(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】屋根構造
(51)【国際特許分類】
E04D 13/18 20180101AFI20240523BHJP
H02S 20/23 20140101ALI20240523BHJP
【FI】
E04D13/18 ETD
H02S20/23 A
(21)【出願番号】P 2020080905
(22)【出願日】2020-05-01
【審査請求日】2023-03-29
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年1月21日に、株式会社カネカは、カネカソーラ販売株式会社によって、大和ハウス工業株式会社にて、屋根構造を構成する建材一体型の太陽電池モジュールを販売した。
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】平尾 直樹
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-317598(JP,A)
【文献】特開2010-163815(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0366464(US,A1)
【文献】国際公開第01/054205(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/18
H02S 20/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根下地上に、太陽電池モジュールが設置された屋根構造であって、
前記太陽電池モジュールは、太陽電池パネルと、取付部材を有し、
前記取付部材は、前記太陽電池パネルの裏面側に設けられ、平面視したときに前記太陽電池パネルの側面から棟側に向かって張り出した張出部を有しており、
前記太陽電池パネルの受光面から前記屋根下地に跨って棟側に向かって延びたカバー部材を有し、
前記カバー部材は、底板部と、前記底板部から立ち上がった立壁部を有し、
前記底板部は、前記立壁部から前記張出部上まで延びて
おり、
前記底板部と前記張出部の間には、桁行方向に延びた止水部が設けられている、屋根構造。
【請求項2】
前記取付部材は、棟側端部に折り返し部が形成されており、
前記折り返し部は、桁行方向に延びている、請求項
1に記載の屋根構造。
【請求項3】
屋根下地上に、太陽電池モジュールが設置された屋根構造であって、
前記太陽電池モジュールは、太陽電池パネルと、取付部材を有し、
前記取付部材は、前記太陽電池パネルの裏面側に設けられ、平面視したときに前記太陽電池パネルの側面から棟側に向かって張り出した張出部を有しており、
前記太陽電池パネルの受光面から前記屋根下地に跨って棟側に向かって延びたカバー部材を有し、
前記カバー部材は、底板部と、前記底板部から立ち上がった立壁部を有し、
前記底板部は、前記立壁部から前記張出部上まで延びており、
前記太陽電池モジュールの棟側に隣接した屋根部材を有し、
前記カバー部材は、第1カバー部材と、第2カバー部材を有し、
前記第1カバー部材は、前記屋根部材が載置される載置部を有し、
前記第2カバー部材は、底面形成部と、前記底面形成部から前記第1カバー部材側に向かって突出した凸部を備えており、
前記凸部は、前記載置部の下面を支持している
、屋根構造。
【請求項4】
前記凸部は、桁行方向に延びており、
前記立壁部は、前記凸部の軒先側の側面を構成している、請求項
3に記載の屋根構造。
【請求項5】
前記第2カバー部材は、複数の底面形成部と、前記複数の底面形成部から前記第1カバー部材側に向かって突出した複数の凸部を備えており、
前記載置部は、前記複数の凸部によって支持されている、請求項
3又は
4に記載の屋根構造。
【請求項6】
前記第1カバー部材は、前記太陽電池モジュール上から前記載置部に向かって傾斜した傾斜部を備えており、
前記カバー部材は、前記傾斜部と前記立壁部と前記底板部によって、棟側が閉塞された水返し機構が構成されている、請求項
3~
5のいずれか1項に記載の屋根構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建材一体型の太陽電池モジュールが敷設された屋根構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、瓦等の建材の機能と、光エネルギーを電気エネルギーに変換する光電変換機能を備えた建材一体型の太陽電池モジュールが知られている(例えば、特許文献1)。
建材一体型の太陽電池モジュールが敷設された屋根構造は、通常の取付金具によって太陽電池モジュールが敷設された屋根構造に比べて、屋根下地に対する太陽電池モジュールの高さが低く、周囲の建材との段差も小さい。そのため、太陽電池モジュールが屋根になじみやすく、太陽電池モジュールが目立ちにくい特長がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
建材型太陽電池モジュールは、防水性と意匠性の目的から、棟側の瓦部材等の屋根部材との取り合い部に板金等で作られたカバー部材を配置している。
このカバー部材は、軒棟方向において太陽電池パネルの受光面から棟側の屋根部材に跨って設けられるものであり、棟側からの屋根下地への雨水等の進入を防止できる。
しかしながら、従来の屋根構造は、台風などの強風時の場合、軒先側から吹き込む風によって、雨水等が太陽電池モジュールとカバー部材の隙間から進入し、カバー部材と屋根下地との間の空間に進入する問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、強風時においても、軒先側からの雨水等の屋根下地側への進入を防止できる屋根構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するための本発明の一つの様相は、屋根下地上に、太陽電池モジュールが設置された屋根構造であって、前記太陽電池モジュールは、太陽電池パネルと、取付部材を有し、前記取付部材は、前記太陽電池パネルの裏面側に設けられ、平面視したときに前記太陽電池パネルの側面から棟側に向かって張り出した張出部を有しており、前記太陽電池パネルの受光面から前記屋根下地に跨って棟側に向かって延びたカバー部材を有し、前記カバー部材は、底板部と、前記底板部から立ち上がった立壁部を有し、前記底板部は、前記立壁部から前記張出部上まで延びている、屋根構造である。
【0007】
本様相によれば、底板部が立壁部から張出部上に跨っているので、雨風により雨水等が軒先側から太陽電池モジュールとカバー部材との間を通過しても、立壁部で堰き止められ、底板部上を伝わって軒先側に流れるため、屋根下地側に雨水等が進入することを防止できる。
【0008】
好ましい様相は、前記底板部と前記張出部の間には、桁行方向に延びた止水部が設けられていることである。
【0009】
本様相によれば、底板部と張出部との間からの屋根下地への雨水等の進入を防止できる。
【0010】
好ましい様相は、前記取付部材は、棟側端部に折り返し部が形成されており、前記折り返し部は、桁行方向に延びていることである。
【0011】
本様相によれば、より屋根下地への雨水等の進入を防止できる。
【0012】
ところで、建材一体型の太陽電池モジュールを屋根下地に設置する際には、作業者が屋根に乗って一枚ずつ設置していく。屋根は、高所であり、足場が悪いため、作業者によっては、カバー部材を足場に使って屋根部材や他のカバー部材を設置する場合がある。このような場合に、作業者の重量によっては、カバー部材が塑性変形するおそれがあった。
【0013】
そこで、好ましい様相は、前記太陽電池モジュールの棟側に隣接した屋根部材を有し、前記カバー部材は、第1カバー部材と、第2カバー部材を有し、前記第1カバー部材は、前記屋根部材が載置される載置部を有し、前記第2カバー部材は、底面形成部と、前記底面形成部から前記第1カバー部材側に向かって突出した凸部を備えており、前記凸部は、前記載置部の下面を支持していることである。
【0014】
本様相によれば、載置部の下面が凸部によって支持されているため、作業者等が載置部上に乗っても載置部が塑性変形しにくい。
【0015】
より好ましい様相は、前記凸部は、桁行方向に延びており、前記立壁部は、前記凸部の軒先側の側面を構成していることである。
【0016】
本様相によれば、凸部が載置部を支持する支持部と雨水等を堰き止める堰き止め部として機能するので、別個に支持部と堰き止め部を設ける場合に比べてコストを低減できる。
【0017】
より好ましい様相は、前記第2カバー部材は、複数の底面形成部と、前記複数の底面形成部から前記第1カバー部材側に向かって突出した複数の凸部を備えており、前記載置部は、前記複数の凸部によって支持されていることである。
【0018】
本様相によれば、載置部が複数の凸部に跨り、各凸部によって支持されているため、より載置部が変形しにくい。
【0019】
より好ましい様相は、前記第1カバー部材は、前記太陽電池モジュール上から前記載置部に向かって傾斜した傾斜部を備えており、前記カバー部材は、前記傾斜部と前記立壁部と前記底板部によって、棟側が閉塞された水返し機構が構成されていることである。
【0020】
本様相によれば、より確実に雨水等の屋根下地への進入を防止できる。
本様相によれば、載置部が凸部によってかさ上げされているため、傾斜部の傾斜角度を小さくでき、傾斜部の傾斜角度を屋根部材の傾斜角度に近づけることができる。その結果、太陽電池モジュールが屋根部材から浮き上がって見えにくく、外観に優れた屋根構造となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の屋根構造によれば、屋根下地側への雨水等の進入を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第1実施形態の屋根構造を模式的に示した平面図である。
【
図6】
図4の水切り部材の要部の拡大斜視図である。
【
図8】
図1のカバー部材を裏面側からみた斜視図である。
【
図9】
図1の軒端太陽電池モジュールの軒先部分の断面図である。
【
図10】
図1の軒棟方向に隣接する太陽電池モジュールの取り合い部分の断面図である。
【
図11】
図1の棟端太陽電池モジュールと瓦部材との取り合い部分の断面図である。
【
図12】
図1の軒棟方向に隣接する水切り部材の連結部分の斜視図である。
【
図13】
図1の左端太陽電池モジュールと瓦部材との取り合い部分の断面図である。
【
図14】
図1の右端太陽電池モジュールと瓦部材との取り合い部付近の断面図である。
【
図15】
図13の左端太陽電池モジュールとカバー部材の説明図であり、(a)は左側からみた斜視図であり、(b)は右側からみた斜視図である。
【
図16】
図13の左端太陽電池モジュールとカバー部材と水切り部材の位置関係を示す斜視図である。
【
図17】
図14の右端太陽電池モジュールとカバー部材の説明図であり、(a)は左側からみた斜視図であり、(b)は右側からみた斜視図である。
【
図18】
図1の中央側太陽電池モジュールとカバー部材の説明図であり、(a)は左側からみた斜視図であり、(b)は右側からみた斜視図である。
【
図19】
図1の屋根構造の水返し機構の説明図であって、棟端太陽電池モジュールと瓦部材との取り合い部分の断面図であり、雨水等の流れを矢印で示している。
【
図20】本発明の他の実施形態の屋根構造を模式的に示した平面図である。
【
図21】本発明の他の実施形態のカバー部材の説明図であり、(a)は折り曲げ片を折り曲げる前の状況を表す斜視図であり、(b)は折り曲げ片を折り曲げた状況を表す斜視図である。
【
図22】本発明の他の実施形態のカバー部材の説明図であり、(a)は折り曲げ片を折り曲げる前の状況を表す斜視図であり、(b)は折り曲げ片を折り曲げた状況を表す斜視図である。
【
図23】本発明の他の実施形態の水切り部材の斜視図である。
【
図24】本発明の他の実施形態の水切り部材の平面図である。
【
図25】本発明の他の実施形態のカバー部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。以下の説明においては、特に断りのない限り、左右方向について
図1の設置姿勢を基準とする。
【0024】
本発明の第1実施形態の屋根構造1は、切妻屋根や寄棟屋根等の屋根を構成するものであり、
図1のように、主に建物の屋根下地4に対して太陽電池モジュール2及び瓦部材3(屋根部材)が碁盤状に設置されたものである。
屋根構造1は、
図1,
図9のように、主要構成部材として、太陽電池モジュール2(2a~2i)と、瓦部材3と、水切り部材5と、カバー部材6(6a~6c)と、軒先金具7と、軒先水切り材8を備えている。
【0025】
太陽電池モジュール2は、建材の機能と、太陽電池の機能を兼ね備える建材一体型の太陽電池モジュールであり、本実施形態では、建材の機能として瓦の機能を備えた瓦一体型の太陽電池モジュールである。
太陽電池モジュール2は、
図2,
図3のように、太陽電池パネル10と、軒先側フレーム11と、棟側フレーム12と、緩衝部材13と、取付部材15を備えている。
太陽電池モジュール2は、
図3のように太陽電池パネル10の受光面20が取付部材15に対して所定の角度で傾斜した姿勢となっている。
【0026】
太陽電池パネル10は、
図2のように、表面に受光面20を有した板状パネルであり、受光面20で受光した光エネルギーを電気エネルギーに変換する光電変換素子を内蔵している。太陽電池パネル10は、光電変換素子を支持する支持基板又は光電変換素子を封止する封止基板としてガラス基板を含むものである。
太陽電池パネル10は、裏面に端子ボックス21が設けられており、端子ボックス21から延設された配線部22,23が設けられている。
【0027】
軒先側フレーム11は、
図3のように、太陽電池パネル10の傾斜方向の上側の端面(軒先側端面)を保護する保護フレームであり、太陽電池パネル10の軒先側端部を保持する保持フレームである。
軒先側フレーム11は、
図3のように、軒先側固定部24と、軒先側係合片25と、軒先側保持凹部26を備えている。
【0028】
軒先側固定部24は、図示しない締結要素を介して取付部材15の第1隆起部41に固定可能となっている。
ここでいう「締結要素」とは、ねじ、ボルトとナットの組み合わせ、釘、鋲等の上位概念である。以下、本明細書では「締結要素」の定義を同様とする。
軒先側係合片25は、軒先側に向いて延びた係合片であり、軒先金具7の金具側係合片165(
図9参照)又は棟側の太陽電池モジュール2の棟側フレーム12の棟側係合片28(
図10参照)と係合可能となっている。
軒先側保持凹部26は、太陽電池パネル10の軒先側端部を保持する凹部である。
【0029】
棟側フレーム12は、
図3のように太陽電池パネル10の傾斜方向の下側の端面(棟側端面)を保護する保護フレームであり、太陽電池パネル10の棟側端部を保持する保持フレームである。
棟側フレーム12は、棟側固定部27と、棟側係合片28と、棟側保持凹部29を備えている。
【0030】
棟側固定部27は、図示しない締結要素を介して取付部材15の第2隆起部42に固定可能となっている。
棟側係合片28は、棟側に向いて延びた係合片であり、棟側の太陽電池モジュール2の軒先側フレーム11の軒先側係合片25と係合可能となっている。
棟側保持凹部29は、太陽電池パネル10の棟側端部を保持する凹部である。
【0031】
緩衝部材13は、太陽電池パネル10と取付部材15の間に介在し、太陽電池パネル10で発生した熱を断熱する断熱部材であり、取付部材15に対して太陽電池パネル10を支持する支持部材でもある。
緩衝部材13は、衝撃吸収機能を有する緩衝材であり、断熱機能を有する断熱材である。緩衝部材13としては、例えば、発泡ポリスチレン等が使用できる。
【0032】
取付部材15は、
図3のように、太陽電池パネル10の裏面側を覆い、図示しない締結要素によって太陽電池パネル10を屋根下地4に対して取り付ける部材である。
取付部材15は、太陽電池パネル10から屋根下地4への延焼を防止し、屋根下地4側への雨水等の進入を防ぐものであり、防火性能及び防水性能を有している。
取付部材15は、金属製の薄板が加工された板金製であり、表面に塗装されている。
本実施形態の取付部材15は、ガルバリウム鋼板(登録商標)製の金属板で構成されている。
【0033】
取付部材15は、
図2のように、平面視したときに四角形状であり、太陽電池パネル10よりも面積が大きい板状体である。
取付部材15は、重畳部30と、第1張出部31と、第2張出部32を備えている。
【0034】
重畳部30は、
図2のように、平面視したときに太陽電池パネル10と重なる部位である。
第1張出部31は、重畳部30と連続し、平面視したときに太陽電池パネル10の桁行方向の一方の側面(本実施形態では左側側面)から外側に向かって張り出した部位である。
第2張出部32は、重畳部30と連続し、平面視したときに太陽電池パネル10の棟側の側面から外側に向かって張り出した部位である。
【0035】
取付部材15は、
図2,
図3のように、本体板部40と、本体板部40に対して隆起した隆起部41,42と、折り返し部43,44を備えている。
第1隆起部41は、図示しない締結要素によって軒先側フレーム11を固定する固定台である。
第1隆起部41は、取付部材15の軒先側に設けられ、平面視したときに太陽電池パネル10と重なる重畳部30に配されている。
【0036】
第2隆起部42は、締結要素によって棟側フレーム12を固定する固定台である。
第2隆起部42は、取付部材15の棟側に設けられ、重畳部30と第2張出部32との境界部分に配されている。
【0037】
桁行側折り返し部43は、本体板部40を流れる雨水等を堰き止め、本体板部40から零れることを防止する堰き止め部である。
桁行側折り返し部43は、
図2のように、本体板部40の桁行方向の端部(左側端部,張出方向の端部)から太陽電池パネル10側に向かって折り返された部位である。すなわち、桁行側折り返し部43は、第1張出部31の張出方向の端部に設けられている。
【0038】
棟側折り返し部44は、本体板部40を流れる雨水等を堰き止め、本体板部40から零れることを防止する堰き止め部である。
棟側折り返し部44は、
図3のように、本体板部40の棟側端部(張出方向の端部)から太陽電池パネル10側に向かって折り返された部位である。すなわち、棟側折り返し部44は、第2張出部32の張出方向の端部に設けられている。
【0039】
瓦部材3は、屋根下地4上に載置され、屋根下地4側への雨水等の進入を防止し、屋根の外観を構成する屋根部材である。
瓦部材3は、例えば、スレート瓦(化粧スレート)等が使用できる。
【0040】
屋根下地4は、
図9,
図10,
図11のように、野地板45上に防水性を有したルーフィングシート46が敷設されたものである。
【0041】
水切り部材5は、
図1のように、桁行方向における太陽電池モジュール2と瓦部材3の取り合い部分に設けられ、太陽電池パネル10の受光面20上や瓦部材3上からの太陽電池パネル10の裏面側への雨水等の流れを遮断する部材である。
すなわち、水切り部材5は、太陽電池パネル10と瓦部材3との間に配置され、太陽電池パネル10の桁行方向の端面に沿って流れる雨水等や瓦部材3上を太陽電池パネル10に向かって流れる雨水等の太陽電池パネル10の裏面側への移動を防止する部材である。
【0042】
水切り部材5は、桁行方向に幅をもち、軒棟方向に長さをもって延びる長尺状の部材である。
水切り部材5は、
図4,
図5のように、ベース部材51(ベース部)と、遮断部材52と、防水材53,54と、誘導部材55,56を備えている。
ベース部材51は、板金製であり、金属製の板状のベース形成部材が折り曲げられて形成されたものである。
ベース部材51は、
図5のように、基材部60と、第1折り返し部61と、第2折り返し部62を備えており、折り返し部61,62が基材部60の幅方向Wの両端部に設けられている。
【0043】
基材部60は、
図4のように、複数の突条部65,66を備えている。
突条部65,66は、幅方向Wにおいて雨水等を堰き止めて、ベース部材51から雨水等がこぼれることを防止する部位であり、基材部60の長さ方向Lの曲げ剛性を補強するリブでもある。
突条部65,66は、
図5,
図6のように、折り曲げ加工によって形成されており、突条部65,66の裏側には、凹溝67,68が形成されている。
【0044】
本実施形態では、基材部60は、
図6のように、表側において、遮断部材52を基準として、幅方向Wの一方側に4本の突条部65a~65dが設けられており、他方側にも4本の突条部66a~66dが設けられている。また、基材部60は、裏側において、遮断部材52を基準として、幅方向Wの一方側に4本の凹溝67a~67dが設けられており、他方側にも4本の凹溝68a~68dが設けられている。
基材部60は、
図5,
図6のように、表側において、突条部65a~65d及び突条部66a~66dがそれぞれ幅方向Wに所定の間隔を空けて並設され、互いに平行となるように長さ方向Lに延びている。
基材部60は、裏側において凹溝67a~67d及び凹溝68a~68dがそれぞれ幅方向Wに所定の間隔を空けて並設され、互いに平行となるように長さ方向に延びている。
【0045】
折り返し部61,62は、ベース部材51の表面を流れる雨水等を堰き止めて、水切り部材5から屋根下地4への零れを防止する部位である。
折り返し部61,62は、
図5,
図6のように、基材部60の幅方向Wの端部から基材部60に対して鋭角に折り返されている。
基材部60に対する折り返し部61,62の折り返し角度は、0度以上90度以下であり、0度超過30度以下であることが好ましく、5度以上15度以下であることがより好ましい。
この範囲であれば、安全で雨水等が堰き止められて屋根下地4にこぼれにくい。
【0046】
折り返し部61,62は、
図4のように、長さ方向Lにおいて、ベース部材51の一方の端部(棟側端部)から中間部まで形成されている。すなわち、水切り部材5は、長さ方向Lにおいて、折り返し領域70と、非折り返し領域71がある。
ここでいう「中間部」とは、端部以外の部分であって、端部間の部分をいう。
【0047】
折り返し領域70は、折り返し部61,62が設けられた領域である。
非折り返し領域71は、折り返し部61,62が除去された除去領域であり、折り返し部61,62が設けられていない領域である。
【0048】
遮断部材52は、
図4,
図5のように、ベース部材51の基材部60上に載置され、太陽電池モジュール2の裏面(屋根下地4)側への雨水等の進入を防止する部材である。
遮断部材52は、金属製の板状の遮断壁形成部材が「T」字状に折り返されて形成された部材であり、本実施形態ではガルバリウム鋼板(登録商標)製の金属板で構成されている。
【0049】
遮断部材52は、
図5のように、接続部80,81と、遮断壁部82を備えている。
接続部80,81は、ベース部材51の基材部60と接続される板状部位であり、図示しない締結要素によって基材部60に対して取り付け可能となっている。
遮断壁部82は、
図4のように、接続部80,81から立ち上がった立壁部である。
遮断壁部82は、長さ方向Lにおいて高さが漸次変化しており、立ち上がり方向の端部が所定の角度で傾斜している。本実施形態の遮断壁部82では、棟側から軒先側に向かうにつれて高さが高くなっている。
基材部60に対する遮断壁部82の立ち上がり方向の先端部の傾斜角度は、太陽電池パネル10の傾斜角度と概ね一致し、太陽電池パネル10の傾斜角度によって適宜設計される。
【0050】
防水材53,54は、防水性を有し、
図6のように基材部60と折り返し部61,62の間に溜まった雨水等が屋根下地4に零れることを防止するコーキング材である。
防水材53,54は、基材部60と折り返し部61,62と誘導部材55,56との間を埋める封止材である。
【0051】
誘導部材55,56は、
図4に示される非折り返し領域71において、基材部60上を通過する雨水等がベース部材51から零れないように誘導する防水壁である。
誘導部材55,56は、非折り返し領域71に設けられており、折り返し部61,62の軒先側端部から非折り返し領域71を長さ方向Lに横切るように基材部60の軒先側端部まで延びている。
【0052】
誘導部材55,56は、
図6のように、第1誘導部85a,85bと、第2誘導部86a,86bを備えている。
第1誘導部85a,85bは、折り返し部61,62の軒先側端部から幅方向Wの内側に向かって延びた堰き止め部である。
第2誘導部86a,86bは、第1誘導部85a,85bと連続し、第1誘導部85a,85bの幅方向Wの端部から基材部60の軒先側端部まで傾斜して延びた堰き止め部である。すなわち、第2誘導部86a,86bは、第1誘導部85a,85bの延び方向の端部から基材部60の軒先側端部まで、幅方向成分と長さ方向成分をもって延びている。
【0053】
ここで、水切り部材5の各部位の位置関係について説明する。
【0054】
水切り部材5は、
図4のように、ベース部材51の基材部60上に遮断部材52の接続部80,81が載置され、図示しない締結要素によって固定されている。水切り部材5は、幅方向Wの概ね中心部分に遮断壁部82が位置している。
遮断部材52は、ベース部材51の基材部60よりも長さ方向Lの長さが短く、長さ方向Lにおいて、ベース部材51の一方の端部(軒先側端部)側に偏在している。すなわち、遮断部材52は、長さ方向Lにおいて基材部60の軒先側端部から中間部まで載置されており、ベース部材51の他方の端部(棟側端部)側に遮断部材52が存在せず、基材部60と折り返し部61,62によって囲まれた嵌合空間90が形成されている。
嵌合空間90は、
図12のように、他の水切り部材5の非折り返し領域71を嵌挿可能な空間である。
【0055】
誘導部材55,56の端部は、基材部60と折り返し部61,62の間の空間に進入し、基材部60と折り返し部61,62によって挟持されている。
折り返し領域70は、
図4のように、ベース部材51の折り返し部61と遮断部材52の遮断壁部82の間に流路72aが形成されており、ベース部材51の折り返し部62と遮断部材52の遮断壁部82の間に流路72bが形成されている。
非折り返し領域71は、誘導部材55と遮断部材52の遮断壁部82の間に流路87aが形成されており、誘導部材56と遮断部材52の遮断壁部82の間に流路87bが形成されている。
流路87a,87bは、流路72a,72bと連続し、雨水等が流れる流路である。誘導部材55,56の第2誘導部86a,86bの間隔は、徐々に狭くなっており、流路87a,87bは、軒先側に向かって幅が絞られている。
【0056】
防水材53,54は、
図6のように、折り返し部61,62の軒先側端部近傍であって、かつ基材部60と折り返し部61,62の間の空間に充填されている。
本実施形態の防水材53,54は、基材部60と折り返し部61,62と誘導部材55,56に囲まれた空間に充填されている。すなわち、折り返し部61,62を流れる雨水等は、防水材53,54によって遮られ、流路87a,87bに導かれる。
【0057】
カバー部材6(6a~6c)は、
図1のように、軒棟方向において、太陽電池モジュール2と瓦部材3の取り合い部分に設けられ、太陽電池モジュール2の棟側の一部を保護する部材である。
カバー部材6は、
図7のように、第1カバー部材101と、第2カバー部材102で構成されており、これらが接着シートや接着剤等の接着手段によって不可分一体に接合されている。
【0058】
第1カバー部材101は、一枚の板状体が折り曲げられて構成される部材であり、本実施形態ではガルバリウム鋼板(登録商標)製の金属板で構成されている。
【0059】
第1カバー部材101は、
図7,
図8のように、カバー本体105と、軒先側側壁部106a,106bと、棟側側壁部107a,107bを備えている。
カバー本体105は、堰き止め部110と、接続壁部111と、固定部112と、傾斜部113と、載置部115と、位置合わせ部116で構成されている。
堰き止め部110は、
図11のように、太陽電池パネル10の受光面20上に載置され、太陽電池パネル10上の雨水等が棟側に流れることを堰き止める部位であり、太陽電池パネル10の受光面20との接触面に堰き止め側止水部120が設けられている。
堰き止め側止水部120は、弾性及び封止性を有したゴムなどの発泡シール材で形成されており、桁行方向に延びている。
【0060】
接続壁部111は、
図7のように、堰き止め部110の棟側端部から立ち上がり、立ち上がり方向の端部が固定部112と接続される壁部である。
固定部112は、
図7,
図11のように、締結要素117によって太陽電池モジュール2の棟側フレーム12に固定する部位であり、締結要素117の一部を挿入可能な固定孔119a,119bを備えている。
本実施形態では、締結要素117として着脱可能な一時締結要素を使用しており、頭部と軸部を有している。
ここでいう「一時締結要素」とは、締結要素の一種であり、原則的に破壊せずに取り外しが可能な締結要素をいい、例えば、ねじや、ボルトとナットの組み合わせなどをいう。
【0061】
傾斜部113は、
図7のように、固定部112の棟側端部から折り曲げられ、固定部112から載置部115に向かって緩やかに下り傾斜した部位である。
図11に示される傾斜部113の固定部112に対する傾斜角度θは、160度以上175度以下であることが好ましい。
この範囲であれば、瓦部材3との間で生じる段差を小さくでき、従来に比べて優れた外観とできる。
【0062】
載置部115は、
図11のように瓦部材3が載置される部位であり、傾斜部113の棟側端部から折り曲げられ、傾斜部113から位置合わせ部116に向かって傾斜部113よりも緩やかに下り傾斜している。
【0063】
位置合わせ部116は、
図8,
図11のように、載置部115の棟側端部から屋根下地4側に折り曲げられた部位であり、第2カバー部材102に対する相対位置を調整する部位である。
【0064】
軒先側側壁部106a,106bは、
図7,
図8のように、第1カバー部材101の桁行方向の側壁を構成し、カバー本体105の傾斜部113の桁行方向の端部から屋根下地4側に向かって折れ曲がった壁部であり、傾斜部113を屋根下地4に対して支持する脚部である。
本実施形態の軒先側側壁部106a,106bは、傾斜部113の桁行方向の端部から下方に向かって垂直に設けられている。
【0065】
軒先側側壁部106a,106bは、
図7,
図8のように、軒棟方向の先端側の部分に、傾斜部113からの折れ曲がり方向の先端部から基端部に向けて延びたスリット部121a,121bを備えている。
スリット部121a,121bは、軒先側側壁部106a,106bの軒先側の端部に沿って平行にカバー本体105側に向かって延びたスリットである。
本実施形態のスリット部121a,121bは、貫通部125a,125b(
図7,
図8参照)から固定部112に向かって延びている。
【0066】
軒先側側壁部106a,106bは、軒棟方向において、スリット部121a,121bによって、折り曲げ片122a,122bと、側壁本体部123a,123b(第2側壁本体部)に区画されている。
折り曲げ片122a,122bは、屋根構造1の設置時に、必要に応じて折り曲げて太陽電池パネル10の棟側の辺との干渉を避ける板状部位であり、カバー本体105の傾斜部113の桁行方向の端部と連続し、片持ち状に支持された片持ち片である。
【0067】
折り曲げ片122a,122bの最大幅は、干渉を避ける太陽電池パネル10の受光面20の位置によって適宜変更されるが、1cm以上3cm以下であることが好ましい。
この範囲であれば、太陽電池パネル10の受光面20との干渉を防止しつつ、作業現場で折り曲げやすい。
折り曲げ片122a,122bの基端部(軒先側側壁部106a,106bとの接続部)から先端部までの最大長さは、干渉を避ける太陽電池パネル10の受光面20の位置によって適宜変更されるが、2cm以上5cm以下であることが好ましい。
この範囲であれば、太陽電池パネル10の受光面20との干渉を防止しつつ、作業現場で折り曲げやすい。
【0068】
側壁本体部123a,123bは、
図7,
図8のように、折り曲げ片122a,122bよりも棟側に位置し、軒先側側壁部106a,106bの大部分を構成する板状部位である。
側壁本体部123a,123bは、軒先側端部に貫通部125a,125bを備えている。
貫通部125a,125bは、厚み方向(桁行方向)に貫通した四角形状の切り欠きであり、太陽電池モジュール2の配線部22,23を通過可能な切り欠きである。
【0069】
棟側側壁部107a,107bは、第1カバー部材101の側壁を構成し、載置部115の桁行方向の端部から屋根下地4側に向かって折れ曲がった壁部である。すなわち、棟側側壁部107a,107bは、載置部115を支持する脚部である。
本実施形態の棟側側壁部107a,107bは、載置部115の桁行方向の端部から野地板45に向かって垂直に設けられている。
【0070】
第2カバー部材102は、第1カバー部材101の剛性を補強する補強部材である。
第2カバー部材102は、一枚の板状体が矩形波状に折り曲げられて構成されており、本実施形態ではガルバリウム鋼板(登録商標)製の金属板で構成されている。
第2カバー部材102は、
図7,
図8のように、天面形成部130a~130cと、底面形成部131a~131cと、第1立壁部132a~132cと、第2立壁部133a~133cを備えている。
第2カバー部材102は、天面形成部130a~130cと底面形成部131a~131cの間に段差があり、天面形成部130a~130cと底面形成部131a~131cとが各立壁部132a~132c,133a~133cによってそれぞれ接続されている。
すなわち、第2カバー部材102は、天面形成部130a~130cと第1立壁部132a~132cと第2立壁部133a~133cによって、底面形成部131a~131cに対して上方側に向けて突出した凸部135a~135cを構成している。凸部135a~135cは、軒棟方向に幅をもち、桁行方向に延びている。
【0071】
天面形成部130a~130cは、第2カバー部材102の天面を構成し、第1カバー部材101を載置する載置部を構成する部位である。天面形成部130a~130cは、凸部135a~135cの突出方向の端面を構成している。
【0072】
底面形成部131a~131cは、第2カバー部材102の底面を構成し、屋根構造1の組み立て時に屋根下地4に載置される部位である。
図7,
図8のように、複数の底面形成部131a~131cのうち、最も軒先側に位置する底面形成部131aは、他の底面形成部131b,131cに比べて軒棟方向の長さが長い。
底面形成部131a(底板部)の下面には、補強側止水部137が設けられている。
補強側止水部137は、弾性及び封止性を有したゴムなどの発泡シール材で形成されており、底面形成部131aの軒先側端部に沿って桁行方向に延びている。
【0073】
第1立壁部132a~132cは、
図7,
図11のように、天面形成部130a~130cの軒先側端部と、底面形成部131a~131cの棟側端部を接続する接続壁部である。すなわち、第1立壁部132a~132cは、底面形成部131a~131cの棟側端部から立ち上がり、天面形成部130a~130cの軒先側端部に繋がっている。
第1立壁部132a~132cは、凸部135a~135cの軒先側の側面を構成している。
【0074】
第2立壁部133a,133bは、
図11のように、天面形成部130a,130bの棟側端部と、底面形成部131b,131cの軒先側端部を接続する接続壁部である。すなわち、第2立壁部133a,133bは、天面形成部130a,130bの棟側端部から屋根下地4側に向けて折り曲げられ、底面形成部131b,131cの軒先側端部に繋がっている。
【0075】
第2立壁部133cは、天面形成部130cの棟側端部から屋根下地4側に向けて折り曲げられており、天面形成部130cに対する第2立壁部133cの折り曲げ角度は、載置部115に対する位置合わせ部116の折り曲げ角度とほぼ一致している。
第2立壁部133a~133cは、凸部135a~135cの棟側の側面を構成している。
【0076】
ここで、カバー部材6の各部位の位置関係について説明する。
【0077】
カバー部材6は、
図11のように、第1カバー部材101の載置部115が第2カバー部材102の天面形成部130a~130c上に載置されており、第1カバー部材101の載置部115の裏面と第2カバー部材102の天面形成部130a~130cが両面テープ等の接着手段によって接着されている。
カバー部材6は、第1カバー部材101の位置合わせ部116が第2カバー部材102の第2立壁部133cと重なっている。
カバー部材6は、第1カバー部材101の固定部112が太陽電池モジュール2の棟側フレーム12の一部を覆っており、締結要素117の軸部が固定孔119a,119bに挿入されて固定されている。
【0078】
カバー部材6は、傾斜部113と載置部115の境界部分と、第1立壁部132aと天面形成部130aの境界部分とが一致している。すなわち、カバー部材6は、傾斜部113が第1立壁部132aから軒先側に延びており、傾斜部113と第1立壁部132aと底面形成部131aによって、棟側が閉塞された水返し機構140を構成している。
水返し機構140は、太陽電池モジュール2側から風等の要因で棟側に吹き込んだ雨水等を堰き止めて、軒先側に逃がすものである。
【0079】
第1カバー部材101の桁行方向の長さは、
図8のように、第2カバー部材102の桁行方向の長さよりも長く、第2カバー部材102は、第1カバー部材101の桁行方向の中間部に設けられている。すなわち、カバー部材6は、第1カバー部材101の側壁部106a,106b,107a,107bと、第2カバー部材102の間に配置空間141a,141bが形成されている。
配置空間141a,141bは、水切り部材5を配置可能な空間であり、第2カバー部材102の桁行方向の両側に設けられている。
【0080】
軒先金具7は、
図9のように、屋根の軒先に取り付けられ、太陽電池モジュール2を屋根下地4に対して取り付ける取付金具である。
軒先金具7は、太陽電池モジュール2の軒先側フレーム11の軒先側係合片25と係合可能な金具側係合片165を有している。
【0081】
軒先水切り材8は、屋根の軒先に設けられ、瓦部材3と屋根下地4の間や太陽電池モジュール2の取付部材15上に流れる雨水等を図示しない雨樋等に伝える部材である。
【0082】
続いて、本実施形態の屋根構造1の各部材の位置関係について説明する。
【0083】
屋根下地4の軒先側端部には、
図9のように軒先水切り材8が取り付けられ、軒先水切り材8上に軒先金具7が設置されている。
図1に示される最も軒先側に位置する一段目の太陽電池モジュール2a(以下、軒端太陽電池モジュール2aともいう)に注目すると、軒端太陽電池モジュール2aは、軒先側フレーム11の軒先側係合片25が軒先金具7の金具側係合片165と係合し、軒先金具7によって軒先側への移動が規制されている。
【0084】
図1に示される軒棟方向に隣接する太陽電池モジュール2d,2gに注目すると、棟側の太陽電池モジュール2gは、
図10のように、軒先側フレーム11の軒先側係合片25が軒先側の太陽電池モジュール2dの棟側フレーム12の棟側係合片28と係合し、軒先側の太陽電池モジュール2dの棟側フレーム12によって軒先側への移動が規制されている。
また、棟側の太陽電池モジュール2gは、軒棟方向において、取付部材15の重畳部30が軒先側の太陽電池モジュール2dの取付部材15の第2張出部32の一部に被さっている。
【0085】
図1に示される最も棟側に位置する太陽電池モジュール2g(以下、棟端太陽電池モジュール2gともいう)とその棟側に隣接する瓦部材3との取り合い部分に注目すると、カバー部材6aは、
図11のように、棟端太陽電池モジュール2gと瓦部材3に跨って設けられている。
カバー部材6aは、固定部112が締結要素117によって棟端太陽電池モジュール2gの棟側フレーム12に固定されており、載置部115上に瓦部材3が載置されている。
カバー部材6aは、堰き止め部110が太陽電池パネル10の受光面20上に載置されており、堰き止め側止水部120が受光面20に接触している。
第2カバー部材102の底面形成部131a~131cは、屋根下地4上に載置されている。
第2カバー部材102の最も軒先側に位置する底面形成部131a(底板部)は、軒先側端部が屋根下地4上から太陽電池モジュール2gの第2張出部32上に跨っており、第2張出部32の棟側部分を覆っている。すなわち、カバー部材6aは、第2カバー部材102の底面形成部131aが第2張出部32上に重なるように配置されて水返し機構140を構成している。
水返し機構140は、第1立壁部132aによって棟側が閉塞されており、軒先側を向いて開放している。
【0086】
軒棟方向に隣接する水切り部材5に注目すると、棟側の水切り部材5b(以下、棟側水切り部材5bともいう)は、
図12のように、一部が軒先側の水切り部材5a(以下、軒先側水切り部材5aともいう)の嵌合空間90に進入しており、軒先側水切り部材5a(第1水切り部材)と棟側水切り部材5b(第2水切り部材)が軒棟方向の上下で連結されている。
軒先側水切り部材5aと棟側水切り部材5bは、遮断壁部82,82が連続した一つの壁部を構成している。
【0087】
図1に示される桁行方向における一方側端部(左側端部)に位置する太陽電池モジュール2g(以下、左端太陽電池モジュール2gともいう)と瓦部材3との取り合い部分に注目すると、水切り部材5は、
図13のように接続部80,81が左端太陽電池モジュール2gの第1張出部31において取付部材15上に載置されており、接続部80上に瓦部材3が載置されている。すなわち、水切り部材5は、太陽電池モジュール2g内に収まっており、接続部80が太陽電池モジュール2gの第1張出部31と瓦部材3との間に介在している。
水切り部材5の遮断壁部82は、太陽電池パネル10の下面(裏面)よりも高く、桁行方向において左側端面の一部又は全部を覆っている。すなわち、水切り部材5の遮断壁部82は、太陽電池パネル10の左側端面の一部又は全部と対面している。
左端太陽電池モジュール2gの折り返し部43は、水切り部材5の折り返し部61よりも外側に位置している。
【0088】
図1に示される桁行方向における他方側端部(右側端部)に位置する太陽電池モジュール2i(以下、右端太陽電池モジュール2iともいう)と瓦部材3との取り合い部分に注目すると、水切り部材5は、
図14のように、接続部80上に右端太陽電池モジュール2iの重畳部30の取付部材15が載置されて太陽電池モジュール2の側方に設置されており、接続部81上に瓦部材3が載置されている。
水切り部材5の遮断壁部82は、太陽電池パネル10の下面(裏面)よりも高く、桁行方向において右側端面の一部又は全部を覆っている。すなわち、水切り部材5の遮断壁部82は、太陽電池パネル10の右側端面の一部又は全部と対面している。
【0089】
左端太陽電池モジュール2gと棟側に隣接するカバー部材6aに注目すると、左側(瓦部材3側)の折り曲げ片122aは、
図15(a)のように、側壁本体部123a又はカバー本体105から折り曲げられず、延びた状態で太陽電池パネル10の左側側面を覆っている。
一方、右側の折り曲げ片122bは、
図15(b)のように、太陽電池パネル10に緩衝しないように、側壁本体部123b又はカバー本体105から内側に向けて折り曲げられ、開口部126aを形成し、開口部126aから太陽電池パネル10の右側側面の一部が露出している。
配線部23は、カバー部材6aの軒先側側壁部106bに設けられた貫通部125bを通過して右側に隣接する太陽電池モジュール2hの配線部22と接続されている。
水切り部材5は、
図16のように、遮断壁部82がカバー部材6aの貫通部125aと桁行方向に重なる位置まで延びている。すなわち、カバー部材6aの貫通部125aは、水切り部材5の遮断壁部82によって閉塞されている。
【0090】
右端太陽電池モジュール2iと棟側に隣接するカバー部材6cに注目すると、左側の折り曲げ片122aは、
図17(a)のように、太陽電池パネル10に緩衝しないように、側壁本体部123a又はカバー本体105から内側に向けて折り曲げられ、開口部126bを形成し、開口部126bから太陽電池パネル10の左側側面の一部が露出している。
一方、右側(瓦部材3側)の折り曲げ片122bは、
図17(b)のように、側壁本体部123b又はカバー本体105から折り曲げられず、延びた状態で太陽電池パネル10の右側側面を覆っている。
配線部22は、カバー部材6cの軒先側側壁部106aに設けられた貫通部125aを通過して左側に隣接する太陽電池モジュール2hの配線部23と接続されている。
水切り部材5は、遮断壁部82がカバー部材6cの貫通部125bと桁行方向に重なる位置まで延びている。すなわち、カバー部材6cの貫通部125bは、水切り部材5の遮断壁部82によって閉塞されている。
【0091】
桁行方向における中央側に位置する太陽電池モジュール2h(以下、中央側太陽電池モジュール2hともいう)と棟側に隣接するカバー部材6bに注目すると、折り曲げ片122a,122bは、
図18のように、ともに太陽電池パネル10に緩衝しないように、側壁本体部123a,123b又はカバー本体105から内側に向けて折り曲げられ、開口部126c,126dを形成し、開口部126c,126dから太陽電池パネル10のそれぞれ側面の一部が露出している。
配線部22,23は、カバー部材6bの軒先側側壁部106a,106bに設けられた貫通部125a,125bを通過して両側に隣接する太陽電池モジュール2g,2iの配線部22,23とそれぞれ接続されている。
【0092】
本実施形態の水切り部材5によれば、雨水等の流れ方向に対して直交する方向の端部に基材部60から上方側に折り返された折り返し部61,62が形成されているため、基材部60の表面を流れる雨水等の屋根下地4側への零れを防止できる。
【0093】
本実施形態の屋根構造1によれば、複数の水切り部材5a,5bを有し、軒棟方向に隣接する水切り部材5a,5bが嵌合し、雨水等の流れ方向の上下で連結されており、遮断壁部82,82が一つの連続する壁部を形成しているので、水切り部材5a,5bの継ぎ目からの雨水等の零れを防止できる。
本実施形態の屋根構造1によれば、軒棟方向に隣接する水切り部材5a,5bを嵌合することで連結できるので、現場加工なく連結でき、水切り部材5a,5bによって太陽電池モジュール2と瓦部材3との連結部分からの漏水を防ぐことができる。その結果、漏水等による住宅性能低下を抑制できる。
【0094】
本実施形態の屋根構造1によれば、軒棟方向に隣接する軒先側水切り部材5aと、棟側水切り部材5bは、軒先側水切り部材5aのベース部材51aと棟側水切り部材5bのベース部材51bが厚み方向に重なり、当該重なる部分においては、厚み方向の上段の棟側水切り部材5bの折り返し部61,62が除去されている。また、棟側水切り部材5bの誘導部材55,56が軒先側水切り部材5aの折り返し部61,62の内側に位置している。そのため、軒先側水切り部材5aと、棟側水切り部材5bを連結するにあたって、棟側水切り部材5bの折り返し部61,62や誘導部材55,56が邪魔にならず、棟側水切り部材5bの基材部60を軒先側水切り部材5aの折り返し部61,62に差し込み易い。
【0095】
本実施形態の屋根構造1によれば、折り返し部61,62の延び方向に対する交差方向に遮断部材52が設けられ、遮断部材52が折り返し部61,62内での雨水等の流れを遮る防水壁として機能し、さらに折り返し部61,62の最軒側の部分が防水材53,54によって封止されている。そのため、折り返し部61,62内に溜まった雨水等が折り返し部61,62の軒先側端部から零れ落ちることを防止できる。
【0096】
本実施形態のカバー部材6によれば、必要に応じて折り曲げ片122a,122bを折り曲げることによって、太陽電池パネル10の受光面20との干渉を回避できるので、左端太陽電池モジュール2g、右端太陽電池モジュール2i、中央側太陽電池モジュール2hのいずれの個所でも対応可能である。その結果、現場施工時にカバー部材6の設置位置の間違いを防止できるので、漏水等による住宅性能低下を抑制できる。
【0097】
本実施形態の屋根構造1によれば、カバー部材6が傾斜部113と第1立壁部132aと底面形成部131aによって棟側が閉塞された水返し機構140を構成しており、底面形成部131aが第1立壁部132aから太陽電池モジュール2の第2張出部32上まで延びている。
そのため、
図19のように、軒先側から強風等により、第1カバー部材101と棟側フレーム12の隙間から雨水等が吹き込んだ場合でも、雨水等を第1立壁部132aで遮断し、軒先側の太陽電池モジュール2の太陽電池パネル10と取付部材15の間の空間に流して屋根下地4への雨水等の進入を防止できる。その結果、漏水等による住宅性能低下を抑制する。
【0098】
本実施形態のカバー部材6によれば、第2カバー部材102に桁行方向へ延びた複数の凸部135a~135cが形成され、凸部135a~135cの突出方向の端面によって第1カバー部材101の載置部115が支持されており、載置部115の上面からの荷重に耐える構造になっている。そのため、作業者が屋根構造1の設置作業時に載置部115を踏んだとしても第1カバー部材101が変形しにくい。
【0099】
上記した実施形態では、各太陽電池モジュール2が碁盤状に敷き詰められた矩形配置の屋根構造1について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、
図20のように各太陽電池モジュール2(2A~2F)は千鳥配置となっていてもよい。この場合、桁行方向の長さが異なる複数種類のカバー部材6(6A~6E)と瓦部材3(3A,3B)を使用することが好ましい。
【0100】
上記した実施形態では、側壁本体部123a,123bの軒先側端部に貫通部125a,125bを設け、貫通部125a,125bに太陽電池モジュール2の配線部22,23を通過させていたが、本発明はこれに限定されるものではない。側壁本体部123a,123bの厚み方向に貫通した貫通孔を設け、当該貫通孔に太陽電池モジュール2の配線部22,23を通過させてもよい。
【0101】
上記した実施形態では、スリット部121a,121bがカバー本体105まで至っており、折り曲げ片122a,122bがカバー本体105によって片持ち状に支持されていたが、本発明はこれに限定されるものではない。スリット部121a,121bがカバー本体105まで至らずに、折り曲げ片122a,122bが側壁本体部123a,123bによって片持ち状に支持されていてもよい。また、
図21のようにスリット部121a,121bがカバー本体105の一部を切り欠いていてもよい。
【0102】
上記した実施形態では、スリット部121a,121bが軒先側側壁部106a,106bの下端部から上方に向かって延び、折り曲げ片122a,122bが下方に向かって延びていたが、本発明はこれに限定されるものではない。
図22のようにスリット部121a,121bが軒先側側壁部106a,106bの軒先側端部から棟側に向かって延び、折り曲げ片122a,122bが棟側から軒先側に向かって延びていてもよい。
【0103】
上記した実施形態では、水切り部材5は、軒棟方向において軒先側に遮断部材52が偏って設けられていたが、本発明はこれに限定されるものではない。水切り部材5は、
図23のように棟側に遮断部材52が設けられていてもよい。この場合、誘導部材55,56も棟側に設けられ、棟側水切り部材5bの嵌合空間90に軒先側水切り部材5aの非折り返し領域71を嵌合させることとなる。
【0104】
上記した実施形態では、誘導部材55,56は、第2誘導部86a,86bが第1誘導部85a,85bの延び方向の端部から軒先側に向かって延びていたが、本発明はこれに限定されるものではない。
図24のように第2誘導部86a,86bは、第1誘導部85a,85bの延び方向の中間部から軒先側に向かって延びていてもよい。
【0105】
上記した実施形態では、第1カバー部材101の載置部115は、第2カバー部材102の複数の天面形成部130a~130cに跨って載置されていたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、
図25のように、第1カバー部材101の載置部115は、最も軒先側の天面形成部130aにのみに載置されていてもよい。
【0106】
上記した実施形態では、屋根部材として瓦部材3を使用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明に係る屋根部材は、板金を折り曲げたものであってもよい。
【0107】
上記した実施形態は、本発明の技術的範囲に含まれる限り、各実施形態間で各構成部材を自由に置換や付加できる。
【符号の説明】
【0108】
1 屋根構造
2,2a~2i 太陽電池モジュール
3,3A,3B 瓦部材(屋根部材)
4 屋根下地
6,6a~6c,6A,6B カバー部材
10 太陽電池パネル
15 取付部材
32 第2張出部(張出部)
44 棟側折り返し部(折り返し部)
101 第1カバー部材
102 第2カバー部材
113 傾斜部
115 載置部
131a 底面形成部(底板部)
131b,131c 底面形成部
132a 第1立壁部(立壁部)
135a~135d 凸部
137 補強側止水部(止水部)
140 水返し機構