(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】トラクタ
(51)【国際特許分類】
B62D 49/00 20060101AFI20240523BHJP
B62D 55/06 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
B62D49/00 B
B62D55/06
(21)【出願番号】P 2020112408
(22)【出願日】2020-06-30
【審査請求日】2023-02-20
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】長崎 正晃
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-033004(JP,A)
【文献】特開2018-167800(JP,A)
【文献】特開2016-055790(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 49/00
B62D 55/06
B60K 17/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体の前方へ突出するように設けられた前出力軸を有するエンジンと、
前記前出力軸に接続された伝達軸と、
前記伝達軸の周辺に配置されたハーネス又は油圧配管からなる周辺部材と、
を備えるトラクタであって、
前記機体は、当該機体の左右方向に対向し、かつ、前後方向に延びるように設けられた機体フレームを備え、
前記周辺部材が、左右の前記機体フレームの間に配置され、
前記伝達軸と前記周辺部材との間に設けられた板状部材及び棒状部材の少なくとも一方を備えることを特徴とするトラクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のトラクタであって、
前記板状部材及び前記棒状部材の少なくとも一方は、
前記伝達軸の長手方向一部に対して少なくとも側方に配置されていることを特徴とするトラクタ。
【請求項3】
請求項2に記載のトラクタであって、
前記板状部材及び前記棒状部材の少なくとも一方は、
前記伝達軸の長手方向一部の側方及び下方に配置されていることを特徴とするトラクタ。
【請求項4】
請求項2に記載のトラクタであって、
前記板状部材及び前記棒状部材の少なくとも一方は、
前記伝達軸の長手方向一部の側方及び上方に配置されていることを特徴とするトラクタ。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載のトラクタであって
、
前記板状部材及び前記棒状部材の少なくとも一方は、
左右の前記機体フレームの間に配置され、
左右の前記機体フレームに支持されていることを特徴とするトラクタ。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載のトラクタであって、
前記板状部材を備え、
前記板状部材は、
前記伝達軸の長手方向一部に対向するように設けられた対向部と、
前記対向部の下部から前記エンジンの下部に向かって延びるように設けられ、前記対向部側が前記エンジン側よりも上方に位置するように傾いた傾斜部と、
を有することを特徴とするトラクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、旋回用ミッションにエンジンから伝達軸を介して動力が伝達される構成を備えたトラクタが知られている。特許文献1は、この種のトラクタであるクローラトラクタを開示する。
【0003】
特許文献1のトラクタは、エンジンと、旋回用ミッションケースと、を備える。旋回用ミッションケースは、エンジンの下方に配置されている。エンジンから前方に前出力軸が突出している。旋回用ミッションケースには、旋回用HSTが取り付けられる。エンジンの動力は、前出力軸から、プロペラシャフト(伝達軸)等を介して、旋回用HSTのポンプ軸に伝達される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1のような構成においては、一般的に、プロペラシャフトの周辺に、ハーネスや配管等の周辺部品が配置される。エンジンの運転時、何らかの理由でプロペラシャフトが破断した場合、オペレータが破断の発生に気づいてエンジンを停止するまでの間、破断したプロペラシャフトが周辺部品を巻き込みながら回転し、周辺部品の損傷等が発生するおそれがある。
【0006】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、トラクタのエンジンの前方に配置された伝達軸の破断に起因する各部の損傷を抑えることにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0008】
本発明の観点によれば、以下の構成のトラクタが提供される。即ち、このトラクタは、エンジンと、伝達軸と、周辺部材と、を備える。前記エンジンは、機体の前方へ突出するように設けられた前出力軸を有する。前記伝達軸は、前記前出力軸に接続される。前記周辺部材は、ハーネス又は油圧配管からなり、前記伝達軸の周辺に配置される。前記機体は、当該機体の左右方向に対向し、かつ、前後方向に延びるように設けられた機体フレームを備える。前記周辺部材が、左右の前記機体フレームの間に配置される。前記トラクタは、板状部材及び棒状部材の少なくとも一方を更に備える。前記板状部材及び前記棒状部材の少なくとも一方は、前記伝達軸と前記周辺部材との間に設けられる。
【0009】
これにより、エンジンの前方において、伝達軸が破断した場合、破断した伝達軸から周辺部材を板状部材及び棒状部材の少なくとも一方により保護することができる。よって、伝達軸の破断に起因する各部の損傷を抑えることができる。
【0010】
前記のトラクタにおいては、前記板状部材及び前記棒状部材の少なくとも一方は、前記伝達軸の長手方向一部に対して少なくとも側方に配置されることが好ましい。
【0011】
これにより、周辺部材に対して板状部材及び棒状部材の少なくとも一方を効率良く配置することができる。
【0012】
前記のトラクタにおいて、前記板状部材及び前記棒状部材の少なくとも一方は、前記伝達軸の長手方向一部の側方及び下方に配置されることが好ましい。
【0013】
これにより、周辺部材に対して板状部材及び棒状部材の少なくとも一方を効果的に配置することができる。
【0014】
前記のトラクタにおいて、前記板状部材及び前記棒状部材の少なくとも一方は、前記伝達軸の長手方向一部の側方及び上方に配置されることが好ましい。
【0015】
これにより、周辺部材に対して板状部材及び棒状部材の少なくとも一方を効果的に配置することができる。
【0016】
前記のトラクタにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記板状部材及び前記棒状部材の少なくとも一方は、左右の前記機体フレームの間に配置され、左右の前記機体フレームに支持される。
【0017】
これにより、板状部材及び棒状部材の少なくとも一方を機体に対して強固に保持することができる。
【0018】
前記のトラクタにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、このトラクタは、前記板状部材を備える。前記板状部材は、対向部と、傾斜部と、を有する。前記対向部は、前記伝達軸の長手方向一部に対向するように設けられる。前記傾斜部は、前記対向部の下部から前記エンジンの下部に向かって延びるように設けられ、前記対向部側が前記エンジン側よりも上方に位置するように傾く。
【0019】
これにより、板状部材を風向板として機能させることができる。その結果、板状部材を用いて、エンジンの周辺に存在する高温の空気が当該エンジンの前方に回り込むことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るトラクタの全体的な構成を示す側面図。
【
図3】トラクタの動力伝達経路を示すスケルトン図。
【
図5】エンジンの前出力軸付近の構成を示す斜視図。
【
図6】
図5の構成における板状部材の構成を示す斜視図。
【
図9】第1プロペラシャフト付近の構成を示す断面図。
【
図10】第1プロペラシャフトに係るメンテナンスを行う際の様子を示す図。
【
図11】本発明の第2実施形態におけるエンジンの前出力軸付近の構成を示す斜視図。
【
図13】本発明の別の実施形態における棒状部材の構成を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るトラクタ1の側面図である。なお、以下の説明では、トラクタ1が前進する方向に対して左側を「左」と呼び、右側を「右」と呼ぶ。
【0022】
図1に示すように、トラクタ1は、圃場領域等を走行することができる走行機体(機体)3を備える。本実施形態では、トラクタ1は、走行機体3に左右のクローラ式走行装置5が備えられたクローラトラクタである。
【0023】
トラクタ1においては、走行機体3の後部に、耕耘機等の後作業機を着脱可能に取り付けることができる。また、走行機体3の前部に、フロントドーザ等の前作業機9を着脱可能に取り付けることができる。走行機体3に取り付ける後作業機及び前作業機9のそれぞれについて、どのような作業機を用いるかは任意に選択可能である。
【0024】
走行機体3は、左右のクローラ式走行装置5のほか、機体フレーム11と、エンジン13と、第1ミッション15と、第2ミッション(旋回用ミッション)17と、ボンネット19と、キャビン21と、を備える。なお、トラクタ1にキャビン21を備えない構成とすることもできる。
【0025】
機体フレーム11は、左右のクローラ式走行装置5に支持されている。
図2に示すように、機体フレーム11は、前後方向に延びるように設けられている。
【0026】
機体フレーム11は、左右の延長体(機体フレーム11の主要部)23と、連結体25と、を有する。左右の延長体23は、それぞれ前後方向に延びるように設けられ、左右方向に所定間隔をあけて互いに対向するように配置されている。連結体25は、左右の延長体23の前端部の間に設けられ、左右の延長体23を連結している。
【0027】
エンジン13は、走行機体3の前部に配置されている。エンジン13は、機体フレーム11の前部に支持されている。エンジン13は、後述のように構成される動力伝達経路により、左右のクローラ式走行装置5に動力を伝達することができる。
【0028】
エンジン13は、例えばディーゼルエンジンにより構成することができるが、これに限るものではなく、例えばガソリンエンジンにより構成しても良い。また、駆動源として、エンジン13に加えて、又はこれに代えて、電気モータを使用しても良い。
【0029】
第1ミッション15は、走行機体3の後部に配置されている。第1ミッション15は、機体フレーム11の後部に支持されている。第1ミッション15により、例えば走行機体3の走行変速を行うことができる。
【0030】
第1ミッション15には、PTO(Power Take-Off)軸27が設けられている。PTO軸27は、第1ミッション15から後方へ突出している。走行機体3に後作業機が取り付けられた場合、PTO軸27を介して後作業機に動力を伝達することができる。
【0031】
第2ミッション17は、走行機体3の前部に配置されている。第2ミッション17は、エンジン13の前方において機体フレーム11の前部に支持されている。第2ミッション17により、トラクタ1に旋回を行わせることができる。
【0032】
図1に示すように、ボンネット19は、走行機体3の前部に配置されている。ボンネット19は、左右のクローラ式走行装置5の間において機体フレーム11の前部上に設けられ、エンジン13を覆っている。
【0033】
キャビン21は、走行機体3の後部に配置されている。キャビン21は、ボンネット19の後方において機体フレーム11の上方に設けられている。キャビン21の内部には、オペレータが座ることが可能な座席、オペレータが操向操作するためのステアリングハンドル、及び、操向操作以外の各種の操作を行うための様々な操作装置等が設けられている。
【0034】
次に、
図3を参照して、トラクタ1の動力伝達構成について説明する。
【0035】
図3に示すように、エンジン13には、後出力軸41及び前出力軸43が備えられている。後出力軸41は、エンジン13から後方へ突出するように設けられている。後出力軸41は、第1ミッション15に設けられた直進用HST(Hydro Static Transmission、静油圧式無段変速機)51のポンプ軸45と接続されている。これにより、後出力軸41からポンプ軸45に動力を伝達することができる。
【0036】
第1ミッション15においては、ポンプ軸45が、PTO軸27と接続されている。これにより、ポンプ軸45からPTO軸27に動力を伝達することができる。
【0037】
ポンプ軸45とPTO軸27との間においては、動力伝達方向の上流側にPTOクラッチ47が設けられ、下流側にPTO変速機構49が設けられている。PTO変速機構49は、PTO軸27に伝達される動力を変速することができる。
【0038】
直進用HST51のモータ軸53は、パイプ状に形成され、ポンプ軸45を覆うように当該ポンプ軸45と同軸に配置されている。直進用HST51のモータ軸53は、第1伝達軸55を介して変速軸57と接続されている。これにより、直進用HST51のモータ軸53から第1伝達軸55を介して変速軸57に動力を伝達することができる。
【0039】
直進用HST51のモータ軸53と第1伝達軸55との間には、前後進切替クラッチ59が設けられている。第1伝達軸55と変速軸57との間には、変速機構61が設けられている。この変速機構61は、第1伝達軸55から変速軸57に伝達される動力を変速することができる。
【0040】
変速軸57は、第2伝達軸63及び伝達ギア65等を介して、第1ミッション15の出力軸67に接続されている。第1ミッション15の出力軸67は、第1プロペラシャフト71を介して、第2ミッション17の入力軸69に接続されている。こうして、第1ミッション15の出力軸67から第2ミッション17の入力軸69に動力を伝達することができる。
【0041】
また、エンジン13の前出力軸43は、前方へ突出するように設けられている。前出力軸43は、第2プロペラシャフト(伝達軸)73等を介して、第2ミッション17に設けられた旋回用HST75のポンプ軸77と接続されている。これにより、前出力軸43から旋回用HST75のポンプ軸77に動力を伝達することができる。
【0042】
旋回用HST75は、第2ミッション17の前部に設けられている。旋回用HST75の可動斜板は、キャビン21内のステアリングハンドルと連係して動作する。
【0043】
第2ミッション17においては、旋回用HST75のモータ軸79に、ベベルギア81が固定されている。ベベルギア81は、左右のベベルギア83と噛み合っている。左右のベベルギア83に対しては、それぞれ、左右のクローラ式走行装置5の駆動スプロケット85の駆動軸87に動力を伝達するための動力伝達経路が設けられている。
【0044】
こうして、旋回用HST75のモータ軸79から、左右のベベルギア83の一方に正転の動力を伝達し、他方に逆転の動力を伝達することができる。ここでは、左右のベベルギア83のそれぞれに対応する動力伝達経路は実質的に同じであるので、左側の動力伝達経路について説明する。
【0045】
左のベベルギア83は、強制デファレンシャルを形成する左の遊星歯車機構89に接続されている。この左の遊星歯車機構89には、第2ミッション17の入力軸69に接続された第3伝達軸91が接続されている。左の遊星歯車機構89は、入力軸69からの動力、又は、これとモータ軸79からの動力とを合成した動力を、駆動軸87に伝達することができる。駆動軸87に動力が伝達されると、駆動スプロケット85が回転し、これにより左のクローラ式走行装置5が駆動する。
【0046】
このような構成において、ステアリングハンドルが直進状態に操作された場合には、旋回用HST75は中立状態となる。この場合、旋回用HST75のモータ軸79は回転せず、入力軸69(第1ミッション15)からの動力のみが左右のクローラ式走行装置5の駆動スプロケット85の駆動軸87に伝達される。これにより、駆動スプロケット85を左右で同じ回転数として、走行機体3を直進走行させることができる。
【0047】
ステアリングハンドルが左右一方に回転するように操作された場合には、その回転方向及び回転角度に応じて旋回用HST75の可動斜板の傾きが変わり、それに応じた回転方向及び回転数がモータ軸79に出力される。そして、モータ軸79から左右一方のベベルギア83を介して正転の回転が左右一方の遊星歯車機構に加えられて、左右一方の駆動軸の回転が増速させられる。このとき、モータ軸79から左右他方のベベルギア83を介して左右他方の遊星歯車機構に逆転の回転が加えられて、左右他方の駆動軸の回転が減速させられる。こうして、ステアリングハンドルの回転に応じて、左右のクローラ式走行装置5への出力を変えることで、走行機体3を旋回させることができる。
【0048】
次に、
図4、
図5及び
図6を参照して、エンジン13と第2ミッション17との間の構成について説明する。
【0049】
図4及び
図5に示すように、エンジン13の前出力軸43に、第2プロペラシャフト73が接続されている。ただし、
図5ではエンジン13が省略されている。第2プロペラシャフト73は、本体部97と、ジョイント部101と、を備える。前出力軸43は、ジョイント部101を介して、本体部97と接続されている。そして、本体部97が、第2ミッション17から延びる図略の入力軸と接続されている。こうして、第2プロペラシャフト73を介して、第2旋回用ミッションに動力を入力することができる。
【0050】
第2プロペラシャフト73は、機体フレーム11における左右の延長体23の間に設けられている。左右の延長体23の上面側には、図略の被覆プレートが取り付けられている。第2プロペラシャフト73は、前後方向に延びた状態で、左右の延長体23の間に形成された空間103に配置されている。なお、左右の延長体23の下方に、第2ミッション17が配置されている。
【0051】
このように形成された空間103には、旋回用HST75に係る油圧配管、又は、所定のハーネス等からなる線状部材(周辺部材)105が配置されている。線状部材105は、第2プロペラシャフト73の周辺に設けられ、概ね前後方向に延びている。また、空間103には、第2プロペラシャフト73の破断時に、線状部材105を第2プロペラシャフト73の破断部分から保護するための板状部材111が設けられている。線状部材105は、その長手方向一部が取付バンド107により左右の延長体23の一方又は板状部材111に取り付けられることで、板状部材111に対して位置決めされている。板状部材111は、この線状部材105を保護する保護部材として機能することができる。
【0052】
図5及び
図6に示すように、板状部材111は、保護部(対向部)113と、風向部(傾斜部)115と、を有する。本実施形態では、保護部113と風向部115とは1つの部材から構成されている。なお、保護部113と風向部115とは別部材から構成されていても良い。
【0053】
保護部113は、第2プロペラシャフト73の長手方向(前後方向)一部に対向する位置に設けられている。保護部113は、第2プロペラシャフト73と線状部材105との間を遮るように、両者の間に配置されている。具体的には、保護部113は、空間103において第2プロペラシャフト73の長手方向一部に対して少なくともその側方に配置されている。本実施形態では、保護部113は、第2プロペラシャフト73の本体部97の長手方向一部の側方に加えて、本体部97の長手方向一部の下方に配置されている。
【0054】
保護部113は、板状部材から構成され、略鉛直方向に延びた状態で空間103に配置されている。保護部113は、適宜の機械的強度を有するように、ある程度の厚みを有している。
【0055】
保護部113は、機体フレーム11の左の延長体23から右の延長体23にわたって延びるように設けられている。保護部113の左端部は左の延長体23にボルト等の締結部材を用いて固定され、保護部113の右端部が右の延長体23にボルト等の締結部材を用いて固定されている。これにより、板状部材111が、左右の延長体23に支持されている。
【0056】
図5及び
図6に示すように、保護部113には、第1開口部117が形成されている。第1開口部117には、第2プロペラシャフト73が差し込まれている。本実施形態では、第1開口部117は、保護部113の上部に設けられて、上方に開口する凹状に形成されている。第1開口部117は、左右の延長体23の間において、左右方向の略中央に配置されている。第1開口部117内には、第2プロペラシャフト73のうちジョイント部101寄りの部分が配置されている。
【0057】
保護部113は、線状部材105の位置決めを行うための複数の第2開口部119を更に有する。本実施形態では、複数の第2開口部119のうち一部が、保護部113の上部に設けられて、上方に開口する凹状に形成されている。複数の第2開口部119のうち残部が、保護部113の左右の端部に設けられて、左右の何れか一方(側方)に開口する凹状に形成されている。
【0058】
複数の第2開口部119には、それぞれ、空間103において線状部材105の前後方向一部(長手方向途中部)を嵌めることができる。線状部材105は、その前後方向一部が第2開口部119に嵌められることで、第2プロペラシャフト73に対して隔てられた位置に保持される。
【0059】
このような構成により、第2プロペラシャフト73が破断した場合に、保護部113の存在によって、破断により発生した部材が線状部材105を巻き込みながら回転することを回避することができる。即ち、破断により発生した部材から線状部材105を保護することができる。従って、第2プロペラシャフト73の破断に起因する各部の損傷を抑えることができる。
【0060】
また、
図4に示すように、風向部115は、保護部113の下部に連結され、保護部113の下部からエンジン13の下部に向かって延びるように設けられている。本実施形態では、風向部115は、板状部材から構成されている。風向部115は、保護部113側(前側)がエンジン側(後側)よりも上方に位置するように傾いた姿勢で配置されている。
【0061】
ここで、風向部115は、側面視で、概ね鉛直方向に延びる保護部113に対して所定の角度だけ傾いている。風向部115の傾斜角度は任意に設定可能である。
【0062】
風向部115は、本実施形態では、保護部113と略同じ左右幅を有する。風向部115は、左の延長体23から右の延長体23にわたって延びるように設けられている。風向部115は、第2ミッション17の前上方において、空間103を前後方向に仕切るように配置されている。
【0063】
このような構成により、エンジン13の運転により当該エンジン13の周辺に高温の空気が発生した場合に、風向部115を含む板状部材111を風向板として機能させることができる。この結果、高温の空気がエンジン13の前方へ回り込むことを板状部材111により防止することができる。
【0064】
以上に説明したように、本実施形態のトラクタ1は、エンジン13と、第2プロペラシャフト73と、線状部材105と、を備える。エンジン13は、走行機体3の前方へ突出するように設けられた前出力軸43を有する。第2プロペラシャフト73は、前出力軸43に接続される。線状部材105は、ハーネス又は油圧配管からなり、第2プロペラシャフト73の周辺に配置される。トラクタ1は、板状部材111を更に備える。板状部材111は、第2プロペラシャフト73と線状部材105との間に設けられる。
【0065】
これにより、エンジン13の前方において、第2プロペラシャフト73が破断した場合、破断した第2プロペラシャフト73から線状部材105を板状部材111により保護することができる。よって、第2プロペラシャフトの破断に起因する各部の損傷を抑えることができる。
【0066】
また、本実施形態のトラクタ1において、板状部材111は、第2プロペラシャフト73の長手方向一部に対して少なくとも側方に配置される。
【0067】
これにより、線状部材105に対して板状部材111を効率良く配置することができる。
【0068】
また、本実施形態のトラクタ1において、板状部材111は、第2プロペラシャフト73の長手方向一部の側方及び下方に配置される。
【0069】
これにより、線状部材105に対して板状部材111を効果的に配置することができる。
【0070】
また、本実施形態のトラクタ1において、走行機体3は、機体フレーム11を備える。機体フレーム11は、走行機体3の左右方向に対向し、かつ、前後方向に延びるように設けられた左右の延長体23を有する。板状部材111は、左右の延長体23の間に配置され、左右の延長体23に支持される。
【0071】
これにより、板状部材111を走行機体3に対して強固に保持することができる。
【0072】
また、本実施形態のトラクタ1において、板状部材111は、保護部113と、風向部115と、を有する。保護部113は、第2プロペラシャフト73の長手方向一部に対向するように設けられる。風向部115は、保護部113の下部からエンジン13の下部に向かって延びるように設けられ、保護部113側がエンジン13側よりも上方に位置するように傾く。
【0073】
これにより、板状部材111を風向板として機能させることができる。その結果、板状部材111を用いて、エンジン13の周辺に存在する高温の空気が当該エンジン13の前方に回り込むことを防止することができる。
【0074】
また、本実施形態の板状部材111は、トラクタ1に用いられる。トラクタ1は、エンジン13と、第2プロペラシャフト73と、線状部材105と、を備える。エンジン13は、走行機体の3前方へ突出するように設けられた前出力軸43を有する。第2プロペラシャフト73は、前出力軸43に接続される。線状部材105は、第2プロペラシャフト73の周辺に設けられる。板状部材111は、第2プロペラシャフト73の長手方向一部と、線状部材105の一部と、を遮る。
【0075】
この板状部材111をトラクタ1に適用すると、エンジン13の前方において、第2プロペラシャフト73が破断した場合でも、破断した第2プロペラシャフト73から線状部材105を板状部材111により保護することができる。よって、第2プロペラシャフトの破断に起因する各部の損傷を抑えることができる。
【0076】
次に、駐車ブレーキ131について説明する。
【0077】
本実施形態においては、
図3に示すように、第2ミッション17に、走行機体3に係る駐車ブレーキ131が設けられている。駐車ブレーキ131は、第2ミッション17の入力軸69上に設けられている。駐車ブレーキ131は、
図7及び
図8に示す複数の摩擦板133の作用により、入力軸69の回転を制動する。これにより、走行機体3に対する駐車ブレーキを実現することができる。
【0078】
駐車ブレーキ131は、ユニット化されており、ユニット化された状態で第2ミッション17のミッションケース135に着脱可能に取り付けられている。具体的には、駐車ブレーキ131は、ブレーキケース137と、複数の摩擦板133と、円板139等の関連部材と、を備える。
【0079】
ブレーキケース137は、複数の摩擦板133、及び、円板139等の関連部材を収納するように構成されている。そして、複数の摩擦板133、及び、円板139等の関連部材を収納したものを、駐車ブレーキ131用の1つのユニット(一体物)として取り扱うことができるようになっている。
【0080】
このような構成により、第2ミッション17のミッションケース135に対する駐車ブレーキ131の取付作業又は取外し作業を、ユニット単位で行うことができる。即ち、駐車ブレーキ131における種々の部材(複数の摩擦板133等)を個別に扱って、ミッションケース135への組付けを行ったり、分解を行ったりせずに済む。従って、駐車ブレーキ131の組付性及びメンテナンス性を向上させることができる。
【0081】
次に、第1プロペラシャフト71のカバー部材151について説明する。
【0082】
本実施形態においては、
図9に示すように、第1プロペラシャフト71に対して、カバー部材151が設けられている。カバー部材151は、第1プロペラシャフト71を覆うことで、これを泥、水、及び異物等から保護する。カバー部材151は第1プロペラシャフト71に沿うように延びるパイプ状の部材であり、内部に第1プロペラシャフト71及びこれの関連部材を挿入することができる。
【0083】
カバー部材151は、第1被覆部155と、第2被覆部157と、第3被覆部159と、第4被覆部161と、第5被覆部163と、を備える。第1被覆部155、第2被覆部157、第3被覆部159、第4被覆部161、及び第5被覆部163は、それぞれ第1プロペラシャフト71の軸方向に沿うように配置され、第1プロペラシャフト71の軸方向(カバー部材151)の長手方向に並べられている。
【0084】
第1被覆部155は、カバー部材151の長手方向一端部(前端部)側に配置されている。第1被覆部155は、第2ミッション17の入力軸69と第1プロペラシャフト71の軸方向一端部との接続部分である第1接続部171付近を覆うことができる。第1被覆部155は、板金製部材から構成され、パイプ状に形成されている。第1被覆部155は、長手方向一端部で第2ミッション17のブレーキケース137に固定され、長手方向他端部で第4被覆部161を介して第3被覆部159と接続されている。
【0085】
第2被覆部157は、カバー部材151の長手方向他端部(後端部)に配置されている。第2被覆部157は、第1ミッション15の出力軸67と第1プロペラシャフト71の軸方向他端部との接続部分である第2接続部173付近を覆うことができる。第2被覆部157は、板金製部材から構成され、パイプ状に形成されている。第2被覆部157は、長手方向一端部で第5被覆部163を介して第3被覆部159と接続され、長手方向他端部で第1ミッション15に固定されている。
【0086】
第3被覆部159は、カバー部材151の長手方向途中部に配置されている。第3被覆部159は、第1プロペラシャフト71の軸方向途中部を覆うことができる。第3被覆部159は、板金製部材から構成され、パイプ状に形成されている。第3被覆部159は、前述のとおり、長手方向一端部で第4被覆部161を介して第1被覆部155と接続され、長手方向他端部で第5被覆部163を介して第2被覆部157と接続されている。
【0087】
第4被覆部161は、第1被覆部155と第3被覆部159との間に配置されている。第4被覆部161は、第1プロペラシャフト71の長手方向一端部、及び、第1接続部171付近を覆うことができる。第4被覆部161は、ゴム等の弾性部材から構成され、パイプ状に形成されている。第4被覆部161は、第1被覆部155及び第3被覆部159のそれぞれと同軸に設けられている。
【0088】
第4被覆部161の長手方向一端部は、第1被覆部155の長手方向他端部に径方向外側から重なり合うように嵌められている。第4被覆部161の長手方向他端部(後端部)は、第3被覆部159の長手方向一端部(前端部)に径方向外側から重なり合うように嵌められている。第4被覆部161は、第1被覆部155及び第3被覆部159のそれぞれに対して、カバー部材151の軸方向に相対移動可能に設けられている。
【0089】
第4被覆部161と第1被覆部155とが重なり合う部分には、第1クリップ181が設けられている。この第1クリップ181により、第4被覆部161が第1被覆部155に着脱可能に固定されている。また、第4被覆部161と第3被覆部159とが重なり合う部分には、第2クリップ183が設けられている。この第2クリップ183により、第4被覆部161が第3被覆部159に着脱可能に固定されている。
【0090】
第5被覆部163は、第2被覆部157と第3被覆部159との間に配置されている。第5被覆部163は、第1プロペラシャフト71の長手方向他端部、及び、第2接続部173付近を覆うことができる。第5被覆部は、ゴム等の弾性部材から構成され、パイプ状に形成されている。第5被覆部163は、第2被覆部157及び第3被覆部159のそれぞれと同軸に設けられている。
【0091】
第5被覆部163の長手方向一端部は、第3被覆部159の長手方向他端部に径方向外側から重なり合うように嵌められている。第5被覆部163の長手方向他端部は、第2被覆部157の長手方向一端部に径方向外側から重なり合うように嵌められている。第5被覆部163は、第2被覆部157及び第3被覆部159のそれぞれに対して、カバー部材151の軸方向に相対移動可能に設けられている。
【0092】
第5被覆部163と第3被覆部159とが重なり合う部分には、第3クリップ185が設けられている。この第3クリップ185により、第5被覆部163が第3被覆部159に着脱可能に固定されている。また、第5被覆部163と第2被覆部157とが重なり合う部分には、第4クリップ187が設けられている。この第4クリップ187により、第5被覆部163が第2被覆部157に着脱可能に固定されている。
【0093】
4つのクリップ181,183,185,187は、それぞれ、環状に構成され、第1接続部171又は第2接続部173を囲んでいる。第1クリップ181は、第4被覆部161を第1被覆部155に締め付けることができる。第1クリップ181を緩めると、第4被覆部161を第1被覆部155に対して相対移動可能な状態にすることができる。他のクリップ183,185,187も第1クリップ181と同様に機能させることができる。
【0094】
このような構成により、第1クリップ181及び第2クリップ183を緩めることで、
図10に示すように、第4被覆部161をカバー部材151の長手方向に移動させて、第1被覆部155から離間させることができる。従って、簡単な作業で、第1接続部171を露出させることができる。また、同様の簡単な作業で、第2接続部173を露出させることができる。よって、第1接続部171及び第2接続部173のメンテナンス作業(例えば、グリスの補給)を容易に行うことができ、作業時間の短縮を実現できる。
【0095】
次に、
図11及び
図12を参照して、第2実施形態を説明する。なお、本実施形態の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0096】
本実施形態に係る板状部材111xは、第2プロペラシャフト73に対する形状(設置状態)に関して、第1実施形態に係る板状部材111と相違する。
【0097】
図11及び
図12に示すように、板状部材111xは、遮断部191のみを備える。遮断部191は、細長い板状部材から構成されている。本実施形態では、遮断部191は、その長手方向途中部で適宜曲げられ、第2プロペラシャフト73の長手方向一部の側方に加えて、第2プロペラシャフト73の長手方向一部の上方に配置されている。
【0098】
遮断部191は、空間103において、機体フレーム11の左の延長体23から右の延長体23にわたって延びるように設けられている。遮断部191の左端部は左の延長体23に固定され、保護部113の右端部が右の延長体23に固定されている。そして、空間103において、遮断部191又は左右の延長体23の一方に線状部材105の長手方向一部が取付バンド107により取り付けられている。
【0099】
なお、前述のとおり、第2プロペラシャフト73の破断はジョイント部101の部分で発生し易いので、遮断部191は第2プロペラシャフト73のうちジョイント部101寄りの部分に配置することが好ましい。
【0100】
以上に説明したように、本実施形態においては、板状部材111xは、第2プロペラシャフト73の長手方向一部に対して側方及び上方に配置されている。
【0101】
これにより、板状部材111xを用いて、線状部材105を第2プロペラシャフト73から隔てた状態を保つことができる。
【0102】
第2プロペラシャフト73と線状部材105との間に設けられる部材は、板状部材111x等に代えて、例えば、
図13に示す棒状部材111y等であっても良いし、板状の部分と棒状の部分が組み合わされた構成の部材であっても良い。前記伝達軸と前記周辺部材との間に、板状部材及び棒状部材のうち何れかが複数配置されても良いし、板状部材及び棒状部材の両方が1以上ずつ配置されても良い。
【0103】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0104】
板状部材は、プロペラシャフトと周辺部材とを遮ることができるものであれば、プロペラシャフトの側方にのみ位置するものであっても良い。
【0105】
プロペラシャフトに対する板状部材の位置は特に限定されない。板状部材は、プロペラシャフトとラップする位置に配置されれば良い。ただし、プロペラシャフトとジョイントとの接続部分が特に破断し易いことを考慮すれば、板状部材は、ジョイントの近傍に配置されることが好ましい。
【0106】
上述の教示を考慮すれば、本発明が多くの変更形態及び変形形態をとり得ることは明らかである。従って、本発明が、添付の特許請求の範囲内において、本明細書に記載された以外の方法で実施され得ることを理解されたい。
【符号の説明】
【0107】
1 トラクタ
3 走行機体
11 機体フレーム
13 エンジン
17 第2ミッション(旋回用ミッション)
23 延長体
43 前出力軸
73 第2プロペラシャフト(伝達軸)
105 線状部材(周辺部材)
111 板状部材
111x 板状部材
111y 棒状部材
113 保護部(対向部)
115 風向部(傾斜部)