IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社セイブ・ザ・プラネットの特許一覧

<>
  • 特許-電力制御システム 図1
  • 特許-電力制御システム 図2
  • 特許-電力制御システム 図3
  • 特許-電力制御システム 図4
  • 特許-電力制御システム 図5
  • 特許-電力制御システム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】電力制御システム
(51)【国際特許分類】
   H04M 11/00 20060101AFI20240523BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20240523BHJP
   H04Q 9/00 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
H04M11/00 301
H02J13/00 301A
H04Q9/00 301A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020011705
(22)【出願日】2020-01-28
(65)【公開番号】P2021118475
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】519048584
【氏名又は名称】株式会社セイブ・ザ・プラネット
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹林 司
(72)【発明者】
【氏名】北川 久一郎
(72)【発明者】
【氏名】小西 啓文
【審査官】松原 徳久
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-195769(JP,A)
【文献】特開2018-027010(JP,A)
【文献】特開2008-042262(JP,A)
【文献】特開2008-032655(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J13/00
H03J9/00-9/06
H04L51/00-51/58
67/00-67/75
H04M3/00
3/16-3/20
3/38-3/58
7/00-7/16
11/00-11/10
H04Q9/00-9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外に設置されたパワーコンディショナと、前記パワーコンディショナの操作を行うための専用操作端末とを備える電力制御システムにおいて、
前記パワーコンディショナは、情報通信端末からの公衆通信網を経由したアクセスに対して前記専用操作端末に認められた所定の専用操作を禁止し、前記情報通信端末との間で近距離無線通信による通信が確立された場合に、前記所定の専用操作のうちユーザーの種別に応じたアクセス権限の範囲で前記情報通信端末による前記所定の専用操作を許容するように構成されている
ことを特徴とする電力制御システム。
【請求項2】
屋外に設置されたパワーコンディショナと、前記パワーコンディショナの操作を行うための専用操作端末とを備える電力制御システムにおいて、
前記パワーコンディショナは、所定の範囲外の位置にある情報通信端末からのアクセスに対して前記専用操作端末に認められた所定の専用操作を禁止し、前記情報通信端末が前記所定の範囲内に存在することが認識された場合に、前記所定の専用操作のうちユーザーの種別に応じたアクセス権限の範囲で前記情報通信端末からの前記所定の専用操作を許容するように構成されている
ことを特徴とする電力制御システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電力制御システムにおいて、
前記パワーコンディショナは、
ユーザーの種別毎に設定された前記専用操作の権限の範囲が記憶されたデータベースを有し、前記情報通信端末が近距離に存在することが認識された場合に、前記データベースを参照し、当該認識されたユーザーの種別に応じたアクセス権限の範囲で前記専用操作を許容する
ことを特徴とする電力制御システム。
【請求項4】
請求項1または2に記載の電力制御システムにおいて、
前記パワーコンディショナと前記専用操作端末とは、有線接続される
ことを特徴とする電力制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーコンディショナを備える電力制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、屋外設置用のパワーコンディショナ(以下、単にPCSという)を備える電力制御システムにおいて、発電装置の発電量やPCSのエラーコード等の状態表示は、宅内に設置されたリモートコントローラに表示するのが一般的であった。昨今、インターネット通信技術が進展し、スマートフォンやタブレット等をはじめとする情報通信端末が普及したことで、そういった情報通信端末を用いて、PCSの動作確認や操作を可能とするユーザーフレンドリーな機能が求められている。
【0003】
特許文献1には、複数の家電機器を個々に制御して家庭内の総電力量を制御する電力指令装置に対して、情報通信端末を用いて遠隔制御ができるように構成された家庭用電力制御システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-82154号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のとおり、特許文献1の技術では、情報通信端末を用いてパワーコンディショナを遠隔操作する技術が紹介されている。しかしながら、パワーコンディショナの遠隔操作では、電気用品安全法に規定される技術基準をクリアしていることが要求されるため、起動動作等に関する適宜の制約が与えられてしまう。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、情報通信端末のユーザーフレンドリーな機能を確保しつつ、PCSの起動操作ができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る電力制御システムは、屋外に設置されたパワーコンディショナと、前記パワーコンディショナの操作を行うための専用操作端末とを備える。前記パワーコンディショナは、情報通信端末からの公衆通信網を経由したアクセスに対して前記専用操作端末に認められた所定の専用操作を禁止し、前記情報通信端末との間で近距離無線通信による通信が確立された場合に、前記所定の専用操作を許容するように構成されている、ことを特徴とする。
【0008】
本態様によると、公衆通信網を通じて遠隔操作機能を有する情報通信端末によるユーザーフレンドリーな機能を確保しつつ、所定の専用操作については確実に遠隔操作がされないようにすることができる。換言すると、ワイヤレス通信の利便性と、所定の範囲内(例えば、屋内)限定で所定の専用操作を受け付けるという機能を両立させることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、情報通信端末のユーザーフレンドリーな機能を確保しつつ、PCSの起動操作ができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】分散型電源システムの全体構成を示した図
図2】電力制御システムの動作を説明するためのフローチャート
図3】階層別のアクセス範囲について説明するための図
図4】情報端末装置の表示画面の一例を示す図
図5】電力制御システムの動作の他の例を説明するためのフローチャート
図6】情報端末装置の表示画面の他の例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用範囲あるいはその用途を制限することを意図するものではない。
【0012】
-分散型電源システムの構成-
図1は実施形態に係る分散型電源システムの構成の構成例を示した図である。
【0013】
分散型電源システム1は、複数の分散型電源2と、複数の分散型電源2から供給された直流電力を交流電力に変換して出力する電力変換装置としてのパワーコンディショナ3(図1では、PCSと記載)とを備えている。図1では、複数の分散型電源2として、太陽光発電手段21と、蓄電ユニット22とを備えた例を示している。また、分散型電源システム1に、4つのパワーコンディショナ3が設けられた例を示している。なお、具体的な図示はしないが、各パワーコンディショナ3は同様の構成であり、それぞれに分散型電源2が接続される。また、図1では、蓄電ユニット22が接続されている例を示しているが、蓄電ユニット22はなくてもよい。
【0014】
パワーコンディショナ3は、複数の分散型電源2を、電源配線51を介して商用電源系統52に連系させることができるように構成されている。また、電源配線51に接続された家庭用機器や産業用機器等の負荷53(以下、単に負荷53ともいう)に電力が供給できるように構成されている。すなわち、パワーコンディショナ3は、複数の分散型電源2から供給された電源電力を、商用電源系統52に逆潮流したり、負荷53に供給したりすることができるように構成されている。
【0015】
パワーコンディショナ3は、複数のDC/DCコンバータ41と、複数のDC/DCコンバータ41からの直流出力を交流に変換して電源配線51に出力するインバータ42とを備える。電源配線51には、パワーコンディショナ3と商用電源系統52との間に設けられ、後述するコントロールユニット40の制御を受けて電源配線51の導通/遮断を切り替えるリレー43が設けられる。図1では、太陽光発電手段21と蓄電ユニット22のそれぞれにDC/DCコンバータ41が接続され、それぞれのDC/DCコンバータ41の出力がDCリンク線DCLで統合されインバータ42に入力されている。なお、DC/DCコンバータ41及びインバータ42には、従来から知られている構成を採用できる。
【0016】
パワーコンディショナ3は、通信ユニット30と、コントロールユニット40とを備える。
【0017】
コントロールユニット40は、パワーコンディショナ3の全体動作を制御する機能を有し、例えば、マイクロコンピュータで実現することができる。コントロールユニット40は、例えば、(1)DC/DCコンバータ41の昇降圧比等を制御する、(2)PWM(Pulse Width Modulation)制御等によりインバータ42の出力を制御する、(3)リレー43をオンオフ制御する、といった機能を有する。
【0018】
通信ユニット30は、無線通信部31、有線通信部32、CPU(Central Processing Unit)34、記憶部35、操作部37及び表示部38を備える。
【0019】
無線通信部31は、外部の機器(例えば、情報通信端末80)と無線通信が可能に構成されている。具体的な構成は、特に限定されないが、例えば、WiFi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)のように既存のインターフェース規格に準拠した構成を用いることができる。
【0020】
情報通信端末80は、パワーコンディショナ3が近距離に存在するか否かを判断することができるよう構成されている。ここで、情報通信端末80とは、通話及びデータ通信が可能に構成された携帯電話端末や、タブレットPCのようにデータ通信のみが可能に構成された情報端末を含む。なお、パワーコンディショナ3において、情報通信端末80が近距離に存在するか否かを判断することができるよう構成されていてもよい。例えば、パワーコンディショナ3において、無線通信部31と外部の情報通信端末80との間で近距離無線通信による通信が確立されたか否かがわかるように構成されていてもよい。
【0021】
近距離に存在するか否かの判定方法は、特に限定されないが、例えば、以下のような方法がある。
【0022】
具体的に、例えば、無線通信部31は、Bluetooth(class2)のように通信距離が近距離に限定された通信規格を採用し、情報通信端末80との間で認証が行われ、相互間の通信が確立された時点で、近距離無線通信が確立されたと認識することができるように構成してもよい。
【0023】
また、図示しないが、例えば、パワーコンディショナ3に貼付されたQRコード(登録商標)等の識別コードを、情報通信端末80に設けられたカメラを用いて読み込むようにしてもよい。そして、QRコードを情報通信端末80に設けられたカメラにかざしているとき、あるいはかざした後の短時間の間のみ、パワーコンディショナ3に対する近距離からしか受け付けない操作を情報通信端末80に許可するようにしてもよい。
【0024】
また、例えば、近距離からの初回接続時に、操作対象となるパワーコンディショナ3を特定する設置された画像などの識別情報を情報通信端末80のアプリに記憶させてもよい。そして、情報通信端末80のカメラでパワーコンディショナを撮影し、画像認識により、あらかじめ記憶させた画像と照合して、同じと判断した場合のみ、パワーコンディショナに対して近距離からしか受け付けない操作を情報通信端末80から実行できるように許可するようにしてもよい。なお、パワーコンディショナ3側において、情報通信端末80からのアクセスを受け付ける際に、上記の識別情報をあわせて受け取ることで、近距離無線通信が確立されたと判断する、すなわち、情報通信端末80がパワーコンディショナ3の近距離にあることを認識するようにしてもよい。
【0025】
また、例えば、パワーコンディショナ3の設置時に設置場所を特定する位置情報を記憶部35に登録しておき、情報通信端末80は内蔵されたGPS(Global Positioning System)機能に基づく位置情報を取得する。そして、情報通信端末80がパワーコンディショナ3と通信し、パワーコンディショナ3からパワーコンディショナ3の位置情報を受信し、近距離であるか否かが判断され、近距離からしか受け付けない操作が情報通信端末80に許可されるようにしてもよい。
【0026】
また、例えば、無線通信部31において、無線通信に用いる電波強度を低減させ、情報通信端末80と通信できる範囲が所定の範囲(例えば、見える範囲)に限定されるようにしてもよい。すなわち、パワーコンディショナが、前記近距離無線通信に用いる電波強度を検出する電波強度検出手段と、電波強度に基づいて情報通信端末との間で近距離無線通信による通信を確立させる通信確立手段とを備えていてもよい。また、パワーコンディショナ3は、所定の範囲内にある情報通信端末80のみが近距離無線通信の対象となるように近距離無線通信に用いる電波強度を設定してもよい。これにより、パワーコンディショナ3と情報通信端末80との距離は、無線通信規格に基づいて無線通信が可能な範囲よりも限定された範囲になる。このような構成にすることで、使用する無線通信規格によらずに、所定の専用操作を許容する範囲を調整することができる。また、例えば、同じ通信規格を用いた場合でも、近距離無線通信と認識される通信範囲を調整することができる。
【0027】
有線通信部32は、外部機器と有線通信が可能に構成されている。具体的な構成は、特に限定されないが、例えば、Ethernet(登録商標)、USB(登録商標)のように既存のインターフェース規格に準拠した構成を用いることができる。パワーコンディショナ3には、各インターフェース規格に準拠したI/Oポート(図示省略)が設けられる。ここでの外部機器には、例えば、他の場所に設置されたパワーコンディショナ3、無線LANのルータ91(以下、単にルータ91という)、及び、専用の操作表示ユニット60が含まれる。パワーコンディショナ3は、ルータ91を介してインターネット回線92に接続される。インターネット回線92には、例えば、クラウドサーバ93が接続され、外部からパワーコンディショナ3の設定変更や、状態確認ができるようになっている。インターネット回線92は、公衆通信網の一例である。
【0028】
本開示に係るパワーコンディショナ3は、有線通信と無線通信との組み合わせてユーザーフレンドリーなシステムを提供している点に特徴がある。本特徴点については、後ほど電力制御システムの動作説明において具体例を示す。
【0029】
操作部37は、ユーザーからの直接的な入力操作を受けつけるためのものであり、例えばマスター/スレーブの切り替えのための切替スイッチを含む。ここで説明するパワーコンディショナ3は、マスターに設定されているものとし、かつ、複数のスレーブ設定されたパワーコンディショナ3(以下、他のパワーコンディショナ3という)が接続されているものとする。
【0030】
表示部38は、例えば、パワーコンディショナ3の筐体(図示省略)に、操作表示ユニット60とは別に設けられたものである。表示部38は、例えば、パワーコンディショナ3の運転状態を示すLED(Light Emitting Diode)ライトである。
【0031】
CPU34では、通信ユニット30を介して、他のパワーコンディショナ3から取得した取得情報を基に、操作表示ユニット60や情報通信端末80に表示させるための表示データを生成する。上記取得情報には、例えば、太陽光発電手段21の発電量(ストリング単位での電流や電圧を含む)、蓄電ユニット22の充放電量、エラー情報等が含まれる。上記表示データには、例えば、消費電力量、買電量、売電量、積算電力量が含まれる。CPU34は、生成した表示データを、操作表示ユニット60に表示させる有線用表示データと、情報通信端末80に表示させる無線用表示データとに振り分ける。有線用表示データには、主に、リアルタイム表示が必要なデータが含まれる。具体的には、例えば、パワーコンディショナ3の運転状態、蓄電ユニット22の状態が含まれる。一般的に情報通信端末80は、高精細な画面を有するものも多い。そこで、無線用表示データとして、例えば、他のパワーコンディショナ3から受信する太陽光発電手段21の発電量(ストリング単位での電流や電圧を含む)、蓄電ユニット22の充放電量、エラー情報、消費電力量、買電量、売電量等の詳細データが含まれる。また、無線用表示データとして、パワーコンディショナ3の動作履歴を含めてもよい。
【0032】
操作表示ユニット60は、パワーコンディショナ3専用の表示と操作を行うためのユニットであり、操作部61と表示部62とを備える。例えば、パワーコンディショナ3に比較的近い位置に設置される。例えば、パワーコンディショナ3を家屋外に設置した場合に、操作表示ユニット60は、同一の家屋内においてパワーコンディショナ3側の壁面等に設置される。表示部62には、前述の有線用表示データが表示される。操作部61は、表示部62の表示設定や表示項目の切替、パワーコンディショナの電源のオン/オフ設定等ができるようになっている。換言すると、操作表示ユニット60は、後述する情報通信端末80が「近距離であるか遠距離であるかを判断しアクセスする」に対し、「近距離にあるものとしてアクセスする」ように構成されている。操作表示ユニット60は、専用操作端末の一例である。
【0033】
なお、表示部62の表示画面は、タッチパネルであってもよく、その場合、表示部62と操作部61とが一体構成となる。また、図示はしないが、操作表示ユニット60にスピーカを設けて、音声によってユーザーにパワーコンディショナ3の状態を知らせたり、各種案内を流すようにしてもよい。
【0034】
-電力制御システムの動作(1)-
図2は、本実施形態に係る電力制御システムの動作を説明するためのフローチャートである。ここでは、情報通信端末80に、パワーコンディショナ3を操作したり、パワーコンディショナ3から受信した情報を表示するためのアプリケーション(以下、単にアプリという)がダウンロードされているものとする。
【0035】
まず、ステップS21において、ユーザーがアプリを起動する。アプリが起動されると、情報通信端末80は、インターネット回線92を介してパワーコンディショナ3の通信ユニット30にアクセスする。情報通信端末80では、例えば、認証画面が表示され、ユーザーIDと、パスワードを入力し、パワーコンディショナ側で認証が取れれば、相互間の通信が確立される(ステップS11,S22)。
【0036】
通信が確立されると、情報通信端末80ではステップS23の処理が実行され、パワーコンディショナ3ではステップS13の処理が実行される。
【0037】
ステップS23において、情報通信端末80は、パワーコンディショナ3が近距離にあるか否か(近距離無線通信か否か)を判定する。近距離にあるか否かの判断は、特に限定されないが、例えば、前述のように通信距離に制限を設けその制限距離内からの通信を受けたか否かで判断したり、GPSのデータを用いることができる。なお、パワーコンディショナ3側で情報通信端末80が近距離にあるか否かを判定するようにしてもよい。
【0038】
ステップS13において、パワーコンディショナ3は、アクセス対象者の区分判定を行う。本実施形態では、パワーコンディショナから提供される情報、または、設定可能な項目について、階層別のアクセス範囲を設定している。アクセス対象者の区分判定は、その階層を区別するためのものである。アクセス対象者の区分判定は、例えば、ユーザーIDに基づいて行われる。
【0039】
図3は、階層別のアクセス範囲についての一例を示している。図3の例では、アクセス対象者の区分として、「一般ユーザー」、「施工業者」、「サービス業者」、「メーカー管理者」に分けた例を示している。
【0040】
図3において、「一般ユーザー」のアクセス可能な範囲(アクセス範囲R1という)には、近距離無線通信であるか遠距離無線通信であるかにかかわらずアクセスができる情報F11と、近距離無線通信の場合にのみアクセスができる情報F12が含まれる。情報F11には、例えば、発電量・蓄電量の履歴情報及びパワーコンディショナ3の運転状態情報の確認、並びに、運転モードの設定操作のための情報が含まれる。情報F12には、例えば、パワーコンディショナ3の運転/停止の切替操作のための情報が含まれる。
【0041】
ここで、情報通信端末80がパワーコンディショナ3の近距離にある場合(例えば、近距離無線通信の場合)にのみアクセスができる情報F12には、操作表示ユニット60からはアクセスが可能に構成されている。すなわち、操作表示ユニット60からパワーコンディショナ3の運転/停止の切替操作ができるように構成されている。
【0042】
「施工業者」のアクセス可能な範囲(アクセス範囲R2という)には、例えば、電力業者との間で協議された内容を基に決定された系統側の設定内容等の情報、連系設定操作や変更操作のための情報(まとめて情報F2という)が含まれる。情報F2には、例えば、上記の「系統側の設定内容」のように、「一般ユーザー」への情報提供が不要であったり、設定の変更等がされると困るような情報が含まれる。アクセス範囲R2には、アクセス範囲R1も含まれる。
【0043】
「サービス業者」のアクセス可能な範囲(アクセス範囲R3という)には、例えば、修理を行うための故障状態の詳細を示すような情報であったり、故障対応のための情報(以下、まとめて情報F3という)が含まれる。なお、ここでの「サービス業者」とは、メーカーから委託を受けてサービスを行っているような業者を指している。アクセス範囲R3には、アクセス範囲R1及びアクセス範囲R2も含まれる。
【0044】
「メーカー管理者」のアクセス可能な範囲(アクセス範囲R4という)には、例えば、サービス業者に開示するものよりもさらに細かな設計情報や設計に関する制御パラメータの情報等(以下、まとめて情報F4という)が含まれる。情報F4「メーカー管理者」が現場で起こっている現象を確認したり、故障の原因を突き止めるために使用される。なお、アクセス対象者の区分は、図3に限定されず、別の分け方をしてもよい。
【0045】
図2に戻り、CPU34は、アクセス対象者の区分判定(ステップS13)が終わると、ステップS14の処理を行う。ステップS14では、記憶部35にあらかじめ記憶されたデータベースDBを参照し、情報通信端末80でのメニュー表示画面の表示項目を示す表示指令信号を情報通信端末80に送信する。
【0046】
図4は、表示指令信号を受信した情報通信端末80のメニュー画面の一例を示している。ここでは、「一般ユーザー」が、情報通信端末80を用いて、遠隔地(例えば、職場等)からインターネット回線92を通じて自宅の屋外に設置されたパワーコンディショナ3にアクセスしているものとする。
【0047】
情報通信端末80では、表示指令信号に基づいた表示が行われる(ステップS24)。ここでは、情報通信端末80の表示画面86に図4の実線で示した項目のみが表示される。すわなち、近距離無線通信であるか遠距離無線通信であるかにかかわらずアクセスができる情報F11のみが表示され、選択できるようになる。このとき、情報F2~F4は、「一般ユーザー」に存在自体を知らせる必要がない情報なので、メニュー画面にアイコン自体が表示されない。近距離無線通信の場合にのみアクセスができる情報F12については、アイコン自体を表示させないようにしてもよいし、アイコンは表示されるが選択はできないという設定にしてもよい。なお、アクセス対象者の区分が異なる場合には、その区分に応じたアクセス範囲R1~R4の情報F11,F12,F2~F4が表示される(図4の破線参照)。後述する図6においても同様である。
【0048】
そして、ステップS25において、例えば、「一般ユーザー」が、操作ボタン85を操作して、メニュー画面から電力量を表示させるための操作をしたとする。そうすると、ステップS15において、CPU34は、電力量を計算し、または、あらかじめ計算された電力量を読み出し、情報通信端末80に送信する。図示しないが、情報通信端末80では、パワーコンディショナ3から受信した電力量を情報通信端末80の表示画面86上に表示させる(ステップS26)。
【0049】
-電力制御システムの動作(2)-
図5は、本実施形態に係る電力制御システムの動作の他の例を説明するためのフローチャートである。ここでは、「一般ユーザー」が、情報通信端末80を用いて近距離無線通信により、パワーコンディショナ3にアクセスしたものとする。また、図5の例では、パワーコンディショナ3の出力が停止し(ステップS16)、情報通信端末80に出力が停止した旨の通知がされたものとする(ステップS26)。そして、ステップS21において、ユーザーが通知を見て、アプリを起動したものとする。
【0050】
アプリが起動されると、前述の「電力制御システムの動作(1)」と同様に、情報通信端末80とパワーコンディショナ3の通信が確立された後(ステップS11,S22)、情報通信端末80ではステップS23の処理が実行され、パワーコンディショナ3ではステップS13の処理が実行される。ここでは、「一般ユーザー」が、情報通信端末80を用いて近距離無線通信によりパワーコンディショナ3にアクセスしていることが特定される。すなわち、情報通信端末80がパワーコンディショナ3の近距離にある(所定の範囲内にある)ことが特定される。
【0051】
ステップS14では、前述の「電力制御システムの動作(1)」と同様に、データベースDBを参照し、表示指令信号を情報通信端末80に送信する。
【0052】
情報通信端末80では、例えば、図4の実線で示した項目のみが表示される(ステップS24)。すわなち、情報通信端末80の表示画面86には、前述の情報F11に加えて、近距離無線通信の場合にのみアクセスができる情報F12が表示され、選択できるようになる。このとき、情報F2~F4は、「一般ユーザー」に存在自体を知らせる必要がない情報なので、メニュー画面にアイコン自体が表示されない。
【0053】
そして、次のステップS27において、例えば、「一般ユーザー」が、操作ボタン85を操作して、メニュー画面からパワーコンディショナ3を起動させるための起動操作をしたとする。そうすると、CPU34は、パワーコンディショナ3を起動させるための起動処理を行い(ステップS17)、起動処理が完了すると起動完了通知を情報通信端末80に送信する(ステップS18)。図示しないが、情報通信端末80では、パワーコンディショナ3から受信した起動完了通知を示す情報を情報通信端末80の表示画面86上に表示させる(ステップS28)。
【0054】
以上のように、本実施形態によると、パワーコンディショナ3は、情報通信端末80からの遠隔でのアクセスに対して操作表示ユニット60に認められた所定の専用操作(例えば、パワーコンディショナ3の運転/停止の切替操作)を禁止している。一方で、情報通信端末80は、パワーコンディショナ3が近距離に存在する場合に、相互間の通信が確立されたときには、上記の所定の専用操作を許容するように構成されている。
【0055】
これにより、インターネット回線92を通じて遠隔操作機能を有する情報通信端末80(スマートフォンやタブレットPC)による高精細表示のようなユーザーフレンドリーな機能を確保しつつ、所定の専用操作については確実に遠隔操作がされないようにすることができる。換言すると、ワイヤレス通信の利便性と、所定の範囲内(例えば、屋内)限定でパワーコンディショナ3の運転/停止の切替操作を受け付けるという機能を両立させることができる。より具体的には、例えば、パワーコンディショナ3がエラー等で停止した場合に、「一般ユーザー」が操作できる範囲(例えば、再起動できる範)を指定し、制限することができるので、不用意なパワーコンディショナ3の再起動による二次故障等の被害を防ぐことができる。
【0056】
また、操作表示ユニット60には、リアルタイム表示が必要な有線用表示データを送信し、情報通信端末80には、リアルタイム性は低いが情報量が多いようなもの(例えば、発電履歴)等を送るように、振り分けるようにしている。これにより、システムトータルとしての利便性を向上させつつ、スマートフォンやタブレットPCになじみの薄い方々にもユーザーフレンドリーなシステムが提供できる。
【0057】
さらに、階層別のアクセス範囲と操作内容を設定しているので、アクセス対象者毎に、異なった表示範囲、操作範囲を設定することができ、市場サービス性の向上と、お客様の利便性の向上の両立を図ることができる。
【0058】
(その他の実施形態)
なお、上記実施形態において、分散型電源として、太陽光発電手段21及び蓄電ユニット22を例示したが、これに限定されない。例えば、太陽光発電手段に代えて、風力発電手段、燃料電池、コージェネレーションシステム等の他の発電手段であってもよく、これらの組み合わせであってもよく、同様の効果が得られる。
【0059】
60と8の操作に優先順位をつけてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明によると、情報通信端末のユーザーフレンドリーな機能を確保しつつ、PCSの起動操作ができる、極めて有用である。
【符号の説明】
【0061】
3 パワーコンディショナ
60 操作表示ユニット(専用操作端末)
80 情報通信端末
92 インターネット回線(公衆通信網)
DB データベース
図1
図2
図3
図4
図5
図6