(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】太陽電池及び太陽電池製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 31/0224 20060101AFI20240523BHJP
H01L 31/18 20060101ALI20240523BHJP
H01L 31/072 20120101ALI20240523BHJP
【FI】
H01L31/04 262
H01L31/04 420
H01L31/06 400
(21)【出願番号】P 2020152071
(22)【出願日】2020-09-10
【審査請求日】2023-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】兼松 正典
(72)【発明者】
【氏名】石橋 寛隆
(72)【発明者】
【氏名】足立 大輔
【審査官】佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-211385(JP,A)
【文献】国際公開第2013/161030(WO,A1)
【文献】特開2015-95653(JP,A)
【文献】国際公開第2012/015026(WO,A1)
【文献】特開昭63-53994(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02-31/078
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板の裏面側に交互に形成され、導電型が異なる帯状の第1主半導体部及び第2主半導体部と、
前記第1主半導体部及び第2主半導体部の裏面側の幅方向中央部にそれぞれ積層されるフィンガー電極と、
を備え、
前記フィンガー電極は、裏面の略全体に形成される凹凸構造を有し、
前記凹凸構造の二乗平均平方根傾斜角RΔqは、21°以上59°以下である、太陽電池。
【請求項2】
前記凹凸構造の表面粗さRaは、0.05μm以上0.5μm以下である、請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
前記フィンガー電極は、薄膜状のベース金属層と、前記ベース金属層の裏面に積層される主金属層と、を有する、請求項1又は2に記載の太陽電池。
【請求項4】
前記フィンガー電極は、前記第1主半導体部及び第2主半導体部に密接する透明電極層を有する請求項1から3のいずれかに記載の太陽電池。
【請求項5】
半導体基板の裏面に交互に配置される帯状の第1主半導体部及び第2主半導体部を形成する工程と、
前記半導体基板の裏面側に第1主半導体部及び第2主半導体部を覆う金属層を積層する工程と、
前記金属層の裏面側に、平面視で前記第1主半導体部と前記第2主半導体部との境界領域を露出させるようレジストパターンを積層する工程と、
前記レジストパターンをマスクとするエッチングにより、前記金属層の前記レジストパターンから露出する領域を除去する工程と、
を備え、
前記金属層を積層する工程は、ベース金属材料を積層する工程と、前記ベース金属材料の層を被着体とするめっきをする工程と、を含み、
前記めっきをする工程の最後に逆方向の電流を印加することにより、前記金属層の裏面に凹凸構造を形成する、太陽電池製造方法。
【請求項6】
前記レジストパターンを印刷により積層する、請求項5に記載の太陽電池製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池及び太陽電池製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板の裏面に交互に形成され、それぞれ第1方向に延びる複数帯状の第1半導体層及び第2半導体層と、第1半導体層及び第2半導体層にそれぞれ積層される複数の第1フィンガー電極及び第2フィンガー電極と、を備えるバックコンタクト型の太陽電池が知られている。第1フィンガー電極及び第2フィンガー電極は、めっきにより全面に形成した金属層にレジストパターンを積層した状態でエッチングを行うことよって形成できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レジストパターンを安価に形成するために、スクリーン印刷等の印刷技術を利用する手法が知られている。印刷可能なレジスト材料は、印刷後に樹脂成分が染み出す可能性がある。太陽電池の光電変換効率を向上するためには、第1半導体層及び第2半導体層の配設ピッチを小さくすることが有効であるが、第1半導体層及び第2半導体層の配設ピッチを小さくすると、レジストパターンの開口幅が小さくなる。レジストパターンの開口幅が小さくなると、レジスト材料から染み出した樹脂成分によって金属層が被覆され、適切にエッチングを行うことができない場合がある。このような実情に鑑みて、本発明は、安価な太陽電池及び太陽電池製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る太陽電池は、半導体基板と、半導体基板の裏面側に交互に形成され、導電型が異なる帯状の第1主半導体部及び第2主半導体部と、前記第1主半導体部及び第2主半導体部の裏面側の幅方向中央部にそれぞれ積層されるフィンガー電極と、を備え、前記フィンガー電極は、裏面の略全体に形成される凹凸構造を有し、前記凹凸構造の二乗平均平方根傾斜角RΔqは、21°以上59°以下である。
【0006】
前記太陽電池において、前記凹凸構造の表面粗さRaは、0.05μm以上0.5μm以下であってもよい。
【0007】
前記太陽電池において、前記フィンガー電極は、薄膜状のベース金属層と、前記ベース金属層の裏面に積層される主金属層と、を有してもよい。
【0008】
前記太陽電池において、前記フィンガー電極は、前記第1主半導体部及び第2主半導体部に密接する透明電極層を有してもよい。
【0009】
本発明の一態様に係る太陽電池製造方法は、半導体基板の裏面に交互に配置される帯状の第1主半導体部及び第2主半導体部を形成する工程と、前記半導体基板の裏面側に第1主半導体部及び第2主半導体部を覆う金属層を積層する工程と、前記金属層の裏面側に、平面視で前記第1主半導体部と前記第2主半導体部との境界領域を露出させるようレジストパターンを積層する工程と、前記レジストパターンをマスクとするエッチングにより、前記金属層の前記レジストパターンから露出する領域を除去する工程と、を備え、前記金属層を積層する工程は、ベース金属材料を積層する工程と、前記ベース金属材料の層を被着体とするめっきをする工程と、を含み、前記めっきをする工程の最後に逆方向の電流を印加することにより、前記金属層の裏面に凹凸構造を形成する。
【0010】
前記太陽電池製造方法において、前記レジストパターンを印刷により積層してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、安価な太陽電池を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る太陽電池の断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る太陽電池製造方法の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、便宜上、ハッチングや符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の形状及び寸法は、便宜上、見やすいように調整されている。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る太陽電池1の断面図である。
図2は、太陽電池1の裏面図である。
【0015】
太陽電池1は、いわゆるヘテロ接合バックコンタクト型の太陽電池セルである。太陽電池1は、半導体基板10と、半導体基板10の裏面(光の入射面と反対側の面)に略相補的な形状に形成され、互いに異なる導電型を有する第1半導体層20及び第2半導体層30と、第1半導体層20の裏面側に積層される第1電極パターン40及び第2半導体層30の裏面側に積層される第2電極パターン50と、を備える。
【0016】
半導体基板10は、単結晶シリコン又は多結晶シリコン等の結晶シリコン材料で形成される。半導体基板10は、例えば結晶シリコン材料にn型ドーパントがドープされたn型の半導体基板である。n型ドーパントとしては、例えばリン(P)が挙げられる。半導体基板10は、受光面側からの入射光を吸収して光キャリア(電子及び正孔)を生成する光電変換基板として機能する。半導体基板10の材料として結晶シリコンが用いられることにより、暗電流が比較的に小さく、入射光の強度が低い場合であっても比較的高出力(照度によらず安定した出力)が得られる。
【0017】
第1半導体層20及び第2半導体層30は、互いに異なる極性のキャリアを誘引して半導体基板10から電荷を取り出す。例として、第1半導体層20はp型半導体から形成され、第2半導体層30はn型半導体から形成される。第1半導体層20及び第2半導体層30は、例えば所望の導電型を付与するドーパントを含有するアモルファスシリコン材料で形成することができる。p型ドーパントとしては、例えばホウ素(B)が挙げられ、n型ドーパントとしては、例えば上述したリン(P)が挙げられる。
【0018】
第1半導体層20は、それぞれ第1方向に延び、第1方向と交差する第2方向に間隔を空けて形成される帯状の複数の第1主半導体部21と、複数の第1主半導体部21の第1方向一方側の端部を接続する第1接続半導体部22と、を有する。第2半導体層30は、それぞれ第1方向に延び、第2方向に第1主半導体部21と交互に形成される帯状の複数の第2主半導体部31と、複数の第2主半導体部31の第1方向他方側の端部を接続する第2接続半導体部32と、を有する。
【0019】
第1電極パターン40及び第2電極パターン50は、第1半導体層20及び第2半導体層30から電力を取り出し、外部に出力する電路となる。
【0020】
第1電極パターン40及び第2電極パターン50について、先ず、その積層構造について説明する。第1電極パターン40は、第1半導体層20の裏面に密接する薄膜状の第1透明電極層41と、第1透明電極層41に積層される薄膜状の第1ベース金属層42と、第1ベース金属層42の裏面に積層される第1主金属層43と、を有する。第2電極パターン50は、第2半導体層30の裏面に密接する薄膜状の第2透明電極層51と、第2透明電極層51に積層される薄膜状の第2ベース金属層52と、第2ベース金属層52の裏面に積層される第2主金属層53と、を有する。
【0021】
第1透明電極層41及び第2透明電極層51は、第1半導体層20及び第2半導体層30と第1電極パターン40及び第2電極パターン50との密着性を向上し、界面の電気抵抗を低減する。第1透明電極層41及び第2透明電極層51を形成する透明電極材料としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムおよび酸化スズの複合酸化物)、酸化亜鉛(ZnO)等を挙げることができる。
【0022】
第1ベース金属層42及び第2ベース金属層52は、安価に低抵抗の第1電極パターン40及び第2電極パターン50を形成するために設けられる。具体的には、第1ベース金属層42及び第2ベース金属層52は、後述するように、第1主金属層43及び第2主金属層53を電解めっきによって積層する際の被着体、つまりカソード電極として機能する。第1ベース金属層42及び第2ベース金属層52は、比較的安価で導電率が高い銅によって形成することが好ましい。
【0023】
第1主金属層43及び第2主金属層53は、第1ベース金属層42及び第2ベース金属層52に積層され、断面積を大きくすることによって第1電極パターン40及び第2電極パターン50の電気抵抗を小さくするために設けられる。第1主金属層43及び第2主金属層53は、第1ベース金属層42及び第2ベース金属層52と同様に、比較的安価で導電率が高い銅によって形成することが好ましい。
【0024】
第1主金属層43は裏面の略全体に形成される凹凸構造44を有し、第2主金属層53は裏面の略全体に形成される第1主金属層43の凹凸構造44と同様の凹凸構造54を有する。第1主金属層43及び第2主金属層53の凹凸構造44,54の二乗平均平方根傾斜角RΔqの下限としては、21°が好ましく、25°がより好ましく、30°がさらに好ましい。一方、凹凸構造44,54の二乗平均平方根傾斜角RΔqの上限としては、59°が好ましく、55°がより好ましく、50°がさらに好ましい。凹凸構造44,54の二乗平均平方根傾斜角RΔqを前記下限以上とすることによって、第1主金属層43及び第2主金属層53の裏面に樹脂が付着した場合に、凹凸構造44,54の谷の部分だけに樹脂を受け入れて、第1主金属層43及び第2主金属層53の裏面全体が樹脂に被覆されることを効果的に防止できる。また、凹凸構造44,54の二乗平均平方根傾斜角RΔqを前記上限以下とすることによって、第1主金属層43及び第2主金属層53の裏面に例えばレジスト材料等を比較的容易に連続して積層することができる。なお、「二乗平均平方根傾斜角RΔq」は、JIS-B0610に準拠して測定される値である。
【0025】
凹凸構造44,54の表面粗さRaの下限としては、0.05μmが好ましく、0.10μmがより好ましい。一方、凹凸構造44,54の表面粗さRaの上限としては、0.5μmが好ましく、0.3μmがより好ましい。凹凸構造44,54の表面粗さRaを前記下限以上とすることによって、第1主金属層43及び第2主金属層53の裏面が樹脂に被覆されることを効果的に防止できる。凹凸構造44,54の表面粗さRaを前記上限以下とすることによって、第1主金属層43及び第2主金属層53の裏面に例えばレジスト材料等の連続する薄い層を積層することが可能となる。なお、「表面粗さRa」は、JIS-B0610に準拠して測定される値である。
【0026】
第1主金属層43及び第2主金属層53の厚さの下限としては、十分な導電性を確保するために、5μmが好ましく、10μmがより好ましい。一方、第1主金属層43及び第2主金属層53の厚さの上限としては、不必要な太陽電池1の厚さの増加及び製造コスト上昇を避けるために、50μmが好ましく、30μmがより好ましい。また、第1主金属層43及び第2主金属層53の厚さを前記下限以上とすることによって、半導体基板10のテクスチャ構造等の影響を受けずに、上述の凹凸構造44,54を適切に形成することができる。
【0027】
続いて、第1電極パターン40及び第2電極パターン50の平面形状について説明する。第1電極パターン40及び第2電極パターン50は、短絡を防止するために、第1半導体層20及び第2半導体層30の外周部にマージンを残すよう積層される。
【0028】
具体的には、第1電極パターン40は、第1主半導体部21の裏面側の幅方向中央部にそれぞれ積層される複数の第1フィンガー電極45と、第1接続半導体部22に積層され、第1フィンガー電極45の第1方向一方側の端部を接続する第1バスバー電極46と、を有する。第2電極パターン50は、第2主半導体部31の裏面側の幅方向中央部にそれぞれ積層される複数の第2フィンガー電極55と、第2接続半導体部32に積層され、第2フィンガー電極55の第2方向他方側の端部を接続する第2バスバー電極56と、を有する。
【0029】
第1フィンガー電極45及び第2フィンガー電極55は、第1主半導体部21及び第2主半導体部31から電荷を取り出す。第1バスバー電極46及び第2バスバー電極56は、第1接続半導体部22及び第2接続半導体部32から電荷を取り出すと共に第1フィンガー電極45及び第2フィンガー電極55が取り出した電荷を集めて外部に出力する。つまり、第1バスバー電極46及び第2バスバー電極56は、太陽電池1から電力を出力するための外部端子としても機能する。
【0030】
以上の構成を有する太陽電池1は、第1電極パターン40及び第2電極パターン50、特に第1フィンガー電極45及び第2フィンガー電極55の裏面に凹凸構造44,54が形成されている。このため、太陽電池1は、その製造工程、又は太陽電池1を用いた太陽電池モジュールの製造工程等において、レジスト、絶縁材等を積層する場合に、これらの材料から第1電極パターン40及び第2電極パターン50の裏面に樹脂が染み出したとしても、染み出した樹脂が凹凸構造の谷に流入することにより、第1電極パターン40及び第2電極パターン50が樹脂によって連続して覆われることがない。従って、太陽電池1では、第1電極パターン40及び第2電極パターン50に、例えばエッチング液、半田等を適切に接触させられるので、太陽電池1それ自体及び太陽電池1を用いる太陽電池モジュールを容易に製造できる。特に、太陽電池1は、後述するように、エッチングマスクを印刷により形成するような比較的安価なプロセスでも確実に製造することができる。
【0031】
図3に、太陽電池1の製造方法の手順を示す。
図3の太陽電池製造方法は、本発明に係る太陽電池製造方法の一実施形態である。
【0032】
本実施形態の太陽電池製造方法は、半導体層形成工程(ステップS1)と、透明電極材料積層工程(ステップS2)と、ベース金属材料積層工程(ステップS3)と、めっき工程(ステップS4)と、レジストパターン積層工程(ステップS5)と、エッチング工程(ステップS6)と、レジストパターン除去工程(ステップS7)と、を備える。
【0033】
ステップS1の半導体層形成工程では、半導体基板10の裏面に交互に配置される帯状の第1半導体層20及び第2半導体層30を形成する。具体的には、第1半導体層20及び第2半導体層30は、半導体基板10の裏面にマスクを形成し、例えばCVD等の成膜技術によって半導体材料を積層することによって順番に形成することができる。
【0034】
ステップS2の透明電極材料積層工程では、第1半導体層20及び第2半導体層30を覆うよう、半導体基板10の裏面側全面に、第1透明電極層41及び第2透明電極層51を形成する透明電極材料を積層する。透明電極材料は、例えばCVD、スパッタリング等の成膜技術によって積層することができる。
【0035】
ステップS3のベース金属材料積層工程では、透明電極材料の層の裏面全体に、第1ベース金属層42及び第2ベース金属層52を形成するベース金属材料を積層する。ベース金属材料は、例えばスパッタリング、CVD、無電解めっき等によって積層することができる。
【0036】
ステップS4のめっき工程では、ベース金属材料の層を被着体(カソード)とする電解めっきをすることにより、第1主金属層43及び第2主金属層53を形成する主金属材料を積層する。めっき工程で用いる電解液としては、主金属材料が銅である場合、例えば硫酸銅水溶液等を用いることができる。
【0037】
めっき工程では、十分な厚さの主金属材料の層を形成してから、最後に逆方向の電流を印加することにより、主金属材料をイオン化することにより、主金属材料の層の裏面に凹凸構造を形成する。つまり、めっき工程は、電源の負極にベース金属材料の層を接続して主金属材料の層を積層する工程と、電源の正負を入れ換えて積層された主金属材料の一部を溶解する工程と、を有する。
【0038】
適切な凹凸を形成するための逆方向の電流密度としては1~10ASD(A/dm2)の範囲が好ましく、逆方向の電流を印加する時間としては、十分な厚さの主金属材料の層を維持しつつ凹凸構造を形成する観点から、めっき工程全体の時間の1~10%の範囲が好ましい。
【0039】
ステップS5のレジストパターン積層工程では、金属層の裏面側に、平面視で第1半導体層20と第2半導体層30との境界領域を露出させるようレジストパターンを積層する。つまり、レジストパターンは、第1主半導体部21と第2主半導体部31との境界領域を露出する線状乃至帯状の開口を有する形状とされる。
【0040】
レジストパターンは、フォトリソグラフィ等の技術を用いて積層してもよいが、安価に行うことができる手法として、レジスト材料を印刷により選択的に積層し、加熱により積層したレジスト材料を硬化させる方法が好適に用いられる。印刷によりレジストパターンを形成する材料としては、例えばエポキシ系樹脂組成物等を用いることができる。
【0041】
ステップS6のエッチング工程では、レジストパターンをマスクとするエッチングにより、金属層及び透明電極材料層のレジストパターンから露出する領域を除去する。エッチング液としては、例えば透明電極材料がITOでベース金属材料及び主金属材料が銅の場合に、塩化第二鉄水溶液と塩酸との混合液、又はペルオキソ二硫酸アンモニウム水溶液と塩酸との混合液などを用いることができる。
【0042】
ステップS7のレジストパターン除去工程では、レジストパターンを溶解して除去する。エポキシ系樹脂組成物からなるレジストパターンの溶解液としては、例えばアルカリ性水溶液を用いることができる。
【0043】
以上の太陽電池製造方法では、めっき工程で逆方向電流を印加することにより第1電極パターン40及び第2電極パターン50を形成する材料の層の裏面に上述の凹凸構造を形成するため、レジストパターン積層工程でレジストパターン形成材料の樹脂成分が印刷範囲外に染み出したとしても、染み出した樹脂が凹凸構造の谷の部分に留まり、凹凸構造の山の部分を露出する。このため、エッチング工程でエッチング液が凹凸構造の山の部分から金属層を溶解し、染み出した樹脂の下の金属層も除去することができる。従って、本実施形態の太陽電池製造方法では、所望形状の第1電極パターン40及び第2電極パターン50を比較的安価に形成できるので、太陽電池1を安価に提供することができる。
【0044】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更及び変形が可能である。例えば、本発明に係る太陽電池の電極パターンは、透明電極層を有しないものであってもよく、金属層がベース金属層と主金属層とに分けられず単一の層として形成されてもよい。
【0045】
本発明に係る太陽電池は、半導体層が接続半導体部を有さず、フィンガー電極の裏面側にフィンガー電極から集電するバスバーを積層して設けた構成とされてもよい。
【実施例】
【0046】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0047】
(実施例1)
図3に示す太陽電池の製造方法により、
図1、
図2に示す太陽電池の実施例1を作製した。実施例1の具体的な条件としては、透明電極材料積層工程で、透明電極材料としてITOを膜厚が100nmとなるよう積層した。ベース金属材料積層工程では、ベース金属材料としてCuを膜厚が200nmとなるよう積層した。めっき工程では、硫酸銅めっき液を用い、電流密度6ASD、めっき時間600秒の順方向めっきの後、電流密度2ASD、めっき時間60秒の逆方向めっきを行って積層された金属層の裏面に凹凸構造を形成した。レジストパターン積層工程では、エポキシ系樹脂組成物をスクリーン印刷し、180秒間110℃に加熱して硬化させた。エッチング工程では、エッチング液として、ペルオキソ二硫酸アンモニウム水溶液(5%)と塩酸(18%)との混合液を用い、エッチング時間を20分とした。レジストパターン除去工程では、水酸化ナトリウム水溶液(1%)に60秒間浸漬した。
【0048】
(実施例2)
実施例2は、めっき工程において逆方向めっきのめっき時間を30秒にした以外は実施例1と同じ条件で作製した。
【0049】
(実施例3)
実施例3は、めっき工程において逆方向めっきの電流密度を3ASDにした以外は実施例1と同じ条件で作製した。
【0050】
(比較例1)
比較例1は、めっき工程において逆方向めっきを行わなかった以外は実施例1と同じ条件で作製した。
【0051】
(比較例2)
比較例2は、めっき工程において順方向めっきの条件を電流密度10ASD、めっき時間360秒にした以外は実施例1と同じ条件で作製した。
【0052】
(比較例3)
比較例3は、めっき工程において逆方向めっきの条件を電流密度6ASD、めっき時間590秒にした以外は実施例1と同じ条件で作製した。
【0053】
(表面粗さ測定)
オリンパス社製のレーザー顕微鏡「LEXT OLS4100」(対物レンズ:100倍)を用いて、凹凸構造の二乗平均平方根傾斜角RΔq及び表面粗さRaを測定した。実施例1の二乗平均平方根傾斜角RΔqは29°、表面粗さRaは0.10μmであった。実施例2の二乗平均平方根傾斜角RΔqは21°、表面粗さRaは0.09μmであった。実施例3の二乗平均平方根傾斜角RΔqは58°、表面粗さRaは0.13μmであった。一方、比較例1の二乗平均平方根傾斜角RΔqは4°、表面粗さRaは0.01μmであった。比較例2の二乗平均平方根傾斜角RΔqは18°、表面粗さRaは0.07μmであった。比較例3の二乗平均平方根傾斜角RΔqは61°、表面粗さRaは0.13μmであった。
【0054】
(エッチング性の評価)
作製した実施例1~3及び比較例1~3について、目視及びオリンパス社製のレーザー顕微鏡「LEXT OLS4100」(対物レンズ:5~100倍)による観察を行い、金属層のエッチング性について確認した。実施例1~3は、第1電極パターンと第2電極パターンとが明確に分離されており、良好なエッチングがなされていた。比較例1、2は、第1電極パターンと第2電極パターンとが分離できておらず、エッチングが不良であった。比較例3は、部分的に第1電極パターンと第2電極パターンの分離が不十分な部分があった。さらに、比較例3では、第1電極パターンと第2電極パターンの金属層の一部がエッチングされて消失してしまい、所望する電極パターンを得ることができなかった。
【0055】
比較例1、2ではレジストパターン積層工程でレジストパターン形成材料の樹脂成分が印刷範囲外に染み出して金属層の表面を覆ってしまったためにエッチングができなかったものと考えられる。一方、実施例1~3では、逆方向めっきによって凹凸構造を形成することによって、レジストパターン形成材料から染み出した樹脂成分が凹凸構造の谷の部分に溜まり、山の部分を露出していたため、エッチング液がこの山の部分から金属層を溶解して、染み出した樹脂の下の金属層も除去することが可能になったと推察される。なお、比較例3では、逆方向めっきが過剰に行われて金属層の厚みが薄くなった結果、金属層の凹凸がシリコンウエハの凹凸と同等になり、二乗平均平方根傾斜角RΔqが実施例1~3の場合よりも大きい値を示した。二乗平均平方根傾斜角RΔqが大きくなった結果、レジスト材料を連続して積層することができずに金属層が露出したことにより、第1電極パターンと第2電極パターンの一部の金属層がエッチングされたものと考えられる。
【符号の説明】
【0056】
1 太陽電池
10 半導体基板
20 第1半導体層
21 第1主半導体部
22 第1接続半導体部
30 第2半導体層
31 第2主半導体部
32 第2接続半導体部
40 第1導電パターン
41 第1透明電極層
42 第1ベース金属層
43 第1主金属層
44 凹凸構造
45 第1フィンガー電極
46 第1バスバー電極
50 第2導電パターン
51 第2透明電極層
52 第2ベース金属層
53 第2主金属層
54 凹凸構造
55 第2フィンガー電極
56 第2バスバー電極