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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】圧力調整弁および建設機械
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/122 20060101AFI20240523BHJP
   E02F 9/22 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
F16K31/122
E02F9/22 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019160891
(22)【出願日】2019-09-04
(65)【公開番号】P2021038811
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 仁
(72)【発明者】
【氏名】後藤 敬介
【審査官】藤森 一真
(56)【参考文献】
【文献】実開昭53-046025(JP,U)
【文献】特開平10-299711(JP,A)
【文献】米国特許第04201116(US,A)
【文献】特開昭52-144574(JP,A)
【文献】特開2001-003906(JP,A)
【文献】実開昭56-119073(JP,U)
【文献】特開平02-062405(JP,A)
【文献】特開昭49-064784(JP,A)
【文献】特開2017-044276(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0130857(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0130745(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0130914(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0232791(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/22
F15B 13/04 - 13/043
F16K 11/07
F16K 31/06 - 31/11
F16K 31/12 - 31/165
F16K 31/36 - 31/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向へ移動可能な駆動スプールと、
前記駆動スプールと同方向に配置された制御スプールを有する電磁比例弁と、
前記駆動スプールと前記制御スプールとの前記軸方向の間に配置され前記電磁比例弁に基づく前記駆動スプールの指令位置に対する実際の前記駆動スプールの位置を補償する位置補償機構と、
前記制御スプールの径方向の一方側に作動油の供給路が形成され、前記制御スプールの径方向の他方側に前記作動油の排出路が形成されたケースと、を備え
前記位置補償機構は、
前記駆動スプールと同方向に配置され前記駆動スプールの前記軸方向の位置に基づいて弾性変形する第1弾性部材および第2弾性部材と、
前記第1弾性部材と前記第2弾性部材との間に配置され前記駆動スプールから離れる方向への移動が規制されたピストンと、を備える圧力調整弁。
【請求項2】
前記電磁比例弁及び前記位置補償機構は、前記駆動スプールの前記軸方向の両側に配置されている請求項1に記載の圧力調整弁。
【請求項3】
前記位置補償機構は、前記ピストンの前記駆動スプールから離れる方向への移動を規制する段差を有するスリーブを備える請求項1または2に記載の圧力調整弁。
【請求項4】
前記電磁比例弁は、
前記駆動スプールを前記軸方向へ移動させるための圧力を前記駆動スプールに作用させる制御ポートを有し、
前記制御スプールを前記駆動スプールから離れる方向に引くことにより前記制御ポートを通じて前記圧力を前記駆動スプールに作用させる駆動装置を備える請求項1からのいずれか一項に記載の圧力調整弁。
【請求項5】
前記制御スプールは、前記電磁比例弁が通電していないとき、前記制御ポートを作動油の排出路に接続する位置にある請求項に記載の圧力調整弁。
【請求項6】
前記制御スプールは、前記駆動スプールの前記軸方向の両側に配置された前記電磁比例弁のうち一方のみが作動したとき、前記制御ポートを作動油の排出路に接続する位置にある請求項またはに記載の圧力調整弁。
【請求項7】
軸方向へ移動可能な駆動スプールと、
前記駆動スプールと同方向に配置された制御スプールを備え、前記駆動スプールを前記軸方向へ移動させるための圧力を前記駆動スプールに作用させる制御ポートを有し、前記制御スプールを前記駆動スプールから離れる方向に引くことにより前記制御ポートを通じて前記圧力を前記駆動スプールに作用させる駆動装置を備え、前記駆動スプールの前記軸方向の両側に配置された電磁比例弁と、
前記駆動スプールと前記制御スプールとの前記軸方向の間に配置され前記電磁比例弁に基づく前記駆動スプールの指令位置に対する実際の前記駆動スプールの位置を補償し、前記駆動スプールと同方向に配置され前記駆動スプールの前記軸方向の位置に基づいて弾性変形する第1弾性部材および第2弾性部材、前記第1弾性部材と前記第2弾性部材との間に配置され前記駆動スプールから離れる方向への移動が規制されたピストン並びに前記ピストンの前記駆動スプールから離れる方向への移動を規制する段差を有するスリーブを備え、前記駆動スプールの前記軸方向の両側に配置された位置補償機構と、を備える圧力調整弁。
【請求項8】
請求項1からのいずれか一項に記載の圧力調整弁を備える建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力調整弁および建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建設機械の一種として油圧ショベルが知られている。油圧ショベルは、油圧シリンダで動作するブーム、アームおよびバケット等のアタッチメントを備える。油圧ショベルは、油圧シリンダに対する作動油の供給・排出を制御する圧力調整弁を備える。圧力調整弁としては、バルブブロックの内部に延びるスプール穿孔に配置されたスプールと、スプールを常に同一位置に配置させるアクチュエータ(フォースフィードバック型アクチュエータ)と、を備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。例えば、特許文献1では、スプールの一端部に取り付けられた砂時計形状のピストンと、スプール穿孔と整合されたピストン穿孔を有しバルブブロックの片側に取り付けられた端部ブロックと、ピストン穿孔の延びる方向と直交するように配置された第1電磁油圧バルブと、第1電磁油圧バルブの隣に配置された第2電磁油圧バルブと、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-269411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、第1電磁油圧バルブがピストン穿孔の延びる方向と直交するように配置された場合、スプールの軸線と直交する方向へのサイズが大型化する可能性がある。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、スプールの軸線と直交する方向への大型化を抑制することができる圧力調整弁および建設機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決手段として、本発明の態様は以下の構成を有する。
(1)本発明の態様に係る圧力調整弁は、軸方向へ移動可能な駆動スプールと、前記駆動スプールと同方向に配置された制御スプールを有する電磁比例弁と、前記駆動スプールと前記制御スプールとの前記軸方向の間に配置され前記電磁比例弁に基づく前記駆動スプールの指令位置に対する実際の前記駆動スプールの位置を補償する位置補償機構と、前記制御スプールの径方向の一方側に作動油の供給路が形成され、前記制御スプールの径方向の他方側に前記作動油の排出路が形成されたケースと、を備え、前記位置補償機構は、前記駆動スプールと同方向に配置され前記駆動スプールの前記軸方向の位置に基づいて弾性変形する第1弾性部材および第2弾性部材と、前記第1弾性部材と前記第2弾性部材との間に配置され前記駆動スプールから離れる方向への移動が規制されたピストンと、を備える
【0007】
この構成によれば、電磁比例弁が駆動スプールと同方向に配置されるため、駆動スプールの軸線と直交する方向への大型化を抑制することができる。
【0008】
(2)上記(1)に記載の圧力調整弁では、前記電磁比例弁及び前記位置補償機構は、前記駆動スプールの前記軸方向の両側に配置されていてもよい。
【0010】
)上記(1)または(2)に記載の圧力調整弁では、前記位置補償機構は、前記ピストンの前記駆動スプールから離れる方向への移動を規制する段差を有するスリーブを備えてもよい。
【0011】
)上記(1)から()のいずれか一項に記載の圧力調整弁では、前記電磁比例弁は、前記駆動スプールを前記軸方向へ移動させるための圧力を前記駆動スプールに作用させる制御ポートを有し、前記制御スプールを前記駆動スプールから離れる方向に引くことにより前記制御ポートを通じて前記圧力を前記駆動スプールに作用させる駆動装置を備えてもよい。
【0012】
)上記()に記載の圧力調整弁では、前記制御スプールは、前記電磁比例弁が通電していないとき、前記制御ポートを作動油の排出路に接続する位置にあってもよい。
【0013】
)上記()または()に記載の圧力調整弁では、前記制御スプールは、前記駆動スプールの前記軸方向の両側に配置された前記電磁比例弁のうち一方のみが作動したとき、前記制御ポートを作動油の排出路に接続する位置にあってもよい。
【0014】
)本発明の態様に係る圧力調整弁は、軸方向へ移動可能な駆動スプールと、前記駆動スプールと同方向に配置された制御スプールを備え、前記駆動スプールを前記軸方向へ移動させるための圧力を前記駆動スプールに作用させる制御ポートを有し、前記制御スプールを前記駆動スプールから離れる方向に引くことにより前記制御ポートを通じて前記圧力を前記駆動スプールに作用させる駆動装置を備え、前記駆動スプールの前記軸方向の両側に配置された電磁比例弁と、前記駆動スプールと前記制御スプールとの前記軸方向の間に配置され前記電磁比例弁に基づく前記駆動スプールの指令位置に対する実際の前記駆動スプールの位置を補償し、前記駆動スプールと同方向に配置され前記駆動スプールの前記軸方向の位置に基づいて弾性変形する第1弾性部材および第2弾性部材、前記第1弾性部材と前記第2弾性部材との間に配置され前記駆動スプールから離れる方向への移動が規制されたピストン並びに前記ピストンの前記駆動スプールから離れる方向への移動を規制する段差を有するスリーブを備え、前記駆動スプールの前記軸方向の両側に配置された位置補償機構と、を備える。
【0015】
この構成によれば、電磁比例弁および位置補償機構が駆動スプールと同方向に配置されるため、駆動スプールの軸線と直交する方向への大型化を抑制することができる。
加えて、電磁比例弁および位置補償機構が駆動スプールの軸方向の両側に配置されるため、駆動スプールを軸方向の双方向に作動させるとともに駆動スプールの位置補償を行うことができる。加えて、複数の弁機構を駆動スプールの軸方向の片側のみに集中配置する場合と比較して、構成を簡素化することができる。
加えて、スリーブが段差を有することで、駆動スプールから離れる方向へのピストンの移動規制を簡単な構成で実現することができる。
【0016】
)本発明の態様に係る建設機械は、上記(1)から()のいずれか一項に記載の圧力調整弁を備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、スプールの軸線と直交する方向への大型化を抑制することができる圧力調整弁および建設機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態の建設機械の模式図である。
図2】実施形態の圧力調整弁の断面図である。
図3図2の要部拡大図である。
図4】実施形態の駆動スプールが中立位置に位置するときの圧力調整弁の動作の一例の説明図である。
図5】実施形態の第1ソレノイドが作動したときの圧力調整弁の動作の一例の説明図である。
図6】実施形態の第2ソレノイドが作動したときの圧力調整弁の動作の一例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。以下の実施形態では、建設機械として圧力調整弁を備えた油圧ショベルを例に挙げて説明する。なお、以下の説明に用いる図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0020】
[建設機械]
図1は、実施形態の建設機械1の模式図である。
例えば、建設機械1は油圧ショベルである。建設機械1は、旋回体2および走行体3を備える。旋回体2は、走行体3の上に旋回可能に設けられている。旋回体2は、作動油(流体)を供給する油圧ポンプ12(流体供給源)を備える。
【0021】
旋回体2は、操作者が搭乗可能なキャブ5と、キャブ5に一端が揺動自在に連結されたブーム6と、ブーム6のキャブ5とは反対側の他端(先端)に揺動自在に一端が連結されたアーム7と、アーム7のブーム6とは反対側の他端(先端)に揺動自在に連結されたバケット8と、を備える。油圧ポンプ12は、キャブ5内に配置されている。油圧ポンプ12から供給される作動油によって、キャブ5、ブーム6、アーム7およびバケット8が駆動される。
【0022】
[圧力調整弁]
図2は、実施形態の圧力調整弁10の断面図である。図2においては、バルブボディ20の軸方向中央部、油圧ポンプ12(図4参照)および油圧シリンダ(油圧アクチュエータ)等の図示を省略している。図3は、図2の要部拡大図である。図3においては圧力調整弁10の一側部を拡大している。
【0023】
圧力調整弁10は、油圧シリンダ(不図示)に対する作動油の供給・排出を制御する。図2に示すように、圧力調整弁10は、複数の通路21~24を有するバルブボディ20と、軸線C1を有する駆動スプール30と、電磁比例弁40A,40Bと、位置補償機構50A,50Bと、を備える。圧力調整弁10は、スプール式の方向切換弁である。
【0024】
複数の通路21~24は、作動油が流れる流路(油路、配管)である。複数の通路21~24は、スプール孔21、第1アクチュエータ通路22、第2アクチュエータ通路23およびバイパス通路24を含む。
スプール孔21は、駆動スプール30を挿し込み可能な孔である。スプール孔21は、軸線C1に沿う軸方向にバルブボディ20を貫通している。
【0025】
駆動スプール30は、スプール孔21に着脱可能に挿入されている。駆動スプール30は、スプール孔21の内周面に接触可能なランド(不図示)を備える。駆動スプール30は、軸方向への移動により流路の開閉、絞り動作を行う。油圧シリンダ(不図示)に供給される作動油の流量は、駆動スプール30の位置によって制御される。
【0026】
第1アクチュエータ通路22は、バルブボディ20の一側部に配置されている。第1アクチュエータ通路22は、軸線C1と実質的に直交する方向に延びている。例えば、第1アクチュエータ通路22の一端は、油圧シリンダのロッド側油室(不図示)に接続されている。第1アクチュエータ通路22の他端は、スプール孔21に接続されている。
【0027】
第2アクチュエータ通路23は、バルブボディ20の他側部に配置されている。すなわち、第2アクチュエータ通路23は、軸方向において第1アクチュエータとは反対側に配置されている。第2アクチュエータ通路23は、軸線C1と実質的に直交する方向に延びている。例えば、第2アクチュエータ通路23の一端は、油圧シリンダのヘッド側油室(不図示)に接続されている。第2アクチュエータ通路23の他端は、スプール孔21に接続されている。
【0028】
バイパス通路24は、スプール孔21から分岐している。バイパス通路24は、第1アクチュエータ通路22の側方に位置し第1アクチュエータ通路22に沿って延びる第1バイパス路24aと、第2アクチュエータ通路23の側方に位置し第2アクチュエータ通路23に沿って延びる第2バイパス路24bと、軸方向と実質的に平行な方向に延び第1バイパス路24aの一端と第2バイパス路24bの他端とを接続する第3バイパス路24cと、を備える。
【0029】
[電磁比例弁]
図2に示すように、電磁比例弁40A,40Bは、駆動スプール30の軸方向の両側に対称に配置されている。以下、駆動スプール30の軸方向の一方側に配置された電磁比例弁40Aを「第1電磁比例弁40A」、駆動スプール30の軸方向の他方側に配置された電磁比例弁40Bを「第2電磁比例弁40B」ともいう。駆動スプール30が軸方向の中立位置にあるとき、第1電磁比例弁40Aおよび第2電磁比例弁40Bは、軸線C1と直交しかつバルブボディ20の軸方向の中心を通る仮想線K1を対称軸として線対称形状を有する。
【0030】
以下、電磁比例弁として第1電磁比例弁40Aの構成を説明する。第2電磁比例弁40Bは、第1電磁比例弁40Aと同様の構成を有するため詳細説明は省略する。
図3に示すように、第1電磁比例弁40Aは、制御スプール41、制御ポート42およびソレノイド44(駆動装置)を備える。
【0031】
制御スプール41は、駆動スプール30とは別に設けられている。制御スプール41は、駆動スプール30と同方向に配置されている。「同方向」とは、制御スプール41の設計誤差(寸法誤差)や組立誤差の許容範囲内において、制御スプール41が駆動スプール30と実質的に同軸に配置されていることを意味する。「実質的に同軸」とは、上記の許容範囲内において、制御スプール41が駆動スプール30の軸心に対して偏心している場合や、制御スプール41が駆動スプール30の軸線に対して傾斜している場合が含まれる。なお、「同方向」には、制御スプール41が駆動スプール30と完全に同軸に配置されている場合が含まれる。
【0032】
制御スプール41の軸方向の長さは、駆動スプール30よりも短い(図2参照)。制御スプール41は、軸方向に開口し作動油を通過可能な第1制御通路41aと、軸方向と直交する径方向に開口し第1制御通路41aに連通する複数の第2制御通路41bと、を有する。
【0033】
図中符号45は、バルブボディ20の軸方向の側面に取り付けられたケースを示す。ケース45は、軸方向にケース45を貫通するパイロット室46と、パイロット室46と実質的に直交する方向に延びる供給路47と、径方向において供給路47とは反対側に配置され供給路47と実質的に平行に延びる排出路48と、を有する。
【0034】
パイロット室46は、スプール孔21に連通している。パイロット室46は、駆動スプール30を軸方向へ移動させるための圧力を駆動スプール30に作用させる制御ポート42と、スリーブ54を収容する収容部43と、を有する。
制御ポート42は、スプール孔21と収容部43との間に位置する。制御ポート42の内径(径方向の寸法)は、スプール孔21よりも大きい。
収容部43は、制御ポート42に連通している。収容部43の内径(径方向の寸法)は、スプール孔21よりも小さい。
【0035】
制御ポート42は、収容部43よりも径方向外方に拡がる拡径部42aを有する。図中符号35は、拡径部42aに配置されたリターンスプリングを示す。リターンスプリング35は、駆動スプール30と同方向に配置されている。リターンスプリング35は、駆動スプール30を軸方向の中立位置に保持するように駆動スプール30の軸方向の両側に配置されている(図2参照)。
【0036】
供給路47は、油圧ポンプ12からの作動油をパイロット室46に供給するための流路である(図5参照)。
排出路48は、駆動スプール30が軸方向の中立位置にあるとき(図4参照)、または、第2電磁比例弁40Bのみの作動時(図6参照)に作動油をタンク14に排出(貯留)するための流路である。排出路48は、軸方向において供給路47とオフセットして配置されている。
【0037】
ソレノイド44は、制御スプール41を駆動スプール30から離れる方向に引くことにより制御ポート42を通じて駆動スプール30を軸方向へ移動させるための圧力を駆動スプール30に作用させる。ソレノイド44は、軸方向に延びるピン44aを備える。ソレノイド44は、ピン44aを軸方向に移動可能である。ピン44aの先端は、制御スプール41の軸方向の端面中央に連結されている。図中において、符号44bはピン44aの中途部に取り付けられたキャップ、符号44cはピン44aの軸方向の位置を補正するためのスプリング(スタビライズスプリング)をそれぞれ示す。
【0038】
[位置補償機構]
位置補償機構50A,50Bは、電磁比例弁40A,40Bに基づく駆動スプール30の指令位置に対する実際の駆動スプール30の位置を補償する。図2に示すように、位置補償機構50A,50Bは、駆動スプール30の軸方向の両側に対称に配置されている。位置補償機構50A,50Bは、軸方向から見て電磁比例弁40A,40Bと重なる。以下、駆動スプール30の軸方向の一方側に配置された位置補償機構50Aを「第1位置補償機構50A」、駆動スプール30の軸方向の他方側に配置された位置補償機構50Bを「第2位置補償機構50B」ともいう。駆動スプール30が軸方向の中立位置にあるとき、第1位置補償機構50Aおよび第2位置補償機構50Bは、仮想線K1を対称軸として線対称形状を有する。
【0039】
以下、位置補償機構として第1位置補償機構50Aの構成を説明する。第2位置補償機構50Bは、第1位置補償機構50Aと同様の構成を有するため詳細説明は省略する。
図3に示すように、第1位置補償機構50Aは、第1スプリング51(第1弾性部材)、第2スプリング52(第2弾性部材)、ピストン53およびスリーブ54を備える。第1位置補償機構50Aの一部(第1スプリング51、第2スプリング52及びピストン53)は、駆動スプール30と制御スプール41との軸方向の間に配置されている。
【0040】
第1スプリング51および第2スプリング52は、駆動スプール30と同方向に配置されている。第1スプリング51および第2スプリング52は、駆動スプール30の軸方向の位置に基づいて弾性変形する。第1スプリング51および第2スプリング52は、駆動スプール30の軸方向の位置をフィードバックするためのスプリングである。第1スプリング51および第2スプリング52のそれぞれのバネ力は、リターンスプリング35のバネ力よりも遙かに小さい。例えば、第1スプリング51および第2スプリング52は、互いに同一の形状(同一のバネ力)を有する。
第1スプリング51は、制御スプール41とピストン53との間に配置されている。
第2スプリング52は、駆動スプール30とピストン53との間に配置されている。
【0041】
ピストン53は、軸線C1に沿う貫通孔53hを有する本体部53aと、本体部53aの中央部(貫通孔53hの外周)から軸方向において駆動スプール30の側に突出する突出部53bと、本体部53aの外周から軸方向において駆動スプール30とは反対側に延びる環状の環状部53cと、を備える。
第1スプリング51の一端は、制御スプール41の外周部に接触している。第1スプリング51の他端は、ピストン53における本体部53aの環状部53cの側の面に接触している。
第2スプリング52の一端は、ピストン53における本体部53aの突出部53bの側の面に接触している。第2スプリング52の他端は、駆動スプール30の軸方向の一端面に接触している。
【0042】
スリーブ54は、ケース45の内部(パイロット室46の収容部43)に取り付けられている。スリーブ54は、制御スプール41を収容する筒状のスリーブ本体54aと、スリーブ本体54aの外周から駆動スプール30の側へ突出する筒状の外周筒部54bと、ピストン53の駆動スプール30から離れる方向への移動を規制する段差54cと、を備える。
【0043】
スリーブ本体54aは、制御スプール41の軸方向への移動を許容するように制御スプール41の外周面に径方向外側から接している。スリーブ本体54aの軸方向の長さは、制御スプール41よりも長い。スリーブ本体54aは、径方向に開口する複数の連通孔54hを有する。
【0044】
外周筒部54bは、スリーブ本体54aの軸方向の一端面(パイロット室46の収容部43に位置する端面であって駆動スプール30の側の端面)から制御ポート42の中途部まで延びている。外周筒部54bは、ピストン53の軸方向への移動を許容するようにピストン53の外周面に径方向外側から接している。外周筒部54bの軸方向の長さは、ピストン53よりも長い。
【0045】
段差54cは、スリーブ本体54aの軸方向の一端面と外周筒部54bの内周面とによって形成された部分である。段差54cは、ピストン53の環状部53cの先端が接触可能な受け部である。
【0046】
[圧力調整弁の動作]
図4は、実施形態の駆動スプール30が中立位置に位置するときの圧力調整弁10の動作の一例の説明図である。
図4に示すように、駆動スプール30が軸方向の中立位置にあるとき(以下「駆動スプール中立位置時」ともいう。)、パイロット室46は排出路48に接続されている。駆動スプール中立位置時は、電磁比例弁40A,40Bが通電していないとき(以下「電磁比例弁非通電時」ともいう。)に相当する。電磁比例弁非通電時、パイロット室46は排出路48に接続されている。
【0047】
駆動スプール中立位置時、制御スプール41の第1制御通路41aは、制御スプール41の第2制御通路41bおよびスリーブ54の連通孔54hを介して排出路48に連通する。駆動スプール中立位置時、制御スプール41の第1制御通路41aから供給路47への流路は、スリーブ本体54aによって閉塞される。
【0048】
駆動スプール中立位置時、パイロット室46の作動油は、排出路48を通じてタンク14に排出される。具体的に、制御ポート42内の作動油は、ピストン53の貫通孔53h、制御スプール41の第1制御通路41aおよび第2制御通路41b、スリーブ54の連通孔54h、排出路48の順に流れてタンク14に導かれる。図中矢印W1は駆動スプール中立位置時の作動油の流れを示す。
【0049】
図5は、実施形態の第1ソレノイド(第1電磁比例弁40Aが有するソレノイド44)が作動したときの圧力調整弁10の動作の一例の説明図である。
図5に示すように、第1ソレノイドが制御スプール41を駆動スプール30から離れる方向(矢印P1方向)に引いたとき(以下「第1ソレノイド作動時」ともいう。)、供給路47は、スリーブ54の連通孔54hおよび制御スプール41の第2制御通路41bを介して制御スプール41の第1制御通路41aに連通する。第1ソレノイド作動時、制御スプール41の第1制御通路41aから排出路48への流路は、スリーブ本体54aによって閉塞される。
【0050】
第1ソレノイド作動時、油圧ポンプ12からの作動油は、供給路47を通じて制御ポート42に流れる。具体的に、油圧ポンプ12からの作動油は、供給路47、スリーブ54の連通孔54h、制御スプール41の第2制御通路41bおよび第1制御通路41a、ピストン53の貫通孔53h、制御ポート42の順に流れる。図中矢印W2は第1ソレノイド作動時の作動油の流れを示す。
【0051】
制御ポート42に作動油が流れると、駆動スプール30の軸方向の一端面に作動油の圧力が作用する。すなわち、第1ソレノイドは、制御スプール41を駆動スプール30から離れる方向(矢印P1方向)に引くことにより、制御ポート42を通じて駆動スプール30を矢印V1方向へ移動させるための圧力(以下「パイロット圧」ともいう。)を駆動スプール30の軸方向の一端面に作用させる。これにより、第1スプリング51および第2スプリング52のそれぞれが軸方向に伸びる。駆動スプール30は、第1スプリング51および第2スプリング52のバネ力とパイロット圧とがバランスするところで停止する。すなわち、駆動スプール30は、第1スプリング51のバネ力と第2スプリング52のバネ力との和(合力)がパイロット圧とつり合ったところ(以下「つり合い位置」ともいう。)で停止する。駆動スプール30は、つり合い位置で停止するまで軸方向へ微振動しつつ位置制御を繰り返す。
【0052】
図6は、実施形態の第2ソレノイド(第2電磁比例弁40Bが有するソレノイド44)が作動したときの圧力調整弁10の動作の一例の説明図である。
図6に示すように、第2ソレノイド(不図示)の作動により駆動スプール30はリターンスプリング35のバネ力に抗して矢印V2方向に移動する。第2ソレノイドが作動したとき(以下「第2ソレノイド作動時」ともいう。)、リターンスプリング35および第2スプリング52は、矢印V2方向の荷重を受けることにより軸方向に縮む。第2ソレノイド作動時、駆動スプール30から離れる方向へのピストン53の移動は段差54cによって規制されるため、第1スプリング51には軸方向の荷重がかからない。
【0053】
第2ソレノイド作動時、パイロット室46は排出路48に接続されている。第2ソレノイド作動時、制御スプール41の第1制御通路41aは、制御スプール41の第2制御通路41bおよびスリーブ54の連通孔54hを介して排出路48に連通する。第2ソレノイド作動時、制御スプール41の第1制御通路41aから供給路47への流路は、スリーブ本体54aによって閉塞される。
【0054】
第2ソレノイド作動時、パイロット室46の作動油は、排出路48を通じてタンク14に排出される。具体的に、制御ポート42内の作動油は、ピストン53の貫通孔53h、制御スプール41の第1制御通路41aおよび第2制御通路41b、スリーブ54の連通孔54h、排出路48の順に流れてタンク14に導かれる。図中矢印W3は第2ソレノイド作動時の作動油の流れを示す。
【0055】
以上説明したように、本実施形態に係る圧力調整弁10は、軸方向へ移動可能な駆動スプール30と、駆動スプール30と同方向に配置された制御スプール41を備え、駆動スプール30を軸方向へ移動させるための圧力を駆動スプール30に作用させる制御ポート42を有し、制御スプール41を駆動スプール30から離れる方向に引くことにより制御ポート42を通じて圧力を駆動スプール30に作用させるソレノイド44を備え、駆動スプール30の軸方向の両側に対称に配置された電磁比例弁40A,40Bと、駆動スプール30と制御スプール41との軸方向の間に配置され電磁比例弁40A,40Bに基づく駆動スプール30の指令位置に対する実際の駆動スプール30の位置を補償し、駆動スプール30と同方向に配置され駆動スプール30の軸方向の位置に基づいて弾性変形する第1スプリング51および第2スプリング52、第1スプリング51と第2スプリング52との間に配置され駆動スプール30から離れる方向への移動が規制されたピストン53並びにピストン53の駆動スプール30から離れる方向への移動を規制する段差54cを有するスリーブ54を備え、駆動スプール30の軸方向の両側に対称に配置された位置補償機構50A,50Bと、を備える。
【0056】
この構成によれば、電磁比例弁40A,40Bおよび位置補償機構50A,50Bが駆動スプール30と同方向に配置されるため、駆動スプール30の軸線C1と直交する方向への大型化を抑制することができる。
加えて、電磁比例弁40A,40Bおよび位置補償機構50A,50Bが駆動スプール30の軸方向の両側に配置されるため、駆動スプール30を軸方向の双方向に作動させるとともに駆動スプール30の位置補償を行うことができる。加えて、複数の弁機構を駆動スプール30の軸方向の片側のみに集中配置する場合と比較して、構成を簡素化することができる。
加えて、スリーブ54が段差54cを有することで、駆動スプール30から離れる方向へのピストン53の移動規制を簡単な構成で実現することができる。
加えて、電磁比例弁40A,40Bおよび位置補償機構50A,50Bが駆動スプール30の軸方向の両側にそれぞれ対称に配置されるため、駆動スプール30の軸方向の両側において電磁比例弁40A,40Bおよび位置補償機構50A,50Bをそれぞれ共通化することができる。したがって、電磁比例弁および位置補償機構が駆動スプール30の軸方向の両側にそれぞれ非対称に配置される場合と比較して、部品点数を削減し、低コスト化を図ることができる。
【0057】
本実施形態では、制御スプール41は、電磁比例弁40A,40Bが通電していないとき、制御ポート42を作動油の排出路48に接続する位置にある。
【0058】
この構成によれば、電磁比例弁非通電時、駆動スプール30の軸方向の両端面へのパイロット圧は生じないため、駆動スプール30の軸方向への移動をスムーズに行うことができる。
【0059】
本実施形態では、制御スプール41は、駆動スプール30の軸方向の両側に配置された電磁比例弁40A,40Bのうち一方(第2ソレノイド)のみが作動したとき、制御ポート42を作動油の排出路48に接続する位置にある。
【0060】
この構成によれば、第2ソレノイド作動時、駆動スプール30の軸方向の一端面へのパイロット圧は生じないため、駆動スプール30の軸方向(矢印V2方向)への移動をスムーズに行うことができる。
【0061】
本実施形態に係る建設機械1は、上記の弁構造20を備える。
【0062】
この構成によれば、駆動スプール30の軸線C1と直交する方向への圧力調整弁10の大型化を抑制した建設機械1を提供することができる。
【0063】
なお、本発明の技術範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0064】
例えば、上述した実施形態では、建設機械1は油圧ショベルである例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、油圧クレーン等、油圧ショベル以外の建設機械に本発明を適用してもよい。
【0065】
上述した実施形態では、スリーブ54が段差54cを有する例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、スリーブ54は、段差54cを有しなくてもよい。例えば、スリーブ54は、制御スプール41の軸方向への移動を許容するように制御スプール41の外周面に径方向外側から接していればよい。
【0066】
上述した実施形態では、電磁比例弁40A,40Bおよび位置補償機構50A,50Bが駆動スプール30の軸方向の両側にそれぞれ対称に配置される例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、電磁比例弁40A,40Bおよび位置補償機構50A,50Bは、駆動スプール30の軸方向の両側にそれぞれ非対称に配置されていてもよい。
【0067】
上述した実施形態では、第1スプリング51および第2スプリング52は、互いに同一の形状(同一のバネ力)を有する例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、第1スプリング51および第2スプリング52は、互いに異なる形状(異なるバネ力)を有していてもよい。
【0068】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは可能である。また、上述した各変形例を組み合わせても構わない。
【符号の説明】
【0069】
1…油圧ショベル(建設機械)
10…圧力調整弁
20…バルブボディ
21…スプール孔(流路)
22…第1アクチュエータ通路(流路)
23…第2アクチュエータ通路(流路)
24…バイパス通路(流路)
30…駆動スプール
35…リターンスプリング
40A…第1電磁比例弁(電磁比例弁)
40B…第2電磁比例弁(電磁比例弁)
41…制御スプール
42…制御ポート
44…ソレノイド(駆動装置)
50A…第1位置補償機構(位置補償機構)
50B…第2位置補償機構(位置補償機構)
51…第1スプリング(第1弾性部材)
52…第2スプリング(第2弾性部材)
53…ピストン
54…スリーブ
54c…段差
C1…軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6