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特許7492863コンクリート充填確認装置及び逆打ち工法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】コンクリート充填確認装置及び逆打ち工法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/02 20060101AFI20240523BHJP
   E04G 21/08 20060101ALI20240523BHJP
   E04G 9/00 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
E04G21/02 103Z
E04G21/08
E04G9/00 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020090043
(22)【出願日】2020-05-22
(65)【公開番号】P2021183794
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2023-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】芦立 冴
(72)【発明者】
【氏名】小林 楓子
(72)【発明者】
【氏名】井垣 圭二
(72)【発明者】
【氏名】宮部 喬司
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 俊輔
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-212088(JP,A)
【文献】特開平11-303402(JP,A)
【文献】特開平09-043028(JP,A)
【文献】特開平04-363468(JP,A)
【文献】特開2005-248471(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 9/00
E04G 11/06
E04G 19/00
E04G 21/02
E04G 21/06
E04G 21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートを充填する際に用いられる手前側の型枠に形成した貫通孔から挿入可能とされ、一方の先端が奥側の型枠にまで至る長さとされた挿入棒と、
前記一方の先端に取付けられた第1電極と、
前記挿入棒の何れかの箇所に取付けられ前記手前側の型枠の内側に配置される第2電極と、
前記挿入棒の他方の先端に固定され、前記手前側の型枠の外側に配置される発光装置と、
前記第1電極と前記第2電極とを前記発光装置に電気的に接続する導線と、
を有するコンクリート充填確認装置。
【請求項2】
前記挿入棒には、前記手前側の型枠に当接して、前記挿入棒の挿入深さを規定するフランジが固定され、
前記フランジの固定位置は変更可能である、
請求項1に記載のコンクリート充填確認装置。
【請求項3】
前記挿入棒において、前記手前側の型枠の外側に配置された部分に巻き付けられ、前記挿入棒における前記一方の先端を上方へ付勢する締結紐と、
を備えた請求項1又は2に記載のコンクリート充填確認装置。
【請求項4】
前記挿入棒は筒状に形成され、
前記第2電極は前記先端に取り付けられ、
前記導線は前記挿入棒の内部に配線されている、
請求項1~3の何れか1項に記載のコンクリート充填確認装置。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載のコンクリート充填確認装置を用いた逆打ち工法において、
上部躯体を構築する工程と、
前記上部躯体の下方に前記手前側の型枠を設置する工程と、
前記手前側の型枠に形成された充填口から前記手前側の型枠の内側へ、下部躯体を形成する前記コンクリートを充填する工程と、
前記コンクリートを充填しながら、前記挿入棒を前記貫通孔へ挿入する工程と、
前記発光装置によって前記コンクリートの充填状況を確認する工程と、を有する逆打ち工法。
【請求項6】
前記コンクリートを充填しながら、棒状加振機を前記手前側の型枠の上部に形成した開口部から前記手前側の型枠の内部へ挿入して前記コンクリートを加振する、請求項5に記載の逆打ち工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート充填確認装置及び逆打ち工法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、豆電球の電極に接続された端子が、型枠の型板を打ち抜いて配置された、コンクリートの充填確認装置が記載されている。この充填確認装置においては、型枠内に打設されたコンクリートが端子に触れると、コンクリートの水分で端子間が通電して、豆電球が点灯する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-248471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1におけるコンクリート充填確認装置及びコンクリート充填確認方法では、手前側の型枠に近い部分におけるコンクリートの充填状況は確認できるが、奥側の型枠に近い部分におけるコンクリートの充填状況を確認することは難しい。したがって、例えば逆打ち工法においてコンクリートの厚みが大きい場合に、奥側の型枠に近い部分にコンクリートが十分に充填されないままコンクリート打設作業が終了され、奥側の型枠付近に空隙が生じる可能性がある。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、奥側の型枠に近い部分にコンクリートが充填されたことを確認できるコンクリート充填確認装置及び逆打ち工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1のコンクリート充填確認装置は、コンクリートを充填する際に用いられる手前側の型枠に形成した貫通孔から挿入可能とされ、一方の先端が奥側の型枠にまで至る長さとされた挿入棒と、前記一方の先端に取付けられた第1電極と、前記挿入棒の何れかの箇所に取付けられ前記手前側の型枠の内側に配置される第2電極と、前記挿入棒の他方の先端に固定され、前記手前側の型枠の外側に配置される発光装置と、前記第1電極と前記第2電極とを前記発光装置に電気的に接続する導線と、を有する。
【0007】
請求項1に記載のコンクリート充填確認装置では、手前側の型枠に形成した貫通孔から挿入棒を挿入すると、挿入棒の先端部分に取付けられた第1電極を奥側の型枠の手前に配置させることができる。このとき、挿入棒の何れかの箇所に取付けられた第2電極は、型枠内の何れかの箇所に配置される。
【0008】
手前側の型枠の外側には発光装置が配置されており、この発光装置は、第1電極及び第2電極と導線で電気的に接続されている。これにより、第1電極及び第2電極がコンクリートに触れると、コンクリート中の水分によって第1電極と第2電極が導通し、発光装置が発光する。
【0009】
ここで、例えば逆打ち工法でコンリートを下方から充填する場合、充填されたコンクリートの天端が確認できない場合が多い。また、一般的に手前側の型枠に設けた充填口からコンクリートを充填するため、奥側の型枠に近いコンクリートより、手前側の型枠に近い部分のコンクリートが先に打ち上がる。そして、手前側の型枠に近い部分のコンクリートが打ち上った時点で充填を完了すると、奥側の型枠に近いコンクリートの天端に空隙が発生する。
【0010】
しかし、本態様のコンクリート充填確認装置を用いると、挿入棒の先端部分に取付けられた第1電極にコンクリートが触れるまで発光装置が発光しない。そして、発光装置が発光することで、奥側の型枠に近い部分にコンクリートが充填されたことを確認できる。これにより、奥側の型枠に近いコンクリートの天端に空隙が発生することを抑制できる。
【0011】
これにより、例えばコンクリート厚が大きいコンクリート構造体を打設する場合であっても、コンクリート構造体の上部に空隙が発生することを抑制できる。
請求項2のコンクリート充填確認装置は、請求項1に記載のコンクリート充填確認装置において、前記挿入棒には、前記手前側の型枠に当接して、前記挿入棒の挿入深さを規定するフランジが固定され、前記フランジの固定位置は変更可能である。
請求項3の逆打ち工法は、請求項1又は請求項2に記載のコンクリート充填確認装置を用いた逆打ち工法において、前記挿入棒において、前記手前側の型枠の外側に配置された部分に巻き付けられ、前記挿入棒における前記一方の先端を上方へ付勢する締結紐と、を備える。
【0012】
請求項4のコンクリート充填確認装置は、請求項1~3の何れか1項に記載のコンクリート充填確認装置において、前記挿入棒は筒状に形成され、前記第2電極は前記先端に取り付けられ、前記導線は前記挿入棒の内部に配線されている。
【0013】
請求項4に記載のコンクリート確認装置では、導線が、筒状とされた挿入棒の内部に配線されている。これにより、挿入棒の外側に沿って配線されている場合と比較して、導線が損傷し難い。また、第1電極と第2電極の双方が挿入棒の先端に取り付けられているため、装置の構造をシンプルにできる。
【0014】
請求項5の逆打ち工法は、請求項1~3の何れか1項に記載のコンクリート充填確認装置を用いた逆打ち工法において、上部躯体を構築する工程と、前記上部躯体の下方に前記手前側の型枠を設置する工程と、前記手前側の型枠に形成された充填口から前記手前側の型枠の内側へ、下部躯体を形成する前記コンクリートを充填する工程と、前記コンクリートを充填しながら、前記挿入棒を前記貫通孔へ挿入する工程と、前記発光装置によって前記コンクリートの充填状況を確認する工程と、を有する。
【0015】
請求項5に記載の逆打ち工法は、上部躯体が先行して構築され、その下方に下部躯体を構築する逆打ち工法において、下部躯体を形成するコンクリートを充填する際に、コンクリート充填確認装置を使用する。
【0016】
ここで、例えば逆打ち工法でコンリートを下方から充填する場合、充填されたコンクリートの天端が確認できない場合が多い。また、一般的に手前側の型枠に設けた充填口からコンクリートを充填するため、奥側の型枠に近いコンクリートより、手前側の型枠に近い部分のコンクリートが先に打ち上がる。そして、手前側の型枠に近い部分のコンクリートが打ち上った時点で充填を完了すると、奥側の型枠に近いコンクリートの天端に空隙が発生する。
【0017】
そこで、本態様における逆打ち工法では、手前側の型枠に形成した貫通孔から挿入棒を挿入すると、挿入棒の先端部分に取付けられた第1電極を奥側の型枠の手前に配置させることができる。このとき、挿入棒の何れかの箇所に取付けられた第2電極は、型枠内の何れかの箇所に配置される。
【0018】
手前側の型枠の外側には発光装置が配置されており、この発光装置は、第1電極及び第2電極と導線で電気的に接続されている。これにより、第1電極及び第2電極がコンクリートに触れると、コンクリート中の水分によって第1電極と第2電極が導通し、発光装置が発光する。
【0019】
すなわち、本態様のコンクリート充填確認装置を用いると、挿入棒の先端部分に取付けられた第1電極にコンクリートが触れるまで発光装置が発光しない。そして、発光装置が発光することで、奥側の型枠に近い部分にコンクリートが充填されたことを確認できる。これにより、奥側の型枠に近いコンクリートの天端に空隙が発生することを抑制できる。
【0020】
これにより、コンクリート厚が大きいコンクリート構造体を打設する場合であっても、コンクリート構造体の上部に空隙が発生することを抑制できる。
【0021】
請求項6の逆打ち工法は、請求項5に記載の逆打ち工法において、前記コンクリートを充填しながら、棒状加振機を前記手前側の型枠の上部に形成した開口部から前記手前側の型枠の内部へ挿入して前記コンクリートを加振する。
【0022】
請求項4に記載の逆打ち工法によると、棒状加振機を型枠の内部へ挿入してコンクリートを加振する。このため、型枠の外側からコンクリートを加振する型枠振動機などを使用する場合と比較して、型枠から近い部分だけでなく、型枠から遠い部分のコンクリートも加振できる。このため、型枠から近い部分と遠い部分とのコンクリート充填高さに差が生じ難い。
【発明の効果】
【0023】
本発明によると、奥側の型枠に近い部分にコンクリートが充填されたことを確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態に係るコンクリート充填確認装置を示す正面図である。
図2】本発明の実施形態に係る逆打ち工法において、上部躯体の下方に型枠を構築した状態を示す立断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る逆打ち工法において、コンクリート充填確認装置の挿入棒を、型枠の内側に挿入している状態を示す立断面図である。
図4】本発明の実施形態に係る逆打ち工法において、コンクリート充填確認装置の挿入棒の先端を、上部躯体の底面に接触させながら、型枠の内側に挿入している状態を示す立断面図である。
図5】本発明の実施形態に係る逆打ち工法において、コンクリート充填確認装置の挿入棒の先端を、土留め壁の手前に配置した状態を示す立断面図である。
図6A】本発明の実施形態に係る逆打ち工法において、型枠の近くのコンクリートが打ち上った一方、土留め壁の近くのコンクリートが打ち上ってない状態を示す立断面図である。
図6B】本発明の実施形態に係る逆打ち工法において、土留め壁の近くのコンクリートが打ち上って発光装置が発光している態を示す立断面図である。
図7】本発明の実施形態に係る逆打ち工法において、棒状加振機及び桝を示す部分拡大立断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態に係るコンクリート充填確認装置及び逆打ち工法について、図面を参照しながら説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。但し、明細書中に特段の断りが無い限り、各構成要素は一つに限定されず、複数存在してもよい。また、各図面において重複する構成及び符号については、説明を省略する場合がある。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において構成を省略する又は異なる構成と入れ替える等、適宜変更を加えて実施することができる。
【0026】
<コンクリート充填確認装置>
図1には、本発明の実施形態に係るコンクリート充填確認装置20が示されている。コンクリート充填確認装置20は、挿入棒22と、挿入棒22の先端部分に取付けられた第1電極24Aと、挿入棒22の何れかの箇所に取付けられた第2電極24Bと、挿入棒22の後端部分(先端部分と反対側の部分)に取付けられた発光装置26と、第1電極24Aと第2電極24Bとを発光装置26に電気的に接続する導線28と、を有する。このコンクリート充填確認装置20は、一例として、図5に示すように、型枠30に形成した貫通孔30Aに挿入棒22を挿入して使用する。
【0027】
(発光装置)
図1に示すように、発光装置26は、電池である電源26A、LED電球である発光体26B、トランジスタ26C及び抵抗素子26Dを備えて形成されている。電源26A、発光体26B、トランジスタ26C及び抵抗素子26Dは、導線28によって連結され、筐体26Eの内部に収容されている。
【0028】
筐体26Eは光透過性を備えており、内部の発光体26Bが発光すると光を透過する。このため、外部から光を視認できる。
【0029】
(挿入棒)
挿入棒22は、アルミやステンレス等の金属で形成された筒状のパイプである。挿入棒22の一方の端部22Aは筐体26Eに挿入され、固定具Fによって筐体26Eに固定されている。挿入棒22の内部には、筐体26Eの内部から端部22Aを介して挿入された導線28が配線されている。導線28は、挿入棒22の他方の端部である先端22Bから、外部へ突出している。先端22Bには、導線28を固定するキャップCPが嵌め込まれている。
【0030】
(銅線、電極)
導線28は、例えば導体である銅線を、不導体であるポリ塩化ビニル等の被覆材で被覆して形成されたコードである。導線28において挿入棒22の先端22Bから突出した部分には、スイッチを形成する第1電極24A及び第2電極24Bが形成されている。なお、本明細書では、第1電極24A及び第2電極24Bを総称して電極24と称す場合がある。
【0031】
第1電極24A及び第2電極24Bは、導線28を切断し、被覆材を剥ぎ取って露出させた銅線であり、これらを導体で連結することにより、導線28が通電する。なお、第1電極24A及び第2電極24Bは、銅線に端子を繋いで形成してもよい。
【0032】
(挿入棒の長さ)
挿入棒22には、フランジ22Fが固定具Fによって固定されている。フランジ22Fから電極24の先端までの長さL1は、図5に示す型枠30の表面から土留め壁40までの長さL2と略一致する長さとされている。あるいは、長さL1は、長さL2より10~100mm程度短い長さとされている。なお、電極24が挿入棒22から突出した突出長さL3は概ね10mm~50mm程度である。
【0033】
なお、本発明における「先端が奥側の型枠にまで至る長さの挿入棒」とは、フランジ22Fから電極24の先端までの長さL1から、電極24が挿入棒22から突出した突出長さL3を引いた値(フランジ22Fから挿入棒22の先端22Bまでの長さ)が、長さL2より0~150mm程度短い値とされている状態を示すものとする。
【0034】
フランジ22Fの固定位置は自由に変更することができる。このため、型枠30の表面から土留め壁40までの長さL2に応じて、フランジ22Fから電極24の先端までの長さL1を適宜変更することができる。なお、フランジ22Fは必ずしも設ける必要はない。フランジ22Fを設けることで電極24を所望の位置に配置し易いが、これを設けなくても、挿入棒22の挿入長さは適宜調整できる。
【0035】
<逆打ち工法>
コンクリート充填確認装置20は、一例として、図2に示す型枠30の内部にコンクリートCを打設する際に用いられる。型枠30は、逆打ち工法において地下躯体を構築するための型枠である。
【0036】
逆打ち工法は、地盤を掘削して構築する建物に適用される。逆打ち工法では、上部躯体を先行して構築し、順次下方の地盤を掘削しながら、下部躯体を構築する。このため、図2に示すように、先行して構築された上部躯体50の下方に、型枠30を設置する。
【0037】
図2に示した例では、上部躯体50は建物の外壁(地下外壁又は地上部の外壁)である。型枠30は、建物の地下外壁を形成するコンクリートを打設するための型枠である。型枠30は土留め壁40から離間して配置され、この型枠30と土留め壁40との間に、コンクリートCが打設される。すなわち、土留め壁40は、コンクリートCの型枠を兼用している。
【0038】
土留め壁40は、ソイルセメント列柱壁とされ、H形鋼の芯材42の表面が露出して形成されている。この芯材42には、セパレータ60を固定するための受け部材62が溶接されている。受け部材62は例えばアングル材によって形成され、構築される地下外壁の延設方向に沿って配置されている。
【0039】
なお、土留め壁40は、建物の規模や設計条件に応じて、シートパイル、親杭横矢板、鉄筋コンクリート地中壁など、各種の構造によって構築することができる。
【0040】
型枠30を設置したあと、型枠30の内側へコンクリートCを圧入する。コンクリートCは、型枠30に形成された図示しない充填口から圧入されて、型枠30と土留め壁40との間に充填される。打設途中のコンクリートCは、一般的に、型枠30に近い側の高さが高く、土留め壁40に近い側の高さが低くなる。
【0041】
この高低差は、コンクリートCの厚みやスランプ値によって変化する。本実施形態においては、土圧に抵抗するために、コンクリートCの厚みが大きく形成されている(例えば1000mm以上。一例として、2700mm)。このため、例えば厚みが1000mm未満の場合等と比較して、高低差が大きい。
【0042】
なお、型枠30は本発明における「手前側の型枠」の一例であり、土留め壁40は本発明における「奥側の型枠」の一例である。「手前側」とは、本実施形態においては、コンクリートCを圧入する充填口が形成された側を指すが、コンクリートCを落し込みによって施工する場合は、コンクリート送付用のフレキシブルホース等が配置された側を指す。
【0043】
(コンクリート充填確認方法)
コンクリートCを圧入しながら、図3に示すように、型枠30の貫通孔30Aへ、コンクリート充填確認装置20の挿入棒22を挿入する。貫通孔30Aは、挿入棒22を挿入する専用の孔としてもよいが、型枠30の空気抜き孔を利用することができる。
【0044】
このとき、図4に示すように、先端22Bが上部躯体50の底面へ接触した状態を保ちながら、挿入棒22を土留め壁40へ向かって挿入するとよい。これにより先端22Bの位置を高い位置に保つことができる。
【0045】
図5に示すように、挿入棒22は、フランジ22Fが型枠30に当接するまで挿入する。これにより、挿入棒22の先端22B及び電極24(図1参照)が、土留め壁40の手前に配置される。
【0046】
また、この状態で、挿入棒22においてフランジ22Fと発光装置26との間の部分、及び、型枠30を固定する単管パイプPに、締結紐Bを巻き付ける。これにより、挿入棒22が型枠30の内側で下方に変位する(矢印N参照)ことが抑制される。締結紐Bとしては、挿入棒22の先端22Bを上方へ付勢するために、例えば弾性を有した素材を用いるとよい。
【0047】
なお、挿入棒22の変位を抑制するためには、フランジ22Fを型枠30に固定してもよい。この場合、フランジ22Fに、ビスの軸部を挿通させるための貫通孔を予め形成しておくことが好ましい。
【0048】
コンクリートCの打設を続けると、図6(A)に示すように、型枠30に近い部分が先行して打ち上がる。型枠30に近い部分が打ち上がったことは、貫通孔30Aからコンクリート又はコンクリートの水分が漏出(ノロ漏れ)することで確認できる。
【0049】
しかしながら、図6(A)に示した状態では、土留め壁40に近い部分には、コンクリートCが充填されていない。この充填状況は、発光装置26が発光していないことによって確認できる。
【0050】
そしてコンクリートCの打設を続けると、図6(B)に示すように、土留め壁40に近い部分も打ち上がる。この充填状況は、発光装置26が発光することによって確認できる。
【0051】
(加振)
上述したように、コンクリートCには高低差が生じるが、この高低差はできるだけ小さいほうが好ましい。例えば図6(A)に示した状態では、コンクリートCが打ち上っていない状態にも関わらず、貫通孔30AがコンクリートCによって塞がれている。このため、型枠30の内側から空気が抜け難い。これによりコンクリートCの圧入が難しくなる。
【0052】
コンクリートCの高低差が小さければ、貫通孔30AがコンクリートCによって塞がれている時間を短くすることができる。
【0053】
このコンクリートCの高低差は、コンクリートCを加振することによって低減できる。加振方法の一例としては、型枠30に加振機(型枠振動機)を当接させてコンクリートCに振動を加える方法が挙げられる。これにより、コンクリートCの高低差が緩和される。
【0054】
また、加振方法の別の一例としては、図7に示すように、棒状加振機70を、型枠30の上部に形成した開口部30Bから型枠30の内部へ挿入して、コンクリートCを加振する方法が挙げられる。
【0055】
これにより、型枠振動機などを使用する場合と比較して、型枠30から近い部分だけでなく、型枠から遠い部分、例えば土留め壁40に近い部分のコンクリートCも加振できる。このため、型枠30から近い部分と遠い部分とで、コンクリートCの高低差がさらに生じ難くなる。
【0056】
開口部30Bの外側には、桝30Cを形成することが好ましい。これにより、コンクリートCが開口部30Bの下端部まで打ち上がった状態でも、コンクリートCを型枠30の外側へ流失させることなく、打設を続けることができる。
【0057】
また、開口部30Bの外側には、さらにシャッター30Dを設けることが好ましい。棒状加振機70を型枠30の内側から抜き取った後でシャッター30Dを閉じることで、桝30Cに入り込んだコンクリートCと、型枠30の内部のコンクリートCとを別体にすることができる。これにより、コンクリートCが硬化したあとで、桝30Cに入り込んだコンクリートCを斫り取る作業を省略できる。
【0058】
なお、コンクリートCは必ずしも加振する必要はなく、開口部30B、桝30C、シャッター30Dも、必ずしも設ける必要はない。コンクリートCを加振しなくても、後述する効果を得ることができる。
【0059】
<作用・効果>
本発明の実施形態に係るコンクリート充填確認装置20では、図5に示すように、手前側の型枠30に形成した貫通孔30Aから挿入棒22を挿入すると、挿入棒22の先端22Bに取付けられた第1電極24A及び第2電極24B(図1参照)を、奥側の型枠(土留め壁40)の手前に配置させることができる。
【0060】
手前側の型枠30の外側には発光装置26が配置されており、この発光装置26は、第1電極24A及び第2電極と導線28(図1参照)で電気的に接続されている。これにより、第1電極24A及び第2電極24BがコンクリートCに触れると、コンクリートC中の水分によって第1電極24Aと第2電極24Bが導通し、発光装置26における発光体26Bが発光する。
【0061】
ここで、上述したように、逆打ち工法でコンリートを下方から充填する場合、図6(A)に示すように、充填されたコンクリートCの天端が確認できない場合が多い。また、一般的に手前側の型枠30に設けた充填口(不図示)からコンクリートCを充填するため、奥側の型枠(土留め壁40)に近いコンクリートCより、手前側の型枠30に近い部分のコンクリートCが先に打ち上がる。そして、手前側の型枠30に近い部分のコンクリートCが打ち上った時点で充填を完了すると、土留め壁40に近いコンクリートCの天端に空隙が発生する。
【0062】
しかし、本態様のコンクリート充填確認装置20を用いると、挿入棒22の先端22Bに取付けられた第1電極24A及び24BにコンクリートCが触れるまで発光装置26が発光しない。そして、発光装置26が発光することで、土留め壁40に近い部分にコンクリートCが充填されたことを確認できる。これにより、土留め壁40に近いコンクリートCの天端に空隙が発生することを抑制できる。
【0063】
これにより、例えばコンクリート厚が大きいコンクリート構造体を打設する場合であっても、コンクリート構造体の上部に空隙が発生することを抑制できる。
【0064】
また、本発明の実施形態に係るコンクリート充填確認装置20では、導線28が、筒状とされた挿入棒22の内部に配線されている。これにより、挿入棒22の外側に沿って配線されている場合と比較して、導線28が損傷し難い。また、第1電極24Aと第2電極24Bの双方が挿入棒22の先端部分に取り付けられているため、装置の構造をシンプルにできる。
【0065】
なお、本実施形態においては、挿入棒22が筒状に形成され、導線28が挿入棒22の内部に配線されているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば挿入棒22は筒状に形成しなくてもよい。挿入棒としては、内部が空洞ではない丸棒や角棒、アングル材やチャンネル材を用いることもできる。この場合、導線28は挿入棒の外側に配線する。
【0066】
また、本実施形態においては、第1電極24A及び第2電極24Bの双方を挿入棒22の先端22Bに配置しているが、本発明の実施形態はこれに限らない。
【0067】
例えば第2電極24Bは挿入棒22において型枠30に挿入される部分、すなわちフランジ22Fと第1電極24Aとの間であればどこに配置してもよい。少なくとも第1電極24Aが挿入棒22の先端22Bに配置されていれば、土留め壁40に近い部分にコンクリートCが充填されるまで、発光装置26は発光しない。
【0068】
また、本実施形態においては、型枠30と土留め壁40との間にコンクリートCを打設する際にコンクリート充填確認装置20を用いているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば、コンクリート充填確認装置20は、両面を型枠で挟まれた部分にコンクリートを打設する際に用いてもよい。
【0069】
さらに、コンクリート充填確認装置20は、壁体だけでなく、柱や梁を形成するコンクリートを打設する場合にも用いることができる。
【0070】
なお、コンクリート充填確認装置20を使用する際の型枠(土留め壁40を含む)間の距離、すなわち壁体等の厚みは特に限定されるものではないが、1000mm以上の厚みがある場合に適用するとよい。1000mm以上の厚みがある壁体等は、1000mm未満の厚みの壁体等と比較して、打設するコンクリートの高低差が大きくなり、上部躯体との間に空隙が発生し易い。この場合、挿入棒22においてフランジ22Fから先端22Bまでの長さも、1000mm程度以上とする。
【0071】
また、コンクリート充填確認装置20は、逆打ち工法において上部躯体50の下方にコンクリートを打設する際に使用したが、本発明の実施形態はこれに限らない。すなわち、コンクリート充填確認装置20は、逆打ち工法以外の施工方法においても使用することができる。
【0072】
例えばコンクリート充填確認装置20は、予め構築された柱梁架構の内側に壁体を形成する場合や、プレキャストコンクリート製の仕口部の下方に、柱を形成する場合等に使用することができる。
【符号の説明】
【0073】
20 コンクリート充填確認装置
22 挿入棒
24A 第1電極
24B 第2電極
26 発光装置
28 導線
30 型枠(手前側の型枠)
30A 貫通孔
30B 開口部
40 土留め壁(奥側の型枠)
50 上部躯体
70 棒状加振機
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7