(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】潤滑剤用摩擦調整剤および潤滑剤組成物
(51)【国際特許分類】
C10M 147/04 20060101AFI20240523BHJP
C10M 149/06 20060101ALI20240523BHJP
C10N 20/00 20060101ALN20240523BHJP
C10N 20/02 20060101ALN20240523BHJP
C10N 20/04 20060101ALN20240523BHJP
C10N 30/06 20060101ALN20240523BHJP
C10N 40/02 20060101ALN20240523BHJP
C10N 40/04 20060101ALN20240523BHJP
C10N 40/06 20060101ALN20240523BHJP
C10N 40/08 20060101ALN20240523BHJP
C10N 40/25 20060101ALN20240523BHJP
【FI】
C10M147/04
C10M149/06
C10N20:00 Z
C10N20:02
C10N20:04
C10N30:06
C10N40:02
C10N40:04
C10N40:06
C10N40:08
C10N40:25
(21)【出願番号】P 2020075505
(22)【出願日】2020-04-21
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】中村 俊貴
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 智宏
(72)【発明者】
【氏名】内藤 展洋
(72)【発明者】
【氏名】萩原 宏紀
【審査官】松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-149296(JP,A)
【文献】特開昭62-106995(JP,A)
【文献】特表2001-520303(JP,A)
【文献】特開2004-331933(JP,A)
【文献】特表2020-502350(JP,A)
【文献】特表2019-529687(JP,A)
【文献】特開2012-188530(JP,A)
【文献】特開2008-115304(JP,A)
【文献】特開2008-031416(JP,A)
【文献】特開2007-009200(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0254819(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M
C10N
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される単量体(a)および炭素数1~36の直鎖または分岐鎖アルキル基を有する(メタ)アクリロイル単量体(b)を構成単量体として含
み、重量平均分子量が30,000~500,000である共重合体(A)を含有してなる、フッ素系樹脂と金属との摺動部に使用される潤滑剤用摩擦調整剤。
【化1】
[一般式(1)において、R
1は水素原子またはメチル基;Xは酸素原子またはイミノ基;Yは炭素数1~14の直鎖または分岐鎖のフルオロアルキル基である。]
【請求項2】
前記共重合体(A)を構成する前記単量体(a)と前記(メタ)アクリロイル単量体(b)との重量比が90/10~10/90である請求項1に記載の潤滑剤用摩擦調整剤。
【請求項3】
前記共重合体(A)の溶解性パラメーターが7.0~9.2(cal/cm
3)
1/2である請求項1または2に記載の潤滑剤用摩擦調整剤。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか1項に記載の潤滑剤用摩擦調整剤と基油とを含有してなる、フッ素系樹脂と金属との摺動部に使用される潤滑剤組成物。
【請求項5】
前記基油の100℃での動粘度が1~15mm
2/sであり、かつ基油の粘度指数が90以上である請求項
4に記載の潤滑剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は潤滑剤用摩擦調整剤および潤滑剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CO2排出量低減および石油資源保護等の実現のために、自動車等の省燃費化や内燃機関の高回転化が要求されている。省燃費化の手法としては車重の軽量化や潤滑油の低粘度化による粘性抵抗の低減が挙げられ、摺動部材の一部に樹脂を使用することが採用されている(特許文献1~2)。一方で潤滑油の低粘度化に伴い摩耗や焼付き、油膜厚さ低減による摩擦損失の増加といった問題が生じてくる。
【0003】
摺動部材の一部に使用される樹脂としては様々あるが、耐熱性を考慮してポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂等のフッ素系樹脂が一般的に使用されている。しかしながら、焼付きの問題は解消されるものの、PTFE樹脂は耐摩耗性が低いという問題がある。また、湿式潤滑に用いられる場合、PTFE樹脂が疎油性であることから、PTFE樹脂と金属間の摩擦に対して、潤滑油による摩擦低減効果を得られにくい問題がある。
【0004】
耐摩耗性の向上については種々の方策がなされており、例えば、炭素繊維やカーボンビーズ、セラミックス粉末をPTFE樹脂とブレンドした樹脂を成型したもの(特許文献3~4)等を摺動部材に用いることが知られている。
しかしながら、フッ素系樹脂と金属との摺動における摩擦低減効果を改善できるものは知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第2881633号公報
【文献】特開2019-183968号公報
【文献】特開2002-317089号公報
【文献】特開2007-154170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、PTFE樹脂等のフッ素系樹脂と金属との摺動において、フッ素系樹脂の耐摩耗性向上とフッ素系樹脂-金属間の摩擦低減効果との両方の性能を潤滑剤組成物に付与できる潤滑剤用摩擦調整剤と、フッ素系樹脂の耐摩耗性、フッ素系樹脂-金属間の摩擦低減効果および粘度指数に優れる潤滑剤組成物とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で示される単量体(a)および炭素数1~36の直鎖または分岐鎖アルキル基を有する(メタ)アクリロイル単量体(b)を構成単量体として含む共重合体(A)を含有してなる、フッ素系樹脂と金属との摺動部に使用される潤滑剤用摩擦調整剤;上記潤滑剤用摩擦調整剤と基油とを含有してなる、フッ素系樹脂と金属との摺動部に使用される潤滑剤組成物である。
【0008】
【化1】
[一般式(1)において、R
1は水素原子またはメチル基;Xは酸素原子またはイミノ基;Yは炭素数1~14の直鎖または分岐鎖のフルオロアルキル基である。]
【発明の効果】
【0009】
本発明の潤滑剤用摩擦調整剤は、PTFE樹脂等のフッ素系樹脂と金属との摺動において、潤滑剤組成物にフッ素系樹脂の耐摩耗性とフッ素系樹脂-金属間の摩擦低減効果との両方の性能を付与でき、本発明の潤滑剤用摩擦調整剤を含有してなる潤滑剤組成物は、フッ素系樹脂の耐摩耗性、フッ素系樹脂-金属間の摩擦低減効果および粘度指数に優れるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<潤滑剤用摩擦調整剤>
本発明の潤滑剤用摩擦調整剤は、下記一般式(1)で表される単量体(a)および炭素数1~36の直鎖または分岐鎖アルキル基を有する(メタ)アクリロイル単量体(b)を構成単量体として含む共重合体(A)を含有してなり、フッ素系樹脂と金属との摺動部に使用される。
【0011】
【化2】
[一般式(1)において、R
1は水素原子またはメチル基;Xは酸素原子またはイミノ基;Yは炭素数1~14の直鎖または分岐鎖のフルオロアルキル基である。]
なお、本発明において、「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイルおよび/またはメタクリロイル」を意味する。
【0012】
本発明において、フッ素系樹脂としては、フッ素原子を40重量%以上含む樹脂が含まれ、具体的には、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEと略記する)樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、パーフルオロアルコキシフッ素樹脂等が挙げられる。
金属としては、鉄鋼および非鉄鋼が含まれる。鉄鋼として具体的には、炭素鋼、合金鋼および鋳鉄等が挙げられる。非鉄鋼として具体的には、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン、マグネシウムおよびこれらの合金等が挙げられる。
【0013】
本発明の潤滑剤用摩擦調整剤は、単量体(a)および(メタ)アクリロイル単量体(b)を構成単量体として含む共重合体(A)を含有していることで、フッ素系樹脂に対しても、金属に対しても親和性が高く、金属およびフッ素系樹脂の両方に対する潤滑剤組成物の濡れ性を高めることができ、摩擦条件下でも金属と樹脂との間で油膜厚さを保持することができるので、フッ素系樹脂の耐摩耗性およびフッ素系樹脂-金属間の摩擦低減効果を発揮することができる。
【0014】
<共重合体(A)>
本発明の潤滑剤用摩擦調整剤は、上記一般式(1)で示される単量体(a)および炭素数1~36の直鎖または分岐鎖アルキル基を有する(メタ)アクリロイル単量体(b)を構成単量体として含む共重合体(A)を含有する。
【0015】
上記一般式(1)で示される単量体(a)について説明する。
一般式(1)におけるR1は、水素原子またはメチル基である。これらのうち、潤滑剤用摩擦調整剤の摩擦低減効果および潤滑剤用摩擦調整剤を含有してなる潤滑剤組成物の粘度指数向上効果の観点から好ましいのは、メチル基である。
【0016】
一般式(1)におけるXは、酸素原子またはイミノ基(-NH-)であり、これらのうち、潤滑剤用摩擦調整剤の摩擦低減効果の観点から、好ましくは酸素原子である。
【0017】
一般式(1)におけるYは炭素数1~14の直鎖または分岐鎖のフルオロアルキル基であり、炭素数1~14の直鎖もしくは分岐鎖のパーフルオロアルキル基(水素原子の全部がフッ素で置換されているアルキル基)または炭素数1~14の直鎖もしくは分岐鎖の部分フッ化アルキル基(水素原子の一部のみがフッ素で置換されているアルキル基)が含まれる。
炭素数1~14の直鎖もしくは分岐鎖のパーフルオロアルキル基としては、炭素数1~14の直鎖のパーフルオロアルキル基および炭素数3~14の分岐鎖のパーフルオロアルキル基等が挙げられる。
炭素数1~14の直鎖のパーフルオロアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基(-CF3)、ペンタフルオロエチル基(-CF2CF3)、ヘプタフルオロプロピル基(-(CF2)2CF3)、ノナフルオロブチル基(-(CF2)3CF3)、パーフルオロペンチル基(-(CF2)4CF3)、パーフルオロヘキシル基(-(CF2)5CF3)、パーフルオロヘプチル基(-(CF2)6CF3)、パーフルオロオクチル基(-(CF2)7CF3)、パーフルオロノニル基(-(CF2)8CF3)、パーフルオロデシル基(-(CF2)9CF3)等が挙げられる。
炭素数3~14の分岐鎖のパーフルオロアルキル基としては、例えば、-CF(CF3)2、-C(CF3)3、-CF(CF3)CF2CF3、-CF2CF(CF3)2、-CF(CF3)(CF2)2CF3、-CF(CF2CF3)CF2CF3、-CF2C(CF3)3、-CF(CF3)(CF2)3CF3、-CF(CF2CF3)(CF2)2CF3、-(CF2)2C(CF3)3、-CF(CF3)(CF2)4CF3、-CF(CF2CF2CF3)(CF2)2CF3、-(CF2)3C(CF3)3、-CF(CF3)(CF2)5CF3、-CF(CF2CF2CF2CF3)(CF2)2CF3、-(CF2)4C(CF3)3、-CF(CF3)(CF2)6CF3、-CF(CF2CF2CF2CF2CF3)(CF2)2CF3、-(CF2)5C(CF3)3、-CF(CF3)(CF2)7CF3、-CF(CF2CF2CF2CF2CF2CF3)(CF2)2CF3、-(CF2)6C(CF3)3等が挙げられる。
【0018】
炭素数1~14の直鎖もしくは分岐鎖の部分フッ化アルキル基としては、炭素数1~14の直鎖の部分フッ化アルキル基および炭素数3~14の分岐鎖の部分フッ化アルキル基等が挙げられる。
炭素数1~14の直鎖の部分フッ化アルキル基としては、2,2,2-トリフルオロエチル基(-CH2CF3)、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基(-CH2CF2CHF2)、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基(-CH2CF2CF3)、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル基(-CH2(CF2)3CHF2)、1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチル基(-CH2CH2(CF2)5CF3)および1H,1H-ノナデカフルオロデシル基(-CH2(CF2)8CF3)等が挙げられる。
炭素数3~14の分岐鎖の部分フッ化アルキル基としては、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル基(-CH(CF3)2)、-CH(CF3)CF2CF3、-CH2CH(CF3)2、-CH(CF3)(CF2)3CHF2、-CH(CF2CF3)(CF2)2CF3等が挙げられる。
一般式(1)におけるYにおいて、潤滑剤用摩擦調整剤の摩擦低減効果の観点から、炭素数1~12の直鎖のパーフルオロアルキル基および炭素数1~12の直鎖の部分フッ化アルキル基が好ましく、更に好ましくは炭素数1~10の直鎖のパーフルオロアルキル基および炭素数1~10の直鎖の部分フッ化アルキル基である。
単量体(a)は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0019】
単量体(a)中のフッ素原子の重量割合は、耐摩耗性の観点から、10~80重量%が好ましく、更に好ましくは20~70重量%である。
【0020】
単量体(a)は、例えば、(メタ)アクリル酸とフッ素原子を有する炭素数1~14の脂肪族モノアルコールとのエステル化反応、(メタ)アクリル酸とフッ素原子を有する炭素数1~14の脂肪族アミンとのアミド化反応、等によって得ることができる。なお本発明において、「(メタ)アクリル酸」は「アクリル酸および/またはメタクリル酸」を意味する。
また、単量体(a)は、アクリル酸2,2,2-トリフルオロエチル(製品名「ビスコート3F」)、アクリル酸2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(製品名「ビスコート4F」)、アクリル酸1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル(製品名「ビスコート8F」)、メタクリル酸1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル(製品名「ビスコート8FM」)、アクリル酸1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチル(製品名「ビスコート13F」)(上記いずれも大阪有機化学工業株式会社製)、メタクリル酸2,2,2-トリフルオロエチル(製品名「ライトエステルM-3F」、共栄社化学株式会社製)、メタクリル酸2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル(東京化成工業株式会社製)、メタクリル酸1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル(東京化成工業株式会社製)およびメタクリル酸1H,1H-ノナデカフルオロデシル(製品名「メタクリル酸1H,1H-パーフルオロ-N-デシル」、富士フイルム和光純薬株式会社製)等が市販されており、入手可能である。
【0021】
共重合体(A)において、構成単量体のうち単量体(a)の重量割合は、共重合体(A)を構成する単量体の合計重量に基づいて、摩擦低減効果の観点から、10~90重量%が好ましく、さらに好ましくは20~80重量%である。
【0022】
共重合体(A)は炭素数1~36の直鎖または分岐鎖アルキル基を有する(メタ)アクリロイル単量体(b)を構成単量体として含む。
(メタ)アクリロイル単量体(b)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(メタ)アクリロイル単量体(b)としては、炭素数1~36の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリロイル単量体(b1)および炭素数3~36の分岐鎖アルキル基を有する(メタ)アクリロイル単量体(b2)等が挙げられる。
【0023】
炭素数1~36の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリロイル単量体(b1)としては、例えば、炭素数1~36の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル{例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ヘプチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸n-ウンデシル、(メタ)アクリル酸n-ドデシル、(メタ)アクリル酸n-トリデシル、(メタ)アクリル酸n-テトラデシル、(メタ)アクリル酸n-ペンタデシル、(メタ)アクリル酸n-ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸n-ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸n-オクタデシル、(メタ)アクリル酸n-ノナデシル、(メタ)アクリル酸n-イコシル、(メタ)アクリル酸n-ヘンイコシル、(メタ)アクリル酸n-ドコシル、(メタ)アクリル酸n-トリコシル、(メタ)アクリル酸n-テトラコシル、(メタ)アクリル酸n-ペンタコシル、(メタ)アクリル酸n-ヘキサコシル、(メタ)アクリル酸n-ヘプタコシル、(メタ)アクリル酸n-オクタコシル、(メタ)アクリル酸n-ノナコシル、(メタ)アクリル酸n-トリアコンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘントリアコンチル、(メタ)アクリル酸n-ドトリアコンチル、(メタ)アクリル酸n-トリトリアコンチル、(メタ)アクリル酸n-テトラトリアコンチル、(メタ)アクリル酸n-ペンタトリアコンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキサトリアコンチル等}、炭素数1~36の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリルアミド{例えば、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-ペンチル(メタ)アクリルアミド、N-ヘキシル(メタ)アクリルアミド、N-ヘプチル(メタ)アクリルアミド、N-オクチル(メタ)アクリルアミド、N-ノニル(メタ)アクリルアミド、N-デシル(メタ)アクリルアミド、N-ウンデシル(メタ)アクリルアミド、N-ドデシル(メタ)アクリルアミド、N-トリデシル(メタ)アクリルアミド、N-テトラデシル(メタ)アクリルアミド、N-ペンタデシル(メタ)アクリルアミド、N-ヘキサデシル(メタ)アクリルアミド、N-ヘプタデシル(メタ)アクリルアミド、N-オクタデシル(メタ)アクリルアミド、N-ノナデシル(メタ)アクリルアミド、N-イコシル(メタ)アクリルアミド、N-ヘンイコシル(メタ)アクリルアミド、N-ドコシル(メタ)アクリルアミド、N-トリコシル(メタ)アクリルアミド、N-テトラコシル(メタ)アクリルアミド、N-ペンタコシル(メタ)アクリルアミド、N-ヘキサコシル(メタ)アクリルアミド、N-ヘプタコシル(メタ)アクリルアミド、N-オクタコシル(メタ)アクリルアミド、N-ノナコシル(メタ)アクリルアミド、N-トリアコンチル(メタ)アクリルアミド、N-ヘントリアコンチル(メタ)アクリルアミド、N-ドトリアコンチル(メタ)アクリルアミド、N-トリトリアコンチル(メタ)アクリルアミド、N-テトラトリアコンチル(メタ)アクリルアミド、N-ペンタトリアコンチル(メタ)アクリルアミド、N-ヘキサトリアコンチル(メタ)アクリルアミド等}が挙げられる。なお本発明において、「(メタ)アクリルアミド」は「アクリルアミドおよび/またはメタクリルアミド」を意味する。
(メタ)アクリロイル単量体(b1)のうち、潤滑剤用摩擦調整剤の摩擦低減効果の観点から、好ましくは炭素数1~24の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルであり、更に好ましくは炭素数1~18の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルである。
【0024】
炭素数3~36の分岐鎖アルキル基を有する(メタ)アクリロイル単量体(b2)としては、潤滑剤用摩擦調整剤の摩擦低減効果の観点から、好ましくは下記一般式(2)で示される単量体(b21)である。
【0025】
【化3】
[一般式(2)において、R
2は水素原子またはメチル基;X
2は酸素原子またはイミノ基;R
3およびR
4はそれぞれ独立に炭素数1~33の直鎖アルキル基であり、R
3およびR
4の合計炭素数は2~34である。]
【0026】
(メタ)アクリロイル単量体(b21)において、一般式(2)におけるR2は水素原子またはメチル基であり、潤滑剤組成物の粘度指数の観点から、メチル基が好ましい。
X2は酸素原子またはイミノ基であり、潤滑剤組成物の粘度指数の観点から、酸素原子が好ましい。
R3およびR4は、それぞれ独立に炭素数1~33の直鎖アルキル基である。具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ヘプチル基、n-ヘキシル基、n-ペンチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、n-エイコシル基、n-ヘンイコシル基、n-ドコシル基、n-トリコシル基、n-テトラコシル基、n-ペンタコシル基、n-ヘキサコシル基、n-ヘプタコシル基、n-オクタコシル基、n-ノナコシル基、n-トリアコンチル基、n-ヘントリアコンチル基、n-ドトリアコンチル基およびn-トリトリアコンチル基等が挙げられる。
R3およびR4の合計炭素数は2~34であり、潤滑剤用摩擦調整剤の摩擦低減効果の観点から、10~34が好ましく、更に好ましくは18~34であり、特に好ましくは22~34である。
【0027】
(メタ)アクリロイル単量体(b21)として具体的には、(メタ)アクリル酸2-オクチルデシル、(メタ)アクリル酸2-オクチルドデシル、(メタ)アクリル酸2-デシルテトラデシル、(メタ)アクリル酸2-ドデシルヘキサデシル、(メタ)アクリル酸2-テトラデシルオクタデシル、(メタ)アクリル酸2-ドデシルペンタデシル、(メタ)アクリル酸2-テトラデシルヘプタデシル、(メタ)アクリル酸2-ヘキサデシルヘプタデシル、(メタ)アクリル酸2-ヘキサデシルエイコシル、N-2-オクチルデシル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0028】
(メタ)アクリロイル単量体(b)のうち、潤滑剤用摩擦調整剤の摩擦低減効果の観点から、好ましくは炭素数12~36の直鎖または分岐鎖アルキル基を有する(メタ)アクリロイル単量体であり、更に好ましくは炭素数20~36の直鎖または分岐鎖アルキル基を有する(メタ)アクリロイル単量体であり、特に好ましくは炭素数24~36の直鎖または分岐鎖アルキル基を有する(メタ)アクリロイル単量体である。
【0029】
共重合体(A)において、構成単量体のうち炭素数1~36の直鎖または分岐鎖アルキル基を有する(メタ)アクリロイル単量体(b)の重量割合は、共重合体(A)を構成する単量体の合計重量に基づいて、摩擦低減効果の観点から、3~90重量%が好ましく、さらに好ましくは5~80重量%である。
【0030】
共重合体(A)において、構成単量体のうち単量体(a)と炭素数1~36の直鎖または分岐鎖アルキル基を有する(メタ)アクリロイル単量体(b)との重量比[(a)/(b)]は、潤滑剤組成物の粘度指数向上の観点から、90/10~10/90が好ましく、更に好ましくは90/10~20/80である。
【0031】
本発明における共重合体(A)は、構成単量体として、単量体(a)および炭素数1~36の直鎖または分岐鎖アルキル基を有する(メタ)アクリロイル単量体(b)以外に、その他の単量体として、単量体(a)および(メタ)アクリロイル単量体(b)以外の窒素原子含有単量体(c)、水酸基含有単量体(d)およびリン原子含有単量体(e)からなる群から選択された少なくとも1種を構成単量体として含む共重合体であってもよい。
【0032】
窒素原子含有単量体(c)としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N-(N’-モノアルキルアミノアルキル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-ビニルアセトアミドなどのアミド基含有単量体(c1);4-ニトロスチレンなどのニトロ基含有単量体(c2);アミノメチル(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート、N-メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの1~3級アミノ基含有単量体(c3);(メタ)アクリロニトリルなどのニトリル基含有単量体(c4)等が挙げられる。
【0033】
水酸基含有単量体(d)としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエテニル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(数平均分子量:130~500)モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0034】
リン原子含有単量体(e)としては、例えば、(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート、リン酸ビニルなどのリン酸エステル基含有単量体(e1);(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート、ビニルホスホン酸などのホスホノ基含有単量体(e2)等が挙げられる。
【0035】
本発明における共重合体(A)が、構成単量体として、単量体(a)および炭素数1~36の直鎖または分岐鎖アルキル基を有する(メタ)アクリロイル単量体(b)以外に、その他の単量体として単量体(a)および(メタ)アクリロイル単量体(b)以外の窒素原子含有単量体(c)、水酸基含有単量体(d)および/またはリン原子含有単量体(e)を構成単量体として含む場合、それらの重量割合は、共重合体(A)を構成する単量体の合計重量に基づいて、摩擦低減効果の観点から、30重量%以下が好ましく、20重量%以下がさらに好ましい。
【0036】
共重合体(A)の溶解性パラメーター(以下SP値と略記する)は、潤滑剤組成物の粘度指数および基油への溶解性の観点から、好ましくは7.0~9.2(cal/cm3)1/2であり、更に好ましくは7.1~8.9(cal/cm3)1/2である。
【0037】
本発明で用いるSP値は、Fedors法(Polymer Engineering and Science,Feburuary,1974,Vol.14、No.2 P.147~154)に記載の方法で算出される値である。
【0038】
共重合体(A)の重量平均分子量(以下Mwと略記)は、潤滑剤組成物の粘度指数向上の観点から好ましくは5,000~1,000,000であり、更に好ましくは10,000~750,000であり、最も好ましくは30,000~500,000である。
【0039】
共重合体(A)のMwは、以下の条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下GPCと略記する)によって測定することができる。
<共重合体(A)のMwの測定条件>
装置 :「HLC-8320GPC」[東ソー(株)製]
カラム :上流から順に、「TSKgel GMHXL」[東ソー(株)製]2本および「TSKgel Multipore HXL-M」[東ソー(株)製]1本を直列に接続
測定温度 :40℃
試料溶液 :試料濃度0.25重量%のテトラヒドロフラン溶液
溶液注入量:10.0μL
検出装置 :示差屈折率検出器
基準物質 :標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)12点(分子量:589、1,050、2,630、9,100、19,500、37,900、96,400、190,000、355,000、1,090,000、2,110,000、4,480,000)[東ソー(株)製]
共重合体(A)のMwは、重合時の温度、単量体濃度(溶媒濃度)、触媒量または連鎖移動剤量等により調整できる。
【0040】
共重合体(A)は、公知の製造方法によって得ることができる。共重合体(A)は、例えば上記の単量体を溶剤中で重合触媒存在下にラジカル重合することにより得られる。
【0041】
溶剤としては、例えば、トルエン、キシレンまたは炭素数9~10のアルキルベンゼンなどの芳香族溶剤、n-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロヘキサンおよびオクタンなどの脂肪族炭化水素(炭素数6~18)、2-プロパノール、1-ブタノールまたは2-ブタノールなどのアルコール系溶剤(炭素数3~8)、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤および後述の基油(鉱物油等)等が使用できる。潤滑剤用摩擦調整剤の耐摩耗性付与効果の観点から、好ましくは基油であり、更に好ましくは鉱物油である。
【0042】
重合触媒としては、アゾ系触媒[例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2-アゾビスイソブチレート等]、過酸化物系触媒[例えば、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-アミルパーオキシ2-エチルヘキサノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート、ジブチルパーオキシトリメチルアジペート、ベンゾイルパーオキシド、クミルパーオキシド、ラウリルパーオキシド等]等が使用できる。
【0043】
共重合体(A)の重合には、さらに、必要により連鎖移動剤[例えば、アルキル(炭素数2~20)メルカプタン等]を使用することもできる。
反応温度としては好ましくは50~140℃、更に好ましくは60~120℃である。
また、上記の溶液重合の他に、塊状重合、乳化重合または懸濁重合により得ることもできる。さらに、共重合体(A)の重合様式としては、ランダム付加重合または交互共重合のいずれでもよく、また、グラフト共重合またはブロック共重合のいずれでもよい。
【0044】
本発明の潤滑剤用摩擦調整剤は、上記共重合体(A)に加えて基油を含むことが好ましい。
本発明の潤滑剤用摩擦調整剤は、共重合体(A)と基油とを混合して製造してもよく、基油中で単量体(a)および(メタ)アクリロイル単量体(b)、必要によりその他の単量体を含む単量体組成物を重合して共重合体(A)を製造することにより得てもよい。
【0045】
基油として、具体的には、鉱物油(溶剤精製油、パラフィン油、イソパラフィンを含有する高粘度指数油、イソパラフィンの水素化分解による高粘度指数油、ナフテン油等)、合成潤滑油[炭化水素系合成潤滑油(ポリα-オレフィン系合成潤滑油、GTL基油等)、エステル系合成潤滑油等]およびこれらの混合物等が挙げられる。これらのうち、耐摩耗性の観点から、好ましくは鉱物油および合成潤滑油であり、合成潤滑油としてはポリα-オレフィン系合成潤滑油、GTL基油が好ましい。
【0046】
基油のSP値は、共重合体(A)の基油への溶解性の観点から、好ましくは6~10(cal/cm3)1/2であり、更に好ましくは7~9(cal/cm3)1/2である。
【0047】
潤滑剤用摩擦調整剤中の共重合体(A)の含有量は、耐摩耗性の観点から、潤滑剤用摩擦調整剤の重量を基準として、1~99重量%が好ましい。
潤滑剤用摩擦調整剤中の基油の含有量は、耐摩耗性の観点から、潤滑剤用摩擦調整剤の重量を基準として、1~99重量%が好ましい。
【0048】
本発明の潤滑剤用摩擦調整剤は、PTFE樹脂等のフッ素系樹脂と金属との摺動において、フッ素系樹脂の耐摩耗性とフッ素系樹脂-金属間の摩擦低減効果との両方の性能を付与できるので、フッ素系樹脂部および金属部を有する等速ジョイント、プロペラシャフト、ハブユニット、EPS(電動パワーステアリング)等に代表される各種自動車部品、滑り軸受、歯車、機械の継手部分をはじめとした、境界潤滑下で用いられる各種潤滑剤組成物用の添加剤として使用することができる。
各種潤滑剤組成物としては、例えば、ギヤ油(デファレンシャル油、工業用ギヤ油等)、MTF、変速機油[ATF、DCTF、chain-CVTF、belt-CVTF等]、トラクション油(トロイダル-CVTF等)、ショックアブソーバー油、パワーステアリング油、作動油(建設機械用作動油、工業用作動油等)、エンジン油(ガソリン用およびディーゼル用)等が好適である。特に、本発明の潤滑剤用摩擦調整剤は、粘度指数も向上させることができるので、各種潤滑剤組成物における粘度指数向上剤としても用いることができる。
【0049】
<潤滑剤組成物>
本発明の潤滑剤組成物は、フッ素系樹脂と金属との摺動部に使用されるものであり、上記本発明の潤滑剤用摩擦調整剤と基油とを含有する。
潤滑剤組成物中の共重合体(A)の含有量は、摩擦低減効果および粘度指数向上効果の観点から、潤滑剤組成物の重量を基準として、0.1~30重量%が好ましい。
潤滑剤組成物中の基油の含有量は、油膜保持性の観点から、潤滑剤組成物の重量を基準として、50~98重量%が好ましい。
【0050】
潤滑剤組成物中の基油の100℃における動粘度は、摩擦低減の観点から、1~15mm2/sが好ましい。
潤滑剤組成物中の基油の粘度指数は、90以上が好ましく、90~200がより好ましい。
なお、本発明において、100℃における動粘度は、JIS-K2283に準じて測定した値であり、粘度指数は、JIS-K2283に準じて測定した値である。
【0051】
基油の種類は特に限定されないが、例えば、鉱物油(溶剤精製油、パラフィン油、イソパラフィンを含有する高粘度指数油、イソパラフィンの水素化分解による高粘度指数油およびナフテン油等)、合成潤滑油[炭化水素系合成潤滑油(ポリα-オレフィン系合成潤滑油、GTL基油等)、エステル系合成潤滑油等]およびこれらの混合物が挙げられる。
これらのうち酸化安定性の観点から好ましいのは鉱物油、ポリα-オレフィン系合成潤滑油、GTL基油である。
【0052】
本発明の潤滑剤組成物は、上記本発明の潤滑剤用摩擦調整剤および基油以外に、各種添加剤を含有してもよい。添加剤としては、以下のものが挙げられる。
(1)清浄剤:
塩基性、過塩基性または中性の金属塩[スルフォネート類(石油スルフォネート、アルキルベンゼンスルフォネートおよびアルキルナフタレンスルフォネート等)、サリシレート類、フェネート類、ナフテネート類、カーボネート類、フォスフォネート類のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩等]およびこれらの混合物等;
(2)分散剤:
コハク酸イミド類(ビス-またはモノ-ポリブテニルコハク酸イミド類)、マンニッヒ縮合物、ボレート類等;
(3)酸化防止剤:
ヒンダードフェノール類、芳香族2級アミン類等;
(4)油性向上剤:
長鎖脂肪酸およびそれらのエステル(オレイン酸、オレイン酸エステル等)、長鎖アミンおよびそれらのアミド(オレイルアミン、オレイルアミド等)等;
(5)本発明の摩擦調整剤以外の摩擦調整剤:
モリブデン系化合物および亜鉛系化合物(モリブデンジチオフォスフェート、モリブデンジチオカーバメート、ジンクジアルキルジチオフォスフェート等)等;
(6)極圧剤:
硫黄系化合物(モノまたはジスルフィド、スルフォキシドおよび硫黄フォスファイド化合物)、フォスファイド化合物、塩素系化合物(塩素化パラフィン等)等;
(7)消泡剤:
シリコン油、金属石けん、脂肪酸エステル、フォスフェート化合物等;
(8)抗乳化剤:
4級アンモニウム塩(テトラアルキルアンモニウム塩等)、硫酸化油、フォスフェート(ポリオキシエチレン含有非イオン性界面活性剤のフォスフェート等)等;
(9)腐食防止剤:
窒素原子含有化合物(ベンゾトリアゾール、1,3,4-チオジアゾリル-2,5-ビスジアルキルジチオカーバメート等)等;
(10)流動点効果剤:
ポリアルキルメタクリレート、ポリアルキルアクリレート、ポリアルキルスチレン、ポリビニルアセテート等;
(11)着色剤:
アゾ化合物等。
【0053】
これらの添加剤(1)~(11)は、添加剤(1)~(11)のいずれか1種だけ添加してもよいし、必要に応じて2種以上を添加することもできる。また2種以上の添加剤を配合したものを性能添加剤、またはパッケージ添加剤と呼ぶこともあり、それを添加してもよい。添加剤(1)~(11)は、それぞれが1種の化合物だけ用いてもよいし、2種以上の化合物を用いてもよい。
添加剤のそれぞれの含有量は潤滑剤組成物全量を基準として0.01~15重量%であることが好ましい。また各添加剤を合計した含有量は潤滑剤組成物全量を基準として0.1~30重量%が好ましく、更に好ましくは0.3~20重量%である。
【0054】
本発明の潤滑剤組成物は、フッ素系樹脂の耐摩耗性向上、フッ素系樹脂-金属間の摩擦低減効果および粘度指数に優れているので、フッ素系樹脂部および金属部を有する等速ジョイント、プロペラシャフト、ハブユニット、EPS等に代表される各種自動車部品、滑り軸受、歯車、機械の継手部分をはじめとした、境界潤滑下で用いられる各種潤滑剤組成物として使用することができる。本発明の潤滑剤組成物は、例えば、ギヤ油(デファレンシャル油、工業用ギヤ油等)、MTF、変速機油[ATF、DCTF、belt-CVTF等]、トラクション油(トロイダル-CVTF等)、ショックアブソーバー油、パワーステアリング油、作動油(建設機械用作動油、工業用作動油等)およびエンジン油(ガソリン用およびディーゼル用)として好適に用いられる。
【0055】
本発明の潤滑剤組成物は、増ちょう剤を含有してもよい。増ちょう剤を含有した潤滑剤組成物をグリースということもある。増ちょう剤の種類は特に限定されるものではなく、グリースにおいて一般的に使用される増ちょう剤を問題なく使用することができる。例えば、石けん類{炭素数8~32の脂肪酸(飽和直鎖脂肪酸、不飽和直鎖脂肪酸、飽和分岐鎖脂肪酸および不飽和分岐鎖脂肪酸等)の金属塩が含まれ、具体的には、アルミニウム石けん、バリウム石けん、カルシウム石けん、リチウム石けん、ナトリウム石けん等の金属石けん、リチウムコンプレックス石けん、カルシウムコンプレックス石けん、アルミニウムコンプレックス石けん等の金属複合石けん等}、ジウレア、トリウレア、テトラウレア、ポリウレア等のウレア化合物や、シリカゲル、ベントナイト等の無機系化合物も好適に使用可能である。さらに、ウレタン化合物、ウレア・ウレタン化合物、テレフタルアミド酸ナトリウム等も好適に使用可能である。これらの増ちょう剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【実施例】
【0056】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0057】
<実施例1~9、比較例1~2>
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計および窒素導入管を備えた反応容器に、鉱物油(100℃の動粘度:2.6mm2/s、粘度指数:98、SP値:8.3)250重量部、表1に記載の単量体配合物250重量部、表1に記載の量の2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、連鎖移動剤として表1に記載の量のドデシルメルカプタンを投入し、窒素置換(気相酸素濃度100ppm)を行った後、密閉下、撹拌しながら76℃に昇温し、同温度で4時間重合反応を行った。120~130℃に昇温後、同温度で減圧下(0.027~0.040MPa)未反応の単量体を2時間かけて除去し、摩擦調整剤(R-1)~(R-9)および(S-1)~(S-2)を得た。得られた摩擦調整剤中の共重合体(A-1)~(A-9)および(A’-1)~(A’-2)のSP値を上記の方法で計算し、Mwを上記の方法で測定した。SP値およびMwの測定結果を表1に示す。
【0058】
表1に記載の単量体(a-1)~(a-4)、(b-1)~(b-7)、(c-1)、(d-1)の組成は、以下に記載した通りである。
(a-1):メタクリル酸2,2,2-トリフルオロエチル(共栄社化学株式会社製、「ライトエステルM-3F」)
(a-2):メタクリル酸2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル(東京化成工業株式会社製)
(a-3):メタクリル酸1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル(東京化成工業株式会社製)
(a-4):メタクリル酸1H,1H-ノナデカフルオロデシル(製品名「メタクリル酸1H,1H-パーフルオロ-N-デシル」、富士フイルム和光純薬株式会社製)
(b-1):メタクリル酸メチル
(b-2):メタクリル酸ブチル
(b-3):メタクリル酸n-ヘキサデシル
(b-4):メタクリル酸n-オクタデシル
(b-5):メタクリル酸2-n-デシルテトラデシル
(b-6):メタクリル酸2-n-ドデシルヘキサデシル
(b-7):メタクリル酸2-n-テトラデシルオクタデシル
(c-1):N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート
(d-1):2-ヒドロキシエチルメタクリレート
【0059】
【0060】
<実施例10~18、比較例3~4>
撹拌装置を備えたステンレス製容器に、摩擦調整剤(R-1)~(R-9)または(S-1)~(S-2)を30重量部に対して、80℃での動粘度が5.1±0.05(mm2/s)になるように、鉱物油(100℃の動粘度:2.3mm2/s、粘度指数:102、SP値:8.3)を適切な部数加えて混合し、実施例10~18および比較例3~4の潤滑剤組成物(V-1)~(V-9)および(W-1)~(W-2)を得た。潤滑剤組成物(V-1)~(V-9)および(W-1)~(W-2)の摩擦係数、摩耗痕幅、接触角、動粘度(100℃、80℃、40℃)、粘度指数を以下の方法で測定した。結果を表2に示す。
【0061】
【0062】
<潤滑剤組成物の摩擦係数>
機器:PCS Instruments HFRR
ディスク:PTFE樹脂製ディスク(厚み3mm、アズワン株式会社製、製品名「PTFEシート」)
ボール:Standard Upper Specimen 鋼球(直径6.0mm)
周波数 :10Hz
ストローク距離 :1mm
温度 :80℃
荷重 :200g
測定時間 :30分
上記条件にて潤滑剤組成物の摩擦評価試験を行い、摩擦係数(μ)を測定した。摩擦係数が小さいほど、摩擦低減効果が高いことを意味する。
【0063】
<摩耗痕幅>
Opto-digital Microscope DSX500(オリンパス社製)を用いて、上記摩擦評価試験後のPTFE樹脂製ディスク表面を観察し、摩耗痕幅の距離を計測した。この値が小さいほど、耐摩耗性が高いことを意味する。
【0064】
<接触角>
全自動界面張力計PD-W型(協和界面科学株式会社製)を用いて、厚さ1mmのPTFE樹脂製(アズワン株式会社製、製品名「PTFEシート」)シート上に、25℃、50%RHの雰囲気下で、作製した潤滑剤組成物を滴下し、接触角を測定した。この接触角の値が小さいほど、PTFE樹脂への濡れ性が高く、油膜を保持しやすいことを意味する。
【0065】
<潤滑剤組成物の動粘度の測定方法および粘度指数の計算方法>
ASTM D 445の方法で40℃、80℃および100℃の動粘度を測定し、ASTM D 2 270の方法で粘度指数を計算した。粘度指数の値が大きいほど粘度指数向上効果が高いことを意味する。
【0066】
表2の結果から、実施例1~9の摩擦調整剤を含有する実施例10~18の潤滑剤組成物は、摩擦係数が小さいことから、フッ素系樹脂-金属間の摩擦低減効果が高いことがわかる。また、摩耗痕幅が小さいことから、フッ素系樹脂に耐摩耗性を付与できることがわかる。さらに、実施例10~18の潤滑剤組成物は、接触角が低く、動粘度(100℃、80℃および40℃)、粘度指数もすぐれており、実施例10~18の潤滑剤用摩擦調整剤は、粘度指数向上剤としても有用であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の潤滑剤用摩擦調整剤は、PTFE樹脂等のフッ素系樹脂と金属との摺動において、フッ素系樹脂の耐摩耗性とフッ素系樹脂-金属間の摩擦低減効果との両方の性能を付与できるので、フッ素系樹脂部および金属部を有する等速ジョイント、プロペラシャフト、ハブユニット、EPS等に代表される各種自動車部品、滑り軸受、歯車、機械の継手部分をはじめとした、境界潤滑下で用いられる各種潤滑剤組成物用の添加剤として使用することができる。さらに、本発明の潤滑剤用摩擦調整剤は、粘度指数も向上することができるので、潤滑剤組成物における粘度指数向上剤としても用いることができる。
また、本発明の潤滑剤組成物は、フッ素系樹脂の耐摩耗性向上効果、フッ素系樹脂-金属間の摩擦低減効果および粘度指数に優れているので、フッ素系樹脂部および金属部を有する等速ジョイント、プロペラシャフト、ハブユニット、EPS等に代表される各種自動車部品、滑り軸受、歯車、機械の継手部分をはじめとした、境界潤滑下で用いられる各種潤滑剤組成物として使用することができる。本発明の潤滑剤組成物は、例えば、ギヤ油(デファレンシャル油、工業用ギヤ油等)、MTF、変速機油[ATF、DCTF、chain-CVTF、belt-CVTF等]、トラクション油(トロイダル-CVTF等)、ショックアブソーバー油、パワーステアリング油、作動油(建設機械用作動油、工業用作動油等)、エンジン油(ガソリン用およびディーゼル用)等として好適に用いられる。