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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】検体処理装置、測定装置および測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/44 20060101AFI20240523BHJP
   G01N 35/00 20060101ALI20240523BHJP
   C12N 15/10 20060101ALN20240523BHJP
   C12M 1/00 20060101ALN20240523BHJP
   C12Q 1/6806 20180101ALN20240523BHJP
【FI】
G01N1/44
G01N35/00 B
C12N15/10 100Z
C12M1/00 A
C12Q1/6806 Z
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020144910
(22)【出願日】2020-08-28
(65)【公開番号】P2022039745
(43)【公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】390014960
【氏名又は名称】シスメックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111383
【弁理士】
【氏名又は名称】芝野 正雅
(72)【発明者】
【氏名】大上 創一
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 規彰
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/064348(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/168993(WO,A1)
【文献】特開2006-058212(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0282184(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0112969(US,A1)
【文献】国際公開第2017/122333(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/44
G01N 35/00
C12N 15/10
C12M 1/00
C12Q 1/6806
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応容器に収容された検体を処理する検体処理装置であって、
前記反応容器が設置される設置部と、
前記設置部に設置された前記反応容器を加温する温度調節部と、
前記温度調節部を開放する第1位置と、前記温度調節部を覆う第2位置と、に移動可能な開閉部材と、を備え、
前記開閉部材は、前記反応容器に押圧される第1被押圧部を含み、前記反応容器を前記設置部に設置する動作により前記設置部に向けて移動される前記反応容器が、前記第1被押圧部を押圧することにより、前記第2位置から前記第1位置へと移動するよう構成されている、検体処理装置。
【請求項2】
前記第1位置は、前記設置部を介した前記反応容器の前記温度調節部へのアクセスを許容する位置であり、
前記第2位置は、前記温度調節部を覆い、前記反応容器の前記温度調節部へのアクセスを遮る位置である、請求項1に記載の検体処理装置。
【請求項3】
前記設置部は、前記温度調節部および前記開閉部材が内部に配置されるとともに、前記反応容器を受け容れる凹部を有し、
前記開閉部材は、前記反応容器の第1端部を前記凹部内の前記第1被押圧部に押圧させた状態で、前記反応容器の第2端部を前記凹部内へ移動させる動作に伴って、前記開閉部材が前記第1位置へ移動するように構成されている、請求項1または2に記載の検体処理装置。
【請求項4】
前記開閉部材は、前記反応容器を前記設置部から取り除く動作に連動して、前記第1位置から前記第2位置へ移動するように構成されている、請求項1~のいずれか1項に記載の検体処理装置。
【請求項5】
前記開閉部材を前記第2位置へ付勢する第1付勢部材をさらに備え、
前記開閉部材は、前記反応容器の押圧により前記第1付勢部材の付勢力に抗して前記第1位置に保持され、前記反応容器が取り除かれる際に前記第1付勢部材の付勢力により前記第2位置へ移動するように構成されている、請求項に記載の検体処理装置。
【請求項6】
前記開閉部材の前記第2位置から前記第1位置への移動を解除可能に規制するロック機構をさらに備え、
前記ロック機構は、前記反応容器を前記設置部に設置する動作に連動して、前記開閉部材の移動規制を解除するように構成されている、請求項1~のいずれか1項に記載の検体処理装置。
【請求項7】
反応容器に収容された検体を処理する検体処理装置であって、
前記反応容器が設置される設置部と、
前記設置部に設置された前記反応容器を加温する温度調節部と、
前記温度調節部を開放する第1位置と、前記温度調節部を覆う第2位置と、に移動可能な開閉部材と、
前記開閉部材の前記第2位置から前記第1位置への移動を解除可能に規制するロック機構と、を備え、
前記ロック機構は、前記反応容器を前記設置部に設置する動作に連動して、前記開閉部材の移動規制を解除するように構成されている、検体処理装置。
【請求項8】
前記ロック機構は、前記反応容器を前記設置部から取り除く動作に連動して、前記開閉部材の移動規制を解除する状態から前記開閉部材の移動を規制する状態に切り替わるように構成されている、請求項に記載の検体処理装置。
【請求項9】
前記ロック機構は、前記設置部に設置される動作に伴い前記反応容器に押圧されることにより前記移動規制を解除させる第2被押圧部を含む、請求項またはに記載の検体処理装置。
【請求項10】
前記ロック機構は、前記第2位置における前記開閉部材を係止するとともに前記第2被押圧部と一体的に移動するように構成された係止部をさらに含み、
前記係止部は、前記反応容器に押圧された前記第2被押圧部の移動に伴って前記開閉部材の係止を解除する位置へ移動するように構成されている、請求項に記載の検体処理装置。
【請求項11】
前記ロック機構は、前記開閉部材を係止する位置へ前記係止部を付勢する第2付勢部材をさらに含み、
前記係止部は、前記第2被押圧部に対する前記反応容器の押圧により前記第2付勢部材の付勢力に抗して前記開閉部材の係止を解除する位置に保持され、前記反応容器が取り除かれる際に前記第2付勢部材の付勢力により前記開閉部材を係止する位置へ移動するように構成されている、請求項10に記載の検体処理装置。
【請求項12】
前記設置部は、前記反応容器が前記第2被押圧部を押圧する際に通過する通路部を含み、
前記通路部は、前記反応容器の一部が通過可能で、作業者の手指の通過を阻止する形状に形成されている、請求項11のいずれか1項に記載の検体処理装置。
【請求項13】
前記設置部は、前記温度調節部、前記開閉部材および前記ロック機構が内部に配置されるとともに、前記反応容器を受け容れる凹部を有し、
前記反応容器が前記凹部に配置される際、前記反応容器が第1高さ位置に到達すると前記ロック機構が前記開閉部材の移動規制を解除し、
前記反応容器が前記第1高さ位置よりも下方の第2高さ位置に到達すると前記開閉部材が前記第1位置へ移動し、
前記反応容器が前記第2高さ位置と同じかまたは下方の第3高さ位置に到達すると前記反応容器の検体収容部が前記温度調節部上に配置される、請求項12のいずれか1項に記載の検体処理装置。
【請求項14】
前記設置部は、前記温度調節部および前記開閉部材が内部に配置されるとともに、前記反応容器を受け容れる凹部を有し、
前記温度調節部は、発熱体と、前記発熱体が接続されるとともに前記反応容器の検体収容部を受け容れる設置穴が形成された上面を有する伝熱部材と、を含み、
前記開閉部材は、前記凹部内で前記伝熱部材の前記上面を覆うように配置された板状部材であり、前記上面に沿ってスライド可能に構成されている、請求項1~13のいずれか1項に記載の検体処理装置。
【請求項15】
前記開閉部材は、前記伝熱部材の前記設置穴に対応する貫通孔を有し、
前記第1位置は、前記貫通孔と前記設置穴とが重なる位置であり、
前記第2位置は、前記貫通孔が前記設置穴に対してスライド方向にずれた位置である、請求項14に記載の検体処理装置。
【請求項16】
前記検体に試薬を反応させて調製した試料を測定する測定装置であって、
前記温度調節部は、前記反応容器中の前記試料を加温するように構成されており、
前記試料を測定する測定部を備えた、請求項1~15のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項17】
試料を測定する測定装置を用いた測定方法であって、
ユーザによって前記測定装置に設置された反応容器を、温度調節部によって加温し、
前記温度調節部によって加温された前記反応容器中の試料を分取して測定し、
前記試料の分取が行われた後、ユーザによって前記反応容器が取り外された前記温度調節部の上面を、移動可能に設けられた開閉部材によって覆
前記開閉部材は、前記反応容器に押圧される第1被押圧部を含み、前記反応容器を設置する動作により移動される前記反応容器が、前記第1被押圧部を押圧することにより、前記温度調節部を開放する位置へと移動する、方法。
【請求項18】
試料を測定する測定装置を用いた測定方法であって、
ユーザによって前記測定装置に設置された反応容器を、温度調節部によって加温し、
前記温度調節部によって加温された前記反応容器中の試料を分取して測定し、
前記試料の分取が行われた後、ユーザによって前記反応容器が取り外された前記温度調節部の上面を、移動可能に設けられた開閉部材によって覆うとともに、前記開閉部材の移動を解除可能に規制し、
前記反応容器を設置する動作に連動して、前記開閉部材の移動規制を解除する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体処理装置、測定装置および測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、図22に示すように、核酸増幅用カートリッジ901において核酸の増幅および測定を行う核酸分析装置900が開示されている。核酸分析装置900は、温調機構902と測光機構903とを備える。温調機構902は、核酸増幅用カートリッジ901の反応検出部901aの外観形状に対応した凹部904aが形成されたヒートブロック904を有する。ヒートブロック904の凹部904aに核酸増幅用カートリッジ901の反応検出部901aがセットされる。反応検出部901aには、核酸と、核酸の増幅および測定に必要な試薬とが収容される。温調機構902は、ヒートブロック904の温度を、95℃、54℃、45℃の各温度に所定のサイクルで変化させて、核酸を増幅させる。測光機構903は、発光部903aおよび受光部903bを有し、ヒートブロック904に形成された貫通孔904bを介して蛍光の量をモニタリングする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】再公表特許第2005/118772号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1では、ヒートブロック904の上面上に核酸増幅用カートリッジ901がセットされるので、核酸増幅用カートリッジ901を取り外した状態で、ヒートブロック904が核酸分析装置900内で露出する。そのため、ユーザがヒートブロック904に触れる可能性がある。ヒートブロック904は95℃に加熱され、測定が完了した核酸増幅用カートリッジ901を取り外したヒートブロック904は高温状態が維持されるため、別の核酸増幅用カートリッジ901を新たにヒートブロック904の上面上にセットする際には、ユーザが高温状態のヒートブロック904に誤って接触する恐れがある。
【0005】
この発明は、反応工程で反応容器を加温する検体処理装置、測定装置および測定方法において、ユーザが誤って温度調節部に接触するのを抑制することに向けたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、この発明の第1の局面による検体処理装置は、図1に示すように、反応容器(50)に収容された検体を処理する検体処理装置であって、反応容器(50)が設置される設置部(10)と、設置部(10)に設置された反応容器(50)を加温する温度調節部(20)と、温度調節部(20)を開放する第1位置(P1)と、温度調節部(20)を覆う第2位置(P2)と、に移動可能な開閉部材(40)と、を備える。図5および図6に示すように、開閉部材(40)は、反応容器(50)に押圧される第1被押圧部(43)を含み、反応容器(50)を設置部(10)に設置する動作により設置部(10)に向けて移動される反応容器(50)が、第1被押圧部(43)を押圧することにより、第2位置(P2)から第1位置(P1)へと移動するよう構成されている。
この発明の第2の局面による検体処理装置は、図1に示すように、反応容器(50)に収容された検体を処理する検体処理装置であって、反応容器(50)が設置される設置部(10)と、設置部(10)に設置された反応容器(50)を加温する温度調節部(20)と、温度調節部(20)を開放する第1位置(P1)と、温度調節部(20)を覆う第2位置(P2)と、に移動可能な開閉部材(40)と、を備え、さらに、図8に示すように、開閉部材(40)の第2位置(P2)から第1位置(P1)への移動を解除可能に規制するロック機構(180)を備える。ロック機構(180)は、反応容器(50)を設置部(10)に設置する動作に連動して、開閉部材(40)の移動規制を解除するように構成されている。
【0007】
この発明による検体処理装置は、上記のように、温度調節部(20)を開放する第1位置(P1)と、温度調節部(20)を覆う第2位置(P2)と、に移動可能な開閉部材(40)を備える。これにより、反応容器(50)が設置部(10)から取り除かれている時には、第2位置(P2)に移動させた開閉部材(40)によって、温度調節部(20)を覆って温度調節部(20)に対するアクセスを遮ることができる。そのため、第2位置(P2)の開閉部材(40)によって、ユーザが温度調節部(20)に接触することを抑制できる。また、反応容器(50)が設置部(10)に設置される際には、開閉部材(40)を第1位置(P1)に移動させることにより、開閉部材(40)に遮られることなく反応容器(50)を温度調節部(20)により加温される位置に配置して加温による反応工程を行える。以上から、反応工程で反応容器(50)を加温する検体処理装置(1)において、ユーザが誤って温度調節部(20)に接触するのを抑制することができる。
【0008】
この発明の第の局面による測定方法は、図1および図2に示すように、試料を測定する測定装置(100)を用いた測定方法であって、ユーザによって測定装置(100)に設置された反応容器(50)を、温度調節部(20)によって加温し、温度調節部(20)によって加温された反応容器中(50)の試料を分取して測定し、試料の分取が行われた後、ユーザによって反応容器(50)が取り外された温度調節部(20)の上面(20a)を、移動可能に設けられた開閉部材(40)によって覆う。開閉部材(40)は、反応容器(50)に押圧される第1被押圧部(43)を含み、反応容器(50)を設置する動作により移動される反応容器(50)が、第1被押圧部(43)を押圧することにより、温度調節部(20)を開放する位置へと移動する。
この発明の第4の局面による測定方法は、図1および図2に示すように、試料を測定する測定装置(100)を用いた測定方法であって、ユーザによって測定装置(100)に設置された反応容器(50)を、温度調節部(20)によって加温し、温度調節部(20)によって加温された反応容器中(50)の試料を分取して測定し、試料の分取が行われた後、ユーザによって反応容器(50)が取り外された温度調節部(20)の上面(20a)を、移動可能に設けられた開閉部材(40)によって覆うとともに、図8に示すように、開閉部材(40)の移動を解除可能に規制し、反応容器(50)を設置する動作に連動して、開閉部材(40)の移動規制を解除する。
【0009】
この発明による測定方法は、上記のように、試料の分取が行われた後、ユーザによって反応容器(50)が取り外された温度調節部(20)の上面を、移動可能に設けられた開閉部材(40)によって覆う。これにより、反応容器(50)が取り外された際には、開閉部材(40)によって、温度調節部(20)の上面(20a)を覆って温度調節部(20)に対するアクセスを遮ることができる。そのため、開閉部材(40)によって、ユーザが温度調節部(20)に接触することを抑制できる。また、反応容器(50)が設置された際には、開閉部材(40)を移動させることにより、開閉部材(40)に遮られることなく反応容器(50)を温度調節部(20)により加温させて反応工程を行える。以上から、反応工程で反応容器(50)を加温する測定装置(100)において、ユーザが誤って温度調節部(20)に接触するのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、反応工程で反応容器を加温する検体処理装置、測定装置および測定方法において、ユーザが誤って温度調節部に接触するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】検体処理装置の概要を示した模式図(A)および第2位置の開閉部材を示した図(B)である。
図2】測定装置の具体的な構成例を示した模式的な平面図である。
図3】反応容器の構成例を示した模式的な斜視図である。
図4】設置部の構成例を示した模式的な斜視図である。
図5】開閉部材が第2位置にある状態の設置部の模式的な断面図である。
図6】開閉部材が第1位置にある状態の設置部の模式的な断面図である。
図7】第2位置における開閉部材の拡大平面図(A)および第1位置における開閉部材の拡大平面図(B)である。
図8】開閉部材が第2位置にある状態のロック機構を説明するための設置部の模式的な断面図である。
図9】ロック機構をY軸方向に沿って見た模式的な断面図である。
図10図9の600-600線に沿った模式的な断面図である。
図11】反応容器の第2端部が第1高さ位置にある場合の設置部の模式的な断面図である。
図12】反応容器の第2端部が第1高さ位置と第2高さ位置との間にある場合の設置部の模式的な断面図である。
図13】反応容器の第2端部が第2高さ位置にある場合の設置部の模式的な断面図である。
図14】測定装置の制御に関わる構成を説明するためのブロック図である。
図15】測定装置の動作例を示したフローチャートである。
図16】測定装置の動作例を示したフローチャート(前半部分)である。
図17図16に続く測定装置の動作例を示したフローチャート(後半部分)である。
図18】ロック機構の変形例によるロック解除動作を示した模式図(A)~(D)である。
図19】開閉部材の変形例による第1位置と第2位置との間の移動を示した模式図(A)~(C)である。
図20図19の変形例にロック機構を追加した例を示した図(A)~(C)である。
図21】開閉部材の他の変形例による第1位置と第2位置との間の移動を示した模式図(A)~(C)である。
図22】従来技術を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
[測定装置の概要]
まず、図1を参照して、一実施形態による検体処理装置1の概要について説明する。
【0014】
検体処理装置1は、反応容器50に収容された検体を処理する装置である。
【0015】
検体は、生体由来の検体である。また、生体由来の検体は、固体である。固体の検体は、被検体から採取された、組織の一部または細胞、あるいは、これらの採取物に所定の前処理を施して得られた被処理物である。前処理は、組織(または細胞)の固定、脱水、置換、包埋などでありうる。このような検体は、パラフィンによる包埋組織切片である。検体処理装置1は、患者から採取された検体の臨床検査または医学的研究のための処理を行う。
【0016】
検体処理装置1は、反応容器50に収容された検体に試薬を反応させて試料を調製する。調製された試料は、後述する測定部30(図2参照)によって、試料中に含有される所定の被検物質が検出される。被検物質は、DNA(デオキシリボ核酸)の核酸である。
【0017】
検体処理装置1は、単独の装置として構成されうるほか、測定装置100(図2参照)の一部として設けられうる。後述する測定部30(図2参照)を備えた測定装置100の場合には、検体処理装置1は、被検物質を測定によって検出するための前処理を行う。検体処理装置1は、たとえば検体を加温して包埋剤を融解させる処理、検体と試薬とを反応させる処理、被検物質と特異的に反応する標識物質を被検物質と結合させる処理を行う。測定装置100は、前処理された検体中の標識物質を検出することによって、被検物質と結合した被検物質を検出する。
【0018】
図1に示すように、検体処理装置1は、設置部10と、温度調節部20と、開閉部材40と、を備える。
【0019】
設置部10には、反応容器50が設置される。設置部10は、反応容器50の設置空間を構成する。反応容器50は、設置部10の上方位置から下方向へ移動されることにより、設置部10に設置される。設置部10は、反応容器50を支持するように構成される。設置部10は、反応容器50の位置ずれや設置部10からの脱離を抑止するための構造を有している。設置部10は、凹部であり、凹部の内側面によって反応容器50の水平方向の位置ずれを抑止する。
【0020】
温度調節部20は、設置部10の下方に配置され、設置部10に設置された反応容器50を加温するように構成されている。温度調節部20は、設置部10に設置された反応容器50の検体収容部51と近接位置で離間する上面20aを有する。近接位置で離間とは、非接触ではあるが熱を伝達して加温可能な程度に検体収容部51と接近していることを意味する。温度調節部20は、熱を発生し、発生した熱を反応容器50の検体収容部51に伝達することにより、反応容器50を加温する。温度調節部20と検体収容部51とが接近接することにより、熱伝達を効率良く行える。図1のように、上面20aには、反応容器50の検体収容部51の外形に対応する凹形状の設置穴20bが形成されている。上面20aの一部である設置穴20bの内表面が、検体収容部51の周囲を取り囲むように配置される。これにより、伝熱面積が増大して熱伝達を効率良く行える。
【0021】
温度調節部20は、反応容器50を加温する機能を有している。温度調節部20は、熱源を有する。温度調節部20は、発生する熱量の制御により、反応容器50の内容物の温度が所望の温度範囲内になるように調節する。温度調節部20は、ヒートポンプを有する。ヒートポンプは、たとえば、ペルチェ素子であるが、蒸気圧縮ヒートポンプでもよい。温度調節部20は、たとえば50℃以上の温度に反応容器50を加温する。加温により、検体収容部51内の検体と試薬とが反応する。
【0022】
開閉部材40は、温度調節部20を開放または覆うように構成された部材である。
【0023】
開閉部材40は、温度調節部20を開放する第1位置P1(図1(A)参照)と、温度調節部20の上面20aを覆う第2位置P2(図1(B)参照)と、に移動可能に構成されている。
【0024】
図1(A)に示すように、開閉部材40は、第1位置P1において、温度調節部20を設置部10に対して開放し、温度調節部20の上面20aを露出させる。このため、開閉部材40が第1位置P1にある状態で、反応容器50を設置部10に設置すると、反応容器50の検体収容部51が温度調節部20の上面20aと近接できる。言い換えると、開閉部材40が第1位置P1にある状態で、反応容器50を設置部10の適正位置に設置できる。
【0025】
図1(B)に示すように、開閉部材40は、第2位置P2において、温度調節部20の上面20aを覆い、設置部10からの上面20aへのアクセスを遮る。このため、開閉部材40が第2位置P2にある状態で、温度調節部20の上面20aが開閉部材40によって覆われ、ユーザの手指が上面20aに触れることが阻止される。開閉部材40が第2位置P2にある状態で、反応容器50を設置部10に設置しようとしても、反応容器50の検体収容部51は開閉部材40よりも下方の温度調節部20側の位置へ移動できない。つまり、開閉部材40が第2位置P2にある状態で、反応容器50を設置部10の適正位置に設置できない。
【0026】
開閉部材40は、設置部10に反応容器50が設置されていない時には、第2位置P2に配置され、ユーザの手指の進入を遮る。開閉部材40によって温度調節部20の上面20aへの埃や異物の進入も阻止される。開閉部材40は、設置部10に反応容器50を設置する際、第2位置P2から第1位置P1に移動される。開閉部材40が第1位置P1に移動すると、ユーザは反応容器50を設置部10に設置する。その結果、温度調節部20に接触または近接する位置に、反応容器50の検体収容部51が配置され、反応容器50の加温が可能となる。
【0027】
本実施形態の検体処理装置1は、上記のように、温度調節部20を開放する第1位置P1と、温度調節部20の上面20aを覆う第2位置P2と、に移動可能な開閉部材40を備える。これにより、反応容器50が設置部10から取り除かれている時には、第2位置P2に移動させた開閉部材40によって、温度調節部20の上面20aを覆って温度調節部20に対するアクセスを遮ることができる。そのため、第2位置P2の開閉部材40によって、ユーザが温度調節部20に接触することを抑制できる。また、反応容器50が設置部10に設置される際には、開閉部材40を第1位置P1に移動させることにより、開閉部材40に遮られることなく反応容器50を温度調節部20により加温される位置に配置して加温による反応工程を行える。以上から、反応工程で反応容器50を加温する検体処理装置1において、ユーザが誤って温度調節部20に接触するのを抑制することができる。
【0028】
[測定装置の具体的な構成例]
次に、図2図14を参照して、図1に示した検体処理装置1と測定部30とを備えた測定装置100の具体的な構成例について詳細に説明する。図2図14の例では、測定装置100は、核酸抽出から、核酸増幅反応のリアルタイム検出、核酸分析までを自動的に行う核酸測定装置である。以下の説明では、設置部10を、「第1設置部10」とする。
【0029】
この例では、検体は、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織切片である。測定装置100は、温度調節部20に反応容器50を加温させることによりパラフィンを融解させ、組織中の核酸の増幅および核酸の標識を行い、増幅産物と結合した標識物質の測定を行う。測定装置100は、標識物質の測定結果に基づき、被検物質である検出標的核酸の有無を分析する。
【0030】
図2に示すように、測定装置100は、第1設置部10と、分注ユニット110と、温度調節部20、25と、磁力印加部120と、移送ユニット130と、回転機構140と、温度調節部150と、測定部30と、を備える。図1において、XYZ軸は、互いに直交している。X軸およびY軸は、水平面内で直交する軸である。Z軸は、鉛直方向の軸である。
【0031】
測定装置100は、XY平面に平行なベース板101を備える。ベース板101には、第1設置部10と、第2設置部160と、第3設置部170とが設けられている。図2では、第1設置部10と、第2設置部160と、第3設置部170とが3つずつ設けられた例を示す。ベース板101には、1つの第1設置部10と、1つの第2設置部160と、1つの第3設置部170とがX軸に沿って直線状に並んでいる。3つの第1設置部10同士、3つの第2設置部160同士、3つの第3設置部170同士は、それぞれY軸に沿って並んでいる。
【0032】
第1設置部10には、反応容器50が設置される。第1設置部10は、ベース板101に形成された開口11aと、ベース板101の鉛直下側にある支持板11bと、により構成された凹部11を含む。平面視において、開口11aは、矩形状の反応容器50の平面形状に対応する矩形状であって、反応容器50の外形よりも僅かに大きい輪郭を有する。これにより、凹部11は、反応容器50を受け容れるように形成されている。反応容器50は、図3に示す反応容器50の下端部50b(図3参照)が支持板11bにより鉛直上方向に支持され、凹部11内に保持される。反応容器50は、核酸の分析を開始する際に、ユーザにより第1設置部10に設置される。
【0033】
図3に示すように、反応容器50は、検体収容部51と、試薬収容部52と、試薬収容部53a~53hと、混合部54a~54dと、試薬収容部55と、廃液収容部56と、を備える。検体収容部51と、試薬収容部52と、試薬収容部53a~53hと、混合部54a~54dと、試薬収容部55と、廃液収容部56とは、上方が開放するように反応容器50に設けられており、液体を収容可能なウェルである。試薬収容部52、53a~53hは、核酸抽出用の試薬を予め収容している。試薬収容部52、試薬収容部53a~53h、および廃液収容部56の上方は、アルミシールASにより封止されている。試薬収容部55には、反応容器50が第1設置部10に設置される際に、試薬が収容される。
【0034】
反応容器50は、上面板57、側面板58a~58dを有する。上面板57は、長方形の平板形状を有し、検体収容部51、試薬収容部52、試薬収容部53a~53h、混合部54a~54d、試薬収容部52、および廃液収容部56を構成する各開口部分が形成されている。上面板57における各開口部分には、ウェルを構成する凹状空間を区画する壁板部57aが下向きに突出するように連続している。長方形状の上面板57の4つの辺に、4つの側面板58a、58b、58cおよび58dが1つずつ形成されている。側面板58a~58dは、平板形状を有し、長方形状の上面板57から下方へ延びている。側面板58aおよび58bは、上面板57の長辺に沿う方向(X軸方向)に対向しており、上面板57の短辺に対応する一対の側面を構成する。側面板58cおよび58dは、上面板57の短辺に沿う方向(Y軸方向)に対向しており、上面板57の長辺に対応する一対の側面を構成する。
【0035】
反応容器50は、これらの上面板57、側面板58a~58dおよび各壁板部57aが一体形成された樹脂成形品である。上面板57、側面板58a~58dおよび各壁板部57aは、概ね等しい厚みを有する。反応容器50は、下面側が開放されている。つまり、反応容器50は、中実のブロックにウェルが形成されているのではなく、上面板57の裏側(つまり、下側)に、側面板58a~58dにより囲まれる空間SPが形成されている。後述するが、反応容器50が第1設置部10に設置される時、この空間SPの部分に、開閉部材40および温度調節部20が配置される。一例では、反応容器50は、1回の測定用の使い捨て容器である。
【0036】
各収容部に収容される液体について説明する。試薬収容部52は、予め、磁性粒子と磁性粒子保存液とを含む試薬を収容しており、試薬収容部53a~53hは、それぞれ予め、可溶化液、プロテイナーゼK、オイル、溶出液、抽出用試薬の原液、第2洗浄液の原液、希釈液の原液、および第1洗浄液の原液を収容している。検体収容部51は、空の状態で提供される。検体収容部51には、反応容器50の設置前にユーザにより検体が収容される。
【0037】
図2に示すように、第2設置部160は、第2容器210を設置するための設置部である。第2設置部160は、ベース板101の上面と、ベース板101の上面に設置された3つのピン161と、により構成される。第2容器210は、後述する被係合部214が3つのピン161に係合することにより、第2設置部160に設置される。
【0038】
第2容器210は、注入口211と、収容部212と、注入口211と収容部212とを接続する流路213と、を備える。第2容器210は、中心位置に注入口211が配置され、中心位置から一定径の外周側の位置に周方向に一定間隔で複数個の収容部212が配置された円盤状の容器である。流路213は、収容部212と同数設けられ、注入口211と1つの収容部212とを接続する。なお、第2容器210は必ずしも円盤状の容器でなくてもよい。
【0039】
第2容器210の外周部には3箇所の被係合部214が形成されている。被係合部214は、切欠である。3つの被係合部214は、第2設置部160の3つのピン161に1つずつ係合される。
【0040】
注入口211には、反応容器50において抽出された、核酸を含む抽出液が注入される。収容部212は、抽出液中の核酸を増幅するための試薬をあらかじめ収容している。反応容器50において抽出された核酸に対して、収容部212の数だけ核酸の増幅、分析を行うことができる。
【0041】
図2に示すように、第3設置部170は、第3容器220を設置するための設置部である。第3設置部170は、ベース板101に形成された開口171と、ベース板101の鉛直下側にある支持板172と、により構成される。核酸の分析を開始する際には、第3容器220が、第3設置部170に設置される。
【0042】
第3容器220は、1本の穿刺用チップ221と、複数本のピペットチップ222と、を保持している。図2では7本のピペットチップ222が第3容器220に保持されている。穿刺用チップ221は、反応容器50のアルミシールASに突き刺して、アルミシールASの下側にある収容部の上方を開放させるためのチップである。ピペットチップ222は、鉛直方向に貫通する孔を有している。分注ユニット110の吸引部111にピペットチップ222が装着される。穿刺用チップ221も、同様に吸引部111の下端に装着される。
【0043】
分注ユニット110は、反応容器50に収容された抽出液を、反応容器50から第2容器210の注入口211に移送する。分注ユニット110は、吸引部111と、ポンプ112と、上下移送部113と、前後移送部114と、左右移送部115と、を備える。吸引部111は、穿刺用チップ221とピペットチップ222とを着脱可能である。吸引部111は、液体を吸引および吐出可能なノズルにより構成される。ポンプ112は、吸引部111と接続されている。ポンプ112は、吸引部111に陽圧および負圧を付与して、吸引部111に装着されたピペットチップ222を介して液体を吸引および吐出させる。
【0044】
上下移送部113は、ステッピングモータを駆動して、レール113aに沿って吸引部111をZ軸方向に移送する。前後移送部114は、ステッピングモータを駆動して、レール114aに沿って上下移送部113をX軸方向に移送する。左右移送部115は、ステッピングモータを駆動して、レール115aに沿って前後移送部114をY軸方向に移送する。
【0045】
吸引部111は、上下移送部113と、前後移送部114と、左右移送部115とにより、測定装置100の内部においてXYZ軸に沿って移動可能となる。分注ユニット110は、吸引部111に装着されたピペットチップ222により、反応容器50から抽出液を吸引する。その後、分注ユニット110は、抽出液を吸引した反応容器50とX軸に沿って並ぶ第2容器210の注入口211にピペットチップ222を移動させる。そして、分注ユニット110は、注入口211から抽出液を第2容器210に吐出する。
【0046】
図2および図4に示すように、温度調節部20、25は、平面視において、第1設置部10の開口11a内に配置されている。温度調節部20、25は、第1設置部10の開口11aが形成されたベース板101の下方に配置されている。図5に示すように、温度調節部20は、伝熱部材21と発熱体22とを備える。発熱体22は、たとえば電力供給により発熱するヒータである。伝熱部材21は、発熱体22が接続されたヒートブロックである。ヒートブロックは、アルミニウム(またはアルミニウム合金)などの高熱伝導材料により形成されている。温度調節部20の上面20aは、伝熱部材21の上面である。上面20aには、反応容器50の検体収容部51を受け容れる設置穴20bが形成されている。伝熱部材21は、ケース21a内に収容され、外周部がケース21aに覆われている。発熱体22により伝熱部材21の温度が上昇した状態でも、ケース21aの外表面は十分に低い温度に維持される。
【0047】
同様に、温度調節部25は、伝熱部材26と発熱体27とを備える。温度調節部25は、第1設置部10に設置された反応容器50の試薬収容部52を加温する。発熱体27は、たとえばヒータであり、伝熱部材26は、発熱体27が接続されたヒートブロックである。温度調節部25の上面25aには、反応容器50の試薬収容部52を受け容れる設置穴25bが形成されている。伝熱部材26は、ケース26a内に収容され、外周部がケース26aに覆われている。発熱体27により伝熱部材26の温度が上昇した状態でも、ケース26aの外表面は十分に低い温度に維持される。
【0048】
図2に示すように、磁力印加部120は、ベース板101に配置されており、Y軸方向に移動可能に構成されている。磁力印加部120は、2つの磁石121を備える。磁力印加部120が、第1設置部10に設置された反応容器50の試薬収容部52に近付けられると、試薬収容部52内に含まれていた磁性粒子が磁石121に引き寄せられ、磁性粒子が試薬収容部52の壁面に吸着される。
【0049】
移送ユニット130は、ハンド部131と、ハンド部131をY軸方向に沿って移動するための機構と、を備える。移送ユニット130は、第2設置部160と回転機構140の位置との間で、第2容器210を把持して移送する。移送ユニット130は、抽出液が注入され、第2設置部160に設置されている第2容器210を回転機構140に移送する。
【0050】
回転機構140は、回転可能な容器設置部141を備える。容器設置部141には、第2容器210が設置される。回転機構140は、容器設置部141を回転させることにより第2容器210を回転させて、遠心力により、第2容器210内の抽出液を、流路213を介して収容部212に送る。
【0051】
このとき、収容部212において、抽出液に含まれる核酸が、収容部212に予め収容されている試薬と混合される。収容部212は、核酸の検出標的部位において変異が生じている検出標的核酸を増幅させる試薬と、検出標的核酸に特異的に結合する蛍光プローブを含む試薬と、を予め収容している。蛍光プローブは、蛍光物質を含んでいる。蛍光プローブが検出標的核酸に結合すると、検出標的核酸が蛍光物質により標識される。
【0052】
温度調節部150は、収容部212で核酸増幅反応が生じるように、容器設置部141に設置された第2容器210の温度を調節する。温度調節部150は、ペルチェ素子により構成される。
【0053】
温度調節部150により温度調節されることにより収容部212において核酸増幅反応が生じる。核酸に検出標的核酸が含まれる場合には、収容部212において検出標的核酸が増幅し、核酸に検出標的核酸が含まれない場合には、収容部212において検出標的核酸は増幅しない。したがって、検出標的核酸が増幅している場合には、増幅した検出標的核酸が蛍光プローブの蛍光物質により標識されるため、収容部212に励起光が照射されると増幅量に応じた光量で蛍光が生じる。
【0054】
回転機構140は、温度調節された各収容部212を、順次、測定部30による測定位置に位置付けるように、各収容部212を移送する。測定位置は、後述する検出ヘッド31の直下の位置である。回転機構140は、容器設置部141を回転させて、容器設置部141に設置された第2容器210の収容部212を、決められた順番にしたがって順次測定位置に位置付ける。
【0055】
測定部30は、回転機構140により測定位置に位置付けられた収容部212で生じる核酸増幅反応を検出する。具体的には、測定部30は、核酸増幅反応による増幅産物の量を示す蛍光信号の強度を検出する。
【0056】
測定部30は、検出ヘッド31と、光ファイバ32を介して検出ヘッド31に接続された光学ユニット33と、を備える。測定部30は、第2容器210の収容部212に光を照射して核酸増幅反応を検出する。検出ヘッド31は、容器設置部141に設置される第2容器210の収容部212の直上位置に、収容部212と対向するよう配置されている。光学ユニット33は、光源33aと、光検出器33bと、を備える。
【0057】
光源33aは、所定波長の励起光を出射する。光源33aから出射される励起光は、蛍光プローブが検出対象物質と結合している場合に、蛍光プローブの蛍光物質を励起して蛍光を生じさせる。光源33aから出射された励起光は、光ファイバ32および検出ヘッド31を介して、収容部212内へ照射される。また、検出ヘッド31は、収容部212内から生じた蛍光を受光する。受光された蛍光は、光ファイバ32を介して光学ユニット33に導かれ、光検出器33bに照射される。光検出器33bは、蛍光を受光し、受光した蛍光の強度を測定して蛍光の強度に応じた電気信号を出力する。光検出器33bの出力信号が、測定部30の測定結果である。
【0058】
測定装置100は、後述する解析部300(図14参照)によって、測定部30の光検出器33bにより検出された蛍光の電気信号から、各収容部212で生じる核酸増幅反応を示す複数の時系列データを生成する。そして、解析部300は、時系列データに基づいて、各収容部212において検出対象物質が含まれるか否かを判定し、後述する表示部320(図14参照)に判定結果等を表示する。
【0059】
(第1設置部の詳細構造)
図4に示す例では、第1設置部10には、温度調節部20、開閉部材40および開閉部材40のロック機構180が設けられている。第1設置部10の凹部11の内部に、温度調節部20、開閉部材40およびロック機構180が配置されている。開閉部材40は、開口11aが形成されたベース板101と、凹部11の底面を構成する支持板11bとの間に配置されている。反応容器50を凹部11が受け容れると、温度調節部20、開閉部材40およびロック機構180は、反応容器50の側面板58a~58dに囲まれた空間SP(図3参照)内に位置する。
【0060】
〈開閉部材〉
図5および図6に示すように、開閉部材40は、凹部11内で伝熱部材21の上面20aを覆うように配置された板状部材である。開閉部材40は、温度調節部20の上面20aに沿ってスライド可能に構成されている。これにより、温度調節部20が凹部11内に配置されるので、ユーザが凹部11を介さずに(凹部11の上方以外の方向から)温度調節部20にアクセスすることが防止される。また、反応容器50を第1設置部10に設置した状態で温度調節部20にアクセスすることも阻止できる。そして、開閉部材40が凹部11内に配置されるので、可動部材である開閉部材40にユーザが意図せず接触することが効果的に抑制できる。そのため、開閉部材40が誤って第1位置P1へ移動されることを効果的に抑制できる。
【0061】
図4図6に示した例では、開閉部材40は、第1設置部10の長手方向(X軸方向)の略全長に亘って延びる板状部材である。開閉部材40(図5参照)は、温度調節部20の上面20aの上方に僅かな間隔を隔てて配置されている。このため、開閉部材40と温度調節部20の上面20aとの間に側方から手指を進入させることが防止される。開閉部材40は、温度調節部20と、温度調節部25との両方を覆うように設けられている。開閉部材40は、X軸に沿った水平方向にスライド移動可能である。開閉部材40は、図5および図7(A)に示すように、X軸方向の一方側(X2方向側)にスライドすることにより、温度調節部20の上面20aを覆い、反応容器50の温度調節部20へのアクセスを遮る第2位置P2に配置される。開閉部材40は、図6および図7(B)に示すように、X軸方向の他方側(X1方向側)にスライドすることにより、第1設置部10を介した反応容器50の温度調節部20へのアクセスを許容する第1位置P1に配置される。
【0062】
図7(A)および(B)に示したように、開閉部材40は、伝熱部材21の設置穴20bに対応する貫通孔41を有する。貫通孔41の平面形状は、設置穴20bの平面形状と略一致する。第1位置P1は、貫通孔41と設置穴20bとが重なる位置であり、第2位置P2は、貫通孔41が設置穴20bに対してスライド方向にずれた位置である。つまり、開閉部材40が第1位置P1にあるとき、貫通孔41の水平方向位置と設置穴20bの水平方向位置とが略一致し、貫通孔41と設置穴20bとがZ軸方向に重なる。このとき、貫通孔41を介して温度調節部20の上面20aの設置穴20bが露出する。開閉部材40が第2位置P2にあるとき、貫通孔41の水平方向位置と設置穴20bの水平方向位置とがずれる。開閉部材40の遮蔽部42によって、温度調節部20の上面20aの設置穴20bが覆われる。図7では、開閉部材40のうち遮蔽部42の部分にハッチングを付して図示している。なお、遮蔽部42は、開閉部材40うち貫通孔41が形成されていない部分である。
【0063】
これにより、第1位置P1において、開閉部材40が温度調節部20の上方から完全に退避するのではなく、温度調節部20の上方において貫通孔41の部分でのみ、温度調節部20へのアクセスが許容される。そのため、温度調節部20が露出する領域を極力小さくできるので、ユーザが温度調節部20に接触する可能性を極力低減できる。
【0064】
なお、この例では、温度調節部20および温度調節部25に対応して、貫通孔41および貫通孔45が1つずつ設けられている。そのため、開閉部材40が第1位置P1にあるとき、温度調節部20および温度調節部25の各上面が露出し、開閉部材40が第2位置P2にあるとき、温度調節部20および温度調節部25の各上面が開閉部材40により覆われる。
【0065】
なお、図7に示した例では、開閉部材40の上面上の位置に、反応容器50を通過させる孔部28aが形成されたカバー部材28が配置されている。カバー部材28は、温度調節部20および温度調節部25に1つずつ設けられている。2つのカバー部材28は、温度調節部20、温度調節部25の各上面に、ねじ部材28bにより固定されている。開閉部材40は、温度調節部20および温度調節部25の各上面と、各カバー部材28との間でスライド移動する。なお、カバー部材28を設けなくてもよい。
【0066】
温度調節部20のカバー部材28の孔部28aは、温度調節部20の設置穴20bと上下に重なる位置に形成されている。温度調節部25のカバー部材28の孔部28aは、温度調節部25の設置穴25bと上下に重なる位置に形成されている。これにより、開閉部材40が第1位置P1にあるとき、孔部28aおよび貫通孔41を介して設置穴20bが開放され、孔部28aおよび貫通孔45を介して設置穴25bが開放される。各カバー部材28は、開閉部材40が第2位置P2にあるとき、貫通孔41および貫通孔45の一部を上方から覆う。貫通孔41および貫通孔45の全体が覆われてもよい。これにより、開閉部材40が第2位置P2にある状態で、貫通孔41および貫通孔45内への作業者の手指の進入や、埃などの進入を抑制できる。図7の例では、この第2位置P2にあるときの貫通孔41および貫通孔45の孔部28aからの露出領域は、作業者の手指の先端の進入が防止される大きさとされる。これにより、第2位置P2を、貫通孔41および貫通孔45がそれぞれ温度調節部20の上方および温度調節部25の上方から完全にずれた位置に設定しなくても、作業者の手指が加熱部分に接触することを防止できる。つまり、第1位置P1と第2位置P2との間のスライド距離を小さくできる。
【0067】
〈第1位置への移動〉
図5および図6の例では、開閉部材40は、反応容器50を第1設置部10に設置する動作に連動して、第2位置P2から第1位置P1へ移動するように構成されている。これにより、ユーザが開閉部材40を移動させる操作を行うことなく、ユーザが反応容器50を第1設置部10に設置する操作を行うだけで、自動的に開閉部材40を第1位置P1へ移動させて反応容器50を第1設置部10に設置可能とすることができる。
【0068】
後述するが、開閉部材40は、反応容器50が第1設置部10に配置されていない状態では、常に第2位置P2に位置するように構成されている。そして、開閉部材40は、反応容器50が第1設置部10に設置される時に第2位置P2から第1位置P1へ移動され、反応容器50が第1設置部10に設置されている間、第1位置P1に保持される。
【0069】
図5および図6に示すように、開閉部材40は、反応容器50に押圧される第1被押圧部43を含む。開閉部材40は、第1設置部10に向けて移動される反応容器50が第1被押圧部43を押圧することにより第1位置P1へ向けて移動するように構成されている。つまり、反応容器50がユーザによって凹部11内に移動される過程で、反応容器50が第1被押圧部43を押圧し、ユーザが反応容器50を動かすことによって、開閉部材40も反応容器50を介して第1位置P1へ動かされる。
【0070】
これにより、可動部品である開閉部材40にユーザが直接触れることなく、反応容器50を介して開閉部材40を押して移動させることができる。このため、開閉部材40を移動させる機構に異物が挟まったり、ユーザとの接触によって開閉部材40の移動が妨げられたりすることを抑制できる。また、センサなどで反応容器50の設置を検出してモータなどで開閉部材40を移動させる構成と異なり、反応容器50と開閉部材40との直接接触により反応容器50を第1設置部10に設置する動作を検出できるので、反応容器50の設置を検出するセンサなどを設ける必要がない。さらに、開閉部材40を移動させるためのモータなどを設ける必要がないため、開閉部材40の構造が複雑化することを回避できる。
【0071】
具体的には、第1被押圧部43は、開閉部材40のうち、温度調節部20から離れた側(X1方向側)の端部に配置されている。第1被押圧部43は、板状の開閉部材40から上方に立ち上がるように形成されたフック形状を有する。反応容器50が設置される際、反応容器50のうち、検体収容部51から離れた側(X1方向側)の第1端部50cが第1被押圧部43と接触する。第1端部50cは、反応容器50の側面板58aの下端部である。図5の例では、第1端部50cは、側面板58aの下端部から外側に突出する突起形状に形成されている。反応容器50を第1設置部10に設置する際、突起形状の第1端部50cが、フック形状の第1被押圧部43に係合される。これにより、反応容器50の設置動作の過程で、第1端部50cと第1被押圧部43との接触状態を維持し、誤って第1端部50cが第1被押圧部43から離れることが抑制できる。
【0072】
開閉部材40は、反応容器50の第1端部50cを凹部11内の第1被押圧部43に押圧させた状態で、反応容器50の第2端部50dを凹部11内へ移動させる動作に伴って、開閉部材40が第1位置P1へ移動するように構成されている。第2端部50dは、反応容器50のうち、検体収容部51に近い側(X2方向側)の端部である。第2端部50dは、反応容器50の側面板58bの下端部である。第1端部50cおよび第2端部50dは、反応容器50の長手方向(X軸方向)の各端部である。
【0073】
図5に示したように、反応容器50を第1設置部10に設置する際、ユーザは、反応容器50の第1端部50cを第1被押圧部43に係合させた後、検体収容部51に近い側の第2端部50dを凹部11内へ向けて下方向に移動させる。このとき、反応容器50は、第1設置部10の開口11aの縁部EPの付近を回転中心として回転されるように移動する。その結果、図6に示したように、第1端部50cが第1被押圧部43とともにX1方向側へ移動して、開閉部材40を第1位置P1へ移動させることになる。
【0074】
これにより、ユーザは、反応容器50の第1端部50cが凹部11内の第1被押圧部43に接触し第2端部50dが凹部11の上方に位置するように反応容器50を傾けた状態(図5参照)にした後、第2端部50dを凹部11内へ移動させて凹部11に反応容器50を嵌め込む動作によって、反応容器50を設置できる。この場合、ユーザは反応容器50の第2端部50d側を把持して動かす一方、開閉部材40は反応容器50の第1端部50cと接触して移動されるので、ユーザが誤って開閉部材40に触れることなく、確実に、反応容器50の設置動作に連動させて開閉部材40を移動させることができる。
【0075】
このような構成により、開閉部材40は、反応容器50を第1設置部10に設置する動作に連動して第2位置P2(図5参照)から第1位置P1(図6参照)へ移動される。
【0076】
〈第2位置への移動〉
また、開閉部材40は、反応容器50を第1設置部10から取り除く動作に連動して、第1位置P1から第2位置P2へ移動するように構成されている。これにより、反応容器50が第1設置部10から取り除かれた状態で、ユーザが特別な操作を行わなくても、開閉部材40が自動的に第2位置P2へ移動する。そのため、反応容器50が設置されていない状態でユーザが温度調節部20に接触することを抑制できる。
【0077】
具体的には、図5および図6に示すように、測定装置100は、開閉部材40を第2位置P2へ付勢する第1付勢部材190を備えている。開閉部材40は、反応容器50の押圧により第1付勢部材190の付勢力に抗して第1位置P1(図6参照)に保持され、反応容器50が取り除かれる際に第1付勢部材190の付勢力により第2位置P2へ移動するように構成されている。
【0078】
これにより、センサなどで反応容器50の除去を検出してモータなどで開閉部材40を移動させる構成と異なり、第1付勢部材190の付勢力によって開閉部材40を機械的に第2位置P2へ移動させることができる。このため、センサやモータが動作しない停電時などでも、確実に開閉部材40を第2位置P2へ配置することができる。そのため、測定装置100の通常動作時だけでなく、停電時などの異常状況下であっても、ユーザが温度調節部20に接触することを確実に抑制できる。
【0079】
図5および図6の例では、第1付勢部材190は、引張コイルばねであり、一端が第1設置部10に固定され、他端が開閉部材40に連結されることによって、開閉部材40を第2位置P2側(X2方向側)へ付勢している。このため、図6のように開閉部材40が第1位置P1にある間、第1付勢部材190が引き延ばされた状態が維持される。反応容器50が取り除かれる際、設置時と逆に、図5のように反応容器50の第2端部50dが持ち上げられるのに伴って、反応容器50の第1端部50cがX2方向側へ回動される。第1端部50cのX2方向への移動に伴い、第1付勢部材190が開閉部材40をX2方向へ引っ張り、第2位置P2へ移動させる。第1付勢部材190は、開閉部材40をX2方向へ押圧する圧縮コイルばねや、ゴムクッションなどの弾性体でもよい。
【0080】
〈ロック機構〉
図4に示したロック機構180は、開閉部材40の第2位置P2から第1位置P1への移動を解除可能に規制(すなわち、ロック)するように構成されている。ロック機構180は、第2位置P2にある開閉部材40と係合して、開閉部材40の第1位置P1への移動を規制するロック状態と、開閉部材40との係合を解除することにより、開閉部材40の第1位置P1への移動規制が解除されたロック解除状態とに切り替えることが可能である。したがって、ロック状態では、開閉部材40を第1位置P1へ向けてX1方向に押圧しても、開閉部材40は移動しない。
【0081】
ロック機構180は、反応容器50を第1設置部10に設置する動作に連動して、開閉部材40の移動規制を解除するように構成されている。これにより、ロック機構180によって、開閉部材40が意図せず第1位置P1へ移動されることを防止できる。そのため、ユーザが温度調節部20に接触することをより確実に抑制できる。また、反応容器50を第1設置部10に設置する際には、ユーザが反応容器50を第1設置部10に設置する動作を行うだけで、特別なロック解除操作を行うことなく簡単に移動規制を解除させることができる。
【0082】
具体的には、図4に示すように、ロック機構180は、第1設置部10に設置される動作に伴い反応容器50に押圧されることにより移動規制を解除させる第2被押圧部183を含む。第2被押圧部183は、反応容器50が第1設置部10に設置される過程で、反応容器50の一部と接触し、移動する反応容器50によって押圧される。ロック機構180は、押圧力によって第2被押圧部183が動かされることにより、ロック状態からロック解除状態に切り替わる。これにより、ロック機構180にユーザが直接触れることなく、反応容器50を介してロック機構180による移動規制を解除できる。このため、ロック機構180に異物が挟まったり、ユーザとの接触によってロック機構180の解除動作が妨げられたりすることを抑制できる。また、反応容器50とロック機構180との直接接触により、反応容器50が第1設置部10に設置される動作を機械的に検出できるので、第1設置部10に設置される動作をセンサなどにより電気的に検出する必要がなく、制御が複雑化することを回避できる。
【0083】
図8に示すように、ロック機構180は、第1設置部10に固定された支持部181と、支持部181によって移動可能に支持された可動部182とを含み、第2被押圧部183が可動部182に設けられている。図9および図10に示すように、支持部181には、複数のガイドローラ181aが設けられ、可動部182に係合している。これにより、可動部182が、支持部181に対して上下方向に直線移動可能である。第2被押圧部183は、可動部182の上端部において水平方向に突出するように設けられた軸部材である。
【0084】
図10に示すように、可動部182は、第1設置部10の支持板11bに対してY軸方向の両側となる位置に1つずつ設けられている。2つの可動部182は、板状の接続板182bで連結され一体形成されている。第2被押圧部183は、それぞれの可動部182から、凹部11内のY軸方向中央側に向けて突出するように設けられている。つまり、第2被押圧部183は、反応容器50の一対の側面板58cおよび58d(図10参照)の各下端部と1つずつ接触するように、一対設けられている。
【0085】
図9に示すように、X軸方向位置に関して、一対の第2被押圧部183は、凹部11内で、開閉部材40の第1被押圧部43よりも温度調節部20に近い側に配置されている。図8において、反応容器50の第1端部50cを第1被押圧部43に係合させつつ第2端部50dを下方向に移動させる際、移動の途中で、側面板58c、58d(図10参照)の下端部が各第2被押圧部183と接触する。第2端部50dがさらに下方向移動するのに伴って、第2被押圧部183が下方向へ移動される。この第2被押圧部183の下方向移動によって、ロック機構180がロック解除状態に切り替えられる。
【0086】
詳細には、ロック機構180は、第2位置P2における開閉部材40を係止するとともに第2被押圧部183と一体的に移動するように構成された係止部184を含む。係止部184は、反応容器50に押圧された第2被押圧部183の移動に伴って開閉部材40の係止を解除する位置へ移動するように構成されている。これにより、ロック機構180による移動規制および移動規制の解除を、完全に機械的に行うことができる。そのため、ソレノイドなどのアクチュエータを用いる必要がなく、ロック機構180の制御処理を不要にすることができる。
【0087】
係止部184は、開閉部材40の直下の位置に配置されている。ここで、開閉部材40には、第1被押圧部43と貫通孔41の形成領域との間の位置で、下向きに突出するように当接面44が形成されている。係止部184は、当接面44とX軸方向に接触することにより、開閉部材40が第1位置P1へ向けてX1方向へ移動することを係止する。
【0088】
図9に示すように、係止部184は、可動部182と一体で移動するように、ブラケット182cを介して接続板182bに接続されている。そのため、第2被押圧部183が反応容器50との接触により下方向へ押圧されると、係止部184が第2被押圧部183とともに下方向へ移動する。係止部184が開閉部材40の当接面44と当接しない下方位置まで移動すると、開閉部材40が第1位置P1へ向けてX軸方向に移動可能となる。このような構成により、ロック機構180は、反応容器50を第1設置部10に設置する動作に連動して、ロック解除状態に切り替わる。
【0089】
また、ロック機構180は、反応容器50を第1設置部10から取り除く動作に連動して、開閉部材40の移動規制を解除する状態から開閉部材40の移動を規制する状態に切り替わるように構成されている。これにより、反応容器50が第1設置部10から取り除かれた状態で、ユーザが特別な操作を行わなくても、第2位置P2の開閉部材40の移動が自動的に規制される。そのため、第1設置部10から反応容器50を取り除いた時に、誤ってロック機構180による移動規制が行われないことを確実に回避できる。
【0090】
具体的には、図9および図10に示すように、ロック機構180は、開閉部材40を係止する位置へ係止部184を付勢する第2付勢部材185を含む。係止部184は、第2被押圧部183に対する反応容器50の押圧により第2付勢部材185の付勢力に抗して開閉部材40の係止を解除する位置に保持され、反応容器50が取り除かれる際に第2付勢部材185の付勢力により開閉部材40を係止する位置へ移動するように構成されている。
【0091】
これにより、センサなどで反応容器50の除去を検出してロック機構180を電気的に制御する構成と異なり、第2付勢部材185の付勢力によって機械的に、ロック機構180を開閉部材40の移動を規制する状態へと切り替えることができる。このため、センサやモータが動作しない停電時などでも、確実にロック機構180を規制状態にすることができる。
【0092】
図8図10の例では、第2付勢部材185は、引っ張りコイルばねであり、上端が支持部181に固定され、下端が接続板182bに接続されている。これにより、第2付勢部材185は、係止部184および第2被押圧部183を含む可動部182を、上方向に向けて付勢している。反応容器50が第1設置部10に設置されていない状態では、係止部184および第2被押圧部183は、第2付勢部材185により移動可能範囲の上端位置に保持される。上端位置は、係止部184が開閉部材40の移動を係止する位置(すなわち、当接面44と当接する位置)であり、第2被押圧部183が凹部11内に設置される反応容器50と接触可能となる位置である。第2被押圧部183が反応容器50に押されて可動部182が下方向へ移動する際に、第2付勢部材185が引き延ばされる。反応容器50が第1設置部10に設置されている間、第2付勢部材185が引き延ばされた状態が維持される。
【0093】
反応容器50が取り除かれる際、設置時と逆に、反応容器50が持ち上げられると、第2付勢部材185が可動部182を上方向へ引っ張り、上端位置へ移動させる。これにより、ロック機構180がロック解除状態からロック状態に切り替わる。第2付勢部材185は、可動部182を上方向へ押圧する圧縮コイルばねや、ゴムクッションなどの弾性体でもよい。
【0094】
以上のように、本実施形態では、開閉部材40を移動させるための構成、およびロック機構180をオンオフするための構成が、電気的な信号処理および制御処理を必要としない機械的な構造によって実現されている。つまり、開閉部材40の移動およびロック機構180のオンオフが、センサレス構造、アクチュエータレス構造によって実現されている。このため、電気的な信号処理および制御処理を必要とするセンサやアクチュエータを備えた構造の場合のセンサの誤動作やアクチュエータの動作不良によって適切なタイミングで開閉部材40が閉まらないことに起因して、ユーザが温度調節部20、温度調節部25に接触するのを確実に防止できる。
【0095】
〈通路部〉
さらに、図4および図10に示した構成例では、ロック機構180のロック解除状態への切り替えを、ユーザの手によって直接操作できないようにする構造が採用されている。つまり、測定装置100は、反応容器50が第1設置部10に設置されていない状態では、ユーザが凹部11内の第2被押圧部183に直接触れて操作することができず、反応容器50を介在させることで第2被押圧部183を操作可能となるように構成されている。
【0096】
具体的には、図4に示すように、第1設置部10は、反応容器50(図3参照)が第2被押圧部183を押圧する際に通過する通路部15を含む。そして、通路部15は、反応容器50の一部が通過可能で、作業者の手指の通過を阻止する形状に形成されている。これにより、ユーザが誤って第2被押圧部183に接触することを防止でき、反応容器50を第1設置部10に設置する動作を行う場合にだけ、ロック機構180の規制状態を解除させることができる。
【0097】
図4の例では、凹部11内に、開口11aの縁部に沿って延びる壁状部材16が設けられている。この壁状部材16によって、凹部11内に、通路部15が形成されている。壁状部材16は、X軸方向およびZ軸方向に延びる板状形状を有する。壁状部材16は、少なくとも第2被押圧部183の設置位置に対してX軸方向の両側に跨がるように形成されている。また、壁状部材16は、凹部11の底部から、第2被押圧部183よりも上方となる位置まで形成されている。
【0098】
図10に示すように、壁状部材16は、開口11aの縁部との間でY軸方向の幅Wの間隔を隔てて配置されている。通路部15は、この開口11aの縁部と壁状部材16との間の隙間の領域である。通路部15は、2つの壁状部材16によって、凹部11内のY軸方向の両側に1つずつ設けられている。各通路部15の内部に、1つずつ第2被押圧部183が配置されている。通路部15の幅Wは、反応容器50の側面板58c、58dの肉厚tよりも大きく、人間の手指の直径よりは十分小さくなる大きさとなるように設定されている。たとえば、幅Wは、数mmとされる。このため、ユーザが通路部15内に手指を進入させて第2被押圧部183を直接押し下げることはできず、反応容器50の側面板58c、58dが通路部15を通過することによって第2被押圧部183を押し下げロックを解除できる。
【0099】
壁状部材16の上面は、通路部15側に向けて下向きに傾斜する傾斜面となっている。これにより、壁状部材16は、反応容器50の側面板58c、58dを通路部15内に進入するように案内するガイド機能を有する。
【0100】
なお、ロック機構180の係止部184(図9参照)や、接続板182bの部分は、上方が開閉部材40によって覆われているため、これらの部分にもユーザが直接触れることはできない。
【0101】
(反応容器の設置動作および除去動作)
次に、第1設置部10への反応容器50の設置動作および除去動作を説明する。
【0102】
本実施形態では、反応容器50が凹部11に配置される際、反応容器50が第1高さ位置H1(図11参照)に到達するとロック機構180が開閉部材40の移動規制を解除する。反応容器50が第1高さ位置H1よりも下方の第2高さ位置H2(図13参照)に到達すると開閉部材40が第1位置P1へ移動する。反応容器50が第2高さ位置H2と同じかまたは下方の第3高さ位置H3(図13参照)に到達すると反応容器50の検体収容部51が温度調節部20上に配置される。
【0103】
これにより、反応容器50を第1設置部10に設置する動作において、ユーザが反応容器50を凹部11の内部へ移動させるだけで、反応容器50の移動過程においてロック機構180による移動規制の解除と、開閉部材40の第1位置P1への移動とが順番に行われる。このため、測定装置100の利便性を低下させることなく、ユーザが温度調節部20に接触することを抑制できる。なお、図13では、第3高さ位置H3が第2高さ位置H2と同じ高さ位置である例を示しているが、第3高さ位置H3は第2高さ位置H2よりも下方となる高さ位置でもよい。なお、本実施形態では、第1高さ位置H1、第2高さ位置H2および第3高さ位置H3を、第2端部50dの高さ位置を基準として説明する。
【0104】
反応容器50の設置動作について詳細に説明する。反応容器50を設置する際、ユーザは、図8に示したように、反応容器50の第2端部50d側を把持して、第1端部50cを凹部11内の第1被押圧部43に係合させる。このとき、反応容器50の側面板58cおよび58d(図10参照)が、それぞれ凹部11内の各通路部15内に挿入される。
【0105】
第1端部50cが第1被押圧部43に係合すると、ユーザは、第2端部50dを下方向へ移動させる。反応容器50は、開口11aの縁部EPを支点として、反時計方向へ回動するように移動される。この結果、通路部15内に挿入された側面板58c、58d(図10参照)がロック機構180の第2被押圧部183と接触し、可動部182を下方向へ押し下げる。
【0106】
図11に示すように、第2端部50dが第1高さ位置H1に到達すると、係止部184が開閉部材40の当接面44と当接しない下側位置へ退避する。この結果、ロック機構180が開閉部材40の移動規制を解除するロック解除状態になる。
【0107】
図12に示すように、ユーザは、第2端部50dを第1高さ位置H1(図11参照)からさらに下方向へ移動させる。第1端部50cは縁部EPを中心にX1方向へ回転する。この結果、第1端部50cと係合した開閉部材40が第1位置P1(図13参照)へ向けてX1方向へ移動される。
【0108】
図13に示すように、第2端部50dが第2高さ位置H2に到達すると、開閉部材40は第1位置P1に配置される。開閉部材40の貫通孔41が温度調節部20の設置穴20bの直上に配置され、反応容器50の検体収容部51が貫通孔41を介して設置穴20bへ配置可能となる。また、反応容器50の試薬収容部52が貫通孔45を介して設置穴25bへ配置可能となる。なお、図13では、第3高さ位置H3が第2高さ位置H2と同じ高さ位置である。このため、図12のように貫通孔41および貫通孔45がそれぞれ設置穴20bおよび設置穴25bの直上に配置される前のタイミングで、試薬収容部52の一部が貫通孔45内に進入する。
【0109】
図13では、開閉部材40が第1位置P1に配置された時、反応容器50の検体収容部51が貫通孔41を介して温度調節部20の設置穴20b内の適正位置に配置される。同様に、反応容器50の試薬収容部52が貫通孔45を介して設置穴25b内の適正位置に配置される。第2端部50dが第2高さ位置H2、第3高さ位置H3に配置された状態で、反応容器50の上面板57が略水平となる。
【0110】
このように、ユーザは、第2端部50dを上方から凹部11内へ下方向に移動させるだけの単一動作によって、ロック機構180による移動規制の解除操作と、開閉部材40の第1位置P1への移動操作と、検体収容部51の温度調節部20への設置操作(および試薬収容部52の温度調節部25への設置操作)と、の一連の操作を全て実行できる。
【0111】
図13に示したように、第1設置部10は、第3高さ位置H3の第2端部50dと係合する係合部材17を含む。反応容器50の第2端部50dには、係合部を有する解除レバー59が設けられている。解除レバー59は、弾性変形を利用したスナップフィットにより、係合部材17と係合する。なお、第1端部50cは、開閉部材40の第1被押圧部43と係合した状態のままである。第1端部50cおよび第2端部50dがそれぞれ係合することにより、反応容器50の位置ずれや、意図しない第1設置部10からの脱離が抑止される。なお、図3では、解除レバー59の図示を省略している。
【0112】
第1設置部10から反応容器50を取り除く作業は、上記の設置動作と逆の手順で行われる。ユーザは、反応容器50の解除レバー59を押圧して係合部材17との係合を解除した状態で、第2端部50d側を上方向に引き上げる。第2端部50dが第2高さ位置H2および第3高さ位置H3から上方へ移動する過程(図12参照)で、検体収容部51および試薬収容部52が対応する貫通孔41および貫通孔45から上方へ引き抜かれる。第2端部50dが第1高さ位置H1(図11参照)に到達すると、第1付勢部材190の付勢力によって開閉部材40が第2位置P2(図11参照)に配置される。第2端部50dが第1高さ位置H1(図11参照)を超えると、ロック機構180の係止部184が開閉部材40の当接面44と当接する位置に到達することにより、ロック機構180がロック解除状態からロック状態に切り替わる。その後、ユーザは、反応容器50の第1端部50cを開閉部材40の第1被押圧部43から引き抜いて係合を解除し、反応容器50を第1設置部10から取り去る。
【0113】
このように、ユーザが反応容器50を第1設置部10から取り除く動作の過程で、開閉部材40が第2位置P2(図11参照)へ移動し、ロック機構180がロック状態に切り替わる。そのため、ユーザが反応容器50を第1設置部10から取り除いた時点では、開閉部材40が温度調節部20の上面20a(図11参照)を覆い、かつ、開閉部材40の移動が規制された状態となるので、ユーザが温度調節部20に接触することが確実に防止される。
【0114】
(制御部)
次に、測定装置100の制御に関わる構成を説明する。図14に示すように、測定装置100は、解析部300と、記憶部310と、表示部320と、入力部330と、制御部340と、インターフェース350と、駆動部360と、センサ部370と、温度調節部380と、を備える。
【0115】
解析部300は、CPUにより構成される。解析部300は、入力部330を介して開始指示を受け付けると、測定処理を開始するよう制御部340に指示信号を送信する。解析部300は、測定部30により検出された蛍光の電気信号から、第2容器210(図2参照)の各収容部212で生じる核酸増幅反応を示す複数の時系列データを生成する。解析部300は、生成した時系列データに基づいて、核酸の検出標的部位が変異した検出標的核酸について陽性または陰性の判定を行う。
【0116】
記憶部310は、RAM、ROM、ハードディスク等により構成される。表示部320は、ディスプレイ装置により構成される。入力部330は、キーボードやマウス等のヒューマンインターフェース装置により構成される。表示部320と入力部330とが、タッチパネル式のディスプレイにより構成されてもよい。
【0117】
制御部340は、CPUまたはマイクロコンピュータにより構成される。制御部340は、インターフェース350を介して、分注ユニット110と、移送ユニット130と、回転機構140と、測定部30と、温度調節部380と、駆動部360と、センサ部370と、を制御する。なお、温度調節部380は、温度調節部20(図2参照)および温度調節部25(図2参照)と、温度調節部150(図2参照)と、を含む。駆動部360は、測定装置100内に配された各種の駆動部を含む。センサ部370は、測定装置100内に配された各種のセンサを含む。
【0118】
(測定装置の処理動作)
次に、測定装置100の処理動作について説明する。
【0119】
図2に示したように、測定装置100による検体の分析を行う際には、ユーザは、新しい反応容器50を第1設置部10に設置し、反応容器50の検体収容部51に検体を収容させる。検体は、上記の通りFFPE組織切片である。ユーザは、試薬収容部55にエタノールを収容させる。また、ユーザは、新しい第2容器210を、第2設置部160に設置する。新しい第2容器210は、各収容部212に、互いに異なる検出標的核酸を増幅および蛍光標識させるための試薬を収容している。また、ユーザは、新しい第3容器220を第3設置部170に設置する。
【0120】
1つの検体の処理には、X軸方向に沿って並ぶ第1設置部10と、第2設置部160と、第3設置部170とが1セットで用いられる。ユーザは、複数の検体について並行して核酸分析を行う場合、複数のセットに対して反応容器50と、第2容器210と、第3容器220とを設置する。以下、1つのセットにおいて核酸分析する手順について説明する。測定装置100の構造については、図2を参照する。
【0121】
図15に示すように、核酸の分析が開始されると、制御部340は、分注ユニット110を駆動して、吸引部111に穿刺用チップ221を装着する。制御部340は、分注ユニット110を駆動して、穿刺用チップ221をアルミシールAS(図3参照)に突き刺すことにより、反応容器50の、試薬収容部52と、試薬収容部53a~53hと、廃液収容部56との各上部を開放させる。
【0122】
ステップS1において、制御部340は、分注ユニット110を駆動して、反応容器50において抽出液を精製する。以下の分注では、吸引部111に対する適宜ピペットチップ222の装着および交換が行われ、ピペットチップ222を介して吸引部111により液体の吸引および吐出が行われる。
【0123】
具体的には、制御部340は、ステップS1において以下のような制御を行う。図16のステップS101において、制御部340は、試薬収容部53aの可溶化液を検体収容部51へ分注するように分注ユニット110を制御する。これにより、FFPE切片が可溶化液中に浸漬される。ステップS102において、制御部340は、温度調節部20を制御して、検体収容部51を加温する。制御部340は、温度調節部20の温度を90℃~100℃程度まで上昇させる。その結果、反応容器50の検体収容部51の温度が、90℃付近まで上昇される。これにより、包埋剤であるパラフィンが融解する。
【0124】
次に、ステップS103において、制御部340は、試薬収容部53bのプロテイナーゼKを検体収容部51へ分注するように分注ユニット110を制御し、ステップS104において、制御部340は、試薬収容部53cのオイルを検体収容部51へ分注するように分注ユニット110を制御する。試薬収容部53cのオイルは、ミネラルオイルである。続いて、ステップS105において、制御部340は温度調節部20により検体収容部51の温度を調節する。たとえば、制御部340は、温度調節部20の温度を90℃~100℃程度に維持する。反応容器50の検体収容部51の温度が、90℃付近に保持される。加温状態で所定時間経過することにより、検体収容部51内の蛋白が分解され、細胞から核酸が抽出される。
【0125】
次に、ステップS106において、制御部340は、磁力印加部120を試薬収容部52に近付ける。これにより、試薬収容部52内の磁性粒子が、試薬収容部52の内壁面に集められる。続いて、ステップS107において、制御部340は、分注ユニット110を制御することにより、試薬収容部52内の液相(磁性粒子保存液)を、廃液収容部56に移す。そして、ステップS108において、制御部340は、磁力印加部120を試薬収容部52から遠ざける。続いて、ステップS109において、制御部340は、分注ユニット110を駆動して、試薬収容部55のエタノールと、試薬収容部53eの抽出用試薬とを、混合部54cへ分注し、ステップS110において、制御部340は、分注ユニット110を駆動して、混合部54cに収容されたエタノールと抽出用試薬との混合液を、試薬収容部52へ分注する。
【0126】
続いて、ステップS111において、制御部340は、分注ユニット110を駆動して、検体収容部51の溶液を試薬収容部52へ移動させ、試薬収容部52内で吸引と吐出を繰り返すことにより、試薬収容部52内の溶液を攪拌する。続いて、ステップS112において、制御部340は、温度調節部25を制御して、試薬収容部52の温度を調節する。これにより、核酸が磁性粒子に担持される。続いて、ステップS113において、制御部340は、磁力印加部120を試薬収容部52に近付ける。これにより、試薬収容部52内の磁性粒子が、試薬収容部52の壁面に集められる。続いて、ステップS114において、制御部340は、分注ユニット110を制御することにより、試薬収容部52の上清を吸引して、吸引した液体を廃液収容部56に移す。そして、ステップS115において、制御部340は、磁力印加部120を試薬収容部52から遠ざける。
【0127】
次に、ステップS116において、制御部340は、分注ユニット110を駆動して、試薬収容部55のエタノールと、試薬収容部53hの第1洗浄液の原液とを、混合部54bへ分注し、ステップS117において、制御部340は、分注ユニット110を駆動して、混合部54bに収容されたエタノールと第1洗浄液との混合液を、試薬収容部52へ分注する。続いて、図17のステップS118において、制御部340は、分注ユニット110を制御することにより、試薬収容部52内の溶液を攪拌する。続いて、ステップS119において、制御部340は、磁力印加部120を試薬収容部52に近付ける。そして、ステップS120において、制御部340は、分注ユニット110を制御することにより、試薬収容部52の上清を吸引して、吸引した液体を廃液収容部56に移す。そして、ステップS121において、制御部340は、磁力印加部120を試薬収容部52から遠ざける。
【0128】
同様に、ステップS122において、制御部340は、分注ユニット110を制御することにより、試薬収容部55のエタノールと、試薬収容部53fの第2洗浄液の原液とを、混合部54dへ分注し、ステップS123において、制御部340は、分注ユニット110を制御することにより、混合部54dに収容されたエタノールと第2洗浄液との混合液を、試薬収容部52へ分注する。続いて、ステップS124において、制御部340は、分注ユニット110を制御することにより、試薬収容部52内の溶液を攪拌する。続いて、ステップS125において、制御部340は、磁力印加部120を試薬収容部52に近付ける。そして、ステップS126において、制御部340は、分注ユニット110を制御することにより、試薬収容部52の上清を吸引して、吸引した液体を廃液収容部56に移す。そして、ステップS127において、制御部340は、磁力印加部120を試薬収容部52から遠ざける。こうして、試薬収容部52内の不純物が洗浄される。なお、不純物の洗浄は省略されてもよい。
【0129】
次に、ステップS128において、制御部340は、分注ユニット110を制御することにより、試薬収容部53dの溶出液を試薬収容部52へ分注し、試薬収容部52内の試料溶液を攪拌する。続いて、ステップS129において、制御部340は、温度調節部20を駆動して、試薬収容部52の温度を調節する。これにより、試薬収容部52内の核酸が、磁性粒子から溶出する。
【0130】
次に、ステップS130において、制御部340は、磁力印加部120を試薬収容部52に近付ける。これにより、試薬収容部52内の磁性粒子が、試薬収容部52の壁面に集められる。続いて、ステップS131において、制御部340は、分注ユニット110を制御することにより、試薬収容部52の溶液を混合部54aに移す。そして、ステップS132において、制御部340は、磁力印加部120を試薬収容部52から遠ざける。続いて、ステップS133において、制御部340は、分注ユニット110を制御することにより、試薬収容部53gの希釈液の原液を混合部54aへ分注し、混合部54aの溶液を攪拌する。これにより、混合部54aの試料の濃度が調整され、抽出液が完成する。
【0131】
図15のステップS2において、制御部340は、分注ユニット110を制御することにより、混合部54aの抽出液を、第2設置部160に設置された第2容器210の注入口211に注入する。ステップS3において、制御部340は、移送ユニット130を制御することにより、第2設置部160に設置された第2容器210を、回転機構140の容器設置部141へ移送する。ステップS4において、制御部340は、回転機構140を制御することにより、第2容器210を高速で回転させて、第2容器210に遠心力を付与する。回転機構140は、たとえば4500rpmで5秒間、第2容器210を回転させる。
【0132】
ステップS5において、制御部340は、移送ユニット130を制御することにより、回転機構140により回転された第2容器210を第2設置部160に移送する。ステップS6において、制御部340は、分注ユニット110を駆動して、回転機構140から第2設置部160に移送された第2容器210の注入口211に、試薬収容部53cのオイルを注入する。
【0133】
続いて、ステップS7において、制御部340は、移送ユニット130を制御することにより、オイルが注入された第2容器210を、回転機構140の容器設置部141へ再び移送する。ステップS8において、制御部340は、回転機構140を制御することにより、第2容器210を高速で回転させて、第2容器210に遠心力を付与する。回転機構140は、たとえば4500rpmで3秒間、第2容器210を回転させる。これにより、第2容器210の流路213の空気が、注入口211から注入されたオイルと置換される。
【0134】
次に、ステップS9~S15において、核酸増幅反応の検出および核酸分析を行う。以下では、BNAクランプPCRの原理に基づいて、検出および分析を行う例を説明する。検出および分析の原理は、BNAクランプPCRに限らず、たとえばPCR+Invaderであってもよい。
【0135】
ステップS9において、制御部340は、第2容器210内の気泡を抜く処理を行う。制御部340は、温度調節部150の温度を94℃まで上昇させた後、温度調節部150の温度を57℃まで下降させる。これにより、第2容器210の温度が、94℃付近まで上昇させられた後、57℃付近まで下降させられる。
【0136】
その後、制御部340は、回転機構140を駆動して、第2容器210を高速で回転させる。このとき、回転機構140は、たとえば4500rpmで5秒間、第2容器210を回転させる。これにより、第2容器210に遠心力が付与され、第2容器210内の気泡が注入口211から抜かれる。
【0137】
ステップS10において、制御部340は、温度調節部150の温度94℃まで上昇させた後、温度調節部150の温度を57℃まで下降させることにより、第2容器210の温度調節を実行する。これにより、第2容器210の温度が、94℃付近まで上昇させられた後、57℃付近まで下降させられる。
【0138】
続いて、ステップS11において、制御部340は、回転機構140を駆動して、収容部212が測定部30の測定位置に位置付けられるよう、第2容器210を回転させる。ステップS12において、制御部340は、測定部30を制御することにより、収容部212で生じる核酸増幅反応を検出する。具体的には、測定部30は、光源33aから収容部212に励起光を照射し、収容部212から生じた蛍光を光検出器33bにより受光する。制御部340は、光検出器33bが出力する電気信号に基づいて蛍光強度を取得し、取得した蛍光強度を記憶部310に記憶させる。
【0139】
ステップS13において、制御部340は、全ての収容部212の測定が完了したか否かを判定する。全ての収容部212の測定が完了していない場合、制御部340は、処理をステップS11に戻す。この場合、ステップS11において、制御部340は、回転機構140を駆動して、未だ検出が完了していない隣の収容部212が測定位置に位置付けられるよう、収容部212の周方向のピッチだけ第2容器210を回転させる。そして、上述したように、ステップS12において、核酸増幅反応の検出が行われる。
【0140】
全ての収容部212の検出が完了すると、ステップS14において、制御部340は、サイクル数が所定サイクル数に到達したか否かを判定する。ここで、サイクルとはステップS10~S13からなる処理のことである。所定サイクル数は、たとえば55サイクルである。サイクル数が所定サイクル数に到達していない場合、制御部340は、処理をステップS10に戻す。そして、制御部340は、ステップS10~S13からなるサイクルを再度実行する。
【0141】
サイクル数が所定サイクル数に到達すると、ステップS15において、解析部300は、各収容部212における検出標的核酸の有無を判定し、判定結果等を表示部320に表示する。こうして、1つの検体についての核酸分析の処理が終了する。なお、1つの検体についての核酸分析の処理が終了すると、制御部340は、移送ユニット130を駆動して、容器設置部141に設置された第2容器210を、第2設置部160に移送する。移送された第2容器210は、処理動作の終了後に廃棄される。
【0142】
次に、ステップS15における解析処理について説明する。
【0143】
解析部300は、1つの収容部212から取得される全サイクルの蛍光強度を示す時系列データに基づいて、グラフを作成する。収容部212に検出標的核酸が含まれる場合、収容部212に予め収容されている試薬により、サイクル数の経過に伴って検出標的核酸が増幅する。これにより、サイクル数の経過とともに、励起される蛍光強度が大きくなる。他方、収容部212に検出標的核酸が含まれない場合、サイクル数が経過しても検出標的核酸が増幅することはない。これにより、サイクル数の経過にかかわらず、蛍光強度は低い値に維持される。
【0144】
解析部300は、作成したサイクル数と蛍光強度のグラフに基づき、蛍光強度の立ち上がりサイクル数を取得する。そして、解析部300は、予め記憶部310に記憶されている、立ち上がりサイクル数と変異量の関係を示すグラフに基づいて、変異量を取得する。取得した変異量が記憶部310に記憶されているカットオフ値以上である場合、解析部300は、この収容部212に収容された検体に対する検出標的核酸の判定結果を陽性とする。取得した変異量が記憶部310に記憶されているカットオフ値未満である場合、解析部300は、この収容部212に収容された検体に対する検出標的核酸の判定結果を陰性とする。
【0145】
解析部300は、分析結果を表示部320に表示する。解析部300は、たとえば、検体ごとに、各収容部212に対応する検出標的核酸の判定結果を一覧にして表示する。解析部300は、判定結果の一覧において選択された検体について、対応する収容部212のサイクル数と蛍光強度の変化を示すグラフを表示する。
【0146】
以上のように、測定装置100は、特にDNAの分析を行う。本実施形態では、たとえば、がん関連遺伝子の一種であるKRASの変異の有無が判定される。なお、測定装置100は、第2容器210に予め収容させる試薬に応じて、KRAS以外にも、BRAF、PIK3CA、NRAS、EGFR、ALK Fusions、ALK Mut.などの変異の有無を判定できる。KRAS、BRAF、PIK3CA、およびNRASの変異の有無は、たとえば大腸がんの診断に有用である。KRAS、BRAF、PIK3CA、NRAS、EGFR、ALK Fusions、およびALK Mut.の変異の有無は、たとえば非小細胞肺がんの診断に有用である。
【0147】
(変形例)
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0148】
上記実施形態では、開閉部材40が温度調節部20の上面20aに沿ってスライド可能に構成された例を示したが、たとえば、温度調節部20に対して上下方向に移動可能な開閉部材であってもよい。この場合、ユーザが反応容器50を温度調節部20に設置する前は開閉部材が温度調節部20の上面20aを塞いでいる状態となっており、ユーザが反応容器50を温度調節部20に設置する際には開閉部材が温度調節部20から離れるように上方向に移動するように構成されている。
【0149】
上記実施形態では、設置部10が凹部11の内側面によって反応容器50の水平方向の位置ずれを抑止する例を示したが、設置部10に反応容器50と係合する係合構造が設けられ、係合により反応容器50の位置ずれおよび脱離を抑止してもよい。
【0150】
上記実施形態では、温度調節部20が設置部10に設置された反応容器50の検体収容部51と近接位置で離間する上面20aを有する例を示したが、反応容器50の検体収容部51と接触する上面20aを有する構造であってもよい。また、上記実施形態では、温度調節部20が反応容器50を加温する機能を有する例を示したが、さらに反応容器50を冷却する機能を有していてもよい。
【0151】
上記実施形態では、生体由来の検体が被検体から採取された組織の一部または細胞である例を示したが、生体由来の検体は、被検体から採取された血液(全血、血清または血漿)、尿、またはその他の体液などの液体、あるいは、採取された液体に所定の前処理を施して得られた液体などであってもよい。検体は、主としてヒトであるが、ヒト以外の他の動物であってもよい。また、上記実施形態では、前処理された試料中の標識物質を検出することによって被検物質と結合した被検物質を検出する例を示したが、被検物質は、所定の化学物質、細胞、有形成分を含んでもよい。被検物質は、特定の細胞、細胞内物質、抗原または抗体、タンパク質、ペプチドなどもよい。また、測定装置100は、核酸分析装置、血球計数装置、細胞画像分析装置、血液凝固測定装置、免疫測定装置、尿中有形成分測定装置などであってよく、これら以外の測定装置であってもよい。
【0152】
上記実施形態では、ユーザから外力を付与されることによって、開閉部材40がアクチュエータなしで機械的に移動される例を示したが、開閉部材40は、たとえば、モータ、ソレノイドまたはエアシリンダなどのアクチュエータによって、第1位置P1と第2位置P2とに移動されてもよい。
【0153】
上記実施形態では、反応容器50の側面板58cおよび58dがロック機構180の第2被押圧部183と接触してロック機構180のロック解除状態に切り替える例を示したが、図18(A)~図18(C)の変形例では、反応容器50の第1端部50cが、開閉部材400の第1被押圧部401とロック機構410の第2被押圧部411とに接触する。第1被押圧部401には、貫通孔402が形成されている。ロック機構410は、第1端部50cと接触する傾斜面からなる第2被押圧部411と、開閉部材400の当接面403を係止する係止部412とを一体的に有したプランジャー型の機構である。第2被押圧部411(図18(B)参照)は、第1被押圧部43の貫通孔402を通過した第1端部50cと接触して、第1端部50cの押し込み量に応じてプランジャーが押し下げられる。その結果、プランジャーの側面である係止部412が当接面403と当接しない位置まで移動する(図18(C)参照)。反応容器50をX1方向へ押し込むと、開閉部材400がプランジャーに乗り上げプランジャーを押し下げつつ第1位置P1(図18(D)参照)まで移動する。
【0154】
また、図19(A)~図19(C)に示す変形例のように、開閉部材440は、反応容器50の第1端部50c以外の箇所で反応容器50と接触して、移動されてもよい。図19の例では、反応容器50の検体収容部51および試薬収容部52が、先細り形状を有し、下面が傾斜面になっている。開閉部材440の貫通孔441の周縁部CEおよび貫通孔445の周縁部CEには、孔の中央へ向けて下り傾斜となる傾斜面からなる第1被押圧部442が設けられている。このため、反応容器50を設置する際に、検体収容部51の下面が第1被押圧部442に当接(図19(B)参照)して、反応容器50を押し下げることにより、開閉部材440が傾斜面に沿って押し退けられる態様で、第1位置P1(図19(C)参照)へ移動される。この変形例では、第1被押圧部442を貫通孔441の部分に設けることができるので、開閉部材440を小型に形成できる。
【0155】
図20は、図19の変形例に、さらにロック機構450を設けた例を示している。反応容器50は、側面板58a~58dに囲まれた空間SP内に、上面板57から下方に突出する押圧片PPを有する。図20(A)~図20(C)に示すように、反応容器50が設置される際、押圧片PPがロック機構450の第2被押圧部451と当接して押し下げることにより、開閉部材440を係止する係止部452が移動され、ロック解除状態となる。
【0156】
図21の変形例では、開閉部材480の第1被押圧部481が、凹部11の内部で上方に突出した平板形状を有する。図21(A)~図21(C)に示すように、ユーザは、反応容器50の第1端部50cである側面板58aを第1被押圧部481に接触させ、X1方向に押し込むことにより、開閉部材480を第1位置P1へ移動させる。その後、ユーザは、第2端部50d側を下方向へ移動させて反応容器50を凹部11内に収める。この際、検体収容部51が貫通孔482を介して温度調節部20上に設置される。また、試薬収容部52が貫通孔485を介して温度調節部25上に設置される。この変形例の場合、検体収容部51の下面および貫通孔482の周縁部は、傾斜面を有していなくてもよい。
【符号の説明】
【0157】
1:検体処理装置、10:第1設置部、11:凹部、15:通路部、20:温度調節部、20a:上面、20b:設置穴、21:伝熱部材、22:発熱体、30:測定部、40:開閉部材、41:貫通孔、43:第1被押圧部、50:反応容器、50c:第1端部、50d:第2端部、51:検体収容部、100:測定装置、180:ロック機構、183:第2被押圧部、184:係止部、185:第2付勢部材、190:第1付勢部材、400:開閉部材、401:第1被押圧部、402:貫通孔、410:ロック機構、411:第2被押圧部、412:係止部、440:開閉部材、441:貫通孔、442:第1被押圧部、445:貫通孔、450:ロック機構、451:第2被押圧部、452:係止部、480:開閉部材、481:第1被押圧部、482:貫通孔、485:貫通孔、H1:第1高さ位置、H2:第2高さ位置、H3:第3高さ位置、P1:第1位置、P2:第2位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22