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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】便器装置
(51)【国際特許分類】
   E03D 9/00 20060101AFI20240523BHJP
【FI】
E03D9/00 F
E03D9/00 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020164931
(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公開番号】P2022056929
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2023-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】島▲崎▼ 浩和
(72)【発明者】
【氏名】牧 道太郎
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 弘明
(72)【発明者】
【氏名】灰田 周平
(72)【発明者】
【氏名】田村 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】中山 太一
【審査官】村川 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-229738(JP,A)
【文献】特開平04-070431(JP,A)
【文献】国際公開第2019/138450(WO,A1)
【文献】特開2015-113677(JP,A)
【文献】特開2012-167530(JP,A)
【文献】登録実用新案第3128026(JP,U)
【文献】特開2018-087451(JP,A)
【文献】実開平02-089073(JP,U)
【文献】特開2008-050899(JP,A)
【文献】特開2008-115688(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 9/00 - 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
便鉢を有する便器本体と、
前記便鉢内に洗浄水を供給して便器洗浄する便器洗浄部と、
前記便器本体の後部上方から前記便鉢内に流体を供給する流体供給部と、
前記流体供給部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記便器洗浄部による便器洗浄時において、前記流体供給部を制御して前記便器本体の後部上方から前記便鉢内に流体を供給することにより、前記便鉢の上面の開口の少なくとも一部を遮蔽して前記便鉢内の洗浄水の飛沫の飛散を抑制する飛沫抑制制御を実行し、
使用者を検知する検知部をさらに備え、
前記制御部は、使用者が検知されたときに、前記流体供給部を制御して前記便器本体の後部上方から前記便鉢内に流体を供給することにより前記便鉢内を清浄化する清浄化制御を実行し、かつ、前記飛沫抑制制御の実行時には、前記清浄化制御の実行時よりも前記流体供給部により前記便鉢内に供給する流体の単位時間あたりの供給量を大きくする、便器装置。
【請求項2】
前記流体供給部は、前記便鉢内に送風をする送風部を有し、
前記制御部は、前記送風部を制御して前記便鉢内に送風をすることにより前記飛沫抑制制御を実行する、請求項1に記載の便器装置。
【請求項3】
便鉢を有する便器本体と、
前記便鉢内に洗浄水を供給して便器洗浄する便器洗浄部と、
前記便器本体の後部上方から前記便鉢内に流体を供給する流体供給部と、
前記流体供給部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記便器洗浄部による便器洗浄時において、前記流体供給部を制御して前記便器本体の後部上方から前記便鉢内に流体を供給することにより、前記便鉢の上面の開口の少なくとも一部を遮蔽して前記便鉢内の洗浄水の飛沫の飛散を抑制する飛沫抑制制御を実行し、
前記流体供給部は、前記便鉢内に送風をする送風部を有し、
前記制御部は、前記送風部を制御して前記便鉢内に送風をすることにより前記飛沫抑制制御を実行する、便器装置。
【請求項4】
前記流体供給部は、イオンを生成して前記送風部にイオンを供給するイオン生成部をさらに有し、
前記制御部は、前記送風部及び前記イオン生成部を制御して前記便鉢内にイオン風を送風することにより前記飛沫抑制制御を実行する、請求項2又は3に記載の便器装置。
【請求項5】
前記流体供給部は、前記便鉢内に吐水をする吐水部を有し、
前記制御部は、前記吐水部を制御して前記便鉢内に吐水をすることにより前記飛沫抑制制御を実行する、請求項1から4いずれかに記載の便器装置。
【請求項6】
前記流体供給部は、除菌水を生成して前記吐水部に除菌水を供給する除菌水生成部をさらに有し、
前記制御部は、前記吐水部及び前記除菌水生成部を制御して前記便鉢内に除菌水を吐水することにより前記飛沫抑制制御を実行する、請求項5に記載の便器装置。
【請求項7】
便鉢を有する便器本体と、
前記便鉢内に洗浄水を供給して便器洗浄する便器洗浄部と、
前記便器本体の後部上方から前記便鉢内に流体を供給する流体供給部と、
前記流体供給部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記便器洗浄部による便器洗浄時において、前記流体供給部を制御して前記便器本体の後部上方から前記便鉢内に流体を供給することにより、前記便鉢の上面の開口の少なくとも一部を遮蔽して前記便鉢内の洗浄水の飛沫の飛散を抑制する飛沫抑制制御を実行し、
前記流体供給部は、前記便鉢内に吐水をする吐水部を有し、
前記制御部は、前記吐水部を制御して前記便鉢内に吐水をすることにより前記飛沫抑制制御を実行し、
前記流体供給部は、除菌水を生成して前記吐水部に除菌水を供給する除菌水生成部をさらに有し、
前記制御部は、前記吐水部及び前記除菌水生成部を制御して前記便鉢内に除菌水を吐水することにより前記飛沫抑制制御を実行する、便器装置。
【請求項8】
前記便器本体に対して開閉可能に設けられる便蓋と、
前記便蓋を開閉駆動する開閉駆動部と、をさらに備え、
前記制御部は、前記飛沫抑制制御の実行時において、前記開閉駆動部を制御して前記便蓋を閉じる、請求項1からいずれかに記載の便器装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、便器装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、便器洗浄時の洗浄水の飛沫が便鉢の外に飛散するのを避けるために、便蓋を閉じた状態で便器洗浄を行う技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1の技術によれば、着座検知手段により使用者の離座を検知したときに便蓋を閉じる制御を行うことにより、便蓋が閉じた状態で便器洗浄を行うことができ、洗浄水の飛沫が便鉢の外に飛散して菌やウィルスが拡散するおそれを回避できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-62774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、便蓋を閉じた状態で便器洗浄を行うため、洗浄水の飛沫が便蓋の裏側や便座に付着し、次に便器装置を使用する使用者の人体に付着するおそれがあった。
【0005】
従って、便器洗浄時の洗浄水の飛沫が便鉢の外に飛散するのを抑制できるとともに、便器洗浄時の洗浄水の飛沫が便蓋や便座に付着するのを抑制できる便器装置が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、便鉢を有する便器本体と、前記便鉢内に洗浄水を供給して便器洗浄する便器洗浄部と、前記便器本体の後部上方から前記便鉢内に流体を供給する流体供給部と、前記流体供給部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記便器洗浄部による便器洗浄時において、前記流体供給部を制御して前記便器本体の後部上方から前記便鉢内に流体を供給することにより、前記便鉢の上面の開口の少なくとも一部を遮蔽して前記便鉢内の洗浄水の飛沫の飛散を抑制する飛沫抑制制御を実行する、便器装置に関する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の一実施形態に係る便器装置の斜視図である。
図2】本開示の一実施形態に係る便器装置の便座、便蓋、カバー及び便器洗浄部を取り外した状態の平面図である。
図3図2に示す便器装置の局部洗浄部のノズルユニットを取り外した状態の平面図である。
図4】本開示の一実施形態に係る便器装置の制御部の構成を示すブロック図である。
図5】本開示の一実施形態に係る便器装置の飛沫抑制制御の処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照して詳しく説明する。以下の説明において、前後方向及び左右方向は、便宜上、便座に着座する使用者から見た前後方向及び左右方向を意味する。
【0009】
図1図3に示すように、便器装置1は、水洗式の便器装置である。便器装置1は、便器本体2と、便器洗浄部3と、便座5と、便蓋6と、制御部50と、局部洗浄部60と、開閉駆動部70と、着座検知部80と、流体供給部100と、を備える。
【0010】
便器本体2は、汚物を受けるとともに底部に溜水Rが溜められるボウル状の便鉢4と、便鉢4の周縁に沿って設けられるリム部40と、便鉢4の底部から下方に延びる排水管(不図示)と、を含んで構成される。リム部40には、便鉢4の周縁に沿って洗浄水が旋回するリム通水路(不図示)が形成される。
【0011】
便器洗浄部3は、上方に手洗い部38が設けられたタンクカバー34と、洗浄水を貯留する洗浄タンク35と、洗浄タンク35に貯留された洗浄水を便鉢4内に供給する洗浄機構36と、ハンドル37と、を備える。洗浄機構36は、例えば、洗浄タンク35内に給水をするボールタップ給水機構(不図示)と、ハンドル37の回転動作が伝達される回転軸部の回転によって洗浄タンク35の底部に形成された排水口を開閉する排水弁機構(不図示)と、を有する。これらボールタップ給水機構及び排水弁機構により、使用者がハンドル37を手動で回転操作すると、洗浄タンク35内に貯留されていた洗浄水が便鉢4内に所定量供給されるとともに、洗浄タンク35内に所定量の給水が行われる。
【0012】
本実施形態に係る洗浄機構36は、上述のような手動式の洗浄機構に限定されるものではなく、電動式の洗浄機構であってもよい。電動式の洗浄機構は、例えば、後述する制御部50により制御されて上記回転軸部を回転させる電動アクチュエータと、制御部50に対して電動アクチュエータを駆動する信号を送信するリモートコントローラと、を備えるものを用いることができる。
【0013】
便座5は、便器本体2に対して開閉可能に設けられる。同様に、便蓋6は、便器本体2に対して開閉可能に設けられ、閉じた状態で便鉢4の上面の開口を覆う。これら便座5及び便蓋6は、後述する制御部50により制御される回転駆動軸を有する開閉駆動部70により開閉される。
【0014】
局部洗浄部60は、便器本体2の後部上方に設けられる。局部洗浄部60は、各種機能部品を収容するケース7内に収容される。ケース7は、便器本体2の後部上面に設置されるベース8と、ベース8の前面中央に形成された横長の開口部9を開閉するシャッター10と、ベース8に組み付けられて各種機能部品を覆うカバー11と、を有する。
【0015】
局部洗浄部60は、便座5に着座している使用者の局部に対して洗浄水を吐出するノズルユニット12と、ノズルユニット12に温水を供給する温水供給ユニット13と、を備える。この局部洗浄部60は、後述する制御部50により駆動制御される。
【0016】
ノズルユニット12は、ベース8の中央に配置される。ノズルユニット12は、肛門洗浄用の洗浄ノズル18と、洗浄ノズル18を駆動させるノズル駆動機構19と、洗浄ノズル18と並んで配置されるビデ用の洗浄ノズル20と、洗浄ノズル20を駆動させるノズル駆動機構21と、を有する。洗浄ノズル18,20は、それぞれ、後述する温水供給ユニット13によって供給される洗浄水を使用者の局部に向けて吐出する吐出孔22を先端部の上面に有する。
【0017】
洗浄ノズル18,20は、筒状のノズル本体を有し、その先端が下方に傾斜するように配置される。洗浄ノズル18,20は、互いに独立して、ノズル駆動機構19,21により便鉢4に対して進退することにより、シャッター10を開閉する。具体的には、洗浄ノズル18,20が便鉢4に対して前進すると、ノズル本体の先端がシャッター10の内側に当接して便鉢4側に押圧することによりシャッター10が開き、洗浄ノズル18,20が便鉢4に対して後退すると、上記押圧が解消されてシャッター10が閉じる。
【0018】
温水供給ユニット13は、ベース8の左右方向の一端側、例えば図2及び図3に示すように右側に配置される。温水供給ユニット13は、個別の供給管を介して各洗浄ノズル18,20に接続されており、設定温度に調温された温水を洗浄水として各洗浄ノズル18,20に供給する。
【0019】
着座検知部80は、使用者の便座5への着座を検知する。着座検知部80は、例えば、カバー11の上部の前面に設けられ、赤外線センサにより構成される。着座検知部80は、発光素子から赤外線を照射し、着座している使用者の人体で反射された赤外線を受光素子によって受光することにより、便座5に使用者が着座していることを検知する。着座検知部80の検知信号は、後述する制御部50に送信される。本実施形態の着座検知部80は、赤外線センサにより構成されるものに限定されず、例えば、静電センサ等の接触検知センサにより構成されるものでもよい。
【0020】
本開示の便器装置1は、人体検知部(不図示)を備えていてもよい。人体検知部は、便器装置1に近付いた使用者を検知する。人体検知部は、例えば、上述のような着座検知部80と同様の赤外線センサにより構成され、その検知信号は後述する制御部50に送信される。本開示における検知部は、着座検知部80及び人体検知部のうち少なくとも一方により構成される。
【0021】
流体供給部100は、便器本体2の後部上方から、便鉢4内に流体を供給する。本実施形態の流体供給部100は、便鉢4内に送風をする送風部110と、イオンを生成して送風部110にイオンを供給するイオン生成部27と、便鉢4内に吐水をする吐水部120と、除菌水を生成して吐水部120に除菌水を供給する除菌水生成部42と、を含んで構成される。この流体供給部100は、後述する制御部50により駆動制御される。本実施形態の流体供給部100は、上述のイオン生成部27や除菌水生成部42を含まない構成であってもよい。
【0022】
送風部110は、便鉢4内に送風をする。図2及び図3に示すように、送風部110は、風を送り出す送風ユニット14と、汚物から発生する便鉢4内の臭気を除去する脱臭ユニット15と、を含んで構成される。
【0023】
送風ユニット14は、ベース8の左右方向の一端側、例えば図2及び図3に示すように右側に配置される。送風ユニット14は、外気を開口部9に導く送風ダクト24と、送風ダクト24内に設けられた第1送風機25と、送風ダクト24内における第1送風機25の下流側に設けられたヒーター26と、を備える。
【0024】
送風ダクト24は、外気の取込口(不図示)を上流端に有するとともに、開口部9の内側から便鉢4内に臨む吹出口28を下流端に有する。送風ダクト24は、第1送風機25の駆動によって、取込口から外気を取り込んで吹出口28から風を吹き出す。第1送風機25は、送風ダクト24内に、取込口から吹出口28への気流を発生させる。ヒーター26は、送風ダクト24に取り込まれた空気を温める。
【0025】
本実施形態の吹出口28は、図2及び図3に示すように、シャッター10の内側に配置される。そのため、シャッター10が閉じた状態において、シャッター10と開口部9の開口縁との間には隙間が形成されており、この隙間が送風口45として機能する。従って、吹出口28から吹き出された風は、送風口45から便鉢4内に送り出される。吹出口28には、シャッター10の代わりに、吹き出す風によって吹出口28を開く一方で、自重によって吹出口28を閉じる吹出口シャッターが別に設けられていてもよい。
【0026】
上述の送風口45から便鉢4内に送り出された風は、図2中の矢印で示すように、後述する脱臭ユニット15による吸引作用も相俟って、便鉢4内の溜水面よりも上方を旋回する旋回流を発生させる。この旋回流がエアシールド(登録商標)として機能し、便鉢4の上面の開口の少なくとも一部が遮蔽される。これにより、検知部によって使用者が検知されたときであれば、汚物から発生する臭気が便鉢4の外に漏れるのが抑制される。便器洗浄中であれば、便鉢4内の臭気の漏れに加えて洗浄水の飛沫が飛散するのが抑制される。これについては、後段で、制御部50による清浄化制御及び飛沫抑制制御として詳しく説明する。
【0027】
イオン生成部27は、送風ダクト24内における第1送風機25の下流側に設けられる。イオン生成部27としては、例えば、プラズマ放電で生成したイオンにより空気中の浮遊ウィルスの作用を抑えて浮遊カビ菌等を分解、除去可能な装置や、静電霧化装置等のような空気中に殺菌や脱臭用のイオンを生成させる各種装置を用いることができる。このようなイオン生成部27は、送風ダクト24に取り込まれた空気を電離させて、プラスイオンとマイナスイオンを生じさせる。これにより、送風部110は、吹出口28からプラスイオンとマイナスイオンを含むイオン風を吹き出し、送風口45を介して便鉢4内にイオン風を供給することにより、便鉢4内に旋回流を生じさせて便鉢4内の浮遊菌を不活化する。
【0028】
脱臭ユニット15は、ベース8の左右方向の一端側、例えば図2及び3に示すように左側に配置される。脱臭ユニット15は、便鉢4内の空気を便鉢4の外部に導く脱臭ダクト29と、脱臭ダクト29内に設けられた第2送風機30と、脱臭ダクト29内における第2送風機30の下流側に設けられた脱臭カートリッジ31と、を備える。
【0029】
脱臭ダクト29は、ベース8の前方中央寄りに形成された吸込口32を上流端に有するとともに、ベース8の左右方向の一端側、例えば図2及び3に示すように左側の側面に形成された吹出口33を下流端に有する。脱臭ダクト29は、第2送風機30の駆動によって、吸込口32から便鉢4内の空気や臭気を吸い込んで吹出口33から風を吹き出す。即ち、本実施形態の脱臭ユニット15は、非循環式(ワンパス式)の脱臭装置である。第2送風機30は、脱臭ダクト29内に、吸込口32から吹出口33への気流を発生させる。脱臭カートリッジ31は、脱臭用の触媒を内蔵しており、脱臭ダクト29に吸い込まれた空気を通過させることで、通過する空気に含まれる臭気を取り除く。
【0030】
吸込口32は、ベース8の底面に形成され、下方に向かって開口し、便鉢4内に臨んでいる。即ち、シャッター10の内部に吸込口が無く、ベース8の底面に吸込口が形成されているため、シャッター10を閉じた状態であっても、便鉢4内の空気や臭気を吸込むことができる。
【0031】
脱臭カートリッジ31としては、活性炭等を触媒とする吸着型の脱臭剤を用いることができる。光触媒のように紫外線等の光線を照射することによって物質を分解する機能を有する分解型のものを、脱臭カートリッジ31として用いることもできる。
【0032】
上述したように、送風ユニット14による便鉢4内への送風に加えて、脱臭ユニット15による便鉢4内の空気や臭気の吸引により、便鉢4内に旋回流の発生が助長される。ただし、脱臭ユニット15としては、上記の第2送風機30のような送風機や吸引機は必須ではなく、単に脱臭ダクト29を有していればよい。上述のように、吸込口32から便鉢4内の空気や臭気を吸い込んで吹出口33から風を吹き出す非循環式(ワンパス式)の脱臭装置に限定されず、送風ユニット14に空気を循環させる循環式の脱臭装置を用いることもできる。
【0033】
吐水部120は、便鉢4内に吐水をする。図3に示すように、吐水部120は、便鉢4内にミスト状に吐水をするミストノズル41と、除菌水生成部42からミストノズル41に除菌水を供給する除菌水供給管43と、を含んで構成される。
【0034】
ミストノズル41は、ベース8の中央に配置される。即ち、図3に示すように、ミストノズル41は、局部洗浄部60のノズルユニット12の下方に配置される。ミストノズル41は、先端側が下方に傾斜して配置され、図3中の矢印で示すように便鉢4内に向けて吐水をする。より詳しくは、ミストノズル41は、便鉢4の内壁面に対してミスト状に吐水をする。ミストノズル41には、除菌水供給管43が接続されており、除菌水生成部42で生成された除菌水は、この除菌水供給管43を介してミストノズル41に供給され、便鉢4内に吐出される。
【0035】
ミストノズル41によってミスト状に吐水されることにより、検知部によって使用者が検知されたときであれば、予め便鉢4の内壁面が湿った状態となることにより、汚物が便鉢4の内壁面に付着するのが抑制される。便器洗浄中であれば、このミストにより便鉢4の上面の開口の少なくとも一部が遮蔽される結果、便鉢4内の洗浄水の飛沫が飛散するのが抑制される。これについては、後段で、制御部50による清浄化制御及び飛沫抑制制御として詳しく説明する。
【0036】
除菌水生成部42は、給水源(不図示)からの給水を電気分解することで除菌水を生成する。ここで、除菌水とは、例えば、次亜塩素酸を含む水でもよく、金属イオンを含む水でもよい。金属イオンを含む水とは、例えば、銀イオン、銅イオン及び亜鉛イオンの少なくても何れか等の金属イオンを含む水である。オゾンを含む水も除菌水に含まれる。除菌水生成部42は、除菌剤や除菌液を水に溶解させることにより除菌水を生成するものでもよい。除菌水生成部42は、後述する制御部50に制御されて、除菌水を生成して除菌水供給管43を介して吐水部120に除菌水を供給する。
【0037】
図2及び図3に示すように、制御部50は、制御基板を有し、ベース8の左右方向の一端側、例えば図2及び3に示すように左側に配置される。便器装置1には、制御部50及び各種機能部品に電力を供給する電源基板17も設けられる。制御部50の後述する各機能は、ハードウエアとしてはCPU等の各種素子により実現され、ソフトウエアとしてはコンピュータプログラム等によって実現される。図4に示すように、制御部50は、機能構成として、飛沫抑制制御部51と、清浄化制御部52と、開閉駆動制御部53と、を備える。飛沫抑制制御部51は、送風制御部511と、イオン生成制御部512と、吐水制御部513と、除菌水生成制御部514と、を備える。
【0038】
飛沫抑制制御部51は、便器洗浄部3による便器洗浄時において、飛沫抑制制御を実行する。具体的に飛沫抑制制御部51は、便器洗浄部3による便器洗浄時において、送風制御部511により上述の送風部110を制御して便鉢4内に送風をすることにより、便鉢4の上面の開口の少なくとも一部を遮蔽し、便鉢4内の洗浄水の飛沫の飛散を抑制する。同時に、飛沫抑制制御部51は、イオン生成制御部512によりイオン生成部27を制御して、便鉢4内にイオン風を供給してもよい。
【0039】
飛沫抑制制御部51は、便器洗浄部3による便器洗浄時において、吐水制御部513により上述の吐水部120を制御して便鉢4内に吐水をすることにより、便鉢4の上面の開口の少なくとも一部を遮蔽し、便鉢4内の洗浄水の飛沫の飛散を抑制する。同時に、飛沫抑制制御部51は、除菌水生成制御部514により除菌水生成部42を制御して、便鉢4内に除菌水を吐出してもよい。
【0040】
飛沫抑制制御部51は、送風制御部511による送風及び吐水制御部513による吐水のうち一方のみにより飛沫抑制制御を実行してもよく、これら両方を同時に行うことにより飛沫抑制制御を実行してもよい。飛沫抑制制御部51は、飛沫抑制制御の実行開始後は、便器洗浄が終了するまで飛沫抑制制御の実行を継続する。便器洗浄の終了とは、洗浄水の供給量が、洗浄水の飛沫が飛散することが無くなる程度の少量となったときでもよく、供給量が0となったときでもよい。便器洗浄の終了後、所定時間の間、飛沫抑制制御を継続してもよい。
【0041】
飛沫抑制制御部51は、飛沫抑制制御の実行時には、後述する清浄化制御の実行時よりも便鉢4内に供給する単位時間あたりの風量、ミストの吐水量を大きくしてもよい。即ち、飛沫抑制制御部51は、使用者が脱座しているときや便座が上がっているときの便器洗浄時には、検知部によって使用者が検知されたときよりも、風量、ミストの吐水量を大きくする。これにより、便器洗浄における洗浄水の飛沫の飛散をより確実に抑制できる。
【0042】
飛沫抑制制御部51は、飛沫抑制制御の実行時には、後述する清浄化制御の実行時と比べて、便鉢4内に供給する風の方向やミストの吐水範囲を変更してもよい。例えば、便鉢4の上面の開口をより確実に遮蔽するような大きな旋回流が発生するように、風の方向を変更したり、ミストの吐水範囲をより広くしたりすることにより、便器洗浄における洗浄水の飛沫の飛散をより確実に抑制できる。
【0043】
清浄化制御部52は、検知部によって使用者が検知されたときに、送風部110及び吐水部120のうち少なくとも一方を制御して、便器本体2の後部上方から便鉢4内に送風、吐水をすることにより、便鉢4内を清浄化する清浄化制御を実行する。検知部によって使用者が検知されたときとは、着座検知部80により使用者の便座5への着座が検知されたときと、人体検知部により便器装置1に近付いた使用者を検知したときと、のうち少なくとも一方のときである。同時に、清浄化制御部52は、イオン生成部27や除菌水生成部42を制御して、便鉢4内にイオン風や除菌水を吐出して清浄化してもよい。これにより、検知部によって使用者が検知されたときであれば、送風により汚物から発生する臭気が便鉢4の外に漏れるのを抑制でき、吐水により予め便鉢4の内壁面が湿った状態となることによって汚物が便鉢4の内壁面に付着するのを抑制できる。
【0044】
開閉駆動制御部53は、開閉駆動部70を制御する。便座5及び便蓋6は、開閉駆動制御部53により開閉駆動部70が制御されることで開閉動作する。特に、開閉駆動制御部53は、上述の飛沫抑制制御の実行時において、開閉駆動部70を制御して便蓋6を閉じる制御を行ってもよい。従来の技術では便蓋を閉じた状態で便器洗浄を行うと洗浄水の飛沫が便蓋の裏側や便座に付着してしまうのに対して、本実施形態の飛沫抑制制御では送風や吐水により洗浄水の飛散が抑制されるため、便蓋6の裏側や便座に飛沫が付着するのを抑制できるからである。
【0045】
本実施形態に係る便器装置1の制御部50による飛沫抑制制御の処理の一例について、図5を参照して詳しく説明する。
【0046】
図5に示す飛沫抑制制御は、例えば使用者による便器洗浄の操作の他、例えば使用者が脱座して所定時間経過後の自動洗浄の開始等をトリガーとして、処理の実行が開始される。
【0047】
先ず、ステップS11では、便器装置1が便器洗浄中であるか否かを判別する。この判別結果がYESであれば、ステップS12に進み、NOであればステップS11の判別を繰り返し実行する。便器洗浄中であるか否かは、制御部50が把握しており、例えば着座検知部80による使用者の脱座の検知に基づいて判別してもよく、便器洗浄部3における洗浄機構36の回転軸部の位置情報や排水弁機構の排水弁の状態を各種センサにより検知して判別してもよい。電動式の洗浄機構であれば、リモートコントローラから制御部50に送信される洗浄機構の駆動信号の有無に基づいて判別してもよい。
【0048】
次いで、ステップS12では、便器装置1が便器洗浄中であるため飛沫抑制制御を開始する。飛沫抑制制御を開始後、ステップS13に進む。飛沫抑制制御の開始時期は、便器洗浄の開始より前でも後でもよい。あるいは、便器洗浄の開始と同時に飛沫抑制制御を開始してもよい。便器洗浄の開始前あるいは開始と同時に飛沫抑制制御を開始する場合には、例えば着座検知部80による使用者の脱座の検知に基づいて飛沫抑制制御を開始してもよい。男性の小便時には、便器装置1に設けられた人体検知部の検知信号に基づいて飛沫抑制制御を開始してもよい。
【0049】
次いで、ステップS13では、再度、便器洗浄中であるか否かを判別する。便器洗浄中であるか否かの判別は、ステップS11と同様に実行する。この判別結果がYESであれば、まだ便器洗浄中であるため飛沫抑制制御を継続し、本ステップの判別を繰り返し実行する。この判別結果がNOであれば、便器洗浄は終了したため飛沫抑制制御を終了し、本処理を終了する。
【0050】
以上説明した本実施形態に係る便器装置1によれば、便器洗浄部3による便器洗浄時において、送風部110や吐水部120で構成される流体供給部100を制御して、便器本体2の後部上方から便鉢4内に送風や吐水を実行することにより、便鉢4の上面の開口の少なくとも一部を遮蔽して便鉢4内の洗浄水の飛沫の飛散を抑制することができる。ひいては、洗浄水の飛沫が便鉢4の外に飛散して菌やウィルスが拡散するのを抑制できる。
【0051】
また本実施形態によれば、便器洗浄するときに便蓋6を閉じなくても、便鉢4の外へ洗浄水の飛沫が飛散するのを抑制することができるため、洗浄水の飛沫が便蓋6の裏側や便座5に付着し、次に便器装置1を使用する使用者の人体に付着するのを回避できる。従って、本実施形態に係る便器装置1によれば、便器洗浄時の洗浄水の飛沫が便鉢4の外に飛散するのを回避できるとともに、便器洗浄時の洗浄水の飛沫が便蓋6や便座5に付着するのを抑制できる。
【0052】
また本実施形態によれば、便器洗浄するときに便蓋6を閉じなくても、便鉢4の外へ洗浄水の飛沫が飛散するのを抑制することができるため、便器洗浄により汚物が完全に流れたか否かを使用者が視認することができる。さらには、着座していない便器洗浄中に飛沫抑制制御を行うため、使用者の臀部に風やミストが当たり不快にさせることもなく、便器洗浄時の洗浄水の飛散防止効果を得ることができる。
【0053】
本開示は上記態様に限定されるものではなく、本開示の目的を達成できる範囲での変形、改良は本開示に含まれる。
【符号の説明】
【0054】
1 便器装置、 2 便器本体、 3 便器洗浄部、 4 便鉢、 5 便座、 6 便蓋、 7 ケース、 8 ベース、 9 開口部、 10 シャッター、 11 カバー、 12 ノズルユニット、 13 温水供給ユニット、 14 送風ユニット、 15 脱臭ユニット、 17 電源基板、 18,20 洗浄ノズル、 19,21 ノズル駆動機構、 22 吐出孔、 24 送風ダクト、 25 第1送風機、 26 ヒーター、 27 イオン生成部、 28 吹出口、 29 脱臭ダクト、 30 第2送風機、 31 脱臭カートリッジ、 32 吸込口、 33 吹出口、 34 タンクカバー、 35 洗浄タンク、 36 洗浄機構、 37 ハンドル、 38 手洗い部、 40 リム部、 41 ミストノズル、 42 除菌水生成部、 43 除菌水供給管、 45 送風口、 50 制御部、 51 飛沫抑制制御部、 52 清浄化制御部、 53 開閉駆動制御部、 60 局部洗浄部、70 開閉駆動部、80 着座検知部、 100 流体供給部、 110 送風部、 120 吐水部、 511 送風制御部、 512 イオン生成制御部、 513 吐水制御部、 514 除菌水生成制御部、 R 溜水
図1
図2
図3
図4
図5