(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】吊り上げ治具
(51)【国際特許分類】
B66C 1/42 20060101AFI20240523BHJP
【FI】
B66C1/42 D
(21)【出願番号】P 2020057525
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2023-01-06
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(72)【発明者】
【氏名】臼井 達哉
(72)【発明者】
【氏名】下平 征之
(72)【発明者】
【氏名】西村 信嗣
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-037868(JP,U)
【文献】実開昭48-059942(JP,U)
【文献】実開昭50-061573(JP,U)
【文献】特開昭52-069149(JP,A)
【文献】実開昭58-140908(JP,U)
【文献】実開昭62-128095(JP,U)
【文献】実開昭52-038872(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 1/00 - 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに開閉方向へ揺動可能に連結され、アーム長手方向に延びたガイド部を有し、各ガイド部が前記アーム長手方向に間隔を置いて配置された複数の位置決め凹部を含む一対の揺動アームと、
各揺動アームに前記アーム長手方向へ移動可能に設けられ、各揺動アームの前記ガイド部に前記アーム長手方向へ摺動可能に支持された摺動子を有し、各摺動子が前記揺動アームの各位置決め凹部に係脱可能に構成された調整部材と、
各調整部材に基端部が固定され、重量物を把持するための把持部材と、を備え、
各揺動アームは、前記ガイド部に平行な方向に延びた第2ガイド部を有し、各調整部材は、各揺動アームの前記第2ガイド部に前記アーム長手方向へ摺動可能に支持された第2摺動子を有している吊り上げ治具。
【請求項2】
各把持部材の先端部における、重量物を支持する支持爪が鋭角に形成されていることを特徴とす
る請求項
1に記載の吊り上げ治具。
【請求項3】
一対の前記揺動アームを開閉方向へ揺動させるためのリンク機構を備えることを特徴とする請求項
1又は請求項
2記載の吊り上げ治具。
【請求項4】
一対の前記把持部材の先端部側の間隔を重量物の幅寸法よりも大きくした状態において、一対の前記揺動アームを揺動不能に保持するアーム保持部材を備えることを特徴とする請求項
1から請求項
3のうちのいずれか1項に記載の吊り上げ治具。
【請求項5】
一対の前記揺動アームが閉側の所定位置を超えて閉方向へ揺動することを規制するアーム規制部材を備えることを特徴とする請求項
1から請求項
4のうちのいずれか1項に記載の吊り上げ治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーン等の運搬装置によって重量物を吊り上げる際に、重量物を把持する吊り上げ治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、幅寸法の異なる複数種の重量物を把持するため、把持幅を調整可能に構成された吊り上げ治具が開発されている(特許文献1参照)。そして、先行技術に係る吊り上げ治具の把持幅を調整する場合には、次のように行う。
【0003】
作業者は、各把持部材(特許文献1では下部アームと挟持部材)の基端側を各揺動アーム(特許文献1では上部アーム)に対して相対的にアーム長手方向(揺動アームの長手方向)へ移動させて、各把持部材の調整孔を各把持部材の複数の調整孔のうち重量物の幅寸法に応じた所定の調整孔に整合させる。そして、作業者は、結合用係合ピンを各揺動アームの所定の調整孔に挿入させて、各把持部材の係合孔に係合させる。これにより、一対の把持部材の間隔が重量物の幅寸法に応じた間隔になるように、吊り上げ治具の把持幅を調整(変更)した状態で、各揺動アームの先端部と各把持部材の基端部を結合することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前述のように、吊り上げ治具の把持幅を調整するには、結合用係合ピンを各把持部材の係合孔に係合させる前に、各把持部材の調整孔を各把持部材の所定の調整孔に整合させる作業が必要であり、その作業が非常に面倒である。そのため、吊り上げ治具の把持幅の調整作業に多くの時間と手間がかかり、吊り上げ治具の把持幅の調整作業の作業性を高めること困難であるという問題がある。
【0006】
また、結合用係合ピンが把持部材に対して脱着する部品であるため、結合用係合ピンが把持部材から外れると、把持部材の脱落を招く可能性があり、作業者の安全性を十分に確保することが困難であるという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、前述の問題を解決するため、把持部材に対して脱着する脱着部品を用いることなく、把持幅の調整を簡単に行うことができる、吊り上げ治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本実施態様に係る吊り下げ治具は、互いに開閉方向へ揺動可能に連結され、アーム長手方向に延びたガイド部を有し、各ガイド部が前記アーム長手方向に間隔を置いて配置された複数の位置決め凹部を含む一対の揺動アームと、各揺動アームに前記アーム長手方向へ移動可能に設けられ、各揺動アームの前記ガイド部に前記アーム長手方向へ摺動可能に支持された摺動子を有し、各摺動子が前記揺動アームの各位置決め凹部に係脱可能に構成された調整部材と、各調整部材に基端部が固定され、重量物を把持するための把持部材と、を備え、各揺動アームは、前記ガイド部に平行な方向に延びた第2ガイド部を有し、各調整部材は、各揺動アームの前記第2ガイド部に前記アーム長手方向へ摺動可能に支持された第2摺動子を有している。また、本実施態様では、各把持部材の先端部における、重量物を支持する支持爪が鋭角に形成されてもよい。
【0010】
本実施態様に係る吊り上げ治具は、一対の前記揺動アームを開閉方向へ揺動させるためのリンク機構を備えてもよい。また、本実施態様に係る吊り上げ治具は、一対の前記把持部材の先端部側の間隔(最小間隔)を重量物の幅寸法よりも大きくした状態において、一対の前記揺動アームを揺動不能に保持するアーム保持部材を備えてもよい。更に、本実施態様に係る吊り上げ治具は、一対の前記揺動アームが閉側の所定位置を超えて閉方向へ揺動することを規制するアーム規制部材を備えてもよい。
【0011】
本実施態様によると、作業者は、各調整部材の前記摺動子を各揺動アームの前記ガイド部に沿って前記アーム長手方向へ摺動させて、各把持部材の前記複数の位置決め凹部のうち重量物の幅寸法に応じた所定の位置決め凹部に係合させる。これにより、前記把持部材に対して脱着する部品を用いることなく、前記一対の把持部材の間隔が重量物の幅寸法に応じた間隔になるように、前記吊り上げ治具の把持幅の調整を簡単に行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、作業者の安全性を十分に確保した上で、吊り上げ治具の把持幅の調整作業から多くの時間と手間を省いて、吊り上げ治具の把持幅の調整作業の作業性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】
図1Aは、本実施形態に係る吊り上げ治具の正面図であり、各調整部材の第1摺動軸を各揺動アームの第1ガイド溝の左右方向外側の位置決め凹部に係合させた状態を示している。
【
図1B】
図1Bは、本実施形態に係る吊り上げ治具の背面図であり、各調整部材の第1摺動軸を各揺動アームの第1ガイド溝の左右方向外側の位置決め凹部に係合させた状態を示している。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る吊り上げ治具の側面図であり、各調整部材の第1摺動軸を各揺動アームの第1ガイド溝の左右方向外側の位置決め凹部に係合させた状態を示している。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る吊り上げ治具の斜視図であり、各調整部材の第1摺動軸を各揺動アームの第1ガイド溝の左右方向外側の位置決め凹部に係合させた状態を示している。
【
図4A】
図4Aは、本実施形態に係る吊り上げ治具の正面図であり、各調整部材の第1摺動軸を各揺動アームの第1ガイド溝の左右方向中間側の位置決め凹部に係合させた状態を示している。
【
図4B】
図4Bは、本実施形態に係る吊り上げ治具の正面図であり、各調整部材の第1摺動軸を各揺動アームの第1ガイド溝の左右方向内側の位置決め凹部に係合させた状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
【0015】
なお、本願の明細書及び特許請求の範囲において、「設けられる」とは、直接的に設けられることの他に、別部材を介して間接的に設けられること、及び形成されることを含む意である。「開閉方向」とは、一対の揺動アームの先端部が接近離反する方向のことをいう。「開方向」とは、一対の揺動アームの先端部が離反する方向のことをいい、「閉方向」とは、一対の揺動アームの先端部が接近する方向のことをいう。「アーム長手方向」とは、揺動アームの長手方向のことをいう。「係脱」とは、係合と離脱のことをいう。本願の明細書において、「左右方向」とは、水平方向の1つであって、吊り上げ治具の幅方向のことである。「前後方向」とは、左右方向に直交する水平方向であって、吊り上げ治具の幅方向に直交する方向のことである。図面中、「L」は左方向、「R」は右方向、「FF」は前方向、「FR」は後方向、「U」は上方向、「D」は下方向をそれぞれ指している。
【0016】
図1Aから
図4Bに示すように、本実施形態に係る吊り上げ治具10は、クレーン(クレーンの大部分は図示省略)によって重量物Hを吊り上げる際に、重量物Hを把持する。吊り上げ治具10は、クレーンの吊りフック12に掛止可能である。吊り上げ治具10は、幅寸法Wの異なる3数種の重量物H1,H2,H3を把持するため、把持幅を調整可能(変更可能)に構成されている。重量物H1の幅寸法W1(
図1A参照)は、重量物H2の幅寸法W2(
図4A参照)よりも大きく、第2の重量物H2の幅寸法W2は、第3の重量物H3の幅寸法W3(
図4B参照)よりも大きくなっている。なお、本実施形態では、幅寸法Wの異なる重量物Hの種類の数は3つであるが、2つ又は4つ以上にしてもよい。
【0017】
図1Aから
図3に示すように、吊り上げ治具10は、互いに開閉方向へ揺動可能(回動可能)に連結軸14を介して連結された左右一対の揺動アーム16を備えている。各揺動アーム16は、断面逆U字形状に形成されており、天井部16tと、天井部16tの前後両側にそれぞれ形成された側壁部16sとを有している。
【0018】
各揺動アーム16の前側及び後側の各側壁部16sには、アーム長手方向(揺動アーム16の長手方向)に延びた第1ガイド部としての無底の第1ガイド溝(第1ガイドスリット)18がそれぞれ形成されている。各揺動アーム16の各第1ガイド溝18は、アーム長手方向に間隔を置いて配置された3つの位置決め凹部18a,18b,18cを含んでおり、各位置決め凹部18a(18b,18c)は、下方向にL字状に凹んでいる。3つの位置決め凹部18a,18b,18cは、左右方向外側の位置決め凹部18aと、左右方向中間側の位置決め凹部18bと、左右方向内側の位置決め凹部18cとからなる。3つの位置決め凹部18a,18b,18cを含む各第1ガイド溝18は、外部から視認可能に構成されている。
【0019】
各揺動アーム16の前側及び後側の各側壁部16sには、第1ガイド溝18に平行な第2ガイド部としての無底の第2ガイド溝(第2ガイドスリット)20がそれぞれ形成されている。各第2ガイド溝20は、各第1ガイド溝18の上側に位置している。各第2ガイド溝20は、外部から視認可能に構成されている。なお、各第2ガイド溝20が各第1ガイド溝18の上側に位置する代わりに、各第1ガイド溝18の下側に位置してもよい。
【0020】
各揺動アーム16の内側には、吊り上げ治具10の把持幅を調整するための調整部材22がアーム長手方向に移動可能に設けられている。各調整部材22は、その下部側に、前後方向に延びた第1摺動子としての第1摺動軸24を有している。各第1摺動軸24の前端部は、各揺動アーム16の前側の第1ガイド溝18にアーム長手方向へ摺動可能に支持されており、前側の第1ガイド溝18の各位置決め凹部18a(18b,18c)に係脱可能に構成されている。第1摺動軸24の後端部は、各揺動アーム16の後側の第1ガイド溝18にアーム長手方向へ摺動可能に支持されており、後側の第1ガイド溝18の各位置決め凹部18a(18b,18c)に係脱可能に構成されている。各第1摺動軸24の各端部は、Eリング(図示省略)及びワッシャ26等を介して各揺動アーム16の第1ガイド溝18に対して離脱不能に構成されている。各第1摺動軸24は、外部から視認可能に構成されている。
【0021】
各調整部材22は、その上部側に、前後方向に延びた第2摺動子としての第2摺動軸28を有している。各第2摺動軸28の前端部は、各揺動アーム16の前側の第2ガイド溝20にアーム長手方向へ摺動可能に支持されている。第2摺動軸28の後端部は、各揺動アーム16の後側の第2ガイド溝20にアーム長手方向へ摺動可能に支持されている。各第2摺動軸28の各端部は、Eリング(図示省略)及びワッシャ30等を介して各揺動アーム16の第2ガイド溝20に対して離脱不能に構成されている。各第2摺動軸28は、外部から視認可能に構成されている。
【0022】
各調整部材22には、重量物Hを把持するためのロッド状の把持部材32の基端部(上端部)が固定ボルト34を介して固定されており、各把持部材32は、下方向に延びている。各把持部材32は、上下方向に延びており、各把持部材32の先端部(下端部)には、重量物Hの下面を下方向から支持する支持爪36が設けられている。各支持爪36は、それに連続する把持部材32の基端側に対して直角より若干鋭角に形成されている。各支持爪36を鋭角に形成した場合、一対の把持部材32によって重量物Hを把持する際に重量物Hの落下をより防止することができる。なお、各支持爪36を鋭角に形成する代わりに、直角又は鈍角に形成してもよい。
【0023】
図1A、
図4A、及び
図4Bに示すように、一対の把持部材32は、クレーンによって吊り上げ治具10を上昇させる際に、吊り上げ治具10の自重を利用して閉方向へ揺動しながら重量物Hを把持する。一対の把持部材32は、各第1摺動軸24の各端部が各第1ガイド溝18の左右方向外側の位置決め凹部18aに係合した状態で、重量物H1を把持する(
図1A参照)。一対の把持部材32は、各第1摺動軸24の各端部が各第1ガイド溝18の左右方向中間側の位置決め凹部18bに係合した状態で、重量物H2を把持する(
図4A参照)。一対の把持部材32は、各第1摺動軸24の各端部が各第1ガイド溝18の左右方向内側の位置決め凹部18cに係合した状態で、重量物H3を把持する(
図4B参照)。なお、一対の把持部材32が吊り上げ治具10の自重を利用して重量物Hを把持する代わりに、スプリング等の付勢部材(図示省略)を利用して重量物Hを把持してもよい。
【0024】
図1Aから
図3に示すように、吊り上げ治具10は、一対の把持部材32を開閉方向へ揺動させるためのリンク機構としてパンタグラフ機構38を備えている。具体的には、各揺動アーム16の基端部には、作動リンク40の一端部(下端部)が連結ピン42が揺動可能に連結されている。各作動リンク40の他端部(上端部)には、掛止部材としてのシャックル44のシャックル軸46に揺動可能に連結されている。換言すれば、一方の作動リンク40の他端部と他方の作動リンク40の他端部は、シャックル44のシャックル軸46を介して揺動可能に連結されている。各揺動アーム16における連結軸14側から連結ピン42側までの部分は、各作動リンク40と同様に、パンタグラフ機構38の一部を構成する。シャックル44は、クレーンの吊りフック12に掛止可能である。
【0025】
一方の揺動アーム16における連結軸14側から連結ピン42側までの部分には、被係止部材としてのストリッパボルト48が設けられている。また、一方の作動リンク40には、ストリッパボルト48に係止可能な係止フック50が取付ボルト52を介して上下方向へ揺動可能に設けられている。係止フック50の基端側には、係止フック50の揺動操作を行うための操作レバー54が形成されている。係止フック50は、一対の把持部材32の先端部側の間隔(最小間隔)Sを重量物Hの幅寸法よりも大きくした状態において、ストリッパボルト48に係止する。つまり、係止フック50は、一対の把持部材32の先端部側の間隔Sを重量物Hの幅寸法よりも大きくした状態において、一対の揺動アーム16を揺動不能に保持するアーム保持部材に相当する。なお、一方の連結ピン42には、ストリッパボルト48から離脱した係止フック50を当接させるための当接部材としてのワッシャ56が設けられている。
【0026】
他方の揺動アーム16における連結軸14側から連結ピン42側までの部分には、ストッパ片58が取付ボルト60を介して設けられている。ストッパ片58には、上下方向に延びたガイド穴62が形成されている。また、他方の作動リンク40には、可動子としての可動ボルト64が設けられており、可動ボルト64は、ストッパ片58のガイド穴62に上下方向に沿って移動可能に支持されている。一対の揺動アーム16が閉側の所定位置に位置すると、可動ボルト64がストッパ片58のガイド穴62の下縁部に当接して、一対の揺動アーム16の閉方向の揺動が規制される。つまり、ストッパ片58は、一対の揺動アーム16が閉側の所定位置を超えて閉方向へ揺動することを規制するアーム規制部材に相当する。
【0027】
続いて、本実施形態に係る吊り上げ治具10の作用及び効果について説明する。
【0028】
作業者は、各揺動アーム16の各ガイド溝18(20)及び各調整部材22の各摺動軸24(28)を目視しながら、各調整部材22の各摺動軸24(28)を各揺動アーム16の各ガイド溝18(20)に沿ってアーム長手方向へ摺動させる。そして、作業者は、各揺動アーム16の第1ガイド溝18の所定の位置決め凹部及び各調整部材22の第1摺動軸24を目視しながら、各調整部材22の第1摺動軸24を各揺動アーム16の第1ガイド溝18の所定の位置決め凹部に係合させる。ここで、所定の位置決め凹部とは、3つの位置決め凹部18a,18b,18cのうち重量物Hの幅寸法に応じた位置決め凹部のことである。これにより、把持部材32に対して脱着する脱着部品を用いることなく、一対の把持部材32の間隔が重量物Hの幅寸法Wに応じた間隔になるように、吊り上げ治具10の把持幅の調整作業を簡単に行うことができる。
【0029】
なお、吊り上げ治具10の把持幅の調整作業を行う前には、作業者が係止フック50を下方向へ揺動させて、ストリッパボルト48に係止させておくことが望ましい。
【0030】
各調整部材22の第1摺動軸24を各揺動アーム16の第1ガイド溝18の所定の位置決め凹部として例えば左右方向中間側の位置決め凹部18bに係合させた状態で、収納ボックスBに収納された重量物H2をクレーンによって吊り上げる場合には、次の動作を行う。
【0031】
図5Aに示すように、クレーンによって吊り上げ治具10を水平方向へ移動させて、重量物H2の上方位置(真上)に位置させる。次に、
図5Bに示すように、クレーンによって吊り上げ治具10を下降させて、収納ボックスBの内底面に接地又は近接させる。そして、
図5Cに示すように、作業者が係止フック50を上方向へ揺動さて、ストリッパボルト48から離脱させることにより、一対の揺動アーム16を閉方向に揺動可能な状態にする。その後、
図5Dに示すように、クレーンによって吊り上げ治具10を上昇させる。すると、一対の把持部材32が吊り上げ治具10の自重を利用して閉方向へ揺動しながら重量物H2を把持し、クレーンによって重量物H2を吊り上げることができる。
【0032】
従って、本実施形態によれば、前述のように、把持部材32に対して脱着する脱着部品を用いることなく、一対の把持部材32の間隔が重量物Hの幅寸法Wに応じた間隔になるように、吊り上げ治具10の把持幅の調整作業を簡単に行うことができる。また、本実施形態によれば、前述のように、不用意に揺動アーム16が閉じて挟み込むことを防止するために、ストッパ片58が一対の揺動アーム16が閉側の所定位置を超えて閉方向へ揺動することを規制する。よって、本実施形態によれば、作業者の安全性を十分に確保した上で、吊り上げ治具10の把持幅の調整作業から多くの時間と手間を省いて、吊り上げ治具10の把持幅の調整の作業性(作業能率)を高めることができる。
【0033】
なお、本発明は、前述の実施形態の説明に限られるものではなく、適宜の変更を行うことにより、種々な態様で実施可能である。そして、本発明に包含される権利範囲は、前述の実施形態の説明に限定されないものである。
【符号の説明】
【0034】
10 吊り上げ治具
12 吊りフック
14 連結軸
16 揺動アーム
16t 天井部
16s 側壁部
18 第1ガイド溝(第1ガイド部)
18a 位置決め凹部
18b 位置決め凹部
18c 位置決め凹部
20 第2ガイド溝(第2ガイド部)
22 調整部材
24 第1摺動軸(第1摺動部)
26 ワッシャ
28 第2摺動軸(第2摺動部)
30 ワッシャ
32 把持部材
34 固定ボルト
36 支持爪
38 パンタグラフ機構(リンク機構)
40 作動リンク
42 連結ピン
44 シャックル(掛止部材)
46 シャックル軸
48 ストリッパボルト(被係止部材)
50 係止フック(アーム保持部)
52 取付ボルト
54 操作レバー
56 ワッシャ(当接部材)
58 ストッパ片(アーム規制部)
60 取付ボルト
62 ガイド穴
64 可動ボルト(可動子)
H 重量物
H1 重量物
H2 重量物
H3 重量物