(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】光源装置および露光装置
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20240523BHJP
F21V 7/08 20060101ALI20240523BHJP
F21V 7/06 20060101ALI20240523BHJP
F21V 13/02 20060101ALI20240523BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20240523BHJP
F21Y 101/00 20160101ALN20240523BHJP
【FI】
G03F7/20 501
F21V7/08 100
F21V7/06 100
F21V13/02 400
F21S2/00 310
F21Y101:00 300
(21)【出願番号】P 2020156944
(22)【出願日】2020-09-18
【審査請求日】2023-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000128496
【氏名又は名称】株式会社オーク製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】金井 信夫
(72)【発明者】
【氏名】太田 一秀
(72)【発明者】
【氏名】本多 友彦
【審査官】後藤 慎平
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-175308(JP,A)
【文献】特開2010-128426(JP,A)
【文献】特開2009-302218(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20-7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極を備えた放電ランプと、
その開口端が鉛直方向に沿うように位置合わせされ、前記
放電ランプから放射された照明光を反射する
、楕円面または放物面の凹面反射鏡とを備え、
前記照明光は、光学素子の入射面に対し、前記入射面のサイズに応じた光束で入射し、
電極間中心が、反射鏡中心軸と、前記凹面反射鏡の焦点を通る鉛直方向に沿った垂直方向軸とに対してオフセットし、
前記光学素子の入射面において、照明光の光束断面が、
前記電極間中心が前記凹面反射鏡の焦点と一致している場合の円状光束断面に対して、前記垂直方向軸に応じたライン
の鉛直方向に向けて照射エリアが拡がるように
、歪んでいることを特徴とする光源装置。
【請求項2】
一対の電極を備えた放電ランプと、
円状の開口端を形成し、前記
放電ランプから放射された照明光を、反射鏡中心
軸に沿った方向へ導く、
楕円面または放物面の凹面反射鏡とを備え、
前記照明光が、光学素子の入射面に対し、前記入射面のサイズに応じた光束で入射し、
電極間中心が、反射鏡中心軸と、前記凹面反射鏡の焦点を通る前記開口端に沿った垂直方向軸とに対してオフセットし、
反射鏡中心軸に垂直な前記光学素子の入射面において、照明光の光束断面が、
前記電極間中心が前記凹面反射鏡の焦点と一致している場合の円状光束断面に対して、前記垂直方向軸に応じた所定のライン
の一方向側に沿って照射エリアが拡がるように、歪んでいることを特徴とする光源装置。
【請求項3】
前記照明光
の光束断面が、
前記ラインに垂直であって前記入射面の中心を通る垂直ラインに関して非対称であることを特徴とする請求項1または2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記照明光
の光束断面が、前記ラインの
鉛直方向または一方向側へ照射エリア端が延びるように、歪んでいることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の光源装置。
【請求項5】
前記電極間中心が、前記凹面反射鏡の焦点に対し、
前記垂直方向軸の鉛直方向とは逆方向にオフセットするとともに、前記凹面反射鏡の開口端とは反対側の底部側に前記反射鏡中心軸に沿ってオフセットするように、前記放電ランプが配置されていることを特徴とする請求項
1に記載の光源装置。
【請求項6】
オフセット量ΔYと前記反射鏡中心軸に沿ったオフセット量ΔZは、0.2≦ΔY/ΔZ≦4を満たすように定められていることを特徴とする請求項5に記載の光源装置。
【請求項7】
前記ランプと前記凹面反射鏡とによってそれぞれ構成される複数のランプユニットが列状に並んで配置され、
前記複数のランプユニットからの照明光が、前記光学素子の入射面に入射することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の光源装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか記載の光源装置と、
前記光学素子を含む照明光学系とを備え、
前記反射鏡中心軸が、水平方向に沿うように、または水平方向に対し所定角度の範囲内で傾斜するように、前記光源装置が設置されていることを特徴とする露光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置に関し、特に、インテグレータ等の光学素子に対する照明光の入射に関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクタや露光装置などに使用される光源装置として、放電ランプとリフレクタから成るランプユニットで構成される光源装置が知られている。放電ランプから放射された光は、リフレクタに反射し、光学素子(集光レンズ、ロッドレンズ、フライアイレンズなどのインテグレータ)を含む照明光学系へ導かれる。照明光は、インテグレータによって照度均一化され、コリメータレンズによって平行光となり、DMDなどの光変調素子アレイ、ワークなどに照射される。
【0003】
放電ランプは経年変化によって電極先端が摩耗し、点灯時間の経過とともにインテグレータに入射する光の割合が減少することで照度の低下が生じる。これを防ぐため、複数のランプユニットを備えた多灯式光源装置において、インテグレータ入射面よりも広い照射エリアをもつ光を、インテグレータに入射させる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プロジェクタ、露光装置などに設置される光源装置では、ハロゲンサイクルの良好な発現、交流型放電ランプを使用した場合の電極消耗の抑制などの理由により、ランプ軸が略水平方向に沿うように光源装置を設置することが要求される。そのため、リフレクタは、その開口端が略鉛直方向に沿うように保持される。
【0006】
ランプ点灯中、リフレクタが熱膨張すると、リフレクタの保持構造などに起因して、リフレクタ中心軸が鉛直方向に沿って変動する。その結果、ランプ点灯直後と、ランプ安定点灯時などの温度環境の相違によって、インテグレータへ入射する光の光束断面(照射パターン)が変化し、照明光の一部がインテグレータ入射面に入射せず、照明効率が低下してしまう。
【0007】
したがって、ランプ点灯状況に関わらず、照明効率の低下を抑制したインテグレータ入射面への照明光入射を可能にする光源装置が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様である光源装置は、ランプと、その開口端が鉛直方向に沿うように位置合わせされ、ランプから放射された照明光を反射する凹面反射鏡とを備える。凹面反射鏡は、例えば楕円面や放物面の反射鏡で構成可能である。単一のランプで構成することや、ランプと凹面反射鏡とによってそれぞれ構成される複数のランプユニットを列状に並んで配置することも可能である。
【0009】
照明光は、凹面反射鏡の中心軸に沿って進行し、照明光の進行方向に配置される光学素子に入射する。光学素子は、例えばインテグレータなどによって構成可能である。また、照明光は、入射面のサイズに応じた光束で入射するように構成されている。すなわち、照明光が光学素子入射面よりはるかに大きい照射エリアや、照明光が入射面のごく一部にだけ入射するような照射エリアをもつのでなく、光源からの照明光をできる限りロスしないように、光学素子入射面サイズに合わせた光束の照明光が光学素子に入射する。
【0010】
本発明では、光学素子の入射面において、照明光の光束断面が、鉛直方向に応じたラインに沿って照射エリアが拡がるように、円状から歪んだ形になっている。歪みの程度、方向などは様々に構成可能であり、例えば、ラインの一方向側へ照射エリアが拡がるように、歪ませることができる。また、ラインの一方向側へ照射エリア端が延びるように、歪ませることができる。
【0011】
例えば、ランプが、一対の電極を備えた放電ランプであり、凹面反射鏡が、楕円面または放物面の反射鏡である場合、電極間中心が、凹面反射鏡の焦点に対し、一方の軸に沿った方向にオフセットするとともに、凹面反射鏡の開口端とは反対側の底部側に反射鏡中心軸に沿ってオフセットするように、放電ランプが配置されている。一方の軸に沿ったオフセット量ΔYと、反射鏡中心軸に沿ったオフセット量ΔZは、0.2≦ΔY/ΔZ≦4を満たすように定めることができる。
【0012】
一方、本発明の他の態様である光源装置は、ランプと、円状の開口端を形成し、ランプから放射された照明光を、反射鏡中心に沿った方向へ導く凹面反射鏡とを備え、照明光は、光学素子の入射面に対し、入射面のサイズに応じた光束で入射する。そして、反射鏡中心軸に垂直な光学素子の入射面において、照明光の光束断面が、照明光の進行方向に沿った反射鏡中心軸との交点を通る所定のラインに沿って照射エリアが拡がるように、歪んでいる。
【0013】
本発明の一態様である露光装置は、上記光源装置と、上記光学素子を含む照明光学系とを備え、反射鏡中心軸が、水平方向に沿うように、または水平方向に対し所定角度の範囲内で傾斜するように、光源装置が設置されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ランプ点灯状況に関わらず、照明効率の低下を抑制したインテグレータ入射面への照明光入射を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1の実施形態である光源装置を備えた露光装置の概略的ブロック図である。
【
図3】
図2の放電ランプ付近を部分的に拡大した図である。
【
図4】インテグレータの入射面に入射する照明光の照射パターンを示した図である。
【
図5】
図4とは異なる照射パターンを示した図である。
【
図6】放電ランプをオフセット配置しない場合の照射パターンを示した図である。
【
図7】第2の実施形態である露光装置を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0017】
図1は、第1の実施形態である光源装置を備えた露光装置の概略的ブロック図である。
【0018】
露光装置10は、ここでは、フォトマスク14を用いてパターン光を基板Wに投影するコンタクト露光装置として構成されている。露光装置10は、光源装置20と、露光ヘッド11を備え、コントローラ15によって制御される光源駆動部19によって点灯する。露光ヘッド11は、照度を均一化するインテグレータ13を含む照明光学系12と、フォトマスク14とを備える。
【0019】
光源装置20から出射した光は、照明光学系12を通り、フォトマスク14に入射する。フォトマスク14を通った光は、露光ステージ18の基板Wに投影される。これによって、基板Wに所定のパターンが形成される。
【0020】
露光装置10では、高照度モード、低照度モードを設定可能であり、ユーザによって高照度モードが設定されると、放電ランプ30に対して高電力が入力され、低照度モードが設定されると、低電力が入力させる。なお、露光装置10は、マスクレス露光装置、投影露光装置として構成することも可能である。
【0021】
図2は、光源装置20の概略的断面図である。
図3は、
図2の放電ランプ30付近を部分的に拡大した図である。
【0022】
光源装置20は、放電ランプ30、凹面反射鏡40から成るランプユニットで構成され、ここでは1つのランプユニットで構成されている。放電ランプ30は、例えば交流型の高圧もしくは超高圧水銀ランプであり、発光管33内に一対の電極32、34を備えている。放電ランプ30の発光管33両端には、封止管36、38が一体的に形成され、封止管38が保持部材60によって軸支または保持されている。
【0023】
凹面反射鏡40は、放電ランプから放射された光(以下、照明光という)を、反射鏡中心軸Zに沿って照明光学系12側へ導くリフレクタであり、ここでは断面楕円状の楕円反射鏡として構成されている。円状の開口端40Aから出射した照明光は、照明光学系12のインテグレータの入射面13Aに入射する。
【0024】
反射鏡中心軸Zは、照明光の光軸としてインテグレータ13の入射面13Aに対し垂直であり、照明光は、入射面13Aに対してそのエリアサイズに相当する光束で入射する。なお、凹面反射鏡40とインテグレータ13との間に折り返しミラーなどを設けてもよい。また、凹面反射鏡40は、放物面反射鏡として構成することもできる。
【0025】
凹面反射鏡40は、放電ランプ30におけるハロゲンサイクルの良好な発現、交流型放電ランプ30の電極消耗防止などの理由により、凹面反射鏡40の中心軸(以下、反射鏡中心軸という)Zが水平方向に沿うようにホルダ50に固定されている。ホルダ50は、開口端40A側に応じた開口部50Aを有し、開口端40A側を向く表面(ここでは、基準面という)50Sが鉛直方向に沿うように、装置内で固定されている。
【0026】
凹面反射鏡40は、その開口端40Aが基準面50Sと当接し、基準面50Sに設けられた環状凸部52に対して嵌合し、反射鏡底部側から基準面50S側へ作用する力を受けて固定されている。その結果、凹面反射鏡40の開口端40Aは、鉛直方向に沿っている。
【0027】
ランプ点灯時に凹面反射鏡40が熱膨張するため、環状の凸部52の径サイズは、凹面反射鏡40の開口端40Aのサイズより大きく定められている。そのため、凹面反射鏡40をホルダ50に嵌合したとき、開口端40Aは凸部52の下側端部52Bと当接する一方、凸部52の上側端部52Aとの間に隙間SBが生じている。
【0028】
本実施形態では、放電ランプ30の電極間中心Cは、凹面反射鏡40の焦点C0に位置せず、反射鏡中心軸Zと、焦点C0を通る鉛直方向(基準面50S)に沿った軸(以下、垂直方向軸という)Yとに対して、オフセットしている。
【0029】
具体的には、垂直方向軸Yに沿って下方側へΔY分だけオフセットするとともに、凹面反射鏡40の開口端40Aとは逆側(底部側)に反射鏡中心軸Zに沿ってΔZ分だけオフセットしている。そのため、放電ランプ30のランプ軸Eは、反射鏡中心軸Zより下方に位置する。焦点C0を通り、垂直方向軸Yに垂直な(紙面に垂直な)X軸に関しては、オフセットしていない。
【0030】
オフセット量ΔY、ΔZは、凹面反射鏡40の材質、サイズなどに応じて定められる。ここでは、0.2≦ΔY/ΔZ≦4を満たすようにΔY、ΔZが定められている。例えばΔY、ΔZは、ΔY/ΔZ=1を満たす、すなわち同じオフセット量に設定される。
【0031】
このような凹面反射鏡40に対する放電ランプ30のオフセット配置により、インテグレータ13の入射面13Aに入射する照明光の光量を、高照度モード、低照度モードいずれにおいても低下させず、照度低下を抑制可能としている。以下、これについて詳述する。
【0032】
図4は、インテグレータ13の入射面13Aに入射する照明光の光束断面の形状(以下では、照射パターンともいう)を示した図である。
図5は、
図4とは異なる照射パターンを示した図である。
図6は、放電ランプ30をオフセット配置しない(電極間中心Cを焦点C0に一致させる)場合の照射パターンを示した図である。まず、
図6の従来の放電ランプ30の配置に基づくランプ点灯時の凹面反射鏡40の熱膨張、および照明光の光束の歪みについて説明する。
【0033】
インテグレータ13はロッドレンズなどで構成され、ここでは入射面13Aが方形状に形成されている。光源装置20の円状開口端40Aから出射した照明光は、光束断面円状の光束としてインテグレータ13の入射面13Aに入射する。したがって、インテグレータ13の入射面13Aのエリア全体に対して照明光を入射させる場合、入射面13Aのエリア四隅13K1~13K4付近を含む照射パターンを形成する必要がある。
【0034】
その一方で、インテグレータ13の入射面13Aから外れて入射しない照明光の光量が多いと、照明効率が低下し、無駄な電力消費を伴う。そのため、入射面13Aの中心A0からエリア四隅13K1~13K4までを径とする光束サイズの照明光を、インテグレータ13の入射面13Aに入射させるのが望ましい。したがって、凹面反射鏡40などは、照明がインテグレータ13の入射面13Aに応じたサイズの光束で入射するように設計されている。
【0035】
ところで、ランプ点灯中、凹面反射鏡40は熱膨張するが、開口端40Aが凸部52の下端52Bと当接しているため、反射鏡中心軸Zが上方に移動するように凹面反射鏡40全体が全体的に変形し、開口端40Aは凸部52の上端52Aと当接して隙間SB(
図1参照)がなくなる。これは、放電ランプ30のランプ点灯直後からランプ安定点灯時への移行時においても、同様の変形が生じる。その結果、インテグレータ13の入射面13Aに入射する照明光の照射パターンも変化する。
【0036】
一般的に、高照度モード、ランプ安定点灯時に合わせて照明効率を最も高めるように、凹面反射鏡40などが設計される。その場合、ランプ点灯直後、あるいは低照度モードでは、照明光の一部がインテグレータ13の入射面13Aに入射せず、照度低下が生じる。
【0037】
図6では、入射面13Aにおける低照度モード(ランプ点灯直後)の照射パターンC1と、高照度モード(ランプ安定点灯時)の照射パターンC2とを示している。ここでは、入射面13Aのエリア中心A0を通り、凹面反射鏡40の開口端40Aの鉛直方向に沿った軸をy軸とし、また、エリア中心A0を通りy軸に垂直な軸をx軸としている。
【0038】
y軸は、凹面反射鏡40の焦点C0を通る鉛直方向に沿ったY軸に対応し、x軸はX軸に対応する。高照度モード(ランプ安定点灯時)では、反射鏡中心軸Zの入射面13Aと交差する位置cが、エリア中心A0の位置と略一致する。すなわち、円状の照射パターンC2の中心位置が、エリア中心A0と略一致する。
【0039】
一方、低照度モード(ランプ点灯直後)では、凹面反射鏡40の熱膨張の影響が少ないため、反射鏡中心軸Zの入射面13Aでの交点となる位置c’を中心とした照射パターンC1が形成される。照射パターンC1の中心は、y軸に沿ってエリア中心A0よりもΔyだけ下方にシフトしている。
【0040】
低照度モード(ランプ点灯直後)では、入射面13Aの一部(特に2つの隅13K1、13K4付近)において、照明光が入射しない。そのため、基板Wに対して必要な露光量を得るためには、低照度モードあるいはランプ点灯直後において、過度な電力供給を行って照度を挙げる必要がある。
【0041】
一方で、これを防ぐために照射パターンC1、C2の照射エリアサイズをあらかじめ拡大するように設計した場合、入射面13Aのエリア全体に照明光が入射するが、入射面13Aエリアから外れる照明光の光量が多くなり、照明効率の低下となる。
【0042】
図4では、本実施形態における放電ランプ30のオフセット配置をした場合の照射パターンを示している。
図4に示すように、低照度モード(ランプ点灯直後)、高照度モード(ランプ安定点灯時)いずれにおいても、照射パターンC’1、C’2は、入射面13Aのエリア全体を含むパターンとなっている。
【0043】
照射パターンC’1、C’2は、
図6の照射パターンC1、C2と比較すると、y軸の正方向に向けてその照射エリア端が拡がるように、すなわちパターン形状が+y方向へ延びるように歪んでいる。y軸正方向は、凹面反射鏡40におけるY軸正方向、すなわち鉛直方向に対応する。一方、x軸に関し、照射パターンC’1、C’2に歪はなく、y軸に関して対称的なパターン形状となっている。
図4では、照射パターンC’1、C’2は卵型に近いパターン形状になっている。
【0044】
図5は、別の照射パターンC”1、C”2を示した図である。
図4とは異なり、低照度モード(ランプ点灯直後)では、照射パターンC”1が入射面13Aの隅13K1、13K4付近の領域を含まず、照明光が入射しない。しかしながら、
図6と比較すれば明らかなように、入射しない照明光の光量は抑制されている。一方で、照射パターンC”2は、入射面13Aの隅13K1~13K4を含む照射パターンとして形成されている。なお、照射パターンC”2に関しても、入射面13Aの隅13K1、13K4付近のエリアに照明光が入射しない場合でも、放電ランプ30をオフセット配置しない場合に比べて照明効率の低下は抑制される。
【0045】
このように本実施形態によれば、インテグレータ13に照明光を入射させる光源装置20を備えた露光装置10において、光源装置20は、放電ランプ30と凹面反射鏡40とを備えたランプユニットで構成される。そして、放電ランプ30は、凹面反射鏡40に対し鉛直方向に沿ったY軸および反射鏡中心軸Zの底部側に沿って、その電極間中心Cが焦点C0からオフセットされている。
【0046】
これにより、インテグレータ13の入射面13Aに入射する照射パターンC’1、C’2は、鉛直方向(装置上方向)に応じたy軸の+方向に向けてその照射エリアが拡がるように、円状パターンに対し歪みをもつ照射パターンとなる。このような照射パターンによって、低照度モード(ランプ点灯直後)、高照度モード(ランプ安定点灯時)いずれにおいても、照明効率を低下させることなく、照明光を効果的にインテグレータ13へ入射させることができる。
【0047】
上述したように、オフセット量ΔY、ΔZは、0.2≦ΔY/ΔZ≦4を満たすように定められている。これは、ΔYに対してΔZが大きすぎると、照射パターン自体が変形するだけで歪みが小さく、ΔYに対してΔZが小さすぎると、極端に歪んだ照射パターンになるためである。
【0048】
図4~
図6では、インテグレータ13の入射面13Aが方形状に形成されているが、代わりに矩形状、円形状にすることも可能である。その場合でも、照射パターンがy軸の正方向に向けて歪むことで、同様の効果を得ることができる。
【0049】
照射パターンの歪みは、放電ランプ30のオフセット配置以外によって実現してもよい。例えば、凹面反射鏡の開口端形状を円状でなく変形することによって、照射パターンを歪ませることも可能である。また、照射パターンが楕円状となるような凹面反射鏡を構成してもよい。
【0050】
したがって、照射パターンの歪みを、y軸の±両方向へ歪ませて楕円状にすることも可能である。また、y軸に関して非対称な歪を持たせた照射パターンにすることも可能である。
【0051】
図7は、第2の実施形態である露光装置を示した図である。
【0052】
露光装置10’は、多灯式の光源装置20’を備え、光源装置20’は、凹面反射鏡40と放電ランプ30から成るランプユニット20Nを複数備えている。複数のランプユニット20Nは、鉛直方向に沿って列状に配置され、各ランプユニット20Nは、第1の実施形態と同様、その開口端が鉛直方向に沿うように、ホルダによって保持されている。
【0053】
光源装置20’からの照明光は、ミラーM1、M2によって反射し、インテグレータ13の入射面13Aに入射する。このとき、各ランプユニットの照明光がインテグレータ13の入射面13Aに入射する。
【0054】
このような多灯式光源装置20’であっても、照度モード(ランプ点灯直後)、高照度モード(ランプ安定点灯時)において、照射パターンの上端、下端付近のずれが生じる。そのため、第1の実施形態と同様に各放電ランプの電極間中心を凹面反射鏡の焦点に対してオフセットし、照射パターンを鉛直方向に応じた方向に歪ませた照射パターンを各ランプユニットで形成することによって、照明効率の低下を抑制しながらインテグレータ13の入射面13Aに入射させることができる。なお、複数のランプユニット20Nを鉛直方向に並べる代わりに、所定の角度(例えば±20°の範囲)で傾斜させて固定配置させてもよい。
【0055】
第1、第2の実施形態で示した光源装置は、露光装置以外の装置、例えばプロジェクタに適用することも可能である。この場合、放電ランプ30のオフセット配置方向に合わせて凹面反射鏡40の開口端の位置決めを行い、固定すればよい。
【符号の説明】
【0056】
10 露光装置
13 インテグレータ
20 光源装置
30 放電ランプ
40 凹面反射鏡