(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】分子ナノタグ
(51)【国際特許分類】
G01N 33/543 20060101AFI20240523BHJP
G01N 15/14 20240101ALI20240523BHJP
C12N 15/115 20100101ALN20240523BHJP
【FI】
G01N33/543 525U
G01N33/543 525W
G01N33/543 575
G01N33/543 597
G01N15/14 C
C12N15/115 ZNA
(21)【出願番号】P 2019521089
(86)(22)【出願日】2017-10-23
(86)【国際出願番号】 US2017057928
(87)【国際公開番号】W WO2018076025
(87)【国際公開日】2018-04-26
【審査請求日】2020-10-06
(32)【優先日】2016-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508285606
【氏名又は名称】ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ, アズ リプレゼンテッド バイ ザ セクレタリー, デパートメント オブ ヘルス アンド ヒューマン サービシーズ
【氏名又は名称原語表記】The United States of America,as represented by the Secretary,Department of Health and Human Services
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ, ジェニファー シー.
(72)【発明者】
【氏名】モラレス-カストレサナ, アイゼア
(72)【発明者】
【氏名】ベルゾフスキー, ジェイ エー.
(72)【発明者】
【氏名】ロスナー, アリ
(72)【発明者】
【氏名】ウェルシュ, ジョシュア
【審査官】小澤 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-023964(JP,A)
【文献】特表2005-532456(JP,A)
【文献】特開2009-085840(JP,A)
【文献】ZHOU, W. et al.,Tandem Phosphorothioate Modifications for DNA Adsorption Strength and Polarity Control on Gold Nanoparticles,ACS Appl. Mater. Interfaces,2014年,Vol.6, No.17,p.14795-14800
【文献】中野幸二,DNAの固定化と遺伝子センサーへの応用,表面科学,2004年,Vol.25, No.12,p.744-751
【文献】LIU, Q. et al.,Precise organization of metal nanoparticles on DNA origami template,Methods,2014年,Vol.67,p.205-214
【文献】LEE, S. E. et al.,Reversible Aptamer-Au Plasmon Rulers for Secreted Single Molecules,Nano Lett.,2015年,Vol.15, No.7,p.4564-4570
【文献】KUMAR, A. et al.,Assembling gold nanoparticles in solution using phosphorothioate DNA as structural interconnects,Current Science,Vol.84, No.1,p.71-74
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/543
G01N 15/14
C12N 15/115
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノスケール分子タグを含む、顕微鏡または高分解能フローサイトメトリーによりタグを個々に検出する方法において使用するための組成物であって、
前記ナノスケール分子タグが、以下:
(i)直径30~80nmのコアナノ粒子であって、金、銀、またはその両方を含む貴金属を含むコアナノ粒子と、
(ii)第1の部分と第2の部分とを有する一本鎖DNA分子を含む被覆であって、前記第1の部分はホスホロチオエートDNAを含み、前記ホスホロチオエートDNAは、前記コアナノ粒子の原子価を1の機能的結合部位に低減し、そして、前記第2の部分は、前記コアナノ粒子に結合せず、1つの結合部位を有する官能化末端を含み、ここで、前記官能化末端が、第2の結合パートナーに対して特異的に結合することができる第1の結合パートナーを含み、ここで、前記第1の結合パートナーおよび前記第2の結合パートナーが:
i)ベンジルグアニンとSNAP-タグ;
ii)ベンジルグアニンとCLIP-タグ;
iii)ビオチンとストレプトアビジン;
iv)一本鎖オリゴヌクレオチドと相補的一本鎖オリゴヌクレオチド;
v)一本鎖オリゴヌクレオチドとアプタマー;
vi)DCFPyLと前立腺特異的膜抗原(PSMA);
vii)受容体とリガンド;
viii)リガンドと受容体;
ix)抗原と抗体;および
x)抗体と抗原
からなる群から選択される、被覆と、
(iii)前記コアナノ粒子を囲むシェルであって、前記シェルは、金、銀、またはその両方の層からなる群から選択されるか、あるいは、核酸またはPEGを含む、シェル、
を含み、
前記組成物において、
前記被覆の前記第1の部分は前記シェルの表面に結合し、そして、前記第2の部分は、前記シェルに結合せず、
前記コアナノ粒子、前記シェル、および前記被覆のうちのいずれか1つまたは任意の組み合わせが、顕微鏡、または蛍光および/もしくは光散乱の強度もしくはパワーを測定する装置によって検出可能である前記ナノスケール分子タグの蛍光、光散乱、および/またはリガンド結合特性に寄与し、
構成要素(i)、(ii)、および(iii)が共に以下の機能性:
(a)アセンブルされた構造の光散乱の強度もしくはパワーが、前記光散乱の強度もしくはパワーを検出する前記装置の基準ノイズの特定のレベルより上で検出可能であること;
(b)蛍光強度が、機器の検出限界より上で検出されるために十分な輝度を有すること;および/または
(c)リガンド特異性がリガンド結合構成要素によって付与されること
を提供する、組成物。
【請求項2】
前記コアナノ粒子が、光散乱の強度またはパワーを測定する前記装置によって検出可能である、高い屈折率、表面形状、または光散乱特性に寄与する他の属性を有するナノ材料からなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
単一のアセンブルされたナノスケール分子タグが、顕微鏡または光散乱の強度もしくはパワーを測定する前記装置で検出可能である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ナノスケール分子タグの前記構成要素の屈折率、吸光係数、直径、共鳴、透過率、および/または反射によって、1つまたは複数の光散乱波長に関する検出装置の感度限界(Y
limit)より大きいパワーの収集がもたらされる、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記抗原が、腫瘍関連抗原を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記抗原がタンパク質タグを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記ナノスケール分子タグがフルオロフォアを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
以下:
(i)直径約100nm未満のコアナノ粒子と、
(ii)第1の部分と第2の部分とを含む被覆であって、前記第1の部分は、前記コアナノ粒子の表面に結合し、前記第2の部分は、前記コアナノ粒子に結合せず、固定数の結合部位を有する官能化末端を含む、被覆と
を含むナノスケール分子タグを含む組成物であって、
前記コアナノ粒子、および前記被覆のうちのいずれか1つまたは任意の組み合わせが、顕微鏡、または蛍光および/もしくは光散乱の強度もしくはパワーを測定する装置によって検出可能である前記ナノスケール分子タグの蛍光、光散乱、および/またはリガンド結合特性に寄与し、
構成要素(i)および(ii)が共に以下の機能性:
(a)アセンブルされた構造の光散乱の強度もしくはパワーが、前記光散乱の強度もしくはパワーを検出する前記装置の基準ノイズの特定のレベルより上で検出可能であること;
(b)蛍光強度が、機器の検出限界より上で検出されるために十分な輝度を有すること;および/または
(c)リガンド特異性がリガンド結合構成要素によって付与されること
を提供し、
前記組成物は、フローサイトメーターにおいて、試料中の単一の標的分子を検出するための方法において使用するための組成物であり、前記方法は;
前記試料に、ナノスケール分子タグを接触させるステップであって、前記ナノスケール分子タグの官能化末端が、前記試料中に存在する場合には前記標的分子に特異的に結合する、ステップと、
光散乱の強度またはパワーを測定する機器を使用して前記試料を分析するステップであって、前記機器は、側方散乱もしくは前方光散乱の検出、または蛍光の検出、またはその任意の組み合わせによって、前記単一の標的分子に結合した個々のナノスケール分子タグを検出するように小粒子を解析するために構成される、ステップと
を含む、組成物。
【請求項9】
請求項8に記載の組成物であって、前記ナノスケール分子タグが、
(iii)前記コアナノ粒子を囲むシェル
をさらに含み、
前記被覆の前記第1の部分は前記シェルの表面に結合し、そして、前記第2の部分は、前記シェルに結合せず、
前記コアナノ粒子、前記シェル、および前記被覆のうちのいずれか1つまたは任意の組み合わせが、顕微鏡、または蛍光および/もしくは光散乱の強度もしくはパワーを測定する装置によって検出可能である前記ナノスケール分子タグの蛍光、光散乱、および/またはリガンド結合特性に寄与し、
構成要素(i)、(ii)、および(iii)が共に以下の機能性:
(a)アセンブルされた構造の光散乱の強度もしくはパワーが、前記光散乱の強度もしくはパワーを検出する前記装置の基準ノイズの特定のレベルより上で検出可能であること;
(b)蛍光強度が、機器の検出限界より上で検出されるために十分な輝度を有すること;および/または
(c)リガンド特異性がリガンド結合構成要素によって付与されること
を提供する、組成物。
【請求項10】
前記試料が、少なくとも2つの側方散乱チャネルを使用して光散乱の強度またはパワーを測定する前記装置において分析される、請求項8または9に記載の組成物。
【請求項11】
第1の側方散乱チャネルがトリガーとして使用され、第2の側方散乱チャネルが検出器として使用される、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
並列した閾値下事象を検出するステップを含む、請求項8~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記試料が生物試料である、請求項8~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記生物試料が生体膜を含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記生物試料が細胞外小胞を含む、請求項13または請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記単一の標的分子が腫瘍抗原を含む、請求項8~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記腫瘍抗原が、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、上皮増殖因子受容体(EGFR)、HER-2/neu、上皮細胞接着分子(EpCAM)、CD24、CD133、CD47、CD147、PD-L1、GPC-1、Muc-1、CD44、CD26、CD147、EpCAM、PSMA、またはPD-L1を含む、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
以下:
(i)コアナノ粒子を含む構成要素であって、200nmまたは100nmまたは50nm未満のアセンブルされた直径または長さを有する構成要素と、
(ii)所望の蛍光および光散乱特性に寄与する構成要素と、
(iii)第1の部分と第2の部分とを有する一本鎖核酸分子を含む構成要素であって、前記第1の部分が、ナノ粒子の原子価を1の機能的結合部位に低減する、前記コアナノ粒子の表面に結合するホスホロチオエートDNAを含む、構成要素と、
(iv)指定された標的に関する機能的リガンドに被覆結合部位を接続するためのリンカーと、
(v)指定された標的に関する機能的リガンド(タンパク質、ヌクレオチド、炭水化物、または他のリガンド結合要素からなる)と
を含むナノスケール分子タグを含む
、高分解能フローサイトメトリーによりタグを個々に検出する方法において使用するための組成物であって、
ここで、前記組成物は、前記構成要素が、前記コアナノ粒子、シェル、および、被覆を含み、ここで、前記コアナノ粒子、前記シェル、および前記被覆のうちのいずれか1つまたは任意の組み合わせが
、蛍光および/もしくは光散乱の強度もしくはパワーを測定する装置によって検出可能である前記ナノスケール分子タグの蛍光、光散乱、および/またはリガンド結合特性に寄与する、組成物であって、
ここで、前記組成物は、フローサイトメーターにおいて、試料中の単一の標的分子を検出するための方法において使用するための組成物であり、
ここで、前記方法は;
前記試料に、ナノスケール分子タグを接触させるステップであって、前記ナノスケール分子タグの官能化末端が、前記試料中に存在する場合には前記標的分子に特異的に結合する、ステップと、
光散乱の強度またはパワーを測定する機器を使用して前記試料を分析するステップであって、前記機器は、側方散乱もしくは前方光散乱の検出、または蛍光の検出、またはその任意の組み合わせによって、前記単一の標的分子に結合した個々のナノスケール分子タグを検出するように小粒子を解析するために構成される、ステップと
を含む、組成物。
【請求項19】
バイオマーカーを有するEVを含むサブミクロン粒子を検出する方法において使用するための、ナノスケール分子タグを含む組成物であって、
ここで、前記組成物は、前記バイオマーカーが、前記ナノスケール分子タグを用いて検出され、機能的リガンドが前記バイオマーカーに対して特異的である、組成物であって、前記ナノスケール分子タグが、以下:
(i)直径約100nm未満のコアナノ粒子と、
(ii)第1の部分と第2の部分とを含む被覆であって、前記第1の部分は、前記コアナノ粒子の表面に結合し、前記第2の部分は、前記コアナノ粒子に結合せず、固定数の結合部位を有する官能化末端を含む、被覆と
を含み、
前記コアナノ粒子、および前記被覆のうちのいずれか1つまたは任意の組み合わせが、顕微鏡、または蛍光および/もしくは光散乱の強度もしくはパワーを測定する装置によって検出可能である前記ナノスケール分子タグの蛍光、光散乱、および/またはリガンド結合特性に寄与し、
構成要素(i)および(ii)が共に以下の機能性:
(a)アセンブルされた構造の光散乱の強度もしくはパワーが、前記光散乱の強度もしくはパワーを検出する前記装置の基準ノイズの特定のレベルより上で検出可能であること;
(b)蛍光強度が、機器の検出限界より上で検出されるために十分な輝度を有すること;および/または
(c)リガンド特異性がリガンド結合構成要素によって付与されること
を提供する、組成物。
【請求項20】
請求項19に記載の組成物であって、前記ナノスケール分子タグが、
(iii)前記コアナノ粒子を囲むシェル、
をさらに含み、
前記被覆の前記第1の部分は前記シェルの表面に結合し、そして、前記第2の部分は、前記シェルに結合せず、
前記コアナノ粒子、前記シェル、および前記被覆のうちのいずれか1つまたは任意の組み合わせが、顕微鏡、または蛍光および/もしくは光散乱の強度もしくはパワーを測定する装置によって検出可能である前記ナノスケール分子タグの蛍光、光散乱、および/またはリガンド結合特性に寄与し、
構成要素(i)、(ii)、および(iii)が共に以下の機能性:
(a)アセンブルされた構造の光散乱の強度もしくはパワーが、前記光散乱の強度もしくはパワーを検出する前記装置の基準ノイズの特定のレベルより上で検出可能であること;
(b)蛍光強度が、機器の検出限界より上で検出されるために十分な輝度を有すること;および/または
(c)リガンド特異性がリガンド結合構成要素によって付与されること
を提供する、組成物。
【請求項21】
前記バイオマーカーが、腫瘍抗原を含み、前記サブミクロン粒子が、前記ナノスケール分子タグで染色され、前記機能的リガンドが前記腫瘍抗原に対して特異的であり、次いで顕微鏡または装置を使用して染色された前記サブミクロン粒子を検出する、請求項19または20に記載の組成物。
【請求項22】
前記腫瘍抗原が、PSMA、メソテリン、EpCam、HER2、EGRF、CD24、CD133、CD47、CD147、PD-L1、GPC-1、またはMuc-1である、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記バイオマーカーが、ウイルス抗原を含み、前記方法が、前記機能的リガンドが前記ウイルス抗原に対して特異的である、前記ナノスケール分子タグで前記サブミクロン粒子を染色するステップと、次いで顕微鏡または装置を使用して染色された前記サブミクロン粒子を検出するステップとを含む、請求項19または20に記載の組成物。
【請求項24】
前記ウイルス抗原が、HIV、C型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルス、HTLV-I、エプスタインバーウイルス、または他のウイルス病原体に由来する、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記バイオマーカーが、免疫系細胞抗原またはマーカーを含み、前記方法が、前記機能的リガンドが前記免疫系細胞抗原またはマーカーに対して特異的である、前記ナノスケール分子タグで前記サブミクロン粒子を染色するステップと、次いで顕微鏡または装置を使用して染色された前記サブミクロン粒子を検出するステップとを含む、請求項19または20に記載の組成物。
【請求項26】
前記免疫系細胞抗原またはマーカーが、MHCクラスII抗原、PD-L1、CD80、CD86、CD83、CD11c、CD11b、CD3、CD4、CD8、CD19、CD20、または他の任意の免疫細胞バイオマーカーを含む、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記バイオマーカーが、疾患抗原またはマーカーを含み、前記方法が、前記機能的リガンドが前記疾患抗原またはマーカーに対して特異的である、前記ナノスケール分子タグで前記サブミクロン粒子を染色するステップと、次いで顕微鏡または装置を使用して染色された前記サブミクロン粒子を検出するステップとを含む、請求項19または20に記載の組成物。
【請求項28】
前記疾患抗原またはマーカーが、アルツハイマー病、多発性硬化症、リウマチ性関節炎、糖尿病、炎症性腸疾患、リウマチ疾患、炎症性疾患、内分泌疾患、消化器疾患、神経疾患、自己免疫疾患、心血管疾患、または腎疾患のマーカーを含む、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
1つまたは複数のナノスケール分子タグを個々に検出するために、一般的なデコンボリューション法をスペクトル散乱データに適用する、1つまたは複数の標的を検出するための、1つまたは複数のナノスケール分子タグを含む組成物であって、ここで、各ナノスケール分子タグは、以下:
(i)直径約100nm未満のコアナノ粒子と、
(ii)第1の部分と第2の部分とを含む被覆であって、前記第1の部分は、前記コアナノ粒子の表面に結合し、前記第2の部分は、前記コアナノ粒子に結合せず、固定数の結合部位を有する官能化末端を含む、被覆と
を含み、
前記コアナノ粒子、および前記被覆のうちのいずれか1つまたは任意の組み合わせが、顕微鏡、または蛍光および/もしくは光散乱の強度もしくはパワーを測定する装置によって検出可能である前記ナノスケール分子タグの蛍光、光散乱、および/またはリガンド結合特性に寄与し、
構成要素(i)および(ii)が共に以下の機能性:
(a)アセンブルされた構造の光散乱の強度もしくはパワーが、前記光散乱の強度もしくはパワーを検出する前記装置の基準ノイズの特定のレベルより上で検出可能であること;
(b)蛍光強度が、機器の検出限界より上で検出されるために十分な輝度を有すること;および/または
(c)リガンド特異性がリガンド結合構成要素によって付与されること
を提供する、
組成物。
【請求項30】
請求項29に記載の組成物であって、前記ナノスケール分子タグが、
(iii)前記コアナノ粒子を囲むシェル、
をさらに含み、
前記被覆の前記第1の部分は前記シェルの表面に結合し、そして、前記第2の部分は、前記シェルに結合せず、
前記コアナノ粒子、前記シェル、および前記被覆のうちのいずれか1つまたは任意の組み合わせが、顕微鏡、または蛍光および/もしくは光散乱の強度もしくはパワーを測定する装置によって検出可能である前記ナノスケール分子タグの蛍光、光散乱、および/またはリガンド結合特性に寄与し、
構成要素(i)、(ii)、および(iii)が共に以下の機能性:
(a)アセンブルされた構造の光散乱の強度もしくはパワーが、前記光散乱の強度もしくはパワーを検出する前記装置の基準ノイズの特定のレベルより上で検出可能であること;
(b)蛍光強度が、機器の検出限界より上で検出されるために十分な輝度を有すること;および/または
(c)リガンド特異性がリガンド結合構成要素によって付与されること
を提供する、組成物。
【請求項31】
下流のアッセイにおいて選別された標的の選別および使用のために、単一のまたはまれなエピトープ感度を用いて1つまたは複数の標的を検出するための、1つまたは複数のナノスケール分子タグを含む組成物であって、ここで、各ナノスケール分子タグは、以下:
(i)直径約100nm未満のコアナノ粒子と、
(ii)第1の部分と第2の部分とを含む被覆であって、前記第1の部分は、前記コアナノ粒子の表面に結合し、前記第2の部分は、前記コアナノ粒子に結合せず、固定数の結合部位を有する官能化末端を含む、被覆と
を含み、
前記コアナノ粒子、および前記被覆のうちのいずれか1つまたは任意の組み合わせが、顕微鏡、または蛍光および/もしくは光散乱の強度もしくはパワーを測定する装置によって検出可能である前記ナノスケール分子タグの蛍光、光散乱、および/またはリガンド結合特性に寄与し、
構成要素(i)および(ii)が共に以下の機能性:
(a)アセンブルされた構造の光散乱の強度もしくはパワーが、前記光散乱の強度もしくはパワーを検出する前記装置の基準ノイズの特定のレベルより上で検出可能であること;
(b)蛍光強度が、機器の検出限界より上で検出されるために十分な輝度を有すること;および/または
(c)リガンド特異性がリガンド結合構成要素によって付与されること
を提供し、
ここで、前記被覆が量子ナノ結晶の表面に対して親和性を有するポリマーを含み、前記ポリマーがホスホロチオエートDNAを含む核酸分子を含み、前記ポリマーが蛍光もしくは光散乱特性またはそれら両方についての属性を有し、前記ポリマーが前記ナノスケール分子タグの蛍光、光散乱および/またはリガンド結合特性に寄与する、組成物。
【請求項32】
請求項31に記載の組成物であって、前記ナノスケール分子タグが、
(iii)前記コアナノ粒子を囲むシェル、
をさらに含み、
前記被覆の前記第1の部分は前記シェルの表面に結合し、そして、前記第2の部分は、前記シェルに結合せず、
前記コアナノ粒子、前記シェル、および前記被覆のうちのいずれか1つまたは任意の組み合わせが、顕微鏡、または蛍光および/もしくは光散乱の強度もしくはパワーを測定する装置によって検出可能である前記ナノスケール分子タグの蛍光、光散乱、および/またはリガンド結合特性に寄与し、
構成要素(i)、(ii)、および(iii)が共に以下の機能性:
(a)アセンブルされた構造の光散乱の強度もしくはパワーが、前記光散乱の強度もしくはパワーを検出する前記装置の基準ノイズの特定のレベルより上で検出可能であること;
(b)蛍光強度が、機器の検出限界より上で検出されるために十分な輝度を有すること;および/または
(c)リガンド特異性がリガンド結合構成要素によって付与されること
を提供する、組成物。
【請求項33】
分析または選別のために1つまたは複数の標的を検出するためのアレイまたは多重化セットとしての、1つまたは複数のナノスケール分子タグを含む組成物であって、ここで、各ナノスケール分子タグは、以下:
(i)直径約100nm未満のコアナノ粒子と、
(ii)第1の部分と第2の部分とを含む被覆であって、前記第1の部分は、前記コアナノ粒子の表面に結合し、前記第2の部分は、前記コアナノ粒子に結合せず、固定数の結合部位を有する官能化末端を含む、被覆と
を含み、
前記コアナノ粒子、および前記被覆のうちのいずれか1つまたは任意の組み合わせが、顕微鏡、または蛍光および/もしくは光散乱の強度もしくはパワーを測定する装置によって検出可能である前記ナノスケール分子タグの蛍光、光散乱、および/またはリガンド結合特性に寄与し、
構成要素(i)および(ii)が共に以下の機能性:
(a)アセンブルされた構造の光散乱の強度もしくはパワーが、前記光散乱の強度もしくはパワーを検出する前記装置の基準ノイズの特定のレベルより上で検出可能であること;
(b)蛍光強度が、機器の検出限界より上で検出されるために十分な輝度を有すること;および/または
(c)リガンド特異性がリガンド結合構成要素によって付与されること
を提供する、
組成物。
【請求項34】
請求項33に記載の組成物であって、前記ナノスケール分子タグが、
(iii)前記コアナノ粒子を囲むシェル、
をさらに含み、
前記被覆の前記第1の部分は前記シェルの表面に結合し、そして、前記第2の部分は、前記シェルに結合せず、
前記コアナノ粒子、前記シェル、および前記被覆のうちのいずれか1つまたは任意の組み合わせが、顕微鏡、または蛍光および/もしくは光散乱の強度もしくはパワーを測定する装置によって検出可能である前記ナノスケール分子タグの蛍光、光散乱、および/またはリガンド結合特性に寄与し、
構成要素(i)、(ii)、および(iii)が共に以下の機能性:
(a)アセンブルされた構造の光散乱の強度もしくはパワーが、前記光散乱の強度もしくはパワーを検出する前記装置の基準ノイズの特定のレベルより上で検出可能であること;
(b)蛍光強度が、機器の検出限界より上で検出されるために十分な輝度を有すること;および/または
(c)リガンド特異性がリガンド結合構成要素によって付与されること
を提供する、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この出願は、2016年10月21日に出願された米国仮出願第62/411,324号(これは、その全体が参考として本明細書に援用される)の利益を主張する。
【0002】
政府助成の承認
本発明は、米国国立衛生研究所、米国がん研究所によるプロジェクト番号Z01BC011502の下で政府の支援を受けてなされた。米国政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0003】
本開示は、ナノスケール分子タグおよび例えばフローサイトメーターにおける標的の検出のためのその使用に関する。
【背景技術】
【0004】
単一のナノ粒子を検出、解析、および/または選別するための改善された方法および装置があれば、臨床および研究目的の両方にとって有利であろう。例えば、それらは、重要な生物機能を有し、および治療剤、標的、またはバイオマーカーとしての使用に関して顕著な生物医学的潜在性を有する、細胞外小胞(EV)および細胞によって放出された他のナノスケール粒子を同定および分析するために有用であろう。EVの構成要素および生物機能が、それらを産生する細胞のタイプおよびそれらが産生される条件に基づいて異なることは一般的に容認されている(RaposoおよびStoorvogel、J Cell Biol、200巻(4号):373~383頁、2013年)。しかし、細胞系統およびサブセットが定義されるようにこれらの粒子のサブセットを特徴付けることはこれまで可能ではなかった。同様に、他のナノスケール粒子ならびにこれらのナノスケール粒子の個々の分子構成要素を検出、選別、および計数することもこれまで困難であった。この技術の妨げとなっているのは、特定の属性に基づいて個々のナノスケール粒子を分析、選別、および機能的に試験するために利用可能なツールおよび試薬がないことであった。
蛍光活性化細胞選別(FACS)は、1972年にHerzenbergとその共同研究者によって導入されて以降、標識された細胞サブセットを同定および選別するために使用されているが(Juliusら、Proc Natl Acad Sci USA、69巻(7号):1934~1938頁、1972年;Bonnerら、Rev Sci Instrum、43巻:404~409頁、1972年)、およそ500nmより小さい粒子に関するサブミクロン亜集団の選別は、実現不可能であると考えられている。フローサイトメトリーにおける通常の知識では、1マイクロメートルより小さい粒子からのシグナルは、試料のデブリからのシグナルおよび電子ノイズにおいて失われ、したがって検出不能のままであると考えられる。ある特定の近代的な高分解能の機器では、EVを検出することができる感度範囲が、約200nmのEVサイズおよび約10個の蛍光分子検出限界まで拡大したが、現在、単一エピトープの検出に基づいて200nm以下のEVを検出、分析、および選別することができる機器はない。したがって、EVの表面上の単一の受容体などの単一分子の検出および定量を可能にする試薬、およびフローサイトメトリーなどの方法を強化する必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】RaposoおよびStoorvogel、J Cell Biol(2013年)200巻(4号):373~383頁
【文献】Juliusら、Proc Natl Acad Sci USA(1972年)69巻(7号):1934~1938頁
【文献】Bonnerら、Rev Sci Instrum(1972年)43巻:404~409頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
選別能を有するフローサイトメーターは、個々の細胞を選別および試験するために使用することができるが、単一エピトープの感度で200ナノメートルより小さいナノ材料を検出および選別することができるフローサイトメーターまたは類似の機器は開発されていない。このギャップを克服するために、本発明者らは、近代的な高分解能のフローサイトメーターによって個々に検出することができ、したがって蛍光標識抗体などの標準的な方法によって検出するには小さすぎるかまたは少なすぎるエピトープを有する小さいEVまたは他のナノ生物材料の検出および選別を可能にする、マルチパラメータ標識(本明細書において分子ナノタグと呼ぶ)を開発した。
【0007】
本明細書に開示される組成物および方法は、ナノスケール粒子/小胞の機能的選別および単一分子の検出に対するこれまでの障壁を克服する。本明細書において、顕微鏡、またはフローサイトメーターなどの蛍光および/もしくは光散乱の強度(本明細書において光散乱能とも呼ぶ)を測定する高分解能装置による単一分子の検出を可能にするナノスケール分子タグを開示する。分子タグは、例えば高分解能検出となるように構成されたフローサイトメーターにおいて使用することができる。例えば米国特許出願公開第20130095575号およびMorales-Kastresanaら、Scientific Reports、7巻:1878頁、2017年に開示されているnanoFACS方法を参照されたい。
【0008】
一部の実施形態では、ナノスケール分子タグは、直径約100nm未満(例えば、直径40nm未満、または20nm未満、例えば約10~100nm、10~50nm、または40~80nm、例えば10nm、20nm、30nm、40nm、50nm、60nm、70nm、80nm、90nm、または100nm)のコアナノ粒子と、コアを囲む必要に応じたシェルと、第1の部分と第2の部分とを有する被覆(armor)であって、第1の部分がコアナノ粒子の表面に結合するか、または存在する場合にはシェルの表面に結合し、第2の部分が、コアナノ粒子にもシェルにも結合せず、固定数のおよび/または定量可能な数(例えば、1つ)の結合部位を有する官能化末端を含む被覆とを含む。コア、シェル、および被覆のうちのいずれか1つまたは任意の組み合わせが、フローサイトメトリー装置のような特定の機器の基準ノイズレベルより上の光散乱の強度を測定する高分解能装置によって検出可能である分子タグの蛍光、光散乱、および/または標的(例えば、リガンド)結合特性に寄与する。例えば、開示される分子ナノタグの弾性光散乱強度により、アセンブルされた構造は、(弾性)光散乱(一般的に側方または前方散乱と呼ばれる)の検出限界レベルより上で検出可能となり、蛍光またはラマン散乱光強度により、アセンブルされた構造は、機器の非弾性散乱光の検出限界より上で検出するために十分な輝度を有することができ、標的(例えば、リガンド)特異性により、広いスペクトルのナノスケール生物学的標的の同定および特徴付けが可能となる。それらのマルチパラメータ特徴の少なくとも1つを有する開示される分子ナノタグにより、機器による個々の分子ナノタグとしてのその検出が可能となり、このように開示される分子ナノタグを使用して、わずか1つのエピトープまたはリガンドを有するEVを検出することができる。
【0009】
他のより特定の例では、ナノスケール分子タグは、直径100nm未満のコアナノ粒子と、必要に応じたシェルと、第1の部分および第2の部分を有する被覆(例えば、ポリマー)とを含む。被覆の第1の部分は、ナノ粒子の原子価を固定数(例えば、1つ)の機能的結合部位に低減する被覆をコアナノ粒子の表面に付着させる共有結合部位を含み、第2の部分は、被覆の結合部位を、指定されたまたは予め選択された標的に関する機能的リガンドに接続するためのリンカー;および指定された標的に関する機能的リガンド(タンパク質、ヌクレオチド、または他のリガンド結合要素からなる)を提供し、コア、シェル、および被覆のうちのいずれか1つまたは任意の組み合わせが、顕微鏡、または蛍光および光散乱の強度を測定する高分解能装置によって検出可能である分子タグの蛍光、光散乱、および/またはリガンド結合特性に寄与する。他のより特定の例では、コアは、フローサイトメーターによって検出可能である光散乱特性に寄与する高い屈折率、表面形状または他の属性を有する量子ナノ結晶(必要に応じたシェルを有する)を含み、被覆は、結合パートナーまたは標的リガンドに特異的に結合することができるポリマーである。
【0010】
開示される分子タグは、単一のナノ粒子、例えば量子ナノ結晶、およびそれに対して分子タグが結合する標的の検出能を提供する。異なる分子タグを組み合わせることによって、ナノスケール粒子を検出および選別することが可能であり、同様に、ナノスケール粒子の個々の分子構成要素、例えば細胞またはEV上の表面受容体を検出および計数することも可能である。分子タグは、目的の個々の対応する標的に結合する制御された原子価(例えば、一価)を有することができる。そのような原子価制御結合により、例えばフローサイトメーター出力において、または光散乱と蛍光を同時に検出する他の方法を使用して、例えばシフトした検出シグナルピークにおける結合分子数を計数することが可能となる。単一分子を検出できることは、広い生物医学、生体防御、産業、環境、および他の適用を有する。例えば、分子タグを使用して、細胞外微小小胞およびウイルスの生物学的に関連するサブセットの特定の分子数を、良好な忠実度および関連するサブセットの単離能を伴って検出および決定することができる。他の例では、放射線曝露、疾患検出、臨床的予後、または治療的処置もしくはプロトコールの選択に関連するバイオマーカー(バイオシグネチャーを含む)を検出することができる。
【0011】
同様に、光散乱および蛍光の同時検出を可能にする機器(例えば、フローサイトメーター)において標的を検出する方法も提供される。標的は、例えば試料中の単一の標的分子であり得る。一部の例では、方法は、試料に、本明細書に開示されるナノスケール分子タグを接触させるステップであって、ナノスケール分子タグの官能化末端が、試料中に存在する場合には標的分子に特異的に結合するステップと、小粒子を解析するように構成された機器を使用して試料を分析し、側方散乱の検出または蛍光の検出、またはその両方によって標的分子に結合した個々のナノスケール分子タグを検出するステップとを含む。
【0012】
本開示の別の態様は、機能的リガンドが腫瘍抗原に対して特異的である分子ナノタグを使用して、腫瘍抗原を有する細胞外小胞(EV)または他のサブミクロン粒子を検出し、次いで顕微鏡、または蛍光および/もしくは光の散乱および強度を測定する高分解能装置を使用して染色された粒子を検出する方法を開示する。制限ではない例として、腫瘍抗原は、PSMA、メソテリン、EpCam、HER2、EGRF、CD24、CD133、CD47、CD147、PD-L1、GPC-1もしくはMuc-1、または詳細な説明において後に記載する他のマーカーであり得る。あるいは、方法は、感染性病原体抗原、例えばウイルス抗原を有するEVまたは他のサブミクロン粒子を、機能的リガンドがウイルス抗原に対して特異的である分子ナノタグを使用して検出する。例えばおよび限定ではないが、ウイルス抗原は、HIV、C型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルス(HPV)、HTLV-I、エプスタインバーウイルス、または本明細書において後に記載されるウイルスに由来する。なお他の実施形態では、方法は、機能的リガンドが免疫系抗原またはマーカーに対して特異的である免疫系抗原またはマーカーを検出する。例えばおよび限定ではないが、免疫系抗原またはマーカーは、MHCクラスII抗原、PD-L1、CD80、CD86、CD83、CD11c、CD11b、CD3、CD4、CD8、CD19、CD20、または本明細書に記載される他のマーカーである。別の実施形態では、方法は、疾患抗原またはマーカーを有するEVまたは他のサブミクロン粒子を検出し、疾患抗原またはマーカーは、例えばおよび限定ではないが、アルツハイマー病、多発性硬化症、リウマチ性関節炎、糖尿病、炎症性腸疾患、リウマチ疾患、炎症性疾患、内分泌疾患、消化器疾患、神経疾患、自己免疫疾患、心血管疾患、または腎疾患、または本明細書において後に記載される他のマーカーである。
【0013】
開示される分子ナノタグは、その設計がモジュール性であることから、コア、被覆、およびリガンド結合構成要素のモジュール性の組み合わせを有する一組の分子ナノタグをアセンブルして多重分子ナノタグアレイを産生し、各々が弾性および非弾性光散乱特性に関して特有の属性を有し、各々のタイプが独自のリガンド特異性を有する複数のタイプの分子ナノタグを使用して、複数の異なる標的を同時または同時期に検出することができる。選別フローサイトメーターと共に使用する場合、分子ナノタグは、さらに下流のアッセイに使用するために、各分子ナノタグがわずか1つの特定のリガンド/エピトープに特異的に結合することに基づいてEVまたは他の標的の特定の亜集団の選別および下流の分析を可能にする。このように、一部の例では、開示される方法は、いくつかの異なるリガンドに会合したEVが同時または同時期に検出されるという点において多重化されている(例えば、その表面上に異なる標的分子を含むEVは、開示される分子ナノタグ、例えば各々が特定の標的EV集団に対して特異的である複数の異なる分子ナノタグ集団によって同時または同時期に検出することができる)。一部の例では、方法は多重化され、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、または少なくとも40個の異なる分子ナノタグ集団が、例えば複数の異なる標的(例えば、抗原、EVマーカー、およびその組み合わせ)を検出するために、開示される方法と共に使用される。
【0014】
本開示の前述および他の目的および特徴は、例示のために限って提供され、添付の図面を参照して進められる以下の詳細な説明および実施例からより明らかとなるであろう。詳細な例は、他者が、本発明の範囲を限定することなく、本発明を作製および使用することができるための要件を満たす。
【0015】
以下の図面の少なくとも一部は、カラーで提出されている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1-1】
図1A~1Bは、例示的な分子ナノタグの略図である。
図1Aは、高い複素屈折率(RI)を有するコア粒子10、例えば量子ナノ結晶または他の高複素RIナノ材料(例えば、銀または金)と、「被覆」12、例えば単官能化DNA末端を有するチオール化一本鎖DNAとを含む分子ナノタグを例証する。官能化DNA末端14は、特定の「鍵」、例えば標的リガンドに結合することができる「錠」(または「錠」の結合部位)として作用する。nanoFACS法を使用して、単一粒子を側方散乱(SSc)および/または蛍光によって解析することができ、一価のナノタグにより単一分子リガンドの列挙が可能となる。あるいは、単一粒子を、顕微鏡または他の光学的方法(例えば、ナノ粒子追跡またはSERS、例えば、Stremerschら、Small、12巻:3292~301頁、2016年を参照されたい)によってイメージングすることができる。
図1Bは、チオール化一本鎖DNA被覆12と、単官能化DNA末端14とを有する一価の被覆された量子ナノ結晶(例えば、QDOT(登録商標))20の例を示す。被覆された量子ナノ結晶はまた、相補的DNA末端を使用して縦列で使用することもできる。
【
図1-2】
図1A~1Bは、例示的な分子ナノタグの略図である。
図1Aは、高い複素屈折率(RI)を有するコア粒子10、例えば量子ナノ結晶または他の高複素RIナノ材料(例えば、銀または金)と、「被覆」12、例えば単官能化DNA末端を有するチオール化一本鎖DNAとを含む分子ナノタグを例証する。官能化DNA末端14は、特定の「鍵」、例えば標的リガンドに結合することができる「錠」(または「錠」の結合部位)として作用する。nanoFACS法を使用して、単一粒子を側方散乱(SSc)および/または蛍光によって解析することができ、一価のナノタグにより単一分子リガンドの列挙が可能となる。あるいは、単一粒子を、顕微鏡または他の光学的方法(例えば、ナノ粒子追跡またはSERS、例えば、Stremerschら、Small、12巻:3292~301頁、2016年を参照されたい)によってイメージングすることができる。
図1Bは、チオール化一本鎖DNA被覆12と、単官能化DNA末端14とを有する一価の被覆された量子ナノ結晶(例えば、QDOT(登録商標))20の例を示す。被覆された量子ナノ結晶はまた、相補的DNA末端を使用して縦列で使用することもできる。
【0017】
【
図1-3】
図1Cは、参照により本明細書に援用されている、Farlowら、Nat. Methods、10巻(12号):1203~1205頁(2013年)に開示されるタイプの一価の量子ナノ結晶の図を概略的に説明する。Fowlerらの一価の量子ナノ結晶は、NanoFACSなどの高分解能フローサイトメトリーでは単一粒子として検出できない。粒子は、それらが大量に流される場合に限って検出され、そのため、粒子はレーザーをインターセプトする同時の複数の粒子の「群れ」として検出される。図はまた、標的に選択的に結合することができる分子複合構造を産生するためのその先行技術のアプローチの変化形も例証する。
【0018】
【
図1-4】
図1Dは、上のパネルにおいて、第2の結合パートナー(例えば、標的、例えばタンパク質、例えばリガンド)18に特異的に結合する第1の結合パートナー16(例えば、標識またはタグ)に1つの末端14で連結する被覆12(例えば、一価のチオール化DNA被覆、一価のポリアデニル化DNA被覆(Yaoら、NPG Asia Materials、7巻:e159頁、2015年);または全結合表面分子当たり1個の機能的リガンドを含む化学量論比の被覆分子(例えば、Leducら、NanoLetters、13巻:1489~94頁、2013年))を有する量子ナノ結晶10を含む、本開示に従う分子ナノタグ30の図を説明する。同様に、下のパネルに、第1の被覆された量子ナノ結晶40が、第2の量子ナノ結晶50に連結し、これが第2の結合パートナー(例えば、標的、例えばタンパク質、例えばリガンド)18に特異的に結合する第1の結合パートナー16(例えば、標識またはタグ)に連結するという概念の変化形も表す。一例では、一価の被覆の設計により、1対1のリガンド対標識の結合、および列挙された標識数と測定された標的(EVエピトープ)数との一致が確実となる。しかし、わずか1つの標的エピトープを検出する目的のために、多価表面化学、例えばストレプトアビジンまたはチオール-PEG(Duchesneら、Langmuir、24巻:13572~80頁、2008年)を被覆として使用することができる。
【0019】
【
図2】
図2は、予想される散乱光強度(線、MiePlot、philliplaven.comによってモデル化されるミー理論に基づく)と、nanoFACSのために構成されたAstrios-EQによって検出された散乱光強度とを比較するプロットの図であり、その材料を示す。曲線および左の軸は、EV(RI=1.40)、ポリスチレンビーズ(RI=1.61)、およびシリカビーズ(RI=1.46)、ならびに媒体としての水(RI=1.33)に関する488nmレーザーでのミー理論に基づく光散乱予測モデルである。曲線上の点は、Astrios EQ機器で分析した実際の粒子の経験的な強度測定の中央値(標準偏差を伴う)を表し、それらがミーモデルによって数学的に予測された散乱と比較してどの程度適合するかを示している。例えば、金粒子(20nm~100nm)は、金材料と入射レーザー光との量子相互作用により高い複素屈折率およびプラズモン共鳴が起こることにより、ポリスチレン、シリカまたはEVなどの材料より高い予測散乱強度を有する。
【0020】
【
図3】
図3は、nanoFACS法を使用した561nm SSCおよび488 SSCでの側方散乱、ならびに蛍光による、個々の29nm PEG化QDOTS(登録商標)の検出の図である。
【0021】
【
図4】
図4は、開示される分子ナノタグが、一部の例において、光を弾性的に(入射光と同じ波長範囲で)散乱するナノスケール光散乱要素(1つの描写される実施形態ではコアナノ粒子、例えば
図1Bにおける10)と、やはり光を特異的に非弾性的に散乱する要素(フルオロフォアまたはラマン散乱分子)(コアナノ粒子が量子ナノ結晶である場合には散乱強度に寄与する構成要素でもあり得るか、または弾性および非弾性散乱スペクトルの両方を産生する類似の構成要素であり得る)と、Farlowら、Nat. Methods、10巻(12号):1203~1205頁(2013年)のように、標的検出のための一価のリンカーとを含むモジュール性の構成要素を含む新しいクラスの標識であることを示す。分子ナノタグにより、単一のナノスケールサイズの小胞の表面上の単一分子の検出が可能となる。29-nm PEG化QDOTS(登録商標)の検出。QDOTS(登録商標)は、AstriosEQにおいて開示されるnanoFACS法を使用する場合、蛍光によって個々の(単一分子)粒子として十分に解析されることに加え、散乱光ノイズフロアおよびそれより上で観察される。PBS単独を、機器のノイズを表すために使用した。同様に、nanoFACSシステムによって試験したPEG化QDOTS(登録商標)の販売元が提供したQDOT(登録商標)の仕様も示す。
【0022】
【
図5】
図5は、バルク分析(ビーズベースのフローサイトメトリーを使用する)および単一EVの分析による、前立腺細胞株からの細胞外小胞(EV)における前立腺特異的膜抗原(PSMA)発現の検出を示す。
【0023】
【
図6】
図6Aは、特有の光散乱特性を有する4つの代表的な異なる材料の屈折率と波長の間の関係を示す一連の4つのグラフである。
図6Bは、公開されているデータベース(refractiveindex.info)から得たプロットデータを示す。金は、弾性光散乱を増加させるためおよびバックグラウンドノイズレベルより上での検出を改善するために、量子ナノ結晶の反射率を増加させるために分子ナノタグにおいて使用することができる高複素屈折率材料の1つの具体例である。405nmで、屈折率は1.5236であり、吸光係数は1.8409である。
【0024】
【
図7】
図7A~7Bは、(A)金ナノスフェアおよび金ナノアーチン(nanourchin)の製造元の吸収の仕様である。(B)標準的な金ナノ粒子(上)および金ナノアーチン(下)は、様々なサイズ、例えば15nmから100nmまでで利用可能である。金ナノスフェアを金ナノアーチンと識別するのは、その表面形状であり、その表面が光とどのように相互作用するかである。金ナノ粒子およびナノアーチンを使用して、特有の吸収および光散乱パターンを達成することができ、これによって同じ材料(金)で構成されているにもかかわらず、および同じ平均直径であるにもかかわらず、溶液中のこれらの材料は異なる色であるという視覚的外観が得られる。これらの材料は、個々の物体として解析することができることから、およびそれらが特有の光散乱スペクトルを有することから、それらは直径のみならず、その吸光度および散乱プロファイルによっても識別することができる。このように、金ナノスフェアまたは金ナノアーチンなどのナノ材料を、開示される分子ナノタグにおいて高いRIを有するコア粒子(例えば、
図1Bでの10)として使用することができ、それらを、異なる特異的リガンド会合EVを同定するために多重様式で使用することができる。その上、表面形状および粒子サイズの差によって、異なる光散乱特性が得られることから、異なるエピトープ特異性を有する分子ナノタグにおいてこれらの異なる材料をコアとして使用することにより、多重標識セットアッセイにおいて蛍光に基づく階層化が一般的に使用されるのと同じ様式で、コア材料の光散乱特性に基づく標識セットの階層化が可能となる(Krutzkikら、第6章、第6.31項、Current Protocols in Cytometry、2011年)。
【0025】
【
図8】
図8は、金ナノスフェアと金ナノアーチンについて観察された光学特徴の比較である。金ナノ粒子(左)、金ナノアーチン(中央)、およびポリスチレンビーズ(右)(全て100nm)の比較。構成要素材料の異なる波長での屈折率を、Gardinerら(参照により本明細書に援用されている、J Extracell Vesicles、3巻:25361頁、2014年)に記載されている方法によって記載されるように決定する。本実施例における金ナノアーチンおよび金ナノスフェアはいずれも、この方法によって約1.4またはそれより上の誘導RIを有するが、ナノサイトビデオスクリーンショット(下)に見ることができるように、金ナノアーチンで見られた可視光は、金ナノアーチンの表面からの散乱光の回折がより大きいために、同じサイズの金ナノスフェアより大きい。光の回折の差は、これらのナノ材料間の散乱光特徴に1つの目に見える差をもたらし、他方は、
図7Aに示すように吸光度およびプラズモン共鳴である。
【0026】
【
図9】
図9は、本明細書に開示される分子ナノタグのモジュール性構成要素の略図であり、これは一部の例において、強蛍光構成要素、光散乱構成要素、およびリガンド特異的結合構成要素を含む。強蛍光構成要素は、例えば、100 MESF(既知の可溶性蛍光分子数(Molecules of Equivalent Soluble Fluorochrome)(MESF))より強い蛍光を有し、強力かつ特有の光散乱特徴を有する構成要素はフローサイトメーターにおいてFSCまたはSSCによって解析可能であり、リガンド特異的結合構成要素は、例えばアプタマー、アフィマー(affimer)、抗体、または小分子リガンドである。
【0027】
【
図10-1】
図10Aは、開示される分子ナノタグと共に使用することができる小分子前立腺特異的膜抗原(PSMA)リガンドを提供する(例えば、
図1Bにおける14、
図11A~11Fを参照されたい)。
【0028】
【
図10-2】
図10Bは、第2の合成PSMAリガンド、ビオチン-PEG-アミド-PSMA CCW-II-372を提供する(例えば、
図1Bにおける14)。
図10Cは、開示された分子ナノタグと共に使用するための、NCI Image Probe Development Coreによって合成された第3の合成PSMAリガンド、ビオチン-PEG8-PSMA CCW-II-361を提供する(例えば、
図1Bにおける14)。
【0029】
【
図11】
図11A~11Fは、PSMA特異的分子ナノタグの状況で一価の量子ナノ結晶構築物(左)を以前の量子ナノ結晶-SA-mAb(右)と対比させる図である。分子ナノタグとして構築されたそのような多価標識(
図11F)は、EV上の単一のエピトープを検出するための感度を提供するが、EV当たりのエピトープの計数または列挙にとって最も有用である1対1の結合化学量論を与えない。(A)は、一般的なコアおよび一価の被覆の例であり、(B~D)は、ビオチン化標的結合分子、例えばビオチン化抗体(B)、ビオチン化アプタマー(C)、またはビオチン化小分子リガンド(D)にカップリングさせるためのストレプトアビジンのリガンドとして機能する末端のビオチン化被覆を例証する。(E)は、クリックケミストリーによってPSMAリガンドDCBO-TEGにコンジュゲートさせたナノ粒子の表面上のアジ化一価ポリマーを表す。(F)は、代表的な従来の多価ストレプトアビジンQDotを示し、これは
図18に示すように、EVに結合する抗PSMA抗体を含む、ビオチン化分子に結合するために使用される。
図11Bの設計はまた、PSMA結合アプタマー配列が、コア表面またはシェルのいずれかに結合する「被覆」する配列に隣接する合成オリゴヌクレオチドからもなり得る。
【0030】
【
図12】
図12Aは、分子ナノタグと共に使用するための3つのPSMA結合アプタマーの構造を表す(配列番号1~3)。PSMA結合アプタマー配列は、特定の例において、被覆DNAの末端に含まれた。
図12Bは、PSMAの表面発現を検出するための5’-TEGスペーサーを付加したA9gの使用を実証する(右)。
図12Cは、標識のリガンドとしての使用を促進するためにA9gに行った修飾の模式図を提供する。
図12Dは、末端のリガンド結合要素14としてこのA9gアプタマーを分子ナノタグ被覆配列12に取り込む模式図を提供する。
【0031】
【
図13】
図13A~13Eは、ナノタグのシェルの深さを従来の6nm未満の深さから10nmより大きいシェルの深さ、例えば10~20nmに増加させると、分子ナノタグの過少計数を減少させることができることを実証する。シングル-NQDフォトルミネセンス試験からの例。(A)典型的に100個より多くの個々のg-NQDの分析から構築したCdSe/19CdS g-NQD集団のオン時間(on-time)のヒストグラム。個々のCdSe/19CdS g-NQDの例としての蛍光の時間トレース(ヒストグラムを調製するために使用する)を(A)の挿入図に示す。(B)異なるオン時間の「パーセントNQD集団」のCdSシェル単層の数に対するプロット。2つの調製物/分析を、10、16、および19シェルシステムに関してプロットし、(B)において実験変動の指標を提供する。(C)光退色挙動:経時的な発光NQD画分のプロットを、CdSe/5CdS(左上)、CdSe/10CdS(右上)、CdSe/15CdS(左下)、およびCdSe/19CdS(右下)コアシェルNQDに関して表す。観察時間の≧99%で「オン」であるNQD(「非明滅」集団)(D)、および観察時間の≧80%で「オン」であるNQD(「ほぼ非明滅」集団)(E)に関する、総観察時間(0.5、5、および54分間)の関数としてのNQD集団のパーセントのシェルの厚さに対する比較。
【0032】
【
図14-1】
図14A~14Dは、nanoFACSを実施するためのAstriosEQの構成を例証する。(A)側方散乱レーザー光の軌道(破線)、それと共にその対応する蛍光検出経路を直交の前方ではない検出経路に実線で示す。この略図は、コアの流れおよび試料粒子(流れの中心における点によって表される)がこれらの試験で使用した4つのレーザーによってインターセプトされる、シース液の流れを実証する。各レーザーは、特徴的な回折輪を生成するのみならず、暗い拡散した散乱光(ここでは例証するために緑色レーザーのみを示す)を生成する。(B)整列した位置でレーザーが流れをインターセプトする際のAstriosEQ調査チャンバーの画像は、流れのスイッチを切ると拡散した散乱光が存在すること、これは、流れのスイッチを入れると、レーザーインターセプトの平面(チャンバー壁およびドアに沿って)周囲の回折輪に沿って明るくなることを実証する。LEDパルサー(C)を使用した、候補トリガーチャネルにおけるノイズフロアの相対的比較、孤立した非使用PMT検出器スロットにおける光トリガー(固定されたパルス速度)としてのLEDパルサーの使用。(D)サブミクロン粒子(100、200、および500nmポリスチレンビーズ)の分析および各レーザーの解像能の比較のために、トリガー/閾値を561ex-SSCチャネルについて1秒間に10~15kの事象の速度(eps)、最大試料eps速度の約10~15%で拡散した散乱光の検出を可能にするように設定した。側方散乱シグナル検出により、488ex-SSCチャネルにおいて最大の小粒子の解析が実証されたが、561ex-SSCは、この機器における最善のシグナル:ノイズ分離をもたらした。
【
図14-2】
図14A~14Dは、nanoFACSを実施するためのAstriosEQの構成を例証する。(A)側方散乱レーザー光の軌道(破線)、それと共にその対応する蛍光検出経路を直交の前方ではない検出経路に実線で示す。この略図は、コアの流れおよび試料粒子(流れの中心における点によって表される)がこれらの試験で使用した4つのレーザーによってインターセプトされる、シース液の流れを実証する。各レーザーは、特徴的な回折輪を生成するのみならず、暗い拡散した散乱光(ここでは例証するために緑色レーザーのみを示す)を生成する。(B)整列した位置でレーザーが流れをインターセプトする際のAstriosEQ調査チャンバーの画像は、流れのスイッチを切ると拡散した散乱光が存在すること、これは、流れのスイッチを入れると、レーザーインターセプトの平面(チャンバー壁およびドアに沿って)周囲の回折輪に沿って明るくなることを実証する。LEDパルサー(C)を使用した、候補トリガーチャネルにおけるノイズフロアの相対的比較、孤立した非使用PMT検出器スロットにおける光トリガー(固定されたパルス速度)としてのLEDパルサーの使用。(D)サブミクロン粒子(100、200、および500nmポリスチレンビーズ)の分析および各レーザーの解像能の比較のために、トリガー/閾値を561ex-SSCチャネルについて1秒間に10~15kの事象の速度(eps)、最大試料eps速度の約10~15%で拡散した散乱光の検出を可能にするように設定した。側方散乱シグナル検出により、488ex-SSCチャネルにおいて最大の小粒子の解析が実証されたが、561ex-SSCは、この機器における最善のシグナル:ノイズ分離をもたらした。
【0033】
【
図15】
図15A~15Iは、nanoFACSによる細胞外小胞(EV)の分析、選別、および再分析を例証する。100nmフルオロスフェア(A)と共に、比較のために樹状細胞株(DC2.4)および乳癌細胞株(4T1)からのEVを、ナノサイトNTA(BおよびC)およびnanoFACS(それぞれ、D、E、およびF)によって特徴付けた。基準ノイズ(赤色の破線の枠)を、ノイズレベル(緑色の破線の枠)より上で検出された事象/材料に関するデータと共にモニターした。4T1およびDC2.4細胞株からの腫瘍および免疫EV集団をそれぞれ、カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE;Invitrogen)およびCellTrackerバイオレット(Invitrogen)によって標識した。非結合標識を、NAP-5(GE Healthcare)サイズ排除クロマトグラフィーによって除去し、EV集団を混合した後、(G)に示す選別ゲートによって分析および選別した。選別したEV試料を遠心分離濃縮(Amicon Ultra-15、10kNMWL)によって濃縮し、再度分析した(HおよびI)。再分析により、純度が>95%(陽性選択ゲートにおける再分析事象の数を、陰性選択ゲートおよび二重陽性ゲートにおける再分析事象の合計で除することによって計算する)であることが実証され、選別されたEVのみが基準ノイズを超えて観察されたが、陰性選択EVは観察されなかった。
【0034】
【
図16】
図16A~16Eは、金、銀、ポリスチレン、白金、二酸化チタン、酸化鉄、および銅を含む300~800nmの多様な組成物のUV-可視光スペクトルにおける(A)20nm、(B)40nm、(C)60nm、(D)80、および(E)100nm粒子のスペクトル散乱特性を例証する。
【0035】
【
図17-1】
図17A~17Bは、(A)公表された屈折率および吸光率によりミー理論を使用してモデル化した40nm金および銀ナノ粒子の断面散乱特徴を例証する。垂直の線は、AstriosEQフローサイトメーターの照射波長を表す。(B)405、488、561、および640nm散乱チャネルで獲得した40nm金(青色)および40nm銀(赤色)の生データ。
【0036】
【
図17-2】
図17Cは、適切なss検出器を使用して金および銀ナノ粒子を互いにどのように識別するかを数学的モデルに基づいて例証する。
【0037】
【
図18】
図18は、フローサイトメトリーを使用して量子ドット(Qdot)によって標識した細胞外小胞(EV)の検出を例証する。
【0038】
【
図19】
図19A~19Cは、(A)蛍光陽性(CFSE+)細胞外小胞(EV)、(B)CFSE+EV事象の488nm散乱強度のシフトを引き起こす、Auナノタグに付着したCFSE+EVの検出を例証する。(C)は、EVの561nmでの散乱強度のシフトを引き起こす、Agナノタグで染色したCFSE+EVを示す。
【0039】
【
図20】
図20は、金で構成される40nm、60nm、または80nmナノ粒子、およびポリスチレンで構成される100nmナノ粒子を検出するためにAstrios機器またはSymphony機器を使用して得た生データを例証する。
【0040】
【
図21】
図21は、EVを単離、標識、および検出するためのプロトコールを例証する。
【0041】
【
図22】
図22A~22Bは、(A)Astrios EQ(24A)および(B)FACS Symphonyフローサイトメーターの収集光学(collection optics)を使用して、ポリスチレン(ビーズRI=1.604)、シリカ(ビーズRI=1.435~1.465)、および細胞外小胞範囲(緑色)を表す屈折率によるミー理論を使用した球状粒子のモデル化を例証する。各図面に、モデル化した球状粒子に関連する獲得したポリスチレンおよびシリカビーズデータを重ねた。Y軸は、フローサイトメーターの任意の単位のスケールを表し、絶対単位の予測データを任意の値に正規化した。100nmおよび1000nmの平均RIの細胞外小胞のチャネル数を黒色の破線で示す。機器検出限界を強調する閾値およびシステムノイズを赤色の破線で表す。
【0042】
【
図23】
図23A~23Dは、(A)各集団が異なる量の赤色および緑色標識(示されるP1およびP2パラメータ)を有する38個の異なるビーズ集団のフローサイトメトリー分析の検出を例証する。(B)EVに結合した3つのビーズ集団をそのエピトープによって同定するための、38個のビーズセットおよび異なるEVエピトープに対して特異的な標識抗体による血漿からのEVの捕捉および検出。(C)単一のエピトープおよび単一のEV感度を可能にする多重EV分析アレイを生成するための分子ナノタグの使用を例証する。(D)EV上のPSMAの検出に基づいて選別したEVのmiRNAプロファイルと、バルクEV集団miRNAまたはPSMA陰性EVのmiRNAの比較。
【発明を実施するための形態】
【0043】
配列表
核酸配列を、37 C.F.R. 1.822に定義されているようにヌクレオチド塩基の標準的な略号を使用して示す。各々の核酸配列の1つの鎖のみを示すが、相補鎖も、表示される鎖に対する任意の言及によって含まれると理解される。配列表は、2017年10月23日に4.00Kbで作成され、本明細書と共に提出され、参照により本明細書に援用されている。
【0044】
配列番号1は、A10-3.2 PSMAアプタマー配列である。
配列番号2は、A9g PSMAアプタマー配列である。
配列番号3は、A9g.6 PSMAアプタマー配列である。
以下の配列番号4~13に関しては、ホスホロチオエートDNA=A
*、G
*、C
*、T
*;RNA=rA、rG、rC、rU;ホスホロチオエートRNA=rA
*、rG
*、rC
*、rU
*;2’O-メチルRNA=mA、mG、mC、mU;ホスホロチオエート2’O-メチルRNA=mA
*、mG
*、mC
*、mU;ロックド核酸(LNA)=+A、+G、+C、+T(二重標識プローブに限って利用可能);3’ビオチン-TEG(テトラメチレングリコール)=/3BioTEG/;内部2’-フッ化ウリジン(fluorodinated Uridine)=/i2FU/;32FU=a3’2-フルオロウリジン;5Biosg、5’位置に単一のグリコールリンカーを有するビオチン;DBCOジベンゾシルクロチル(dibenzocylcloctyl)=クリック付着;混合塩基=大文字の塩基(同様に、www.idtdna.com/pages/support/technical-vault/reading-room/quick-reference/all-modificationsを参照されたい)。
【表2】
【0045】
I.略語
EV 細胞外小胞
FSc 前方散乱
nanoFACS ナノスケール蛍光活性化細胞選別
PMT 光電子増倍管
PS ポリスチレン
PSMA 前立腺特異的膜抗原
QDOT(登録商標) 市販の量子ナノ結晶
SPD 小粒子検出器
SPO 小粒子のオプション
SScまたはss 側方散乱
【0046】
II.用語および方法
特に示していない限り、技術用語は、通常の使用に従って使用される。一般的な用語(例えば、ヌクレオチド、DNA、RNA、アプタマー、プローブ、細胞外小胞、および他の多く)の定義は、Benjamin Lewin, Genes V、Oxford University Pressによる刊行、1994年(ISBN 0-19-854287-9);Kendrewら(編)、The Encyclopedia of Molecular Biology、Blackwell Science Ltd.による刊行、1994年(ISBN 0-632-02182-9);およびRobert A. Meyers(編)、Molecular Biology and Biotechnology:a Comprehensive Desk Reference、VCH Publishers, Inc.による刊行、1995年(ISBN 1-56081-569-8)に見出され得る。
【0047】
特に説明していない限り、本明細書で使用する全ての科学技術用語は、本開示が属する当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、本文が明らかにそれ以外であることを示していない限り、複数形を含む。「AまたはBを含む」とは、A、またはB、またはAおよびBを含むことを意味する。核酸またはポリペプチドに関して与えられている全ての塩基サイズまたはアミノ酸サイズ、全ての分子量または分子質量の値は、概算であり、説明のために提供されるとさらに理解すべきである。本明細書に記載されるものと類似または同等の方法および材料を、本開示の実践または試験に使用することができるが、適した方法および材料を以下に記載する。本明細書に援用されている全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、その全体が参照により本明細書に援用されている。矛盾する場合は、用語の説明を含む本明細書が優先する。加えて、材料、方法、および実施例は、単なる例示であり、制限的でないと意図される。
本開示の様々な実施形態の検討を容易にするため、特定の用語に関して以下の説明を提供する。
【0048】
アプタマー:核酸アプタマーは、タンパク質およびペプチドなどの予め選択された標的に高い親和性および特異性で結合することができる一本鎖DNAまたはRNA(ssDNAまたはssRNA)分子である。ペプチドアプタマーは、特異的標的分子に結合するように選択または操作された人工タンパク質である。
【0049】
被覆:本明細書に開示される分子タグを参照して、被覆は、ナノ粒子の表面を実質的に覆い、その結合が望ましくない他のポリマーが結合するのを排除することによって他のポリマーが結合しないように保護する、コアナノ粒子の表面上のポリマーを指す。一部の例では、排除は立体排除(steric exclusion)である。したがって、被覆は、被覆されたナノ粒子の制御された原子価、例えば一価を確保するために役立つ。
【0050】
アビジン/ストレプトアビジン:アビジンのビオチンに対する極めて高い親和性により、複雑な混合物中のビオチン含有分子を、アビジンに識別的に結合させることができる。アビジンは、卵白、ならびに鳥類、は虫類、および霊長類の組織に見出される糖タンパク質である。アビジンは、67,000~68,000ダルトンの複合質量を有する4つの同一のサブユニットを含む。各々のサブユニットは、128個のアミノ酸からなり、ビオチン1分子に結合する。広範囲の化学修飾を行ってもアビジンの活性にはほとんど影響を及ぼさないことから、アビジンはタンパク質精製にとって特に有用である。
【0051】
別のビオチン結合タンパク質は、ストレプトアビジンであり、これは、Streptomyces avidiniiから単離され、質量60,000ダルトンを有する。アビジンとは対照的に、ストレプトアビジンは、炭水化物を有さず、わずかに酸性のpI 5.5を有する。アビジンの別の型は、NEUTRAVIDIN(商標)ビオチン結合タンパク質(Pierce Biotechnologyから入手可能)であり、質量はおよそ60,000ダルトンである。
【0052】
アビジン-ビオチン複合体は、タンパク質とリガンドとの間で既知の最も強い非共有結合相互作用(Ka=1015M-1)である。ビオチンとアビジンの間の結合の形成は、非常に急速であり、一度形成されると、極端なpH、温度、有機溶媒、および他の変性剤によって影響を受けない。
【0053】
ストレプトアビジンを、他のタイプのアビジンに置換することができる。用語「アビジン」は、アビジン、ストレプトアビジン、および類似のビオチン結合特徴を有する他の型のアビジン(例えば、その誘導体またはアナログ)を指すことを意味する。アビジン/ストレプトアビジンのアナログまたは誘導体には、ニトロストレプトアビジン、非グリコシル化アビジン、N-アシルアビジン(例えば、N-アセチル、N-フタリル、およびN-スクシニルアビジン)、および市販の製品であるEXTRAVIDIN(商標)(Sigma-Aldrich)、Neutralite Avidin(SouthernBiotech)、およびCaptAvidin(Invitrogen)が挙げられるがこれらに限定されない。さらなるアビジン/ストレプトアビジンのアナログおよび誘導体が、当技術分野で公知である(例えば、米国特許第5,973,124号および米国特許出願公開第2004/0191832号;第2007/0105162号;および第2008/0255004号を参照されたい)。
【0054】
結合パートナー:関係する分子の三次元構造に依存する特異的非共有結合相互作用によって相互作用する分子対のメンバー。特異的結合パートナーの例示的な対には、抗原/抗体、ハプテン/抗体、リガンド/受容体、核酸鎖/相補的核酸鎖、基質/酵素、阻害剤/酵素、炭水化物/レシチン、ビオチン/アビジン(例えば、ビオチン/ストレプトアビジン)、およびウイルス/細胞受容体が挙げられる。
【0055】
バイオマーカー:その存在が、生物の観察可能な特徴(表現型)を示す、生物における測定可能な物質。バイオマーカーを使用して、疾患の存在、疾患の進行、および/または処置の効果を測定することができる。多様なバイオマーカーが当技術分野で公知であり、これには、生物試料に存在する小胞、マイクロRNA、またはタンパク質などの循環中のバイオマーカーが挙げられる。被験体または個体の表現型を特徴付けることは、疾患または状態の診断、疾患または状態の予後、疾患の病期または状態の病期の決定、薬物の有効性、生理状態、臓器の窮迫もしくは臓器の拒絶、疾患もしくは状態の進行、疾患もしくは状態に対する治療に関係する関連、または特定の生理的もしくは生物学的状態を含み得るがこれらに限定されない。
【0056】
ビオチン:アビジンおよびストレプトアビジンに対して高い親和性で結合する分子(ビタミンHまたはビタミンB7としても知られる)。ビオチンはしばしば、蛍光または酵素レポーター分子などの検出可能な標識に連結されたアビジンまたはストレプトアビジンによってその後に検出されるように、核酸およびタンパク質を標識するために使用される。分子(例えば、抗体または他のタンパク質試料)のビオチン化は、ビオチン上の遊離のカルボキシル基を、抗体またはタンパク質検体/アナログにおいて見出されるアミン基などのタンパク質上のアミン基と反応させることによって、当技術分野において日常的に達成される。特に示していない限り、用語「ビオチン」は、アビジンとの結合反応に関与する誘導体またはアナログを含む。ビオチンアナログおよび誘導体には、N-ヒドロキシスクシンイミド-イミノビオチン(NHS-イミノビオチン)、2-イミノビオチンのアミノまたはスルフヒドリル誘導体、アミドビオチン、デスチオビオチン、ビオチンスルホン、カプロイルアミドビオチンおよびビオシチン、ビオチニル-ε-アミノカプロン酸-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、スルホ-スクシンイミド-イミノビオチン、ビオチンブロモアセチルヒドラジド、p-ジアゾベンゾイルビオシチン、3-(N-マレイミドプロピオニル)ビオシチン、6-(6-ビオチンアミドヘキサンアミド)ヘキサノエートおよび2-ビオチンアミドエタンチオールが挙げられるがこれらに限定されない。ビオチン誘導体はまた、DSB-X(商標)ビオチン(Invitrogen)などのように市販されている。さらなるビオチンアナログおよび誘導体は公知である(例えば、米国特許第5,168,049号;米国特許出願公開第2004/0024197号、第2001/0016343号、および第2005/0048012号;ならびにPCT公開番号WO1995/007466を参照されたい)。
【0057】
ビオチン結合タンパク質:意図される目的に関して十分に大きい親和性でビオチンに結合するタンパク質。ビオチン結合タンパク質の例は、当技術分野で周知であり、これには、アビジン、ストレプトアビジン、NEUTRAVIDIN(商標)、およびビオチンに特異的に結合するモノクローナル抗体または受容体分子が挙げられる。本開示の文脈において、ストレプトアビジンを、他の任意のビオチン結合タンパク質またはビオチン結合タンパク質の組み合わせに交換することができる。
【0058】
クリックコンジュゲーション:「クリック」ケミストリーを使用するコンジュゲーション、これはモジュール性で範囲が広く、非常に高い収量をもたらし、無害の副産物のみを生成する化学反応を記載する用語である。「クリック」反応の一例は、ヒュスゲン銅(I)触媒アジド-アルキン1,3-双極子環化付加(CUAAC)であり、1,4-二置換五員環である1,2,3-トリアゾール環を生じる。アジドとアルキンの間のこの反応は、高い収率を与え、合成ポリマー、フルオロフォア、小分子などの多様な分子に、または生体分子の特定の位置に比較的容易に導入することができる官能基を伴う。生物学的目的のこの反応のポジティブな態様は、アジドおよびアルキン官能基が生物学的分子および水性環境に対してほぼ不活性であるという点である。より最近、DCBO-TEGおよびアジ化リンカーを使用して、銅不含クリックコンジュゲーションが利用できるようになった。
【0059】
コンジュゲートされた:例えば共有結合によって共に結合した2つの分子を指す。コンジュゲートの一例は、検出可能な標識、例えばフルオロフォアにコンジュゲートして検出基質を形成する分子(例えば、アビジン/ストレプトアビジン)である。
接触させる:直接の物理的会合に置くことであり、固体型および液体型の両方を含む。本明細書で使用される場合、「接触させる」は、「曝露する」と互換的に使用される。
【0060】
対照:参照標準、例えば陽性対照または陰性対照。陽性対照は、陽性の試験結果を提供することが既知である。陰性対照は、陰性の試験結果を提供することが既知である。しかし、参照標準は、理論的または計算された結果、例えば集団において得られた結果であり得る。
【0061】
細胞外小胞およびエクソソーム:本明細書で使用される場合、細胞外小胞(EV)は、細胞から脱落した膜小胞である。そのような小胞または膜小胞には、循環中の微小小胞(cMV)、微小小胞、エクソソーム、ナノ小胞、デクソソーム(dexosome)、ブレブ、小水泡(blebby)、プロスタソーム(prostasome)、微小粒子、内腔小胞、膜断片、内腔エンドソーム小胞、エンドソーム様小胞、エクソサイトーシスビヒクル(exocytosis vehicle)、エンドソーム小胞、エンドソームの小胞、アポトーシス体、多胞体、分泌小胞、リン脂質小胞、リポソーム小胞、アルゴソーム(argosome)、テキサソーム(texasome)、セクレソーム(secresome)、トレロソーム(tolerosome)、メラノソーム(melanosome)、オンコソーム(oncosome)、またはエクソサイトーシスされたビヒクルが挙げられるがこれらに限定されない。小胞は、時にペイロードと呼ばれる可溶性の構成要素を含み得る内部区画を囲む細胞膜と類似の脂質二重層を有する球状構造を含む。循環中のEVは、診断目的にとって特に有用である。
【0062】
一部の実施形態では、本明細書に開示される方法は、広範囲の哺乳動物細胞タイプによって分泌される直径約40~150nmの小さい分泌小胞であるエクソソームを利用する。今日まで試験されたほとんどのエクソソームは、進化的に保存された一組のタンパク質分子、および異なる細胞タイプによって分泌されたエクソソームを識別する一組の組織/細胞タイプ特異的タンパク質を有する。エクソソーム中のRNA分子は、mRNAおよびmiRNAを含み、これは1つ細胞から別の細胞へと行き来し、レシピエント細胞のタンパク質産生に影響を及ぼし得る。エクソソームは、エンドソームの内側への出芽(inward budding)を通して内腔小胞(ILV)を形成して多胞体(MVB)を形成することによってその生合成が特徴付けられる。次に、これらのMVBは、細胞外膜と融合し、ILV(今ではエクソソーム)の積み荷を細胞外環境に放出する。エンドソームは、まずエンドサイトーシスによる細胞膜の内側への出芽によって形成されて脂質膜の逆転が起こり、細胞外環境の一部を内腔側に捕捉する。同様に、エンドソーム膜の第2の内側への出芽により、細胞のある体積の細胞質が捕捉され、正の配向のILV脂質膜が得られる。ILV(今ではエクソソーム)が、細胞外環境に放出されると、それらは細胞膜と同じ配向を有し、その細胞起源からの表面マーカーの多くを提示することが示されている。しかし、ILV形成の際の膜タンパク質の選別プロセスは活性なプロセスであり、したがってエクソソーム表面タンパク質は、細胞起源からの表面マーカーの単純な1対1の表示ではない。小胞は、細胞から脱落した膜封入構造であり、血液、血漿、血清、乳、腹水、気管支肺胞洗浄液、および尿を含む複数の体液中に見出されている。
【0063】
小胞は、タンパク質、RNA、DNA、ウイルス、およびプリオンの輸送小胞として細胞間の連絡に関与し得る。生物試料中に存在する小胞は、バイオマーカーの供給源、例えば小胞内に存在するマーカー(小胞ペイロード)、または小胞の表面に存在するマーカーを提供する。小胞の特徴(例えば、サイズ、表面抗原、細胞起源の決定、ペイロード)はまた、診断、予後、または治療適応を提供し得る。小胞バイオマーカーの使用は、例えば米国特許出願公開第20140228233号に開示されており、これは、1つまたは複数のmRNA、例えばA2ML1、BAX、C10orf47、C10orf162、CSDA、EIFC3、ETFB、GABARAPL2、GUK1、GZMH、HIST1H3B、HLA-A、HSP90AA1、NRGN、PRDX5、PTMA、RABAC1、RABAGAP1L、RPL22、SAP18、SEPW1、SOX1、またはその任意の組み合わせを含む単離された小胞の検出を開示している。他の小胞関連マーカーには、CA-125、CA 19-9、C-反応性タンパク質(CRP)、CD95、FAP-1、EGFR、EGFRvIII、EpCAM、アポリポタンパク質AI、アポリポタンパク質CIII、ミオグロビン、テネイシンC、MSH6、クローディン-3、クローディン-4、カベオリン-1、凝固因子III、CD9、CD36、CD37、CD53、CD63、CD81、CD136、CD147、Hsp70、Hsp90、Rab13、デスモコリン-1、EMP-2、CK7、CK20、GCDF15、CD82、Rab-5b、アネキシンV、MFG-E8、TIM-4、HLA-DR、miR200マイクロRNAまたはその組み合わせが挙げられる。
【0064】
一部の例では、小胞は、がん、例えば前立腺がんなどの状態に関して試験される、または状態を有することが既知である被験体の生物試料から単離され得る。あるいは、小胞は、細胞培養物、例えば前立腺細胞を含む培養物を含む生物試料から単離され得る。米国特許出願公開第20140228233号(特に、表1および2を参照されたい)におけるバイオマーカーの開示は、参照により本明細書に組み込まれており、同様に米国特許出願公開第20140162888号も参照により本明細書に組み込まれており、これは乳がん、卵巣がん、肺がん、結腸がん、腺腫/過形成性ポリープ、炎症性腸疾患、結腸直腸がん、前立腺がん、黒色腫、脳がん、心血管疾患、血液悪性疾患、肝細胞癌、子宮頸がん、子宮内膜がん、糖尿病、バレット食道、線維筋痛症、多発性硬化症、パーキンソン病、アルツハイマー病、プリオン病、敗血症、慢性神経因性疼痛、統合失調症、双極性障害、抑うつ、消化管間質腫瘍(GIST)、腎細胞癌、肝硬変、食道がん、胃がん、自閉症、臓器拒絶、メチシリン耐性staphylococcus aureus、不安定プラーク、およびその他などの疾患のさらなるバイオマーカーおよびバイオシグネチャーを開示している。その組み込まれた開示はまた、バイオシグネチャーを同定して表現型を特徴付ける方法、小胞上のバイオマーカーとして使用することができる小胞上のタンパク質をスクリーニングする方法、および小胞のバイオシグネチャーを評価することによって表現型を特徴付ける方法も記載する。これらの方法はいずれも、本明細書に開示される分子ナノタグに関連して使用することができる。
【0065】
タイプおよび特徴付けを含む膜小胞の論評に関しては、Theryら、Nat Rev Immunol.、2009年8月;9巻(8号):581~93頁も参照されたい。
【0066】
フローサイトメトリー機器:粒子が、電子検出装置による検出のためにコヒーレント光線、例えばレーザー光線の中を通過する際に、サイズまたは蛍光などの粒子の特徴に基づいて流体混合物中の個々の粒子を分析する任意の機器を含む。これは、1秒間に最大数千個の粒子の物理化学特性の同時のマルチパラメータ解析を可能にする。フローサイトメーターを、粒子の蛍光および光散乱能を検出するように構成してもよく、同様に粒子、例えば直径約120もしくは140nm未満の球相当径を有する粒子の高分解能が得られるように、または直径100nm未満の球相当径を有するナノ粒子を検出するように構成してもよい。
【0067】
蛍光:光または他の電磁放射線を吸収する物質による光の放射。蛍光強度は、当技術分野で公知の任意の手段によって、例えば米国国立衛生研究所から入手可能なImageJソフトウェアを使用して、測定することができる強度の定量を指す。
【0068】
フルオロフォア:特定の波長の光に曝露されると励起され、例えば異なる波長で光を放射する(すなわち、蛍光を発する)化学化合物。
【0069】
本明細書に開示される方法に使用され得るフルオロフォアの例は、Nazarenkoらに対する米国特許第5,866,366号に提供される:4-アセトアミド-4’-イソチオシアナトスチルベン-2,2’ジスルホン酸、アクリジンおよび誘導体、例えばアクリジンおよびアクリジンイソチオシアネート、5-(2’-アミノエチル)アミノナフタレン-1-スルホン酸(EDANS)、4-アミノ-N-[3-ビニルスルホニル)フェニル]ナフタルイミド-3,5ジスルホネート(ルシファーイエローVS)、N-(4-アニリノ-1-ナフチル)マレイミド、アントラニルアミド、ブリリアントイエロー、クマリンおよび誘導体、例えばクマリン、7-アミノ-4-メチルクマリン(AMC、クマリン120)、7-アミノ-4-トリフルオロメチルクマリン(trifluoromethylcouluarin)(クマリン151);シアノシン;4’,6-ジアミニジノ-2-フェニルインドール(DAPI);5’,5”-ジブロモピロガロール-スルホンフタレイン(ブロモピロガロールレッド);7-ジエチルアミノ-3-(4’-イソチオシアナトフェニル)-4-メチルクマリン;ジエチレントリアミン五酢酸塩;4,4’-ジイソチオシアナトジヒドロ-スチルベン-2,2’-ジスルホン酸;4,4’-ジイソチオシアナトスチルベン-2,2’-ジスルホン酸;5-[ジメチルアミノ]ナフタレン-1-スルホニルクロリド(DNS、塩化ダンシル);4-(4’-ジメチルアミノフェニルアゾ)安息香酸(DABCYL);4-ジメチルアミノフェニルアゾフェニル-4’-イソチオシアネート(DABITC);エオジンおよび誘導体、例えばエオジンおよびエオジンイソチオシアネート;エリスロシンおよび誘導体、例えばエリスロシンBおよびエリスロシンイソチオシアネート;エチジウム;フルオレセインおよび誘導体、例えば5-カルボキシフルオレセイン(FAM)、5-(4,6-ジクロロトリアジン-2-イル)アミノフルオレセイン(DTAF)、2’7’-ジメトキシ-4’5’-ジクロロ-6-カルボキシフルオレセイン(JOE)、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、およびQFITC(XRITC);フルオレスカミン;IR144;IR1446;マラカイトグリーンイソチオシアネート;4-メチルウンベリフェロン;オルトクレゾールフタレイン;ニトロチロシン;パラロスアニリン(pararosaniline);フェノールレッド;B-フィコエリスリン;R-フィコエリスリン;o-フタルジアルデヒド;ピレンおよび誘導体、例えばピレン、酪酸ピレンおよび酪酸スクシンイミジル1-ピレン;リアクティブレッド4(Cibacron.RTM.ブリリアントレッド3B-A);ローダミンおよび誘導体、例えば6-カルボキシ-X-ローダミン(ROX)、6-カルボキシローダミン(R6G)、リサミンローダミンBスルホニルクロリド、ローダミン(Rhod)、ローダミンB、ローダミン123、ローダミンXイソチオシアネート、スルホローダミンB、スルホローダミン101およびスルホローダミン101のスルホニルクロリド誘導体(テキサスレッド);N,N,N’,N’-テトラメチル-6-カルボキシローダミン(TAMRA);テトラメチルローダミン;テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC);リボフラビン;ロゾール酸およびテルビウムキレート誘導体。
【0070】
他の適したフルオロフォアには、およそ617nmで発光するチオール反応性ユーロピウムキレートが挙げられる(HeydukおよびHeyduk、Analyt. Biochem.、248巻:216~27頁、1997年;J. Biol. Chem. 274巻:3315~22頁、1999年)。
【0071】
他の適したフルオロフォアには、GFP、Lissamine(商標)、ジエチルアミノクマリン、フルオレセインクロロトリアジニル、ナフトフルオレセイン、4,7-ジクロロローダミンおよびキサンテン(Leeらに対する米国特許第5,800,996号に記載)およびその誘導体が挙げられる。
【0072】
蛍光タンパク質には、緑色蛍光タンパク質(例えば、GFP、EGFP、AcGFP1、Emerald、Superfolder GFP、Azami Green、mWasabi、TagGFP、TurboGFPおよびZsGreen)、青色蛍光タンパク質(例えば、EBFP、EBFP2、Sapphire、T-Sapphire、AzuriteおよびmTagBFP)、シアン蛍光タンパク質(例えば、ECFP、mECFP、Cerulean、CyPet、AmCyan1、Midori-Ishi Cyan、mTurquoise、およびmTFP1)、黄色蛍光タンパク質(EYFP、Topaz、Venus、mCitrine、YPet、TagYFP、PhiYFP、ZsYellow1、およびmBanana)、オレンジ蛍光タンパク質(Kusabira Orange、Kusabira Orange2、mOrange、mOrange2、およびmTangerine)、赤色蛍光タンパク質(mRuby、mApple、mStrawberry、AsRed2、mRFP1、JRed、mCherry、HcRed1、mRaspberry、dKeima-Tandem、HcRed-Tandem、mPlum、AQ143、tdTomato、およびE2-Crimson)、オレンジ/赤色蛍光タンパク質(dTomato、dTomato-Tandem、TagRFP、TagRFP-T、DsRed、DsRed2、DsRed-Express(T1)およびDsRed-Monomer)、ならびにその修飾型が挙げられるがこれらに限定されない。
【0073】
多様な供給源から購入することができるフルオロフォアなどの当業者に公知の他のフルオロフォアを使用することもできる。これらのフルオロフォアのいずれも分子ナノタグの蛍光構成要素の蛍光を提供することができる。
【0074】
nanoFACS:光散乱測定と蛍光の両方を、複数のレーザーおよびそれらの様々なレーザーに対応する並列した検出路を使用して調査する(interrogate)ことができるナノ材料の分析のための高分解能フローサイトメーターの構成。ほとんどのフローサイトメーターは、1つの側方散乱チャネルを調査するのみであるが、Beckman Coulter AstriosEQでは、例えば1つのSSc検出器をトリガーとし、SScパラメータを含む全ての他のピンホールからの単一事象を収集および使用することが可能である。AstriosEQによる例では、最大のSScシグナル:ノイズ分離は、中央の(7個中4番目)ピンホールでの561nmレーザーのSSc検出器によるトリガリング、その後第2のピンホールでの488nm検出器によるSSc分析によって達成され、これはAstriosEQの標準的な構成である。このアプローチにより、488nm SSc検出器(
図14A~14D)および他の「並列した」チャネルにおいて「部分透過ウインドウ」が得られ、これによって並列したチャネルがトリガーチャネルとして使用されている場合には、事象を認識および調査し、並列した散乱チャネルの閾値として設定されているレベルより下の非常に低い強度で散乱する微粒子集団の比率を評価することができる。用語「並列した閾値下」事象は、並列したチャネルにおいて検出されるが、そのチャネルが、並列した閾値レベルの決定因子と同じ基準ノイズ比でトリガーチャネルとして使用されている場合の閾値よりは低い範囲で検出されるこれらの事象を記載するために使用される(ノイズ事象または粒子関連事象によらず)。基準ノイズ比を、機器の設定時に一次(トリガー)閾値を有するチャネルに設定したことから、この比を、シース液単独、基準ノイズにおけるバックグラウンドノイズ事象の大部分を構成する散乱光を産生する光:流れ相互作用に設定する。このようにして、シース液から並列した閾値下事象を調査することが可能である。シース液のみを流す場合、並列した閾値下の割合は基準比、または閾値チャネルにおいて検出された流れから外れた反射率にほぼ等しかった。試料を流す場合、並列した閾値下事象の割合は、トリガーチャネルの閾値レベルであるかまたはそれを超える粒子関連光散乱事象の割合が増加すると増加した。これを
図15A~15Iにおいて代表的なEV試料に関して例証する。基準ノイズ比を増加させるために閾値の値を低下させると、この操作が、そうでなければその個々の散乱特性に基づいて検出されていない事象の調査頻度を増加させることから、可視化される並列した閾値下粒子(試料中に存在する場合)の割合を増加させた。
【0075】
561nm SScチャネルのトリガーレベルより下に予想される「ブラインド」領域が存在するが、並列した閾値下事象の有益な(とはいえ、単に代表的な)集団が488nm SScチャネルで検出された。これらの事象は、488nm SScチャネルをトリガーチャネルとして使用する場合は、488nm閾値によって除外されている検出レベルより下に入るが、561nm SSc閾値またはそれより上での事象の発生に関連して、488nm SScシグナルの一致に基づいて検出された。561nmトリガー事象は、ノイズ事象または粒子散乱事象のいずれかであり得ることから、488nm SScの並列した閾値下領域において観察された試料事象は、基準ノイズの検出領域と重なり、トリガー閾値より上で光を散乱する粒子に起因するシグナル事象のみならず、流体の流れからの光の反射の一致により記録された並列した閾値下シグナルも含んだ。基準ノイズ事象の割合(すなわち、特定の機器および特定の実験に関する構成に対して固有である調査チャンバーにおけるシース液の流れからの散乱レーザー光により生じる事象の割合)は、粒子が流れていない場合には一定のままであり、シース液のみがレーザー調査ポイントで交叉した。血漿などの不均一な試料を分析する場合、割合はしばしば一定ではなく、たとえ現行のソフトウェアツールが、流体の流れから反射した光により生じる個々の事象を、個々の粒子の検出事象と識別できなくとも、並列した閾値下事象を調査して、割合および分布などの閾値下集団の一部の属性を識別することは有益であることが見出された。405nm、488nm、561nm、および640nm SSc検出器の各々を比較すると、SScトリガーの設定目的に関して、561nmチャネルが最大の感度を提供したが、488nm SScチャネルは、AstriosEQにおいて561nm SScトリガーと共に、並列したSSc検出器として最善のシグナル:ノイズ分離を提供した。本発明者らが使用する用語「基準ノイズ」は、閾値/トリガーレベルでのノイズ事象(閾値ノイズ)と並列した閾値下ノイズ事象の両方を集合的に指す。これらの特定のSScチャネルは、例証のために使用されているが、他の前方または側方散乱チャネルを、本例証に開示されている方法を使用してトリガーおよび検出器として選択することができる。
【0076】
ナノ粒子:直径約10~約100ナノメートル(nm)の粒子。開示されるナノタグは、貴金属、例えば金または銀(またはその両方)、または貴金属以外の材料、例えばTiO
2、シリカ、カーボン、CdSe、ZnS、またはグラファイト、またはその任意の組み合わせで構成されるナノ粒子(例えば、
図1Aの10)を含み得る。
【0077】
ナノスケール:直径約100nmまたはそれ未満、例えば10~100、例えば50~100nmを有する。
【0078】
貴金属:空気中での腐食および酸化に耐える金属。これらには、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、オスミウム、イリジウム、白金、および金が挙げられる。本明細書における貴金属といういかなる言及も、銀および金などのこれらの金属のサブセットまたは組み合わせを含み得る。これらは、例えば量子ナノ結晶に対するシェルとして分子ナノタグにおいて使用するための高い屈折率材料を提供することができる材料の例である。
【0079】
表現型:生物の観察可能な特徴の複合体。
【0080】
ポリマー:反復単位で構成される天然または合成の物質、例えば反復単量体を含む高分子。ポリマー分子には、核酸分子、例えばDNA、RNA、ペプチド核酸(PNA)、異種核酸(XNA)、およびその組み合わせ、タンパク質ポリマー(例えば、微小管またはコラーゲン)、または合成の線形ポリマーが挙げられるがこれらに限定されない。核酸ポリマーは、一本鎖または二本鎖のいずれかであり得る。開示されるナノタグは、ポリマーで構成される被覆を含み得る(例えば、
図1Aの12)。
【0081】
QDOT(登録商標):一般的に直径約2~10nmを有する、半導体材料からなる小さい粒子またはナノ結晶の商標。QDOT(登録商標)は、蛍光を発光し、その色は粒子のサイズに依存する。QDOT(登録商標)は、量子ナノ結晶の1タイプの特定の例である。「量子ドット」は、量子ナノ結晶を指すためにしばしば同義的に使用される別の登録されていない用語である。
【0082】
屈折率:媒体の中を光がどのように伝播するかを説明する無次元数。屈折率は、媒体中で材料または変化に遭遇した場合にどれほど光が曲がるか、または屈折するかを決定する。一部の例では、屈折率は、光が材料とどのように相互作用するかを説明する。材料の屈折率は、材料の組成および入射波長に従って変化する(
図6~8を参照されたい)。多くの材料の屈折率が当技術分野で利用可能であり、例えばインターネット上のウェブサイト、例えばRefractiveIndex.Infoで見出され得る。しかし、これらの屈折率の値は、一般的にナノスケール材料に関してはあまり知られておらず、フローサイトメトリーによって検出される適切な波長の完全な範囲では知られていない。本開示では、高い屈折率を有するナノ粒子を使用する。「高い」屈折率は、分子タグが、照射の入射波長で、例えばフローサイトメーターにおいて機器のノイズより上で解析することができる材料で構成されることを意味する。
【0083】
試料:任意の生物試料(生物有機体から採取した)または環境試料(環境から採取した)を指す。生物試料は、生物有機体である被験体(例えば、ヒトまたは獣医学の被験体)から得た試料である。当技術分野で公知の特定の例では、生物試料は任意の体液、例えば末梢血、血清、血漿、腹水、尿、脳脊髄液(CSF)、痰、唾液、骨髄、滑液、房水、羊水、耳垢、乳、気管支肺胞洗浄液、精液(前立腺液を含む)、カウパー腺液または尿道球腺液(pre-ejaculatory fluid)、潮吹き(female ejaculate)、汗、糞便、毛髪、涙液、嚢胞液、胸水および腹水、心膜液、リンパ、キームス、乳び、胆汁、間質液、経血、膿、皮脂、嘔吐物、膣分泌物、粘膜分泌物、水様便、膵液、副鼻腔洗浄液、気管支肺胞吸引液、または他の洗浄液に由来する生物学的流体試料である。生物試料はまた、卵割腔(blastocyl cavity)、臍帯血、または胎児もしくは母親起源であり得る母体循環液も含み得る。生物試料はまた、そこから小胞および他の循環中のバイオマーカーが得られ得る組織試料または生検材料(細針吸引液を含む)であり得る。例えば、試料からの細胞を培養して、培養物から小胞を単離することができる。様々な実施形態では、バイオマーカーまたはより詳しくは本明細書に開示されるバイオシグネチャーを、そのような生物試料から直接評価することができる。バイオシグネチャーは、様々な方法、例えば血液、血漿、血清、もしくは前述の生物試料のいずれかからの核酸分子の抽出、ポリペプチド(または機能的断片)バイオマーカーを同定するためのタンパク質または抗体アレイの使用、ならびに他のアレイ、シークエンシング、PCR、および核酸およびポリペプチド分子の同定および評価のために当技術分野で公知のプロテオミクス技術を利用した、複数または多数の生物マーカーまたはその機能的断片の存在またはレベルである。生物試料、バイオマーカー、および小胞の検出に関するさらなる情報は、参照により本明細書に援用されている、米国特許出願公開第20140228233号に見出され得る。
【0084】
散乱:それが通過する媒体中の不均一性の局在による、1つまたは複数の進路による線形軌道からの軌道(例えば、光の)の逸脱。電磁放射線(光を含む)の散乱のいくつかのタイプは、異なる屈折率の小さい球状体積によって散乱する。ミー理論は、均一な球体による電磁平面波の散乱を記載している。光の散乱は、入射波長に依存し、波長の範囲にわたって材料特異的強度プロファイルを有する。光は、異なる材料のナノ粒子および/または異なる表面形状と異なるように相互作用する(
図8)。異なる多くの装置が光散乱の強度を測定するために公知であり、これにはフローサイトメーターおよび米国特許出願公開第20090251696号に示されている装置が挙げられる。
【0085】
シェル:光散乱の強度を検出するためのフローサイトメーターなどの装置の基準ノイズより上で、アセンブルした粒子を検出可能にするために十分に高い屈折率または光散乱能を有する金または他の貴金属の層などの粒子を囲む層。あるいは、シェルの表面形状またはトポグラフィーは、回折などの散乱光の属性を増加させ、材料の表面プラズモン共鳴特性、例えばナノアーチンの棘状表面を修飾することができる。このように、例えば、開示されるナノタグは、シェルを含み得る(
図1A、1B、または1Dのいずれでも示していないが、示されるナノタグはそのようなシェルを含み得ると認識される)。
【0086】
SNAPおよびCLIPタグタンパク質標識システム:選択した分子の目的のタンパク質への特異的共有結合性の付着を可能にする構築物。システムを利用するために2つのステップが存在する:目的のタンパク質をSNAP-タグ(登録商標)融合体としてクローニングおよび発現させるステップ、ならびに選択したSNAP-タグ基質によって融合体を標識するステップ。SNAP-タグは、DNA修復タンパク質であるヒトO6-アルキルグアニン-DNA-アルキルトランスフェラーゼ(hAGT)に基づく小さいタンパク質である。SNAP-タグ基質は、色素、フルオロフォア、ビオチン、またはベンジルリンカーを介してグアニンまたはクロロピリミジン脱離基にコンジュゲートされたビーズである。標識反応において、基質の置換されたベンジル基は、SNAP-タグに共有結合性に付着する。CLIP-タグ(商標)は、ベンジルグアニン誘導体ではなくてベンジルシトシンと反応するように操作されたSNAP-タグの修飾型である。SNAP-タグと共に使用すると、CLIP-タグは、同じ細胞において同時に2つのタンパク質の直交性および相補的な標識を可能にする。これらの方法を実施する試薬は、New England BioLabsから入手可能である。
【0087】
被験体:ヒトおよび非ヒト哺乳動物を含む範疇の生きている多細胞脊椎生物。特定の例では、被験体はヒトまたは獣医学の被験体である。
【0088】
腫瘍抗原:腫瘍特異的免疫応答を刺激することができる腫瘍細胞において産生された抗原。例示的な腫瘍抗原には、アルファフェトプロテイン(AFP)、癌胎児性抗原(CEA)、がん抗原125(CA-125)、MUC-1、上皮腫瘍抗原(ETA)、TAG-72、未成熟ラミニン受容体、HPV E6/E7、BING-4、カルシウム活性化塩素チャネル2、RAGE-1、MAGE-1、MAGE-2、チロシナーゼ、サイクリン-B1、9D7、Ep-CAM、EphA3、Her2/Neu、テロメラーゼ、メソテリン、SAP-1、サバイビン、NY-ESO-1、Melan-A/MART-1、糖タンパク質(gp)75、gp100/pmel17、ベータ-カテニン、POTE、PRAME、MUM-1、WT-1、PR-1 BAGEファミリー、CAGEファミリー、GAGEファミリー、MAGEファミリー、SAGEファミリー、XAGEファミリー、TRP-1、TRP-2、MC1R、PSA、CDK4、BRCA1/2、CML66、フィブロネクチン、MART-2、p53、Ras、TGF-ベータRII、およびMUC1が挙げられるがこれらに限定されない。
【0089】
腫瘍またはがん:新形成の産物は、新生物(腫瘍またはがん)であり、これは過度の細胞分裂に起因する組織の異常な成長である。転移しない腫瘍を「良性」と呼ぶ。周囲の組織に浸潤するおよび/または転移し得る腫瘍は「悪性」と呼ぶ。新生物は、増殖性障害の一例である。固形腫瘍は、嚢胞または液体領域を通常含まない組織の異常な塊である。
【0090】
固形がん、例えば肉腫および癌腫の例には、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、および他の肉腫、滑膜腫(synovioma)、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、リンパ悪性疾患、膵臓がん、乳がん(例えば、腺癌)、肺がん、婦人科がん(例えば、子宮のがん(例えば、子宮内膜癌)、子宮頸部のがん(例えば、子宮頸癌、前腫瘍の子宮頸部異形成)、卵巣のがん(例えば、卵巣癌、漿液性嚢胞腺癌、粘液性嚢胞腺癌、類内膜腫瘍、セリオブラストーマ(celioblastoma)、明細胞癌、分類不能癌(unclassified carcinoma)、顆粒膜卵胞膜細胞腫(granulosa-thecal cell tumor)、セルトリ-ライディッヒ細胞腫瘍、未分化胚細胞腫、悪性奇形腫)、外陰部のがん(例えば、扁平上皮癌、上皮内癌、腺癌、線維肉腫、黒色腫)、膣のがん(例えば、明細胞癌、扁平上皮癌、ブドウ状肉腫)、胎児性横紋筋肉腫、および卵管のがん(例えば、癌腫))、前立腺がん、肝細胞癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、甲状腺髄様癌、甲状腺乳頭状癌、褐色細胞腫、皮脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、肝臓がん、肝癌、胆管癌、絨毛癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸がん、精巣腫瘍、精上皮腫、膀胱癌、およびCNS腫瘍(例えば、神経膠腫、星細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫(craniopharyogioma)、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫(menangioma)、黒色腫、神経芽腫、および網膜芽腫)、ならびに皮膚がん(例えば、黒色腫および非黒色腫)が挙げられる。
【0091】
血液腫瘍の例には、急性白血病(例えば、急性リンパ球性白血病、急性骨髄球性白血病、急性骨髄性白血病、および骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性、および赤白血病)、慢性白血病(例えば慢性骨髄球性(顆粒球性)白血病、慢性骨髄性白血病、および慢性リンパ球性白血病)を含む白血病、真性多血症、リンパ腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(緩徐進行性形態および高悪性度形態)、多発性骨髄腫、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、重鎖病、骨髄異形成症候群、ヘアリーセル白血病、および骨髄異形成が挙げられる。
【0092】
III.いくつかの実施形態の概要
本明細書に開示されるナノスケール分子タグは、ナノスケール粒子の機能的選別に対するこれまでの障壁を克服する。本明細書に開示されるナノスケール分子タグは、例えば顕微鏡、またはフローサイトメーター装置などの蛍光および光散乱の強度を検出するための装置を使用して、単一分子の検出を可能にする。分子タグは、光散乱特性および/または蛍光特性に基づいて、機能的形態でのサブミクロン粒子の選別を可能にする。開示される分子ナノタグはまた、例えば複数の異なる標的を検出するために、例えば各々が特定の標的に対して特異的である分子ナノタグの別個の集団を使用することによって多重化も可能にする。
【0093】
開示される分子ナノタグは、それらが個々に検出および定量されることから、独自のものである。すなわち、分子ナノタグは、検出される標的の数を直接確認するために増分単位で解析および定量することができる。これに対し、フローサイトメトリーで使用される他の検出試薬は、単にバルクで検出することができるに過ぎない(例えば、複数の標識が1つの細胞の表面上、または内部に存在する場合)。CytTOF質量分析に基づくシステムを含む多くのフローサイトメーターは、1,000個の標識より少ない合計「シグナル」を検出することができない。単一の標識検出能を有すると記載されている1つのフローサイトメーターは、超高感度nanoFCM機器である(Anal. Chem.、2009年、81巻(7号)、2555~2563頁)。しかし、開示される分子ナノタグは、個々に検出されることに限定されない。
【0094】
個々の分子ナノタグの検出により、粒子(例えば、細胞、エクソソーム、細胞外小胞等)当たりに付着したナノタグの数の列挙(または決定)が可能となる。このように、開示されるナノタグおよび方法を使用して、多くのエピトープが存在する場合に限ってエピトープを検出することができる現代のフローサイトメトリー機器では検出できないほど少ないエピトープを有する粒子(例えば、細胞、エクソソーム、細胞外小胞等)を検出することができる(Nolanら、Platelets、28巻:256~62頁)。分子ナノタグは、標的粒子(例えば、細胞、エクソソーム、細胞外小胞等)に対して特異的な1つの結合部位を有し得る。しかし、一部の例では、粒子が1つより多くの結合部位を有し得ることから、1つより多くの分子ナノタグが粒子に結合する。各々が別個の標識(例えば、別個のコア、例えば金対銀が、別個の第1の結合パートナーを有し、例えば1つが標的Aに対して特異的で、もう1つが標的Bに対して特異的である、またはその組み合わせ)を有するように2つを超えるまたはそれより多くの異なる分子ナノタグを使用する場合、2つまたはそれより多くの異なる分子ナノタグが、目的の粒子に結合して、これを検出することができ、一部の例では、これを例えばスペクトル散乱デコンボリューションを使用して定量することができる。同様に、異なるコア散乱および/または蛍光スペクトルおよび別個のリガンド結合特性によって互いに識別される複数の分子ナノタグを使用して、別個のタイプのEVを標識することができる(例えば、前立腺または他のPSMA発現細胞から生じるPSMA陽性EVを、PSMAに結合する金分子ナノタグによって認識することができ、造血起源の細胞から生じるCD45陽性EVから識別および選別し、銀分子ナノタグによって認識することができる)。一部の例では、集団1が標的1に対して特異的で、集団2が標的2に対して特異的等である、分子ナノタグの少なくとも2つの異なる集団を同時に使用する。
【0095】
一部の実施形態では、ナノスケール分子タグは、直径約100nm未満のコアナノ粒子と、第1の部分および第2の部分を有する被覆であって、第1の部分がコアナノ粒子の表面に結合し、第2の部分がコアナノ粒子に結合せず、固定数の結合部位を有する官能化末端を含む被覆とを含む。例えば、
図1A、1B、および1Dを参照して、ナノスケール分子タグ20、40、50は、直径約100nm未満のコアナノ粒子10と、第1の部分および第2の部分を有する被覆であって、第1の部分12がコアナノ粒子の表面に結合し、第2の部分14がコアナノ粒子に結合せず、固定数の結合部位(例えば、1、2、3、または5つの結合部位)を有する官能化末端16を含む被覆とを含む。
【0096】
一部の例では、ナノスケール分子タグは、コアを囲むシェルをさらに含む。これらの実施形態では、被覆の第1の部分はコアではなくてシェルに結合し、被覆の第2の部分はシェルに結合しない。一部の例では、シェルは金、銀、両方、または他の貴金属の層である。一部の例では、シェルは核酸分子(例えば、DNA)またはPEGを含む。
【0097】
コア、シェル、および被覆のうちのいずれか1つまたは任意の組み合わせが、フローサイトメーターによって検出可能である分子タグの蛍光、光の散乱、および/またはリガンド結合特性に寄与する。
【0098】
一部の例では、コアナノ粒子の直径は、約20~約100nm、約30~約80nm、または約40~約60nmである。特定の非制限的な例では、コアナノ粒子は、約95nm未満、約90nm未満、約85nm未満、約80nm未満、約75nm未満、約70nm未満、約65nm未満、約60nm未満、約55nm未満、または約50nm未満である。これらの例では、コアナノ粒子は、直径少なくとも20nmである。ナノ粒子が必要に応じたシェルを含む例では、コアおよびシェルの直径は合わせて、約20~約100nmであるか、またはこの段落で先に述べたコアそのものに関して言及した他の任意の寸法である。
【0099】
一部の例では、結合部位の固定数は1である。他の例では、結合部位の固定数は、2、3、4、または5である。一部の例では、被覆は、コアおよび/またはシェルに対して親和性を有し、他の任意の分子またはポリマーのナノ粒子への結合を実質的に完全に排除するために、コアおよび/またはシェルの周囲を囲むポリマーを含む。一部の例では、排除は他のポリマーの立体排除であるか、または被覆がそれからなる選択されたポリマーの1つより多くの排除である。
【0100】
一部の実施形態では、コアナノ粒子は、フローサイトメーターなどの蛍光および/または光散乱の強度を測定する装置によって検出可能であるナノスケール分子タグの光散乱特性に寄与する高い屈折率を有するナノ材料からなる。一部の例では、コアナノ粒子は、量子ナノ結晶、例えば量子ナノ結晶または量子ドット(例えば、QDOT(登録商標))を含む。一部の例では、コアナノ粒子またはそのシェルは、貴金属、例えば、金または銀(または両方)、または貴金属以外の材料、例えばTiO2、シリカ、カーボン、CdSe、ZnS、またはグラファイト、またはその任意の組み合わせを含む。
【0101】
一部の実施形態では、コアおよび必要に応じたシェルは、パラメータNRAQD=NRefractive index,Angular and Quantum properties, and Diameterを有し、式中NRADは、フローサイトメトリーの検出限界(Ylimit)より大きい。分子ナノタグの構成要素の散乱および蛍光特性、またはアセンブルした分子ナノタグの光散乱および蛍光特性は、構成要素特異的な量子効果を実証し、NRADは、材料の量子特性に依存し、光の特定の波長と相互作用して、増加したまたは減少したシグナル(散乱または蛍光)を産生し、これをマルチパラメトリックフローサイトメトリーによって検出することができる。分子ナノタグ材料は、分子ナノタグ-標的(標的化エピトープを有するエクソソーム、例えば標的と分子ナノタグとの間に分子ナノタグの検出される散乱または蛍光強度を修飾する量子相互作用が存在する場合)に対して固有のまたはそうでなければ結合する材料構成要素に近接している。そのような量子修飾効果は、スペクトルまたは他のマルチパラメトリックサイトメトリーアプローチによってスペクトル的に定義され得る、ある特定の波長の検出のシフトに依存し、シフトに基づいて検出可能であると予想される。
【0102】
一部の例では、分子ナノタグに使用されるコアおよび必要に応じたシェルは、検出機器に応じて選択的である。例えば、405nm散乱の照射構成のフローサイトメーターを使用する場合、分子ナノタグのコアおよび必要に応じたシェルに銀を使用すると、コアおよび必要に応じたシェルに金を使用する場合より、コア直径10nm~40nmを有する小さい分子ナノタグの良好な散乱に基づく検出を提供する。しかし、ナノタグを検出するために使用するフローサイトメーターまたは他の装置が532nm散乱の照射構成を有する場合、金のコアおよび必要に応じたシェルからなる分子ナノタグは、銀の分子ナノタグより良好な散乱に基づく検出を提供するであろう。検出機器が、405nmおよび532nm散乱の照射構成の両方を有する場合、分子ナノタグに使用されるコアおよび必要に応じたシェルは、金および銀であり得て(例えば、金と銀の両方を含む1つのナノタグ、または1つが金を含み、他方が銀を含む異なるナノタグ)、同時に使用することができる。
【0103】
一部の実施形態では、被覆はポリマーを含む。一部の例では、ポリマーは、分子タグの蛍光、光の散乱、および/またはリガンド結合特性に寄与する。一部の例では、ポリマーは、核酸、例えばデオキシリボ核酸(DNA)、例えば一本鎖DNA、RNA、またはPNAを含む。特定の非制限的な例では、DNAは、一本鎖ホスホロチオエートDNA(ptDNA)である。
【0104】
被覆が一本鎖DNAを含む特定の例では、被覆の第1の部分は、約30~約100ヌクレオチド長、例えば約40~約90、約50~約80、または約60~約70ヌクレオチド長である。一部の例では、被覆の第1の部分は、全てホスホロチオエートアデノシンヌクレオチドからなる。
【0105】
被覆が一本鎖DNAを含む特定の例では、被覆の第2の部分は、約10~約30ヌクレオチド長、例えば約15~約25、約18~約22、または約20ヌクレオチド長である。
【0106】
被覆がポリマーを含む他の例では、ポリマーは、ポリエチレン、例えばポリエチレングリコール(PEG)またはその誘導体を含む。
【0107】
一部の実施形態では、被覆の官能化末端は、第2の結合パートナー、例えば標的(例えば、タンパク質、例えばリガンド)に特異的に結合することができる第1の結合パートナーを含む。特定の非制限的な例では、第1および第2の結合パートナーはそれぞれ、ベンジルグアニンとSNAP-Tag;ベンジルグアニンとCLIP-Tag;ビオチンとストレプトアビジン;一本鎖オリゴヌクレオチドと相補的一本鎖オリゴヌクレオチド;一本鎖オリゴヌクレオチドとアプタマー;DCFPyLと前立腺特異的膜抗原(PSMA);受容体とリガンド;リガンドと受容体;抗原と抗体(例えば、疾患または感染症、例えば細菌もしくはウイルス感染症に関連する抗体);または抗体と抗原、例えば腫瘍抗原またはペプチドタグ(例えば、HisタグまたはFLAGタグ)から選択される。一部の例では、腫瘍抗原は、PSMA、上皮増殖因子受容体(EGFR)、血管内皮増殖因子(VEGF)、HER1、Her-2/neu、上皮細胞接着分子(EpCAM)、CD20、CD24、CD25、CD33、CD52、CA125、Lewis Y、TAG72、CD133、CD47、CD147、PD-L1、GPC-1、CEA、アルファフェトプロテイン(AFP)、またはMuc-1を含む。このように、一部の例では、ナノスケール分子タグは、第1の結合パートナーとして、PSMA、EGFR、VEGF、HER1、Her-2/neu、EpCAM、CD20、CD24、CD25、CD33、CD52、CA125、Lewis Y、TAG72、CD133、CD47、CD147、PD-L1、GPC-1、CEA、AFP、またはMuc-1に対して特異的な結合剤(例えば、抗体、リガンド、またはアプタマー)を含む。一部の例では、腫瘍抗原はPSMAであり、ナノスケール分子タグは、抗PSMA抗体またはPSMAリガンド、例えばDCFBCを含む(
図10A~10Cおよび11Eを参照されたい)。
【0108】
一部の例では、ナノスケール分子タグは、ホスファチジルセリン(PS)を検出するために、標的リガンド、例えば細胞外小胞上のリガンドに対して特異的な結合剤(例えば、受容体)、例えばTIM-4受容体を含む。例えば、そのようなナノスケール分子タグを使用して、細胞死(例えば、一般的な細胞死、アポトーシス、化学物質誘導細胞死(例えば、化学療法による)または放射線誘導細胞死)をモニターすることができる。放射線照射後に高レベルのPSが予想されるが、全てのEVは、リン脂質表面において低いまたは中等度のPSを含む。TIM-4は、PSにカルシウム依存的に可逆的に結合する受容体であり、結合後に標識を溶出することが可能である。開示されるナノスケール分子タグに結合するように標的化することができる他の小胞関連マーカーには、CA-125、CA 19-9、C-反応性タンパク質(CRP)、CD95、FAP-1、EGFR、EGFRvIII、EpCAM、アポリポタンパク質AI、アポリポタンパク質CIII、ミオグロビン、テネイシンC、MSH6、クローディン-3、クローディン-4、カベオリン-1、凝固因子III、CD9、CD36、CD37、CD53、CD63、CD81、CD136、CD147、Hsp70、Hsp90、Rab13、デスモコリン-1、EMP-2、CK7、CK20、GCDF15、CD82、Rab-5b、アネキシンV、MFG-E8、HLA-DR、miR200マイクロRNAが挙げられる(例えば、ナノタグは、それらに対して特異的な結合試薬を含み得る)。
【0109】
一部の実施形態では、ナノスケール分子タグは、フルオロフォア、例えば本明細書に記載したフルオロフォアの1つまたは複数を含む。
【0110】
一部の実施形態では、ナノスケール分子タグは、直径100nm未満のコアナノ粒子と;必要に応じたシェルと;例えば第1の部分と第2の部分とを有する一本鎖核酸分子などの被覆であって、第1の部分が、ナノ粒子の原子価を固定数の機能的結合部位(例えば、1、2、3、4、または5つの機能的結合部位)に低減させる、コアナノ粒子の表面に結合したホスホロチオエートDNAを含む、被覆と;被覆結合部位を指定された標的の機能的リガンドに接続するリンカーと;指定された標的の機能的リガンド(タンパク質、ヌクレオチド、または他のリガンド結合要素からなる)とを含み、コア、シェル、および被覆のうちのいずれか1つまたは任意の組み合わせが、それらを検出する機器によって検出可能である分子タグの蛍光、光散乱、および/またはリガンド結合特性に寄与する。
【0111】
他の例では、コアは、蛍光を調節し、同様に結合表面を修飾することができるシェルによって取り囲まれた蛍光コアを有する量子ナノ結晶である。なお他の例では、被覆は、分子タグの蛍光および/または結合特性をさらに修飾することができる。
【0112】
本明細書において、試料中の単一の標的分子をフローサイトメーターにおいて検出する方法も提供する。一部の実施形態では、方法は、試料に、本明細書に開示されるナノスケール分子タグを接触させるステップであって、ナノスケール分子タグの官能化末端が、試料中に存在する場合には標的分子に特異的に結合するステップと、小分子を解析するように構成されたフローサイトメトリー機器を使用して試料を分析し、側方散乱の検出または蛍光の検出、またはその両方によって、標的分子に結合した個々のナノスケール分子タグを検出するステップとを含む。
【0113】
一部の実施形態では、試料を、フローサイトメーターにおいて少なくとも2つの側方散乱チャネルを使用して分析する。一部の例では、第1の側方散乱チャネルを、トリガーとして使用し、第2の側方散乱チャネルを検出器として使用する。一部の例では、方法は、並列した閾値下事象を検出するステップを含む。一部の例では、405nm、445nm、488nm、532nm、561nm、592nm、および640nmのうちの2つまたはそれより多くなどの少なくとも2つの側方散乱チャネルを検出器として使用する。一部の例では、405nm、488nm、561nm、および640nmのうちの2つまたはそれより多くなどの少なくとも2つの側方散乱チャネルを検出器として使用する。一部の例では、少なくとも405nmおよび561nm、または少なくとも488nmおよび561nmなどの少なくとも2つの側方散乱チャネルを検出器として使用する。一部の実施形態では、試料は生物試料、例えば生体膜、例えば細胞外小胞(EV)を含む試料である。他の例では、生物試料はウイルスを含む。他の実施形態では、試料は、環境試料、例えば水、土壌、または空気試料である。
【0114】
方法の一部の例では、標的分子は腫瘍抗原を含む。特定の非制限的な例では、腫瘍抗原は、PSMA、血管内皮増殖因子(VEGF)、HER1、Her-2/neu、上皮細胞接着分子(EpCAM)、CD20、CD24、CD25、CD33、CD52、CA125、Lewis Y、TAG72、CD133、CD47、CD147、PD-L1、GPC-1、CEA、アルファフェトプロテイン(AFP)、またはMuc-1を含む。しかし、本明細書に開示される、または援用されている参考文献に開示されるマーカーのいずれも、本明細書に開示される方法において使用することができる。
【0115】
IV.フローサイトメトリー
フローサイトメトリーは、細胞を流体の流れに懸濁させ、それらを電子的検出装置によって通過させることによって、細胞の計数、細胞の選別、バイオマーカー検出、およびタンパク質工学において使用されるレーザーに基づく生物物理的技術である。これは、1秒間に最大数千個の粒子の物理化学特徴の同時のマルチパラメトリック分析を可能にする。フローサイトメトリーは、健康障害、特に血液のがんの診断において日常的に使用されているが、基礎研究、臨床での実践、および臨床試験において他の多くの適用を有する。一般的な変化形は、目的の集団を精製するために、その特性に基づいて粒子を物理的に選別することである。
【0116】
フローサイトメトリー機器は、毎秒数千個の粒子を「リアルタイムで」分析することができ、明記された特性を有する粒子を能動的に分離および単離することができる。フローサイトメーターは、フローサイトメトリーが細胞の画像を作成するのではなく、設定されたパラメータの「ハイスループット」(多数の細胞の)自動化定量を提供すること以外は、顕微鏡と類似である。固体組織を分析する場合は、単細胞懸濁物を最初に調製する。
【0117】
基本的なフローサイトメーターは、5つの主要な構成要素を有する:
(1)フローセル;試料からの物体(細胞、EV、または他の検出可能な物体)を、それらが光線の中に一列縦隊で通過して感知されるように、運搬および整列させる液体の流れ(シース液);
(2)測定システム:インピーダンス(または導電率)の測定のために一般的に使用され、ランプ(水銀、キセノン);高出力水冷レーザー(アルゴン、クリプトン、色素レーザー);低出力空冷レーザー(アルゴン(488nm)、赤色-HeNe(633nm)、緑色-HeNe、HeCd(UV));ダイオードレーザー(青色、緑色、赤色、紫色)などの光学システムによって光のシグナルをもたらす測定システム;
(3)光からの前方散乱光(FSC)、および側方散乱光(SSC)ならびに蛍光シグナルを生成して、コンピューターによって処理することができる電気シグナルにする検出器およびアナログデジタル変換(ADC)システム;
(4)増幅システム(線形または対数);ならびに
(5)シグナルを解析するコンピューター。
【0118】
フローサイトメーターを使用して試料からデータを収集するプロセスは、「獲得」と呼ばれる。獲得は、フローサイトメーターに物理的に接続されたコンピューター、およびサイトメーターとのデジタルインターフェースを処理するソフトウェアを介して行われる。ソフトウェアは、試験される試料のパラメータ(例えば、電圧および補正)を調節することができ、同様にパラメータが確実に正確に設定されるように試料データを獲得する際に初回試料情報を表示するのを助ける。
【0119】
現在利用可能な機器は、一般的に複数のレーザーおよび蛍光検出器を有する。レーザーおよび検出器の数を増加させることにより、複数の抗体標識が可能であり、その表現型マーカーによって標的集団をより正確に同定することができる。一部の機器は、個々の細胞のデジタル画像を撮影することができ、細胞内または細胞の表面上の蛍光シグナルの位置の分析を可能にする。
【0120】
ナノ材料分析に適用する場合のフローサイトメトリーに関するさらなる情報は、参照により本明細書に援用されている、米国特許出願公開第21300095575号に見出され得る。
【0121】
以下の実施例は、ある特定の特色および/または実施形態を説明するために提供される。これらの実施例は、本開示を、記載される特定の特色または実施形態に限定すると解釈すべきではない。
【実施例】
【0122】
(実施例1:分子ナノタグ)
本実施例は、顕微鏡、または例えば、援用されている米国特許出願公開第20130095575号およびMorales-Kastresanaら、Scientific Reports、7巻:1878頁、2017年に記載されているNanoFACS法を使用するフローサイトメーターなどの蛍光および/もしくは光散乱の強度を測定する機器を使用して、EVまたはウイルスの表面上の分子などの単一分子の検出を可能にする分子ナノタグを記載する。
【0123】
分子ナノタグは、標的特異性、蛍光、および光散乱属性を、複合分子ナノタグに付与するモジュール性の要素で構成され、それによって個々の分子ナノタグ(および個々の分子ナノタグ標的)を、AstriosEQなどの高分解能フローサイトメーターにおいて蛍光および光散乱の両方によって検出することができる。分子ナノタグは、疾患関連バイオマーカー、例えば腫瘍由来細胞外小胞が有する腫瘍関連タンパク質の同定のための診断および予後試薬として使用することができる。
【0124】
ある特定の例では、分子ナノタグは、「被覆された」コアナノ粒子を含み、これは、一価であり、細胞外小胞の表面上などの標的リガンドに、錠:鍵(または「標的:ベイト」)機構を介して個々に付着する。1つの構成要素が単一の標識分解能で検出することができる弾性または非弾性散乱特性に寄与する限り、相補的属性を有するさらなる構成要素を追加すること(例えば、フルオロフォアを付加することなく、個々に検出することができる金または銀粒子に蛍光標識を付加すること)によって、多次元の分子ナノタグ設計および多重適用が可能となるが、1つのエピトープ/リガンドを検出するために分子ナノタグを使用するために必要であるのは単に1つの解析可能な構成要素に過ぎない。
【0125】
分子ナノタグは、ナノスケール光散乱要素(コアナノ粒子10、フルオロフォア(例えば、コアナノ粒子がQDOT(登録商標)である場合にはナノ結晶))、および標的を検出するための一価リンカー14を含む(
図1A~1B)。分子ナノタグは、単一のナノサイズ小胞の表面上で単一分子を検出する方法を提供するように設計される。本発明者らは、例えばAstriosEQにおいてnanoFACS法を使用する場合に、29nm PEG化QDOTS(登録商標)を、蛍光によって個々の(単一分子)粒子として完全に解析できることに加えて、散乱光ノイズフロアにおいておよびそれより上で観察することができることを実証した。
【0126】
援用されているFarlowらの刊行物の既に開示された一価の量子ナノ結晶を、
図1Cに示す。この参考文献に記載されているように、立体排除は、70~90merのDNA配列、例えばttDNAおよびptDNAを使用する。DNA配列は、別個のサイズ、形状、したがってスペクトル特性の一価のナノ粒子を効率よく生成した。動的光散乱分析により、ptDNAで包まれた一価ナノ結晶が、IgG(破線)の直径と類似の直径12nmであり、従来のストレプトアビジン量子ナノ結晶(22nm)のほぼ半分であることが明らかとなる。DNAで包まれた量子ナノ結晶は、オリゴヌクレオチドの3’修飾によって選択的に標的とすることができる。5’標的化修飾、例えばベンジルグアニン(BG)、ベンジルシトシン(BC)、または脂質を有する相補鎖により、mQDのストレプトアビジン、SNAP-タグ、CLIP-タグ、または細胞表面へのモジュール性の標的化が可能となる。これらの標的化技術はまた、本開示の分子ナノタグに関連して使用することができる。
【0127】
本発明の分子ナノタグによるこの標的化アプローチの使用を、
図1Dに例証し、ここでは、被覆されたナノ粒子40、50(例えば、直径1~30を有する量子ナノ結晶)は、量子ナノ結晶半導体表面に対して親和性を有し、ナノ粒子の表面から他の分子(ポリマーを含む)を立体的に排除する核酸ポリマー(または別の分子、例えばPEG)12によって被覆されている。リンカー14は、被覆(例えば、核酸ポリマー、ポリエチレングリコール(PEG)、またはPEG誘導体)を、別の被覆されたナノ粒子(
図1Dの下部)、または標的リガンドに特異的に結合する標識16(
図1Dの上部)、例えば細胞外小胞(EV)上の標的リガンドに連結することができる。
【0128】
図4は、分子ナノタグが、ナノスケール光散乱要素(1つの例示された実施例におけるコアナノ粒子)、フルオロフォア(コアナノ粒子が量子ナノ結晶または類似の構成要素である場合には、散乱強度に寄与する構成要素でもあり得る)、および標的検出のための一価リンカーを含むモジュール性の構成要素を含む新規クラスの標識であることを例証する。
図4に示す例では、量子ナノ結晶は、ポリエチレングリコール(PEG)ポリマーの立体排除被覆によってPEG化されており、これによってアセンブルされたナノタグのサイズは、例えば5~25nm増加する。特定の例では、被覆された量子ナノ結晶は、直径50nm未満、例えば20~40nm以下、例えば30nm以下を有する。
図4に示す例では、例えばBeckman Coulter Life Sciencesから入手可能であるAstriorEQソーターにおいてnanoFACS高分解能フローサイトメトリー法を使用した場合に、29-nm PEG化量子ナノ結晶を、蛍光によって個々の(単一分子)粒子として完全に解析可能であることに加えて、散乱光ノイズフロアにおいておよびその上で観察することができる。PBS単独は、機器のノイズを実証するために使用した。本実施例で使用したQtracker(登録商標)655量子ナノ結晶は、Molecular Probesから得て、
図4に示す量子ナノ結晶の仕様は、2.1μMの吸光度、656nmでの最大蛍光発光、量子収率74%であった。
【0129】
(実施例2:小分子PSMA標的化リガンド)
本明細書に開示される分子ナノタグは、多数の潜在的適用を有する標識の一クラスである。一例として、それらを、腫瘍関連細胞外小胞(EV)構成要素の標識の同定のために使用することができる。前立腺がんは、予後および処置応答パターンと高度に相関する適切な腫瘍バイオマーカーを有するEVを生じる腫瘍のタイプの一例である。前立腺がんは、米国の男性7人に1人において診断される一般的な悪性疾患である。予後は、診断時の腫瘍の病期(播種の程度)、悪性度(または腫瘍細胞の侵襲性)、および利用可能な処置、例えばアンドロゲン除去に対する腫瘍の感受性に依存する。前立腺腫瘍細胞上の前立腺特異的膜抗原(PSMA)の表面発現は、アンドロゲン除去療法に対する応答性の欠如に関連しており、診断評価目的での分子イメージング試験、患者特異的処置選択の事前の選択の改善、および適応する処置指針の提供におけるPSMAリガンド(例えば、DCFPyL)の使用を調べる治験が進行中である。これらのイメージングモダリティは、少なくとも0.5cmを超える腫瘍細胞の収集物のみを解析することができる。PSMA発現腫瘍細胞は、PSMA発現EVを分泌し、多くの腫瘍細胞が、典型的に健康組織を上回る単一の腫瘍細胞あたり何十倍もの濃度のEVを産生することから、腫瘍関連EVは、血漿、尿、および他の生物学的流体の試料において同定可能な腫瘍バイオマーカーとして試験されている。本開示は、例えば、PSMAを有するEVを非侵襲性に分析および定量するための、高分解能フローサイトメーターおよびPSMAに対して特異的な分子ナノタグの使用を企図する。
図5は、PSMAを発現する単一のEVを、nanoFACSによって検出できることを実証している(方法の詳細に関しては、Morales-Kastresanaら、Scientific Reports、7巻:1878頁、2017年を参照されたい)。
【0130】
図10A~10Cは、EVなどの標的上の前立腺特異的リガンドを標的とするために本開示の分子ナノタグ上の標識として使用することができる小分子PSMAリガンドの例を例証する。例えば、PSMAリガンドを、例えば被覆ポリマー、例えば他の連結を立体的に排除し、分子ナノタグの一価標識能を提供する核酸またはPEGポリマーの遊離末端に連結することによって、被覆された量子ナノ結晶に付着させることができる。このように、
図1Bを参照して、PSMAを発現するEVを検出するために使用する分子ナノプローブは、被覆ポリマー12、例えば核酸またはPEGポリマーの遊離末端14との連結によって被覆された量子ナノ結晶20に付着したPSMAリガンド(例えば、
図10A~10Cに記載のリガンド)を含み得る(例えば、
図11A~11Fを参照されたい)。
【0131】
(実施例3:分子ナノタグに対する標的化リガンドの付着)
図11A~11Fは、分子ナノタグを標識する概念をさらに例証し、これは量子ナノ結晶表面をさらなる反応から立体的に排除するホスホロチオエートDNA(ptDNA)の被覆を有する量子ナノ結晶を開示したFarlowら(Nat. Methods、10巻(12号):1203~1205頁、2013年)の過去の設計とは対比をなす。ptDNAは、量子ナノ結晶の表面などの半導体表面に対して親和性を有する。Farlowらによって記載されているように、市販のCdSe:ZnS QDを有機相から水相に移した後、量子ナノ結晶を様々な配列および長さのptDNAによって処理する。DNA官能化は、アガロースゲル電気泳動によって官能化されていないQDとは容易に識別可能であるイオン特徴を有する量子ナノ結晶を産生する。605nm発光量子ナノ結晶を、50アデノシンptDNAドメイン(A
S
50)および20ヌクレオチドssDNA標的化テール(約70ヌクレオチド長であるオリゴヌクレオチドを産生する)を含むオリゴヌクレオチドの漸増濃度によって滴定する。ptDNAと量子ナノ結晶との間の化学量論比またはそれより高い比では、官能化されていない産物または多重官能化された産物の兆候は観察されず、一価産物の定量的形成と一貫する。Farlowらはまた、これらの一価量子ナノ結晶が、生細胞イメージングのためにしばしば使用されるタンパク質または脂質タグに対してモジュール性かつ効率的に標的化されることも実証した。標的化官能基は、ptDNAの3’修飾によって、または一価量子ナノ結晶と、5’修飾を有する相補的DNAとのハイブリダイゼーションによって導入される。これらの戦略を使用してそれらを、ビオチン、ベンジルグアニン(BG)、ベンジルシトシン(BC)、および脂質にコンジュゲートさせ、それによってそれらをそれぞれ、ストレプトアビジン、SNAP、CLIP、および細胞膜に標的化することができる。
【0132】
本開示の分子ナノタグは、Farlowらの開示から変更されている。
図11Bに示す一例では、一価ポリマーの遊離末端をビオチン化してストレプトアビジン(SA)/ビオチン、抗PSMA抗体に連結する。別の例では、一価ポリマーの遊離末端をビオチン化して、ストレプトアビジン(SA)/ビオチン、抗PSMAアプタマーに連結する(
図11C)。別の例では、一価ポリマーの遊離末端をビオチン化して、SA/ビオチン小分子PSMAリガンドに連結する(
図11D)。あるいは、一価ポリマーの遊離末端をアジ化して、DCBO-TEG-ACUPA/DCL(または他の小分子PSMAリガンド)などのクリックパートナーに連結する(
図11E)。新規分子ナノタグは、EVおよび生物学的に重要な他のナノ粒子標的の標的化、選別、および計数のために特に適合する。
【0133】
図11Fにおける別の例示される実施形態では、分子ナノタグは、他の分子のナノタグコアの表面への付着を立体的に排除するPEGコーティングによって被覆されたCdSe量子ナノ結晶のコアを含む。ストレプトアビジン(SA)をPEGコーティングに結合させると、SA結合パートナーであるビオチンが、ビオチンに対する抗PSMA特異的モノクローナル抗体にコンジュゲートする。例えば、ストレプトアビジンQdotを使用して、抗体のリガンドを含むEVに結合したビオチン化抗体を検出することができる。サイズ排除クロマトグラフィーを使用して、結合/付着した分子ナノタグ標識を有するEVを、非結合分子ナノタグから分離することができる。なお他の実施形態では、ビオチンは、A9gなどの抗PSMAアプタマーまたはDCLなどの抗PSMAリガンドにコンジュゲートする(CdSeコア-PEG-SA-ビオチン-mAbの実施形態では具体的に例証していない)。市販のストレプトアビジンQdotを使用して、抗体のリガンドを有するEVに結合したビオチン化抗体を検出した。サイズ排除クロマトグラフィーを使用して、標識を有するEVを非結合標識から分離した。
【0134】
(実施例4:抗PSMAアプタマーおよびリガンド)
PSMAアプタマーは、参照により本明細書に援用されている、Dassieら、Mol. Ther.、22巻(11号):1910~1922頁(2014年)、10.1038/mt.2014.117の試薬の一部を使用して設計することができる。簡単に説明すると、in vitro転写RNAを使用してin vitroアッセイを実施した。全てのin vivoアッセイを、2’-フルオロピリミジン、2’-ヒドロキシプリン、およびC12-NH2 5’末端修飾によって修飾した化学合成RNA(Integrated DNA Technologies、Coralville、IAまたはTriLink Biotechnologies、San Diego、CA)を使用して実施した。
【0135】
RNAアプタマーを、Dassieらに既に記載されているように転写した。3つのアプタマーの構造を
図12Aに示す。
図12Bに示すように、得られたA10-3.2アプタマーは、PSMAに結合するが、細胞の成長を阻害せず、A9gアプタマーはPSMAに結合して細胞成長を阻害し、およびA9g.6アプタマーはPSMAに結合せず、細胞成長を阻害しなかった。したがって、A9gおよびA10.3アプタマーを、本開示の分子ナノタグに関連するPSMAに対するRNAアプタマーとして使用することができる。このように、
図1Bを参照して、PSMA(例えば、EV上のPSMBA)を検出するために使用する分子ナノプローブは、被覆ポリマー12、例えば核酸またはPEGポリマーの遊離末端14との連結によって、被覆された量子ナノ結晶20に付着したPSMAアプタマー(例えば、A9gまたはA10.3)を含み得る。
【0136】
一部の例では、ナノ粒子の表面上のアジ化一価ポリマーを、PSMAリガンド、例えばDCBO-TEGにクリックケミストリーによってコンジュゲートする(
図11Eを参照されたい)。ナノ粒子にコンジュゲートすることができる他のPSMAリガンドには、Futurechem Co.,LtdのPSMAリガンド、例えば、DKFZ-PSMA-11(Glu-CO-Lys(Ahx)-HBED-CC、Glu-NH-CO-NH-Lys(Ahx)-HBED-CC);tert-ブチル-DCL-ヘキシル-NHSエステル((S)-ジ-tert-ブチル2-(3-((S)-1-(tert-ブトキシ)-6-(8-((2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)オキシ)-8-オキソオクタンアミド)-1-オキソヘキサン-2-イル)ウレイド)ペンタンジオエート);DCL(N-[N-[(S)-1,3-ジカルボキシプロピル]カルバモイル]-(S)-L-リシン,2-[3-[5-アミノ-1-カルボキシペンチル]-ウレイド]-ペンタン二酸);およびtert-ブチル-DCL(2-{3-[1-tert-ブチル-カルボキシレート-(5-アミノペンチル)]-ウレイド}-ジ-tert-ブチルペンタンジオエート)が挙げられる。このように、
図1Bを参照して、PSMA(例えば、EV上のPSMBA)を検出するために使用する分子ナノプローブは、被覆ポリマー12、例えば核酸またはPEGポリマーのアジド14を有する遊離末端との連結によって被覆された量子ナノ結晶20に付着したPSMAリガンド(例えば、上記のリガンド)を含み得る。
【0137】
(実施例5:単一のエクソソームサイズの粒子および個々の分子の検出)
開示されるナノスケール分子タグは、例えば、エクソソームなどの細胞外小胞の生物学的に関連するサブセットに関連する特定の分子数を検出および決定するために使用することができる。
【0138】
一部の例では、エクソソームサブセットにおける腫瘍特異的および/または免疫特異的バイオマーカーを同定する。本明細書に開示される方法は、単一のエクソソーム(または他のナノ粒子)上または内での特定のバイオマーカーの同定を可能にする。単一の量子ナノ結晶(例えば、QDOT(登録商標))の検出が実証されている(
図3)。一価量子ナノ結晶は、単一分子の検出、計数、および追跡を可能にし、任意の所望のバイオマーカーに関して作製することができる。
【0139】
例示的な量子ナノ結晶は、例えばLife Technologies(Carlsbad、CA)から販売されている。例えば、QDOT(登録商標)(または他の量子ナノ結晶)は、UV波長で最大に励起され、粒子に応じて、525nm、545nm、565nm、585nm、605nm、625nm、655nm、705nm、または800nmの最大蛍光発光を有する。官能化量子ナノ結晶は、球近似で約10~30nm、例えば約20nmの全体サイズを有し得る。量子ナノ結晶は、例えばセレン化カドミウム(CdSe)/硫化亜鉛(ZnS)、またはテルル化セレンカドミウム(CdSeTe)/ZnSのコア/シェル組成を有し得る。シェルは、コアの蛍光特性を修飾し得る。
【0140】
(実施例6:フローサイトメトリーにおけるナノタグの使用方法)
開示される分子ナノタグは、生物試料中のサブミクロン粒子、例えばナノ粒子を検出するように構成されたフローサイトメーターにおいて使用することができる。そのような方法は、例えば参照により本明細書に援用されている、米国特許出願公開第20130095575号に開示されている。特に、NanoFACS法を開示するその特許刊行物の実施例1および2を参照されたい。同様に、参照により本明細書に援用されている、Danielsonら、PLoS One、2016年、11巻(1号):e0144678を参照されたい。
【0141】
nanoFACSは、分子ナノタグと組み合わせて有用となる多様な特色を有する。
【0142】
(1)蛍光パラメータは、nanoFACSの使用にとって必須であるが、nanoFACSは、蛍光トリガーの使用を必要としない。高分解能散乱パラメータの使用により、選別パラメータおよびゲートの選択に関して観察される、分析される、および管理される集団をより完全に表すことが可能となる。
【0143】
(2)nanoFACSは、EVおよび他のナノ粒子を調べるために他のフローサイトメトリーアプローチで使用されるように、いくつかのEVの単一のビーズへの凝集を必要としない。nanoFACSを、適切な試料の希釈および機器構成によって実施すると、粒子は、真の単一粒子として可視化される。粒子の一重線(singlet)の割合(>99%)もまた、粒子の90%が一重線を表す単一粒子分析に関して公表されたビーズ結合アッセイに関して観察された単一のものの割合より優れている。粒子をビーズに結合させることなく、粒子単独を検出することにより、nanoFACS法は、粒子の散乱属性、生物機能、およびサブセットの表現型決定能をより良好に保存する。
【0144】
(3)nanoFACSは、機能的活性を保存しながら、広範囲の生物学的または無機ナノ粒子の分取的選別のために使用することができる高速方法を提供する。(遅い)フローセルに基づくプラットフォームによるナノスケールのウイルス選別と比較すると、本明細書に記載される高速ジェットインエアシステムによるnanoFACSアプローチの使用により、1時間当たり100~1000倍多くの粒子の調製が可能となり、この速度は、EVの分取的選別および機能的アッセイのためのウイルス研究にとって必要な速度である。
【0145】
(4)nanoFACS法は、その意図される検出範囲の限度でフローサイトメーターを使用する。そのため、閾値は、流体の流れから散乱したレーザー光の検出により、良好に定義された基準ノイズ集団が閾値および閾値のすぐ上となるレベルに設定され、設定された閾値によって除外される目的の関連する粒子が存在し得る。その閾値で基準ノイズを産生する迷光反射(stray light reflection)に関連して検出される粒子の部分的代表を提供するために並列した閾値下集団を使用すると、どの性質が検出に関して「漏れている」かに関する有用な情報を提供することができる。選別の際に、この情報は、オペレーターにどのタイプの閾値下事象が選択された選別集団と共に収集されているかを知らせ、代替の染色または分離戦略を試験すべきか否かを決定する。
【0146】
nanoFACSアプローチに関して、選択された機能的試験にとって良好な忠実度、および十分な分取量で、ナノスケールEVおよび他の亜集団を分析および選別することが可能である。本明細書に開示される方法により、生物活性を保存しながら分取量での単一の粒子として、例えば40~200nm範囲のEVを選別するために、ならびに100nm範囲のHIVおよび他の小粒子を選別するために、生物学的サブミクロン粒子を分離するためにフロー機器を使用することができる。分子タグは、選別および計数のために個々の粒子を標識するために有効かつ有用である。
【0147】
(実施例7:過少計数を軽減するための修飾)
半導体ナノ結晶(時に量子ドットと呼ばれる)は、蛍光分子プローブとしての適用にとって優れた発光体である。その光学的に励起された発光は、効率的(量子効率は1に近づき得る)であり、ナローバンドであり、および調整可能、すなわち量子ナノ結晶組成およびサイズに応じて、光出力色を、紫外光から可視光を通って赤外光まで正確に調整可能である。吸収は、準広帯域であり、励起を促進し、「光学的バーコード化」を可能にする発光色の範囲に関して複数の量子ナノ結晶を励起させるために単一の励起源を使用する可能性を可能にする。しかし、量子ナノ結晶の光学特性は、表面の厚さに対して感受性であり、そしてそれらを分子計数(例えば、フローサイトメトリーにおいて)のために使用する場合「過少計数」されることをもたらし得る(
図13A~13E)、「オフ(off)」状態にあり得る。本発明の方法は、量子ナノ結晶のシェルをその従来の約6nmの厚さから少なくとも10nmまで、例えば10~20nmの厚さ(「巨大な」量子ナノ結晶)に増加させることによってその欠点を克服する。
【0148】
「巨大」量子ナノ結晶を作製する方法は、例えば、Velaら、J. Biophotonics、3巻(10~11号):706~717頁(2010年)、およびHollingsworthら、Proc. SPIE、7189巻:718904頁(2009年3月3日)に開示されている。開示されたこれらの「巨大」量子ナノ結晶を作製する方法は、参照により本明細書に援用されている。簡単に説明すると、明滅現象の抑制能を有する非常に厚く傷のない無機シェルの成長が、3~4nm CdSe量子ナノ結晶コアで出発して達成された。無機シェルの単層を逐次的に適用することによって、粒子を約10~20nmのサイズに成長させる。シェルの単層、典型的にCdS、しかしCdxZnyS合金の後にZnSを交互にしたものは、逐次的なイオン層の吸収および反応(SILAR)法に基づいて、変更した手順を使用してCdSeコア上で成長させる。量子ナノ結晶コアの波動関数は、その表面から有効に分離され、コロイド状の巨大量子ナノ結晶が作製される。巨大量子ナノ結晶は、長期間観察しても光脱色しないことが見出されており、明滅現象が有意に抑制されることによって特徴付けられる。
【0149】
(実施例8:微小小胞のプロファイリング方法)
エクソソームを含む微小小胞のプロファイリング方法は、参照により本明細書に援用されている、米国特許出願公開第20130095575号ならびに第20140228233号および第20140162888号などの刊行物に開示されている。一部の例では、プロファイリングは、EVなどの微小小胞のフローサイトメトリープロファイリングおよび多様な臨床および研究適用におけるプロファイリングの使用を含む。抗原提示細胞および中でも腫瘍細胞は、大量のサブミクロン粒子、すなわちエクソソームおよび微小粒子を産生し、これは腫瘍の免疫応答および腫瘍の微小環境を調節する。その分解能限界でフローサイトメーターを使用することにより、電子顕微鏡を使用することなく、または粒子の生物学的特性を変化させるビーズへの凝集を使用することなく、機能的形態でサブミクロン粒子の分析、選別、および試験が可能となる。既に開示したnanoFACS法において、サイトメーターは、小粒子の最大分解能のために構成される。非特異的バックグラウンドノイズは、フィルターおよび小粒子検出器の両方を追加することによって、ならびにドロップドライブ(drop drive)ノイズを除去するためにノズル高さを調整することによって低減させることができる。本明細書に開示される分子ナノプローブの使用により、方法のプロファイリング能は大きく増強される。
【0150】
微小小胞は、任意の従来の生物試料から得られる。個体からの血清試料は、例示的な試料であり、これを、同定および選別のために親和性試薬との結合を含む様々な方法で処理してもよい。例えば、試料を、免疫細胞のマーカー、腫瘍マーカー、放射線曝露のマーカー等に選択的に結合する抗体で染色してもよい。微小小胞はまた、マイクロRNAを含むRNAなどの目的の核酸の存在に関して選別および分析してもよい。微小小胞の量および/または質(例えば、目的のタンパク質もしくは核酸マーカー、または他のマーカーの存在)を、細胞傷害性治療(例えば、化学療法および放射線療法)に対する腫瘍の反応、腫瘍ワクチンに対する免疫応答のモニタリング、移植片対宿主病の発症を含む移植後の免疫細胞のモニタリング、生体線量測定(biodosimetry)(核の事故、汚染爆弾等に由来する放射線曝露レベルの評価に関して)のために使用してもよい。そのような分析は、総血清タンパク質レベルに対する微小小胞の数を検出するステップを含み、微小小胞上のアネキシンVの存在を決定するステップを含み得る。別の実施形態では、方法は、ヒト被験体であり得る哺乳動物被験体における臨床要因を評価するステップ、および評価を微小小胞の分析と組み合わせるステップを含み得る。
【0151】
一部の実施形態では、血清試料などの患者の試料を、目的のマーカーを含むエクソソームまたはEVであり得る微小小胞の存在に関して分析する。特定の実施形態では、分析は、本発明の方法によるフローサイトメトリーである。目的のマーカーには、放射線特異的マーカー、腫瘍特異的マーカー、病原体特異的マーカー、ならびに樹状細胞マーカー等などの抗原提示細胞を含む免疫細胞マーカーが挙げられる。患者における評価により、反応性に従って分類した患者を適切な薬剤によって処置することができる、改善されたケアが可能となる。患者を、症状の最初の提示の際に分類することができ、適切な治療を維持するために疾患の経過にわたって状況をさらにモニターすることができるか、または疾患進行の任意の適切な病期に分類することができる。治療レジメン(例えば、手術、薬学的処置、または放射線療法)を分析に基づいて選択および/または投与してもよい。一実施形態では、方法は、分析に基づいて被験体の処置の経過を決定するステップをさらに含む。
【0152】
より広義には、分子ナノタグを使用して、膜小胞またはEVなどの小胞を分析することによって個体の表現型を特徴付けることができる。表現型は、被験体の任意の観察可能な特徴もしくは形質、例えば疾患もしくは状態、疾患の病期もしくは状態の病期、疾患もしくは状態に対する感受性、疾患もしくは状態に対する感受性、疾患の病期または状態の予後、生理的状態、または治療に対する応答であり得る。疾患の表現型は、被験体の遺伝子発現ならびに環境的要因の影響および両者の間の相互作用、ならびに核酸配列に対するエピジェネティック修飾に起因し得る。被験体における表現型は、被験体から生物試料を得るステップ、および試料からの1つまたは複数の小胞を分析するステップによって特徴付けることができる。例えば、被験体または個体の表現型を特徴付けるステップは、疾患または状態を検出するステップ(症候性となる前の初期病期での検出を含む)、疾患もしくは状態の予後、診断、もしくはセラノシス(theranosis)を決定するステップ、または疾患もしくは状態の病期もしくは進行を決定するステップを含み得る。表現型の特徴付けはまた、特定の疾患、状態、疾患の病期および状態の病期にとって適切な処置もしくは処置の有効性を同定するステップ、疾患進行、特に疾患再発、転移拡散、または疾患再燃の予測および尤度分析を含み得る。表現型はまた、がんまたは腫瘍などの状態または疾患の臨床的に別個のタイプまたはサブタイプであり得る。表現型の決定はまた、生理的状態の決定、または臓器の窮迫もしくは移植後などの臓器拒絶の評価であり得る。
【0153】
小胞の分析はまた、被験体が、疾患または障害の処置に反応する可能性があるか否かを予測するためにバイオシグネチャーの決定にも拡大され得る。表現型の特徴付けは、被験体のレスポンダー/ノンレスポンダー状態の予測を含み、レスポンダーは、疾患の処置に反応し、ノンレスポンダーは処置に反応しない。小胞を被験体において分析し、処置に反応するまたは反応しないことがわかっている過去の被験体の小胞の分析と比較することができる。被験体における小胞のバイオシグネチャーが、処置に反応することがわかっている過去の被験体のバイオシグネチャーにより密接に整列すれば、被験体はその処置に対してレスポンダーであると特徴付けることができる。同様に、被験体における小胞のバイオシグネチャーが、処置に反応しなかった過去の被験体のバイオシグネチャーにより密接に整列する場合、被験体は、その処置に対してノンレスポンダーであると特徴付けることができる。処置は、任意の適切な疾患、障害、または他の状態の処置であり得る。方法は、レスポンダー/ノンレスポンダー状態に相関する小胞のバイオシグネチャーが既知である任意の疾患の設定で使用することができる。バイオシグネチャーにより、被験体が、特定の処置のレスポンダーであることが示される場合、その処置をその被験体に投与することができる。
【0154】
一部の例では、米国特許第9,739,700号またはYangら、Anal. Chem.、81巻:2555~63頁、2009年)(いずれも参照により本明細書に援用されている)に開示されるフローサイトメトリー装置または方法を使用する。
【0155】
(実施例9:疾患を特徴付けるための疾患標的の例)
細胞由来の小胞、特に細胞外小胞(EV)、例えば微小粒子(MP)および微小小胞およびエクソソームは、疾患を検出するために有用である。細胞外小胞プロファイリングに関するさらなる情報および可能性がある疾患特異的マーカーとしてのその使用は、例えば参照により本明細書に援用されている、Julichら、Front. Immunol.、5巻:413頁、2014年に見出され得る。表記の疾患の公知のMP/MVプロファイルおよびMP/MVマーカーは、Julichらから得た以下を含む:
【表3】
【0156】
炎症疾患における細胞外小胞の役割に関するさらなる情報は、参照により本明細書に援用されている、Buzasら、Nature Reviews Rheumatology、10巻:356~364頁(2014年)に提供される。
【0157】
腫瘍細胞由来EVは、オートクライン/パラクライン様式で他の腫瘍細胞に腫瘍形成シグナルを伝達する。これらのEVは、腫瘍細胞の増殖、遊走、浸潤、および転移を促進することができる分子を有する。注目すべきことに、EVは、そうでなければ分泌されない分子、例えば膜タンパク質の非標準の分泌を可能にし得る。その上、最近の研究は、腫瘍細胞によって分泌されるEV miRNAが、がんの進行にも寄与し、および/または宿主保護を促進することを明らかにした。分子ナノタグ標的として作用することができる体液中の特定のEVは、参照により本明細書に援用されている、Katsudaら、Proteomics、14巻:412~425頁(2014年)、doi 10.1002/pmic.201300389において要約されている。
【0158】
特定の実施例では、標的は、援用されている米国特許出願公開第20140162888号に記載されているように、前立腺がんのバイオマーカーまたはバイオシグネチャーであり得る。例えば、マイクロRNA(miR)を、BPHおよび前立腺がんを調べるために、または両者を識別するために使用してもよい。miRは、患者の試料から直接単離することができ、および/または患者の試料由来の小胞を、小胞内に含まれるmiRペイロードに関して分析することができる。試料は、精液、尿、血液、血清、もしくは血漿を含む体液、または組織もしくは生検試料であり得る。本明細書に開示されるmiRを検出するために、複数の異なる方法論が利用可能である。一部の実施形態では、以下のバイオマーカー標的の1つまたは組み合わせを、そのような目的のために使用することができる。BPHとPCaとを識別するmiR(hsa-miR-329、hsa-miR-30a、hsa-miR-335、hsa-miR-152、hsa-miR-151-5p、hsa-miR-200a、およびhsa-miR-145のうちの1つまたは複数を限定せずに含む)は、PCa試料と比較してBPH試料において過剰発現され得る。あるいは、BPHとPCaとを識別するmiR(hsa-miR-29a、hsa-miR-106b、hsa-miR-595、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-99a、hsa-miR-20b、hsa-miR-373、hsa-miR-502-5p、hsa-miR-29b、hsa-miR-142-3p、hsa-miR-663、hsa-miR-423-5p、hsa-miR-15a、hsa-miR-888、hsa-miR-361-3p、hsa-miR-365、hsa-miR-10b、hsa-miR-199a-3p、hsa-miR-181a、hsa-miR-19a、hsa-miR-125b、hsa-miR-760、hsa-miR-7a、hsa-miR-671-5p、hsa-miR-7c、hsa-miR-1979、およびhsa-miR-103のうちの1つまたは複数を限定せずに含む)は、BPH試料と比較してPCa試料において過剰発現され得る。
【0159】
特定の例では、米国特許出願公開第2014016288号からの以下の循環中のバイオマーカーのうちの1つまたは複数を、前立腺障害を評価するために、および微小小胞において有用に識別することができるバイオマーカーを同定するために、微小小胞において標的化してもよい:BCMA、CEACAM-1、HVEM、IL-1 R4、IL-10 Rb、Trappin-2、p53、hsa-miR-103、hsa-miR-106b、hsa-miR-10b、hsa-miR-125b、hsa-miR-142-3p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-145、hsa-miR-151-5p、hsa-miR-152、hsa-miR-15a、hsa-miR-181a、hsa-miR-1979、hsa-miR-199a-3p、hsa-miR-19a、hsa-miR-200a、hsa-miR-20b、hsa-miR-29a、hsa-miR-29b、hsa-miR-30a、hsa-miR-329、hsa-miR-335、hsa-miR-361-3p、hsa-miR-365、hsa-miR-373、hsa-miR-423-5p、hsa-miR-502-5p、hsa-miR-595、hsa-miR-663、hsa-miR-671-5p、hsa-miR-760、hsa-miR-7a、hsa-miR-7c、hsa-miR-888、hsa-miR-99a、およびその組み合わせ。1つまたは複数の循環中のバイオマーカーは、以下hsa-miR-100、hsa-miR-1236、hsa-miR-1296、hsa-miR-141、hsa-miR-146b-5p、hsa-miR-17*、hsa-miR-181a、hsa-miR-200b、hsa-miR-20a*、hsa-miR-23a*、hsa-miR-331-3p、hsa-miR-375、hsa-miR-452、hsa-miR-572、hsa-miR-574-3p、hsa-miR-577、hsa-miR-582-3p、hsa-miR-937、miR-10a、miR-134、miR-141、miR-200b、miR-30a、miR-32、miR-375、miR-495、miR-564、miR-570、miR-574-3p、miR-885-3p、およびその組み合わせから選択することができる。なおさらに、1つまたは複数の循環中のバイオマーカーは、以下:hsa-let-7b、hsa-miR-107、hsa-miR-1205、hsa-miR-1270、hsa-miR-130b、hsa-miR-141、hsa-miR-143、hsa-miR-148b*、hsa-miR-150、hsa-miR-154*、hsa-miR-181a*、hsa-miR-181a-2*、hsa-miR-18a*、hsa-miR-19b-1*、hsa-miR-204、hsa-miR-2110、hsa-miR-215、hsa-miR-217、hsa-miR-219-2-3p、hsa-miR-23b*、hsa-miR-299-5p、hsa-miR-301a、hsa-miR-301a、hsa-miR-326、hsa-miR-331-3p、hsa-miR-365*、hsa-miR-373*、hsa-miR-424、hsa-miR-424*、hsa-miR-432、hsa-miR-450a、hsa-miR-451、hsa-miR-484、hsa-miR-497、hsa-miR-517*、hsa-miR-517a、hsa-miR-518f、hsa-miR-574-3p、hsa-miR-595、hsa-miR-617、hsa-miR-625*、hsa-miR-628-5p、hsa-miR-629、hsa-miR-634、hsa-miR-769-5p、hsa-miR-93、hsa-miR-96から選択することができる。循環中のバイオマーカーは、hsa-miR-1974、hsa-miR-27b、hsa-miR-103、hsa-miR-146a、hsa-miR-22、hsa-miR-382、hsa-miR-23a、hsa-miR-376c、hsa-miR-335、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-221、hsa-miR-142-3p、hsa-miR-151-3p、hsa-miR-21およびhsa-miR-16のうちの1つまたは複数であり得る。一実施形態では、循環中のバイオマーカーは、CD9、PSMA、PCSA、CD63、CD81、B7H3、IL6、OPG-13、IL6R、PA2G4、EZH2、RUNX2、SERPINB3、およびEpCamのうちの1つまたは複数を含む。バイオマーカーは、FOX01A、SOX9、CLNS1A、PTGDS、XPO1、LETMD1、RAD23B、ABCC3、APC、CHES1、EDNRA、FRZB、HSPG2、およびTMPRSS2_ETV1融合体のうちの1つまたは複数を含み得る。その出願の全体が参照により本明細書に援用されている、WO2010056993を参照されたい。
【0160】
別の実施形態では、循環中のバイオマーカーは、A33、a33 n15、AFP、ALA、ALIX、ALP、アネキシンV、APC、ASCA、ASPH(246-260)、ASPH(666-680)、ASPH(A-10)、ASPH(D01P)、ASPH(D03)、ASPH(G-20)、ASPH(H-300)、AURKA、AURKB、B7H3、B7H4、BCA-225、BCNP1、BDNF、BRCA、CA125(MUC16)、CA-19-9、C-Bir、CD1.1、CD10、CD174(Lewis y)、CD24、CD44、CD46、CD59(MEM-43)、CD63、CD66e CEA、CD73、CD81、CD9、CDA、CDAC1 1a2、CEA、C-Erb2、C-erbB2、CRMP-2、CRP、CXCL12、CYFRA21-1、DLL4、DR3、EGFR、Epcam、EphA2、EphA2(H-77)、ER、ErbB4、EZH2、FASL、FRT、FRT c.f23、GDF15、GPCR、GPR30、Gro-アルファ、HAP、HBD1、HBD2、HER3(ErbB3)、HSP、HSP70、hVEGFR2、iC3b、IL6 Unc、IL-1B、IL6 Unc、IL6R、IL8、IL-8、INSIG-2、KLK2、L1CAM、LAMN、LDH、MACC-1、MAPK4、MART-1、MCP-1、M-CSF、MFG-E8、MIC1、MIF、MIS RII、MMG、MMP26、MMP7、MMP9、MS4A1、MUC1、MUC1 seq1、MUC1 seq11A、MUC17、MUC2、Ncam、NGAL、NPGP/NPFF2、OPG、OPN、p53、p53、PA2G4、PBP、PCSA、PDGFRB、PGP9.5、PIM1、PR(B)、PRL、PSA、PSMA、PSME3、PTEN、R5-CD9 Tube1、Reg IV、RUNX2、SCRN1、セプラーゼ、SERPINB3、SPARC、SPB、SPDEF、SRVN、STAT3、STEAP1、TF(FL-295)、TFF3、TGM2、TIMP-1、TIMP1、TIMP2、TMEM211、TMPRSS2、TNF-アルファ、Trail-R2、Trail-R4、TrKB、TROP2、Tsg101、TWEAK、UNC93A、VEGF A、およびYPSMA-1のうちの1つまたは複数を含む。これらのマーカーの任意の組み合わせを、前立腺がんを評価するためのバイオシグネチャーにおいて使用することができる。循環中のバイオマーカーは、小胞、例えば小胞表面マーカーまたは小胞ペイロードに関連し得る。
【0161】
(実施例10:量子ドットによって標識したEVの検出)
開示される分子ナノタグは、細胞外小胞(EV)を検出するために使用することができる。ストレプトアビジンリンカーおよび抗PSMAを有するQdotで構成される分子ナノタグを、前立腺がん細胞からのEVを検出するために使用した。ストレプトアビジンリンカー(SA-Qdot)を有するが、PSMAビオチンを有しないQdotで構成される分子ナノタグを陰性対照として使用した。前立腺がん細胞株EVを100kDa MW Pall Jumbosepろ過装置を使用して濃縮し、次に1×1011個のEVを10mMフルオロフォアCFSEによって標識した後、サイズ排除クロマトグラフィーを使用して残留CFSEから精製した。EVを抗PSMA-IgG1-ビオチン抗体と共にインキュベートした後、残留抗体を、サイズ排除クロマトグラフィーを使用して除去した。次に、EV結合抗PSMA-IgG1-ビオチン抗体を、QDot 625-ストレプトアビジン、40nm金-ストレプトアビジン、40nm銀-ストレプトアビジン、またはPE-ストレプトアビジンのいずれかによって標識した。次に、得られた標識したEVを、488nmまたは561nmの散乱チャネルのいずれかに設定した閾値、低い流量、および以下の検出器:405nm SSC、488nm、561nm SSC、640nm SSC、PE、FITC、およびBV605によるフローサイトメトリーを使用して検出した。
【0162】
図18に示すように、ストレプトアビジンリンカー(SA-Qdot)およびPSMA(CFSE+PSMA-SA-QD+EV)を有するQdotで構成される分子ナノタグは、前立腺がん細胞由来のEVを検出することができた、右上象限を参照されたい。非結合QDotは、左上象限に見ることができ、CFSE EVは、右下象限に見ることができる。必ずしも全てのCFSE EVが、右下から右上象限へとシフトしているわけではないが、これは機器の蛍光分解能の組み合わせにより、およびQDot 625に関して最適なフィルターを有していないことによる可能性が最も高い。
【0163】
(実施例11:金属ナノタグによって標識したEVの検出)
開示される分子ナノタグを使用して、EVを検出することができる。銀または金をコーティングしたストレプトアビジンで構成される分子ナノタグを、抗PSMA-IgG-ビオチンリガンド(または他のPSMA結合リガンド、例えばA9g-TEG-ビオチン)と共に使用して、PSMA発現前立腺がん細胞に由来するEVを検出した。前立腺がん細胞由来EVを、フルオロフォアCFSEによって標識し、残留CFSEを、サイズ排除クロマトグラフィーによって除去した。得られたEVを、ナノタグと共にインキュベートした。次に、得られた標識EVを、488nmおよび561nm ss検出器を使用してフローサイトメトリーを使用して検出した。方法の詳細に関しては、参照により本明細書に援用されている、Morales-Kastresanaら、Scientific Reports、7巻:1878頁、2017年を参照されたい。サイズ排除クロマトグラフィーを使用して、標識が結合したまたは標識が結合していない分子ナノタグまたはEVなどの小分子および/または抗体を、高分子構造から分離した。具体的には、
図10Bまたは10Cに示すように、NAP5またはSephadexG25タイプカラムを使用して、非結合小分子、例えば核酸およびPSMA結合分子を、15nmより大きいコア構造を有する分子ナノタグを含む高分子構造から分離した。中間分解能のサイズ排除クロマトグラフィーは、Sepharose-2BまたはSeppharose-4Bに基づく樹脂によって実施し、高分解能のサイズ排除クロマトグラフィーは、FPLCによって、高分解能樹脂、例えばSepharose 6 Increaseを含むがこれらに限定されない樹脂を使用して実施した。nanoFACS高分解能フローサイトメトリーは、Morales-Kastresanaら、Scientific Reports、7巻:1878頁、2017年に記載されているように実施した。
【0164】
図19Aに示すように、488nmおよび561nm散乱パラメータを使用して検出した蛍光陽性(CFSE+)EVは、破線(y=x)上に存在する。
図19Bは、40nm-ストレプトアビジン-銀ナノ粒子を示し、これらの銀ナノタグによって標識した場合に、集団が488nm散乱においてどのように上方向にシフトするかを示す。逆に、
図19Cは、40nm-ストレプトアビジン-金ナノ粒子を示し、これらの銀ナノタグによって標識した場合に、集団が561nm散乱においてどのように上方向にシフトするかを示す。
【0165】
(実施例12:ナノ粒子の検出)
銀、銀と金、またはポリスチレンで構成されるナノ粒子を、AstriosおよびSymphonyフローサイトメーターを使用して検出した。
【0166】
図20は、機器のベースラインノイズに対する金、銀、およびポリスチレン粒子(矢印の先)の相対的散乱能を示す。金または銀で構成される40nmに小さくした粒子は、Astrios機器において488 SSCに結合することなく検出することができることが認められ得る。これはまた、FACS Symphony機器についても当てはまる。ナノ粒子は、個々に検出することができることから、それらを個々に定量することができる。このため、ナノ粒子は個々の凝集せずかつ多量体化していない個々の標識として使用することができる。
【0167】
(実施例13:EVの生成、標識、および検出)
図21は、EVを生成、標識、および検出する方法の概要を提供する。この方法は、個々のナノ材料の産生およびその後の定量/分析を可能にする。
【0168】
初代細胞、例えば腫瘍から得た細胞、または組織培養細胞であり得る細胞を使用して、上清を生成する。例えば、細胞を、EV除去培地において成長させ、例えば逐次的超遠心分離(UC)によって、または免疫原性捕捉を使用することによってEVを得る(例えば、詳細は、参照により本明細書に援用されているMorales-Kastresanaら、Scientific Reports、7巻:1878頁、2017年を参照されたい)。EV結合分子ナノタグは、望ましければ、被覆(
図1の12を参照されたい)とリガンド結合要素(
図12の14を参照されたい)との間の光切断可能リンカーを使用する分離によって、またはリガンド結合特性に基づく溶出(
図1Aの14を参照されたい)によってフローサイトメトリー分析後に除去することができ、例えばリガンド結合要素が、例えばホスファチジルセリンにカルシウム依存的に結合する場合、EDTAを使用してEVから分子ナノタグを分離してもよく、またはストレプトアビジン:ビオチン結合を使用してEV結合リガンドに分子ナノタグを連結する場合には、デスチオビオチンを添加することによって、分子ナノタグを除去してもよい(Hirschら、Analytical Chemistry、2002年)。得られたEVを、ナノ粒子追跡分析(NTA)によって定量することができる。一部の例では、Mehdianiら(J. Vis. Exp.、(95巻)、e50974、doi:10.3791/50974、2015年、参照により本明細書に援用されている)の方法を使用してEVを調製する。
【0169】
単離または精製されたEVを、例えばフルオロフォアおよび本明細書に提供される分子ナノタグによって標識することができる。例えば、EVを、Morales-Kastresanaら、Scientific Reports、7巻:1878頁、2017年(参照により本明細書に援用されている)に開示される方法を使用してCFSE色素によって標識することができる。
【0170】
EVはまた、本明細書に提供される分子ナノタグ、例えば金、銀、または両方、ナノ粒子、およびEV上の第2の結合パートナー(例えば、EV膜タンパク質または腫瘍抗原)に対して特異的な第1の結合パートナー(例えば、抗体、核酸分子、またはリガンド)を含む分子ナノタグによって検出可能に標識することができる。例えば、ナノタグ(1×109)およびEV(1×109)を4℃で30分間インキュベートすることができる。
【0171】
得られた標識EVを、サイズ排除クロマトグラフィーに供して、画分を収集することができる。このステップを使用して、非結合ナノタグおよび非取り込みフルオロフォアを除去することができる。
【0172】
1つまたは複数の分子ナノタグ(標的がEV上に存在する場合)および一部の例ではフルオロフォアもここでは含む、溶出したEVを、本明細書に提供される方法を使用してフローサイトメトリーを使用して分析することができる。
【0173】
(実施例14:ナノタグ組成物のスペクトル特性)
高い弾性散乱能を有する光学特性を有する単一の分子ナノタグ、または個々に定量可能である高い非弾性散乱(蛍光またはラマン散乱)を有する構成要素により、目的の単一のエピトープに対する結合に基づいてEVまたは他のナノ材料の検出および選別が可能となる。サブセットを表現型決定することは、一度に1つより多くのエピトープの標識を必要とする強力なツールである。1つより多くのエピトープを同時に標識するために、それを第1のナノタグと識別するために特有の光学特性を有する第2のまたはそれより多くのナノタグを使用することは有益であろう。異なる金属が、屈折率および吸光係数に関してUV-可視光スペクトルにおいて特有の分散特性を有することが認められ得る(
図6A)。これらの光学特性は、RefractiveIndex.infoなどのオンラインデータベースから入手可能である(
図6B)。
【0174】
ミー理論を使用して、これらの光学特性を使用して球体の散乱断面積を概算することが可能であり、したがって、異なる波長でのその散乱プロファイルにおける特有のピークまたはトラフを有することにより、どれほど多く複数の粒子を同時に使用することができるかを推定することが可能である。この方法は、AstriosEQによって、例えば405nm SSC、488 SSC、561 SSC、640 SSCなどの異なるレーザー波長での複数の側方散乱(SSC)検出器によって、フローサイトメーターが異なる直径および組成の粒子を検出する能力を予測するために有用である。異なるナノタグの特徴的な多波長側方散乱プロファイルを、不連続な波長または連続する波長範囲または複数の範囲を含む波長範囲にわたって検出された側方散乱値と比較することができる。このように、単色光および広帯域照射源を使用して、ナノタグを含む標的で側方散乱を生成することができる。
【0175】
このモデル化技術を、金、銀、ポリスチレン、白金、二酸化チタン、酸化鉄、および銅を含む異なる材料に適用した、
図16A~16E。
図18A~18Eに示すように、より小さい粒子、およそ20~60nmの球体によって、金および銀などの特有のスペクトルのピークまたはトラフが得られた。さらに、金、銅、および銀などの金属は、粒子の検出を増強すると予測されることが認められ得る(例えば、ポリスチレンと比較して)。
【0176】
図22A~22Bに示すように、100nmポリスチレン球体は、FACS Symphonyなどの従来のフローサイトメーターにおいて検出可能であり、400~800nmの波長にわたり約1×10
-16m
2sr
-1の散乱断面積を有する。20nm Ag球体はまた、照射波長380nmで約1×10
-16m
2sr
-1の散乱断面積を有し、40nmのau球体は、照射波長532nmで約1×10
-16m
2sr
-1の散乱断面積を有する。
【0177】
異なる組成を有する粒子のこれらの固有の散乱特性により、散乱を利用する代わりに蛍光を使用する標識に対して分光アプローチが可能となる。例えば、
図16Bでは、405nmの照射波長で、40nm銀粒子について収集された光散乱は、40nm金粒子の約100倍高い。しかし、561nmの照射波長では、40nm金粒子について収集された光散乱は、40nm銀粒子より5~10倍高い。このモデル化データを、スペクトル散乱をどのように利用することができるかを評価するために、AstriosEQ機器において、405、488、561、および640nmの照射波長で40nm銀球体および金球体を獲得することによって検証した(
図17B)。モデルから予測されるように、40nm銀粒子(赤色)について収集された散乱は、40nm金と比較して(青色)561nm散乱チャネルにおいてより少なく、40nm銀粒子について収集された散乱は405nm散乱チャネルにおいて40nm金より多かった。
【0178】
このように、機器において利用可能な特定のSSC検出器に基づいて、本明細書に記載される分子ナノタグを作製する適切な材料を選択することが可能である。例えば、機器が405nm SSC検出器を有する場合、銀ナノ粒子を使用することができ、機器が561または532nm SSC検出器を有する場合には、金ナノ粒子を使用することができる等々である。特定の例を以下の表1に示す。
【0179】
【0180】
これに対し、例えば金および銀に関する640nm(
図17Aを参照されたい)のように、2つまたはそれより多くのナノ粒子のシグナルの間にほとんど差がないときに1つのss検出器を使用する場合、蛍光またはラマンスペクトルデータにスペクトルデコンボリューションを適用することができるのと同じように、デコンボリューションを使用して散乱の個々の寄与を決定することができる(FogartyおよびWarner、Analytical Chemistry、53巻:259頁、1981年;Liuら、Photonics Research、2巻:168~171頁、2014年)。
【0181】
さらなる情報は、参照により本明細書に援用されている2017年10月23日に出願された米国特許出願第62/575,988号に見出され得る。
【0182】
(実施例15:ナノタグ組成物のスペクトル特性)
ミー理論を使用して、球状の粒子による光散乱量をモデル化するために、およびフローサイトメーターの光学を考慮に入れて、異なる屈折率の粒子を獲得する特定のフローサイトメーターに関する散乱-直径関係性のモデルを作製することが可能である、
図22A~22B。
【0183】
Welshの方法(Flow cytometer optimisation and standardisation for the study of extracellular vesicles as translational biomarkers、University of Southampton Doctoral Thesis、209頁、2016年)を使用して、Astrios EQおよびFACS Symphonyフローサイトメーターをモデル化し、獲得したポリスチレンおよびシリカ粒子データをモデル化データにフィットさせた。この方法は、獲得したフローサイトメトリービーズデータと、モデル化ビーズデータとの間に非常に高い相関を生じ、
図22A~22Bにおいて緑色で示したように、細胞外小胞などの低いおよび可変の屈折率を有する粒子に対するフローサイトメトリー機器の感度の推論を可能にする。
【0184】
この方法を利用して、細胞外小胞の直径の検出限界は、低い屈折率を有するEVでは、Astrios EQに関しておよそ150nm、Symphonyに関して200nmに近づいた(
図22B)。EVのモード直径は100nmの領域に存在する傾向があり、亜集団が100nmより下にしばしば出現することから、ほとんどのフローサイトメーターが1フルオレセインMESF等量を検出するために十分な感度ではないのと同様に、ほとんどの従来のフローサイトメーターは、散乱を使用して生物試料中の細胞外小胞の全集団を検出するには最適以下であることが強調されている(NolanおよびJones、Platelets、28巻:256~62頁、2017年;Morales-Kastresanaら、Scientific Reports、7巻:1878頁、2017年)。
【0185】
(実施例16:多重化によるEVの解析)
蛍光バーコード化を使用して、フローサイトメトリーを使用してビーズの複数の異なる集団を検出することができる。
図23Aは、エクソソーム解析のための市販の多重ビーズセットのデータを示す。38個の異なるビーズ集団は、異なる量の赤色および緑色標識を有する各集団によって特徴付けられ、それによってビーズ集団が規定のレベルの赤色および緑色標識(示されるP1およびP2パラメータ)に基づいて「バーコード化」される。各ビーズ集団はまた、ある特定のEV上で見出される特定のヒトエピトープに対する抗体も有し、それによって38個の異なるエピトープ特異性によってEVを捕捉する手段を提供する。
【0186】
図23Bは、38個のビーズセットによる血漿からのEVの捕捉後(ビーズあたり>100個のEVの結合能を有する)、3つのビーズ集団を同定するために異なるEVエピトープに対する染色抗体が、そのエピトープを有するEVに結合したことを示す。本実施例におけるビーズは、3ミクロンビーズであり、いかなるビーズの検出も、陽性となるためには、MESF対照に基づいて、>100個の検出抗体結合フルオロフォアの存在を必要とする。
【0187】
図23Cは、本発明者らのnanoFACS構成による分子ナノタグの使用を示す。分子ナノタグを使用して、単一のエピトープおよび単一のEV感度を可能にする多重EV分析アレイを生成することができる。バーコード化は、被覆に異なるフルオロフォアのカスタマイズされた比率を組み入れることによって可能になるが、N個の異なるコアタイプの弾性散乱属性は、N層の付加を可能にし、例えば金および銀コアの使用は、N=2の別個のコア構成要素を含み、それによって金コアを有する38個の分子ナノタグによる分子ナノタグアレイを、銀コアを有する38個の分子ナノタグと組み合わせることができ、76個の分子ナノタグタイプの各々が1つのリガンドに対して特異性を有する分子にコンジュゲートされ、76個の異なるエピトープに対する単一エピトープ感度によって、76個の異なるエピトープを有するEVの検出を可能にする。このようにして、サイズ、材料、または形状に基づく異なるコア材料の特有の散乱特性は、蛍光に基づくバーコード化のみならず、光散乱バーコード化も含むように多重パネルを拡大する手段を提供する。EVに結合した場合のこれらの分子ナノタグの集団を選別することにより、miRNA分析などの下流の解析を実行するための多重選別が可能となる。
【0188】
図23Dは、各タイプの分子ナノタグによって捕捉されたEVの異なるサブセットの積み荷を調査することができることを示す。
図23Dは、EV上のPSMAの検出に基づいて選別されたEVのmiRNAプロファイルと、バルクEV集団miRNAまたはPSMA陰性EVのmiRNAとの比較を示す。
【0189】
開示される本発明の原理が適用され得る多くの可能性がある実施形態を考慮して、例証される実施形態は、単に本発明の例にすぎず、本発明の範囲を制限すると解釈すべきではないと認識すべきである。むしろ、本発明の範囲は以下の特許請求の範囲によって定義される。したがって、本発明者らは、これらの特許請求の範囲の範囲および精神に含まれる全てを本発明として特許請求する。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
以下:
(i)直径約100nm未満のコアナノ粒子と、
(ii)前記コアを囲む必要に応じたシェルと、
(iii)第1の部分と第2の部分とを含む被覆であって、前記第1の部分は、前記コアナノ粒子の表面に結合するか、または存在する場合には前記シェルの表面に結合し、前記第2の部分は、前記コアナノ粒子にも前記シェルにも結合せず、固定数の結合部位を有する官能化末端を含む、被覆と
を含むナノスケール分子タグであって、
前記コア、前記シェル、および前記被覆のうちのいずれか1つまたは任意の組み合わせが、顕微鏡、または蛍光および/もしくは光散乱の強度もしくはパワーを測定する装置によって検出可能である前記分子タグの蛍光、光散乱、および/またはリガンド結合特性に寄与し、
構成要素(i)および(iii)、または(i)、(ii)、および(iii)が共に以下の機能性:
(a)アセンブルされた構造の光散乱の強度もしくはパワーが、前記光散乱の強度もしくはパワーを検出する前記装置の基準ノイズの特定のレベルより上で検出可能であること;
(b)蛍光強度が、機器の検出限界より上で検出されるために十分な輝度を有すること;および/または
(c)リガンド特異性がリガンド結合構成要素によって付与されること
を提供する、ナノスケール分子タグ。
(項目2)
前記結合部位の固定数が1である、項目1に記載のナノスケール分子タグ。
(項目3)
前記コアナノ粒子が、光散乱の強度またはパワーを測定する前記装置によって検出可能である、高い屈折率、表面形状、または光散乱特性に寄与する他の属性を有するナノ材料からなる、項目1または項目2に記載のナノスケール分子タグ。
(項目4)
単一のアセンブルされた分子ナノタグが、顕微鏡または光散乱の強度もしくはパワーを測定する前記装置で検出可能である、項目1~3のいずれか一項に記載のナノスケール分子タグ。
(項目5)
前記コアナノ粒子が、量子ナノ結晶、金、銀、銅、TiO
2
、シリカ、カーボン、CdSe、ZnS、またはグラファイトを含む、項目1~3のいずれか一項に記載のナノスケール分子タグ。
(項目6)
前記ナノスケール分子タグの前記構成要素の累積的光学特性によって、1つまたは複数の光散乱波長に関する検出装置の感度限界(Y
limit
)より大きいパワーの収集がもたらされ、前記累積光学特性が、屈折率、吸光係数、直径、共鳴、透過率、および反射のうちの1つまたは複数を含む、項目1~5のいずれか一項に記載のナノスケール分子タグ。
(項目7)
前記構成要素が、パラメータN
RAQD
=N
Refractive index,Angular and Quantum properties, and Diameter
を有し、式中N
RAQD
が、光散乱の強度またはパワーを測定する装置を使用して1つまたは複数の波長に関する検出限界(Y
limit
)より大きくなければならず、強度
またはパワーが、単位面積当たりのパワーの単位として定義される、項目1~6のいずれか一項に記載のナノスケール分子タグ。
(項目8)
前記被覆が、前記量子ナノ結晶の表面に対して親和性を有するポリマーを含む、項目1~7のいずれか一項に記載のナノスケール分子タグ。
(項目9)
前記ポリマーが、核酸分子、例えばホスホロチオエートDNAを含む、項目8に記載のナノスケール分子タグ。
(項目10)
前記ポリマーが、蛍光もしくは光散乱特性またはそれら両方についての属性を有する、項目8または項目9に記載のナノスケール分子タグ。
(項目11)
前記ポリマーが、前記分子タグの蛍光、光散乱および/またはリガンド結合特性に寄与する、項目10に記載のナノスケール分子タグ。
(項目12)
前記官能化末端が、第2の結合パートナーまたは標的リガンドに対して特異的に結合することができる第1の結合パートナーを含む、項目1~11のいずれか一項に記載のナノスケール分子タグ。
(項目13)
前記第1の結合パートナーおよび前記第2の結合パートナーがそれぞれ、
ベンジルグアニンとSNAP-タグ;
ベンジルグアニンとCLIP-タグ;
クリックライゲーションコンジュゲート;
ビオチンとストレプトアビジン;
一本鎖オリゴヌクレオチドと相補的一本鎖オリゴヌクレオチド;
一本鎖オリゴヌクレオチドとアプタマー;
DCFPyLと前立腺特異的膜抗原(PSMA);または
抗体と抗原
から選択される、項目12に記載のナノスケール分子タグ。
(項目14)
前記抗原が、腫瘍関連抗原を含む、項目13に記載のナノスケール分子タグ。
(項目15)
前記抗原がタンパク質タグを含む、項目13に記載のナノスケール分子タグ。
(項目16)
フルオロフォアを含む、項目1~13のいずれか一項に記載のナノスケール分子タグ。
(項目17)
フローサイトメーターにおいて、試料中の単一標的分子を検出するための方法であって;
前記試料に、項目1~16のいずれか一項に記載のナノスケール分子タグを接触させるステップであって、前記ナノスケール分子タグの官能化末端が、前記試料中に存在する場合には前記標的分子に特異的に結合する、ステップと、
光散乱の強度またはパワーを測定する機器を使用して前記試料を分析するステップであって、前記機器は、側方散乱もしくは前方光散乱の検出、または蛍光の検出、またはその任意の組み合わせによって、前記標的分子に結合した個々のナノスケール分子タグを検出するように小粒子を解析するために構成される、ステップと
を含む、方法。
(項目18)
前記試料が、例えば2つのチャネル、例えば2つの側方散乱チャネルにおいて少なくとも2つの検出角度を使用して光散乱の強度またはパワーを測定する前記装置において分析される、項目17に記載の方法。
(項目19)
第1の側方散乱チャネルがトリガーとして使用され、第2の側方散乱チャネルが検出器として使用される、項目18に記載の方法。
(項目20)
並列した閾値下事象を検出するステップを含む、項目16~18のいずれか一項に記載の方法。
(項目21)
前記試料が生物試料である、項目17~20のいずれか一項に記載の方法。
(項目22)
前記生物試料が生体膜を含む、項目21に記載の方法。
(項目23)
前記生物試料が細胞外小胞を含む、項目21または項目22に記載の方法。
(項目24)
前記標的分子が腫瘍抗原を含む、項目17~23のいずれか一項に記載の方法。
(項目25)
前記腫瘍抗原が、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、上皮増殖因子受容体(EGFR)、HER-2/neu、上皮細胞接着分子(EpCAM)、CD24、CD133、CD47、CD147、PD-L1、GPC-1、Muc-1、CD44、CD26、CD147、EpCAM、PSMA、またはPD-L1を含む、項目24に記載の方法。
(項目26)
以下:
(i)200nmまたは100nmまたは50nm未満のアセンブルされた直径または長さを有する構成要素と、
(ii)所望の蛍光および光散乱特性に寄与する構成要素と、
(iii)第1の部分と第2の部分とを有する一本鎖核酸分子などの構成要素であって、前記第1の部分が、ナノ粒子の原子価を固定数(例えば、1)の機能的結合部位に低減する、コアナノ粒子の表面に結合するホスホロチオエートDNAを含む、構成要素と、
(iv)指定された標的に関する機能的リガンドに被覆結合部位を接続するためのリンカーと、
(v)指定された標的に関する機能的リガンド(タンパク質、ヌクレオチド、炭水化物、または他のリガンド結合要素からなる)と
を含むナノスケール分子タグであって、
前記コア、前記シェル、および前記被覆のうちのいずれか1つまたは任意の組み合わせが、顕微鏡、または蛍光および/もしくは光散乱の強度もしくはパワーを測定する装置によって検出可能である前記分子タグの蛍光、光散乱、および/またはリガンド結合特性に寄与する、ナノスケール分子タグ。
(項目27)
バイオマーカーを有するサブミクロン粒子、例えばEVを検出する方法であって、前記バイオマーカーが、項目1~16または26のいずれか一項に記載の分子ナノタグを用いて検出され、機能的リガンドが前記バイオマーカーに対して特異的である、方法。
(項目28)
前記バイオマーカーが、腫瘍抗原を含み、サブミクロン粒子が、項目1~16または26のいずれか一項に記載の分子ナノタグで染色され、前記機能的リガンドが前記腫瘍抗原に対して特異的であり、次いで顕微鏡または装置を使用して染色された前記粒子を検出する、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記腫瘍抗原が、PSMA、メソテリン、EpCam、HER2、EGRF、CD24、CD133、CD47、CD147、PD-L1、GPC-1、またはMuc-1である、項目28に記載の方法。
(項目30)
前記バイオマーカーが、ウイルス抗原を含み、前記方法が、前記機能的リガンドが前記ウイルス抗原に対して特異的である項目1~16または26のいずれか一項に記載の分子ナノタグで前記サブミクロン粒子を染色するステップと、次いで顕微鏡または装置を使用して染色された前記サブミクロン粒子を検出するステップとを含む、項目27に記載の方法。
(項目31)
前記ウイルス抗原が、HIV、C型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルス、HTLV-I、エプスタインバーウイルス、または他のウイルス病原体に由来する、項目30に記載の方法。
(項目32)
前記バイオマーカーが、免疫系細胞抗原またはマーカーを含み、前記方法が、前記機能的リガンドが前記免疫系抗原またはマーカーに対して特異的である項目1~16または26のいずれか一項に記載の分子ナノタグで前記サブミクロン粒子を染色するステップと、次いで顕微鏡または装置を使用して染色された前記サブミクロン粒子を検出するステップとを含む、項目27に記載の方法。
(項目33)
前記免疫系抗原またはマーカーが、MHCクラスII抗原、PD-L1、CD80、CD86、CD83、CD11c、CD11b、CD3、CD4、CD8、CD19、CD20、または他の任意の免疫細胞バイオマーカーを含む、項目32に記載の方法。
(項目34)
前記バイオマーカーが、疾患抗原またはマーカーを含み、前記方法が、前記機能的リガンドが前記疾患抗原またはマーカーに対して特異的である項目1~15または25のいずれか一項に記載の分子ナノタグで前記粒子を染色するステップと、次いで顕微鏡または装置を使用して染色された前記サブミクロン粒子を検出するステップとを含む、項目27に記載の方法。
(項目35)
前記疾患抗原またはマーカーが、アルツハイマー病、多発性硬化症、リウマチ性関節炎、糖尿病、炎症性腸疾患、リウマチ疾患、炎症性疾患、内分泌疾患、消化器疾患、神経疾患、自己免疫疾患、心血管疾患、または腎疾患のマーカーを含む、項目34に記載の方法。
(項目36)
1つまたは複数のナノスケール分子タグを個々に検出するために、一般的なデコンボリューション法をスペクトル散乱データに適用する、1つまたは複数の標的を検出するための項目1~16または26に記載の1つまたは複数のナノスケール分子タグの使用。
(項目37)
下流のアッセイにおいて選別された標的の選別および使用のために、単一のまたはまれなエピトープ感度を用いて1つまたは複数の標的を検出するための、項目11~16または26に記載の1つまたは複数のナノスケール分子タグの使用。
(項目38)
分析または選別のために1つまたは複数の標的を検出するためのアレイまたは多重化セットとしての、項目1~16または26に記載の1つまたは複数のナノスケール分子タグの使用。
【配列表】