(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】包装容器
(51)【国際特許分類】
B65D 75/32 20060101AFI20240523BHJP
A61M 5/00 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
B65D75/32
A61M5/00 516
A61M5/00 518
(21)【出願番号】P 2020128265
(22)【出願日】2020-07-29
【審査請求日】2023-04-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】蓮見 清章
【審査官】吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-104475(JP,A)
【文献】特開2002-154577(JP,A)
【文献】実開昭61-097166(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 75/32
A61M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取り出す際に接触を避けるべき保護対象部位と、把持可能な把持可能部位とを有する被収納体を収容するための包装容器であって、
前記被収納体に対応した形状に形成され前記被収納体を収容する凹部と、前記凹部の周囲を囲む部分に平面状に形成された貼着部と、を有する容器本体と、
前記貼着部に剥離可能に貼り付けられて前記凹部を封止する封止フィルムと、を備え、
前記封止フィルムは、前記凹部の周囲に沿って延在するシール部を介して前記貼着部に接着されており、
前記シール部は、
前記凹部に収容された前記被収納体の前記保護対象部位を囲む部分に形成され、相対的に強い強度で接着された剥離困難部と、
前記凹部に収容された前記被収納体の前記把持可能部位を囲む部分に形成され、前記剥離困難部よりも相対的に弱い強度で接着された剥離容易部と
、を有し、
前記被収納体は、体に貼り付けて使用する薬液投与装置であり、前記薬液投与装置は、
箱状の筐体と、
前記筐体よりも大きな外形に形成され、前記筐体を患者の体に貼り付けるための粘着面を有する筐体貼付材と、
前記筐体貼付材の前記粘着面を覆うと共に一端に前記筐体貼付材から離間した剥離開始部を有する保護シートと、を有し、
前記容器本体は、前記凹部と前記貼着部との間に前記凹部の周囲を囲むように形成され、前記貼着部よりも低く形成されるとともに、外周縁が段差部を介して前記貼着部とつながった中間部を有し、
前記薬液投与装置の前記筐体貼付材及び前記保護シートは、前記中間部に広がって収容される、
包装容器。
【請求項2】
請求項1記載の包装容器であって、前記剥離容易部は、細い線状パターンとして形成されており、前記剥離困難部は前記保護対象部位を囲む部分の前記貼着部の全面に形成されている、包装容器。
【請求項3】
請求項1又は2記載の包装容器であって、前記剥離容易部は、前記シール部として平行な2本の線状パターンを有する、包装容器。
【請求項4】
請求項2又は3記載の包装容器であって、前記線状パターンは、複数の直線部分と、前記直線部分を繋ぐ屈曲部と、を有しており、前記線状パターンの
前記屈曲部には、外方に湾曲して膨出した膨出部が形成されている、包装容器。
【請求項5】
請求項4記載の包装容器であって、前記膨出部は、前記剥離困難部から最も離れた前記屈曲部に設けられている、包装容器。
【請求項6】
請求項4又は5記載の包装容器であって、前記膨出部の近傍の前記貼着部から延び出ると共に、前記封止フィルムから離間する方向に下がった離間部が設けられている、包装容器。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の包装容器であって、前記被収納体は医療機器である、包装容器。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の包装容器であって
、前記容器本体の前記凹部には、前記保護シートを前記封止フィルムと向かい合わせにした向きで前記薬液投与装置が収容され、
前記保護シートの前記剥離開始部を囲む部分の前記貼着部に前記剥離困難部が形成されている、包装容器。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の包装容器であって、
前記薬液投与装置は、側面に接続ポートを有し、
前記凹部は、前記接続ポートを収容するポート収容部を有し、
前記ポート収容部と前記接続ポートとの隙間は、使用者の指先が入らない幅である、包装容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂シートに形成された凹部に被収納体を収納し、その凹部を封止フィルムで封止した包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、樹脂シートに形成された凹部に医療機器を収納し、その凹部を樹脂フィルム等の平坦な封止フィルムで封止する包装容器が提案されている(特許文献1)。このような包装容器は、ブリスターパッケージやブリスターケース等とも呼ばれ、例えば、プレフィルドシリンジや、体に貼付して使用される薬液投与装置等の包装に用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
医療機器によっては、包装容器から医療機器を取り出す際に手で触れると機能が損なわれるものもある。しかしながら、現状の包装容器は、封止フィルムが凹部の周囲の全域が一様な力で開封可能となっており、使用者が封止フィルムを一気に全て剥がしてしまうことが可能となっている。この場合には、収容された医療機器が一度に全て露出してしまい、使用者が医療機器の全ての部分に触れることが可能となる。そのため、使用者が誤った部分を掴んでしまい、医療機器の機能低下を生じさせるおそれがある。
【0005】
また、近年の在宅治療の広がりにより、患者自身が医療機器の操作を行う機会が増えており、医療機器の取り扱いに不慣れな使用者が包装容器から医療機器を取り出す際に、取り扱いを誤る事象が増加する懸念がある。医療機器以外の製品についても、包装容器から取り出す際に、不用意な部分に手を触れるとその機能が低下するものがある。
【0006】
したがって、使用者が誤った部位に手を触れることなく被収納体を取り出すことができる包装容器が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下の開示の一観点は、取り出す際に接触を避けるべき保護対象部位と、把持可能な把持可能部位とを有する被収納体を収容するための包装容器であって、前記被収納体に対応した形状に形成され前記被収納体を収容する凹部と、前記凹部の周囲を囲む部分に平面状に形成された貼着部と、を有する容器本体と、前記貼着部に剥離可能に貼り付けられて前記凹部を封止する封止フィルムと、を備え、前記封止フィルムは、前記凹部の周囲に沿って延在するシール部を介して前記貼着部に接着されており、前記シール部は、前記凹部に収容された前記被収納体の前記保護対象部位を囲む部分に形成され、相対的に強い強度で接着された剥離困難部と、前記凹部に収容された前記被収納体の前記把持可能部位を囲む部分に形成され、前記剥離困難部よりも相対的に弱い強度で接着された剥離容易部と、を有する、包装容器にある。
【発明の効果】
【0008】
上記観点の包装容器によれば、被収納体の保護対象部位を囲む部分に封止フィルムの剥離が困難な剥離困難部を設けて保護するため、使用者が誤った部位に手を触れることなく被収納体を取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る包装容器の正面図である。
【
図3】
図2の包装容器の筐体貼付材及び保護シートの説明図である。
【
図4】
図1の容器本体に封止フィルムが接着されたシール部の説明図である。
【
図5】
図5Aは、第2実施形態に係る包装容器の断面図であり、
図5Bは
図5Aの包装容器のシール部の形状を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上、誇張されて実際の比率とは異なる場合がある。
【0011】
(第1実施形態)
図1に示す本実施形態に係る包装容器10は、患者の体に貼付するパッチタイプの小型の薬液投与装置12(医療機器)を収容するために使用される。包装容器10は、透明な厚手の樹脂シートに薬液投与装置12を収容可能な凹部14を形成した容器本体16と、容器本体16に貼着されて凹部14に収容された薬液投与装置12を封止する封止フィルム18とを有している。なお、本実施形態では、包装容器10に収容される被収納体として、医療機器の一種である薬液投与装置12について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。包装容器10は、例えば、各種センサや脆弱な構造物(針管)等のような、触れると機能低下が生ずる恐れがある部位を有する各種機器を対象とするものであってもよい。
【0012】
図2に示すように、薬液投与装置12は、箱型の筐体20を有している。その筐体20の内部には、薬液を収容した筒体と、薬液を送り出す押し子と、押し子を駆動する駆動機構とが設けられている。薬液投与装置12は、比較的長い時間(例えば、数分~数時間程度)にわたって、持続的又は間欠的に生体内に薬液を投与するために使用される。
【0013】
図3に示すように、筐体20は、矩形状の正面20a及び背面20bと、4つの側面20c~20fを有している。正面20a及び背面20bは、側面20c~20dよりも大きな面積に形成されている。側面20cには、パッチ式の針付きチューブ等を接続するための接続ポート22が突出して設けられている。また、筐体20の背面20bには、電源スイッチ25が設けられている。電源スイッチ25は、薬液投与装置12の投与動作を開始させるスイッチであり、電源スイッチ25を押した後は、患者の体に向けて配置される。
【0014】
筐体貼付材24は、一方の接合面24aが筐体20に接合され、他方の粘着面24bが皮膚に貼着可能な面として構成されている。筐体貼付材24は、皮膚との剥離強度を確保するべく、薬液投与装置12の背面20bと同一又は背面20bよりも大きな形状に形成されている。
【0015】
さらに、筐体貼付材24には、使用直前まで粘着面24bを保護して粘着面24bの粘着性の低下を防ぐため保護シート28が貼り付けられている。保護シート28は、粘着面24bの全域を覆う形状に形成されている。保護シート28は、薬液投与装置12の使用直前に、筐体貼付材24から取り外されるものであり、その一端28a(側面20f側の端部)には、筐体貼付材24から離間した剥離開始部30が設けられている。
【0016】
剥離開始部30は、保護シート28と一体的に形成されており、保護シート28が筐体貼付材24よりも外側に膨出した部分として形成されている。剥離開始部30は、筐体貼付材24の粘着面24bから離間しており、粘着面24bとは接触していない。使用者は、剥離開始部30をつまんで、筐体貼付材24から保護シート28を引き剥がす方向に引っ張ることで、保護シート28を筐体貼付材24から容易に剥離できる。
【0017】
筐体20の背面20bには、薬液投与装置12の駆動を開始させるための電源スイッチ25が設けられており、この電源スイッチ25に対応する部分の筐体貼付材24及び保護シート28には、電源スイッチ25の視認及び操作を可能とするための円形の切欠孔27が設けられている。
【0018】
一方、容器本体16には、
図1に示すように、凹部14と、凹部14の周囲を囲む平面状の貼着部32と、凹部14と貼着部32との間に形成された中間部34とが設けられている。凹部14は、薬液投与装置12の筐体20を収容する本体収容部36と、接続ポート22を収容するポート収容部38とを有している。
【0019】
本体収容部36は、4つの側面36a、36b、36c、36dと底面36eによって囲まれた矩形状に形成されている。本体収容部36の平面寸法は、筐体20の正面20a及び背面20bの平面寸法よりも大きく形成されている。また、本体収容部36の深さは(中間部34から底面36eまでの深さ)、筐体20の厚さ(正面20aと背面20bとの距離)よりも大きく形成されており、本体収容部36には筐体20の全体が収容される。
【0020】
本体収容部36には、側面36a、36b及び底面36eから筐体20に向けて突出した凸部40が複数設けられている。筐体20は、側面36a、36bからそれぞれ突出した4つの凸部40によって挟持されることで、本体収容部36内に保持される。また、筐体20は、凸部40と当接することにより、側面36a、36b及び底面36eから浮いた状態で保持される。
【0021】
本体収容部36の側面36a、36bには、薬液投与装置12の筐体20を容器本体16から取り出す際に、筐体20をつまみやすいように把持凹部42が形成されている。把持凹部42は、使用者が指先を挿入可能な隙間を形成する。把持凹部42以外の部分では、本体収容部36と薬液投与装置12との隙間は、使用者の指を挿入できない幅に形成されている。
【0022】
ポート収容部38は、凹部14において筐体20の側面20cが配置される部分に形成されている。ポート収容部38は、接続ポート22よりも大きな形状に形成されており、接続ポート22は、ポート収容部38の表面から離間した状態でポート収容部38に収容される。薬液投与装置12を取り出す際に、使用者が接続ポート22に触れて接続ポート22が破損するのを防ぐために、ポート収容部38と接続ポート22との隙間は、使用者の指先が入らない程度の幅とすることが好ましい。
【0023】
中間部34は、凹部14の周囲を囲むように形成された部分であり、貼着部32と平行な平面を有している。中間部34の内周縁は、凹部14とつながっている。また、中間部34の外周縁は、段差部34aを介して貼着部32とつながっている。中間部34は、段差部34aを介して貼着部32よりも低く形成されている。中間部34は、封止フィルム18との間に、薬液投与装置12の筐体貼付材24及び保護シート28を収容する空間を形成する。
【0024】
貼着部32は、容器本体16の外周に沿って矩形状に形成されている。貼着部32の幅である、段差部34aと外周縁32aとの距離は、全周に亘って略一定となっている。また、貼着部32のポート収容部38側の端部には、離間部33が形成されている。離間部33は、段差部33aを介して貼着部32に繋がっており、貼着部32よりも低い位置に形成されている。離間部33は、後述する封止フィルム18を貼着部32に接着した際に、封止フィルム18から離間し、使用者が封止フィルム18の剥離を開始する際に封止フィルム18を容易に把持可能な部分となる。
【0025】
容器本体16は、樹脂シートによって、凹部14、貼着部32及び中間部34が一体的に形成される。樹脂シートとしては、例えば、PET樹脂よりなる透明なシート体を用いることができる。この場合、樹脂シートの厚さは、例えば、0.8mm程度の厚手のものを使用することができる。
【0026】
容器本体16の凹部14には、薬液投与装置12が、筐体20の正面20aを凹部14の底面36eに向けて収容される。そして、薬液投与装置12の筐体貼付材24及び保護シート28は、容器本体16の中間部34に広がって収容される。その際に、保護シート28の剥離開始部30は、
図1に示すように、本体収容部36の側面36d側の中間部34に延び出るようにして配置される。
【0027】
保護シート28の剥離開始部30は、包装容器10から薬液投与装置12を取り出す際に、引き剥がしてしまいやすい部位であり、薬液投与装置12において開封時に保護が必要な保護対象部位となっている。開封時に保護シート28が剥離してしまうと、粘着面24bの保護が為されず、粘着力が低下してしまい、使用中に、薬液投与装置12が患者の皮膚から脱落するおそれがある。剥離開始部30は、包装容器10から薬液投与装置12を取り出す際に、使用者が引っ張ってしまいやすい部位である。保護シート28は筐体貼付材24と比較的弱い接着力で張り付いているため、使用者が剥離開始部30を引っ張ると、包装容器10から薬液投与装置12が取り出される前に、保護シート28が剥離してしまう。そのため、剥離開始部30は、薬液投与装置12を包装容器10から取り出す際に、保護が必要な部分となっている。
【0028】
図1に示すように、封止フィルム18は、容器本体16と同じ寸法の矩形状に形成されている。封止フィルム18は、例えば、ポリエチレン樹脂等よりなる薄手の透明なフィルムよりなる。封止フィルム18は、容器本体16の貼着部32に剥離可能に接着されている。
【0029】
図4に示すように、封止フィルム18は、貼着部32に沿って延び、凹部14の全周を囲むように形成されたシール部44において貼着部32に接着されている。シール部44は、封止フィルム18を貼着部32に重ね合わせた状態で、所定形状の金型で挟み込んで局所的に加熱して融着させることで形成できる。
【0030】
シール部44の単位面積当たりの接着力は、一定である。ただし、本実施形態のシール部44には、貼着部32の幅(段差部34aと外周縁32aとの距離)の全域に亘って幅広に形成された剥離困難部46と、貼着部32の幅よりも狭い幅の線状パターン48a、48bで形成された剥離容易部48と、が設けられている。
【0031】
剥離困難部46は、広い接着面積で貼着部32に接着されているため、剥離容易部48よりも高い接着力で接着されており、剥離容易部48に比べて、より剥がし難くなっている。剥離困難部46は、薬液投与装置12の保護シート28の剥離開始部30を囲む部分の貼着部32に沿ってC字状に形成されている。
【0032】
剥離容易部48は、貼着部32の幅よりも狭い幅で貼着部32に接着されており、剥離困難部46に比べて接着面積が狭く、相対的に弱い接着力で接着されている。そのため、剥離容易部48は、剥離困難部46に比べて、容易に引き剥がすことができる。剥離容易部48は、平行な2本の線状パターン48a、48bを備えている。これらの線状パターン48a、48bは、直線部分49aと、隣接する直線部分49aを繋ぐ屈曲部49bとを備えている。
【0033】
2本の線状パターン48a、48bのうち、線状パターン48aは内側に形成されたパターンであり、線状パターン48bは外側に形成されたパターンである。2本の線状パターン48a、48bは、一方が剥離した場合であっても他方に影響が出ないようにするために、一定幅の隙間を開けて離間するように配置されている。線状パターン48a、48bの各々の幅は、例えば、0.1~1mmとすることができる。
【0034】
外側の線状パターン48bの屈曲部49bには、外方に円弧状に湾曲して膨出した、膨出部52が形成されている。膨出部52は、線状パターン48bと同様の接着部分として形成されているが、封止フィルム18を包装容器10の縁から引き剥がした際に、封止フィルム18に作用する引っ張り力が局所的に集中する部分となっている。円弧状に湾曲しているために、様々な方向から封止フィルム18を引っ張った場合でも、引っ張り力が局所的に集中する部分が現われるため、膨出部52を設けない場合よりも、より簡単に封止フィルム18の引き剥がしを行うことができるように構成されている。
【0035】
本実施形態の包装容器10は以上のように構成され、以下その作用について説明する。
【0036】
本実施形態の包装容器10は、容器本体16の凹部14に薬液投与装置12が収容され、封止フィルム18で凹部14及び薬液投与装置12が封止された状態で使用者に提供される。
【0037】
使用者は、使用直前に包装容器10の開封を行い、薬液投与装置12を容器本体16から取り出す操作を行う。包装容器10の開封の際には、まず、封止フィルム18のシール部44の剥離容易部48を容器本体16の貼着部32から引き剥がす操作が行われる。
【0038】
従来技術では、封止フィルム18の全域が一様な剥離強度で接着されているため、封止フィルム18の全体を一気に引き剥がすことが可能となっている。この場合には、包装容器10に収容された薬液投与装置12の保護シート28の全域が露出してしまう。この場合には、保護シート28の剥離開始部30が薬液投与装置12を引っ張り出す際につまみやすい部分として露出する。そのため、使用者は、薬液投与装置12を容器本体16から引き出すために、剥離開始部30を引っ張ってしまう恐れがある。保護シート28は、弱い剥離強度で筐体貼付材24から剥離可能となっているため、薬液投与装置12が容器本体16から取り出される前に保護シート28が剥離してしまい、粘着面24bの保護機能が損なわれるおそれがある。
【0039】
これに対し、本実施形態の包装容器10によれば、封止フィルム18を容器本体16の貼着部32に接着しているシール部44に、剥離困難部46と剥離容易部48とが設けられている。剥離困難部46は、貼着部32の幅方向の全域に亘って封止フィルム18が貼着部32に接着されているため、相対的に強い剥離強度で接着されると共に、剥離を開始するための封止フィルム18のつまみ代がない。そのため、使用者は、剥離容易部48から封止フィルム18の端部をつまんで封止フィルム18の剥離を開始する。
【0040】
容器本体16の剥離困難部46から離れた側の端部には、離間部33が設けられている。離間部33では、封止フィルム18と離間して浮いた状態となっているため、使用者が封止フィルム18を把持しやすくなっている。そのため、包装容器10は、使用者に剥離困難部46から離れた部分から封止フィルム18の剥離を開始するように促すことができる。
【0041】
使用者が封止フィルム18の端部をつまんで、容器本体16から引き剥がすと、封止フィルム18の剥離容易部48は、線状パターン48a、48bに沿って剥離する。そして、剥離困難部46まで剥離が進んだところで封止フィルム18の剥離が停止する。剥離困難部46は、強い剥離強度で封止フィルム18と貼着部32とが接着されているため、通常の操作では、それ以上剥離は進まない。そのため、封止フィルム18が、薬液投与装置12の保護シート28の剥離開始部30を覆った状態で、封止フィルム18の剥離が終了する。
【0042】
これにより、薬液投与装置12の保護対象部位である剥離開始部30を保護することができる。なお、使用者は、封止フィルム18が完全に剥離されない状態であっても、把持凹部42を通じて薬液投与装置12の筐体20を把持することができるため、容器本体16の凹部14から、薬液投与装置12を取り外すことができる。
【0043】
本実施形態の包装容器10は、以下の効果を奏する。
【0044】
本実施形態は、取り出す際に接触を避けるべき剥離開始部30(保護対象部位)と、把持可能な把持可能部位とを有する薬液投与装置12(医療機器/被収納体)を収容するための包装容器10に関する。この包装容器10は、薬液投与装置12に対応した形状に形成され薬液投与装置12を収容する凹部14と、凹部14の周囲を囲む部分に平面状に形成された貼着部32と、を有する容器本体16と、貼着部32に剥離可能に貼り付けられて凹部14を封止する封止フィルム18と、を備え、封止フィルム18は、凹部14の周囲に沿って延在するシール部44を介して貼着部32に接着されており、シール部44は、凹部14に収容された薬液投与装置12(医療機器/被収納体)の剥離開始部30(保護対象部位)を囲む部分に形成され、相対的に強い強度で接着された剥離困難部46と、凹部14に収容された薬液投与装置12の把持可能部位を囲む部分に形成され、剥離困難部46よりも相対的に弱い強度で接着された剥離容易部48と、を有する。
【0045】
上記の包装容器10によれば、封止フィルム18を剥離させて包装容器10を開封する際に、封止フィルム18の剥離が剥離困難部46によって停止する。そのため、封止フィルム18が薬液投与装置12の剥離開始部30を覆って保護した状態を保つことができる。これにより、使用者が容器本体16から薬液投与装置12を取り出す際に、使用者が保護対象部位としての剥離開始部30に手を触れることを防止できる。
【0046】
上記の包装容器10において、剥離容易部48は、細い線状パターン48a、48bとして形成されており、剥離困難部46は剥離開始部30(保護対象部位)を囲む部分の貼着部32の全面に形成されていてもよい。
【0047】
このように、剥離困難部46と剥離容易部48とをシール部44の形状によって作り分けることにより、1回の接着工程で同時に作ることができるため、製造工程を削減することができ、生産性に優れる。
【0048】
上記の包装容器10において、剥離容易部48は、シール部44として平行な2本の線状パターン48a、48bを有してもよい。この構成によれば、衝撃等により、封止フィルム18が剥離されそうになった場合であっても、線状パターン48a、48bのいずれか一方で剥離が止まるため、意図せぬ開封のリスクを減らすことができる。
【0049】
上記の包装容器10において、線状パターン48a、48bは、複数の直線部分49aと、直線部分49aを繋ぐ屈曲部49bと、を有しており、線状パターン48bの屈曲部49bには、外方に湾曲して膨出した膨出部52が形成されていてもよい。この構成によれば、封止フィルム18を剥がす方向に引っ張った際の荷重が膨出部52に集中するため、小さな力で封止フィルム18の剥離を開始させることができる。
【0050】
上記の包装容器10において、膨出部52は、剥離困難部46から最も離れた屈曲部49bに設けられていてもよい。これにより、剥離困難部46から離れた部分から封止フィルム18の剥離を開始させることができ、剥離容易部48の剥離操作が容易になる。
【0051】
上記の包装容器10において、膨出部52の近傍の貼着部32から延び出ると共に、封止フィルム18から離間する方向に下がった離間部33が設けられていてもよい。この構成によれば、封止フィルム18を剥離させる際に、使用者が容易に封止フィルム18を把持することができ、封止フィルム18の剥離を容易に行うことができる。
【0052】
上記の包装容器10に収容される被収納体は、体に貼り付けて使用する薬液投与装置12であり、薬液投与装置12は、箱状の筐体20と、筐体20よりも大きな外形に形成され、筐体20を患者の体に貼り付けるための粘着面24bを有する筐体貼付材24と、筐体貼付材24の粘着面24bを覆うと共に一端に筐体貼付材24から離間した剥離開始部30を有する保護シート28と、を有し、てもよい。そして、包装容器10の容器本体16の凹部14には、保護シート28を封止フィルム18と向かい合わせにした向きで薬液投与装置12が収容され、保護シート28の剥離開始部30を囲む部分の貼着部32に剥離困難部46が形成されていてもよい。
【0053】
上記の構成によれば、容器本体16から薬液投与装置12を取り出す際に、保護シート28の剥離開始部30を保護することができる。
【0054】
(第2実施形態)
図5A及び
図5Bに示すように、本実施形態の包装容器60は、プレフィルドシリンジ62(医療機器)を包装する容器である。包装容器60は、樹脂シートよりなる容器本体64と、容器本体64を封止する封止フィルム66とを備える。容器本体64は、PET樹脂等よりなる透明な厚手の樹脂シートよりなり、その中央部には、真空成形等の手法で形成された凹部68が形成されている。凹部68は、プレフィルドシリンジ62に対応した形状に形成されており、凹部68にプレフィルドシリンジ62の全体を収容することができる。容器本体64の外周部には、封止フィルム66を接着するための平面状の貼着部70が形成されている。
【0055】
封止フィルム66と貼着部70は、所定形状のシール部72において剥離可能に接着されている。本実施形態において、プレフィルドシリンジ62の先端部が保護対象部位となっている。そこで、シール部72は、プレフィルドシリンジ62の先端部を囲む部分の貼着部70に、剥離困難部74が形成され、それ以外の部分は剥離容易部76が形成されている。剥離困難部74は、プレフィルドシリンジ62の先端部を囲む部分の貼着部70の全面に封止フィルム66を接着して形成される。剥離容易部76は、幅の細い線状パターン78として形成されている。
【0056】
本実施形態の包装容器60においても、使用者は剥離容易部76から、封止フィルム66を剥離させることができる。そして、使用者による封止フィルム66の剥離は、剥離困難部74において停止するように構成されている。これにより、封止フィルム66がプレフィルドシリンジ62の先端部(保護対象部位)を覆った状態に保たれる。使用者が、プレフィルドシリンジ62を容器本体64から取り外す際に、使用者の手がプレフィルドシリンジ62の先端部に触れるのを防ぐことができる。
【0057】
上記において、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0058】
10、60…包装容器 12…薬液投与装置
14、68…凹部 16、64…容器本体
18、66…封止フィルム 20…筐体
24…筐体貼付材 24b…粘着面
28…保護シート 30…剥離開始部
32、70…貼着部 44、72…シール部
46、74…剥離困難部 48、76…剥離容易部