IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ テイジン カーボン アメリカ、インコーポレイテッドの特許一覧

特許7492824複合オーバーラップツールのための熱可塑性複合in-situ溶融処理法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】複合オーバーラップツールのための熱可塑性複合in-situ溶融処理法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/04 20060101AFI20240523BHJP
   B29C 70/16 20060101ALI20240523BHJP
   B29C 70/32 20060101ALI20240523BHJP
   D06M 15/227 20060101ALI20240523BHJP
   D06M 15/59 20060101ALI20240523BHJP
   B29K 101/12 20060101ALN20240523BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20240523BHJP
【FI】
C08J5/04 CES
C08J5/04 CFG
B29C70/16
B29C70/32
D06M15/227
D06M15/59
B29K101:12
B29K105:08
【請求項の数】 21
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019232823
(22)【出願日】2019-12-24
(65)【公開番号】P2020117689
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2022-11-28
(31)【優先権主張番号】16/240,333
(32)【優先日】2019-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518153313
【氏名又は名称】テイジン カーボン アメリカ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュピック、ピーター
【審査官】川井 美佳
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-534183(JP,A)
【文献】特開2017-185788(JP,A)
【文献】特開平04-272849(JP,A)
【文献】特開2018-059030(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 11/16
B29B 15/08-15/14
B29C 70/00-70/88
C08J 5/04-5/10;5/24
D06M 15/227
D06M 15/59
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維樹脂複合オーバーラップを作成するためのin-situ溶融プロセスであって、
繊維トウを選択するステップと、
前記選択した繊維トウに適合する熱可塑性樹脂を選択するステップと、
前記選択した熱可塑性樹脂を含浸させるための前記繊維トウを調製するステップと、
前記繊維トウに含浸させるために前記熱可塑性樹脂を調製するステップと、
前記熱可塑性樹脂の融点まで前記熱可塑性樹脂を加熱することにより、前記熱可塑性樹脂の粘度を低下させるステップと、
フィラメント巻き付けヘッドに近接した位置で、前記調製した溶融熱可塑性樹脂を前記調製した繊維トウに含浸させ、それによって溶融繊維樹脂複合材料トウプレグを作成するステップと、
ワークピースの選択した表面部分を前記熱可塑性樹脂の前記融点まで加熱するステップと、
前記溶融繊維樹脂複合材料トウプレグの第1の層を前記ワークピースの前記加熱表面に適用することにより、前記溶融繊維樹脂複合材料トウプレグの溶融状態をラップ処理中に維持し、それによって前記溶融繊維樹脂複合材料トウプレグが前記ワークピースの前記加熱表面により効率的に接着するステップと、
前記溶融繊維樹脂複合材料トウプレグの以前に適用した層の選択した部分を直接加熱し、それによって前記ワークピースの加熱を補い、ここで、前記溶融繊維樹脂複合材料トウプレグの前記以前に適用した層が、前記溶融繊維樹脂複合材料トウプレグのさらなる層を適用する前に再溶融されるステップと、
前記溶融繊維樹脂複合材料トウプレグのさらなる層を繊維樹脂複合材料トウプレグの前記溶融した以前に適用した層に適用し、それによって溶融繊維樹脂複合材料トウプレグを前記ワークピースに以前に適用した溶融繊維樹脂複合材料トウプレグの所定の領域に適用することにより、連続した溶融繊維樹脂複合材料の層を互いに接着させ、その結果、層間せん断強度が向上し、さらに前記溶融トウプレグ内の個々のフィラメントが相互にスライドすることが可能になり、それによって前記繊維樹脂複合オーバーラップ内のカテナリー、しわ、およびひだが効果的に除去されるステップと、
加圧下で前記溶融繊維トウプレグ層を互いに圧縮および圧密化することにより、閉じ込められた空気を除去するステップとを含む、in-situ溶融プロセス。
【請求項2】
前記ワークピースが、タイプIIの圧力容器、タイプIIIの圧力容器、タイプIVの圧力容器、またはタイプVの圧力容器である、請求項1に記載の繊維樹脂複合オーバーラップを作成するためのin-situ溶融プロセス。
【請求項3】
前記繊維が、炭素繊維、ガラス繊維、天然繊維、ナノ繊維、およびアラミド繊維からなる群から選択される、請求項1~2の少なくとも1項に記載の繊維樹脂複合オーバーラップを作成するためのin-situ溶融プロセス。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂が、ナイロン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、およびポリエーテルエーテルケトン樹脂からなる群から選択される、請求項1~3の少なくとも1項に記載の繊維樹脂複合オーバーラップを作成するためのin-situ溶融プロセス。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂がペレット形態である、請求項1~4の少なくとも1項に記載の繊維樹脂複合オーバーラップを作成するためのin-situ溶融プロセス。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂がテープ形態である、請求項1~5の少なくとも1項に記載の繊維樹脂複合オーバーラップを作成するためのin-situ溶融プロセス。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂がスレッド状である、請求項1~6の少なくとも1項に記載の繊維樹脂複合オーバーラップを作成するためのin-situ溶融プロセス。
【請求項8】
前記熱可塑性樹脂を含浸させるための前記繊維トウを調製するステップが、前記繊維トウを乾燥させるステップと、前記繊維トウを選択した束幅に広げるステップと、前記繊維トウを選択した温度に加熱するステップとを含み、前記選択した温度が前記選択した熱可塑性樹脂のほぼ融点である、請求項1~7の少なくとも1項に記載の繊維樹脂複合オーバーラップを作成するためのin-situ溶融プロセス。
【請求項9】
前記繊維トウがサイジングとしてポリプロピレンまたはナイロン樹脂を有する、請求項1~8の少なくとも1項に記載の繊維樹脂複合オーバーラップを作成するためのin-situ溶融プロセス。
【請求項10】
前記繊維トウがオーブン乾燥機または赤外線乾燥機で乾燥される、請求項1~9の少なくとも1項に記載の繊維樹脂複合オーバーラップを作成するためのin-situ溶融プロセス。
【請求項11】
前記熱可塑性樹脂が、ホッパー乾燥機、伝導ローラー、または赤外線乾燥機によって乾燥される、請求項1~10の少なくとも1項に記載の繊維樹脂複合オーバーラップを作成するためのin-situ溶融プロセス。
【請求項12】
繊維樹脂複合オーバーラップを作成するためのin-situ溶融プロセスであって、
繊維トウを選択するステップと、
前記選択した繊維トウに適合する熱可塑性樹脂を選択するステップと、
前記選択した熱可塑性樹脂を含浸させるための前記繊維トウを調製するステップであって、前記熱可塑性樹脂を含浸させるための前記繊維トウを調製するステップが、前記繊維トウを乾燥させるステップと、前記繊維トウを選択した束幅に広げるステップと、前記繊維トウを選択した温度に加熱するステップとを含み、前記選択した温度が前記選択した熱可塑性樹脂のほぼ融点である、調製するステップと、
前記繊維トウに含浸させるために前記熱可塑性樹脂を調製するステップと、
前記熱可塑性樹脂の融点まで前記熱可塑性樹脂を加熱することにより、前記熱可塑性樹脂の粘度を低下させるステップと、
フィラメント巻き付けヘッドに近接した位置で、前記調製した溶融熱可塑性樹脂を前記調製した繊維トウに含浸させて、溶融繊維樹脂複合材料トウプレグを作成するステップと、
ワークピースの選択した表面部分を前記熱可塑性樹脂の前記融点まで加熱するステップと、
前記溶融繊維樹脂複合材料トウプレグの第1の層を前記ワークピースの前記加熱表面に適用することにより、前記溶融繊維トウプレグの溶融状態をラップ処理中に維持し、それによって前記溶融繊維樹脂複合材料トウプレグが前記ワークピースの前記加熱表面により効率的に接着するステップと、
前記繊維樹脂複合材料トウプレグの以前に適用した層の選択した部分を直接加熱し、それによって前記ワークピースの加熱を補い、ここで、前記繊維樹脂複合材料トウプレグの前記以前に適用した層が、溶融繊維樹脂複合材料トウプレグのさらなる層を適用する前に溶融されるステップと、
溶融繊維樹脂複合材料トウプレグのさらなる層を繊維樹脂複合材料トウプレグの前記溶融した以前に適用した層に適用し、それによって前記溶融繊維樹脂複合材料トウプレグを前記ワークピースに以前に適用した溶融繊維樹脂複合材料トウプレグの所定の領域に適用することにより、連続した溶融繊維樹脂複合材料トウプレグの層を互いに接着させ、さらに前記溶融繊維樹脂複合材料トウプレグ内の個々のフィラメントが相互にスライドすることが可能になり、それによって前記繊維樹脂複合オーバーラップ内のカテナリー、しわ、およびひだが効果的に排除されるステップと、
加圧下で前記溶融繊維樹脂複合材料トウプレグ層を互いに圧縮および圧密化することにより、閉じ込められた空気を除去するステップとを含む、in-situ溶融プロセス。
【請求項13】
前記ワークピースが、タイプIIの圧力容器、タイプIIIの圧力容器、タイプIVの圧力容器、およびタイプVの圧力容器からなる群から選択される、請求項12に記載の繊維樹脂複合オーバーラップを作成するためのin-situ溶融プロセス。
【請求項14】
前記繊維が、炭素繊維、ガラス繊維、天然繊維、ナノ繊維、およびアラミド繊維からなる群から選択される、請求項12または13に記載の繊維樹脂複合オーバーラップを作成するためのin-situ溶融プロセス。
【請求項15】
前記熱可塑性樹脂が、ナイロン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、およびポリエーテルエーテルケトン樹脂からなる群から選択される、請求項12~14の少なくとも1項に記載の繊維樹脂複合オーバーラップを作成するためのin-situ溶融プロセス。
【請求項16】
前記熱可塑性樹脂がペレット形態である、請求項12~15の少なくとも1項に記載の繊維樹脂複合オーバーラップを作成するためのin-situ溶融プロセス。
【請求項17】
前記熱可塑性樹脂がテープ形態である、請求項12~16の少なくとも1項に記載の繊維樹脂複合オーバーラップを作成するためのin-situ溶融プロセス。
【請求項18】
前記熱可塑性樹脂がスレッド状である、請求項12~17の少なくとも1項に記載の繊維樹脂複合オーバーラップを作成するためのin-situ溶融プロセス。
【請求項19】
前記繊維トウがサイジングとしてポリプロピレンまたはナイロン樹脂を有する、請求項12~18の少なくとも1項に記載の繊維樹脂複合オーバーラップを作成するためのin-situ溶融プロセス。
【請求項20】
前記繊維トウがオーブン乾燥機または赤外線乾燥機で乾燥される、請求項12~19の少なくとも1項に記載の繊維樹脂複合オーバーラップを作成するためのin-situ溶融プロセス。
【請求項21】
前記熱可塑性樹脂が、ホッパー乾燥機、伝導ローラー、または赤外線乾燥機によって乾燥される、請求項12~20の少なくとも1項に記載の繊維樹脂複合オーバーラップを作成するためのin-situ溶融プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年1月4日に出願された米国非仮出願第16/240,333号の利益を主張し、その全体は参照によって本出願に組み込まれる。
【0002】
【0003】
発明の背景
1.発明の技術分野
本発明は、繊維トウの個々のフィラメントを適切な位置に最適に配置することを可能にする、繊維樹脂複合材料をツール上にオーバーラップする方法、例えば繊維マトリックス薄層をツールにオーバーラップする方法に関する。より詳細には、本発明は、より効率的に個々のフィラメントを使用して構造の性能を最適化する様式で、繊維と樹脂とを結合させて、1回の連続操作で溶融した繊維樹脂結合物をツール上に適用する、in-situ溶融プロセス(乾燥繊維から溶融薄層の適用まで)に関する。特に、本発明は、1.繊維樹脂複合オーバーラップを作成するためのin-situ溶融プロセスであって、
-繊維トウを選択するステップと、
-前記選択した繊維トウに適合する熱可塑性樹脂を選択するステップと、
-前記選択した熱可塑性樹脂を含浸させるための前記繊維トウを調製するステップと、
-前記繊維トウに含浸させるために前記熱可塑性樹脂を調製するステップと、
-前記熱可塑性樹脂の融点まで前記熱可塑性樹脂を加熱することにより、前記熱可塑性樹脂の粘度を低下させるステップと、
-フィラメント巻き付けヘッドに近接した位置で、前記調製した溶融熱可塑性樹脂を前記調製した繊維トウに含浸させ、それによって溶融繊維樹脂複合材料トウプレグを作成するステップと、
-ワークピースの選択した部分を前記熱可塑性樹脂の前記融点まで加熱するステップと、
-前記溶融繊維樹脂複合材料トウプレグの第1の層を前記ワークピースの前記加熱表面に適用(塗布)することにより、前記溶融繊維樹脂複合材料トウプレグの溶融状態をラップ処理中に維持し、それによって前記溶融繊維樹脂複合材料トウプレグがワークピースの加熱表面により効率的に接着するステップと、
-前記溶融繊維樹脂複合材料トウプレグの適用層を有する前記ワークピースの選択した部分を加熱し、前記溶融繊維樹脂複合材料トウプレグの前記適用層が、前記溶融繊維樹脂複合材料トウプレグのさらなる層を適用する前に再溶融されるステップと、
-前記溶融繊維樹脂複合材料トウプレグのさらなる層を繊維樹脂複合材料トウプレグの前記溶融した適用層に適用し、それによって溶融繊維樹脂複合材料トウプレグを前記ワークピースに以前に適用した溶融繊維樹脂複合材料トウプレグの所定の領域に適用することにより、連続した溶融繊維樹脂複合材料の層を互いに接着させ、その結果、層間せん断強度が向上し、さらに前記溶融トウプレグ内の個々のフィラメントが相互にスライドすることが可能になり、それによって前記繊維樹脂複合オーバーラップ内のカテナリー、しわ、およびひだが効果的に除去されるステップと、
加圧下で前記溶融繊維トウプレグ層を互いに圧縮および圧密化(統合)することにより、閉じ込められた空気を除去するステップとを含む、in-situ溶融プロセスに関する。
【背景技術】
【0004】
2.関連技術の説明
炭素繊維と樹脂との複合材料の分野では、鋼に対する炭素繊維の強度および重量比が高いため、コンクリート杭、航空機の翼および胴体、自動車用途、スポーツ用品などの多くのツールならびに構造部品において、ますます鋼に代えて炭素繊維と樹脂との複合材料が用いられている。このような複合材料の重要な特徴は、多くの重要な機械的および熱的特性(例えば、引張弾性率および強度、線熱膨張係数)が強化繊維の方向に依存するという事実であり、この現象は異方性として知られている。複合材料の一般的な形態の1つは、強化繊維に熱硬化性または熱可塑性樹脂を含浸させ同じ方向に整列させた、一方向の予備含浸シートまたはテープである。材料の異方性により、一方向の予備含浸シートまたはテープは、強化繊維の方向に引っ張ると非常に硬く、強化繊維方向に対して垂直には比較的柔軟になる。
一方向の予備含浸シートまたはテープから作製された繊維樹脂複合部品の異方性は、一方向の予備含浸シートまたはテープの複数の層で部品を作製することによって制御することができる。レイアップスケジュールとも呼ばれる、各層の強化繊維の相対角度の指定によって、当業者は、特定の方向に特定の機械的および熱的特性を有するように繊維樹脂複合部品を設計することができる。理想的には、稼働中に繊維樹脂複合材料が受けると予想される機械的および熱的負荷に対して、レイアップスケジュールを最適化する。繊維樹脂複合部品の最適な性能は、多くの場合、単層の繊維樹脂複合材料では達成することができない。さらに、一方向の予備含浸シートおよびテープを例として使用したが、繊維樹脂複合材料の異方性は生来的なものであり、パイプおよび圧力容器の湿式巻きオーバーラップ、航空宇宙用途で使用される織物マット、フィラメントの代わりにチョップド繊維で強化された複合材料部品を含む他の既知の形態にまで及ぶ。
複合オーバーラップ圧力容器(「COPV」)は、炭素繊維複合技術を利用する構造の1つである。また、今日の市場には多くのCOPV設計があることが知られている。これに関して、タイプIIの圧力容器は、通常は鋼製である金属製ライナー上に繊維をフープ状に巻く。タイプIIIの圧力容器は、通常はアルミニウムである金属製ライナー上に繊維をフープ状およびヘリカル状に巻く。タイプIVの圧力容器は、プラスチック製ライナー上にフープ状およびヘリカル状に巻く。また、タイプVの圧力容器は、ガスの透過を防ぐためにバリアフィルムを組み込んでいてもよいライナーのないツールにフープ状およびヘリカル状に巻く。本明細書に記載されるように、本発明は、これらのタイプの圧力容器内で有用性があるが、複合オーバーラップを利用する他のタイプのツールでも有用性がある。これらの設計の大多数は、炭素繊維と熱硬化性樹脂とを用いた従来の湿式巻きプロセスを使用している。また、今日のタンクの製造に使用されている現行の材料およびプロセスには、費用および労力がかかることはよく知られている。
【0005】
炭素繊維を含む、COPVのための繊維に対する世界的な需要が高まっている。繊維は、CNG、水素、窒素およびその他のガスを含むがこれらに限定されないガスのための、CNG車両用タンク、パイプライン、貯蔵および輸送に使用される。当業者は、特に原油価格が再び上昇し始め、燃料補給インフラストラクチャが拡大し成熟する場合、主にクラス8トラック市場に牽引されて、この需要が成長し続けると予想している。
【0006】
前述のように、COPVの主なコスト要因は、材料、製造時間、最終性能、および性能係数の変動である。現在のCOPV製造方法では、タンク製造のプロセスサイクルが長く、繊維/樹脂複合体を形成するいくつかの既知の方法の1つを選択するステップと、繊維/樹脂複合体を圧力容器本体上に巻き付けるステップと、Bステージが達成されるまで圧力容器本体を回転させるステップと、巻き付けられた円筒をオーブン内で高温で硬化するステップと、円筒を洗浄し梱包するステップとから構成されている。
【0007】
COPVが輸送市場などの大量生産市場に広く採用されるためには、高速化され、低コスト化された製造プロセス(機器およびプロセスステップの除去)、最終性能の向上、性能のばらつき係数の低下などが必要である。
【0008】
炭素繊維は、典型的には、個々の繊維フィラメントを束ねてトウにした単体として出荷される。さらに、トウは、わずか1000本程度または24,000本程度の多量、またはそれ以上の個々のミクロンサイズの炭素フィラメントを含んでもよい。繊維がワークピースの周りにラップされるときのトウの束幅に応じて、トウは数百本の繊維の太さであり得る。本明細書で使用される場合、「束幅」(“bandwidth”)という用語は、繊維トウの総広がり幅を指す。また、トウが圧力容器などのワークピースの周りに巻き付けられるとき、トウ内の個々のフィラメントを、左右および上下に一定の張力/長さで維持することが望ましく、重要であることが知られている。これに関して、個々の各フィラメントが互いに固定されている場合、剛性構造(プラスチックテープおよびトウプレグ)が半径周りに巻き付けられている場合と同様に、個々のフィラメント張力を一貫して維持することは困難であることが知られている。別の言い方をすると、マトリックス樹脂で予備含浸され、まっすぐなまたは湾曲している可能性のある位置で冷却され、その後湾曲した表面の周りにラップされたトウプレグ内の繊維と同様に、頂部フィラメント、すなわち半径の外側のフィラメントには張力がかかり、底部のフィラメント、すなわち半径の内側に沿ったフィラメントは圧縮されている。これにより、個々のフィラメントは互いにスライドすることができずカテナリー現象を引き起こし、結果として、トウプレグの圧縮層が波状、しわ状またはひだ状繊維として複合材料に埋め込まれ、構造の全体的な性能が低下する。これは、すべての個々のフィラメントが全体的な複合材料の性能に均一に寄与しないためである。
【0009】
このように製造した場合、個々のフィラメントは特定の位置に係止される。すなわち、いくつかの個々のフィラメントは構造負荷を受ける一方、他のフィラメントは利用されていない。これに関して、図1図3を参照すると、ラップされた容器が、容器300として概略的に示されている。この例では、容器300は、第1の、すなわち内側のラップ層310と、第2の、すなわち外側のラップ層320とを有する。図1図3は縮尺通りに描かれていないことが理解されよう。層310内には、張力のかかった外側領域312と圧縮された内側領域315がある。同様に、層320内には、張力のかかった外側領域322と圧縮された内側領域325がある。図1の初期巻き付けおよび中立圧力P0では、引張領域312および322のフィラメントは完全に整列し、完全に係合しているが、圧縮領域315および325のフィラメントは波状、しわ状、またはひだ状になっている。図2のP1で示すように、圧力(矢印350で示されている)が容器に加えられると、容器の寸法直径がわずかに変化することが認識されるであろう。結果として、引張領域312および322のフィラメントは、依然として複合材料強度に完全に寄与する繊維と完全に整列している。しかしながら、圧縮領域315および325内のフィラメントは波状および/またはひだ状であり、複合材料強度に完全には寄与していない。最後に、図3の容器300により大きな圧力P2がかかると、さらに直径が変化し、引張領域の完全に整列したフィラメントが最大歪み/応力容量に達する一方、圧縮領域の繊維は依然として完全に最適化された複合材料強度に完全には寄与しておらず、その結果すべての圧力負荷が張力領域のフィラメントに伝達される。その結果、引張領域のよく整列したフィラメントが最初に破損するため、早期の破損になる。その後、負荷の大部分は圧縮領域の完全に整列していないフィラメントに直ちに伝達され、同様にすぐに破損する。フィラメントの配列分布が均一性を欠くことにより、寸法変化の不均一な増加、性能のばらつき、最大の繊維性能が達成されずに早期故障につながるなどの事象が引き起こされる。この早期の破損によって、容器300の変形の増大および直径の増大がもたらされる。すべてのフィラメントが有し得る能力が完全に達成されず、フィラメントが有し得るモジュラスが十分に利用されないため、最大の複合材料性能は達成されない。この問題は、複雑な幾何学的形状を有するワークピースではより悪化する。
繊維樹脂複合オーバーラップを作成するためのin-situ溶融プロセスが、US H1261Hから知られており、これは以下の方法ステップを備える。
-繊維トウを選択するステップ、
-選択した繊維トウに適合する熱可塑性樹脂を選択するステップ、
-繊維トウに含浸させる熱可塑性樹脂を調製するステップ、
-フィラメント巻き付けヘッドに近接した位置で、熱可塑性樹脂を調製した繊維トウに含浸させ、それによって溶融繊維トウプレグを作成するステップ、
-ワークピースの加熱表面にトウプレグを適用することにより、ラップ処理中に溶融繊維トウプレグの溶融状態を維持するステップ、
-加圧下で溶融繊維トウプレグ層を互いに圧縮および圧密化し、それによって閉じ込められた空気を除去するステップ。
そのようなプロセスは、国際公開第2017/079103号にも記載されている。しかしながら、国際公開第2017/079103号によるプロセスは、単にワークピースを加熱することにより、前記ワークピース上の複合オーバーラップの溶融状態を維持する。これにより、オーバーラップの厚みによって大きな温度勾配が生じる可能性がある。オーバーラップの最も外側の表面が熱可塑性樹脂の融解温度に近づくようにするには、オーバーラップの最も内側の表面(すなわち、オーバーラップの最初の層とツールの表面との界面)をさらに高温にする必要がある。この温度勾配により、複合オーバーラップの厚みによる粘度勾配が生じ、最初のオーバーラップ層とツール表面との界面で粘度が最も低く、オーバーラップの最も外側の表面で粘度が最も高くなる。熱可塑性樹脂の粘度が低下するだけで、最も外側の表面の下の層の強化繊維は、最も外側の表面に圧密圧力を加えることにより不整列になり、オーバーラップの性能を低下させる可能性がある。本発明のプロセスは、オーバーラップの最も外側の表面に直接熱を加えることでワークピースの加熱を補うことにより、この問題を回避する。ワークスペースの加熱を補うことは、図6および図7による本発明で明示的に実行され、図5Cに示すように明示的なステップである。本発明によれば、補助的な外層加熱は、以前に適用した層を再溶融する。オーバーラップの最も外側の表面に直接熱を加えることは、ワークピース表面を熱可塑性樹脂の融解温度に近い温度に維持することができることを意味し、オーバーラップに圧密圧力が加えられたときに強化繊維が不整列となる機会を減らす。
米国特許出願公開第2014/011063号は、in-situ熱可塑性繊維強化複合材料の自動テープ敷設用のツールについて説明している。このプロセスは、固体熱可塑性テープの層間の接着力を高めるだけなので、うねりやカテナリーなどの固体予備含浸テープの加工に関連する問題は解決されない。
溶融熱可塑性樹脂で加工することにより、本発明のプロセスは繊維がスライドすることができ、うねり、カテナリー、およびしわを排除することができる。
米国特許出願公開第2015/0102037号は、リビング重合により調製された壁を含むポリマー圧力容器を示している。さらに、圧縮流体を輸送するためのタイプI、II、III、IVおよびVの圧力容器が公開されている。米国特許出願公開第2015/0102037号に開示されているプロセスは、層間接着の問題を排除することができるが、熱可塑性材料の品質は、加工条件によって強く影響を受ける。当業者は、所望通りに化学反応を進行させるために、熱硬化性樹脂の硬化環境内の硬化サイクルおよび硬化条件を注意深く制御する必要があることを理解している。これは、硬化の概念を熱可塑性樹脂に応用する米国特許出願公開第2015/0102037号に記載されているプロセスに非常に似ている。環境条件の影響を受けやすいということは、製造バッチ間の性能の大きなばらつきが懸念されることを意味する。
本発明のプロセスは、容易に入手可能な形態の熱可塑性樹脂、特にペレット、テープおよび繊維を使用することにより、バッチ間のばらつきを低減する。
米国特許第6,893,604号は、1つ以上の連続繊維のラップによって薄壁中空熱可塑性貯蔵容器を強化する方法を示している。このプロセスは、複合オーバーラップの樹脂含有量の制御によって制限される。乾燥強化繊維を容器に敷く場合、含浸は強化繊維トウにかかる圧力によって制御される。圧力が大きすぎると、容器が変形するが、圧力が小さすぎると、強化繊維トウの含浸が不十分になる。さらに、加圧下の時間が短すぎると、強化繊維トウの含浸が不十分になる。この方法では、予備含浸テープを使用することができるが、樹脂含有量はテープの含有量に制限される。
対照的に、本発明のプロセスは、含浸ダイを使用することができる熱可塑性ペレットおよびテープの使用を可能にする。適切に設計されたダイにより、強化繊維トウは完全に含浸され、さまざまな処理速度で確かに含浸されるように設計することができる。これにより、溶融熱可塑性樹脂と乾燥強化繊維トウとの相対供給速度を変更することにより、含浸強化繊維トウの樹脂含有量と強化繊維トウ含浸の品質とを制御することができる。
米国特許出願公開第2008/020193号は、複数の連続フィラメントと、連続フィラメント間の隙間空間に埋め込まれたナノスケールフィルターとを含むハイブリッド繊維トウを開示している。この方法は、静電的に帯電した粉末熱可塑性樹脂の流動床によって、または乾燥強化繊維トウを溶融熱可塑性樹脂のバスに通すことによって、強化繊維トウの高い熱可塑性樹脂含浸を達成する方法を提供する。流動床を介した含浸は、粉末含浸強化繊維トウが処理される速度を制限するであろう。樹脂浴法は、溶融熱可塑性樹脂の高い粘度によって制限され、周囲圧力で処理する場合、乾燥強化繊維の完全な含浸が困難になるであろう。
本発明のプロセスは含浸ダイを使用することができるので、周囲圧力を超える圧力を使用して含浸を改善することができる。
【0010】
さまざまな既知の湿式巻きプロセスは、個々のフィラメントが互いに対してスライドすることができるため、これらの問題のいくつかをある程度緩和するが、既知の湿式巻きプロセスは、低粘度樹脂の使用の必要性、長い硬化時間、不均一な束幅形状およびサイズなどの他に不利な点がある。さらに、既知の熱可塑性樹脂系では、熱い溶融テープ層が冷たい固化した熱可塑性構造に適用される。したがって、1つの層がその前の層に完全には接着せず、コールドフローフロントとも呼ばれる。これにより、層間せん断強度が低くなり、最終的に、複合材料が1つの連続した複合材料構造として機能しなくなり、容器の早期破損につながる。
【0011】
当技術分野に欠けているのは、巻き付けられた複合材料中のすべてではなくともほとんどのフィラメントが完全な複合剛性(モジュラス性)を決定し、完全な複合強度性能に貢献するように、炭素繊維を熱可塑性材料と結合し、溶融複合材料をワークピースに適用するin-situ溶融プロセスである。当技術分野にさらに欠けているのは、溶融熱可塑性材料の連続層を適用するときに、以前に適用した熱可塑性樹脂の所定の領域を融点まで加熱して、連続する層間の接着性を改善し、それによって熱可塑性複合オーバーラップに伴うカテナリー、しわ、ひだを効果的に排除するように、熱可塑性複合材料の融点まで加熱したツールの一部に溶融熱可塑性複合材料を適用するin-situプロセスである。また、連続する層が互いに改善された接着性を有する場合、層間せん断強度は増大する。したがって、本発明の目的の1つは、熱可塑性材料設計および独自の製造プロセスの開発によってCOPVの総コストを削減する方法を考案することである。本発明のさらなる目的は、複合材料構造を製造するための独自の急速フィラメント巻き付け製造プロセスからなる熱可塑性材料系を開発することである。本発明のさらに別の目的は、(フィラメント巻き付け機送出ヘッド、自動テープ敷設ヘッド、またはトウ敷設システム上で繊維と熱可塑性樹脂との両方を結合する)in-situプロセスを使用して、選択された繊維を熱可塑性樹脂系と共に使用することである。そのようなin-situプロセス(熱可塑性フィルムと炭素繊維とを送出ヘッドまたはその近くで結合して、溶融複合材料をツール表面に適用できるようにする)によって、生産時間およびコストが削減される。「送出ヘッド」への言及には、フィラメント巻き付け機、自動テープ敷設システム、トウ敷設システム、および溶融熱可塑性複合材料をツールに適用するための現在知られているまたは開発中のその他のシステムが含まれることが認識される。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、請求項1および9に記載の複合オーバーラッププロセスに適していることが知られているさまざまなワークピースのための繊維樹脂複合オーバーラップを作成する方法に関する。好ましい実施形態は、従属請求項の部分である。
本発明は、複合オーバーラップを使用する多くの種類の用途に有用であるが、主な用途は、本明細書で複合オーバーラップ圧力容器、すなわちCOPVと呼ばれるタイプII、タイプIII、タイプIVおよびタイプVの圧力容器の製造である。タイプIIIのCOPVはモジュラス訴求用途の傾向がある一方、タイプIVのCOPVは強度訴求用途の傾向がある。当業者は、強度訴求用途では、モジュラス訴求用途向けに選択される繊維とは異なる特性を有する繊維が必要であることを認識している。さまざまな繊維のさまざまな物理的属性は、本発明の範囲および本質の範囲内にある。炭素繊維または他の種類の繊維を、適合する熱可塑性樹脂系と結合する。カーボン、ガラス、アラミド、天然繊維、ナノ繊維、または他の既知の繊維のいずれであろうと、選択した繊維を熱可塑性樹脂を含浸させるために調製する。ペレット、テープ、またはスレッド形状のいずれであろうと、選択した熱可塑性樹脂を加工用に調製する。
【0013】
炭素繊維と粘度が低減された、すなわち溶融した熱可塑性樹脂とを、加圧下で、フィラメント巻き付け機送出ヘッド上で結合して、樹脂を繊維束に押し込む。溶融繊維樹脂薄層は、圧力容器などのワークピースの表面の局所的に加熱された部分に適用するまで維持する。
【0014】
ラップされるワークピースの表面の部分は、熱可塑性樹脂の融点まで加熱されるため、溶融した複合材料は、ワークピースの加熱表面により効率的に接着する。さらに、溶融熱可塑性複合材料のさらなる層がラップされると、以前にラップされた熱可塑性樹脂複合材の少なくとも一部が再加熱および再溶融されるため、オーバーラッププロセス中に複合材料の層が溶融したままになり、層の相互接着性が向上する。次に、加圧下で溶融層を圧縮および圧密化し、2つの異なる樹脂層を強制的に混合および混和させて(ポリマー鎖が境界を横切ることができるようにする)、均一な均質構造を提供する。この圧縮プロセスは、閉じ込められた空気を除去し、オーバーラップされた繊維樹脂複合材料のさまざまな層を圧密化する。in-situ溶融プロセスの使用により、カテナリー、ひだ、およびしわが減少または排除されるため、複合材料の性能が向上する。これは、溶融繊維樹脂複合材料トウプレグの束幅の厚み全体にわたって個々のフィラメントがラッププロセス中に互いにスライドすることができるため、繊維樹脂複合材料の繊維束内で均一な張力を得るのが可能になるためである。最も好ましい実施形態では、熱可塑性樹脂はペレットまたはテープ形態である。これは、繊維状の熱可塑性材料の加工を示すUS H1261Hとは対照的であるが、本発明によれば、熱可塑性材料はペレットまたはテープであってもよい。熱可塑性ペレットまたはテープを供給材料として使用する利点の1つは、これにより含浸ダイを使用して、強化繊維トウ内で熱可塑性材料を完全に分散させることができることである。含浸ダイは、周囲圧力を超える圧力で動作し、これにより、溶融熱可塑性樹脂の強化繊維トウへの流れが増加する。ダイの内部キャビティは、最適な溶融熱可塑性樹脂含浸を得るために設計することもでき、溶融熱可塑性樹脂を強化繊維トウに完全に含浸させるように含浸ダイを十分に長くすることができる。US H1261Hおよび米国特許第6,893,604号に記載のプロセスは、繊維が容器上に巻き付けられるときに圧力を短時間加えることにより、周囲圧力で動作する。圧力を加える時間が短いと、どちらの加工も製造速度が制限される場合がある。複合トウを加工面に適用する前に、適切に設計された含浸ダイを用いて完全に含浸させることにより、現在のプロセスの製造速度は、強化繊維トウ含浸の速度によって制限されない。
熱可塑性ペレットおよびテープを供給材料として使用する別の利点は、熱可塑性繊維と強化繊維との相対流量を変更することにより、含浸トウの樹脂含有量を制御することができることである。US H1261Hに記載のプロセスにおける樹脂含有量は、混合トウの樹脂含有量、または乾燥強化繊維の前に敷設された非強化熱可塑性樹脂の量に制限される。米国特許第6,893,604号に記載のプロセスにおける樹脂含有量は、強化繊維トウ含浸の品質または予備含浸複合テープの樹脂含有量のいずれかに制限されている。予備含浸テープまたは混合繊維を使用する場合、樹脂含有量は供給材料の樹脂含有量に制限される。米国特許第6,893,604号の場合、樹脂含有量は、ツール表面に敷設された乾燥強化繊維に加えられる圧力によっていくらか制御することができる。しかしながら、圧力が不十分な場合、強化繊維の含浸が不十分になり、圧力が高すぎると容器が変形する可能性があり、いずれも性能が低下する。対照的に、本発明のプロセスは、溶融熱可塑性材料と乾燥強化繊維トウの相対供給速度を変更することにより、含浸強化繊維トウの樹脂含有量を変更することができる。適切な含浸ダイは、相対供給速度の範囲にわたって強化繊維トウを完全に含浸させるように設計されるであろう。
さらに、US H1261Hは、樹脂含浸の2つの方法を説明している。1つ目は、樹脂と強化繊維とを単純に混合(「混和」)することである。この場合、樹脂および強化繊維の分布はほとんど制御することができないであろう。US H1261Hの「フィラメント拡幅圧力」は、樹脂と強化繊維との混合トウを平らにするだけであろう。しかし、樹脂と強化繊維とが均等に分布していることを保証するものではないであろう。不均一な分布により、溶融複合トウに樹脂豊富、強化材豊富なポケットをもたらし、その結果、複合材料はより弱くなるであろう。
US H1261Hは、樹脂含浸の2つ目の方法は、最初に溶融熱可塑性材料の層をマンドレルに適用し、次に溶融熱可塑性材料層の周りに強化繊維を巻き付けることであると開示している。この場合、プレスローラーを介して圧力を加えると、本質的に繊維は溶融熱可塑性樹脂に押圧されるが、加えられた圧力は、強化繊維を溶融熱可塑性樹脂中に均一に分布させるには十分ではない。これは、溶融熱可塑性樹脂が強化繊維トウを通る代わりに容器の表面を優先的に流れ、強化繊維が溶融熱可塑性樹脂層中に短い距離だけ入り込むという事実によるものである。これにより、複合材料内に樹脂豊富、強化繊維豊富な領域が生じ、この場合も、複合材料の性能が低下する。
熱可塑性樹脂の供給材料の選択肢を広げてペレットとテープを含めることにより、より多様な含浸技術を使用することができる。この目的で圧縮ダイを使用する場合、熱可塑性ペレットは押出機に供給され、押出機は熱可塑性樹脂を溶融し、ダイへの強化繊維の供給速度とは無関係に、ダイへの供給速度を制御する。強化繊維トウは張力によってダイ内を移動させられ、張力の大きさによって、溶融熱可塑性材料とは無関係に、強化繊維のダイへの供給速度が決まる。複合材料内の樹脂含有量および分布を制御するために使用することができるため、供給速度の独立性が重要である。さらに、ダイの内部チャンネルは、溶融熱可塑性樹脂が強化繊維に均一に含浸することが確実になるように設計することができる。この方法は、従来技術で開示されているような原料として繊維状の熱可塑性樹脂を用いる方法では実現不可能である。熱可塑性ペレットおよびテープを使用することで、強化繊維の含浸の質をはるかによく制御することができる含浸技術の使用が可能になり、米国発明登録第H1261号で提案された含浸方法よりも複合材料の性能が向上する。
好ましい実施形態では、本発明のプロセスにおける特定の強化繊維の使用が含まれる。
本発明のプロセスにおける熱可塑性樹脂として、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン、およびポリエーテルエーテルケトン(すなわちPEEK)の使用が特に好ましい。US H1261Hは、PEEKを熱可塑性原料として明示的に除外している。US H1261Hとは対照的に、PEEKは本発明のプロセスで使用することができる。これは、圧力容器よりも高性能な用途向けに部品を作製することができるため、大きな利点である。
本発明の特別な実施形態は、プロセス原料として熱可塑性ペレットを使用することを含む。先行技術に関連する文書はいずれも、ペレットをプロセス原料として使用することについて言及していない。US H1261Hは、熱可塑性繊維またはプリプレグテープを使用している。米国特許出願公開第2015/102037号は、化学反応により熱可塑性材料を作成する。米国特許第6,893,604号明細書は、乾燥強化繊維、予備含浸トウ、または混合トウを使用している。米国特許出願公開第2008/0201939号は、粉末または溶融熱可塑性材料を使用している。ペレットは、熱可塑性材料の既知の容易に入手可能な形態であるが、押出ダイおよび含浸ダイを利用することができる。
さらなる実施形態では、プロセス原料として熱可塑性テープを使用することが含まれる。このテープは、押出の必要なしに含浸ダイの使用を可能にし、含浸ダイの使用は、US H1261Hによるプロセスがもたらすものよりも優れた繊維分散をもたらすはずである。
好ましい実施形態では、含浸のための乾燥繊維トウの調製が含まれる。この実施形態によれば、乾燥強化繊維は事前加熱および乾燥され、どちらもUS H1261Hに明示的に記載されていない。
さらにより好ましい実施形態では、強化繊維トウに適用される前処理が権利請求されている。強化繊維トウ内に閉じ込められた水分は、プロセス温度で蒸発する。トウが含浸前に乾燥するのに十分な時間を与えられない場合、これらのガスはマトリックス内に閉じ込められ、複合材料内に空の小さなポケットが残される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明の上述の特徴は、本発明の以下の詳細な説明を図面と共に読むことにより明確に理解されるであろう。
図1】先行技術のラップされた圧力容器の概略図であり、前記容器に加えられる圧力を概略的に示す。
図2】先行技術のラップされた圧力容器の概略図であり、前記容器に加えられる別の圧力を概略的に示す。
図3】先行技術のラップされた圧力容器の概略図であり、前記容器に加えられるさらに別の圧力を概略的に示す。
図4A】本発明の方法の各処理ステップで利用可能な選択肢のマトリックスを示す。
図4B】本発明の方法の各処理ステップで利用可能な選択肢のマトリックスを示す。
図4C】本発明の方法の各処理ステップで利用可能な選択肢のマトリックスを示す。
図4D】本発明の方法の各処理ステップで利用可能な選択肢のマトリックスを示す。
図4E】本発明の方法の各処理ステップで利用可能な選択肢のマトリックスを示す。
図5A】本発明のステップのフローチャートを示す。
図5B】本発明のステップのフローチャートを示す。
図5C】本発明のステップのフローチャートを示す。
図6】本発明の例示的な実施形態の概略図である。
図7】樹脂繊維複合材料の溶融層と圧縮層との混合を示す図6の一部の拡大概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、圧力容器に使用されるような炭素繊維オーバーラップを作成する方法に関する。当業者は、本明細書で一般にワークピースと呼ばれる他の種類の品目がしばしば繊維樹脂複合材料でオーバーラップされていることを認識するであろう。本発明はさらに、フィラメント巻き付け機送出ヘッド、自動テープ敷設システムの送出ヘッド、または繊維樹脂複合材料トウプレグ敷設システムの送出ヘッド上で、繊維と熱可塑性樹脂との両方を結合させるためのin-situプロセスを使用することと、溶融繊維熱可塑性樹脂複合体を、圧力容器などであるがこれに限定されない加熱したワークピースに適用することとに関する。本明細書で使用される場合、「in-situ(インサイチュー)プロセス」という用語は、最適なフィラメント配置を可能にするための、熱可塑性供給材料および含浸させる乾燥強化繊維トウの調製から最終用途までの連続プロセスを指す。本発明のin-situプロセスは、含浸プロセスの前からツール/複合材料構造への最終配置まで、個々のフィラメントが互いに対してスリップ、スライド、またはせん断することを可能にし、それにより、左右および/または上下の長さ、各々およびすべての個々のフィラメントの寸法の変化のいかなるものも、元の乾燥繊維に戻って伝達される。
【0017】
原材料
当業者は、炭素繊維樹脂複合材料の主原料には樹脂10および炭素繊維20が含まれることを容易に認識するであろう。以下の説明では、これらの構成要素をより詳細に取り上げ、それらの相互関係を、各処理ステップにおける選択肢のマトリックスを示す図4A図4Eと、本発明のステップのフローチャートを示す図5A図5Bおよび図5Cとの両方で示す。
【0018】
炭素繊維
図4Aおよび繊維を選択するステップ20を参照すると、複合オーバーラップ用途で使用される多くの市販の繊維が存在することが認識されるであろう。これに関して、炭素繊維22は、典型的には、その強度のために、圧縮天然ガス(「CNG」)とともに通常使用されるタイプIVのCOPV用に選択される。CNGとともに使用されるタイプIVのCOPVは、プラスチック製ライナーが疲労しないため、複合オーバーラップのための強度訴求用途である。他の用途では、ガラス繊維21、天然繊維、ナノ繊維、またはアラミド繊維23の使用が必要になる場合がある。また、当業者は、熱可塑性樹脂系に適合する他の既知の種類の繊維24があることを認識するであろう。CNGに使用されるタイプIIIのCOPVは、アルミニウム製ライナーが疲労しやすいことが知られているため、モジュラス訴求用途である。当業者は、強度訴求用途では、モジュラス訴求用途向けに選択される繊維とは異なる特性を有する繊維が必要であることを認識している。さまざまな繊維のさまざまな物理的属性は、本発明の範囲および本質の範囲内にある。
【0019】
さまざまな市販の繊維が、熱可塑性樹脂系と適合しないサイジングを有することは、当技術分野で知られている。当業者は、サイジングが個々の繊維フィラメントを保護し、その後の繊維の取り扱いを可能にするために使用される保護フィルムであることと、サイジングが繊維とマトリックスとの間の接着を促進することとを認識している。したがって、例示的な実施形態では、ポリプロピレンおよびナイロン樹脂などの熱可塑性樹脂と適合するサイジング化学物質を有する繊維が選択される。例示的な実施形態では、サイジングを、炭素繊維の製造プロセス後ではなく、製造プロセス中に繊維に適用する。さらに、一部の繊維および一部のサイジング化学物質は水分を吸収しやすいことが知られているため、潜在的な水分は乾燥によって除去する必要がある。そうしないと、繊維と樹脂とを結合するプロセス中に水分が放出され、構造内が多孔性となる可能性がある。このような多孔性は、製品の性能品質を低下させる。例示的な実施形態では、繊維はオーブン乾燥機または赤外線乾燥機で乾燥させることができる。当業者は、繊維を乾燥させる他の既知の方法があることを認識するであろう。
【0020】
樹脂
図4Aおよび樹脂を選択するステップ10を参照すると、本発明によれば、エポキシ樹脂とは対照的に、熱可塑性樹脂が好ましい。ナイロン樹脂12、ポリプロピレン樹脂13、ポリエチレン樹脂、およびポリエーテルエーテルケトン(「PEEK」)樹脂系を含む、多くの市販の熱可塑性樹脂11がある。当業者は、本発明のin-situプロセスに容易に適合させることができる他の商業的に知られている熱可塑性樹脂系14があることを認識するであろう。タイプIVの圧力容器の場合、プラスチック製ライナーが使用されているため、低温熱可塑性樹脂の使用が必要である。例示的な実施形態では、プラスチック製ライナーのタイプIVの圧力容器とともにポリプロピレン樹脂を利用する。さらなる例示的な実施形態では、タイプIIIの圧力容器の場合、ナイロン樹脂系などの高温樹脂系が選択される。
【0021】
図4Bを参照すると、熱可塑性樹脂がさまざまな異なる化学物質中で利用可能であるのと同様に、これらの樹脂はさまざまな物理的形態で利用可能である。熱可塑性樹脂は、ペレット30、フィルム40、およびスレッド50として利用可能である。これらの各々は、本in-situ溶融プロセスでの使用に適合させることができるが、ペレット形態の樹脂を利用する方が経済的である。繊維について前述したのと同様に、吸収された水分を乾燥プロセス31によって除去することが重要である。これに関して、ホッパー乾燥機32、オーブン乾燥機33がある。さらに、伝導ローラーおよび赤外線乾燥機などの他の乾燥システム34を利用して、熱可塑性樹脂を乾燥させることができる。当業者によって認識されるように、オーブン乾燥機システムの使用によっても、水分を除去することができる。同様に、図4Bに示すように、フィルム40を使用する場合、吸収された水分は、乾燥プロセス41によって除去する必要があり、乾燥プロセス41には、本発明の範囲内で、オーブン乾燥機42、赤外線乾燥機43、伝導ローラー44、または他の乾燥方法45が含まれ得る。さらに図4Bを参照すると、スレッド状樹脂50を使用する場合、吸収された水分は、乾燥プロセス51によって除去する必要があり、乾燥プロセス51には、本発明の範囲内で、オーブン乾燥機52、赤外線乾燥機53、他の乾燥方法54が含まれ得る。さらに、図4Bで分かるように、繊維樹脂60を使用する場合、吸収された水分は、乾燥プロセス61によって除去する必要があり、乾燥プロセス61には、本発明の範囲内で、オーブン乾燥機62、赤外線乾燥機63、他の乾燥方法64を含まれ得る。
【0022】
材料の調製
図4Cを参照すると、熱可塑性樹脂を乾燥させた後、樹脂材料の粘度を大幅に低減させる必要がある70。樹脂の最小粘度は、選択された温度で選択された時間にわたる加圧下で低減される。これに関して、時間、温度、および圧力は、樹脂を最小粘度まで低減させるプロセスの相互依存変数である。例示的な実施形態では、摩擦、圧力、および時間を増加させることにより樹脂の粘度を低下させるために、せん断アーバー(arbors)74を使用する。熱可塑性樹脂の粘度を下げるために、伝導加熱装置71、誘導加熱装置72、赤外線加熱装置73、または他の現在知られている、またはその後発見される熱可塑性樹脂を加熱する方法75を使用して、熱を加える。所望の温度は、まず、選択した樹脂の化学的性質に依存することが理解されよう。粘度が所望のレベルに低下すると、溶融樹脂を繊維トウに完全に浸透させるために、溶融樹脂は、加圧下で、以下に説明するようにさらに調製された繊維と結合される。
【0023】
溶融樹脂を浸透させる前に、強化繊維の調製80が必要となる。最適な性能を提供するためには、耐荷重性繊維を所望の束幅まで均一かつ均等に広げる必要がある。さらに、拡幅プロセス中および浸透ステップ中に、炭素繊維トウ内の個々のフィラメントがすべて同じ張力を受けることが確実になるように注意する必要がある。この重要なステップにより、個々のフィラメントの内部および周囲への樹脂の浸透も容易になる。例示的な実施形態では、上流側張力と下流側張力とは互いに分離されている81。含浸領域の上流の張力は、繊維の損傷を防ぐために最小限に保たれる。含浸プロセス中も圧力を最小限に保ち、樹脂の浸透を容易にする。ただし、含浸プロセス後、個々のフィラメントの配列と均一性を改善するために、圧力を増加させる。原料の繊維トウも、所望の束幅および張力に広げる85。機械的ローラー86、空気流87、超音波装置88、および櫛などの他の装置89は、原料の繊維トウを所望の束幅に広げ、繊維トウのすべての繊維が同じ張力を受けるように繊維トウにかかる張力を維持するための既知の装置である。
【0024】
繊維トウの個々のフィラメントが所望の束幅に均一かつ正確に広げられた(85)後、適切かつ完全に含浸させるために、繊維トウを溶融樹脂と同じ温度または場合によってはより高い温度に加熱する必要がある90。当業者は、繊維トウをオーブン91、誘導炉92の使用により、または伝導ローラーのような他の方法93の使用により加熱することができることを認識するであろう。
【0025】
材料の結合-繊維の樹脂含浸
上記のように、繊維トウが調製され、すなわち乾燥され、所望の束幅に広げられ、加熱され、樹脂がその最小粘度になった後、例示的な実施形態では、繊維トウは、加圧下で、選択、決定された量101の溶融樹脂で含浸され、すなわち結合および圧密化される100。正圧または負圧の加圧下での含浸は、圧縮プレス102、圧縮ローラー103、圧縮ダイ104、圧力含浸105、または他の方法106によって達成することができる。例示的な実施形態では、このステップは、圧力容器などのワークピースの加熱領域に溶融複合材料を適用する直前に実施される。これに関して、本発明のin-situプロセスでは、繊維トウは、フィラメント巻き付けヘッド上で、またはフィラメント巻き付けヘッドに非常に近接した位置で、溶融樹脂で含浸される。
【0026】
材料用途-炭素繊維のin-situプロセス
繊維と樹脂とが加圧下で結合されて溶融繊維樹脂複合材料トウプレグを形成すると、溶融繊維樹脂複合材料トウプレグは一定の束幅、張力、および温度に維持される110。上述のように、張力は制御されており、上流側張力は下流側張力から分離されている81。束幅および温度は上述のように制御される。溶融繊維樹脂複合材料トウプレグが敷設される場所111は、以前にラップされた別の層に所定の層を接着させるために、熱可塑性樹脂系の融点とほぼ同じ温度に昇温され、その温度に保たれる。限定ではなく例として、赤外線源、誘導コイル、伝導ローラー、炎、赤外線加熱装置などの熱源112を利用して、局所的な加熱を達成する。これにより、個々のフィラメントが相互にスライドして、溶融繊維樹脂複合材料トウプレグの適用中に個々のフィラメントが比較的同じ張力を受けることが可能になる。さらに、層を敷設するときに(113)溶融状態を維持することにより、閉じ込められた空気を逃がすことができる。限定ではなく例として、赤外線源、誘導コイル、伝導ローラー、炎、赤外線加熱装置などの熱源114を利用して、オーバーラップされる圧力容器または他のツールを加熱する。外部の圧縮力115を利用して、オーバーラップされる圧力容器または他のツールに適用する溶融繊維樹脂複合材料トウプレグを圧縮し圧密化する。この圧縮プロセスは、閉じ込められた空気116を除去し、オーバーラップされた繊維樹脂複合材料のさまざまな層を圧密化する。この圧縮プロセスには、圧縮ローラー、ニップローラー117、または同様の装置118が利用される。
【0027】
当業者であれば、圧力容器全体を所定の温度まで昇温することができ、または例示的な実施形態では、オーバーラッププロセスを受けるツール表面の部分に加熱を隔離または局所化できることを理解するであろう。さらに、小さな容器またはツールを使用する場合、温度は、繊維樹脂複合材料の連続した薄層113が敷設されるとき、熱可塑性樹脂の融点に維持される。
【0028】
例示的な実施形態では、図5Aおよび図5Bを参照すると、樹脂が選択され10、繊維が選択される20。例示的な実施形態では、選択された繊維は炭素繊維である。繊維が状態調整(コンディショニング)60および調製80され、選択された樹脂の粘度が低下した(70)後、炭素繊維と熱可塑性樹脂とはフィラメント巻き付け機で結合されて100、熱可塑性複合材料が生成され、その後、熱可塑性複合材料はまだ溶融している間に圧力容器などのワークピースに供給される。当業者であれば、自動テープ敷設システムおよび他のトウ敷設システムのような他の複合材料製造装置を本発明のプロセスで利用することができることを認識されよう。上述のように、この目的を達成するため、炭素繊維に溶融熱可塑性樹脂を含浸させるために、繊維と樹脂とを加熱し、加圧下で結合する100。次に、また、溶融複合材料マトリックスを、熱可塑性樹脂の融点まで加熱したツール(圧力容器ライナー、シャフト、または他の構造)の表面に適用する。これに関して、例示的な実施形態では、炎または加熱伝導ローラーシステムなどの加熱システムを利用して、溶融繊維樹脂複合材料トウプレグが適用/ラップされるツールの表面の少なくとも一部を加熱する。当業者であれば、他の熱源を利用することができることが認識されよう。炭素繊維はこの熱(誘導熱)をすばやく吸収し、この熱を熱可塑性樹脂に自動的に伝達する。
【0029】
特に明記しない限り、図6および図7を参照すると、溶融繊維樹脂複合材料薄層は、次に、圧縮ローラー180、185、ダイ、または他の装置によって、所望の束幅のテープ形態に圧縮され得る。一実施形態では溶融繊維樹脂テープの形態をとることができるこの高温複合材料、すなわち溶融繊維樹脂複合材料トウプレグは、次に、高温のツール表面に適用される。ワークピース200の加工面の少なくとも選択された部分を熱可塑性樹脂の融点に近い高温に維持し111(図4E)、加圧下で連続する溶融薄層を圧縮することにより、連続する層が互いに接着し融合し、それによって、ニットラインと呼ばれることもあるコールドフローラインが排除、または実質的に排除される。したがって、本発明のin-situ溶融プロセスでは、ガス、誘導、赤外線、または他の既知の熱源であり得る別の熱源を使用して、圧密化前にワークピース、ツールまたは複合材の少なくとも選択された領域を加熱する。
【0030】
図6および図7、ならびに図5B図5Cの以下のプロセスに示される例示的な実施形態では、溶融繊維樹脂複合材料トウプレグの第1の層をワークピース200にラップまたは適用するステップの直前に、ワークピース200の少なくとも選択された部分を、溶融繊維樹脂複合材料トウプレグの融点まで加熱し120、それにより、ラッププロセス中に溶融繊維樹脂複合材料トウプレグの溶融状態を維持する。溶融繊維樹脂複合材料トウプレグの第1の層を、ワークピース125の加熱表面に適用する。溶融繊維樹脂複合材料トウプレグをワークピースの加熱表面に適用することにより、接着性が向上し、溶融繊維樹脂複合材料トウプレグ内の繊維の層が互いに対してスライドできるようになり、均一な張力が維持されてカテナリーおよびしわが実質的に排除される。
【0031】
その後、溶融繊維樹脂複合材料トウプレグのさらなる層を適用するとき、ラップされたワークピースの最外層の少なくとも選択された部分を加熱し130、その結果、溶融繊維樹脂複合材料トウプレグのさらなる層の適用またはオーバーラップ前に、繊維樹脂複合材料トウプレグの以前に適用された最外層が溶融される。その後、溶融繊維複合材料トウプレグの連続した、すなわち次の層を、溶融した基材層135の上にラップする。溶融繊維樹脂複合材料トウプレグの次の層を適用する前に、基材層、すなわち、繊維樹脂複合材料トウプレグの以前にラップされた層を溶融させることにより、溶融基材に溶融繊維樹脂複合材料トウプレグが適用される。これにより、連続する溶融複合材料層の相互接着性が向上し、さらに、上記溶融繊維樹脂複合材料トウプレグ内の個々のフィラメントが互いに対してスライドできるようになり、それによってまた、繊維樹脂複合オーバーラップ内のカテナリー、しわ、ひだを効果的に排除することができる。さらに、溶融繊維樹脂複合材料トウプレグが溶融基材繊維複合材料に適用されるとき、加圧下で、連続する層が圧縮および圧密化され115、それにより閉じ込められた空気が除去される。このプロセスは、プロセスが完了するまで継続される140。
【0032】
このプロセスは、図6および図7にも概略的に示されており、選択および調製された繊維束/トウ145は、含浸ツール150で溶融樹脂に含浸される。繊維束/トウ145は、互いに独立して作用する数千に及び得る個々のフィラメントから構成される。つまり、個々の各フィラメントは、互いに対してスライド、スリップ、またはせん断することができる。これらの個々のフィラメントは、その長さに応じて、複合材料の構造の全体的な性能を決定する。これらの個々のフィラメントの一部がより長い場合、最初は複合材料構造の機械的性能に寄与しない。
【0033】
これに関して、含浸ツール150は、マトリックス/樹脂を繊維束/トウ145に導入する。この特定の実施形態では、このツールは、溶融樹脂系を繊維束/トウ145に導入する。適切な性能を確保するために、個々のフィラメントはこの樹脂系でコーティングされている。この溶融状態では、個々のフィラメントは互いに対してスライド、スリップ、またはせん断することができる。本発明のin-situプロセスでは、繊維トウは、フィラメント巻き付けヘッド上で、またはフィラメント巻き付けヘッドに非常に近接した位置で、溶融樹脂に含浸される。さらに、繊維と樹脂とが加圧下で結合されて溶融繊維樹脂複合材料トウプレグ155を形成すると、溶融繊維樹脂複合材料トウプレグは一定の束幅および張力に保たれ、温度は融点に維持される。上述のように、張力は制御されており、上流側張力160は下流側張力165から分離されている。束幅および温度は上述のように制御される。繊維樹脂複合材料トウプレグ155によって形成された溶融薄層が含浸ツール150を離れるとき、薄層は溶融したままである。この溶融薄層が任意の加熱構造または他の加熱支持ツールを引き継ぐ任意の経路によって、個々のフィラメントが互いに対してスライド、スリップ、またはせん断することが可能になる。個々のフィラメントの動き(スライド、スリップ、またはせん断)はすべて、元の繊維束145に伝達、関連付けられる。伸長特性の低いフィラメントの場合、このことは特に当てはまる。
【0034】
溶融薄層繊維樹脂複合材料トウプレグ155が加熱セクション160および165に入ると、トウ内の個々の各フィラメントが互いに対してスライド、スリップ、およびせん断できるように溶融状態に保たれる。加熱セクション160および165には、溶融状態を維持する一連の機器が存在し得る。一連の機器は、この溶融状態を維持するローラー、加熱装置(赤外線、対流、および/またはレーザー)で構成することができる。
【0035】
上述のように、ラップされるワークピース200の少なくとも一部分を、溶融繊維樹脂複合材料トウプレグ155の融点まで加熱し120(図5B)、それにより、ラッププロセス中に繊維樹脂複合材料トウプレグの溶融状態を維持する。例示的な実施形態では、これは、加熱圧縮ローラー185によって達成される。加熱圧縮ローラー185は、ラップされるワークピース200の一部分を、または、ラッププロセスが継続される場合にはオーバーラップされる繊維樹脂複合材料の最外層の一部分を、融点まで加熱するため、繊維樹脂複合材料の最外層および溶融繊維樹脂複合材料トウプレグは、両方とも繊維樹脂複合材料の融点にある。第2の加熱圧縮ローラー180は、加圧下で、溶融層を圧縮および圧密化し、それにより閉じ込められた空気を除去する。
【0036】
局所的な複合材料構造190において、この構造の表面は、加熱システム185によって溶融状態まで加熱される。この複合材料マトリックス表面は、溶融薄層繊維樹脂複合材料トウプレグ155がこの表面に適用される位置195に(回転または他の手段により移動されて)移される。表面195および155は、両方とも溶融状態にある。局所加熱圧縮システム180は、温度および圧力を加えて、両方の溶融マトリックスを混合し、互いに接着させる。溶融薄層繊維樹脂複合材料トウプレグ155を局所的な溶融表面195に適用するとき、幾何学的表面経路のいかなる変化も繊維の長さを変え、この長さの変化はすべて元の乾燥繊維145に戻って伝達される。フィラメント薄層繊維樹脂複合材料トウプレグ155は溶融しているため、個々のフィラメントは互いに独立して作用する。したがって、個々のフィラメントは、互いに対してスライド、スリップ、またはせん断することがすることができる。
【0037】
位置205では、複合材料構造のこのセクション内における個々のフィラメントの大部分は、まっすぐな均一の一貫した状態である。つまり、個々のフィラメントは均一な一貫した張力を受けている。この構造に機械的に負荷をかけると、個々のフィラメントの大部分は複合材料の性能に寄与する。したがって、構造の性能は一貫して均一である。
【0038】
位置205では、構造の厚み全体にわたるマトリックス樹脂系は均一で一貫している。ラッププロセス中、ワークピース200に適用された溶融薄層繊維樹脂複合材料トウプレグ155が位置205を通過するとき、繊維樹脂複合材料トウプレグ155は樹脂の融点未満に冷却されることを理解されたい。繊維とマトリックス/樹脂とからなる溶融薄層が195の表面に適用されるとき、そこには明確に容易に観察できる境界層が存在する。領域195内と溶融薄層繊維樹脂複合材料トウプレグ155内とのマトリックス/樹脂ポリマー鎖215は分離されており、ポリマー鎖はこの境界を横切らない。ラッププロセス中にさらに熱および圧縮180が加えられると、マトリックス/樹脂層が圧縮されて強制的に混合されるため、これらの境界層は薄れて溶解する。ここでこの境界層を横切ると、ポリマー鎖は混合、強化され、均一な構造として動作する。
【0039】
in-situ溶融プロセスの使用により、カテナリー、ひだ、およびしわが減少または排除されるため、複合材料の性能も向上する。これに関して、炭素繊維樹脂トウプリプレグ内の個々の各フィラメントは、均等かつ均一な張力を受けることが可能になる。これが達成されるのは以下の理由による:トウプレグ内の樹脂系がプロセス全体にわたって溶融することにより、溶融繊維樹脂複合材料トウプレグ内の個々の各フィラメントが互いに対してスライドできるようになり、それによって溶融繊維樹脂複合材料トウプレグの機械的特性が最大限に発揮されて、層間せん断強度が増大する。これは、溶融繊維樹脂複合材料トウプレグ複合材内の炭素繊維の内層と外層とが互いに対してスライドできるため、繊維樹脂複合材料の繊維束内で均一な張力が得られるためである。さらに、本明細書に記載の熱可塑性in-situ溶融プロセスは、任意の複合材料製造装置で使用することができることが認識されよう。つまり、繊維配置機または例えば引抜成形機や類似の装置などの他の機器内で使用することができる。
【0040】
本発明をいくつかの実施形態の説明によって例示し、例示的な実施形態を詳細に説明したが、添付の特許請求の範囲をそのような詳細に限定またはいかなる意味でも制限することは出願人の意図ではない。さらなる修正が、当業者には容易に明らかになるであろう。したがって、本発明は、そのより広い態様において、特定の詳細、代表的な装置および方法、ならびに図示および説明された例示的な例に制限されない。したがって、出願人の一般的な発明概念の本質または範囲から逸脱することなく、そのような詳細から発展させることができる。
本発明は、以下の文章に開示される態様を含む。これらの文章は、本明細書の一部をなすが、Boards of AppealのJ15/88に従った特許請求の範囲を構成するものではない。
1.繊維樹脂複合オーバーラップを作成するためのin-situ溶融プロセスであって、
-繊維トウを選択するステップと、
-前記選択した繊維トウに適合する熱可塑性樹脂を選択するステップと、
-前記選択した熱可塑性樹脂を含浸させるための前記繊維トウを調製するステップと、
-前記繊維トウに含浸させるために前記熱可塑性樹脂を調製するステップと、
-前記熱可塑性樹脂の融点まで前記熱可塑性樹脂を加熱することにより、前記熱可塑性樹脂の粘度を低下させるステップと、
-フィラメント巻き付けヘッドに近接した位置で、前記調製した溶融熱可塑性樹脂を前記調製した繊維トウに含浸させ、それによって溶融繊維樹脂複合材料トウプレグを作成するステップと、
-ワークピースの選択した部分を前記熱可塑性樹脂の前記融点まで加熱するステップと、
-前記溶融繊維樹脂複合材料トウプレグの第1の層を前記ワークピースの前記加熱表面に適用することにより、前記溶融繊維樹脂複合材料トウプレグの溶融状態をラップ処理中に維持し、それによって前記溶融繊維樹脂複合材料トウプレグがワークピースの加熱表面により効率的に接着するステップと、
-前記溶融繊維樹脂複合材料トウプレグの適用層を有する前記ワークピースの選択した部分を加熱し、前記溶融繊維樹脂複合材料トウプレグの前記適用層が、前記溶融繊維樹脂複合材料トウプレグのさらなる層を適用する前に再溶融されるステップと、
-前記溶融繊維樹脂複合材料トウプレグのさらなる層を繊維樹脂複合材料トウプレグの前記溶融した適用層に適用し、それによって溶融繊維樹脂複合材料トウプレグを前記ワークピースに以前に適用した溶融繊維樹脂複合材料トウプレグの所定の領域に適用することにより、連続した溶融繊維樹脂複合材料の層を互いに接着させ、その結果、層間せん断強度が向上し、さらに前記溶融トウプレグ内の個々のフィラメントが相互にスライドすることが可能になり、それによって前記繊維樹脂複合オーバーラップ内のカテナリー、しわ、およびひだが効果的に排除されるステップと、
加圧下で前記溶融繊維トウプレグ層を互いに圧縮および圧密化することにより、閉じ込められた空気を除去するステップとを含む、in-situ溶融プロセス。
2.前記ワークピースがタイプIIの圧力容器である、上記文章1に記載の繊維樹脂複合オーバーラップを作成するためのin-situ溶融プロセス。
3.前記ワークピースがタイプIIIの圧力容器である、上記文章1に記載の繊維樹脂複合オーバーラップを作成するためのin-situ溶融プロセス。
4.前記ワークピースがタイプIVの圧力容器である、上記文章1に記載の繊維樹脂複合オーバーラップを作成するためのin-situ溶融プロセス。
5.前記ワークピースがタイプVの圧力容器である、上記文章1に記載の繊維樹脂複合オーバーラップを作成するためのin-situ溶融プロセス。
6.前記繊維が、炭素繊維、ガラス繊維、天然繊維、ナノ繊維、およびアラミド繊維からなる群から選択される、上記文章1に記載の繊維樹脂複合オーバーラップを作成するためのin-situ溶融プロセス。
7.前記熱可塑性樹脂が、ナイロン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、およびポリエーテルエーテルケトン樹脂からなる群から選択される、上記文章1に記載の繊維樹脂複合オーバーラップを作成するためのin-situ溶融プロセス。
8.前記熱可塑性樹脂がペレット形態である、上記文章1に記載の繊維樹脂複合オーバーラップを作成するためのin-situ溶融プロセス。
9.前記熱可塑性樹脂がテープ形態である、上記文章1に記載の繊維樹脂複合オーバーラップを作成するためのin-situ溶融プロセス。
10.前記熱可塑性樹脂がスレッド状である、上記文章1に記載の繊維樹脂複合オーバーラップを作成するためのin-situ溶融プロセス。
11.前記熱可塑性樹脂を含浸させるための前記繊維トウを調製するステップが、前記繊維トウを乾燥させるステップと、前記繊維トウを選択した束幅に広げるステップと、前記繊維トウを選択した温度に加熱するステップとを含み、前記選択した温度が前記選択した熱可塑性樹脂のほぼ融点である、上記文章1に記載の繊維樹脂複合オーバーラップを作成するためのin-situ溶融プロセス。
12.繊維樹脂複合オーバーラップを作成するためのin-situ溶融プロセスであって、
-繊維トウを選択するステップと、
-前記選択した繊維トウに適合する熱可塑性樹脂を選択するステップと、
-前記選択した熱可塑性樹脂を含浸させるための前記繊維トウを調製するステップであって、前記熱可塑性樹脂を含浸させるための前記繊維トウを調製するステップが、前記繊維トウを乾燥させるステップと、前記繊維トウを選択した束幅に広げるステップと、前記繊維トウを選択した温度に加熱するステップとを含み、前記選択した温度が前記選択した熱可塑性樹脂のほぼ融点である、調製するステップと、
-前記繊維トウに含浸させるために前記熱可塑性樹脂を調製するステップと、
-前記熱可塑性樹脂の融点まで前記熱可塑性樹脂を加熱することにより、前記熱可塑性樹脂の粘度を低下させるステップと、
-フィラメント巻き付けヘッドに近接した位置で、前記調製した溶融熱可塑性樹脂を前記調製した繊維トウに含浸させ、それによって溶融繊維樹脂複合材料トウプレグを作成するステップと、
-ワークピースの選択した部分を前記熱可塑性樹脂の前記融点まで加熱するステップと、
-前記溶融繊維樹脂複合材料トウプレグの第1の層を前記ワークピースの前記加熱表面に適用することにより、前記溶融繊維トウプレグの溶融状態をラップ処理中に維持し、それによって前記溶融繊維樹脂複合材料トウプレグが前記ワークピースの前記加熱表面により効率的に接着するステップと、
-前記繊維樹脂複合材料トウプレグの適用層を有する前記ワークピースの選択した部分を加熱し、前記繊維樹脂複合材料トウプレグの前記適用層が、溶融繊維樹脂複合材料トウプレグのさらなる層を適用する前に溶融されるステップと、
-溶融繊維樹脂複合材料トウプレグのさらなる層を繊維樹脂複合材料トウプレグの前記溶融した適用層に適用し、それによって前記溶融繊維樹脂複合材料トウプレグを前記ワークピースに以前に適用した溶融繊維樹脂複合材料トウプレグの所定の領域に適用することにより、連続した溶融繊維樹脂複合材料トウプレグの層を互いに接着させ、さらに前記溶融繊維樹脂複合材料トウプレグ内の個々のフィラメントが相互にスライドすることが可能になり、それによって前記繊維樹脂複合オーバーラップ内のカテナリー、しわ、およびひだが効果的に排除されるステップと、
-加圧下で前記溶融繊維樹脂複合材料トウプレグ層を互いに圧縮および圧密化することにより、閉じ込められた空気を除去するステップとを含む、in-situ溶融プロセス。
13.前記ワークピースが、タイプIIの圧力容器、タイプIIIの圧力容器、タイプIVの圧力容器、およびタイプVの圧力容器からなる群から選択される、上記文章12に記載の繊維樹脂複合オーバーラップを作成するためのin-situ溶融プロセス。
14.前記繊維が、炭素繊維、ガラス繊維、天然繊維、ナノ繊維、およびアラミド繊維からなる群から選択される、上記文章12に記載の繊維樹脂複合オーバーラップを作成するためのin-situ溶融プロセス。
15.前記熱可塑性樹脂が、ナイロン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、およびポリエーテルエーテルケトン樹脂からなる群から選択される、上記文章12に記載の繊維樹脂複合オーバーラップを作成するためのin-situ溶融プロセス。
16.前記熱可塑性樹脂がペレット形態である、上記文章12に記載の繊維樹脂複合オーバーラップを作成するためのin-situ溶融プロセス。
17.前記熱可塑性樹脂がテープ形態である、上記文章12に記載の繊維樹脂複合オーバーラップを作成するためのin-situ溶融プロセス。
18.前記熱可塑性樹脂がスレッド状である、上記文章12に記載の繊維樹脂複合オーバーラップを作成するためのin-situ溶融プロセス。
なお、本発明に包含される諸態様または諸実施形態は、以下のようにも要約され得る。
[1]
繊維樹脂複合オーバーラップを作成するためのin-situ溶融プロセスであって、
繊維トウを選択するステップと、
前記選択した繊維トウに適合する熱可塑性樹脂を選択するステップと、
前記選択した熱可塑性樹脂を含浸させるための前記繊維トウを調製するステップと、
前記繊維トウに含浸させるために前記熱可塑性樹脂を調製するステップと、
前記熱可塑性樹脂の融点まで前記熱可塑性樹脂を加熱することにより、前記熱可塑性樹脂の粘度を低下させるステップと、
フィラメント巻き付けヘッドに近接した位置で、前記調製した溶融熱可塑性樹脂を前記調製した繊維トウに含浸させ、それによって溶融繊維樹脂複合材料トウプレグを作成するステップと、
ワークピースの選択した部分を前記熱可塑性樹脂の前記融点まで加熱するステップと、
前記溶融繊維樹脂複合材料トウプレグの第1の層を前記ワークピースの前記加熱表面に適用することにより、前記溶融繊維樹脂複合材料トウプレグの溶融状態をラップ処理中に維持し、それによって前記溶融繊維樹脂複合材料トウプレグが前記ワークピースの前記加熱表面により効率的に接着するステップと、
前記溶融繊維樹脂複合材料トウプレグの以前に適用した層の選択した部分を加熱し、前記溶融繊維樹脂複合材料トウプレグの前記以前に適用した層が、前記溶融繊維樹脂複合材料トウプレグのさらなる層を適用する前に再溶融されるステップと、
前記溶融繊維樹脂複合材料トウプレグのさらなる層を繊維樹脂複合材料トウプレグの前記溶融した以前に適用した層に適用し、それによって溶融繊維樹脂複合材料トウプレグを前記ワークピースに以前に適用した溶融繊維樹脂複合材料トウプレグの所定の領域に適用することにより、連続した溶融繊維樹脂複合材料の層を互いに接着させ、その結果、層間せん断強度が向上し、さらに前記溶融トウプレグ内の個々のフィラメントが相互にスライドすることが可能になり、それによって前記繊維樹脂複合オーバーラップ内のカテナリー、しわ、およびひだが効果的に除去されるステップと、
加圧下で前記溶融繊維トウプレグ層を互いに圧縮および圧密化することにより、閉じ込められた空気を除去するステップとを含む、in-situ溶融プロセス。
[2]
前記ワークピースが、タイプIIの圧力容器、タイプIIIの圧力容器、タイプIVの圧力容器、またはタイプVの圧力容器である、上記項目1に記載の繊維樹脂複合オーバーラップを作成するためのin-situ溶融プロセス。
[3]
前記繊維が、炭素繊維、ガラス繊維、天然繊維、ナノ繊維、およびアラミド繊維からなる群から選択される、上記項目1~2の少なくとも1項に記載の繊維樹脂複合オーバーラップを作成するためのin-situ溶融プロセス。
[4]
前記熱可塑性樹脂が、ナイロン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、およびポリエーテルエーテルケトン樹脂からなる群から選択される、上記項目1~3の少なくとも1項に記載の繊維樹脂複合オーバーラップを作成するためのin-situ溶融プロセス。
[5]
前記熱可塑性樹脂がペレット形態である、上記項目1~4の少なくとも1項に記載の繊維樹脂複合オーバーラップを作成するためのin-situ溶融プロセス。
[6]
前記熱可塑性樹脂がテープ形態である、上記項目1~5の少なくとも1項に記載の繊維樹脂複合オーバーラップを作成するためのin-situ溶融プロセス。
[7]
前記熱可塑性樹脂がスレッド状である、上記項目1~6の少なくとも1項に記載の繊維樹脂複合オーバーラップを作成するためのin-situ溶融プロセス。
[8]
前記熱可塑性樹脂を含浸させるための前記繊維トウを調製するステップが、前記繊維トウを乾燥させるステップと、前記繊維トウを選択した束幅に広げるステップと、前記繊維トウを選択した温度に加熱するステップとを含み、前記選択した温度が前記選択した熱可塑性樹脂のほぼ融点である、上記項目1~7の少なくとも1項に記載の繊維樹脂複合オーバーラップを作成するためのin-situ溶融プロセス。
[9]
前記繊維トウがサイジングとしてポリプロピレンまたはナイロン樹脂を有する、上記項目1~8の少なくとも1項に記載の繊維樹脂複合オーバーラップを作成するためのin-situ溶融プロセス。
[10]
前記繊維トウがオーブン乾燥機または赤外線乾燥機で乾燥される、上記項目1~9の少なくとも1項に記載の繊維樹脂複合オーバーラップを作成するためのin-situ溶融プロセス。
[11]
前記熱可塑性樹脂が、ホッパー乾燥機、伝導ローラー、または赤外線乾燥機によって乾燥される、上記項目1~10の少なくとも1項に記載の繊維樹脂複合オーバーラップを作成するためのin-situ溶融プロセス。
[12]
繊維樹脂複合オーバーラップを作成するためのin-situ溶融プロセスであって、
繊維トウを選択するステップと、
前記選択した繊維トウに適合する熱可塑性樹脂を選択するステップと、
前記選択した熱可塑性樹脂を含浸させるための前記繊維トウを調製するステップであって、前記熱可塑性樹脂を含浸させるための前記繊維トウを調製するステップが、前記繊維トウを乾燥させるステップと、前記繊維トウを選択した束幅に広げるステップと、前記繊維トウを選択した温度に加熱するステップとを含み、前記選択した温度が前記選択した熱可塑性樹脂のほぼ融点である、調製するステップと、
前記繊維トウに含浸させるために前記熱可塑性樹脂を調製するステップと、
前記熱可塑性樹脂の融点まで前記熱可塑性樹脂を加熱することにより、前記熱可塑性樹脂の粘度を低下させるステップと、
フィラメント巻き付けヘッドに近接した位置で、前記調製した溶融熱可塑性樹脂を前記調製した繊維トウに含浸させて、溶融繊維樹脂複合材料トウプレグを作成するステップと、
ワークピースの選択した部分を前記熱可塑性樹脂の前記融点まで加熱するステップと、
前記溶融繊維樹脂複合材料トウプレグの第1の層を前記ワークピースの前記加熱表面に適用することにより、前記溶融繊維トウプレグの溶融状態をラップ処理中に維持し、それによって前記溶融繊維樹脂複合材料トウプレグが前記ワークピースの前記加熱表面により効率的に接着するステップと、
前記繊維樹脂複合材料トウプレグの以前に適用した層の選択した部分を加熱し、前記繊維樹脂複合材料トウプレグの前記以前に適用した層が、溶融繊維樹脂複合材料トウプレグのさらなる層を適用する前に溶融されるステップと、
溶融繊維樹脂複合材料トウプレグのさらなる層を繊維樹脂複合材料トウプレグの前記溶融した以前に適用した層に適用し、それによって前記溶融繊維樹脂複合材料トウプレグを前記ワークピースに以前に適用した溶融繊維樹脂複合材料トウプレグの所定の領域に適用することにより、連続した溶融繊維樹脂複合材料トウプレグの層を互いに接着させ、さらに前記溶融繊維樹脂複合材料トウプレグ内の個々のフィラメントが相互にスライドすることが可能になり、それによって前記繊維樹脂複合オーバーラップ内のカテナリー、しわ、およびひだが効果的に排除されるステップと、
加圧下で前記溶融繊維樹脂複合材料トウプレグ層を互いに圧縮および圧密化することにより、閉じ込められた空気を除去するステップとを含む、in-situ溶融プロセス。
[13]
前記ワークピースが、タイプIIの圧力容器、タイプIIIの圧力容器、タイプIVの圧力容器、およびタイプVの圧力容器からなる群から選択される、上記項目12に記載の繊維樹脂複合オーバーラップを作成するためのin-situ溶融プロセス。
[14]
前記繊維が、炭素繊維、ガラス繊維、天然繊維、ナノ繊維、およびアラミド繊維からなる群から選択される、上記項目12または13に記載の繊維樹脂複合オーバーラップを作成するためのin-situ溶融プロセス。
[15]
前記熱可塑性樹脂が、ナイロン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、およびポリエーテルエーテルケトン樹脂からなる群から選択される、上記項目12~14の少なくとも1項に記載の繊維樹脂複合オーバーラップを作成するためのin-situ溶融プロセス。
[16]
前記熱可塑性樹脂がペレット形態である、上記項目12~15の少なくとも1項に記載の繊維樹脂複合オーバーラップを作成するためのin-situ溶融プロセス。
[17]
前記熱可塑性樹脂がテープ形態である、上記項目12~16の少なくとも1項に記載の繊維樹脂複合オーバーラップを作成するためのin-situ溶融プロセス。
[18]
前記熱可塑性樹脂がスレッド状である、上記項目12~17の少なくとも1項に記載の繊維樹脂複合オーバーラップを作成するためのin-situ溶融プロセス。
[19]
前記繊維トウがサイジングとしてポリプロピレンまたはナイロン樹脂を有する、上記項目12~18の少なくとも1項に記載の繊維樹脂複合オーバーラップを作成するためのin-situ溶融プロセス。
[20]
前記繊維トウがオーブン乾燥機または赤外線乾燥機で乾燥される、上記項目12~19の少なくとも1項に記載の繊維樹脂複合オーバーラップを作成するためのin-situ溶融プロセス。
[21]
前記熱可塑性樹脂が、ホッパー乾燥機、伝導ローラー、または赤外線乾燥機によって乾燥される、上記項目12~20の少なくとも1項に記載の繊維樹脂複合オーバーラップを作成するためのin-situ溶融プロセス。
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5A
図5B
図5C
図6
図7