについての平均値±SEMを表す。
図20】APP/PS1マウスにおける逆転学習に対するリラグルチド、NAcGIP[Lys(37)PAL]およびXenin-25[Lys(13)PAL]による長期処置の効果を示すグラフである。逆転水迷路訓練は、生理食塩水、リラグルチド、NAcGIP[Lys(37)PAL]およびXenin-25[Lys(13)PAL]による61日間の処置後に開始した。習得段階は、4日連続して1日当たり4種の訓練セッションを含んだ。APP/PS1マウスの訓練日当たりの平均逃避潜時(A)、経路長(B)、および遊泳速度(C)を示す。p<0.05、***p<0.001および****p<0.0001対APP/PS1生理食塩水。Ψp<0.05対APP/PS1 NAcGIP[Lys(37)PAL]。データは、群当たり11~12匹のマウスについての平均値±SEMを表す。
図21】APP/PS1マウスにおける逆転記憶に対するリラグルチド、NAcGIP[Lys(37)PAL]およびXenin-25[Lys(13)PAL]による長期処置の効果を示すグラフである。逆転記憶の尺度として逆転水迷路の最終訓練セッションから24時間後に逆転プローブ試験を行った。それぞれの薬物の各々による65日間の処置の後、生理食塩水(A)、リラグルチド(B)、NAcGIP[Lys(37)PAL](C)およびXenin-25[Lys(13)PAL](D)で処置されたAPP/PS1マウスによる逆転プローブ試験中の各象限での滞在時間を上に示す。p<0.05、++p<0.01および++++p<0.0001対目標象限。データは、群当たり11~12匹のマウスについての平均値±SEMを表す。
図22】リラグルチドで処置されたAPP/PS1の空間視力が逆転水迷路プローブ試験で改善されることを示すグラフである。それぞれの薬物による65日間の処置後のAPP/PS1マウスにおける空間視力の指標として、最終逆転水迷路訓練セッションから24時間後に行ったプローブ試験中の、逃避プラットフォームの以前の位置から半径1cm以内での滞在時間の長さを上に示す。p<0.05対APP/PS1生理食塩水。データは、群当たり11~12匹のマウスについての平均値±SEMを表す。
図23】野生型マウスおよびAPP/PS1マウスにおけるオープンフィールド行動に対するリラグルチド、NAcGIP[Lys(37)PAL]およびXenin-25[Lys(13)PAL]による長期処置の効果を示すグラフである。オープンフィールド課題において、自発行動に対する各処置の慢性効果を評価するために、野生型マウスおよびAPP/PS1マウスにおいてそれぞれの処置の各々の66日間の投与後に、経路長(A)、ラインクロス(B)、速度(C)、立ち上がり(D)、毛づくろい(E)、糞塊(F)、およびアリーナ中央での滞在時間を測定した。Ψp<0.05、ΨΨp<0.01およびΨΨΨp<0.001対APP/PS1 NAcGIP[Lys(37)PAL]。データは、群当たり11~12匹のマウスについての平均値±SEMを表す。
図24】野生型マウスおよびAPP/PS1マウスにおける認識記憶に対するリラグルチド、NAcGIP[Lys(37)PAL]およびXenin-25[Lys(13)PAL]による長期処置の効果を示すグラフである。新規物体認識課題の試験段階は、最初の10分の習得段階から3時間後に行った。試験段階において、習得段階からの同一の物体の1つを、これまでに出会わなかった新規物体と置き換えた。それぞれの処置の67日間の投与後の試験段階で野生型マウス(A)およびAPP/PS1マウス(B)における見慣れた物体と比較した、新規物体の認識指数を示す。p<0.05、**p<0.01および***p<0.001対新規物体。データは、群当たり11~12匹のマウスについての平均値±SEMを表す。
図25】リラグルチド、NAcGIP[Lys(37)PAL]およびXenin-25[Lys(13)PAL]で処置されたAPP/PS1マウスの脳中のAβプラーク負荷を示すグラフである。それぞれの薬物による10週間の処置後に生理食塩水(A)、リラグルチド(B)、NAcGIP[Lys(37)PAL](C)およびXenin-25[Lys(13)PAL](D)で処置されたAPP/PS1マウスの大脳皮質中のAβ沈着を表す代表的な画像を示す。各処置群のAPP/PS1マウス(E)の皮質中のAβ免疫陽性の全数量化も示す。****p<0.0001対APP/PS1生理食塩水。データは、群当たり6匹のマウスについての平均値±SEMを表す。
図26】リラグルチド、NAcGIP[Lys(37)PAL]およびXenin-25[Lys(13)PAL]で処置されたAPP/PS1マウスの脳中の高密度コアコンゴーレッド親和性プラーク負荷を示すグラフである。それぞれの薬物による10週間の処置後に生理食塩水(A)、リラグルチド(B)、NAcGIP[Lys(37)PAL](C)およびXenin-25[Lys(13)PAL](D)で処置されたAPP/PS1マウスの大脳皮質中のコンゴーレッド陽性高密度コアAβプラークを表す代表的な画像を示す。各処置群のAPP/PS1マウス(E)の皮質中のコンゴーレッド親和性プラーク負荷の全数量化も示す。****p<0.0001対APP/PS1生理食塩水。データは、群当たり6匹のマウスについての平均値±SEMを表す。
図27】薬物処置された野生型マウスおよびAPP/PS1マウスの大脳皮質中のミクログリアを示す代表的な顕微鏡写真である。10週の間一日1回、生理食塩水(A)、リラグルチド(B)、NAcGIP[Lys(37)PAL](C)およびXenin-25[Lys(13)PAL](D)で処置された野生型マウスならびに生理食塩水(E)、リラグルチド(F)、NAcGIP[Lys(37)PAL](G)およびXenin-25[Lys(13)PAL](H)を投与されたAPP/PS1マウスの皮質中のIba1染色を表す代表的な画像を示す。
図28】薬物処置された野生型マウスおよびAPP/PS1マウスの歯状回中のミクログリアを示す代表的な顕微鏡写真である。10週の間一日1回、生理食塩水(A)、リラグルチド(B)、NAcGIP[Lys(37)PAL](C)およびXenin-25[Lys(13)PAL](D)で処置された野生型マウスならびに生理食塩水(E)、リラグルチド(F)、NAcGIP[Lys(37)PAL](G)およびXenin-25[Lys(13)PAL](H)を投与されたAPP/PS1マウスの歯状回中のIba1染色を表す代表的な画像を示す。
図29】リラグルチド、NAcGIP[Lys(37)PAL]およびXenin-25[Lys(13)PAL]で処置された野生型マウスおよびAPP/PS1マウスの脳中のミクログリアのレベルを示すグラフである。10週の間一日1回、生理食塩水、リラグルチド、NAcGIP[Lys(37)PAL]およびXenin-25[Lys(13)PAL])で処置された野生型マウスおよびAPP/PS1マウスの大脳皮質(A)および歯状回(B)中のIba1免疫陽性の全数量化を上に示す。XXXXp<0.0001対すべてのAPP/PS1群、**p<0.01、****p<0.0001対APP/PS1生理食塩水、op<0.05、oop<0.01、oooop<0.0001対APP/PS1リラグルチド、ΨΨΨΨp<0.0001対APP/PS1 NAcGIP[Lys(37)PAL]。データは、群当たり6匹のマウスについての平均値±SEMを表す。
図30】薬物処置された野生型マウスおよびAPP/PS1マウスの大脳皮質中のアストロサイトを示す代表的な顕微鏡写真である。10週の間一日1回、生理食塩水(A)、リラグルチド(B)、NAcGIP[Lys(37)PAL](C)およびXenin-25[Lys(13)PAL](D)で処置された野生型マウスならびに生理食塩水(E)、リラグルチド(F)、NAcGIP[Lys(37)PAL](G)およびXenin-25[Lys(13)PAL](H)を投与されたAPP/PS1マウスの皮質中のGFAP染色を表す代表的な画像を示す。
図31】薬物処置された野生型マウスおおびAPP/PS1マウスの歯状回中のアストロサイトを示す代表的な顕微鏡写真である。10週の間一日1回、生理食塩水(A)、リラグルチド(B)、NAcGIP[Lys(37)PAL](C)およびXenin-25[Lys(13)PAL](D)で処置された野生型マウスならびに生理食塩水(E)、リラグルチド(F)、NAcGIP[Lys(37)PAL](G)およびXenin-25[Lys(13)PAL](H)を投与されたAPP/PS1マウスの歯状回中のGFAP染色を表す代表的な画像を示す。
図32】リラグルチド、NAcGIP[Lys(37)PAL]およびXenin-25[Lys(13)PAL]で処置された野生型マウスおよびAPP/PS1マウスの脳中のアストロサイトのレベルを示すグラフである。10週の間一日1回、生理食塩水、リラグルチド、NAcGIP[Lys(37)PAL]およびXenin-25[Lys(13)PAL]で処置された野生型マウスおよびAPP/PS1マウスの大脳皮質(A)および歯状回(B)中のGFAP免疫陽性の全数量化を上に示す。X/XXX/XXXXp<0.05~p<0.0001対すべてのAPP/PS1群、p<0.05、****p<0.0001対APP/PS1生理食塩水、op<0.05対APP/PS1 リラグルチド、+++p<0.001、++++p<0.0001対APP/PS1 Xenin-25[Lys(13)PAL]。データは、群当たり6匹のマウスについての平均値±SEMを表す。
図33】リラグルチド、NAcGIP[Lys(37)PAL]およびXenin-25[Lys(13)で処置された野生型マウスおよびAPP/PS1マウスの歯状回における神経発生を表す。10週の間一日1回、生理食塩水(A)、リラグルチド(B)、NAcGIP[Lys(37)PAL](C)およびXenin-25[Lys(13)PAL](D)で処置された野生型マウスならびに生理食塩水(E)、リラグルチド(F)、NAcGIP[Lys(37)PAL](G)およびXenin-25[Lys(13)PAL](H)を投与されたAPP/PS1マウスの歯状回中のダブルコルチン染色の代表的な画像を上に示す。
図34】Xenin-25[Lys(13)PAL]が野生型マウスおよびAPP/PS1マウスにおいて神経発生を促進することを示すグラフである。10週の間一日1回、生理食塩水、リラグルチド、NAcGIP[Lys(37)PAL]およびXenin-25[Lys(13)PAL]で処置された野生型マウスおよびAPP/PS1マウスの歯状回中のダブルコルチン-陽性細胞数量化を示す。**p<0.01、***p<0.001および****p<0.0001対APP/PS1生理食塩水。ΔΔp<0.01、ΔΔΔp<0.001、ΔΔΔΔp<0.0001対野生型生理食塩水、op<0.05、oop<0.01およびoooop<0.0001対APP/PS1リラグルチド、Ψp<0.05およびΨΨΨΨp<0.0001対APP/PS1 NAcGIP[Lys(37)PAL]。データは、群当たり6匹のマウスについての平均値±SEMを表す。
図35】野生型マウスにおけるシナプス密度を示す代表的な顕微鏡写真である。10週の間一日1回、生理食塩水(A~C)、リラグルチド(D~F)、NAcGIP[Lys(37)PAL]およびXenin-25[Lys(13)PAL](J~L)で処置された野生型マウス脳中のシナプトフィジン染色の代表的な画像である。A、D、GおよびJは、歯状回の多形層、顆粒層および分子層を表す。B、E、HおよびKは、海馬の放線状層、錐体細胞層および多形細胞層を表し、C、F、IおよびLは、大脳皮質の内層および外層を表す。
図36】APP/PS1マウスにおけるシナプス密度を示す代表的な顕微鏡写真である。10週の間一日1回、生理食塩水(A~C)、リラグルチド(D~F)、NAcGIP[Lys(37)PAL]およびXenin-25[Lys(13)PAL](J~L)で処置されたAPP/PS1マウス脳中のシナプトフィジン染色の代表的な画像である。A、D、GおよびJは、歯状回の多形層、顆粒層および分子層を表す。B、E、HおよびKは、海馬の放線状層、錐体細胞層および多形細胞層を表し、C、F、IおよびLは、大脳皮質の内層および外層を表す。
図37】リラグルチド、NAcGIP[Lys(37)PAL]およびXenin-25[Lys(13)PAL]で処置された野生型マウスおよびAPP/PS1マウスの脳中のシナプス密度を示すグラフである。歯状回の多形層(A)、顆粒層(B)と分子層(C)、海馬の放線状層(D)、錐体細胞層(E)と多形細胞層(F)、および大脳皮質の内層(G)と外層(H)におけるシナプトフィジンの光学密度の全数量化を示す。X/XXXXp<0.05~p<0.0001対すべての群のAPP/PS1マウス、p<0.05、**p<0.01、***p<0.001および****p<0.0001対APP/PS1生理食塩水、Λp<0.05およびΛΛp<0.01対野生型Xenin-25[Lys(13)PAL]。データは、群当たり6匹のマウスについての平均値±SEMを表す。
図38】10週間、リラグルチド、NAcGIP[Lys(37)PAL]およびXenin-25[Lys(13)PAL])で処置されたAPP/PS1マウス脳中の可溶性Aβを示すグラフである。10週の間一日1回、生理食塩水、リラグルチド、NAcGIP[Lys(37)PAL]およびXenin-25[Lys(13)PAL])で処置されたAPP/PS1マウス脳由来の、総脳APP(A)、凝集Aβオリゴマー(B)、Aβ1-40(C)、Aβ1-42(D)およびAβ42/40の比率(E)の数量化、総タンパク質含有量に対する正規化を示す。p<0.05、**p<0.01および****p<0.0001対APP/PS1生理食塩水、op<0.05およびoop<0.01対APP/PS1リラグルチド。データは、処置群当たり6匹のマウスについての平均値±SEMを表す。
【発明を実施するための形態】
【0087】
実施例
ここで、本発明の実施形態を非限定例として述べる。
【0088】
材料および方法
動物
C57BI/6背景をもつAPPswe/PS1ΔE9マウスをUlster Universityの動物ユニットで飼育した。ヘテロ接合体オスを地元(Harlan,UK)で購入した野生型C57/BI6メスとともに飼育した。仔マウスを耳パンチし、APP配列(順方向“GAATTCCGACATGACTCAGG”、逆方向“GTTCTGCTGCATCTTGGACA”)に特異的なプライマーでのPCRを用いて遺伝子型を同定した。導入遺伝子を発現しないマウスを野生型対照として使用した。オスマウスをすべての試験で用いた。マウスを個別にケージに入れ、恒温室(温度:21.5±1℃)で、12/12明暗サイクル(08:00時に電灯をつけ、20:00時に消灯)で維持した。飼料と水は、自由に摂取できた。本試験の開始前の2週間、マウスを毎日慣らした。処置開始時に、APP/PS1および野生型マウスは7月齢であった。マウスをランダム化し、一日1回(15:00時に)それらの指定処置、リラグルチド(2.5nm/kg体重)、N-AcGIP(Lys37PAL37)、xenin25(LYs13PAL)または生理食塩水(0.9重量/体積%)を腹腔内(i.p.)に投与した。処置群は、n=12~14であった。すべての実験は、1986年の動物(科学的処置)法に従って、英国内務省によって認可された。
【0089】
ペプチド
N-AcGIP(Lys37PAL)、xenin25(Lys13PAL)およびリラグルチドは、EZ Biolabs(Indiana,USA)から購入した。ペプチドの純度は逆相HPLCによって分析し、次いでマトリックスによって援助されるレーザー脱離/イオン化飛行時間(MALDI-TOF)質量分析法を用いて特徴づけ、純度が>99%であった。ペプチドをポリプロピレンチューブ中で1mg/mLの濃度にultrapure(登録商標)水で再構成しアリコートで凍結して、注射のために必要な用量を新たに調製できるようにした。
【0090】
実験計画および処置
処置開始時に、APP/PS1および野生型マウスは7月齢であった。合計8群になるように、マウスをランダム化し、遺伝子型当たり4処置群に割り当てた。野生型およびAPP/PS1マウスを、8~10週間の間リラグルチド(2.5nmol/kg体重)、NAcGIP[Lys(37)PAL](2.5nmol/kg体重)、Xenin-25[Lys(13)PAL](25nmol/kg体重)または生理食塩水(0.9%重量/体積)のいずれかを一日1回(15:00時に)腹腔内に投与される4群にそれぞれ分けた。処置群は、n=12~14であった。リラグルチド、NAcGIP[Lys(37)PAL]およびXenin-25[Lys(13)PAL]は、EZ Biolabs(Indiana,USA)から購入した。ペプチドの純度は、逆相HPLCによって分析し、次いでマトリックス支援レーザー脱離イオン化-飛行時間型(MALDI-TOF)質量分析法を用いて特徴づけ、純度が>99%であった。ペプチドをポリプロピレンチューブ中で1mg/mLの濃度にultrapure(登録商標)水で再構成しアリコートで凍結して、注射のために必要な用量を新たに調製できるようにした。ペプチドを次いで、10mL/kgの量で投与する前に0.9%NaCl中で調製した。
【0091】
オープンフィールド課題
マウスを、不安と自発運動活性を評価するために、オープンフィールド課題(OFT)にかけた。手短に言えば、マウスを円形アリーナ(直径58cm、高さ31cm)に入れ、5分間自由に探索させておいた。カメラ位置に直接隣接して、アリーナの2m上に配置した60W電球により、アリーナを照らした。コンピュータ化追跡システム(Biosignals,New York,USA)を使用してマウスの動きを記録し、これを用いてOFT動作も分析した。不安のレベルを示すために、毛づくろいイベント、立ち上がりイベントおよび排便を手動で記録した。毛づくろいは、マウスが走るのをやめて自身の毛をなめる、噛む、または掻き始めた行為と定義した。立ち上がりは、マウスが走るのをやめて自身の両前足を床から持ち上げ、後ろ足で立った行為と定義した。排便は、各試験の後でアリーナ内の糞塊の数を計数することにより測定した。経路長、速度および直線性を自発運動活性の表示として、デジタル記録した。マウスを装置に順応させかつ不慣れな環境が引き起こし得る自然のストレスおよび不安を減少させるために、OFTを新規物体認識課題の24時間前に行った。アリーナは、嗅覚キューの集積を妨げるために、各マウスの間をエタノール(70%)で十分に清浄した。
【0092】
新規物体認識課題
9日後(1群)、25日後(2群)、8週間後(3群)または19週間後(4群)に、マウスを新規物体認識課題(ORT)で評価した。この課題は、新規性についての齧歯動物の自然な選好を利用し、およびマウスにおける作業記憶の尺度として使用される。手短に言えば、マウスを、2つの同一の物体;Bluタックを用いて、壁から15cm離してアリーナの床に固定された2つの赤い立方体(幅1.8cm)または2つの白いボール(幅2cm)のいずれか、とともに、最初の馴化段階のためのアリーナに入れた。アリーナを、アリーナの2m上に配置した60W電球で薄暗く照らした。マウスを10分間、見慣れた物体があるアリーナを探索させておいた。マウスの行動を頭上のカメラで記録し、物体の2cm半径内で2つの見慣れた物体を探索して費やされた時間をTrackerソフトウェア(Biosignals,New York,USA)を使用して算出した。マウスを次いで取り出して、それらのホームケージに3時間戻した。インターバル後に、マウスを次いで、馴化段階からの1つの見慣れた物体と1つの新規の物体(赤い立方体または白いボールのいずれか)と共に、試験段階のためにアリーナに戻した。使用された見慣れた物体および新規の物体(左側または右側)の位置をランダム化して、いかなる交絡要因の影響も減らした。これまでの試験では、物体または場所の嗜好性のいずれも赤い立方体および白いボールの使用により明白でないことを示している。再度、マウスを10分間自由に探索させ、それらの行動を記録した。アリーナを、潜在的に混同させる嗅覚キューを取り除くために、各試験の間に70%エタノールで清浄した。データを、習得段階と試験段階の両方で各物体について算出される認識指数(Rl)として表す。RIは、物体AまたはBを探索するのに費やした合計時間を両物体の探索で費やした合計時間で割って、100を掛けたもの(tAまたはtB/(tA+tB)×100)と定義される。
【0093】
モリス水迷路
10日後(1群)、26日後(2群)、8週間後(3群)または19週間後(4群)にマウスをモリス水迷路(MWM)で評価した。迷路は高さ40cm、直径120cmであり、25±1℃で維持される水で満たした。小さな逃避プラットフォーム(10×6.5×21.5cm)を端から25cm、水面下1cmに隠して、象限の1つの中央に配置した。視覚キューは、部屋の壁に配置した。MWMの習得訓練段階は、4日間連続して1日当たり4回の90秒間の試験で構成した。水を満たしたタンクにマウスを入れ、自由に泳がせておいた。各マウスをプールに入れた時点は、全試験にわたりランダム化した。余分の迷路視覚キューを使用して、マウスは、プールの南西の象限の中央の水面下1cmに隠された逃避プラットフォームの位置を学ばなければならなかった。マウスが90秒以内にプラットフォームを探せなかった場合、マウスはそこに誘導され、20秒間そこに留まるように促された。マウスを次いで、試験と試験の間の20分、それらのホームケージに戻した。最終訓練日の24時間後に、単一プローブ試験のために逃避プラットフォームを取り外して、マウスを水に戻した。マウスを90秒間自由に泳がせておき、以前に逃避プラットフォームを含んだ象限に滞在した時間を、作業記憶の機能の表示として測定した。逃避プラットフォームの正確な位置での滞在時間を、空間視力の尺度として記録した。
【0094】
逆転水迷路
15日後(1群)、31日後(2群)、9.5週間後(3群)または20.5週間後(4群)にマウスを、逃避プラットフォームを南西の象限から北西の象限に移動させた、逆転水迷路(RWM)にかけた。この変更は、認知の柔軟性、すなわちプラットフォームの新しい位置を再学習する能力を評価するように設計される。3~4日連続して1日当たり4試験を行い、続いて最終逆転プローブ試験を行った。
【0095】
海馬領域CA1での手術およびLTP(長期増強)記録
長期増強を評価するために、マウスをin vivoでの電気生理学実験のために用いた。すべての実験の間、マウスにウレタン(エチルカルバメート、1.8g/kgを腹腔内に)で麻酔をかけた。頭蓋骨を露出し、直径0.8mmの3つの穴を穿孔した。電極(テフロン被覆タングステン、Bilaney,Kent,United Kingdom)を、記録電極用に正中線の1.5mm後方で1.0mm側方に、および刺激電極用にブレグマの2.0mm後方と正中線の1.5mm側方に挿入した。電極を、皮質と海馬の上層を通して、約10ミリ秒の潜時を有する陰性偏向する興奮性シナプス後電位(EPSP)が出現するまでCA1領域中へゆっくり下げた。興奮性シナプス後場電位(fEPSP)の記録を、Schaffer側枝/交連神経路の刺激に応答して右海馬半球のCA1領域中の放線状層から行った。fEPSPを、トリガー閾値の調節が可能な、コンピュータ処理される刺激および記録ユニット(PowerLab, ADI Instruments)で記録した。トリガーされたユニットは、定電流刺激単離ユニット(Neurolog,United Kingdom)を活性化した。データ収集システムを同時にトリガーして、すべてのイベントを記録した。fEPSP記録のサンプリング速度は、20kHzであった。興奮性を評価し高周波刺激および記録のための適当な電圧を決定するために、増加する電圧への各マウスの応答を2.0Vから最大5Vまで(または最大反応が誘導されるまで)0.25Vの間隔で入力/出力曲線で測定した。刺激電圧を次いで調節して最大fEPSPのおよそ60%を生じさせ、この値でベースラインの記録を測定した。LTPを誘導するための高周波刺激プロトコルは、5ミリ秒(200Hz)の刺激時間間隔と2秒の1連の間の間隔を有する4連の100刺激からなった。このLTP誘導プロトコルは、LTPの飽和を防止するため、したがってLTPの促進を検出することを可能にするために選択された。LTPは、高周波刺激を適用する前に、15分間にわたり記録されたベースラインfEPSP勾配のパーセンテージとして測定された。この値を興奮性シナプス後電位勾配の100%とし、記録したすべての値をこのベースライン値に対して正規化した。高頻度刺激後LTPデータを次いで、対象間要因として処置群および対象内要因として時間を用いる二元配置反復測定分散分析法によって分析した。
【0096】
組織学
動物を、PBS緩衝液に続いて、PBS中の氷冷4%パラホルムアルデヒドで経心的に灌流した。頭脳を摘出し、脳半球を切り離した。片方の半球をプロセシングまで4%のパラホルムアルデヒド(PFA)中で固定し、もう片方を液体窒素中で急速凍結し、今後の分析のために-80℃で保管した。半脳を次いで、凍結時に氷結晶が形成されるのを防止するために、PFAから30%スクロースに移し、少なくとも24時間浸漬した。脳を次いで、凍結スプレー(Envirotech Freezing Spray, Thermoscientific,UK;カタログ番号6769038)で固化し、-25℃に設定したクリオスタット(Leica Microsystems, Milton Keynes,UK)内のホルダーに入れた。脳を次いで、Leicaクリオスタットを用いて、-2~-3ブレグマの深さで40μmの冠状切片に切断し、試料収集を、海馬の出現(ブレグマまで-0.94μm)で開始しブレグマに対して約3.28μmまで行った。立体解析学的目的のために、保持する最初の切片をランダムに選択し、24ウェルプレートに入れ、7切片おきに1切片を順に収集し、各10~13切片を含む7組が各マウス脳から収集されるようにした。必要になるまで、プレートを―20℃で保管した。
【0097】
立体解析学的規則に従って切片を選択し、第1の切片をランダムに、その後6切片おきに取った。β-アミロイドプラークについて、およびコンゴーレッド親和性の高密度コアアミロイドプラークについて染色を行った。シナプスの数を決定するために、シナプトフィジンについての染色、および神経発生の尺度として、未熟ニューロンのマーカーであるダブルコルチン(DCX)についての染色も行った。アストロサイトのマーカーであるGFAP、ミクログリアのマーカーであるIba1、酸化ストレスのマーカーである8-オキソグアニン、IRS-1 pSer616、およびシナプス密度を決定するために使用したシナプトフィジンについて染色を行った。内因性ペルオキシダーゼ活性をクエンチするためにすべての切片を0.08%~5%のH2O2中でインキュベートし、0.01%~0.03%のTritonXを使用して透過処理した。
【0098】
抗原認識を強化するために、Iba1プロトコルは、0.05Mのクエン酸三ナトリウム(pH9)中90℃で30分間、切片のインキュベーションを必要とした。非特異的結合を次いで5%~10%正常血清を用いてブロックしてから、マウス、抗GFAP(1:250、0.3%Triton X含有PBS中、Merck Millipore, Feltham,UK;カタログ番号MAB3402)ポリクローナル、ウサギ抗Iba1(2%ヤギ血清と0.3%Triton X含有PBS中、Wako Chemicals, Neuss, Germany;カタログ番号019-19791)、ポリクローナル、ウサギ抗Aβ抗体(1:200、TBS中、Invitrogen, Paisley,UK;カタログ番号71-5800)、ヤギ抗マウスダブルコルチン(1:200、2%ウサギ血清含有PBS中、Santa Cruz Biotechnology Inc. Dallas,Texas,USA;カタログ番号Sc-8066)またはシナプトフィジン(1:200、Abcam, Cambridge,UK;カタログ番号ab7837)と4℃で終夜インキュベートした。非特異的抗体結合を防止するために切片を5%正常血清中でブロックしてから、切片をウサギポリクロナール抗アミロイドβペプチド(1:250、Invitrogen, UK, 71-5800)またはヤギポリクローナル抗ダブルコルチン(1:200、Santacruz, USA, sc-710)、またはウサギ抗シナプトフィジン(1:200、Abeam, Cambridge, MA, 7837-500)とインキュベートした。4℃での終夜のインキュベ-ション後、切片をそれぞれの二次抗体中でインキュベートした。翌日、切片をそれぞれの二次抗体とインキュベートし、Vectastain EliteとSG基質(Vectamount AQ, Vector Laboratories Ltd, Peterborough,UK;カタログ番号H5501)を用いて可視化を行った。高密度コアアミロイドプラークを、コンゴーレッドを使用して検出した。切片をPBSで洗浄し、次いで塩処理したスライドに乗せ、風乾させ、蒸留水に30秒間浸漬し次いで飽和塩化ナトリウム(NaCl)溶液に20分間浸漬した。スライドの付加の前に、水酸化ナトリウム(NaOH)を飽和塩化ナトリウムに加えた。スライドを次いでNaCl溶液から、飽和NaCl溶液中で希釈した0.2%アルカリ化コンゴーレッド(Sigma Aldrich, St Louis,Mo,USA;カタログ番号60910)に30分間移した。スライドを次いで、段階的エタノール脱水し、キシレン中での5分間の浸漬を3回行ってから、永久封入剤Vectamount(Vector laboratories, Burlingame, CA;カタログ番号H-5000)を使用してカバースライドを乗せた。染色した切片の画像を、Zeiss Axioo顕微鏡(AxioスコープA1、Zeiss,Germany)を使用して取得し、各画像(切片当たり2画像、マウス当たり約8~10画像、計16~20画像)中の染色面積パーセンテージを、ImageJ(ImageJ, U.S. National Institutes of Health, Bethesda,Maryland, USA)内の複数閾値プラグインを使用して定量化した。染色面積パーセンテージの分析を、OD(光学濃度)の分析を行ったシナプトフィジン以外の、すべてのマーカーについて行った。画像をグレイスケールに変換し、閾値を設定し、陽染された面積の平均パーセンテージを各脳について算出した。すべての免疫組織化学分析を盲検法で行い、それによりコードは本試験に関与しない同僚によって顕微鏡スライドに適用された。コードは分析の完了時に初めて明らかにされた。
【0099】
ヒトAPP ELISA脳抽出
10mM Tris(pH7.4)、100mM NaCI、1mM EDTA、1mM EGTA、1mM NaF、20mM Na4P2O7、2mM Na3VO4、1%Triton X、10%グリセロール、0.1%SDS、0.5%デオキシコール酸で構成される細胞抽出緩衝液(Invitrogen, Camarillo,CA,USA;カタログ番号FNN0011)に、5mL当たり250μLのプロテアーゼ阻害剤混合物(Sigma-Aldrich, St Louis,Mo,USA;カタログ番号P8340)を、使用直前に補充した。液体窒素下でホモジナイズされた脳組織100mg当たり4mLの細胞抽出緩衝液を加えた。試料を氷上で30分間溶解し、10分間隔でボルテックスしてから、4℃で10分間13,000rpmにて遠心した。生じた上清を新たなエッペンドルフに等分し、直後のAPPレベルの分析のために氷上で静置した。
【0100】
ヒトAPP ELISA脳抽出
10mM Tris(pH7.4)、100mM NaCI、1mM EDTA、1mM EGTA、1mM NaF、20mM Na4P2O7、2mM Na3VO4、1%Triton X、10%グリセロール、0.1%SDS、0.5%デオキシコール酸で構成される細胞抽出緩衝液(Invitrogen, Camarillo,CA,USA;カタログ番号FNN0011)に、5mL当たり250μLのプロテアーゼ阻害剤混合物(Sigma-Aldrich, St Louis,Mo,USA;カタログ番号P8340)を、使用直前に補充した。液体窒素下でホモジナイズされた脳組織100mg当たり4mLの細胞抽出緩衝液を加えた。試料を氷上で30分間溶解し、10分間隔でボルテックスしてから、4℃で10分間13,000rpmにて遠心した。生じた上清を新たなエッペンドルフに等分し、直後のAPPレベルの分析のために氷上で静置した。
【0101】
凝集AβオリゴマーサンドイッチELISA
各試験試料を、凝集Aβ ELISAキット(Invitrogen, Camarillo,CA,USA;カタログ番号KHB3491)により供給される標準希釈緩衝液中で1:10に希釈した。凝集Aβ標準液は、標準希釈緩衝液で希釈して、5.7ng/mL~0.0195ng/mLで、ヒト凝集Aβ標準溶液(Invitrogen, Camarillo,CA,USA;カタログ番号KHB3491)から二つ組で調製した。標準試料および試験試料(100μL)を、96ウェルプレート(Invitrogen, Camarillo,CA,USA;カタログ番号KHB3491)を使用して、AβのN末端に特異的なモノクローナル抗体で被覆したウェル中にピペットで移した。色素原ブランクとして最初の2つのウェルを空のままにし、一方100μLの標準希釈緩衝液をゼロウェルに加えた。ウェルを接着プレートカバーで覆い、試料を室温で2時間インキュベートした。Multiwash III Tricontinent洗浄機(Tricontinent, Grass Valley,CA,USA)を使用して、ウェルを事前に蒸留水で1:25に希釈した洗浄緩衝液(Invitrogen, Camarillo,CA, USA;カタログ番号KHB3491)で4回洗浄した。洗浄後、100μLのビオチン化検出抗体(Invitrogen, Camarillo,CA,USA;カタログ番号KHB3491)を色素原ブランクウェル以外の各ウェルに加え、室温で1時間インキュベートした。洗浄緩衝液で4回洗浄した後、色素原ブランクウェル以外のウェルを、100μLの西洋ワサビペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジン(SAV-HRP)(Invitrogen, Camarillo,CA,USA;カタログ番号KHB3491)と室温で30分間インキュベートした。過剰SAV-HRPを除去し、ウェルを洗浄緩衝液で4回洗浄した。各ウェルを次いで100μLの安定化色素原(Invitrogen, Camarillo,CA,USA;カタログ番号KHB3491)と、青色が発色するまで暗所で室温にて20~30分間インキュベートした。最終的に、100μLの停止液(Invitrogen, Camarillo,CA,USA;カタログ番号KHB3491)を加え、溶液中の青色が黄色に変化するのを誘導した。プレートを、停止液を加えて直ちに分光光度計(Flexstation 3 Benchtop multimode microplate reader, Molecular Devices Inc, Sunnyvale,CA,USA)に挿入した。各ウェルの吸光度を、色素原ブランクに対してプレートリーダーをブランクにして、450nmで測定した。標準の吸光度測定値を標準濃度に対してプロットし、作成したヒト凝集Aβ標準曲線を用いて各試料中の凝集Aβ濃度を決定した。各試験試料の凝集Aβ濃度を次いで、Bradfordアッセイで決定される、対応する脳タンパク質濃度で割った。
【0102】
Aβー1-40およびAβ1-42ELISA脳抽出
すでに液体窒素下でホモジナイズされた脳組織を、8容量の氷冷グアニジン緩衝液(5.0MグアニジンHCI(Sigma-Aldrich, St Louis,Mo,USA;カタログ番号G3272)/50mM Tris HCI(Sigma-Aldrich, St Louis,Mo,USA;カタログ番号T5941、pH8.0)と4℃で終夜混合した。ホモジネートを次いでさらに、5mL当たり250μLのプロテアーゼ阻害剤混合物(Sigma-Aldrich, St Louis,Mo USA;カタログ番号P8340)を補充した、氷冷反応緩衝液BSAT-DPBS(5%BSAと0.03%Tween 20(Sigma-Aldrich, St Louis,Mo,USA;カタログ番号P9416)を含むダルベッコPBS(Sigma-Aldrich, St Louis,Mo,USA;カタログ番号D1408))で希釈した(1:10)。試料を次いで、4℃で20分間遠心分離した。上清を新たなエッペンドルフに移し、使用まで氷上で保管した。
【0103】
Aβ1-40サンドイッチELISA
各試験試料を、Aβ1-40ELISAキット(Invitrogen, Camarillo,CA,USA;カタログ番号KHB3481)により供給される標準希釈緩衝液中で1:3に希釈した。Aβ1ー40標準液は、標準希釈緩衝液で希釈して、0.5ng/mL~0.00781ng/mLで、ヒトAβ1-40標準溶液(Invitrogen, Camarillo,CA,USA;カタログ番号KHB3481)から二つ組で調製した。標準試料および試験試料(50μL)を、96ウェルプレート(Invitrogen, Camarillo,CA,USA;カタログ番号KHB3481)を使用して、Aβ1-40のN末端に特異的なモノクローナル抗体で被覆したウェルにピペットで移した。色素原ブランクとして最初の2つのウェルを空のままにし、一方50μLの標準希釈緩衝液をゼロウェルに加えた。1-40Aβ配列のC末端を認識するウサギ検出抗体(50μL)を次いで、色素原ブランクを除いて、各ウェルに加えた。ウェルを次いで接着プレートカバーで覆い、試料を振盪しながら室温で3時間インキュベートした。Multiwash III Tricontinent洗浄機(Tricontinent, Grass Valley,CA,USA)を使用して、ウェルを事前に蒸留水で1:25に希釈した洗浄緩衝液(Invitrogen, Camarillo,CA,USA;カタログ番号KHB3481)で4回洗浄した。洗浄後、100μLの抗ウサギIgG HRPを、色素原ブランクを除いて、各ウェルに加えた。ウェルをプレートカバーで覆い、試料を室温で30分間インキュベートした。過剰抗ウサギIgG HRPを除去し、ウェルを洗浄緩衝液で4回洗浄した。各ウェルを次いで100μLの安定化色素原(Invitrogen, Camarillo,CA,USA;カタログ番号KHB3481)と、青色が発色するまで暗所で室温にて20~30分間インキュベートした。最終的に、100μLの停止液(Invitrogen, Camarillo,CA,USA;カタログ番号KHB3481)を加え、溶液中の青色が黄色に変化するのを誘導した。プレートを、停止液を加えて直ちに分光光度計(Flexstation 3 Benchtop multimode microplate reader, Molecular Devices Inc, Sunnyvale,CA,USA)に挿入した。各ウェルの吸光度を、色素原ブランクに対してプレートリーダーをブランクにして、450nmで測定した。標準の吸光度測定値を標準濃度に対してプロットし、作成したヒトAβ1-40標準曲線を用いて各試料中のAβ1-40濃度を決定した。各試験試料のAβ1-40濃度を次いで、Bradfordアッセイで決定される、対応する脳タンパク質濃度で割った。
【0104】
Aβ 1-42サンドイッチELISA
各試験試料を、Aβ1-42ELISAキット(Invitrogen, Camarillo,CA,USA;カタログ番号KHB3441)により供給される標準希釈緩衝液中で1:3に希釈した。Aβ1-42標準液は、標準希釈緩衝液で希釈して、1ng/mL~0.01563ng/mLで、ヒトAβ1-42標準溶液(Invitrogen, Camarillo,CA,USA;カタログ番号KHB3441)から二つ組で調製した。標準試料および試験試料(50μL)を、96ウェルプレート(Invitrogen, Camarillo,CA,USA;カタログ番号KHB3441)を使用して、AβのN末端に特異的なモノクローナル抗体で被覆したウェルにピペットで移した。色素原ブランクとして最初の2つのウェルを空のままにし、一方50μLの標準希釈緩衝液をゼロウェルに加えた。1-42Aβ配列のC末端を認識するウサギ検出抗体(50μL)を次いで、色素原ブランクを除いて、各ウェルに加えた。ウェルを次いで接着プレートカバーで覆い、試料を振盪しながら室温で3時間インキュベートした。Multiwash III Tricontinent洗浄機(Tricontinent, Grass Valley,CA,USA)を使用して、ウェルを事前に蒸留水で1:25に希釈した洗浄緩衝液(Invitrogen, Camarillo, CA, USA;カタログ番号KHB3441)で4回洗浄した。洗浄後、100μLの抗ウサギIgG HRPを、色素原ブランクを除いて、各ウェルに加えた。ウェルをプレートカバーで覆い、試料を室温で30分間インキュベートした。過剰抗ウサギIgG HRPを除去し、ウェルを洗浄緩衝液で4回洗浄した。各ウェルを次いで100μLの安定化色素原(Invitrogen, Camarillo,CA,USA;カタログ番号KHB3441)と、青色が発色するまで暗所で室温にて20~30分間インキュベートした。最終的に、100μLの停止液(Invitrogen, Camarillo,CA,USA;カタログ番号KHB3441)を加え、溶液中の青色が黄色に変化するのを誘導した。プレートを、停止液を加えて直ちに分光光度計(Flexstation 3 Benchtop multimode microplate reader, Molecular Devices Inc, Sunnyvale,CA,USA)に挿入した。各ウェルの吸光度を、色素原ブランクに対してプレートリーダーをブランクにして、450nmで測定した。標準の吸光度測定値を標準濃度に対してプロットし、作成したヒトAβ1-42標準曲線を用いて各試料中のAβ1-42濃度を決定した。各試験試料のAβ1-42濃度を次いで、Bradfordアッセイで決定される、対応する脳タンパク質濃度で割った。
【0105】
統計
データを、確率のレベルを95%に設定し、プログラムPrism(Graphpad software Inc.,USA)を使用して分析した。結果を平均値±SEMとして表す。データを、一元配置または二元配置分散分析に続いてポストホック検定またはスチューデントt検定によって分析した。
【0106】
実施例1
APP/PS1マウスにおける初期の認知機能低下に対する本発明のペプチド類似体の効果を確立するin vivo試験
【0107】
APP/PS1マウスに生理食塩水、リラグルチドまたは本発明のペプチド類似体(Xenin-25[Lys(13)PAL])のいずれかを一日1回、10週間注射した。Xenin-25[Lys(13)PAL]およびリラグルチドを、シナプス密度のマーカーであるシナプトフィジン(前シナプス小胞タンパク質)のレベルを維持するそれらの能力について評価した。シナプス消失は、認知機能低下と関連する。したがって、シナプスを維持する能力は神経保護特性を示し、シナプス統合性の増加は認知機能の改善と関連する。
【0108】
図1(A~F)に示すように、シナプトフィジンの発現レベルの数量化は、野生型マウスのすべての群が生理食塩水、リラグルチドまたはXenin-25[Lys(13)PAL]で処置されたAPP/PS1マウスよりも海馬での発現レベルが有意に高いことを示している。野生型マウスのすべての群においてシナプトフィジン染色は、生理食塩水で処置されたAPP/PS1マウスの皮質内層(G)と皮質外層(H)よりも有意に大きかった。リラグルチドおよびXenin-25[Lys(13)PAL]で処置されたAPP/PS1マウスにおけるシナプトフィジン染色レベルは、皮質内層(G)において野生型マウスのすべての群と同等であったが、染色レベルは、皮質外層(H)においてXenin-25[Lys(13)PAL]で処置された野生型マウスと比較して、リラグルチド(p<0.01)およびXenin-25[Lys(13)PAL]で処置されたAPP/PS1群において有意に減少された。
【0109】
リラグルチドで処置されたAPP/PS1マウスは、生理食塩水で処置されたAPP/PS1マウスよりも多形層(A、p<0.001)、分子層(C、p<0.05)、錐体細胞層(E、p<0.0001)および皮質内層(G、p<0.0001)と皮質外層(H、p<0.0001)においてシナプトフィジンレベルが有意に高かった。Xenin-25[Lys(13)PAL]で処置されたAPP/PS1マウスは、生理食塩水で処置されたAPP/PS1マウスよりも多形層(A、p<0.01)、錐体細胞層(E、p<0.01)、皮質内層(G、p<0.0001)および皮質外層(H、p<0.0001)においてシナプトフィジンレベルが有意に高く、シナプス数に対するリラグルチドおよびXenin-25[Lys(13)PAL]の両方の保護能力を示している。シナプス消失は、アルツハイマー病の進行と関連する。
【0110】
これらのデータは、Xenin-25[Lys(13)PAL]およびリラグルチドが海馬と皮質(両方とも、学習および記憶との関連で重要な脳領域である)においてシナプスを維持することを示し、神経障害を治療する上でのそれらの使用をさらに実証する。
【0111】
実施例2
APP/PS1マウスにおける本発明のペプチド類似体による処置に続くシナプス密度の分析
APP/PS1マウスに生理食塩水、リラグルチドおよびNAcGIP[Lys(37)PAL]を一日1回、10週間注射し、NAcGIP[Lys(37)PAL]およびリラグルチドを、シナプトフィジンのレベルを維持するそれらの能力について評価した。
【0112】
図2に示すように、シナプトフィジンレベルは処置にかかわりなく野生型マウスにおいて同等であることが観察されたが、シナプス密度はAPP/PS1マウスにおいてリラグルチドおよびNAcGIP[Lys(37)PAL]の両処置によって部分的に維持されており、両薬物による処置がシナプス消失を防止することに影響を与え得ることを示唆している。
【0113】
具体的には、NAcGIP[Lys(37)PAL]で処置されたAPP/PS1マウスは、生理食塩水で処置されたAPP/PS1マウスよりも多形層(A、p<0.0001)、錐体細胞層(E、p<0.0001)、多形細胞層(F、p<0.05)および皮質内層(G、p<0.0001)と皮質外層(H、p<0.0001)において発現レベルが有意に高く、シナプス数に対するNAcGIP[Lys(37)PAL]の保護能力を示している。効果は、リラグルチドで処置されたAPP/PS1マウスにおいて観察された効果と同等だった。学習および記憶に関連して重要な脳領域である海馬および皮質におけるNAcGIP[Lys(37)PAL]およびリラグルチドによるシナプスの維持は、神経障害を治療する上での使用をさらに実証する。
【0114】
実施例3
ADの重要なバイオマーカーに対する本発明のペプチド類似体の効果
βアミロイドおよび高密度コアコンゴーレッド親和性プラーク負荷ならびに神経新生と炎症に対し、リラグルチドおよび生理食塩水対照と比較してXenin-25[Lys(13)PAL]の慢性効果を評価するためにAPP/PS1マウスモデルにおいて試験を行った。組織学的マーカーを10週間の処置の後に分析した。
【0115】
図3(A~D)に示すように、βアミロイドプラーク負荷は、生理食塩水で処置した対照と比較して、Xenin-25[Lys(13)PAL]で処置したマウスにおいて30%減少した(p<0.0001)。βアミロイドにおける減少と一致して、Xenin-25[Lys(13)PAL]で処置されたAPP/PS1マウスは、生理食塩水で処置された対照と比較して、高密度コアコンゴーレッド親和性プラーク負荷において有意に大きな減少(55%、p<0.0001)を示した。高密度コアプラークにおけるXenin-25[Lys(13)PAL]に誘導されたこの減少は、リラグルチド処置によって誘導された36%減少よりも有意に大きかった(p<0.001、図3E~Hを参照されたい)。そのような調査結果は、本発明のペプチド類似体が、神経細胞の消失および進行したアルツハイマー病の症状に密接に関連する、高密度コアプラークの形成を減少させるその能力においてリラグルチドより優れていることを示唆している。
【0116】
炎症に対するその効果を評価すると、Xenin-25[Lys(13)PAL]のIBA-1レベルは、生理食塩水で処置されたAPP/PS1マウスと同等だった(図3I~Lを参照されたい)。
【0117】
βアミロイドおよび高密度コアプラーク負荷に対するその効果に加えて、Xenin-25[Lys(13)PAL]は、APP/PS1マウスにおいて神経発生を有意に増加させる能力を示した(図3M~P)。手短に言うと、Xenin-25[Lys(13)PAL]で処置されたAPP/PS1マウスは、生理食塩水で処置されたAPP/PS1マウスよりも122%多く(p<0.0001)ダブルコルチン陽性ニューロンを有し、およびリラグルチドで処置されたマウスよりも有意に多く(p<0.01)、本発明のペプチド類似体がアルツハイマー病のAPP/PS1モデルにおいてリラグルチドよりも効果的に神経発生を刺激することを示す。
【0118】
実施例4
ADの重要なバイマーカーに対する本発明のペプチド類似体の効果
βアミロイドおよび高密度コアコンゴーレッド親和性プラーク負荷、炎症と神経新生に対し、リラグルチドおよび生理食塩水対照と比較してNAcGIP[Lys(37)PAL]の効果を評価するためにAPP/PS1マウスモデルにおいて試験を行った。
【0119】
図4(A~D)に示すように、βアミロイドプラーク負荷は、生理食塩水で処置された対照と比較するとNAcGIP[Lys(37)PAL](27%の減少)によって有意に減少した(p<0.0001)。βアミロイドプラーク負荷における減少と一致して、NAcGIP[Lys(37)PAL]で処置されたAPP/PS1マウスも、高密度コアコンゴーレッド親和性プラーク負荷において有意な減少(45%)を示した(p<0.0001、図4E~H)。βアミロイドプラーク負荷における有意差は、リラグルチドとNAcGIP[Lys(37)PAL]で処置されたマウスの間で観察されなかった。
【0120】
炎症に対するその効果を評価すると、NAcGIP(Lys37PAL)で処置されたマウスのIBA-1レベルは、生理食塩水で処置されたAPP/PS1マウスと同等だった(図4I~Lを参照されたい)。
【0121】
加えて、NAcGIP[Lys(37)PAL]は、処置されたAPP/PS1マウスにおいて神経発生を部分的に回復させる能力を示した(図4M~P)。NAcGIP[Lys(37)PAL]で処置されたAPP/PS1マウスは、生理食塩水で処置されたAPP/PS1マウスよりもダブルコルチン陽性ニューロンが有意に多かった(+46%)(p<0.05)。リラグルチドおよび生理食塩水で処置されたAPP/PS1マウスと、NAcGIP[Lys(37)PAL]で処置されたマウスとの間に有意差はなかった。各薬物で処置された群を生理食塩水で処置されたAPP/PS1マウスと比較するt検定において、リラグルチド(p<0.05)で処置されたマウスおよびNAcGIP[Lys(37)PAL]で処置されたマウス(p<0.01)の双方は、それらの無処置APP/PS1対照同腹仔よりもダブルコルチンニューロンが有意に多く、両薬物が神経発生を増加させることを示唆している。
【0122】
実施例5
本発明のペプチド類似体は、可溶性オリゴマーのレベルを減少させる
図5に示すように、Xenin-25[Lys(13)PAL]およびリラグルチドは、APP/PS1マウスにおいて総APPレベル(5A)またはAβ1-42レベル(5D)を変化させなかった。リラグルチド処置は、生理食塩水およびXenin-25[Lys(13)PAL]で処置されたAPP/PS1マウスと比較して増加されたAβ1-40レベル(5C)および有意に減少されたAβ42/40の比率(5E)と関連した。
【0123】
Xenin-25[Lys(13)PAL]処置は、生理食塩水で処置されたAPP/PS1マウスと比較して、凝集βアミロイドオリゴマーにおいて有意に大きな80%減少をもたらした(5B、p<0.001)。これは、対照と比較して、リラグルチドで処置されたマウスで観察された54%の減少よりも大きかった(5B、p<0.01)。そのような有意な減少は、in vivoでニューロンコミュニケーションを改善すると予想される。
【0124】
実施例6
本発明のペプチド類似体は、可溶性オリゴマーのレベルを減少させる
図6に示すように、NAcGIP[Lys(37)PAL]およびリラグルチドは、APP/PS1マウスにおいて総APP(6A)もしくはAβ1-40(6C)もしくはAβ1-42のレベルを有意に変化させなかった。リラグルチド処置は、生理食塩水およびNAcGIP[Lys(37)PAL]で処置されたAPP/PS1マウスと比較して、Aβ42/40の比率(6E)の有意な減少と関連した。NAcGIP[Lys(37)PAL]処置は、生理食塩水で処置されたAPP/PS1マウスと比較して、凝集βアミロイドオリゴマーにおいて有意に大きな78%減少をもたらした(6B、p<0.001)。これは、対照と比較してリラグルチドで処置されたマウスで観察された54%の減少よりも大きかった(6B、p<0.01)。βアミロイドオリゴマーは学習および記憶に対して有害効果を有すると報告されているため、観察された減少は物体認識課題における能力の改善を説明できる(実施例7および図7を参照されたい)。
【0125】
実施例7
用量反応試験
オスC57BI/6マウスは、Ulster Universityで飼育され、処置開始の前に、8~10週齢であった。マウスを個別にケージに入れ、恒温室(温度:21.5±1℃)で、12/12明暗サイクル(08:00時に電灯をつけ、20:00時に消灯)で維持した。飼料と水は、自由に摂取できた。マウスに、リラグルチド、N-AcGIP[Lys(37)PAL]またはXenin-25[Lys(13)PAL]を0.25nmol/kg、2.5nmol/kg、および25nmol/kgの3用量で注射した。別の群には、対照として生理食塩水を注射した。マウスは、それぞれの処置注射を一日1回(15:00時に)、21日間施されてから、in vivoでのLTPを受けた。すべての実験は、1986年の動物(科学的処置)法にしたがって、英国内務省によって認可された。
【0126】
弱い刺激プロトコルを使用して、in vivoで海馬におけるLTPの誘導能を試験すると、生理食塩水で処置された野生型マウスは弱いLTPを誘導した(図7A~Cを参照されたい)。
【0127】
高頻度刺激後ベースラインを分析すると、リラグルチド処置は低濃度でのLTPの増強と関連した(図7A)。二元配置分散分析において、時間の有意な影響はなかった(p>0.999)。しかし、0.25nmol/kgでのペプチド類似体投与は、生理食塩水で処置されたマウスと比較して、LTPの誘導の増加と関連した(P=0.0068)。2.5nmol/kgでは、経時的効果はなかった(p>0.999)が、しかしペプチド類似体投与と関連するLTPにおいて有意に大きな増加があった(p<0.0001)。25nmol/kgでは、時間の有意な影響はなかった(p>0.999)。しかし、ペプチド類似体処置は、LTPの誘導能を有意に増加させた(p=0.001)。
【0128】
高周波刺激後ベースラインを分析すると、NAcGIP[Lys(37)PAL]処置は、高濃度でLTPの増強と関連した(図7B)。二元配置分散分析において、時間の有意な影響はなかった(p=0.824)。しかし、0.25nmol/kgでの本発明のペプチド類似体の投与は、生理食塩水で処置されたマウスと比較して、LTPの誘導の減少と関連した(P<0.0001)。2.5nmol/kgおよび25nmol/kgでは、時間の有意な影響はなかった(p>0.999)。しかし、ペプチド類似体処置は、両濃度でLTPの誘導能を有意に増加させ(P=0.0001)、2.5nmol/kgの用量でわずかに優れた効果が観察された。
【0129】
高周波刺激後ベースラインを分析すると、Xenin-25[Lys(13)PAL処置は、高濃度でLTPの増強と関連した(図7C)。二元配置分散分析において、生理食塩水で処置されたマウスと比較して、時間の有意な影響はなく(p>0.999)または0.25nmol/kgでのペプチド類似体の有意な効果はなかった(p=0.395)。2.5nmol/kgでは、時間の有意な影響はなかった(p>0.999)。しかし、本発明のペプチド類似体による処置は、LTPの誘導能を有意に増加させ(P=0.0008)、一方で25nmol/kgの用量による処置は有意な経時的効果(p=0.0055)、およびペプチド類似体(p<0.0001)と関連した。
【0130】
実施例8
運動機能および不安に対する処置の急性効果
自発運動行動および不安に対する薬物の急性効果を評価するために、野生型マウスおよびAPP/PS1マウスに、オープンフィールドアリーナに導入される30分前に、生理食塩水、リラグルチド、NAcGIP[Lys(37)PAL]またはXenin-25[Lys(13)PAL]を注射した。経路長(図8A)、ラインクロス(図8B)および速度(図8C)は、処置群と無処置群との間でほとんど同様であったが、APP/PS1 Xenin-25[Lys(13)PAL]で処置されたマウスは例外的に、生理食塩水で処置された野生型マウスと比較して経路長、ラインクロスおよび速度で有意な増加を示した(p<0.05)。Xenin-25[Lys(13)PAL]で処置されたAPP/PS1マウスも、リラグルチドで処置されたAPP/PS1マウスよりラインクロスが有意に多かった(p<0.05)。リラグルチドで処置されたAPP/PS1マウスの立ち上がり行動(図8D)は、リラグルチドで処置された野生型群を除くすべてと比較して、有意に減少した(p<0.05~p<0.0001)。さらに、リラグルチドで処置された野生型マウスにおける立ち上がり行動は、生理食塩水で処置されたAPP/PS1群と比較して、有意に減少した(p<0.05)。毛づくろいイベント数(図8E)および5分間に排出された糞塊数(図8F)は、遺伝子型または処置群にわたり有意差がなかった。しかし、アリーナ中央での滞在時間は、生理食塩水で処置されたAPP/PS1マウスと比較して、リラグルチドで処置されたAPP/PS1マウスでは有意に減少しており(p<0.05)、APP/PS1モデルにおける急性リラグルチド投与後の不安レベルの増加を示唆する(図8G)。
【0131】
実施例9
認識記憶に対する処置の急性効果
図9に示すように、場所選好は野生型(A)またはAPP/PS1マウス(B)のいずれでも明瞭でなかった。場所選好は、物体認識課題の習得段階中の、同じ物体の探索で費やした時間に基づいて算出される。場所選好の評価によって、物体に対する選好が装置内のそれらの位置によって影響を受けることを除外できる。生理食塩水、リラグルチド、NAcGIP[Lys(37)PAL]およびXenin-25[Lys(13)PAL]の急性投与に応答する物体認識記憶を、図10に示す。野生型マウスのすべての群(図10A)は、完全な認識記憶を示し、見慣れた物体よりも新規の物体を優先的に探索した(p<0.05~p<0.0001)。対照的に、APP/PS1群(図10B)のいずれも新規物体と見慣れた物体とを識別できず、APP/PS1モデルにおいて処置開示時点で明らかに認識記憶が損なわれていることを示している。
【0132】
実施例10
空間学習および記憶に対する処置の慢性効果
モリス水迷路訓練を、8週間の処置の後に開始した。動物は、行動に関する試験の間、処置を続けて受けた。動作に対する急性薬物影響の可能性を排除するために、訓練は毎日09:00時に始まり、薬物は15:00時に投与された。モリス水迷路課題の習得段階の間に、動物は4日連続して1日当たり4試験を完了した。野生型マウスの平均の一日の動作を図11に示す。二元配置反復測定分散分析は、生理食塩水、リラグルチド、NAcGIP[Lys(37)PAL]またはXenin-25[Lys(13)PAL]で処置された野生型マウスにおいて習得段階で有意差がないことを示した。逃避潜時(図11A)は予想どおり、経時的に有意に低下した(p<0.0001)が、しかし薬物は、観察された逃避潜時に影響を及ぼさなかった(p=0.4463)。逃避潜時に一致して、経路長(図11B)は野生型マウスの処置群間で有意差がなかった(p=0.24)が、しかし経路長は経時的に低下した(p<0.0001)。速度(図11C)は、薬物処置によって有意に変わらなかった(p=0.71)が、しかし速度は経時的に不定であった(p=0.0022)。
【0133】
空間記憶を、最終訓練セッションの24時間後に、5日目にプローブ試験で評価した(図12)。生理食塩水で処置された野生型マウスにおいて、一元配置分散分析は、象限間に有意差があることを示した(p<0.0001)。ダネットの多重比較事後検定は、生理食塩水で処置された野生型マウスが反時計回り象限(CCW;p<0.001)、向かい側の象限(OPP;p<0.0001)および時計回り象限(CW;p<0.05)よりも目標象限での滞在時間が有意に長かったことを示し、完全な空間記憶を示す。リラグルチドで処置された野生型マウスは、象限間で有意差を示した(p=0.0018)。事後分析は、リラグルチドで処置されたマウスがCCW象限(p<0.05)、OPP象限(p<0.01)およびCW象限(p<0.01)よりも有意に長い時間を目標象限で滞在したことを示した。NAcGIP[Lys(37)PAL]で処置された野生型マウスは、象限間で有意差を示した(p=0.0008)。ダネットの多重比較事後検定は、NAcGIP[Lys(37)PAL]で処置された野生型マウスがCCW象限(p<0.01)、OPP象限(p<0.05)およびCW象限(p<0.001)よりも有意に長い時間、目標象限に滞在したことを示した。Xenin-25[Lys(13)PAL]で処置された野生型のマウスも、象限間で有意差を示した(p=0.0005)。ダネットの事後検定は、Xenin-25[Lys(13)PAL]で処置された野生型マウスがCCW象限(p<0.05)、OPP象限(p<0.001)およびCW象限(p<0.01)よりも有意に長い時間、目標象限に滞在したことを示した。合わせてこれは、モリス水迷路における野生型マウスの空間記憶が、リラグルチド、NAcGIP[Lys(37)PAL]またはXenin-25[Lys(13)PAL]での長期処置によって影響を受けないことを示している。
【0134】
空間視力を、訓練の間に逃避プラットフォームが位置していた正確な位置での遊泳に費やされた時間の長さを測定することによって評価した(図13)。野生型処置群の間で有意差は観察されなかった。
【0135】
モリス水迷路課題の習得段階でのAPP/PS1マウスの平均の一日の動作を図14に示す。全体的な二元配置反復測定分散分析は、APP/PS1マウスにおいて逃避潜時(図14A)が薬物治療によって有意に影響を受け(p=0.0280)、経時的に有意に減少する(p<0.0001)ことを示した。テューキーの多重比較検定は、NAcGIP[Lys(37)PAL]で処置されたAPP/PS1マウスまたはXenin-25[Lys(13)PAL]で処置されたマウスにおいて観察される相違はなく、生理食塩水で処置された群と、リラグルチドで処置された群との間の逃避潜時における全体的な相違(p<0.05)を強調した。全体的な二元配置反復測定分散分析は、経路長が薬物(p=0.0252)および時間(p<0.0001)によって有意に影響を受けたことを示した。テューキーの多重比較事後検定は、Xenin-25[Lys(13)PAL]で処置されたAPP/PS1マウス全体と比較すると、経路長がリラグルチドで処置されたAPP/PS1マウスにおいて有意に減少したことを示した(図14B、p<0.05)。遊泳速度の分析に関して、全体的な二元配置反復測定分散分析は、薬物処置(p=0.0277)および時間(p=0.0008)がAPP/PS1マウスにおいて有意に影響したことを示した。テューキーの多重比較検定は、生理食塩水で処置されたAPP/PS1マウスと比較して、Xenin-25[Lys(13)PAL]で処置されたAPP/PS1マウスの遊泳速度における全体的な違いを示した(p<0.05)。毎日の分析は、Xenin-25[Lys(13)PAL]で処置されたマウスが3日目に、生理食塩水で処置されたマウスよりも遊泳が有意に遅く、およびNAcGIP[Lys(37)PAL]で処置されたAPP/PS1マウスが4日目に、生理食塩水で処置されたAPP/PS1マウスと比較して、遊泳が有意に遅かったことを示した(図14C、p<0.01)。
【0136】
APP/PS1マウスの空間記憶を、最終訓練セッションの24時間後の5日目に行ったプローブ試験で評価した。逃避プラットフォームを除去し、空間記憶を、目標象限内で遊泳に費やされた時間のパーセンテージを用いて評価した(図15)。生理食塩水で処置された(図15A、p=0.2934)、NAcGIP[Lys(37)PAL]で処置された(図15C、p=0.4470)およびXenin-25[Lys(13)PAL]で処置された(図15D、p=0.1492)APP/PS1マウスにおいて、一元配置分散分析は、プローブ試験中の各象限での滞在時間の間に統計的に有意差がないことを示し、空間記憶の機能障害を示している。リラグルチドで処置されたAPP/PS1マウスは、プローブ試験中の各象限での滞在時間の間で有意な相違を示した(p=0.0036)。ダネットの事後の分析は、リラグルチドで処置されたAPP/PS1マウスがCCW象限(p<0.05)、OPP象限(p<0.01)およびCW象限(p<0.05)よりも有意に長い時間、目標象限に滞在したことを示し、APP/PS1マウスにおいて空間記憶が長期にわたるリラグルチド処置によって回復したことを示す。正確な目標領域での滞在時間の長さは、空間視力においてAPP/PS1群のいずれの間でも有意差がないことを示した(図16)。
【0137】
実施例11
逆転学習および記憶に対する処置の慢性効果
逆転水迷路課題の習得段階の間の野生型マウスの平均の一日の動作を、図17に示す。モリス水迷路とは異なり、逆転訓練段階における逃避潜時は、薬物処置によって有意に影響を受けた(p=0.001)。テューキーの多重比較検定は、生理食塩水で処置された野生型マウスと、NAcGIP[Lys(37)PAL]で処置された野生型マウスとの間の逃避潜時において全体的に有意な違いがあることを示した。二元配置反復測定分散分析は、予想どおり、逃避潜時(図17A)が経時的に有意に低下したことを示した(p<0.0001)。逃避潜時と一致して、経路長(図17B)は野生型処置群間で全体的に有意に異なっており(p=0.0004)、予想どおり、経時的に低下した(p<0.0001)。ダネットの多重比較事後検定は、リラグルチドで処置された野生型マウス(p<0.01)、NAcGIP[Lys(370PAL]で処置された野生型マウス(p<0.0001)およびXenin-25[Lys(13)PAL]で処置された野生型マウス(p<0.05)の逃避プラットフォームへの経路長が生理食塩水で処置された野生型マウスと比較して、有意に減少したことを明らかにした。全体として、速度も薬物処置によって有意に変化した(p=0.0263)が、訓練日による影響を受けなかった(p=0.1276)。ダネットの多重比較試験は、生理食塩水で処置された野生型マウスと、リラグルチドで処置された野生型マウスとの遊泳速度の有意差を明らかにした(図17C)。
【0138】
空間記憶は、5日目の最後の訓練セッションから24時間後に行われた逆転プローブ試験で評価された(図18)。生理食塩水で処置された野生型マウスにおいて、一元配置分散分析は、象限間に有意差があることを示した(p<0.0037)。ダネットの多重比較事後検定は、生理食塩水で処置された野生型マウスがCCW象限(p<0.05)、OPP象限(p<0.01)およびCW象限(p<0.01)よりも目標象限に有意に長い時間、滞在したことを示し、完全な逆転記憶を示した。リラグルチドで処置された野生型マウスは、象限間で有意差を示した(p=0.0008)。事後分析は、リラグルチドで処置された野生型マウスがCCW象限(p<0.01)、OPP象限(p<0.001)およびCW象限(p<0.05)よりも目標象限に有意に長い時間、滞在したことを示した。NAcGIP[Lys(37)PAL]で処置された野生型マウスも、象限間で有意差を示した(p<0.0001)。ダネットの事後検定は、NAcGIP[Lys(37)PAL]で処置された野生型マウスがCCW象限(p<0.001)、OPP象限(p<0.0001)およびCW象限(p<0.01)よりも目標象限に有意に長い時間、滞在したことを示した。Xenin-25[Lys(13)PAL]で処置された野生型マウスも、象限間で有意差を示した(p=0.0017)。ダネットの多重比較事後検定は、Xenin-25[Lys(13)PAL]で処置された野生型マウスがOPP象限よりも目標象限に有意に長い時間、滞在したことを示した(p<0.001)。合わせてこれは、野生型マウスの空間記憶がリラグルチド、NAcGIP[Lys(37)PAL]またはXenin-25[Lys(13)PAL]での長期処置によって明らかに最小限の影響を受けることを示している。
【0139】
空間視力を、逃避プラットフォームが位置していた正確な位置での遊泳に費やされた時間の長さを測定することによって評価した(図19)。野生型処置群の間で有意差は観察されなかった。
【0140】
逆転水迷路課題の習得段階の間のAPP/PS1マウスの平均の一日の動作を、図20に示す。全体的な二元配置反復測定分散分析は、APP/PS1マウスにおける逃避潜時(図20A)が薬物処置によって有意に影響を受け(p<0.0001)、ならびに経時的に有意に減少する(p<0.0001)ことを示した。ダネットの多重比較検定は、生理食塩水で処置されたAPP/PS1対照マウスと比較したとき、リラグルチドで処置したAPP/PS1マウス(p<0.0001)、NAcGIP[Lys(37)PAL]で処置したAPP/PA1マウス(p<0.05)およびXenin-25[Lys(13)PAL]で処置したAPP/PS1マウス(p<0.001)間の逃避潜時における全体的な相違を強調した。経路長の全体的な二元配置反復測定分散分析は、有意差が薬物(p=0.0364)および時間(p<0.0001)と関連したことを示した。テューキーの多重比較検定は、生理食塩水で処置されたAPP/PS1対照マウスと比較して、リラグルチドで処置されたAPP/PS1マウス、NAcGIP[Lys(37)PAL]で処置されたマウス、またはXenin-25[Lys(13)PAL]で処置されたマウスにおいて有意差がないことを示した。リラグルチドで処置されたマウスと、NAcGIP[Lys(37)PAL]で処置されたマウスとの間で有意差を特定した。遊泳速度の分析では、全体的な二元配置反復測定分散分析は、処置されたAPP/PS1マウスにおいて逆転水迷路訓練での遊泳速度に対する薬物処置の有意な影響があり(p=0.0098)、かつ遊泳速度が数日にわたり有意に異なった(p=0.0497)ことを示した。テチューキーの多重比較検定は、生理食塩水で処置されたマウスと比較して、Xenin-25[Lys(13)PAL]で処置されたマウスの遊泳速度における全体的な相違を示した(図20C;p<0.05)。プローブ試験において、各象限において費やされた遊泳時間を用いて、空間記憶を決定した。生理食塩水で処置されたAPP/PS1マウスにおいて、一元配置分散分析は各象限に滞在した時間の間に有意差がないことを示し(p=0.2292)、空間記憶が損なわれたことを示した。リラグルチドで処置されたマウスは、各象限間で有意差を示した(p<0.0001)。テューキーの事後分析は、リラグルチドで処置されたマウスがCCW象限(p<0.001)、OPP象限(p<0.0001)およびCW象限(p<0.001)象限よりも目標象限に有意に長い時間、滞在したことを示した。一元配置分散分析は、NAcGIP[Lys(37)PAL]で処置されたAPP/PS1マウスによるそれぞれの象限での滞在時間における有意な変動を示した(p=0.0194)。テューキーの多重比較事後検定は、NAcGIP[Lys(37)PAL]で処置されたAPP/PS1マウスがCCW象限よりも目標象限で有意に長い時間、滞在したことを示した(p<0.05)。Xenin-25[Lys(13)PAL]で処置されたAPP/PS1マウスも、各象限間で有意差を示した(p=0.0073)。ダネットの多重比較事後検定は、Xenin-25[Lys(13)PAL]で処置された野生型マウスがCW象限よりもCCW象限において滞在時間が有意に短いことを示した(p<0.05)。合わせてこれは、逆転水迷路課題においてリラグルチド処置は逆転学習および記憶の改善と関連するが、NAcGIP[Lys(37)PAL]およびXenin-25[Lys(13)PAL]は学習を改善するが記憶を改善しないことを示している。正確な目標領域での滞在時間の長さの分析は、リラグルチドで処置されたAPP/PS1マウスが生理食塩水で処置されたAPP/PS1対照マウスよりも正確なプラットフォーム位置で有意に多い時間(p<0.05)を費やしたことを示した(図21)。
【0141】
実施例12
運動機能および不安に対する処置の慢性効果
経路長(図22A)およびラインクロス(図22B)は、大部分は処置群と無処置群との間で同様であったが、例外はNAcGIP[Lys(37)で処置されたAPP/PS1マウスであり、それらは生理食塩水で処置された野生型マウス(p<0.05)、リラグルチドで処置された野生型マウス(p<0.05)、NAcGIP[Lys(37)PAL]で処置された野生型マウス(p<0.01)とXenin-25[Lys(13)PAL]で処置された野生型マウス(p<0.001)、および生理食塩水で処理されたAPP/PS1マウス(p<0.05)と比較して経路長の有意な増加を示した。NAcGIP[Lys(37)PAL]で処置されたAPP/PS1マウスによるラインクロスは、野生型マウスのすべての群と比較して、有意に増加した(p<0.05~p<0.01)。速度(図22C)、立ち上がり行動(図22D)、毛づくろい回数(図22E)、5分間に排出された糞塊数(図22F)、および中心/周辺比率(図22G)は、遺伝子型または投与群にわたり有意差がなかった。
【0142】
実施例13
認識記憶に対する処置の慢性効果
生理食塩水、リラグルチド、NAcGIP[Lys(37)PAL]およびXenin-25[Lys(13)PAL]の長期投与に対する反応での物体認識記憶を図23に示す。各薬物の急性投与後、野生型マウス(A)のすべての群は、ベースラインで観察されたのと同様に、完全な認識記憶を示し新規物体を優先して探索した(p<0.05~p<0.001)(図10A)。しかし、APP/PS1マウスにおけるリラグルチドおよびNAcGIP[Lys(37)PAL]での長期処置は、ベースラインで損なわれていた物体認識記憶を回復させた(図10B)。リラグルチドで処置されたマウス(p<0.001)およびNAcGIP[Lys(37)PAL]で処置されたマウス(p<0.05)は双方とも、見慣れた物体よりも新規の物体の探索に有意に多くの時間を費やした。生理食塩水で処置されたAPP/PS1マウスおよびXenin-25[Lys(13)PAL]で処置されたAPP/PS1マウスは、新規物体の探究に多くの時間を費やさなかった。
【0143】
実施例14
免疫組織化学
Aβプラーク負荷
図25に示すように、Aβプラーク負荷についてのクラスカル・ウォリス分析は、群間の有意差を示した(p<0.0001)。ダネットの多重比較事後検定は、プラーク負荷が、生理食塩水で処置されたAPP/PS1マウス(図25A、p<0.0001)と比較して、リラグルチド処置(図25B、39%減少)、NAcGIP[Lys(37)PAL]処置(図25C、27%減少)およびXenin-25[Lys(13)PAL]処置(図25D、29%減少)によって有意に減少したことを明らかにした。リラグルチドで処置されたAPP/PS1マウスも、NAcGIP[Lys(37)PAL]で処置されたAPP/PS1マウスと比較して、プラーク負荷を有意に減少させた(p<0.05)。コンゴーレッド染色およびその後の数量化の代表的な画像を図26に示す。Aβプラーク負荷における有意な減少と一致して、高密度コアコンゴーレッド親和性プラークも、生理食塩水で処置されたAPP/PS1マウス(図26A、p<0.0001)と比較すると、リラグルチド処置(図26B、43%減少)、NAcGIP[Lys(37)PAL]処置(図26C、45%減少)およびXenin-25[Lys(13)PAL]処置(図26D、57%減少)によって有意に大きく減少した。Xenin-25[Lys(13)PAL]処置は、高密度コアコンゴーレッド親和性プラーク負荷の減少においてリラグルチドより有意に高い有効性を示した(p<0.05)。
【0144】
ミクログリア
処置された野生型マウスおよびAPP/PS1マウスの大脳皮質(図27)および歯状回(図28)におけるIba1染色を示す代表的な顕微鏡写真を示す。数量化(図29)は、生理食塩水で処置された野生型と比較して、生理食塩水で処置されたAPP/PS1マウスの大脳皮質においてIba1染色が有意に増加した(図29A、p<0.0001)のに対して、リラグルチドで処置されたAPP/PS1マウスは、生理食塩水で処置されたAPP/PS1マウス(図29E)と比較して、皮質におけるIba1染色が有意に減少した(図29F、p<0.0001)ことを示した。NAcGIP[Lys(37)PAL]を投与されたAPP/PS1マウスの皮質では、Iba1染色は、リラグルチドで処置されたAPP/PS1マウスと比較して、有意に増加した(図29G、p<0.0001)。生理食塩水で処置された野生型対照マウス(図29A)と比較して、生理食塩水で処置されたAPP/PS1マウスの歯状回においてIba1レベルが有意に増加した(図29E;p<0.0001)。生理食塩水で処置されたAPP/PS1対照マウスと比較して、リラグルチドで処置されたAPP/PS1マウスの歯状回においてIba1レベルが有意に低下した(図29F;p<0.01)。生理食塩水で処置されたAPP/PS1対照マウスと比較して、NAcGIP[Lys(37)PAL]で処置されたAPP/PS1マウスの歯状回においてIba1免疫陽性が、有意に増加した(図30G、p<0.0001)。Xenin-25[Lys(13)PAL]による10週間の処置は、いずれの脳領域においてもIba1レベルに対する有意な効果がなく(図29)、Xenin-25[Lys(13)PAL] 処置がAPP/PS1マウスの皮質(図27H)または歯状回(図28H)においてミクログリアのレベルに対して効果がなかったことを示している。
【0145】
アストロサイト
処置された野生型マウスおよびAPP/PS1マウスの大脳皮質(図30)および歯状回(図31)におけるGFAP染色を示す代表的な顕微鏡写真を示す。数量化(図32)は、生理食塩水で処置された野生型と比較して、生理食塩水で処置されたAPP/PS1マウスの皮質においてGFAP染色が有意に増加した(図32A、p<0.0001)のに対して、リラグルチドで処置されたAPP/PS1マウスは、生理食塩水を投与されたAPP/PS1マウス(図30E)と比較して、皮質においてGFAPレベルが有意に低下した(図32F、p<0.0001)ことを明らかにした。歯状回における(図31B)GFAP免疫陽性の数量化は、生理食塩水で処置された野生型(図31A)マウスと比較して、生理食塩水を投与されたAPP/PS1マウスがGFAP染色を有意に増加させた(図31E、p<0.05)ことを示した。歯状回でのGFAP染色は、APP/PS1マウス(図32)においていずれの処置によっても有意に影響されなかった。
【0146】
神経発生
生理食塩水で処置された野生型マウス(図33A、p<0.001)とAPP/PS1マウス(図33E、p<0.0001)、およびリラグルチドで処置されたAPP/PS1マウス(図33F、p<0.0001)、およびNAcGIP[Lys(37)PAL] で処置されたAPP/PS1マウス(図33G、p<0.0001)と比較して、Xenin-25[Lys(13)PAL]で処置された野生型マウス(図33D)において神経発生のレベルが有意に増強された。リラグルチドで処置された野生型マウス(図33B)は、生理食塩水で処置されたAPP/PS1マウス(p<0.001)、リラグルチドで処置されたAPP/PS1マウス(p<0.01)およびNAcGIP[Lys(37)PAL]で処置されたAPP/PS1マウス(p<0.05)と比較して、神経発生が増強された。NAcGIP[Lys(37)PAL]で処置された野生型マウスは、生理食塩水で処置されたAPP/PS1マウス(p<0.01)およびリラグルチドで処置されたAPP/PS1マウス(p<0.05)と比較して、神経発生の増強を示した。Xenin-25[Lys(13)PAL)で処置されたAPP/PS1マウス(図33H)は、生理食塩水で処置されたAPP/PS1マウス(p<0.01)およびリラグルチドで処置されたAPP/PS1マウス(p<0.05)と比較して、神経発生の増強を示した。
【0147】
シナプス密度
野生型群(図35)およびAPP/PS1群(図36)におけるシナプトフィジン染色の代表的な顕微鏡写真を示す。シナプトフィジン(図37)のレベルの数量化は、野生型マウスは海馬のすべての層においてAPP/PS1マウスよりもシナプトフィジンの光学密度が有意に上昇したことを示す(図37A~F、p<0.05~p<0.0001)。野生型マウスのすべての群においてシナプトフィジン染色は、皮質内層(G)および皮質外層(H)において、生理食塩水で処置されたAPP/PS1マウスよりも有意に大きかったが、リラグルチド、NAcGIP[Lys(37)PAL]およびXenin-25[Lys(13)PAL]で処置されたマウスでのレベルは野生型対照マウスと同等であった。リラグルチドで処置されたマウスは、多形層(A、p<0.01)、分子層(C、p<0.05)、錐体細胞層(E、p<0.0001)および皮質内層(G、p<0.0001)と皮質外層(H、p<0.0001)において、生理食塩水で処置されたAPP/PS1マウスよりもシナプトフィジンレベルが有意に高かった。NAcGIP[Lys(37)PAL]で処置されたAPP/PS1マウスは、多形層(A、p<0.0001)、錐体細胞層(E、p<0.0001)および皮質内層(G、p<0.0001)と皮質外層(H、p<0.0001)において、生理食塩水で処置されたAPP/PS1マウスよりも発現レベルが有意に高かった。Xenin-25[Lys(13)PAL]で処置されたAPP/PS1マウスは、多形層(A、p<0.05)、錐体細胞層(E、p<0.01)および皮質内層(G、p<0.0001)と皮質外層(H、p<0.0001)において、生理食塩水で処置されたAPP/PS1マウスよりもシナプトフィジン発現レベルが有意に高かった。
【0148】
可溶性Aβ
図38Aに示すように、総脳APPレベルは、生理食塩水で処置されたAPP/PS1対照マウスと比較したとき、一元配置分散分析(p=0.3981)によって分析して、リラグルチド、NAcGIP[Lys(37)PAL]およびXenin-25[Lys(13)PAL]の10週間の投与によって変化しなかった。これとは反対に、一元配置分散分析は、可溶性Aβオリゴマーのレベルにおいて、処置群間の高い有意差を明らかにした(図38B、p=<0.0001)。テューキーの多重比較検定は、Aβオリゴマーレベルが、生理食塩水で処置された対照と比較してリラグルチド(p<0.05)、NAcGIP[Lys(37)PAL](p<0.0001)およびXenin-25[Lys(13)PAL](p<0.0001)処置によって有意に減少したことを示した。さらに、NAcGIP[Lys(37)PAL](p<0.05)およびXenin-25[Lys(13)PAL](p<0.05)処置は、リラグルチド処置に対する応答で観察されたものと比較して、可溶性オリゴマーレベルの減少が優れていたことと関連した。Aβ1-40の脳レベル(図38C)も、処置に応答して有意に変わり(p=0.0012)、クラスカル・ウォリス一元配置分散分析によって示された。ダネットの多重比較事後検定は、生理食塩水で処置されたAPP/PS1マウス(p<0.01)およびXenin-25[Lys(13)PAL]で処置されたAPP/PS1マウス(p<0.01)と比較して、リラグルチドで処置されたAPP/PS1マウスにおけるAβ1-40レベルの有意な増加を明らかにした。通常の一元配置分散分析は、処置に応答してAβ1-42(図38D)のレベルに有意差がないことを示した(p=0.2419)。アミロイド-β(Aβ)42/40の比率は、APP/PS1マウスの処置によって、有意に影響を受けた(p=0.0056、クラスカル・ウォリス共分散分析)。ダネットの多重比較検定は、生理食塩水で処置されたAPP/PS1対照マウスと比較して、リラグルチドで処置されたAPP/PS1マウスにおける有意な減少を明らかにした(p<0.01)。
【0149】
本開示は、アルツハイマー病のAPP/PS1マウスモデルにおける、それぞれ消化管ホルモングルカゴン様ペプチド-1の長時間作用型性類似体、グルコース依存性インスリン分泌刺激ペプチドおよびxenin-25である、リラグルチド、NAcGIP[Lys(37)PAL]およびXenin-25[Lys(13)PAL]による8~10週間の処置の効果を示す。認知機能は、新規物体認識およびモリス水迷路課題を使用して測定した。可溶性および不溶性アミロイド-β負荷、炎症、シナプス密度および神経発生に対する処置の効果は、APP/PS1マウスおよび野生型マウスの脳内で評価した。リラグルチドおよびNAcGIP[Lys(37)PAL]は、APP/PS1マウスにおいて認知能力を改善し、Xenin-25[Lys(13)PAL]と共に、脳中のアミロイド-β負荷を減少させた。リラグルチド、NAcGIP[Lys(37)PAL]およびXenin-25[Lys(13)PAL]による10週間の処置の後、リラグルチドは脳中の炎症を寛解させシナプス密度をAPP/PS1マウスの海馬と皮質において回復させた。さらに、Xenin-25[Lys(13)PAL]処置は野生型マウスおよびAPP/PS1マウスの歯状回中でダブルコルチン陽性ニューロンの数を増加させ、このペプチドが神経発生を増強したことを示唆した。これらの結果は、リラグルチドの神経保護作用を強調し、さらにNAcGIP[Lys(37)PAL]およびXenin-25[Lys(13)PAL]が神経保護特性を有するという新規エビデンスを示す。
【0150】
APP/PS1マウスにおける長期にわたるリラグルチド処置はモリス水迷路の習得段階での空間学習を改善し、空間記憶もまたリラグルチド処置の後で回復された。リラグルチド、NAcGIP[Lys(37)PAL]およびXenin-25[Lys(13)PAL]による長期処置は、APP/PS1マウスにおいて逆転学習も回復させたのに対して、逆転記憶の回復はリラグルチドによってのみ改善された。認知機能に対するこれらの有益な効果は、シナプス可塑性に対するリラグルチドのプラス効果に関連があるように見える。リラグルチドが学習と記憶を改善するという発見は、リラグルチドで処置されたAPP/PS1マウスによる逆転水迷路課題において動作が増強されたことを示す、本明細書に記載する結果によりさらに裏づけられる。加えて、逆転プローブ試験における正確な目標領域での滞在時間、すなわち空間視力の測定は、リラグルチドで処置されたAPP/PS1マウスにおいて有意に上昇し、認知動作に対するリラグルチドの確固とした効果を強調している。本開示は、逆転学習が、NAcGIP[Lys(37)PAL]で処置されたAPP/PS1マウスおよびXenin-25[Lys(13)PAL]で処置されたAPP/PS1マウスにおいて改善されたことも示す。
【0151】
本開示は、NAcGIP[Lys(37)PAL]はAPP/PS1マウスにおいて、わずかではあるが、プラス効果も有するというさらなるエビデンスを示す。本明細書で例示するデータは、Xenin-25[Lys(13)PAL]が認知障害APP/PS1マウスにおいて逆転学習を増強したことを示す。Xenin-25[Lys(13)PAL]はNTR1を介してその効果を発揮するので、本明細書に記載の逆転学習の改善はおそらく、Xenin-25[Lys(13)PAL]による中心的NTR1の活性化を表す。逆転水迷路の良好な学習が必要とする認知柔軟性は、脳のいくつかの領域、例えば嗅内皮質、海馬および前頭前皮質、NTR1が発現される領域内の活性に依存する。海馬および皮質分野におけるNTR1の調節は、本明細書に例示する逆転学習の増強を説明し得る。認識記憶障害は、生理食塩水で処置されたAPP/PS1マウスにおいて明らかであり、リラグルチドによる長期処置の後で回復された。同様に、NAcGIP[Lys(37)PAL]処置も、APP/PS1マウスにおいて認識記憶を回復した。
【0152】
10週間のリラグルチド処置は、APP/PS1マウスにおいてAβ免疫陽性および高密度コアプラークの数を減少させた。Aβ沈着およびプラーク数の有意な減少は、NAcGIP[Lys(37)PAL]で処置された、およびXenin-25[Lys(13)PAL]で処置されたAPP/PS1マウスにおいて検出された。本開示に記載の結果は、Xenin-25[Lys(13)PAL]による脳中のニューロンのNTR1の活性化、細胞内カルシウムの上昇およびホスホリパーゼCとA2の刺激、PKCの活性化、αセクレターゼAPP切断の促進およびそれに続くAβ産生と沈着の減少によって開始される一連のイベントの結果を表し得る。
【0153】
上記の免疫組織化学データは、リラグルチド、NAcGIP[Lys(37) PAL]およびXenin-25[Lys(13)PAL]で処置されたAPP/PS1マウスの脳中の可溶性Aβオリゴマーの減少を示す、生化学データによって裏づけられる。さらに、リラグルチドによる処置は、Aβ42/40の比率を低下させた。Aβ42レベルは各処置群間で差がなかったので、変化したAβ42/40の比率は、リラグルチドで処置された動物における非毒性Aβ40の相対的増加による可能性が最も高い。合わせて、これは、リラグルチド処置がAPPプロセシングを修正することによってAβオリゴマーおよびプラーク沈着を減少させたのに対して、NAcGIP[Lys(37)PAL]およびXenin-25[Lys(13)PAL]処置は代替機構を介してアミロイド負荷を減少させたことを示唆する。1つの可能性は、NAcGIP[Lys(37)PAL]がAβクリアランスと分解を増強したことであり、これは、NAcGIP[Lys(37)PAL]で処置されたAPP/PS1マウスの脳中のミクログリアが増加したという調査結果によって裏づけられる1つの説である。ミクログリアは活発にAβを貪食し分解すると知られていることを考慮に入れると、本明細書に示すAβ沈着および可溶性オリゴマー負荷の減少が貪食ミクログリアの活性化と動員の増加によると提案することは、不合理ではない。
【0154】
神経発生は、Xenin-25[Lys(13)PAL]で処置された野生型およびAPP/PS1マウスの歯状回で増加した。本開示において、リラグルチドおよびNAcGIP[Lys(37)PAL]は、歯状回におけるダブルコルチン陽性ニューロンの数を適度に増やしたが、しかし、生理食塩水で処置された対照と比較すると、差は有意ではなかった。これは、リラグルチドおよびNAcGIP[Lys(37)PAL]が歯状回において未熟ニューロンの数を増加させたが、海馬の神経発生は、野生型およびAPP/PS1マウスにおけるXenin-25[Lys(13)PAL]の処置後に着実に増えたことを示す。これは以前に未報告の発見である。
【0155】
APP/PS1マウスにおいて明白だった海馬および皮質シナプス密度の減少は、リラグルチド、NAcGIP[Lys(37)PAL]およびXenin-25[Lys(13)PAL]で処置されたAPP/PS1マウスの海馬の多形層と錐体細胞層において、および大脳皮質において改善された。
【0156】
本開示は10週間の間7月齢のAPP/PS1マウスを処置し、これは多形層、分子層および錐体細胞層、ならびに大脳皮質においてシナプトフィシン染色を増加させ、脳のこれらの特定の領域がリラグルチドによってより容易に修正されるシナプスを含むことを示唆する。処置されたAPP/PS1マウスの顆粒層、放線状層および多形細胞層においてシナプトフィジンレベルは低いままであり、これらの結果は、Aβ症状に関連したシナプス毒性効果に対して、これらの領域でのシナプスの脆弱性の増加を反映し得る。本開示のNAcGIP[Lys(37)PAL]処置は、APP/PS1マウスの多形層、錐体細胞層および皮質においてシナプス密度を増加させた。本開示は、初めて、APP/PS1マウスにおけるXenin-25[Lys(13)PAL]処置が多形層、錐体細胞層および大脳皮質においてシナプトフィジン染色を増加させたことも示す。本開示の結果は、初めて、Xenin-25[Lys(13)PAL]が認知機能を改善し、神経発生とシナプス密度を増強し、かつADのAPP/PS1マウスモデルにおけるAβ症状を寛解させることを示す。本開示は、リラグルチドがAPP/PS1マウスにおいて認知障害および神経病理を着実に寛解させることを示した。NAcGIP[Lys(37)PAL]およびXenin-25[Lys(13)PAL]も、APP/PS1マウスにおいて可溶性および不溶性アミロイド負荷を軽減しかつ適度に認知機能を改善したことが示された。
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