(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】はんだ補給位置教示システム
(51)【国際特許分類】
G06T 19/00 20110101AFI20240523BHJP
H05K 3/34 20060101ALI20240523BHJP
B23K 3/06 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
G06T19/00 600
H05K3/34 505Z
B23K3/06 Z
(21)【出願番号】P 2020079974
(22)【出願日】2020-04-30
【審査請求日】2023-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ナラサンビ アヌスヤ
(72)【発明者】
【氏名】江嵜 弘健
【審査官】▲高▼橋 真之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-235704(JP,A)
【文献】国際公開第2014/016966(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 19/00
H05K 3/34
B23K 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者が視認している現実世界に合わせて仮想情報を表示可能な拡張現実デバイスを用いて、スキージがマスクを摺動して前記マスクを介して基板にはんだを印刷する印刷機に設けられている認識対象物を前記作業者が視認したときに、前記作業者の視野に含まれる前記印刷機を撮像して前記作業者の視野画像を取得する撮像部と、
前記撮像部によって取得された前記視野画像に含まれる前記認識対象物に基づいて、前記拡張現実デバイスを介して前記作業者が視認する現実の前記マスクにおいて前記作業者が前記はんだを補給すべき位置を含む前記仮想情報を生成する生成部と、
前記拡張現実デバイスを介して前記作業者が視認する現実の前記マスクの上に、前記生成部によって生成された前記仮想情報を重ねて表示する表示部と、
を備え、
前記生成部は、前記はんだの練り合わせ処理に必要な前記はんだから前記マスクの開口部までの離間距離が確保され、且つ、前記はんだの練り合わせ処理を開始する際に下降した前記スキージによって補給された前記はんだが分断されないように、前記作業者が前記はんだを補給すべき位置を設定す
るはんだ補給位置教示システム。
【請求項2】
前記生成部は、前記印刷機を駆動させる生産プログラムから取得した前記はんだの練り合わせ処理を開始する際の前記印刷機の座標系における前記マスクと前記スキージの位置関係を、前記拡張現実デバイスの座標系における前記マスクと前記スキージの位置関係に変換して、前記拡張現実デバイスを介して前記作業者が視認する前記マスクにおける前記スキージの当接位置を算出し、算出した前記スキージの当接位置を、前記作業者が前記はんだを補給すべき位置のスキージ側の限界とする請求項
1に記載のはんだ補給位置教示システム。
【請求項3】
前記スキージは、前記はんだの練り合わせ処理を開始する際に前記マスクと当接する当接位置から鉛直方向の上方に退避しており、
前記生成部は、前記視野画像に含まれる前記認識対象物の位置に基づいて、前記拡張現実デバイスを介して前記作業者が視認する前記マスクにおける前記スキージの当接位置を算出し、算出した前記スキージの当接位置を、前記作業者が前記はんだを補給すべき位置のスキージ側の限界とする請求項
1に記載のはんだ補給位置教示システム。
【請求項4】
作業者が視認している現実世界に合わせて仮想情報を表示可能な拡張現実デバイスを用いて、スキージがマスクを摺動して前記マスクを介して基板にはんだを印刷する印刷機に設けられている認識対象物を前記作業者が視認したときに、前記作業者の視野に含まれる前記印刷機を撮像して前記作業者の視野画像を取得する撮像部と、
前記撮像部によって取得された前記視野画像に含まれる前記認識対象物に基づいて、前記拡張現実デバイスを介して前記作業者が視認する現実の前記マスクにおいて前記作業者が前記はんだを補給すべき位置を含む前記仮想情報を生成する生成部と、
前記拡張現実デバイスを介して前記作業者が視認する現実の前記マスクの上に、前記生成部によって生成された前記仮想情報を重ねて表示する表示部と、
を備え、
前記表示部は、前記拡張現実デバイスを介して前記作業者が視認する前記マスクの上に平面状の領域を表示して、前記作業者が前記はんだを補給すべき位置を案内す
るはんだ補給位置教示システム。
【請求項5】
作業者が視認している現実世界に合わせて仮想情報を表示可能な拡張現実デバイスを用いて、スキージがマスクを摺動して前記マスクを介して基板にはんだを印刷する印刷機に設けられている認識対象物を前記作業者が視認したときに、前記作業者の視野に含まれる前記印刷機を撮像して前記作業者の視野画像を取得する撮像部と、
前記撮像部によって取得された前記視野画像に含まれる前記認識対象物に基づいて、前記拡張現実デバイスを介して前記作業者が視認する現実の前記マスクにおいて前記作業者が前記はんだを補給すべき位置を含む前記仮想情報を生成する生成部と、
前記拡張現実デバイスを介して前記作業者が視認する現実の前記マスクの上に、前記生成部によって生成された前記仮想情報を重ねて表示する表示部と、
を備え、
前記表示部は、前記拡張現実デバイスを介して前記作業者が視認する前記マスクの上に前記はんだが補給された状態を表示して、前記作業者が前記はんだを補給すべき位置、および、前記作業者が補給すべき前記はんだの量を案内す
るはんだ補給位置教示システム。
【請求項6】
作業者が視認している現実世界に合わせて仮想情報を表示可能な拡張現実デバイスを用いて、スキージがマスクを摺動して前記マスクを介して基板にはんだを印刷する印刷機に設けられている認識対象物を前記作業者が視認したときに、前記作業者の視野に含まれる前記印刷機を撮像して前記作業者の視野画像を取得する撮像部と、
前記撮像部によって取得された前記視野画像に含まれる前記認識対象物に基づいて、前記拡張現実デバイスを介して前記作業者が視認する現実の前記マスクにおいて前記作業者が前記はんだを補給すべき位置を含む前記仮想情報を生成する生成部と、
前記拡張現実デバイスを介して前記作業者が視認する現実の前記マスクの上に、前記生成部によって生成された前記仮想情報を重ねて表示する表示部と、
を備え、
前記表示部は、前記拡張現実デバイスを介して前記作業者が視認する前記マスクの上に前記作業者が前記はんだの補給作業を行う直前の印刷処理の終了時の前記スキージの位置を表示して、前記作業者が前記はんだを補給すべき位置を少なくとも案内す
るはんだ補給位置教示システム。
【請求項7】
作業者が視認している現実世界に合わせて仮想情報を表示可能な拡張現実デバイスを用いて、スキージがマスクを摺動して前記マスクを介して基板にはんだを印刷する印刷機に設けられている認識対象物を前記作業者が視認したときに、前記作業者の視野に含まれる前記印刷機を撮像して前記作業者の視野画像を取得する撮像部と、
前記撮像部によって取得された前記視野画像に含まれる前記認識対象物に基づいて、前記拡張現実デバイスを介して前記作業者が視認する現実の前記マスクにおいて前記作業者が前記はんだを補給すべき位置を含む前記仮想情報を生成する生成部と、
前記拡張現実デバイスを介して前記作業者が視認する現実の前記マスクの上に、前記生成部によって生成された前記仮想情報を重ねて表示する表示部と、
を備え、
前記表示部は、前記拡張現実デバイスを介して前記作業者が視認する前記マスクに前記はんだの練り合わせ処理を開始する際に当接する前記スキージを表示して、前記作業者が前記はんだを補給すべき位置のスキージ側の限界を案内す
るはんだ補給位置教示システム。
【請求項8】
作業者が視認している現実世界に合わせて仮想情報を表示可能な拡張現実デバイスを用いて、スキージがマスクを摺動して前記マスクを介して基板にはんだを印刷する印刷機に設けられている認識対象物を前記作業者が視認したときに、前記作業者の視野に含まれる前記印刷機を撮像して前記作業者の視野画像を取得する撮像部と、
前記撮像部によって取得された前記視野画像に含まれる前記認識対象物に基づいて、前記拡張現実デバイスを介して前記作業者が視認する現実の前記マスクにおいて前記作業者が前記はんだを補給すべき位置を含む前記仮想情報を生成する生成部と、
前記拡張現実デバイスを介して前記作業者が視認する現実の前記マスクの上に、前記生成部によって生成された前記仮想情報を重ねて表示する表示部と、
を備え、
前記表示部は、前記はんだの練り合わせ処理に必要な前記はんだから前記マスクの開口部までの最短距離を直線で表示して、前記作業者が前記はんだを補給すべき位置の前記マスクの開口部側の限界を案内す
るはんだ補給位置教示システム。
【請求項9】
前記認識対象物は、前記スキージを保持するスキージホルダ、前記スキージを移動させるスキージヘッド、および、前記基板を保持する基板保持部のうちの少なくとも一つに設けられる識別マーカーである請求項1
~請求項8のいずれか一項に記載のはんだ補給位置教示システム。
【請求項10】
前記識別マーカーには、白色の四角形と黒色の四角形が交互に配置される市松模様が付されている請求項
9に記載のはんだ補給位置教示システム。
【請求項11】
前記認識対象物は、前記マスクに設けられている複数の開口部、または、前記スキージである請求項1
~請求項8のいずれか一項に記載のはんだ補給位置教示システム。
【請求項12】
前記生成部は、前記視野画像に含まれる前記認識対象物の外観と、予め取得されている前記認識対象物の外観情報とを比較して、前記拡張現実デバイスの位置および前記作業者の視認方向を特定する請求項1~請求項
11のいずれか一項に記載のはんだ補給位置教示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、はんだ補給位置教示システムに関する技術を開示する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の基板生産支援システムは、生産情報管理装置と、拡張現実端末装置とを備えている。生産情報管理装置は、認識対象の生産情報を管理する。拡張現実端末装置は、撮像部と、マーカー認識部と、拡張現実表示部とを備えている。撮像部は、作業者の視野に入る認識対象を撮像して視野画像を取得する。マーカー認識部は、視野画像中にある識別マーカーであって認識対象に設けられた固有の識別マーカーを認識する。拡張現実表示部は、視野画像中にある識別マーカーによって特定された認識対象の生産情報を視野画像または作業者の視野に重ねて表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1には、作業者がはんだを補給する際に、作業者にはんだを補給すべき位置を教示することについて、記載も示唆もされていない。
【0005】
このような事情に鑑みて、本明細書は、作業者にはんだを補給すべき位置を教示可能なはんだ補給位置教示システムを開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、撮像部と、生成部と、表示部とを備えるはんだ補給位置教示システムを開示する。前記撮像部は、作業者が視認している現実世界に合わせて仮想情報を表示可能な拡張現実デバイスを用いて、スキージがマスクを摺動して前記マスクを介して基板にはんだを印刷する印刷機に設けられている認識対象物を前記作業者が視認したときに、前記作業者の視野に含まれる前記印刷機を撮像して前記作業者の視野画像を取得する。前記生成部は、前記撮像部によって取得された前記視野画像に含まれる前記認識対象物に基づいて、前記拡張現実デバイスを介して前記作業者が視認する現実の前記マスクにおいて前記作業者が前記はんだを補給すべき位置を含む前記仮想情報を生成する。前記表示部は、前記拡張現実デバイスを介して前記作業者が視認する現実の前記マスクの上に、前記生成部によって生成された前記仮想情報を重ねて表示する。
【発明の効果】
【0007】
上記のはんだ補給位置教示システムによれば、撮像部、生成部および表示部を備えるので、拡張現実デバイスを介して作業者が視認する現実のマスクの上に、はんだを補給すべき位置を含む仮想情報を重ねて表示することができる。つまり、上記のはんだ補給位置教示システムは、作業者にはんだを補給すべき位置を教示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】はんだを補給すべき位置と、スキージおよびマスクとの関係の一例を示す斜視図である。
【
図3】はんだ補給位置教示システムの制御ブロックの一例を示すブロック図である。
【
図4】はんだ補給位置教示システムによる制御手順の一例を示すフローチャートである。
【
図5】拡張現実デバイスの構成例を示す斜視図である。
【
図8】拡張現実デバイスの位置および作業者の視認方向を特定する方法の一例を示す模式図である。
【
図9】拡張現実デバイスを介して作業者が視認するマスクにおけるスキージの当接位置を算出する方法の一例を示す模式図である。
【
図11】表示部による他の表示例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.実施形態
1-1.印刷機WM1の構成例
はんだ補給位置教示システム50は、印刷機WM1に適用される。印刷機WM1は、スキージ34がマスク70を摺動してマスク70を介して基板90にはんだ80を印刷する印刷処理を実行する。印刷機WM1は、基板90に所定の対基板作業を行って基板製品を生産する対基板作業機に含まれる。印刷機WM1は、印刷検査機、部品装着機、リフロー炉および外観検査機などの対基板作業機と共に、基板生産ラインを構成している。
【0010】
図1に示すように、本実施形態の印刷機WM1は、基板搬送装置10と、マスク支持装置20と、スキージ移動装置30と、制御装置40とを備えている。本明細書では、基板90の搬送方向(
図1の紙面に垂直な方向)をX軸方向とする。また、水平面においてX軸方向に直交する印刷機WM1の前後方向(
図1の紙面において左右方向)であり印刷方向をY軸方向とする。さらに、X軸方向およびY軸方向に直交する鉛直方向(
図1の紙面において上下方向)をZ軸方向とする。
【0011】
基板搬送装置10は、印刷対象の基板90を搬送する。基板90は、回路基板であり、電子回路、電気回路、磁気回路などが形成される。基板搬送装置10は、印刷機WM1の基台BS0に設けられる。基板搬送装置10は、例えば、基板90の搬送方向(X軸方向)に延びるベルトコンベアによって、基板90を搬送する。基板搬送装置10は、印刷機WM1に搬入された基板90を保持する基板保持部11を備えている。基板保持部11は、マスク70の下面側の所定の位置において、マスク70の下面に基板90の上面を密着させた状態で基板90を保持する。
【0012】
マスク支持装置20は、基板搬送装置10の上方に配置される。マスク支持装置20は、一対のクランプ部材(
図1では、一のクランプ部材が図示されている。)によって、マスク70を支持する。一対のクランプ部材は、正面方向視の印刷機WM1の左側(
図1の紙面奥側であり、図示されている。)および右側(
図1の紙面手前側であり、同図において図示されていない。)に配置され、印刷方向(Y軸方向)に沿って延びるように形成されている。
【0013】
なお、
図1は、印刷機WM1を印刷方向(Y軸方向)に沿って切断した一部断面図であり、側面方向視の印刷機WM1の内部と、マスク70および基板90の断面とが模式的に示されている。マスク70には、基板90の配線パターンに対応した位置において貫通する開口部71が形成されている。マスク70は、例えば、外周縁に設けられた枠部材を介して、マスク支持装置20に支持される。
【0014】
スキージ移動装置30は、スキージ34をマスク70と垂直な鉛直方向(Z軸方向)に昇降させると共に、スキージ34をマスク70の上面において印刷方向(Y軸方向)に移動させる。スキージ移動装置30は、ヘッド駆動装置31と、スキージヘッド32と、一対の昇降装置33,33と、一対のスキージ34,34とを備えている。ヘッド駆動装置31は、印刷機WM1の上部に配置されている。ヘッド駆動装置31は、例えば、送りねじ機構などの直動機構によって、スキージヘッド32を印刷方向(Y軸方向)に移動させることができる。
【0015】
スキージヘッド32は、ヘッド駆動装置31の直動機構を構成する移動体にクランプして固定される。スキージヘッド32は、一対の昇降装置33,33を保持する。一対の昇降装置33,33の各々は、スキージホルダ33fによってスキージ34を保持し、互いに独立して駆動することができる。一対の昇降装置33,33の各々は、例えば、サーボモータ、エアーシリンダなどのアクチュエータを駆動させて、スキージホルダ33fを昇降させ、スキージホルダ33fに保持されているスキージ34を昇降させる。
【0016】
スキージ34は、マスク70の上面を摺動して、マスク70の上面に供給されたはんだ80をマスク70に沿って移動させる。はんだ80は、クリームはんだ(はんだペースト)を用いることができる。はんだ80がマスク70の開口部71から基板90に刷り込まれて、マスク70の下面側に配置された基板90に、はんだ80が印刷される。本実施形態では、一対のスキージ34,34の各々は、印刷方向(Y軸方向)に直交する基板90の搬送方向(X軸方向)に沿って延びるように形成されている板状部材である。
【0017】
一対のスキージ34,34のうちの前側(
図1の紙面左側)のスキージ34は、前側から後側に向かってはんだ80を移動させる印刷処理に用いられ、印刷機WM1の前側から後側に向かう方向を進行方向とする。一対のスキージ34,34のうちの後側(
図1の紙面右側)のスキージ34は、後側から前側に向かってはんだ80を移動させる印刷処理に用いられ、印刷機WM1の後側から前側に向かう方向を進行方向とする。また、いずれのスキージ34においても、進行方向と反対の方向を後退方向とする。
【0018】
一対のスキージ34,34の各々は、進行側に位置する前面部が下方を向くように傾斜してスキージホルダ33fに保持されている。換言すれば、一対のスキージ34,34の各々は、後退側に位置する背面部が上方を向くように傾斜してスキージホルダ33fに保持されている。一対のスキージ34,34の各々の傾斜角度は、昇降装置33の下部に設けられている調整機構によって調整される。
【0019】
制御装置40は、公知の演算装置と、
図3に示す記憶装置40mを備えており、制御回路が構成されている。制御装置40は、ネットワークを介して管理装置と通信可能に接続されており、各種データを送受信することができる。制御装置40は、生産プログラム、各種センサによって検出された検出結果などに基づいて、基板搬送装置10、マスク支持装置20およびスキージ移動装置30を駆動制御する。
【0020】
制御装置40は、例えば、スキージ移動装置30を駆動制御する。制御装置40は、記憶装置40mに記憶されている各種情報および印刷機WM1に設けられている各種センサの検出結果を取得する。記憶装置40mは、例えば、ハードディスク装置などの磁気記憶装置、フラッシュメモリなどの半導体素子を使用した記憶装置を用いることができる。記憶装置40mには、印刷機WM1を駆動させる生産プログラムなどが記憶される。
【0021】
制御装置40は、上記の各種情報および検出結果などに基づいて、スキージ移動装置30に制御信号を送出する。これにより、スキージヘッド32に保持されている一対のスキージ34,34の印刷方向(Y軸方向)の位置および鉛直方向(Z軸方向)の位置(高さ)、並びに、移動速度および傾斜角度が制御される。なお、
図1に示すように、制御装置40は、表示装置41を備えている。表示装置41は、印刷機WM1の作業状況を表示することができる。また、表示装置41は、タッチパネルにより構成されており、作業者による種々の操作を受け付ける入力装置としても機能する。
【0022】
1-2.はんだ80の練り合わせ処理の一例
基板搬送装置10によって基板90が搬入され、基板90がマスク70の下面側の所定位置に配置されると、はんだ80の練り合わせ処理が実行される。具体的には、印刷処理の開始時には、マスク70の上面に、はんだ80が供給される。
図1に示すように、はんだ80が供給されると、練り合わせ処理によって、はんだロールが形成される。
【0023】
はんだロールは、一対のスキージ34,34が交互に進行方向に移動して、ペースト状のクリームはんだが練り合わされた状態をいう。はんだ80は、練り合わせ処理によって、スキージ34の長さ方向(基板90の搬送方向であり、X軸方向)に延伸し、且つ、印刷方向(Y軸方向)の幅が概ね均一になり、はんだロールが形成される。はんだ80の練り合わせ処理が完了すると、既述した印刷処理が実行される。
【0024】
1-3.はんだ補給位置教示システム50の構成例
スキージ34がマスク70を摺動してマスク70を介して基板90にはんだ80を印刷する印刷機WM1では、作業者がはんだ80を補給する場合がある。
図2は、はんだ80を補給すべき位置50sと、スキージ34およびマスク70との関係の一例を示している。
【0025】
マスク70上の適切な位置にはんだ80が補給されないと、はんだ80の練り合わせ処理に必要なはんだ80からマスク70の開口部71までの離間距離L0が確保されない可能性がある。また、マスク70上の適切な位置にはんだ80が補給されないと、はんだ80の練り合わせ処理を開始する際に下降した破線で示すスキージ34によって補給されたはんだ80が分断され、印刷処理に用いられるはんだ80の量が減少する可能性がある。これらの結果、印刷品質の低下が生じる可能性がある。
【0026】
そこで、本実施形態の印刷機WM1には、はんだ補給位置教示システム50が設けられている。はんだ補給位置教示システム50は、作業者にはんだ80を補給すべき位置50sを教示する。
図3に示すように、はんだ補給位置教示システム50は、撮像部51と、生成部52と、表示部53とを備えている。撮像部51および表示部53は、拡張現実デバイス60に設けられる。生成部52は、種々の制御装置に設けることができる。本実施形態の生成部52は、印刷機WM1の制御装置40に設けられている。生成部52は、印刷機WM1を含む複数の対基板作業機を管理する管理装置に設けることもできる。生成部52は、クラウド上に形成することもできる。
【0027】
また、本実施形態のはんだ補給位置教示システム50は、
図4に示すフローチャートに従って、制御を実行する。撮像部51は、ステップS11に示す処理を行う。生成部52は、ステップS12およびステップS13に示す処理を行う。表示部53は、ステップS14に示す処理を行う。
【0028】
1-3-1.撮像部51
撮像部51は、拡張現実デバイス60を用いて、印刷機WM1に設けられている認識対象物50mを作業者が視認したときに、作業者の視野に含まれる印刷機WM1を撮像して作業者の視野画像50pを取得する(
図4に示すステップS11)。
【0029】
拡張現実デバイス60は、作業者が視認している現実世界に合わせて仮想情報を表示可能な機器をいう。作業者が視認している現実世界に合わせて仮想情報を表示する技術は、例えば、拡張現実(Augmented Reality)、複合現実(Mixed Reality)などと呼ばれている。拡張現実デバイス60は、作業者が視認している現実世界に合わせて仮想情報を表示することができれば良く、上記技術で採用される公知の機器を用いることができる。
【0030】
図5は、拡張現実デバイス60の構成例を示している。同図に示すように、本実施形態の拡張現実デバイス60は、眼鏡状に形成されている。作業者は、眼鏡と同様に拡張現実デバイス60を身につける(以下、拡張現実デバイス60を装備するという。)ことにより、拡張現実デバイス60を使用することができる。拡張現実デバイス60は、少なくとも一つの撮像部51(同図では、一つの撮像部51)と、少なくとも一つの表示部53(同図では、二つの表示部53,53)と、無線通信部60wとを備えている。
【0031】
撮像部51は、公知の撮像装置を用いることができる。本実施形態の撮像部51は、二つの表示部53,53の間に設けられており、撮像範囲は、作業者の視野に合わせて設定されている。撮像部51は、印刷機WM1に設けられている認識対象物50mを作業者が視認したときに、作業者の視野に含まれる印刷機WM1を撮像して作業者の視野画像50pを取得する。
【0032】
図6は、作業者の視野画像50pの一例を示している。例えば、同図に示す視野画像50pには、実線で示すスキージ34を保持するスキージホルダ33fと、マスク70とが撮像されている。スキージ34およびスキージホルダ33fは、作業者によるはんだ80の補給作業時に、マスク70に対して鉛直方向(Z軸方向)の上方に退避している。スキージ34を保持するスキージホルダ33fに設けられる識別マーカー50kは、認識対象物50mに含まれる。
【0033】
図6および
図7に示すように、本実施形態の識別マーカー50kには、白色の四角形50k1と黒色の四角形50k2が交互に配置される市松模様が付されている。識別マーカー50kは、例えば、一次元コード、二次元コードなどであっても良い。また、
図1に示すように、認識対象物50mには、スキージ34を移動させるスキージヘッド32に設けられる識別マーカー50kが含まれても良い。さらに、認識対象物50mには、基板90を保持する基板保持部11に設けられる識別マーカー50kが含まれても良い。
【0034】
このように、識別マーカー50kは、スキージ34とマスク70の位置関係を特定可能な部位に設けることができる。また、撮像部51は、上記の複数の識別マーカー50kを同時に撮像することもできる。これにより、スキージ34とマスク70の位置関係を特定する際の精度が向上する。このように、認識対象物50mには、スキージ34を保持するスキージホルダ33f、スキージ34を移動させるスキージヘッド32、および、基板90を保持する基板保持部11のうちの少なくとも一つに設けられる識別マーカー50kが含まれると良い。
【0035】
また、
図6に示すように、認識対象物50mには、マスク70に設けられている複数の開口部71、または、スキージ34が含まれても良い。この形態では、生成部52は、撮像部51によって取得された視野画像50pに含まれる複数の開口部71の配置に基づいて、識別マーカー50kと同様にして、スキージ34とマスク70の位置関係を特定することができる。また、生成部52は、撮像部51によって取得された視野画像50pに含まれるスキージ34の特徴部位の配置に基づいて、識別マーカー50kと同様にして、スキージ34とマスク70の位置関係を特定することができる。
【0036】
図5に示すように、二つの表示部53,53は、作業者が拡張現実デバイス60を装備したときに、作業者の両目に対応する位置に、それぞれ設けられている。作業者は、拡張現実デバイス60を装備した状態で、二つの表示部53,53を介して、現実世界を視認することができる。また、作業者は、拡張現実デバイス60を装備した状態で、二つの表示部53,53を介して、二つの表示部53,53が表示する仮想情報を視認することができる。
【0037】
無線通信部60wは、例えば、無線LAN(Local Area Network)などの公知の無線通信を用いて、撮像部51によって撮像された視野画像50pの画像データを制御装置40に送信することができる。また、無線通信部60wは、公知の無線通信を用いて、生成部52によって生成された仮想情報を制御装置40から受信することができる。このように、無線通信部60wは、制御装置40と拡張現実デバイス60との間で、視野画像50pの画像データおよび仮想情報を含む種々の情報、制御装置40と拡張現実デバイス60との間の種々の制御情報などを送受信することができる。
【0038】
1-3-2.生成部52
生成部52は、撮像部51によって取得された視野画像50pに含まれる認識対象物50mに基づいて、拡張現実デバイス60を介して作業者が視認する現実のマスク70において作業者がはんだ80を補給すべき位置50sを含む仮想情報を生成する。
【0039】
例えば、認識対象物50mと拡張現実デバイス60との間の距離が短くなるほど、視野画像50pに含まれる認識対象物50mの大きさは、大きくなる。逆に、認識対象物50mと拡張現実デバイス60との間の距離が長くなるほど、視野画像50pに含まれる認識対象物50mの大きさは、小さくなる。また、認識対象物50mと拡張現実デバイス60との間の距離が同じであっても、作業者の視認方向によって、視野画像50pに含まれる認識対象物50mの形状および大きさが変動する。
【0040】
そこで、生成部52は、視野画像50pに含まれる認識対象物50mの外観(例えば、所定部位の配置、大きさ、形状など)に基づいて、拡張現実デバイス60の位置および作業者の視認方向を特定することができる。具体的には、生成部52は、視野画像50pに含まれる認識対象物50mの外観と、予め取得されている認識対象物50mの外観情報とを比較して、拡張現実デバイス60の位置および作業者の視認方向を特定することができる(
図4に示すステップS12)。
【0041】
認識対象物50mの種別は、認識対象物50mの外観情報に含まれる。本実施形態の認識対象物50mには、識別マーカー50kが含まれる。例えば、
図7に示す白色の四角形50k1と黒色の四角形50k2が交互に配置される市松模様が識別マーカー50kに付されていることは、認識対象物50mの外観情報に含まれる。また、例えば、視野画像50pに含まれる認識対象物50mの外観と比較するテンプレート(拡張現実デバイス60の位置および作業者の視認方向ごとの外観情報)は、認識対象物50mの外観情報に含まれる。さらに、視野画像50pに含まれる認識対象物50mの所定部位の配置と、基準となる拡張現実デバイス60の位置および作業者の視認方向との関係は、認識対象物50mの外観情報に含まれる。
【0042】
これらの認識対象物50mの外観情報は、種々の記憶装置に予め記憶させておくことができる。本実施形態では、認識対象物50mの外観情報は、制御装置40の記憶装置40mに記憶されている。また、記憶装置40mには、認識対象物50mを識別する識別情報と、認識対象物50mが設けられている印刷機WM1を識別する識別情報との組み合わせに関する情報(ペアリング情報)が予め記憶されている。
【0043】
例えば、生成部52は、視野画像50pに含まれる認識対象物50mの外観と、既述したテンプレートを比較して、視野画像50pに含まれる認識対象物50mの外観と一致するテンプレートを抽出する。また、生成部52は、ペアリング情報から認識対象物50mが設けられている印刷機WM1を認識することができる。さらに、生成部52は、抽出したテンプレートに規定されている拡張現実デバイス60の位置および作業者の視認方向に基づいて、拡張現実デバイス60の位置および作業者の視認方向を特定することができる。上述した特定方法は、テンプレートマッチングと呼ばれる。
【0044】
生成部52は、視野画像50pに含まれる認識対象物50mの所定部位の配置と、基準となる拡張現実デバイス60の位置および作業者の視認方向との関係に基づいて、拡張現実デバイス60の位置および作業者の視認方向を特定することもできる。例えば、
図7に示す識別マーカー50kから所定距離、離れた作業者が、拡張現実デバイス60を用いて一の方向から識別マーカー50kを視認したと仮定する。生成部52は、このときの作業者の視野画像50pに基づいて、白色の四角形50k1および黒色の四角形50k2の外形線を抽出し、複数(同図では、四つ)の交点50k3を取得する。
図8の実線で示す四角形は、生成部52によって取得された四つの交点50k3を直線で接続した四角形を示している。
【0045】
次に、識別マーカー50kから所定距離より短い距離、離れた作業者が、拡張現実デバイス60を用いて他の一の方向から識別マーカー50kを視認したと仮定する。生成部52は、このときの作業者の視野画像50pに基づいて、白色の四角形50k1および黒色の四角形50k2の外形線を抽出し、同様に四つの交点50k3を取得する。
図8の破線で示す四角形は、生成部52によって取得された四つの交点50k3を直線で接続した四角形を示している。
【0046】
例えば、
図8の実線で示す四角形を基準にすると、
図8の破線で示す四角形の大きさは、実線で示す四角形と比べて大きく、拡張現実デバイス60の位置は、基準と比べて、識別マーカー50kに近いことが分かる。また、
図8の実線で示す四角形を含む平面の法線と、破線で示す四角形を含む平面の法線とのなす角度から、基準に対する作業者の視認方向のずれが分かる。このように、生成部52は、視野画像50pに含まれる認識対象物50mの所定部位(上記の例では、四つの交点50k3)の配置と、基準となる拡張現実デバイス60の位置および作業者の視認方向との関係に基づいて、拡張現実デバイス60の位置および作業者の視認方向を特定することができる。
【0047】
本実施形態の識別マーカー50kには、白色の四角形50k1と黒色の四角形50k2が交互に配置される市松模様が付されている。白色の四角形50k1と黒色の四角形50k2は、輝度の差が最も大きい。そのため、生成部52は、白色の四角形50k1および黒色の四角形50k2の外形線を抽出し易く、視野画像50pに含まれる認識対象物50mの所定部位(複数の交点50k3)の配置を取得し易い。
【0048】
なお、識別マーカー50kについて上述されていることは、マスク70に設けられている複数の開口部71についても同様に言える。つまり、複数の開口部71の配置は、複数の交点50k3の配置に相当する。また、識別マーカー50kについて上述されていることは、スキージ34についても同様に言える。つまり、スキージ34の特徴部位の配置は、複数の交点50k3の配置に相当する。例えば、スキージ34の形状、模様、色彩およびこれらの結合のうちの少なくとも一つが他の部位と顕著に異なる部位は、スキージ34の特徴部位に含まれる。
【0049】
生成部52は、はんだ80の練り合わせ処理に必要なはんだ80からマスク70の開口部71までの離間距離L0が確保され、且つ、はんだ80の練り合わせ処理を開始する際に下降したスキージ34によって補給されたはんだ80が分断されないように、作業者がはんだ80を補給すべき位置50sを設定する(
図4に示すステップS13)。なお、離間距離L0は、シミュレーション、実機による検証などによって予め取得しておくことができる。離間距離L0は、はんだ80の種類(例えば、粘度など)に応じて設定することもできる。例えば、生成部52は、はんだ80の粘度が高くなるほど、離間距離L0を長くする。
【0050】
また、例えば、生成部52は、印刷機WM1を駆動させる生産プログラムから取得したはんだ80の練り合わせ処理を開始する際の印刷機WM1の座標系におけるマスク70とスキージ34の位置関係を、拡張現実デバイス60の座標系におけるマスク70とスキージ34の位置関係に変換する。そして、生成部52は、拡張現実デバイス60を介して作業者が視認するマスク70におけるスキージ34の当接位置P0を算出する。生成部52は、算出したスキージ34の当接位置P0を、作業者がはんだ80を補給すべき位置50sのスキージ34側の限界とすることができる。
【0051】
図9に示すように、スキージ34およびスキージホルダ33fは、作業者によるはんだ80の補給作業時に、マスク70に対して鉛直方向(Z軸方向)の上方に退避している。はんだ80の補給作業が終了すると、スキージ34およびスキージホルダ33fは、破線の矢印で示すように印刷方向(Y軸方向)に移動し、鉛直方向(Z軸方向)の下方に移動して、マスク70に当接する。そして、はんだ80の練り合わせ処理が開始される。上記のスキージ34およびスキージホルダ33fの移動は、印刷機WM1を駆動させる生産プログラムに規定されている。
【0052】
そこで、生成部52は、例えば、記憶装置40mに記憶されている生産プログラムから、はんだ80の練り合わせ処理を開始する際の印刷機WM1の座標系におけるマスク70とスキージ34の位置関係を取得する。
図9に示す例では、印刷機WM1の座標系は、X軸方向(基板90の搬送方向)、Y軸方向(印刷方向)およびZ軸方向(鉛直方向)によって規定されている。
【0053】
また、撮像部51によって視野画像50pが取得されたときのスキージ34の所定部位の位置P11は、X軸方向の座標X11、Y軸方向の座標Y11およびZ軸方向の座標Z11によって表されている。さらに、はんだ80の練り合わせ処理を開始する際のスキージ34の所定部位の位置P12は、X軸方向の座標X12、Y軸方向の座標Y12およびZ軸方向の座標Z12によって表されている。
【0054】
この場合、生成部52は、生産プログラムから印刷機WM1の座標系における位置P12を取得する。また、生成部52は、生産プログラムに規定されているスキージ34の情報からスキージ34の長さD0(基板90の搬送方向(X軸方向)の長さ)を取得する。これらにより、生成部52は、はんだ80の練り合わせ処理を開始する際の印刷機WM1の座標系におけるマスク70とスキージ34の位置関係を取得することができる。
【0055】
生成部52は、はんだ80の練り合わせ処理を開始する際の印刷機WM1の座標系におけるマスク70とスキージ34の位置関係を、拡張現実デバイス60の座標系におけるマスク70とスキージ34の位置関係に変換する。
図9に示す例では、拡張現実デバイス60の座標系は、X0軸方向(基板90の搬送方向)、Y0軸方向(印刷方向)およびZ0軸方向(鉛直方向)によって規定されている。
【0056】
生成部52は、印刷機WM1の座標系と拡張現実デバイス60の座標系の位置関係に基づいて、印刷機WM1の座標系における位置P12を、拡張現実デバイス60の座標系における位置P12に変換する。具体的には、拡張現実デバイス60の座標系における位置P12は、拡張現実デバイス60の座標系の原点0から印刷機WM1の座標系の原点0に延びるベクトルと、印刷機WM1の座標系の原点0から位置P12に延びるベクトルとを加算したベクトルによって表される。
【0057】
図9では、生成部52によって変換された位置P12は、X0軸方向の座標X22、Y0軸方向の座標Y22およびZ0軸方向の座標Z22によって表されている。また、生成部52は、特定した拡張現実デバイス60の位置および作業者の視認方向に合わせて、スキージ34の長さD0(基板90の搬送方向(X軸方向)の長さ)およびマスク70に対する傾きを調整する。
【0058】
これらにより、生成部52は、拡張現実デバイス60の座標系におけるマスク70とスキージ34の位置関係を取得することができ、拡張現実デバイス60を介して作業者が視認するマスク70におけるスキージ34の当接位置P0を算出することができる。
図9に示すように、スキージ34の当接位置P0は、はんだ80の練り合わせ処理を開始する際に下降した破線で示すスキージ34によって補給されたはんだ80が分断されない境界線になる。よって、生成部52は、算出したスキージ34の当接位置P0を、作業者がはんだ80を補給すべき位置50sのスキージ34側の限界とすることができる。
【0059】
なお、生産プログラムに規定されている上記のスキージ34およびスキージホルダ33fの移動経路および位置は、指令値(目標値)である。そのため、生成部52は、例えば、スキージヘッド32の位置検出情報(例えば、エンコーダの出力信号)などに基づいて、生産プログラムから取得したはんだ80の練り合わせ処理を開始する際のマスク70とスキージ34の位置関係を補正することもできる。
【0060】
生成部52は、視野画像50pに含まれる認識対象物50mの位置に基づいて、拡張現実デバイス60を介して作業者が視認するマスク70におけるスキージ34の当接位置P0を算出し、算出したスキージ34の当接位置P0を、作業者がはんだ80を補給すべき位置50sのスキージ34側の限界とすることもできる。但し、この形態のスキージ34は、はんだ80の練り合わせ処理を開始する際にマスク70と当接する当接位置P0から鉛直方向(Z軸方向)の上方に退避しているものとする。
【0061】
この形態では、はんだ80の補給作業から、はんだ80の練り合わせ処理に移行する際に、スキージ34の印刷方向(Y軸方向)の移動が生じない。そのため、生成部52は、視野画像50pに含まれる認識対象物50mの位置に基づいて、既述した位置P11を鉛直方向(Z軸方向)の下方に移動させることにより、拡張現実デバイス60を介して作業者が視認するマスク70におけるスキージ34の当接位置P0を算出することができる。
【0062】
なお、この形態では、認識対象物50mは、スキージ34の長さD0(基板90の搬送方向(X軸方向)の長さ)を推定可能に設けられる。例えば、認識対象物50mである識別マーカー50kは、スキージ34において基板90の搬送方向(X軸方向)に沿って延びるように形成されていると良い。また、生成部52は、視野画像50pに含まれる複数の認識対象物50mの位置関係に基づいて、拡張現実デバイス60を介して作業者が視認するマスク70におけるスキージ34の当接位置P0を算出すると良い。これにより、スキージ34の当接位置P0の算出誤差が低減される。
【0063】
1-3-3.表示部53
表示部53は、拡張現実デバイス60を介して作業者が視認する現実のマスク70の上に、生成部52によって生成された仮想情報を重ねて表示する(
図4に示すステップS14)。
【0064】
例えば、
図10に示すように、表示部53は、拡張現実デバイス60を介して作業者が視認するマスク70の上に平面状の領域AR0を表示して、作業者がはんだ80を補給すべき位置50sを案内する。また、
図11に示すように、表示部53は、拡張現実デバイス60を介して作業者が視認するマスク70の上にはんだ80が補給された状態を表示して、作業者がはんだ80を補給すべき位置50s、および、作業者が補給すべきはんだ80の量を案内することもできる。
【0065】
さらに、印刷処理の終了時に残存するはんだ80に合わせて、はんだ80の補給作業を行う場合がある。この場合、表示部53は、拡張現実デバイス60を介して作業者が視認するマスク70の上に作業者がはんだ80の補給作業を行う直前の印刷処理の終了時のスキージ34の位置50nを表示して、作業者がはんだ80を補給すべき位置50sを少なくとも案内することができる。また、
図10および
図11に示すように、表示部53は、既述した表示と合わせて、スキージ34の位置50nを表示することもできる。
【0066】
表示部53は、拡張現実デバイス60を介して作業者が視認するマスク70にはんだ80の練り合わせ処理を開始する際に当接するスキージ34を表示して、作業者がはんだ80を補給すべき位置50sのスキージ34側の限界を案内することもできる。また、表示部53は、はんだ80の練り合わせ処理に必要なはんだ80からマスク70の開口部71までの最短距離を直線50lで表示して、作業者がはんだ80を補給すべき位置50sのマスク70の開口部71側の限界を案内することもできる。上記最短距離は、既述した離間距離L0に相当する。
図10および
図11に示すように、いずれの場合も、表示部53は、既述した表示と合わせて、上述した表示を行うこともできる。
【0067】
2.その他
既述したように、生成部52は、拡張現実デバイス60を介して作業者が視認する現実のマスク70において作業者がはんだ80を補給すべき位置50sを含む仮想情報を生成する。そして、表示部53は、拡張現実デバイス60を介して作業者が視認する現実のマスク70の上に、生成部52によって生成された仮想情報を重ねて表示する。
【0068】
しかしながら、生成部52は、種々の仮想情報を生成することができる。例えば、マスク70の清掃が行われた後に、はんだ80を補給する場合が想定される。この場合、生成部52は、撮像部51によって取得された視野画像50pに基づいて、マスク70にはんだ80が残存しているか否かを判断する。はんだ80が残存する場合、生成部52は、拡張現実デバイス60を介して作業者が視認する現実のマスク70において、マスク70の清掃を案内する仮想情報を生成する。
【0069】
例えば、生成部52は、拡張現実デバイス60を介して作業者が視認する現実のマスク70において、はんだ80が残存する領域を示す仮想情報を生成する。そして、表示部53は、拡張現実デバイス60を介して作業者が視認する現実のマスク70の上に、はんだ80が残存する領域を示す仮想情報を重ねて表示する。また、表示部53は、マスク70の清掃が必要である旨を表示することができる。これにより、作業者は、マスク70の清掃を行うことができ、マスク70の清掃が行われた後に、はんだ80を補給することができる。
【0070】
3.はんだ補給位置教示方法
はんだ補給位置教示システム50について既述されていることは、はんだ補給位置教示方法についても同様に言える。具体的には、はんだ補給位置教示方法は、撮像工程と、生成工程と、表示工程とを備えている。撮像工程は、撮像部51が行う制御に相当する。生成工程は、生成部52が行う制御に相当する。表示工程は、表示部53が行う制御に相当する。
【0071】
4.実施形態の効果の一例
はんだ補給位置教示システム50によれば、撮像部51、生成部52および表示部53を備えるので、拡張現実デバイス60を介して作業者が視認する現実のマスク70の上に、はんだ80を補給すべき位置50sを含む仮想情報を重ねて表示することができる。つまり、はんだ補給位置教示システム50は、作業者にはんだ80を補給すべき位置50sを教示することができる。
【符号の説明】
【0072】
11:基板保持部、32:スキージヘッド、33f:スキージホルダ、
34:スキージ、50:はんだ補給位置教示システム、
50m:認識対象物、50k:識別マーカー、50k1:白色の四角形、
50k2:黒色の四角形、50p:視野画像、50l:直線、
50s:作業者がはんだを補給すべき位置、
50n:印刷処理の終了時のスキージの位置、
51:撮像部、52:生成部、53:表示部、60:拡張現実デバイス、
70:マスク、71:開口部、80:はんだ、90:基板、AR0:領域、
L0:離間距離、P0:当接位置、WM1:印刷機。