(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】半導体パッケージの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/02 20060101AFI20240523BHJP
H01L 23/08 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
H01L23/02 B
H01L23/08 C
(21)【出願番号】P 2020128945
(22)【出願日】2020-07-30
【審査請求日】2022-06-09
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【氏名又は名称】田邊 淳也
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 達也
(72)【発明者】
【氏名】井本 洋介
(72)【発明者】
【氏名】外山 豊
【審査官】ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-338571(JP,A)
【文献】特開2007-281233(JP,A)
【文献】特開平09-186547(JP,A)
【文献】特開昭59-017271(JP,A)
【文献】特開昭62-261157(JP,A)
【文献】特開2001-156191(JP,A)
【文献】特開2006-269725(JP,A)
【文献】国際公開第2016/152733(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/02
H01L 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠部と、前記枠部の上端部に接合される蓋体とを有する半導体パッケージの製造方法であって、
前記枠部を形成するためのグリーンシートを準備する準備工程と、
前記グリーンシートの一対の主面のそれぞれに、前記一対の主面の対向方向に向かい合う溝を形成する形成工程と、
溝が形成された前記グリーンシートを焼成した後、溝が形成された位置で前記グリーンシートを分離することによって前記枠部を得る焼成工程と、を備え、
前記形成工程では、前記グリーンシートにおいて、前記枠部の前記上端部となる一方の主面に形成する溝の深さを、他方の主面に形成する溝の深さよりも浅くすることによって、前記枠部の上端部を傾斜させる、
ことを特徴とする半導体パッケージの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体パッケージ、および、半導体パッケージの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体を収容する収容部を囲む枠部と、枠部に接合される蓋体と、を備える半導体パッケージが知られている。このような半導体パッケージでは、枠部と蓋体とを流動性を有する接合材によって接合することで、収容部の気密を維持する場合がある。例えば、特許文献1には、枠部の蓋体と接合される接合面の内側に、接合材の収容部への流れを規制するダム状部材が配置されるとともに、収容部の接合面に接合される蓋体の端部の厚みを薄くすることで接合面積を小さくする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したような先行技術によっても、半導体パッケージにおいて、接合材による半導体の汚染を抑制しつつ、信頼性を向上するためには、なお改善の余地があった。例えば、特許文献1に記載の技術では、枠部の接合面周辺にはダム状部材が配置されるとともに蓋体の端部が薄くなっているため、枠部と蓋体が複雑な形状になりやすい。このため、枠部や蓋体が脆性破壊しやすく、収容部の気密が維持できなくなるおそれがあり、半導体パッケージの信頼性が低下する。一方、ダム状部材を配置しない場合、接合材が収容部に流入するおそれがある。また、蓋体の端部の厚みを厚くすると接合材を多く使用することになるため、収容部に流入する接合材の量が多くなるおそれがある。収容部に流入する接合材は、半導体を汚染したり、電気配線を短絡させたりする。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、半導体パッケージにおいて、接合材による半導体の汚染を抑制しつつ、信頼性を向上する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、半導体パッケージが提供される。この半導体パッケージは、半導体が収容される収容部を自身の内側に形成する枠部と、前記枠部の上端部に接合される蓋体と、を備え、前記蓋体を鉛直方向上方に配置したとき、前記枠部の前記上端部は、前記収容部側である内側から外側に向かって高さが低くなるように傾斜している傾斜部を有する。
【0008】
この構成によれば、蓋体を枠部の鉛直方向上方に配置し、枠部と蓋体とを流動性がある接合材で接合する場合、枠部の上端部では、接合材は、傾斜部に沿って収容部側である内側から外側に向かって流れやすくなる。これにより、接合材が、収容部に流入することが抑制されるため、収容部に収容される半導体が接合材によって汚染されることを抑制できる。また、枠部の上端部に、内側から外側に向かって高さが低くなるように傾斜している傾斜部を有する比較的簡素な構造で、接合材の収容部への流入を抑制することができる。これにより、枠部および蓋体が簡素な構造になるため脆性破壊しにくくなり、収容部の気密を維持できる。したがって、収容部に収容される半導体が接合材によって汚染されることを抑制しつつ、信頼性を向上することができる。
【0009】
(2)上記形態の半導体パッケージにおいて、前記傾斜部は、前記上端部の内側の端から外側の端まで形成されていてもよい。この構成によれば、傾斜部は、上端部の内側の端から外側の端まで形成されている。これにより、枠部の上端部と蓋体との間の接合材のほとんどが、傾斜部に沿って内側から外側に向かって流れるため、接合材が収容部に流入することをさらに抑制することができる。したがって、接合材による半導体の汚染をさらに抑制しつつ、信頼性を向上することができる。
【0010】
(3)本発明の別の形態によれば、枠部と、前記枠部の上端部に接合される蓋体とを有する半導体パッケージの製造方法が提供される。この半導体パッケージの製造方法は、前記枠部を形成するためのグリーンシートを準備する準備工程と、前記グリーンシートの一対の主面のそれぞれに、前記一対の主面の対向方向に向かい合う溝を形成する形成工程と、溝が形成された前記グリーンシートを焼成した後、溝が形成された位置で前記グリーンシートを分離することによって前記枠部を得る焼成工程と、を備え、前記形成工程では、前記グリーンシートにおいて、前記枠部の前記上端部となる一方の主面に形成する溝の深さを、他方の主面に形成する溝の深さよりも浅くすることによって、前記枠部の上端部を傾斜させる。この構成によれば、形成工程において、枠部を形成するためのグリーンシートの一対の主面のそれぞれに、一対の主面の対向方向に向かい合う溝を形成する。このとき、枠部の上端部となる一方の主面に形成する溝の深さを、他方の主面に形成する溝の深さよりも浅くする。これにより、グリーンシートは、一方の主面側が、溝が形成されたそれぞれの位置において凹形状となるように変形するため、グリーンシートを分離することで得られる枠部の上端部に、枠部の内側から外側に向かって高さが低くなるように傾斜する傾斜部が形成される。上端部に傾斜部が形成されると、枠部と蓋体とを接合するとき、接合材は傾斜部に沿って枠部の内側から外側に向かって流れるため、簡素な構造で接合材が枠部の内側に流入することを抑制できる。これにより、枠部の内側に収容される半導体の接合材による汚染を抑制しつつ、脆性破壊しにくく信頼性を向上することができる半導体パッケージを容易に製造することができる。
【0011】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、複数の半導体パッケージを含む半導体パッケージアレイ、半導体パッケージおよび半導体パッケージアレイの製造方法、これらの製造方法をコンピュータに実行させるコンピュータプログラム、コンピュータプログラムを配布するためのサーバ装置、コンピュータプログラムを記憶した一時的でない記憶媒体等などの形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態の半導体パッケージの模式図である。
【
図2】本実施形態の半導体パッケージの製造方法を説明する図である。
【
図7】比較例の半導体パッケージの枠部の製造方法を説明する図である。
【
図8】第1実施形態の半導体パッケージの変形例の模式図である。
【
図9】第1実施形態の半導体パッケージの変形例の模式図である。
【
図10】第1実施形態の半導体パッケージの変形例の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の半導体パッケージ1の模式図である。本実施形態の半導体パッケージ1は、枠部10と、放熱体20と、蓋体30と、接合材40と、を備える。半導体パッケージ1には、半導体50が配置される。半導体50は、例えば、発光ダイオードであり、半導体パッケージ1の外部の制御装置と電気的に接続されており、発光が制御される。なお、半導体50は、発光ダイオードに限定されず、例えば、パワーMOSFETやダイオードなどから構成されるパワーデバイスであってもよいし、他の機能を有する半導体を含んでもよい。半導体パッケージ1は、半導体50と外部の制御装置とを電気的接続するとともに、半導体50で発生する熱を外部に放出する。
【0014】
枠部10は、セラミック、例えば、アルミナによって形成されている枠状部材である。枠部10は、半導体50が収容される収容部11を自身の内側に形成する。枠部10は、収容部11の外周に配置され、収容部11を囲んでいるとも言える。枠部10の上端部10aは、収容部11側である内側から外側に向かって高さが低くなるように傾斜している傾斜部12を有する。本実施形態では、
図1に示すように、傾斜部12は、上端部10aの内側の端12aから外側の端12bまで形成されている。傾斜部12の傾斜は、内側の端12aから外側の端12bに向かって一定の割合で高さが低くなっている。枠部10の下端部10bには、段差面13が形成されている。段差面13には、タングステンにニッケルめっきが施された図示しないメタライズ層が配置されている。収容部11には、図示しない電気配線が配置されている。この電気配線は、収容部11に収容されている半導体50と、半導体パッケージ1の外部の機器とを電気的に接続する。
【0015】
放熱体20は、例えば、銅から形成されている矩形形状の平板であって、一対の主面21、22を有している。一方の主面21には、半導体50が配置される。一方の主面21は、図示しないろう材および段差面13に形成されているメタライズ層を介して、枠部10に接合される。放熱体20は、半導体50で発生する熱を外部に放出する。
【0016】
蓋体30は、平板形状の部材であって、例えば、透光性を有するガラスから形成されている。蓋体30は、枠部10の上端部10aに接合材40を介して接合される。蓋体30は、枠部10および放熱体20とともに、収容部11の気密性を維持する。なお、蓋体30を形成する材料は、ガラスに限定されず、金属から形成されていてもよい。
【0017】
接合材40は、例えば、エポキシ樹脂であって、枠部10の上端部10aと蓋体30の表面31とを接合する。本実施形態では、接合材40の一部は、枠部10において、収容部11側とは反対側の側面14上に位置している。なお、接合材40は、エポキシ樹脂に限定されず、例えば、金と錫とからなるろう材であってもよい。
【0018】
次に、半導体パッケージ1の製造方法について説明する。本実施形態では、枠部10は、金型を用いて成型したセラミックからなるグリーンシートを焼成することで作製する。ここで、グリーンシートを成型するとき、枠部10の上端部10aとなる部分は、金型によって傾斜するように変形させることで傾斜部12を成型する。
【0019】
図2は、本実施形態の半導体パッケージ1の製造方法を説明する図である。
図2には、放熱体20が接合されている枠部10に対して、蓋体30を接合するときの模式図を示している。上述した金型を用いた方法によって成型した枠部10には、半導体50が接合された放熱体20が接合されている。
図2(a)には、放熱体20が接合された枠部10と、蓋体30とが接合される前の状態を示している。枠部10と蓋体30とを接合するとき、
図2(a)に示すように、枠部10の上端部10aに接合材40となるエポキシ樹脂40aを配置する。
【0020】
図2(a)の状態から、枠部10の鉛直方向上方から蓋体30を近づけ、蓋体30を枠部10の傾斜部12の内側の端12aに接触させる。これにより、流動性を有するエポキシ樹脂40aは、蓋体30の表面31に接触し、表面31に沿って広がる(
図2(b)参照)とともに、傾斜部12に沿って外側の端12bに向かって流れる。外側の端12bに向かって流れるエポキシ樹脂40aの一部は、枠部10の傾斜部12と蓋体30との間から流れ出て、枠部10の側面14に沿って鉛直方向下側に向かう(
図2(c)参照)。
図2(c)の状態でエポキシ樹脂40aが固まると、半導体パッケージ1が完成する。このようにして完成した半導体パッケージ1では、接合材40が収容部11に流入することなく、枠部10の側面14に位置しており、収容部11に流入する接合材40によって半導体50が汚染されたり、収容部11の電気配線が短絡したりすることを抑制できる。
【0021】
図3は、比較例の半導体パッケージ8、9の模式図である。ここでは、
図3を用いて、比較例の半導体パッケージ8、9における枠部80、90と蓋体30とを接合するときの課題を説明する。
図3(a)に示す半導体パッケージ8では、枠部80の上端部80a、すなわち、接合材40を用いて蓋体30と接合される部分は、半導体50が収容される収容部81側である内側から外側に向かって高さが高くなるように傾斜している傾斜部82を有する。このため、枠部80と蓋体30とを接合材40によって接合する場合、枠部80と蓋体30とに挟まれる接合材40は、傾斜部82の外側の端82bから内側の端82aに向かって流れる。このとき、接合材40は、
図3(a)に示すように、収容部81に流入するおそれがある(二点鎖線矢印F8参照)。収容部81に流入する接合材40は、半導体50を汚染したり、収容部81に配置されている電気配線を短絡したりするおそれがある。
【0022】
図3(b)に示す半導体パッケージ9では、枠部90の上端部90aは、接合される蓋体30の表面31と略平行となる平面部92を有する。このため、枠部90と蓋体30とを接合材40によって接合する場合、枠部90と蓋体30とに挟まれる接合材40は、平面部92に沿って、枠部90の収容部91側と、収容部91とは反対側との両方に向かって流れる(二点鎖線矢印F91参照)。収容部91側に向かって流れる接合材40は、
図3(b)に示すように、収容部91に流入するおそれがある(二点鎖線矢印F92参照)。収容部91に流入する接合材40は、
図3(a)で示した半導体パッケージ8と同様に、半導体50を汚染したり、収容部91に配置されている電気配線を短絡したりするおそれがある。
【0023】
以上説明した、本実施形態の半導体パッケージ1によれば、蓋体30を枠部10の鉛直方向上方に配置し、枠部10と蓋体30とを流動性がある接合材40で接合する場合、接合材40は、傾斜部12に沿って収容部11側である内側から外側に向かって流れやすくなる。これにより、接合材40が、収容部11に流入することが抑制されるため、収容部11に収容される半導体50が接合材40によって汚染されることを抑制できる。また、枠部10の上端部10aを、内側から外側に向かって高さが低くなるように傾斜している傾斜部12を有する比較的簡素な構造とすることで、接合材40の収容部11への流入を抑制することができる。これにより、枠部10および蓋体30が簡素な構造になるため脆性破壊しにくくなり、収容部11の気密を維持できる。したがって、収容部11に収容される半導体50が接合材40によって汚染されることを抑制しつつ、信頼性を向上することができる。
【0024】
また、本実施形態の半導体パッケージ1によれば、接合材40の収容部11への流入を抑制することができるため、収容部11に配置されている電気配線の短絡を抑制することができる。これにより、半導体パッケージ1の信頼性をさらに向上することができる。
【0025】
また、本実施形態の半導体パッケージ1によれば、傾斜部12は、上端部10aの内側の端12aから外側の端12bまで形成されている。これにより、枠部10の上端部10aと蓋体30との間の接合材40のほとんどが、傾斜部12に沿って内側から外側に向かって流れるため、接合材40が収容部11の内側に流れ込むことをさらに抑制することができる。したがって、接合材40による半導体50の汚染をさらに抑制しつつ、信頼性を向上することができる。
【0026】
<第2実施形態>
図4は、枠部アレイ15の斜視図である。
図5は、枠部アレイ15の断面図である。第2実施形態では、第1実施形態と比較して、枠部10の製造方法が異なる。
【0027】
本実施形態では、半導体パッケージ1を製造するとき、枠部10は、
図4に示す枠部アレイ15を用いて製造する。
図4に示す枠部アレイ15は、焼成される前のセラミックからなるグリーンシートであって、焼成後に枠部10となる枠状部材15aがアレイ状に配列された板形状を有している。枠部アレイ15が有する複数の枠状部材15aのそれぞれでは、枠部10の段差面13となる段差面16が、シート状の枠部アレイ15の一対の主面のうちの一方の側に形成される(
図5参照)。ここで、
図5に示すように、枠部アレイ15が有する一対の主面のうち、枠状部材15aが枠部10となったときに放熱体20が接合される側とは反対側の主面を一方の主面17とし、枠状部材15aが枠部10となったときに放熱体20が接合される側の主面を他方の主面18とする。
図5では、便宜的に、主面17、18を二点鎖線で示している。枠部アレイ15は、特許請求の範囲の「グリーンシート」に相当する。
【0028】
図4および
図5に示す枠部アレイ15の一対の主面17、18のそれぞれには、隣り合う枠状部材15aの間に溝17a、18aが形成される。溝17a、18aは、一対の主面17、18の対向方向に向かい合うように位置している。一方の主面17に形成される溝17aと、他方の主面18に形成される溝18aは、枠部アレイ15を焼成した後に、複数の枠状部材15aを切り離して、枠部10とするためのものである。本実施形態では、溝17aの深さD17は、溝18aの深さD18より浅い。なお、
図5に示す溝17a、18aは、それぞれの深さをわかりやすくするため、実際より大きく示してある。
【0029】
図6は、枠部10の製造方法を説明する図である。
図6に示す図は、
図5に示すA部の拡大図である。次に、本実施形態の半導体パッケージ1の製造方法のうち、特に、枠部10の製造方法を説明する。枠部10を製造するには、最初に、準備工程として、枠部10を形成するためのグリーンシートを準備する。このとき、準備されるグリーンシートには、枠部10の収容部11となる貫通孔と、段差面16が形成されている。
図6(a)には、隣り合っている2つの枠状部材15aの境界を二点鎖線15bで示している。
【0030】
次に、形成工程として、枠部アレイ15の両面17、18のそれぞれに、溝17a、18aを形成する。具体的には、
図6(b)に示すように、一方の主面17に溝17aを形成し、他方の主面18に溝18aを形成する。このとき、枠部10の上端部10aとなる一方の主面17に形成する溝17aの深さを、他方の主面18に形成する溝18aの深さよりも浅くする。溝17a、18aは、一対の主面17、18の対向方向に向かい合うように形成される。
【0031】
枠部アレイ15では、一対の主面17、18のそれぞれに溝17a、18aが形成されると、一対の主面17、18のそれぞれは、溝17a、18aのそれぞれを起点として押し広げられる。この溝を起点として押し広げられる量は、溝の深さが深いほど大きいため、枠部アレイ15では、一方の主面17は、他方の主面18より押し広げられる量が小さい。これにより、
図6(c)に示すように、溝17aを挟んで2つの枠状部材15aのそれぞれの一方の主面17が近づくように変形する。すなわち、枠部アレイ15全体では、一方の主面17側が凹形状となるように変形する。次に、焼成工程として、溝17a、18aが形成された枠部アレイ15を焼成した後、溝17a、18aが形成された位置で分離することによって枠部10を得る。枠部アレイ15が焼成されるとき、1つの枠状部材15aの一方の主面17は、溝17a側から、
図6(c)に示す点線矢印A1の方向に向かって高さが高くなるように傾斜している。このため、枠状部材15aが個別に分離されると、一方の主面17における溝17a側は、枠部10における収容部11側とは反対側の外側となるため、一方の主面17は、枠部10での収容部11側である内側から外側に向かって高さが低くなるように傾斜している傾斜部12となる。なお、
図6(c)には、水平な仮想線を二点鎖線L1で示している。また、
図6(b)、6(c)において、枠状部材15aと溝17aとの境界線が二点鎖線15bに対して傾斜する度合いは、実際より大きく示してある。同様に、枠状部材15aと溝18aとの境界線が二点鎖線15bに対して傾斜する度合いは、実際より大きく示してある。
【0032】
図7は、比較例の半導体パッケージの枠部の製造方法を説明する図である。比較例の製造方法では、枠部は、本実施形態と同様に、枠部アレイ15を用いて製造される(
図7(a)参照)。しかしながら、比較例の製造方法では、一対の主面17、18のそれぞれに形成される溝17b、18bの深さが、本実施形態の製造方法とは異なる。
【0033】
比較例の製造方法では、枠部アレイ15の両面17、18のそれぞれに溝17b、18bを形成するとき、枠部の上端部となる一方の主面17に形成する溝17bの深さを、他方の主面18に形成する溝18bの深さよりも深くする(
図7(b)参照)。これにより、比較例の製造方法では、
図7(c)に示すように、溝18bを挟んで2つの枠状部材15aのそれぞれの他方の主面18が近づくように変形する。すなわち、枠部アレイ15全体では、他方の主面18側が、溝18bが形成されたそれぞれの位置において凹形状となるように変形するため、1つの枠状部材15aにおける一方の主面17は、溝17b側から
図7(c)に示す点線矢印A2の方向に向かって高さが低くなるように傾斜する(
図7(c)に示す水平な仮想線L1参照)。このため、蓋体と接合する枠部の上端部に配置される接合材は、上端部に沿って枠部が囲む収容部に流入するおそれがあるため、収容部に収容される半導体の汚染や電気配線の短絡が発生するおそれがある。
【0034】
以上説明した、本実施形態の半導体パッケージ1の製造方法によれば、形成工程において、枠部アレイ15の両面17、18のそれぞれに、一対の主面17、18の対向方向に向かい合う溝17a、18aを形成する。このとき、枠部10の上端部10aとなる一方の主面17に形成する溝17aの深さを、他方の主面18に形成する溝18aの深さよりも浅くする。これにより、枠部アレイ15は、一方の主面17側が、溝17bが形成されたそれぞれの位置において凹形状となるように変形するため、枠部アレイ15を分離することで得られる枠部10の上端部10aに、枠部10の内側から外側に向かって高さが低くなるように傾斜する傾斜部12が形成される。上端部10aに傾斜部12が形成されると、枠部10と蓋体30とを接合するとき、接合材40は傾斜部12に沿って枠部10の内側から外側に向かって流れるため、簡素な構造で接合材40が枠部10の内側に流入することを抑制できる。これにより、枠部10の内側に収容される半導体50の接合材40による汚染を抑制しつつ、脆性破壊しにくく信頼性を向上することができる半導体パッケージ1を容易に製造することができる。
【0035】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0036】
[変形例1]
上述の実施形態では、蓋体30は、平板形状の部材であるとした。しかしながら、蓋体の形状はこれに限定されない。凹形状であってもよく、枠部と蓋体とによって半導体を収容する収容部を形成してもよい。
【0037】
図8は、第1実施形態の半導体パッケージ1の変形例の模式図である。
図8に示す半導体パッケージ2は、枠部10と、放熱体20と、蓋体60と、接合材40と、を備える。蓋体60は、凹形状の部材であって、枠部10とともに半導体50を収容する収容部11を形成する。蓋体60の2つの端部61は、接合材40によって枠部10の傾斜部12に接合される。蓋体60の端部61と傾斜部12との間に配置される接合材40は、傾斜部12に沿って枠部10の外側に流れるため、接合材40が収容部11に流れ込むことを抑制できる。
【0038】
[変形例2]
上述の実施形態では、枠部10の傾斜部12は、内側の端12aから外側の端12bまで形成されているとした。しかしながら、傾斜部12の形状はこれに限定されない。
【0039】
図9は、第1実施形態の半導体パッケージ1の変形例の模式図である。
図9に示す半導体パッケージ3の枠部10が有する上端部10aは、傾斜部12と、平面部19とを有する。半導体パッケージ3では、
図9に示すように、平面部19は、上端部10aにおいて、収容部11側に形成されており、蓋体30の表面31と接触する。傾斜部12は、平面部19の外側、すなわち、上端部10aにおいて外側寄りに形成されており、上端部10aの外側の端12bまで形成されている。このような形態の枠部10でも、接合材40は、外側に向かって流れるため、接合材40の収容部11内への流入を抑制することができる。なお、上端部10aでの傾斜部12の面積は、平面部19の面積より広い方が望ましいが、これに限定されない。少しでも傾斜部12があることによって、接合材40が外側に向かって流れるため、接合材40の収容部11内への流入を抑制することができる。
【0040】
[変形例3]
第1実施形態では、枠部10は、グリーンシートにおいて、枠部10の上端部10aとなる部分を、金型を用いて成型するときに、金型によって傾斜するように変形させて傾斜部12を成型するとした。しかしながら、傾斜部の成型方法は、これに限定されない。例えば、枠部10となるグリーンシートを焼成した後、上端部10aを研磨することで傾斜部を形成してもよい。
【0041】
[変形例4]
第1実施形態では、傾斜部12の傾斜は、内側の端12aから外側の端12bに向かって一定の割合で高さが低くなっているとした。しかしながら、傾斜部12の傾斜は、一定の割合で変化しなくてもよい。内側から外側に向かって高さが低くなるように傾斜していればよい。
【0042】
[変形例5]
第2実施形態では、半導体パッケージ1の製造方法において、枠部10の上端部10aとなる一方の主面17に形成する溝17aの深さを、他方の主面18に形成する溝18aの深さよりも浅くすることで、枠部10の傾斜部12を形成するとした。しかしながら、傾斜部12の形成方法は、これに限定されない。
【0043】
[変形例6]
上述の実施形態では、放熱体20は、銅から形成されており、枠部10は、アルミナから形成されるとした。しかしながら、放熱体20および枠部10を形成する材料はこれに限定されない。また、放熱体はなくてもよく、半導体が配置される枠部が凹形状に形成されていてもよい。
【0044】
図10は、第1実施形態の半導体パッケージ1の変形例の模式図である。
図10に示す半導体パッケージ4は、基体70と、蓋体30と、接合材40と、を備える。基体70は、凹形状に形成されており、2つの端部70aには、内側の端72aから外側の端72bに向かって高さが低くなるように傾斜している傾斜部72が形成されている。半導体50は、
図10に示すように、基体70の内側である収容部71に配置されている。これにより、基体70の傾斜部72と、蓋体30との間に接合材40は、内側の端72aから外側の端72bに向かって流れるため、接合材40の収容部71内への流入を抑制することができる。
【0045】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0046】
1,2,3,4…半導体パッケージ
10,70…枠部
10a,70a…上端部
11,71…収容部
12,72…傾斜部
12a,72a…内側の端
12b,72b…外側の端
15…枠部アレイ
15a…枠状部材
17…一方の主面
18…他方の主面
17a,18a…溝
30,60…蓋体
40…接合材
50…半導体