(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】ポリ乳酸系樹脂発泡シート、および、シート成形品
(51)【国際特許分類】
C08J 9/04 20060101AFI20240523BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20240523BHJP
C08L 67/04 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
C08J9/04 101
C08J9/04 CEQ
C08J9/04 CFD
B29C44/00 E
C08L67/04
(21)【出願番号】P 2020165434
(22)【出願日】2020-09-30
【審査請求日】2023-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】村上 大祐
【審査官】脇田 寛泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-348060(JP,A)
【文献】特開2012-126871(JP,A)
【文献】特開2014-040568(JP,A)
【文献】国際公開第2020/054536(WO,A1)
【文献】特開2008-069345(JP,A)
【文献】特開2008-255134(JP,A)
【文献】特開2009-113442(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0002429(US,A1)
【文献】特表2010-507006(JP,A)
【文献】特表2016-529375(JP,A)
【文献】国際公開第2015/012125(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C44/00-44/60
67/20
C08J9/00-9/42
C08K3/00-13/08
C08L1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸系樹脂を含むポリ乳酸系樹脂組成物で構成された発泡層を備えたポリ乳酸系樹脂発泡シートであって、
前記ポリ乳酸系樹脂組成物がブタジエン系エラストマーをさらに含み、
前記ポリ乳酸系樹脂組成物には、前記ブタジエン系エラストマーが粒子状となって含まれ、
前記ポリ乳酸系樹脂を含むマトリックス相と、
前記ブタジエン系エラストマーを含む分散相とが形成されており、
前記分散相の粒径が0.1μm以上1μm以下であり、
前記ポリ乳酸系樹脂を100質量部としたときに前記ブタジエン系エラストマーが8質量部以上28質量部以下の割合で前記ポリ乳酸系樹脂組成物に含まれているポリ乳酸系樹脂発泡シート。
【請求項2】
前記ブタジエン系エラストマーがコアシェル型エラストマーである請求項1記載のポリ乳酸系樹脂発泡シート。
【請求項3】
前記コアシェル型エラストマーが、コア層と、該コア層を覆うシェル層とを備え、
前記コア層がブタジエンを構成単位とした重合体で構成され、
前記シェル層がメタクリル酸メチルを構成単位とした重合体で構成されている請求項2記載のポリ乳酸系樹脂発泡シート。
【請求項4】
前記ポリ乳酸系樹脂組成物の結晶化度が5%以上15%以下である請求項1乃至
3の何れか1項に記載のポリ乳酸系樹脂発泡シート。
【請求項5】
前記発泡層の見掛け密度が63kg/m
3以上500kg/m
3以下である請求項1乃至
4の何れか1項に記載のポリ乳酸系樹脂発泡シート。
【請求項6】
前記発泡層の厚さが0.5mm以上7mm以下である請求項1乃至
5の何れか1項に記載のポリ乳酸系樹脂発泡シート。
【請求項7】
ポリ乳酸系樹脂発泡シートで構成されているシート成形品であって、
前記ポリ乳酸系樹脂発泡シートは、ポリ乳酸系樹脂を含むポリ乳酸系樹脂組成物で構成された発泡層を備え、
前記ポリ乳酸系樹脂組成物がブタジエン系エラストマーをさらに含み、
前記ポリ乳酸系樹脂組成物には、前記ブタジエン系エラストマーが粒子状となって含まれ、
前記ポリ乳酸系樹脂を含むマトリックス相と、
前記ブタジエン系エラストマーを含む分散相とが形成されており、
前記分散相の粒径が0.1μm以上1μm以下であり、
前記ポリ乳酸系樹脂を100質量部としたときに前記ブタジエン系エラストマーが8質量部以上28質量部以下の割合で前記ポリ乳酸系樹脂組成物に含まれているシート成形品。
【請求項8】
前記ブタジエン系エラストマーがコアシェル型エラストマーである請求項
7記載のシート成形品。
【請求項9】
前記コアシェル型エラストマーが、コア層と、該コア層を覆うシェル層とを備え、
前記コア層がブタジエンを構成単位とした重合体で構成され、
前記シェル層がメタクリル酸メチルを構成単位とした重合体で構成されている請求項
8記載のシート成形品。
【請求項10】
前記ポリ乳酸系樹脂組成物の結晶化度が35%以上である請求項
7乃至
9の何れか1項に記載のシート成形品。
【請求項11】
食品容器である請求項
7乃至
10の何れか1項に記載のシート成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ乳酸系樹脂発泡シートとポリ乳酸系樹脂発泡シートで構成されたシート成形品とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発泡剤を含む樹脂組成物を押出機で溶融混練した後に該押出機の先端に装着したサーキュラーダイから押出して樹脂発泡シートを作製することが行われている。
この種の樹脂発泡シートとしては、発泡層単層のものや発泡層と非発泡層とが積層されたタイプのものが知られている。
この種の樹脂発泡シートは、トレー、カップ、丼などといったシート成形品を作製するための原料シートとして利用されている。
【0003】
近年の環境意識の高まりにより、自然由来のモノマーによって重合が可能なポリ乳酸系樹脂を各種の樹脂製品の原材料とすることが試みられている。
しかしながらポリ乳酸系樹脂は、耐衝撃性が十分であるとは言い難い。
そのためポリ乳酸系樹脂組成物によって発泡層が構成されたポリ乳酸系樹脂発泡シートの耐衝撃性を改善する方法が従来検討されている(下記特許文献1)。
そのような改善策としては、下記特許文献2(段落0068等参照)に示すように耐衝撃改良剤の利用が挙げられる。
ポリ乳酸系樹脂組成物に含ませる耐衝撃改良剤としては、下記特許文献3に示すようにコアシェル型エラストマーが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-093982号公報
【文献】特開2005-60689号公報
【文献】特表2016-501741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようにポリ乳酸系樹脂発泡シートに対しては耐衝撃性を改善することが要望されており、そのような要望を満足させるための取り組みがこれまでも行われてはいるものの上記要望はいまだ十分に満たされるに至ってはいない。
耐衝撃性の改善を図るという意味では、ポリ乳酸系樹脂組成物に含ませるエラストマーを従来よりも増量することが考えられるが、エラストマーを増量すると耐熱性を低下させるおそれがある。
そこで、本発明は、ポリ乳酸系樹脂発泡シートにおける耐衝撃性と耐熱性との両立を図り、耐衝撃性及び耐熱性に優れたシート成形品を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく本発明者が鋭意検討を行ったところ、エラストマーの中でもジエン系エラストマーであれば、比較的量を多く含有させてもポリ乳酸系樹脂発泡シートの耐熱性を低下させ難いことを見出して本発明を完成させるに至った。
【0007】
上記課題を解決するための本発明は、
ポリ乳酸系樹脂を含むポリ乳酸系樹脂組成物で構成された発泡層を備えたポリ乳酸系樹脂発泡シートであって、
前記ポリ乳酸系樹脂組成物がブタジエン系エラストマーをさらに含み、
前記ポリ乳酸系樹脂を100質量部としたときに前記ブタジエン系エラストマーが8質量部以上28質量部以下の割合で前記ポリ乳酸系樹脂組成物に含まれているポリ乳酸系樹脂発泡シート、を提供する。
【0008】
上記課題を解決するための本発明は、
ポリ乳酸系樹脂発泡シートで構成されているシート成形品であって、
前記ポリ乳酸系樹脂発泡シートは、ポリ乳酸系樹脂を含むポリ乳酸系樹脂組成物で構成された発泡層を備え、
前記ポリ乳酸系樹脂組成物がブタジエン系エラストマーをさらに含み、
前記ポリ乳酸系樹脂を100質量部としたときに前記ブタジエン系エラストマーが8質量部以上28質量部以下の割合で前記ポリ乳酸系樹脂組成物に含まれているシート成形品、を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によればポリ乳酸系樹脂発泡シートにおける耐衝撃性と耐熱性との両立が図られ、耐衝撃性及び耐熱性に優れたシート成形品が提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1、実施例2のペレットの状態でのブタジエン系エラストマーの分散状態を示した図(透過型電子顕微鏡写真、左:実施例1、右:実施例2)。
【
図2】実施例1、実施例2のポリ乳酸系樹脂発泡シートの状態でのブタジエン系エラストマーの分散状態を示した図(透過型電子顕微鏡写真、左:実施例1、右:実施例2)。
【
図3】実施例1、実施例2のシート成形品の状態でのブタジエン系エラストマーの分散状態を示した図(透過型電子顕微鏡写真、左:実施例1、右:実施例2)。
【0011】
以下に、本発明の実施の形態について説明する。
本実施形態のポリ乳酸系樹脂発泡シートは、発泡層を備えている。
本実施形態のポリ乳酸系樹脂発泡シートは、発泡層のみの単層構造であっても、発泡層と他の層(例えば、非発泡層)との積層構造であってもよい。
本実施形態のポリ乳酸系樹脂発泡シートは、ポリ乳酸系樹脂を含むポリ乳酸系樹脂組成物で構成された発泡層を備えている。
【0012】
以下においては、まず、ポリ乳酸系樹脂発泡シートの主原料となるポリ乳酸系樹脂組成物について説明する。
本実施形態のポリ乳酸系樹脂組成物は、ポリ乳酸系樹脂とブタジエン系エラストマーとを含み、前記ポリ乳酸系樹脂を100質量部としたときに前記ブタジエン系エラストマーが8質量部以上28質量部以下の割合で含まれている。
本実施形態においてはポリ乳酸系樹脂発泡シートの発泡層を構成するポリ乳酸系樹脂組成物に上記のような割合でブタジエン系エラストマーが含まれることでポリ乳酸系樹脂発泡シートに優れた耐衝撃性を発揮させることができ、良好な耐熱性をも発揮させることができる。
【0013】
前記ポリ乳酸系樹脂100質量部に対する前記ブタジエン系エラストマーの割合は、10質量部以上であることが好ましい。
該割合は、12質量部以上であってもよく、14質量部以上であってもよく、16質量部以上であってもよい。
前記ポリ乳酸系樹脂100質量部に対する前記ブタジエン系エラストマーの割合は、26質量部以下であることが好ましい。
該割合は、24質量部以上であってもよく、22質量部以下であってもよい。
【0014】
ポリ乳酸系樹脂組成物は、ポリ乳酸系樹脂を1種単独で含む必要はなく複数種類のポリ乳酸系樹脂を含んでもよい。
また、ポリ乳酸系樹脂組成物は、前記ブタジエン系エラストマーを1種単独で含む必要はなく複数種類のブタジエン系エラストマーを含んでもよい。
前記ポリ乳酸系樹脂と前記ブタジエン系エラストマーとの内、何れか一方、又は、両方を複数種類含む場合、上記の質量割合は、前記ポリ乳酸系樹脂と前記ブタジエン系エラストマーとのそれぞれのポリ乳酸系樹脂組成物における合計含有量に基づいて算出される。
【0015】
ポリ乳酸系樹脂組成物に含まれるポリ乳酸系樹脂は、乳酸の単独重合体であっても乳酸と他のモノマーとの共重合体であってもよい。
前記共重合体での他のモノマーとしては、乳酸以外の脂肪族ヒドロキシカルボン酸、脂肪族多価アルコール、脂肪族多価カルボン酸などが挙げられる。
前記モノマーは、例えば、多官能多糖類などであってもよい。
【0016】
ポリ乳酸系樹脂を構成する乳酸は、L-体とD-体とのいずれか一方でも両方であってもよい。
前記単独重合体であるポリ乳酸系樹脂は、ポリ(L-乳酸)樹脂、ポリ(D-乳酸)樹脂、及び、ポリ(DL-乳酸)樹脂の内のいずれであってもよい。
ポリ乳酸系樹脂は、発泡層に優れた強度を発揮させる上においてD-体に比べてL-体が多く含まれていることが好ましい。
但し、L-体が実質的に100質量%の割合で含まれているポリ(L-乳酸)樹脂は、機械的強度に優れるものの発泡層の脆性を顕在化させ易い。
そこで、本実施形態のポリ乳酸系樹脂組成物に含まれるポリ乳酸系樹脂は、D-体とL-体との合計に占めるD-体の割合(質量割合)が0.1質量%以上であることが好ましい。
該質量割合は、0.2質量%以上であることがより好ましく、0.3質量%以上であることが特に好ましい。
尚、D-体の割合が高くなると、発泡層に優れた強度が発揮されないことにもなり得る。
そこで、D-体とL-体との合計に占めるD-体の割合は、4質量%以下であることが好ましく、3.5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることが特に好ましい。
即ち、D-体とL-体との質量比率(D-体/L-体)は、0.1/99.9~4/96の範囲内であることが好ましい。
このようなD-体とL-体との質量比率が好ましいのは、共重合体においても同じである。
【0017】
前記共重合体を構成する脂肪族多価カルボン酸としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸が挙げられる。
脂肪族多価カルボン酸は、無水物であってもよい。
【0018】
前記脂肪族多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、テトラメチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
【0019】
前記共重合体を構成する乳酸以外の脂肪族ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、グリコール酸、3-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシ吉草酸、5-ヒドロキシ吉草酸、6-ヒドロキシカプロン酸等が挙げられる。
【0020】
前記多官能多糖類としては、例えば、セルロース、硝酸セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、セルロイド、ビスコースレーヨン、再生セルロース、セロハン、キュプラ、銅アンモニアレーヨン、キュプロファン、ベンベルグ、ヘミセルロース、デンプン、アクロペクチン、デキストリン、デキストラン、グリコーゲン、ペクチン、キチン、キトサン、アラビアガム、グァーガム、ローカストビーンガム、アカシアガムなどが挙げられる。
【0021】
前記共重合体においては、分子中に乳酸(L-体及びD-体)に由来する構造部分が60質量%以上の割合で含有されていることが好ましい。
前記構造部分(L-体及びD-体)の含有量は、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。
【0022】
ポリ乳酸系樹脂組成物には、架橋された状態のポリ乳酸系樹脂(架橋ポリ乳酸系樹脂)を含有させることが好ましく、前記単独重合体を架橋された状態の架橋ポリ乳酸系樹脂として含有させることが好ましい。
特にポリ乳酸系樹脂組成物には、有機過酸化物で架橋された架橋ポリ乳酸系樹脂を含有させることが好ましい。
ポリ乳酸系樹脂組成物に含まれる前記ポリ乳酸系樹脂の少なくとも一部を有機過酸化物で架橋された架橋ポリ乳酸系樹脂とすることで発泡に適した溶融特性をポリ乳酸系樹脂組成物に賦与できる。
【0023】
前記ポリ乳酸系樹脂を架橋するための有機過酸化物としては、例えば、パーオキシエステル、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシケタール、及び、ケトンパーオキサイド等が挙げられる。
【0024】
前記パーオキシエステルとしては、例えば、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキシルカーボネート、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシアセテート、2,5-ジメチル2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、及び、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート等が挙げられる。
【0025】
前記ハイドロパーオキサイドとしては、例えば、パーメタンハイドロパーオキシド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、及び、t-ブチルハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
【0026】
前記ジアルキルパーオキサイドとしては、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、及び、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)-ヘキシン-3等が挙げられる。
【0027】
前記ジアシルパーオキサイドとしては、例えば、ジベンゾイルパーキサイド、ジ(4-メチルベンゾイル)パーオキサイド、及び、ジ(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド等が挙げられる。
【0028】
前記パーオキシジカーボネートとしては、例えば、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0029】
前記パーオキシケタールとしては、例えば、1,1-ジ-t-ブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキサン、2,2-ジ(t-ブチルパーオキシ)-ブタン、n-ブチル4,4-ジ-(t-ブチルパーオキシ)バレレート、及び、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン等が挙げられる。
前記ケトンパーオキサイドとしては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド等が挙げられる。
【0030】
前記有機過酸化物による架橋では、架橋ポリ乳酸系樹脂に熱溶融時にゲルとなるような分子量が過大な成分を混在させたり、当該有機過酸化物の分解残渣による臭気の問題を発生させたりするおそれを有する。
このような問題を生じさせるおそれを抑制でき、ポリ乳酸系樹脂組成物を発泡に適した状態にすることが容易である点において、前記有機過酸化物は、パーオキシエステルであることが好ましい。
また、パーオキシエステルの中でもポリ乳酸系樹脂の架橋に用いられる有機過酸化物は、パーオキシモノカーボネートやパーオキシジカーボネートなどのパーオキシカーボネート系有機過酸化物であることが好ましい。
本実施形態においてポリ乳酸系樹脂の架橋に用いられる有機過酸化物は、パーオキシカーボネート系有機過酸化物の中でもパーオキシモノカーボネート系有機過酸化物であることが好ましく、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネートであることが特に好ましい。
【0031】
上記のような有機過酸化物は、通常、架橋をするポリ乳酸系樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上の割合で用いられる。
上記のような有機過酸化物は、その使用量が0.1質量部以上とされることにより、架橋ポリ乳酸系樹脂に対して架橋効果をより確実に発揮させ得る。
有機過酸化物の使用量は、0.2質量部以上であることが好ましく、0.3質量部以上であることが特に好ましい。
有機過酸化物の使用量は、2.0質量部以下であることが好ましい。
有機過酸化物は、その使用量が2.0質量部以下とされることで、架橋後のポリ乳酸系樹脂にゲルが混在することを抑制し得る。
有機過酸化物の使用量は、ポリ乳酸系樹脂100質量部に対して、1.5質量部以下であることがより好ましく、1.0質量部以下であることが特に好ましい。
このような割合で有機過酸化物を用いてポリ乳酸系樹脂を架橋することで架橋ポリ乳酸系樹脂を発泡に適したものにすることができる。
【0032】
前記ポリ乳酸系樹脂組成物に含有させるポリ乳酸系樹脂としては、メルトマスフローレイト(MFR)が0.1g/10min以上であることが好ましい。
該ポリ乳酸系樹脂のメルトマスフローレイトは、0.5g/10min以上であることがより好ましく、1g/10min以上であることがさらに好ましい。
該ポリ乳酸系樹脂のメルトマスフローレイトは、10g/10min以下であることが好ましく、8g/10min以下であることがより好ましく、5g/10min以下であることがさらに好ましい。
【0033】
ポリ乳酸系樹脂やポリ乳酸系樹脂組成物のメルトマスフローレイト(MFR)は、例えば、下記のようにして求めることができる。
【0034】
(ポリ乳酸系樹脂やポリ乳酸系樹脂組成物のメルトマスフローレイト(MFR)の求め方)
ポリ乳酸系樹脂やポリ乳酸系樹脂組成物のメルトマスフローレイトは、例えば、(株)東洋精機製作所製の「セミオートメルトインデクサー2A」を用いて測定することができる。
MFRは、JIS K7210-1:2014「プラスチック-熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の求め方-第1部」B法記載のピストンが所定の距離を移動する時間を測定する方法により測定することができる。
測定条件は、原則的に以下の通りとする。
試料:3~8g
尚、測定用の試料は70℃、4時間真空乾燥し、乾燥後は測定直前まで真空パック用のナイロンポリ袋に入れて真空包装した上でデシケータに保存する。
予熱:270秒
ロードホールド:30秒
試験温度:190℃
試験荷重:2.16kg(21.18N)
ピストン移動距離(インターバル):25mm
そして、試料の試験回数は3回とし、その平均をメルトマスフローレイト(g/10min)の値とする。
【0035】
前記ポリ乳酸系樹脂は、質量平均分子量(Mw)が10万以上30万以下であることが好ましく、15万以上25万以下であることがより好ましい。
ポリ乳酸系樹脂の分子量は、例えば、下記のようにして求めることができる。
【0036】
(ポリ乳酸系樹脂の平均分子量の求め方)
ポリ乳酸系樹脂の数平均分子量(Mn)、質量平均分子量(Mw)、Z平均分子量(Mz)のそれぞれは、次のようにして求めることができる。
分子量を測定する試料20mgをクロロホルム6mLに溶解させ(浸漬時間:6±1.0h)、(株)島津ジーエルシー製非水系0.45μmシリンジフィルターにて濾過した上で次の測定条件にてクロマトグラフを用いて測定し、予め作成しておいた標準ポリスチレン検量線から試料の平均分子量を求める。
使用装置=東ソー(株)製 「HLC-8320GPC EcoSEC」 ゲル浸透クロマトグラフ(RI検出器・UV検出器内蔵)
<GPC測定条件>
サンプル側
ガードカラム=東ソー(株)製 TSK guardcolumn HXL-H(6.0mm×4.0cm)×1本
測定カラム=東ソー(株)製 TSKgel GMHXL(7.8mmI.D.×30cm)×2本直列
リファレンス側=抵抗管(内径0.1mm×2m)×2本直列
カラム温度=40℃
移動相=クロロホルム
移動相流量
リファレンス側ポンプ=0.5mL/min
サンプル側ポンプ=1.0mL/min
検出器=RI検出器
注入量=50μL
測定時間=26min
サンプリングピッチ=500msec
検量線用標準ポリスチレン試料は、昭和電工(株)製の製品名「STANDARD SM-105」および「STANDARD SH-75」で質量平均分子量が5,620,000、3,120,000、1,250,000、442,000、151,000、53,500、17,000、7,660、2,900、1,320のものを用いる。
上記検量線用標準ポリスチレンをA(5,620,000、1,250,000、151,000、17,000、2,900)およびB(3,120,000、442,000、53,500、7,660、1,320)にグループ分けした後、Aを各々2~10mg秤量後クロロホルム30mLに溶解し、Bも各々3~10mg秤量後クロロホルム30mLに溶解する。
標準ポリスチレン検量線は、作製した各AおよびB溶解液を50μL注入して測定後に得られた保持時間から較正曲線(三次式)を作成することにより得、その検量線を用いて平均分子量を算出する。
【0037】
ポリ乳酸系樹脂組成物に含まれる全てのポリ乳酸系樹脂に占める前記単独重合体の割合は、50質量%以上であることが好ましい。
前記単独重合体の割合は、60質量%以上であってもよく、70質量%以上であってもよく、80質量%以上であってもよい。
【0038】
ポリ乳酸系樹脂は、190℃での溶融張力測定において5cN以上40cN以下の溶融張力を示すことが好ましい。
本実施形態のポリ乳酸系樹脂は、溶融張力が5cN以上であることにより、ポリ乳酸系樹脂発泡シートを作製する際に発泡層に過度な破泡が生じることを抑制することができる。
また、本実施形態のポリ乳酸系樹脂は、溶融張力が40cN以下であることにより、発泡時に気泡膜が良好な伸びを示して破泡の発生を抑制することができる。
前記溶融張力は、39cN以下であることが好ましく、37cN以下であることがより好ましく、35cN以下であることが特に好ましい。
前記溶融張力は、8cN以上であることが好ましく、10cN以上であることがより好ましい。
【0039】
上記のような溶融張力を発揮させるには、非架橋のポリ乳酸系樹脂よりも架橋ポリ乳酸系樹脂の方が有利となる。
尚、本実施形態において架橋前のポリ乳酸系樹脂、架橋ポリ乳酸系樹脂、および、ポリ乳酸系樹脂組成物について190℃での溶融張力を求める場合は、例えば、キャピログラフ1D((株)東洋精機製作所製)を用いて以下のようにして測定できる。
【0040】
(溶融張力測定方法)
試料は70℃、4時間真空乾燥後、測定直前までナイロンポリ袋に真空パックしてデシケータに保存する。
試験温度190℃に加熱された径9.55mmのバレルに測定試料樹脂を充填後、5分間予熱したのち、上記測定装置のキャピラリーダイ(口径2.095mm、長さ8mm、流入角度90度(コニカル))からピストン降下速度(20mm/min)を一定に保持して紐状に押出しながら、この紐状物を上記キャピラリーダイのダイ出口から測定部までが80mmとなるよう設置した張力検出(「レオテンス(Rheotens71.97)(Goettfert」)社製)のプーリーに通過させた後、巻取りロールを用いて、その巻取り速度を初速6.92mm/s、加速度10mm/s2で徐々に増加させつつ巻き取っていき、紐状物が切断する直前の極大値と極小値の平均を試料の溶融張力とする。
なお、そのままでは干渉してしまい80mmまでレオテンスを接近させることができない場合は、干渉を回避する策を講じて所定の場所にレオテンスをセットする。
なお、当紐状物が細くなり、巻取りが空回り状態になった場合は、その時点を破断点と捉えて、直前の張力の極大値と極小値の平均を試料樹脂の溶融張力とする。
なお、張力チャートに極大点が1個しかない場合はその極大値を溶融張力とする。
測定時間についてはバレルに充填してから予熱時間を含めて10分を超えないように調整する。
【0041】
尚、ポリ乳酸系樹脂の架橋は、ポリ乳酸系樹脂と有機過酸化物とを押出機やニーダーなどによって溶融混練することによって実施することができる。
ポリ乳酸系樹脂の架橋は、ポリ乳酸系樹脂とブタジエン系エラストマーとの混合前に実施されることが好ましい。
このことにより、ポリ乳酸系樹脂組成物におけるブタジエン系エラストマーの分散状態が好適なものとなり得る。
【0042】
前記ブタジエン系エラストマーとしては、例えば、ブタジエンの単独重合体(ポリブタジエンゴム)であっても、スチレンなどとの共重合体(スチレン-ブタジエンゴム)などであってもよい。
前記ブタジエン系エラストマーとしては、3種類以上の単量体で構成された多元共重合体であってもよい。
スチレン以外の共重合可能な単量体を挙げると、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチルなどのアクリル系単量体が挙げられる。
【0043】
前記ブタジエン系エラストマーは、コアシェル型エラストマーであることが好ましい。
前記コアシェル型エラストマーは、コア層と、該コア層を覆うシェル層とを備え、前記コア層がブタジエンを構成単位とした重合体で構成され、前記シェル層がメタクリル酸メチルを構成単位とした重合体で構成されていることが好ましい。
【0044】
前記ブタジエン系エラストマーは、共重合体である場合、ブロック共重合体であっても、ランダム共重合体であっても、グラフト共重合体であってもよい。
前記ブタジエン系エラストマーは、共重合体である場合、上記のようなコアシェル構造を形成させる上でグラフト共重合体であることが好ましい。
【0045】
前記ブタジエン系エラストマーとしては、ブタジエン単位を50質量%以上含有していることが好ましい。
前記ブタジエン系エラストマーにおけるブタジエン単位の含有量は55質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましい。
【0046】
前記ブタジエン系エラストマーとしては、ブタジエン以外にスチレンとアクリル系単量体とを含む多元共重合体を採用することが好ましい。
スチレン(St)とアクリル系単量体(Aa)とは、0.8:1~1:0.8(St:Aa)のモル比で多元共重合体に含まれることが好ましい。
前記アクリル系単量体としては、メタクリル酸メチルが好適である。
即ち、ブタジエン系エラストマーとしては、MBSポリマー(メタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン共重合体)が好適である。
MBSポリマーは、さらにアクリル酸ブチルを少量(例えば、0.5質量%~2質量%)含んでいてもよい。
【0047】
前記ポリ乳酸系樹脂組成物は、含有するブタジエン系エラストマーの内、80質量%以上がコアシェル型エラストマーであることが好ましく、90質量%以上がコアシェル型エラストマーであることがより好ましい。
前記ポリ乳酸系樹脂組成物は、含有するブタジエン系エラストマーの内、80質量%以上が上記のような多元共重合体であることが好ましく、90質量%以上が上記のような多元共重合体であることがより好ましい。
【0048】
上記のようなコアシェル型エラストマーを含有させることでポリ乳酸系樹脂発泡シートに対してより高い耐衝撃性と耐熱性とを両立させ得る。
【0049】
前記ポリ乳酸系樹脂組成物は、上記のような前記ブタジエン系エラストマーが粒子状となって含まれていることが好ましい。
即ち、前記ポリ乳酸系樹脂組成物は、前記ポリ乳酸系樹脂を含むマトリックス相と、前記ブタジエン系エラストマーを含む分散相とが形成されており、前記分散相の粒径が0.1μm以上1μm以下であることが好ましい。
分散相の粒径は実施例に記載の方法で求めることができる。
【0050】
上記のような分散相の状況は、ポリ乳酸系樹脂発泡シートの発泡層を構成している状況においても維持されていることが好ましく、シート成形品となった後においても維持されていることが好ましい。
【0051】
本実施形態のポリ乳酸系樹脂組成物には、必要に応じて各種添加剤を加えることができる。
該添加剤としては、ポリ乳酸系樹脂やブタジエン系エラストマー以外のポリマー、無機フィラー、及び、各種薬剤などが挙げられる。
前記薬剤としては、例えば、滑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤、抗菌剤等が挙げられる。
尚、これらの添加剤の割合は、ポリ乳酸系樹脂100質量部に対して25質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることがさらに好ましい。
【0052】
本実施形態のポリ乳酸系樹脂発泡シートは、このようなポリ乳酸系樹脂組成物を押出発泡することで作製することができる。
ポリ乳酸系樹脂発泡シートとして押出発泡シートを採用する場合、ポリ乳酸系樹脂組成物を押出機で発泡剤とともに溶融混練して該押出機の先端に装着したダイより押出発泡させるような方法で作製することができる。
【0053】
このときに用いられる前記発泡剤としては、一般的なものを採用することができ、常温(23℃)、常圧(1気圧)において気体となる揮発性発泡剤や、熱分解によって気体を発生する分解型発泡剤を採用することができる。
前記揮発性発泡剤としては、例えば不活性ガス、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素等が採用可能である。
【0054】
前記不活性ガスとしては、例えば、二酸化炭素、窒素等が挙げられる。
【0055】
前記脂肪族炭化水素としては、例えば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン等が挙げられ、前記脂環族炭化水素としては、例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。
本実施形態においては、上記の中でも特にノルマルブタンやイソブタンが好ましく用いられ得る。
【0056】
前記分解型発泡剤としては、アゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、重炭素ナトリウム又はクエン酸のような有機酸もしくはその塩と重炭酸塩との混合物などが挙げられる。
【0057】
製造するポリ乳酸系樹脂発泡シートの発泡状態を良好なものとするために前記ポリ乳酸系樹脂組成物には気泡調整剤などを含有させてもよい。
前記気泡調整剤としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、タルク、水酸化アルミニウム、シリカなどが挙げられる。
尚、前記分解型発泡剤は、揮発性発泡剤と併用することで発泡状態を調整することができ、気泡調整剤としても用いることができる。
【0058】
本実施形態のポリ乳酸系樹脂発泡シートは、ポリ乳酸系樹脂組成物で構成された発泡層のみの単層シートであっても、例えば、該発泡層の片面又は両面に非発泡層が積層されている積層シートであってもよい。
本実施形態のポリ乳酸系樹脂発泡シートは、強度と軽量性とを兼ね備える上において前記発泡層の厚さが0.5mm以上であることが好ましい。
前記発泡層の厚さは、0.8mm以上であることがより好ましく、1mm以上であることがさらに好ましい。
本実施形態のポリ乳酸系樹脂発泡シートは、易成形性を備える上において前記発泡層の厚さが7mm以下であることが好ましい。
前記発泡層の厚さは、6mm以下であることがより好ましく、5mm以下であることがさらに好ましい。
本実施形態のポリ乳酸系樹脂発泡シートは、非発泡層を備える場合、該非発泡層も含めた厚さが上記のような厚さであることが好ましい。
【0059】
前記発泡層の厚さは、ポリ乳酸系樹脂発泡シートに直交する平面でポリ乳酸系樹脂発泡シートを切断した断面の拡大写真などによって求めることができ、例えば、無作為に選択した複数箇所(例えば、20箇所)の平均値として求められる。
【0060】
本実施形態のポリ乳酸系樹脂発泡シートは、強度を備える上において前記発泡層の見掛け密度が63kg/m3以上であることが好ましい。
前記発泡層の見掛け密度は、80kg/m3以上であることがより好ましく、100kg/m3以上であることがさらに好ましい。
本実施形態のポリ乳酸系樹脂発泡シートは、軽量性を備える上において前記発泡層の見掛け密度が500kg/m3以下であることが好ましい。
前記発泡層の見掛け密度は、400kg/m3以下であることがより好ましく、300kg/m3以下であることがさらに好ましい。
【0061】
発泡層の見掛け密度は、JIS K7222:2005「発泡プラスチックおよびゴム-見掛け密度の測定」に記載される方法により測定することができ、具体的には下記のような方法で測定することができる。
【0062】
(見掛け密度測定方法)
発泡層の見掛け密度は、JIS K7222:2005「発泡プラスチック及びゴム-見掛け密度の求め方」記載の方法で測定することができる。
具体的には、見掛け上の体積が100cm3以上の試験片を用意し、その質量を測定する。
尚、ポリ乳酸系樹脂発泡シートから試験片を切り出す際には、できるだけ元のセル構造を変えないようにする。
また、100cm3以上の試験片が用意できない場合は、できるだけ大きな体積の試験片を用意する。
そして、見掛け密度は、次式によって算出する。
見掛け密度(kg/m3)=試験片質量(g)/試験片体積(mm3)×106
尚、試験片は、原則的にポリ乳酸系樹脂発泡シートを作製した後、72時間以上経過した後に採取し、温度23±2℃、相対湿度50±10%の雰囲気条件で16時間以上放置して状態調節を行った後に同様の条件下で質量及び体積を測定する。
【0063】
本実施形態のポリ乳酸系樹脂発泡シートは、強度を備える上において前記発泡層を構成している状態でのポリ乳酸系樹脂組成物の結晶化度が5%以上であることが好ましい。
前記ポリ乳酸系樹脂組成物の結晶化度は、6%以上であることがより好ましく、7%以上であることがさらに好ましい。
本実施形態のポリ乳酸系樹脂発泡シートは、熱成形などにおける易成形性を備える上において前記発泡層を構成している状態でのポリ乳酸系樹脂組成物の結晶化度が15%以下であることが好ましい。
前記ポリ乳酸系樹脂組成物の結晶化度は、14%以下であることがより好ましく、13%以下であることがさらに好ましい。
【0064】
ポリ乳酸系樹脂組成物の結晶化度はJIS K7122:1987、JIS K7122:2012「プラスチックの転移熱測定方法」に記載されている方法で測定できる。
但し、サンプリング方法・温度条件に関しては以下のように行う。
試料をアルミニウム製測定容器の底にすきまのないよう5.5±0.5mg充てん後、アルミニウム製の蓋をする。
次いで(株)日立ハイテクサイエンス製「DSC7000X、AS-3」示差走査熱量計を用い、示差走査熱量分析を行う。
窒素ガス流量20mL/minのもと以下のようなステップで加熱してDSC曲線を得る。
(ステップ1)30℃で2分間保持。
(ステップ2)速度5℃/minで30℃から210℃まで昇温。
その時の基準物質はアルミナを用いる。
融解ピークの面積から求められる融解熱量(J/g)と結晶化ピークの面積から求められる結晶化熱量(J/g)の差を求める。
この差をポリ乳酸完全結晶の理論融解熱93J/gで除して求められる割合を結晶化度とする。
融解熱量及び結晶化熱量は装置付属の解析ソフトを用いて算出する。
具体的には、融解熱量は低温側のベースラインからDSC曲線が離れる点と、そのDSC曲線が再び高温側のベースラインへ戻る点とを結ぶ直線と、DSC曲線に囲まれる部分から算出する。
結晶化熱量は、低温側のベースラインからDSC曲線が離れる点と、そのDSC曲線が再び高温側へ戻る点とを結ぶ直線と、DSC曲線に囲まれる部分の面積から算出する。
即ち、結晶化度は次式より求められる。
結晶化度(%)=(融解熱量(J/g)-結晶化熱量(J/g))/93(J/g)×100(%)
【0065】
本実施形態のポリ乳酸系樹脂発泡シートに非発泡層を備えさせる場合、上記のようなポリ乳酸系樹脂組成物をサーキュラーダイやフラットダイから押出発泡させるとともに同じダイから非発泡層を押出す共押出法、発泡層のみのポリ乳酸系樹脂発泡シートを作製した後に該ポリ乳酸系樹脂発泡シートの表面に非発泡層をシート状に押出してラミネートする押出ラミネート法、発泡層のみのポリ乳酸系樹脂発泡シートと非発泡層のみのシートとをそれぞれ作製した後でこれらを熱ラミネート法によって貼り合せる方法などによって形成可能である。
【0066】
本実施形態のポリ乳酸系樹脂発泡シートは、各種のシート成形品の原材料となり得る。
シート成形品は、例えば、ポリ乳酸系樹脂発泡シートに熱成形が施されることによって3次元形状が賦与された熱成形品であってもよく、単にポリ乳酸系樹脂発泡シートが切断されただけの平板状のものであっても、該平板状の部材を組み合わせた折箱のようなものであってもよい。
【0067】
前記熱成形では、種々の方法を採用でき、マッチモールド成形、プラグアシスト真空成形、真空成形、圧空成形、真空・圧空成形などが採用可能である。
【0068】
前記シート成形品は、熱成形されたポリ乳酸系樹脂発泡シートにトリミング加工を施して作製され得る。
該トリミング加工は、従来公知の方法によって実施でき、作製する製品(シート成形品)の輪郭形状に対応した形状の抜き穴を有するパンチングプレスを用いて製品部分だけを抜き落とす方法や、製品の輪郭形状に沿って切断刃が立設されたトムソン刃型によって製品以外の部分を切り落とす方法などによって実施することができる。
【0069】
本実施形態のシート成形品は、その製造過程においてポリ乳酸系樹脂組成物の結晶化を促進させる加熱処理が施されることが好ましい。
このことによりシート成形品は、高い強度と耐熱性を発揮することができる。
前記シート成形品における前記ポリ乳酸系樹脂組成物の結晶化度は、35%以上であることが好ましい。
前記シート成形品における前記ポリ乳酸系樹脂組成物の結晶化度は、36%以上であることがより好ましく、37%以上であることがさらに好ましく、38%以上であることが特に好ましい。
前記シート成形品における前記ポリ乳酸系樹脂組成物の結晶化度は、通常、60%以下とされる。
【0070】
本実施形態のシート成形品は、該シート成形品を構成する前記ポリ乳酸系樹脂発泡シートが、ポリ乳酸系樹脂を含むポリ乳酸系樹脂組成物で構成された発泡層を備え、しかも、前記ポリ乳酸系樹脂組成物がブタジエン系エラストマーをさらに含み、前記ポリ乳酸系樹脂を100質量部としたときに前記ブタジエン系エラストマーが8質量部以上28質量部以下の割合で前記ポリ乳酸系樹脂組成物に含まれているため優れた耐衝撃性と耐熱性とを両立する。
【0071】
本実施形態のシート成形品の発泡層は、前記ポリ乳酸系樹脂発泡シートの発泡層によって構成されているため、前記ポリ乳酸系樹脂発泡シートと同様に前記ブタジエン系エラストマーが前記のようなコアシェル型エラストマーであることで、より高い耐衝撃性と耐熱性とを両立する。
【0072】
本実施形態のシート成形品の発泡層では、前記ポリ乳酸系樹脂発泡シートと同様に、前記ブタジエン系エラストマーが粒子状となって前記ポリ乳酸系樹脂組成物に含まれ、前記ポリ乳酸系樹脂を含むマトリックス相と、前記ブタジエン系エラストマーを含む分散相とが形成されており、前記分散相の粒径が0.1μm以上1μm以下となっていることが好ましい。
【0073】
本実施形態のシート成形品としては、例えば、弁当箱、カップ麺容器、グラタン容器、果物容器、野菜容器等の食品容器、精密機器、電気製品の緩衝包装容器等が挙げられる。
尚、本実施形態のシート成形品はこのような例示以外のものであってもよい。
また、上記における例示は、あくまで特定の事例についてであり、本発明は上記例示に何等限定されるものではない。
【実施例】
【0074】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0075】
ポリ乳酸系樹脂組成物のベースポリマーとして架橋ポリ乳酸系樹脂(以下、「XPLA1」ともいう)を作製した。
架橋ポリ乳酸系樹脂は、乳酸の単独重合体(Nature Works社製「Biopolymer Ingeo4032D」、密度=1240kg/m3、D-体含有量約1.5%、MFR=3.4g/10min)であるポリ乳酸系樹脂(以下、「PLA1」ともいう)とt-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(化薬アクゾ社製「カヤカルボンBIC-75」、1分間半減期温度T1:158.8℃)(PO)とを100:0.5の質量比で押出機(φ57mm二軸押出機)に供給して該押出機で溶融混練することで作製した。
【0076】
次いで、耐衝撃改良剤を用意した。
耐衝撃改良剤としては、コア層と、該コア層を覆うシェル層とを備え、前記コア層がブタジエンを構成単位とした重合体で構成され、前記シェル層がメタクリル酸メチルを構成単位とした重合体で構成されているブタジエン系エラストマー(三菱ケミカル社製「メタブレンC-223A」)(MBSポリマー、以下「MBS1」ともいう)と、水添スチレン系熱可塑性エラストマー(旭化成社製「タフテックMP10」)(SEBS、以下「TPS1」ともいう)との2種類を用意した。
【0077】
(実施例1)
架橋ポリ乳酸系樹脂(XPLA1)100質量部に対して耐衝撃改良剤(MBS1)が10質量部の割合でブレンドされた混和物をφ30mm二軸押出機にて溶融混練して溶融混練物を得た。
得られた溶融混練物をストランド状に押出し、水槽で冷却した後、ペレタイザーでカットすることでポリ乳酸系樹脂組成物のペレットを得た。
次に口径が50mmの第一押出機の先端に、口径が65mmの第二押出機を接続してなるタンデム型押出機を用意した。
そして、このタンデム型押出機の第一押出機に、上記で得られたポリ乳酸系樹脂組成物のペレットと、タルクを配合した気泡調整剤マスターバッチとを供給した。
第一押出機へのこれらの供給量はポリ乳酸系樹脂(XPLA1)100質量部に対してタルクが1質量部となるように調整した。
これらを第一押出機で溶融混練しつつ該第一押出機の途中から発泡剤としてブタンを圧入し、さらに溶融混練した上で、得られた溶融混練物を第二押出機に連続的に供給して該第二押出機で引き続き溶融混練しつつ発泡に適した樹脂温度に冷却した。
その後、第二押出機の先端に取り付けたスリット口径70mmのサーキュラーダイのダイスリットから吐出量28kg/h、樹脂温度168℃の条件で押出発泡を実施し、前記ダイスリットから押出発泡された円筒状の発泡体を冷却用のマンドレル上に添わせて内周面側から冷却するとともに、その外面をエアリングからエアーを吹き付けて冷却し、マンドレル上の一点で、カッターにより切開して、帯状のポリ乳酸系樹脂発泡シートを得た。
【0078】
次に、上下加熱板と、雄雌のグラタン容器形状の加熱成形型(容器開口部(リブを含む)外寸法:114mm×175mm、底部外寸法:80mm×125mm、容器深さ外寸法:26mm)と、同様な形状且つ同様な大きさの雄雌のグラタン容器形状の冷却型とを備えたマッチモールドタイプの成形機を用意した。
加熱板の温度を140℃、加熱成形型の温度を120℃にセットし、上記で得られたポリ乳酸系樹脂発泡シートを成形機にセットして、加熱板に5秒間挟んで加熱した後、直ちに加熱成形型で60秒間プレスして成形及び結晶化促進を行い、グラタン容器形状のシート成形品を作製した。
【0079】
(実施例2)
耐衝撃改良剤(MBS1)の量を10質量部に代えて20質量部としたこと以外は実施例1と同様にポリ乳酸系樹脂発泡シートを作製し、グラタン容器形状のシート成形品を作製した。
【0080】
(実施例3)
押出発泡での冷却を強化したこと以外は実施例2と同様にポリ乳酸系樹脂発泡シートを作製し、グラタン容器形状のシート成形品を作製した。
【0081】
(比較例1)
耐衝撃改良剤を使用しなかったこと以外は実施例1と同様にポリ乳酸系樹脂発泡シートを作製し、グラタン容器形状のシート成形品を作製した。
【0082】
(比較例2)
耐衝撃改良剤(MBS1)の量を10質量部に代えて5質量部としたこと以外は実施例1と同様にポリ乳酸系樹脂発泡シートを作製し、グラタン容器形状のシート成形品を作製した。
【0083】
(比較例3)
耐衝撃改良剤(MBS1)の量を10質量部に代えて30質量部としたこと以外は実施例1と同様にポリ乳酸系樹脂発泡シートを作製し、グラタン容器形状のシート成形品を作製した。
【0084】
(比較例4)
耐衝撃改良剤をブタジエン系エラストマー(MBS1)に代えて水添スチレン系エラストマー(TPS1)に代えたこと以外は実施例2と同様にポリ乳酸系樹脂発泡シートを作製し、グラタン容器形状のシート成形品を作製した。
【0085】
(評価)
ポリ乳酸系樹脂発泡シートについては、以下のような項目での評価を実施した。
評価項目:「厚さ」、「倍率(発泡倍率)」、「連続気泡率」、「結晶化度」、「最大荷重」、「パンクチャーエネルギー」、「耐熱性」
【0086】
上記の評価項目の内、「厚さ」及び「結晶化度」については前述のようにして求めた。
「倍率」については、まず、見掛け密度を求め、次いで、ポリ乳酸系樹脂の密度を求め、該ポリ乳酸系樹脂の密度を見掛け密度の値で割って求めた。
【0087】
「連続気泡率」については次のように求めた。
(連続気泡率の求め方)
ポリ乳酸系樹脂発泡シートから、縦25mm×横25mmのシート状サンプルを複数枚切り出した。
切り出したサンプルを空間があかないよう重ね合わせて厚み25mmとして試験片を得た。
得られた試験片の見掛けの体積(cm3)を求めた。
見掛けの体積(cm3)は試験片の外寸を1/100mmまで測定して求めた。
測定には(株)ミツトヨ製「デジマチックキャリパ」ノギスを用いた。
次に、東京サイエンス製(株)「1000型」空気比較式比重計を用いて、1-1/2-1気圧法により試験片の体積(cm3)を求めた。
下記式により連続気泡率(%)を計算した。
連続気泡率は5つの試験片の平均値として求めた。
試験片は予め、JIS K7100-1999 記号23/50、2級の環境下で16時間保管した後、測定に用いた。
測定は同環境下において実施した。
なお、空気比較式比重計は、標準球(大28.96cm3 小8.58cm3)にて補正を行った。
連続気泡率(%)=
(見掛け体積-空気比較式比重計での測定体積)/見掛け体積×100(%)
【0088】
「最大荷重」、「パンクチャーエネルギー」は、ASTM D-3763-15に準拠して測定を行った。
すなわち、CEAST社製「CEAST9350」落錘衝撃試験機、計測ソフト「CEAST VIEW」を用いて、試験片サイズは、長さ100mm×幅100mm(厚みは発泡シートまたはシート成形品の厚み)、試験速度1.76m/sec、落錘荷重1.9265kg、試験片支持スパンφ76mm、4.5kN計装化タップ(先端φ12.7mm半球状)で測定した。
試験片の数は最小5個とし、試験片をASTM D618-13のProcedureA(23±2℃、相対湿度50±10%)の環境で40時間かけて状態調整した後、同じ温度環境下で測定を行った。
測定で得られた「最大衝撃力(FM)」を「最大荷重」とした。
パンクチャーエネルギーは、測定で得られたグラフの積分値を該計測ソフトで自動計算にて算出した。
そして、衝撃強度の評価は、パンクチャーエネルギーの値(J)から下記のように判定した。
(判定基準)
A:0.17J以上
B:0.11J以上0.17J未満
C:0.06J以上0.11J未満
D:0.06J未満
【0089】
「耐熱性」
ポリ乳酸系樹脂発泡シートの「耐熱性」については、結晶化が十分にされておらず、高い耐熱性を期待することが実質的に難しい状況のため、後述のシート成形品での評価の最下位(D判定)と同じ判定結果とした。
【0090】
シート成形品については、以下のような項目での評価を実施した。
評価項目:「結晶化度」、「最大荷重」、「パンクチャーエネルギー」、「耐熱性(加熱寸法変化率)」
【0091】
上記の評価項目の内、「結晶化度」、「最大荷重」及び「パンクチャーエネルギー」についてはポリ乳酸系樹脂発泡シートと同様にして求めた。
【0092】
シート成形品についてもパンクチャーエネルギーの値から衝撃強度の判定を行った。
但し、シート成形品での判定基準は下記の通りとした。
(判定基準)
A:0.30J以上
B:0.15J以上0.30J未満
C:0.08J以上0.15J未満
D:0.08J未満
【0093】
「耐熱性(加熱寸法変化率)」については、下記のようにして求めた。
まず、水平な台を用意し、この上にグラタン容器形状のシート成形品を載せて成形品の初期高さを測定した。
成形品(容器)の初期高さ(H0)は、接地面が上向きとなるように容器を伏せて台の上に置き、台から接地面までの高さを計測して求めた。
次いで、このシート成形品を140℃の熱風循環式オーブンの中に入れて10分間加熱した。
10分加熱後、熱風循環式オーブンからシート成形品を取り出して室温まで自然冷却させた。
自然冷却したシート成形品(容器)の高さ(H)を初期高さ(H0)と同様に求め、下記により加熱寸法変化率を算出した。
加熱寸法変化率(%)=(H(mm)-H0(mm))/H0(mm)×100(%)
【0094】
シート成形品の耐熱性については、加熱寸法変化率の値によって判定した。
判定は、以下の基準に基づいて行った。
(判定基準)
A:加熱寸法変化率の絶対値が2.0以下(-2.0%以上+2.0%以下)
B:加熱寸法変化率の絶対値が2.0を超え5.0以下(-5.0%以上-2.0%未満又は+2.0%を超え+5.0%以下)
C:加熱寸法変化率の絶対値が5.0を超え8.0以下(-8.0%以上-5.0%未満又は+5.0%を超え+8.0%以下)
D:加熱寸法変化率の絶対値が8.0を超える(-8.0%未満又は+8.0%を超える)
【0095】
以上の評価結果を下記の表に示す。
【0096】
【0097】
(ブタジエン系エラストマーの分散状態の確認)
実施例1、及び、実施例2でのペレット段階でのミクロ相分離構造(コアシェル型エラストマーであるブタジエン系エラストマーの分散状態)を確認した。
また、ポリ乳酸系樹脂発泡シートの段階でのミクロ相分離構造と、シート成形品でのミクロ相分離構造とを併せて確認した。
確認方法は以下の通り。
【0098】
(ポリ乳酸系樹脂組成物の分散状態)
樹脂ペレットをプラスチック試料支持台に固定後、ライカマイクロシステムズ(株)社製「ライカ EM UC7」ウルトラミクロトーム、DiATOME社製「UltraSonic)」を用いて押出方向に直交する方向に切削し超薄切片(厚み70nm)を作製した。
次いで、超薄切片を(株)日立ハイテクノロジーズ社製「H-7600」透過電子顕微鏡、AMT社製「ER-B」CCDカメラシステムにて撮影を行った。
超薄切片作製時の染色剤は四酸化オスミウムと四酸化ルテニウムを用いた。
【0099】
(ポリ乳酸系樹脂発泡シートおよびシート成形品の分散状態)
ポリ乳酸系樹脂発泡シートおよびシート成形品を押出方向に直交する方向でスライスし、厚み方向の中心近傍から切片を切り出した。
その切片をエポキシ樹脂中に包埋した。
エポキシ樹脂を60℃・24時間かけて硬化させて硬化体を作製した。
ライカマイクロシステムズ(株)製「ライカ EM UC7」ウルトラミクロトーム、DiATOME社製「UltraSonic」を用いて硬化体をスライスし、超薄切片(厚み70nm)を作製した。
次いで、超薄切片を(株)日立ハイテクノロジーズ社製「H-7600」透過電子顕微鏡、AMT社製「ER-B」CCDカメラシステムにて撮影を行った。
超薄切片作製時の染色剤は四酸化オスミウムと四酸化ルテニウムを用いた。
【0100】
(分散相の平均粒子径の求め方)
分散相の平均粒子径は透過型電子顕微鏡で倍率5000倍で撮影を行った画像を汎用画像処理ソフト(ナノシステム(株)製、NanoHunter NS2K-Pro/Lt)で解析して求めた。
平均粒子径は、分散相の粒径が10nm以上のものを平均して求めた。
結果を下記の表に示す。
【0101】
【0102】
上記の結果から、本発明によればポリ乳酸系樹脂発泡シートにおける耐衝撃性と耐熱性との両立が図られ、耐衝撃性及び耐熱性に優れたシート成形品が提供されることがわかる。