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特許7492894樹脂製容器の製造装置、温度調整装置、樹脂製容器の製造方法、及び温度調整方法
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  • 特許-樹脂製容器の製造装置、温度調整装置、樹脂製容器の製造方法、及び温度調整方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】樹脂製容器の製造装置、温度調整装置、樹脂製容器の製造方法、及び温度調整方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 49/68 20060101AFI20240523BHJP
   B29C 49/06 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
B29C49/68
B29C49/06
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020170400
(22)【出願日】2020-10-08
(62)【分割の表示】P 2020542464の分割
【原出願日】2020-01-31
(65)【公開番号】P2021054081
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-01-31
(31)【優先権主張番号】P 2019015990
(32)【優先日】2019-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019074204
(32)【優先日】2019-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019178507
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227032
【氏名又は名称】日精エー・エス・ビー機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100093089
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 滋
(72)【発明者】
【氏名】荻原 学
(72)【発明者】
【氏名】長崎 淳
(72)【発明者】
【氏名】堀内 一宏
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-330535(JP,A)
【文献】特開2016-199053(JP,A)
【文献】国際公開第2017/090774(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
B29C 49/00-49/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底中空状のプリフォームを成形する射出成形部と、射出成形された前記プリフォームを温度調整する温度調整部と、温度調整した前記プリフォームをブロー成形するブロー成形部と、前記プリフォームを前記温度調整部及び前記ブロー成形部に搬送するネック型と、を少なくとも備えた樹脂製容器の製造装置において、前記温度調整部に設けられ、前記プリフォームを1つ以上同時に温度調整可能な温度調整用金型であって、
前記温度調整用金型は、
上下方向にて複数配置された温調ブロックと、
最上段に位置する前記温調ブロックの上部に設けられ前記ネック型と当接する芯出しリングと、
複数の前記温調ブロックの下方に配置された固定板と、を少なくとも備えており、
前記温調ブロックは、
前記プリフォームの胴部または底部を収容する収容部と、
前記収容部の周囲に形成され温調媒体が流通する流路と、
前記流路に接続し前記温調媒体を流入または流出させる接続部と、を少なくとも有しており、
複数の前記温調ブロックの境界には断熱構造が設けられている、
前記温度調整用金型。
【請求項2】
複数の前記温調ブロックは前記収容部に境目のない単一の温調ポットで構成されている、
請求項1に記載の前記温度調整用金型。
【請求項3】
前記断熱構造は、前記境界の外周面に形成されて空気が介在する溝部である、
請求項1に記載の前記温度調整用金型。
【請求項4】
前記溝部の幅は、上下方向にて、1.5mm以上2.5mm以下である、
請求項3に記載の前記温度調整用金型。
【請求項5】
前記断熱構造は、前記境界の外周に形成された溝部と、前記溝部の間に介在された断熱部材とで構成されている、
請求項1に記載の前記温度調整用金型。
【請求項6】
前記断熱構造は、前記収容部の内面に到達していない構造になっている、
請求項3または請求項5に記載の前記温度調整用金型。
【請求項7】
前記温調ブロックの最上段には上部断熱部が設けられている、
請求項1に記載の前記温度調整用金型。
【請求項8】
前記上部断熱部は、前記温調ブロックの最上段に形成された溝部と、溝部に嵌め込み可能な断熱部材とで構成されている、
請求項7に記載の前記温度調整用金型。
【請求項9】
前記上部断熱部は、前記温調ブロックの最上段の上面に形成されて空気が介在する溝部である、
請求項7に記載の前記温度調整用金型。
【請求項10】
前記温調ブロックは、前記収容部の外周の一部に、所定の角度範囲に亘って円弧形状の拡径部が形成されている、
請求項1に記載の前記温度調整用金型。
【請求項11】
前記温調ブロックは、前記収容部と前記流路との間に、中空部が形成されている、
請求項1に記載の前記温度調整用金型。
【請求項12】
最上段の前記温調ブロックが最も高温に設定可能であり、最上段以外の下段の前記温調ブロックは前記プリフォームを構成する材料ガラス転移温度よりも10℃以上低く設定可能である、
請求項1から請求項11の何れか1項に記載の前記温度調整用金型。
【請求項13】
前記温調ポットに収容された前記プリフォームの内側に、空気を循環させることができる温調ロッドおよび温調用ブローコアを更に備える、
請求項に記載の前記温度調整用金型。
【請求項14】
請求項1から請求項13の何れか1項の温度調整用金型を用いた、樹脂製容器の製造方法において、
前記射出成形部で前記プリフォームを射出成形し、
射出成形した前記プリフォームを前記温度調整部で温度調整し、
温度調整した前記プリフォームを前記ブロー成形部でブロー成形する、
樹脂製容器の製造方法。
【請求項15】
請求項1から請求項13の何れか1項の温度調整用金型を備えた、
樹脂製容器の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットパリソン式ブロー成形法による樹脂製容器の製造装置、温度調整装置、樹脂製容器の製造方法、及び温度調整方法に関する。具体的には、製造時間を短縮させても外観や物性が良質な樹脂製容器の製造を可能にする、ホットパリソン式ブロー成形法による樹脂製容器の製造装置、温度調整装置、樹脂製容器の製造方法、及び温度調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリフォームを射出成形する射出成形部と、射出成形部で成形したプリフォームを温度調整する温度調整部と、温度調整部で温度調整したプリフォームをブロー成形するブロー成形部とを備えたブロー成形装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この種のブロー成形装置は、射出成形部及びブロー成形部のみを主に備えた従来のブロー成形装置(例えば、特許文献2参照)に温度調節部を追加したものである。射出成形部で成形された直後のプリフォームは、ブロー成形に適した温度分布を備えていないため、射出成形部とブロー成形部との間により積極的にプリフォームの温度調整が可能な温度調整部を設けることにより、プリフォームをブロー成形に適した温度まで温度調整することを可能にしていた。なお、この温度調整部は、加熱ポット型(加熱ブロック)や加熱ロッドを用い、プリフォームを非接触で加熱して、温度調整する方式になっている。
【0003】
また、底部のみが厚く形成された化粧品等を収容する容器をブロー成形する場合の温度調整法も存在する。具体的には、この種の容器のプリフォームに対してブロー成形に適した温度分布を備えるように温度調整するための温度調整部として、プリフォームの底部及び底部に連続する胴部の下部の外周面を冷却ポットで機械的に密着して確実に冷却し、底部に連続する胴部の下部を除く胴部を加熱ブロックにより所定の温度に昇温させることにより、ブロー成形を行った際に所望の厚さを有する底部と、均一で薄肉に延伸された壁部を有する胴部とを備えた、容器を製造するためのブロー成形装置が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0004】
さらに、プリフォームを射出成形部に加えて温度調整部でも冷却し、成形サイクル時間を決定づける射出成形時間(具体的には冷却時間)の短縮を図ったブロー成形装置も提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平6-315973号公報
【文献】国際公開第2017/098673号
【文献】国際公開第2013/012067号
【文献】特開平05-185493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の技術によるブロー成形装置では、射出成形後の冷却時間を短く設定した場合、温度調整部で偏温除去や均温度化を十分に行うことができず、偏肉や白化(白濁化、材料がPET(ポリエチレンテレフタレート)等のブロー成形時に結晶化し易い熱可塑性樹脂の場合に生じ易い)を良好に抑制した高品質な容器を製造することは、未だ確立できていなかった。
【0007】
また、射出成形したプリフォームは、ネック部をネック型が保持した状態で搬送されるため、ネック部が過度に冷却されてしまっていた。
【0008】
本発明は、成形サイクル時間が短縮化されたホットパリソン式射出ブロー成形法であっても良好な品質の容器を製造することのできる樹脂製容器の製造装置、温度調整部、樹脂製容器の製造方法、及び温度調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、プリフォームを射出成形し、射出成形した前記プリフォームを温度調整部で温度調整し、温度調整した前記プリフォームをブロー成形する、樹脂製容器の製造装置において、前記温度調整部は、最上段が最も高温な多段式構造を有し、前記最上段以外の下段の型面温度は前記プリフォームのガラス転移温度よりも10℃以上低いことを特徴とする。
【0010】
この場合において、前記下段の型面温度は、前記プリフォームの肉厚が1.5mm以上3.0mm以下の場合に、30℃以上80℃以下であってもよい。前記下段の型面温度は、前記プリフォームの肉厚が3.0mm以上5.0mm以下の場合に、10℃以上60℃以下であってもよい。前記温度調整部は、温調コア型と温調キャビティ型とで前記プリフォームを挟んで圧縮変形させてもよい。前記温度調整部は、前記プリフォームの内側に空気を循環させてもよい。
【0011】
さらに、本発明は、プリフォームを射出成形し、射出成形した前記プリフォームを温度調整部で温度調整し、温度調整した前記プリフォームをブロー成形する、樹脂製容器の製造方法において、前記温度調整部は、最上段が最も高温な多段式構造を有し、前記最上段以外の下段の型面温度は前記プリフォームのガラス転移温度よりも10℃以上低いことを特徴とする。
【0012】
さらにまた、本発明は、プリフォームのブロー成形に用いる温度調整方法において、最上段が最も高温になるように多段式構造の温度調整装置を温度調整し、前記最上段以外の下段の型面温度が前記プリフォームのガラス転移温度よりも10℃以上低い状態で前記プリフォームを温度調整することを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、射出成形部でプリフォームを射出成形し、射出成形された前記プリフォームを温度調整部で温度調整し、温度調整した前記プリフォームをブロー成形部でブロー成形する、樹脂製容器の製造装置において、前記射出成形部は、前記プリフォームの成形空間を画定する射出コア型と射出キャビティ型とネック型とを備えており、前記成形空間内で前記プリフォームを冷却する時間は、前記プリフォームに成形される樹脂材料を前記成形空間内に射出する時間の2/3以下であり、前記温度調整部は、上下方向に配列された複数の段で構成されて前記段毎に独立して温度設定可能な多段式構造の温調ポットを備えており、前記温調ポットは、前記プリフォームの外表面に接触して前記プリフォームを上下方向に沿って異なる温度で冷却することを特徴とする。
【0014】
この場合において、前記温度調整部は、温調コア型と温調キャビティ型とで前記プリフォームを挟んで冷却させてもよい。前記温度調整部は、前記プリフォームの内側に空気を循環させてもよい。前記プリフォームの内側に空気を流入させる部位に近い前記段の温度設定は、空気を流出させる前記段の温度設定よりも低くてもよい。前記温調ポットは、境目のない1つの面で形成された収容面で前記プリフォームの胴部と底部とに接しており、前記温調ポットの外側には、前記段どうしの間に溝部が形成されていてもよい。
【0015】
さらに、本発明は、射出成形部でプリフォームを射出成形し、射出成形された前記プリフォームを温度調整部で温度調整し、温度調整した前記プリフォームをブロー成形部でブロー成形する、樹脂製容器の製造方法において、前記射出成形部は、前記プリフォームの成形空間を画定する射出コア型と射出キャビティ型とネック型とを備えており、前記成形空間内で前記プリフォームを冷却する時間は、前記プリフォームに成形される樹脂材料を前記成形空間内に射出する時間の2/3以下であり、前記温度調整部は、上下方向に配列された複数の段で構成されて前記段毎に独立して温度設定可能な多段式構造の温調ポットを備えており、前記温調ポットは、前記プリフォームの外表面に接触して前記プリフォームを上下方向に沿って異なる温度で冷却することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、成形サイクル時間が短縮化されたホットパリソン式射出ブロー成形法であっても良好な品質の容器を製造することのできる樹脂製容器の製造装置、温度調整部、樹脂製容器の製造方法、温度調整方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態に係るブロー成形装置(射出成形部、温度調整部、ブロー成形部、取出し部を有する)の斜視図を示す。
図2】温度調整部を正面から見た断面図を示す。
図3】第2実施形態に係る第2の段の断面図を示す。
図4】第2実施形態に係る第2の段の上面図及び底面図を示す。
図5】第2実施形態に係る温度調整部を正面から見た断面図を示す。
図6】第3実施形態に係る温度調整部の半分を正面から見た断面図を示す。
図7】第3実施形態に係る温度調整部の第1の段を示す。
図8】第3実施形態に係る温度調整部の第2の段を示す。
図9】第3実施形態に係る温度調整部の第3の段を示す。
図10】第3実施形態に係る温度調整部の固定板を示す。
図11】第4実施形態に係る温度調整部を正面から見た断面図を示す。
図12】第5実施形態に係る温度調整部を正面から見た断面図を示す。
図13】第5実施形態に係る環状プレートの上面図及び断面図を示す。
図14】第6実施形態に係る温度調整部の半分を正面から見た断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るブロー成形装置(射出成形部、温度調整部、ブロー成形部、取出し部を有する)の斜視図を示し、図2は、温度調整部を正面から見た断面図を示している。
【0019】
ブロー成形装置(樹脂製容器の製造装置)100は、図1に示すように、射出成形部10と、温度調整部(温度調整装置)20と、ブロー成形部30と、取出部40とを備えており、プリフォーム1を射出成形した後に、ブロー成形して容器1aを製造するための装置である。
【0020】
射出成形部10、温度調整部20、ブロー成形部30、及び取出部40は、上から見たときに正方形の4つの辺を形成するような配列で配置されている。これらの上方には、射出成形部10で成形されたプリフォーム1のネック部3を保持するネック型50(搬送部)が設けられた不図示の回転盤が設けられている。この回転盤は、上方から見たときに正方形の4つの辺を形成するような配列で4組のネック型50が配置されている。これにより、回転盤が射出成形部10、温度調整部20、ブロー成形部30、及び取出部40上で垂直軸を中心に反時計回りに90度ずつ回転することにより、4組のネック型50の各々は、射出成形部10、温度調整部20、ブロー成形部30、及び取出部40を順に等しい時間で順次移動して、ネック型50に保持されたプリフォーム1に対して各工程が等しい時間だけ実施されるようになっている。
【0021】
射出成形部10は、射出コア型11、射出キャビティ型12、及び不図示の射出装置を備え、プリフォーム1を射出成形するように設けられている。
【0022】
プリフォーム1は、解放側のネック部3及び閉鎖側の貯留部(本体部)2を有して有底状(有底中空状)に形成されている。プリフォーム1は、ブロー成形されることにより容器1aとなるものであり、ブロー成形後の容器1aを図中上下方向に縮めて厚肉にしたような形状を有している。貯留部2は、解放側のネック部3に連なる胴部2aと、閉鎖側に位置して胴部2aに連なる底部2bとから構成されている。
【0023】
プリフォーム1を射出成形する際には、射出コア型11、射出キャビティ型12、及びネック型50が組み合わされてプリフォーム1に対応する空間を規定する。このとき、射出コア型11でプリフォーム1の貯留部2及びネック部3の内面形状を成形し、射出キャビティ型12で貯留部2の外面形状を成形するとともに、ネック型50でネック部3の外面形状を成形する。射出コア型11、射出キャビティ型12には、チラーに接続されて低温(例えば5℃以上20℃以下)の冷媒が流通する流路(不図示)が形成されている。
【0024】
射出成形部10は、熱可塑性の合成樹脂材料(例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)等のポリエステル系樹脂)を高温で加熱して溶かし、溶かした材料を不図示の射出装置により射出コア型11と射出キャビティ型12及びネック型50とで画定される成形空間(キャビティ)の間に射出して充填させ、射出した材料のうち型面(キャビティ面)に近い部分の材料を融点(例えばPETの場合は約255℃)よりも低い温度、例えば、約20℃程度まで冷やして固めることにより貯留部2に表面層(スキン層)を形成し、プリフォーム1を成形するようになっている。このとき、プリフォーム1の貯留部2の内部層(コア層)は融点以下かつガラス転移点温度(ガラス転移温度)以上の温度に保たれており(例えば150℃以上20℃以下)、貯留部2がブロー成形部30で延伸可能な熱量を有している。なお、本発明では成形サイクル時間、つまり、プリフォーム1の成形時間を従来よりも短縮化させている。具体的には、プリフォームの射出成形時間に関する射出時間(充填時間)と冷却時間のうち、冷却時間を従来法より著しく短く設定している。例えば、成形空間内でプリフォーム1を冷却する冷却時間は、プリフォームに成形される樹脂材料を成形空間内に射出する射出時間の2/3以下、好ましくは1/2以下、更に好ましくは1/3以下である。
【0025】
射出コア型11は、プリフォーム1の貯留部2(より具体的には胴部2a)に対応する部分の横方向断面がネック部3に対応する部分の横方向断面よりも小さく形成されている。これにより、射出成形されたプリフォーム1の内側は、ネック部3よりも貯留部2の方がプリフォーム1の軸心Zに垂直な方向の内部空間面積が小さく形成されている。
【0026】
また、射出コア型11は、プリフォーム1の底部2bと対応する型面(キャビティ面)上の位置に近付く程、横方向断面が漸次的に小さく形成されている。これにより、射出成形されたプリフォーム1の内側は、プリフォーム1の軸心Zに垂直な方向に広がる内部空間面積は、プリフォーム1の底部2bに近付く程、漸次的に小さくなるように形成されている。
【0027】
射出成形部10で射出成形された後にある程度固まった(貯留部2の内外表面に表面層が形成されて外形が維持できる程度の)プリフォーム1は、ネック型50に保持されたまま回転盤と共に上方に持ち上げられて射出コア型11および射出キャビティ型12から引き抜かれ(離型され)、回転盤が上面視で反時計回りに90度回転することにより温度調整部20に搬送される。このプリフォーム1は従来法よりも高温な状態で射出成形部10にて離型されるため、貯留部2の表面層は薄く形成される一方、内部層は厚く形成されては従来法よりも高い保有熱が維持されている。
【0028】
温度調整部20は、射出成形部10の隣に配置されており、図2に示すように、中空パイプ状の温調ロッド(冷却ロッド)21a、温調用ブローコア21、及び温調ポット22を備えている。
【0029】
PET等の結晶性の熱可塑性樹脂の材料から形成されたプリフォーム1は、結晶化が促進される温度帯(例えば、120℃から200℃程度)で徐冷されると結晶化による白化(白濁)が生じてしまう。そのため、透明度の高い容器1aを製造するためには、射出成形部10で射出成形されたプリフォーム1を結晶化する温度帯以下まで急冷する必要がある。
【0030】
射出成形部10から搬送されてきたプリフォーム1は、温調ポット22上に取り付けられた芯出しリング60にネック型50が当接するまで回転盤と共に下がって温調ポット22内に差し込まれる。プリフォーム1が温調ポット22内に差し込まれると、プリフォーム1のネック部3に形成された開口部を通して温調ロッド21aがプリフォーム1内に差し込まれる。また、ネック部3の開口部の内周面または上端面に、温調用ブローコア21が嵌合または当接する。なお、温調ロッド21aがプリフォーム1内に差し込まれた後に、温調ロッド21aと共にプリフォーム1が温調ポット22に差し込まれてもよい。
【0031】
温調ロッド21aは、一端が円筒形状に形成されて温調ポット22に挿入されるようになっており、他端は図示せぬコンプレッサに接続するための第1の接続部21bと、図示せぬチューブ等を介して大気に接続するための第2の接続部21cとを備えている。これにより、温調ポット22内に配置されたプリフォーム1内に温調ロッド21aが挿入されて温調コア21が嵌合した状態で、コンプレッサから圧送された圧縮空気(冷却エア)が温調ロッド21aまたは温調コア21の円筒形状部分内を通ってプリフォーム1内に噴出され、噴出された圧縮空気は円筒形状部分の周りとプリフォーム1の内面との間または温調ロッド21aを通って第2の接続部21cからチューブ等を介して外部に排出されるようになっている。これにより、プリフォーム1の内表面側から胴部2bを冷却することができる。
【0032】
温調ポット22は、上下方向に配列された複数の段(温調ブロック)からなる多段式構造を有しており、本実施形態では第1の段(第1の温調ブロック)22a、第2の段(第2の温調ブロック)22b、及び第3の段(第3の温調ブロック)22cからなる。第1の段22aには、流路23aと、この流路23aを金型温度調節機(温調機)に接続させて所定温度の温調媒体(冷媒)を流入させるための接続部24aと、接続部24aの隣に配置され、接続部24aと同様に流路23aを温調機に接続させて冷媒を流出させるための不図示の接続部とが形成されている。接続部24aから流入した冷媒は、温調ポット22内でプリフォーム1の周りを回るように循環して図示せぬ接続部から流出するようになっている。第2の段22bには、流路23bと、この流路23bを温調機に接続させて冷媒を流入させるための接続部24bと、接続部24bの下方に配置され、接続部24bと同様に流路23bを温調機に接続させて冷媒を流出させるための接続部24cとが形成されている。接続部24bから流入した冷媒は、温調ポット22内でプリフォーム1の周りを回るように循環して接続部24cから流出するようになっている。第3の段22cには、流路23cと、この流路23cを温調機に接続させて冷媒を流入させるための接続部24dと、接続部24dの下方に配置され、接続部24dと同様に流路23cを温調機に接続させて冷媒を流出させるための接続部24eとが形成されている。接続部24dから流入した冷媒は、温調ポット22内でプリフォーム1の周りを回るように循環して接続部24eから流出するようになっている。なお、温調ポット22は、プリフォーム1をその上下方向(縦軸方向、鉛直方向)に沿って異なる温度で冷却(温調)できるように構成されていれば良く、少なくとも第1の段22aおよび第2の段22bからなる2段で構成されていれば良い。
【0033】
プリフォーム1に流入された圧縮空気は、プリフォーム1から流出するまでに胴部2aの熱を吸収して温度が上昇するため、通常はプリフォーム1の流入時の方が流出時よりも温度が低い。このため、例えば、圧縮空気を温調ロッド21aの外側からプリフォーム1内に流入させ、温調ロッド21aの先端から温調ロッド21aの内側を流通させてプリフォーム1の外に流出させる場合は、ネック部3近傍の胴部2aが強く冷却されて必要以上に温度が低下し易い。逆に、圧縮空気を温調ロッド21aの先端からプリフォーム1内に流入させ、温調ロッド21aの外側からプリフォーム1の外に流出させる場合は、底部2b近傍の胴部2aが強く冷却されて必要以上に温度が低下し易い。これを緩和してプリフォーム1を均等に冷却するために、圧縮空気の流入部位に近い段は、流出部位に近い段より高温に設定することが望ましい。すなわち、圧縮空気を温調ロッド21aの外側からプリフォーム1内に流入させる場合は、第1の段22aの温度を第3の段22cよりも高温にする一方、圧縮空気を温調ロッド21aの先端からプリフォーム1内に流入させる場合は、第3の段22cの温度を第1の段22aよりも高温にすることが望ましい。
【0034】
各流路23a,23b,23cは、それぞれ独立して形成されているため、それぞれの流路23a,23b,23cに異なる温度の冷媒(温調媒体)を流通させることにより各段22a,22b,22c毎に異なる温度に設定することができる。本実施形態では、最上段が最も高温な多段式構造を有していることが望ましく、最上段である第1の段22a,下段22b,22cの型面温度はプリフォーム1の材料のガラス転移温度よりも0℃以上60℃以下(0℃~60℃)だけ低くなるように設定されている。例えば、ガラス転移温度が約70℃以上80℃以下であるPET製のプリフォーム1を用いる場合の第2の段22b及び第3の段22cの型面温度は、10℃以上80℃以下、好ましくは20℃以上75℃以下、さらに好ましくは30℃以上60℃以下にする。また、例えば最上段である第1の段22aの型面温度は、下段22b,22cよりも10℃以上20℃以下だけ高くなるように設定されていることが望ましい。また、各段22a,22b,22cの型面温度は、プリフォーム1の肉厚の大きさに対して反比例させるように調整するのが望ましい。例えば、PET製のプリフォーム1の肉厚が1.5mm以上3.0mm以下の場合に、各段22b,22cの型面温度は30℃以上80℃以下であり、PET製のプリフォーム1の肉厚が3.0mm以上5.0mm以下の場合に、各段22b,22cの型面温度は10℃以上60℃以下に設定すると望ましい。
【0035】
温度調整部20に搬送されたプリフォーム1は、ブロー成形するには温度が高過ぎるため、温度調整部20でさらに冷却されてブロー成形に適した温度に温度調整される。このとき、金属製であるネック型50がプリフォーム1のネック部3を保持したまま、射出成形部10からプリフォーム1を搬送するとともに、温度調整部20でプリフォーム1が温度調整されているため、プリフォーム1はネック部3の近傍の貯留部2が他の部分に比べて過度に冷却され易い。しかしながら、温度調整部20は、最上段である第1の段22aの型面温度は下段22b,22cの型面温度より高く設定することで、ネック部3の近傍の貯留部2の過度な冷却を抑止できる。一方、下段22b,22cの型面温度は低いため、ネック部3の近傍にない貯留部2を確実に冷却できる。この結果、プリフォーム1が長手方向により均一に冷却されて全体的にブロー成形に適した温度分布になるため、最終的な形態である容器1aの肉厚の偏りを防止することができる。
【0036】
温度調整部20で温度調整されたプリフォーム1は、ネック型50に保持されたまま回転盤と共に上方に持ち上げられて温調ポット22から引き抜かれ、図1に示すように、回転盤がさらに反時計回りに90度回転してブロー成形部30に搬送される。
【0037】
ブロー成形部30は、図1に示すように、温度調整部20の隣に配置されており、ブロー型31と不図示のエアー吹込部とを備えている。また、ブロー型31には、チラーに接続されて低温(例えば10℃以上25℃以下)の冷媒が流通する流路(不図示)が形成されている。
【0038】
ブロー型31は、容器1aの形状に対応する型面が内側に形成されており、温度調整部20の温調ポット22よりもかなり大きな型面になっている。
【0039】
エアー吹込部は、ブロー型31内に差し込まれたプリフォーム1内に空気を充填するように設けられている。
【0040】
ブロー成形部30に搬送されたプリフォーム1は、回転盤と共に下げられてブロー型31内に差し込まれ、エアー吹込部材(ブロー成形用ブローコア)がプリフォーム1のネック部3の開口に接続され、エアー吹込部がプリフォーム1内に空気を吹き込ませると、図1に示すように、貯留部2の外面全体がブロー型31の型面に密着して押し付けられるまでプリフォーム1の貯留部2が膨らまされ、容器1aが成形されるようになっている。
【0041】
ブロー成形部30でブロー成形されたプリフォーム1は、ネック型50に保持されたまま回転盤と共に上方に持ち上げられてブロー型31から引き抜かれ、図1に示すように、回転盤がさらに反時計回りに90度回転して取出部40に搬送される。
【0042】
取出部40は、図1に示すように、ブロー成形部30と射出成形部10との間に配置されている。取出部40では、ネック型50が開いて容器1aを保持しなくなることにより容器1aが落下し、ブロー成形装置100から容器1aが取り出される(離型される)ようになっている。
【0043】
以下、温調ポット22の各段22a,22b,22cの型面温度を段階的に変化させ、各段階を得て成形した容器1aの外観を観察することで、温調ポット22の型面温度と容器1aの透明性に関する因果関係の有無について実験した実験結果について説明する。
【0044】
ここで、温調ポット22の型面温度は以下の3条件とする。
・条件1: 第1の段:30℃、第2の段:20℃、第3の段:20℃
・条件2: 第1の段:50℃、第2の段:40℃、第3の段:40℃
・条件3: 第1の段:70℃、第2の段:60℃、第3の段:60℃
また、成形条件は、次の通りである。
成形サイクル時間/15.0秒、射出成形部/射出時間(充填時間):9.2秒、冷却時間:1.8秒、ブロー成形部/ブロー型のチラーの冷媒温度:15℃、ブロー成形時間:7秒、プリフォーム/材料:PET、重量:約73グラム、胴部2bの平均厚さ:約4.2mm、容器/充填容量:750ml、平均延伸倍率/横方向:3.18、縦方向:1.37
【0045】
この結果、の外観は、条件1から条件3、すなわち温調ポット22の型面温度が低い状態から高くなるにつれて、容器1aを光にかざした際における容器1aの白さが目立つようになり、透明度が低くなる傾向にあることを確認した。
【0046】
また、各条件でプリフォーム1の外側表面温度をブロー成形部30でブロー成形する直前のタイミングで測定し、ブロー成形直前のプリフォーム1の外側表面の最高温度を比較すると、
・条件1:73.07℃
・条件2:81.15℃
・条件3:91.24℃
となった。
【0047】
条件毎にプリフォーム1の外側表面温度に関して大きな違いが見られ、条件1と条件3とで比較すると約20℃の温度差が生じていた。特に条件1では、最大温度でも約73℃程度の温度しかなく、ブロー成形する際の賦形性に影響が出る恐れがある。そこで、条件1と条件3とで満注容量(ネック部3の上端まで水を満杯にした量)を比較した。目標満注容量が888mlであるところ、条件1では885.0mlとなり、条件3では885.1mlとなり、満注容量は差がほとんどなく、形状についても目視で比較する範囲では問題はみられなかった。なお、ブロー成形時のブロー圧は二次で2.0MPaとした。
【0048】
以上の結果により、本実施形態に係る射出成形部10のようにプリフォーム1をあまり冷却しない場合(射出成形工程で充填時間後の冷却時間を短くする場合:高温離型する場合)は、プリフォーム1の結晶化を抑制するためには温調ポット22の型面温度を下げる事も効果的であることが分かる。
【0049】
本実施形態に係るブロー成形装置100は、最上段である第1の段22aが最も高温な多段式構造を有し、最上段である第1の段22a以外の下段22b,22cの型面温度はプリフォーム1のガラス転移温度よりも10℃以上低い温度調整部20を備えている。これにより、ネック型50によりプリフォーム1のネック部3近傍が過度に冷却されることを防止できるため、成形サイクル時間が短縮化されたホットパリソン式射出ブロー成形法であっても良好な品質の容器を製造することができる。
【0050】
(第2実施形態)
図3は、第2の段の断面図を示し、図4は、第2の段の上面図及び底面図を示し、図5は、温度調整部を正面から見た断面図を示す。図4において、図4(a)は、第2の段22dの上面図を示し、図4(b)は、第2の段22dの底面図を示す。なお、第2実施形態では第1実施形態と異なる部分について説明し、図中の第1実施形態と略同一の構成に対しては同一の符号を用いている。
【0051】
本実施形態に係る第2の段22dは、温調ポット22に挿入されてプリフォーム1の胴部2aに対応しており、図3に示すように、プリフォーム1が挿入される方向に沿って延在する中空部25が形成されている。この中空部25は、図4(a)に示すように、第2の段22dの軸芯、すなわち、温調ポット22の軸芯を中心とした円弧形状に第2の段22dの一部が除去されることにより形成されている。中空部25は、流路23bよりも内側(軸芯側)に配置されている。中空部25は、温調ポット22の軸心方向に沿って真っ直ぐに除去されて第2の段22dの上面側から底面側まで貫通しており、図4(b)に示すように、第2の段22dを温調ポット22の底面側から見たときに上面側と同じ円弧形状に貫通する孔が形成されている。これにより、図5に示すように、温調ポット22に第2の段22dを組み込んでプリフォーム1を温度調整する際には、空気層(断熱層)となる中空部25が形成された部位を中空部25が形成されていない部位よりも低温に設定することができる。このため、プリフォーム1の温度分布に応じて、プリフォーム1の軸心Zを中心に、第2の段22dを温調ポット22に対して回転させることにより、中空部25が形成された部位にプリフォーム1の高温部位が接触するように位置調整することで、プリフォームの円周方向の位置における望ましくない偏温を解消することができる。
【0052】
(第3実施形態)
図6は、第3実施形態に係る温度調整部の半分を正面から見た断面図を示し、図7は、温度調整部の第1の段を示し、図8は、温度調整部の第2の段を示し、図9は、温度調整部の第3の段を示し、図10は、温度調整部の固定板を示す。
【0053】
図7において、図7(a)は、第1の段の断面を示し、図7(b)は、第1の段の下面図を示し、図7(c)は、下面図の部分拡大図を示している。図8において、図8(a)は、第2の段の断面を示し、図8(b)は、第2の段の下面図を示し、図8(c)は、下面図の部分拡大図を示している。図9において、図9(a)は、第3の段の断面を示し、図9(b)は、第3の段の下面図を示し、図9(c)は、下面図の部分拡大図を示している。図10において、図10(a)は、固定板の断面図を示し、図10(b)は、固定板の上面図を示している。なお、第3実施形態では第1実施形態と異なる部分について説明し、図中の第1実施形態と略同一の構成に対しては同一の符号を用いている。
【0054】
本実施形態に係る温度調整部20は、図6に示すように、第1の段71、第2の段72、第3の段73、及び固定板74を備えており、これら第1の段71、第2の段72、及び第3の段73がプリフォーム1を収容する収容面70の一部の形状、及び固定板74の構成が第1実施形態に係る温度調整部20と異なっている。
【0055】
第1の段71は、図7(a)に示すように、円筒形状を有しており、上端で内径が絞られて小さくなっている。この第1の段71の上端の内周には、プリフォーム1を収容するための収容面70の一部が形成されている。第1の段71の下端には、第2の段72に対して位置決めするためのピン穴71bが形成されているとともに、第2の段72の上部が差し込まれるための孔71cが形成されている。
【0056】
第1の段71は、図7(b)に示すように、収容面70の一部が拡径するように拡径面71aが形成されている。この拡径面71aは、略円形形状である収容面70の軸心Oを中心に略角度θ1の範囲で形成されている。ピン穴71bは、この拡径面71aが形成された角度θ1の範囲の略中央に位置している。
【0057】
拡径面71aは、図7(c)に拡大図で示すように、収容面70の一部を形成する第1の段71の上端の内周面の一部が凹んで形成されている。この拡径面71aが形成された角度θ1の範囲は、収容面70の軸心Oを中心として角度θ1の範囲で半径方向に厚さt1だけ均一に拡径して形成されており、この角度θ1の範囲の外側は徐々に内径が小さくなって収容面70の凹んでいない部分の面へと徐々に繋がるように形成されている。角度θ1は、収容面の軸心Oを中心に50°以上110°以下の範囲であり、好ましくは80°以上100°以下であり、より好ましくは90°である。また、厚さt1は、0.2mm以上0.5mm以下であり、好ましくは0.3±0.1mmである。
【0058】
第2の段72は、図8(a)に示すように、上部で外径が絞られて小さくなっており、上部と下部とで外径の異なる円筒形状を有している。この第2の段72の内周には、プリフォーム1を収容するための収容面70の一部が形成されている。第2の段72の下端には、第3の段73に対して位置決めするためのピン穴72bが形成されているとともに、第3の段73の上部が差し込まれるための孔72cが形成されている。さらに、第2の段72の下部は、ピン穴72bが形成された下端面に対して背中合わせかつ平行に形成された面に、第1の段71に対して位置決めするためのピン穴72eが形成されている。これにより、第1の段71のピン穴71bと第2の段72のピン穴72eとの位置を一致させて間にピン75(図6参照)を介在させて、第1の段71と第2の段72とに対して収容面70の軸心Oを中心とした円周方向の位置を固定することができる。
【0059】
第2の段72は、図8(b)に示すように、収容面70の一部が拡径するように拡径面72aが形成されている。この拡径面72aは、略円形形状である収容面70の軸心Oを中心に略角度θ2の範囲で形成されている。ピン穴72bは、この拡径面72aが形成された角度θ2の範囲の略中央に位置している。
【0060】
拡径面72aは、図8(c)に拡大図で示すように、収容面70の一部を形成する第2の段72の内周面の一部が凹んで形成されている。この拡径面72aが形成された角度θ2の範囲は、収容面70の軸心Oを中心として角度θ2の範囲で半径方向に厚さt2だけ均一に拡径して形成されており、この角度θ2の範囲の外側は徐々に内径が小さくなって収容面70の凹んでいない部分の面へと徐々に繋がるように形成されている。角度θ2は、収容面70の軸心Oを中心に50°以上110°以下の範囲であり、好ましくは80°以上100°以下であり、より好ましくは90°である。また、厚さt2は、0.2mm以上0.5mm以下であり、好ましくは0.3mmである。
【0061】
第3の段73は、図9(a)に示すように、上部で外径が絞られて小さくなっており、上端部とそれ以外の部分とで外径の異なる円筒形状を有している。この第3の段73の内周には、プリフォーム1を収容するための収容面70の一部が形成されている。第3の段73の下端には、固定板74に対して位置決めするためのピン穴73bが形成されているとともに、奥で絞られた後に収容面70内の空間と連通する孔73cが形成されている。さらに、第3の段73の下部は、ピン穴73bが形成された下端面に対して背中合わせかつ平行に形成された面に、第2の段72に対して位置決めするためのピン穴73eが形成されている。これにより、第2の段72のピン穴72bと第3の段73のピン穴73eとの位置を一致させて間にピン76(図6参照)を介在させて、第2の段72と第3の段73とに対して収容面70の軸心Oを中心とした円周方向の位置を固定することができる。
【0062】
第3の段73は、図9(b)に示すように、収容面70の一部が拡径するように拡径面73aが形成されている。この拡径面73aは、略円形形状である収容面70の軸心Oを中心に略角度θ3の範囲で形成されている。ピン穴73bは、この拡径面73aが形成された角度θ3の範囲の略中央に位置している。
【0063】
拡径面73、図9(c)に拡大図で示すように、収容面70の一部を形成する第3の段73の内周面の一部が凹んで形成されている。この拡径面73が形成された角度θ3の範囲は、収容面70の軸心Oを中心として角度θ3の範囲で半径方向に厚さt3だけ均一に拡径して形成されており、この角度θ3の範囲の外側は徐々に内径が小さくなって収容面70の凹んでいない部分の面へと徐々に繋がるように形成されている。角度θ3は、収容面の軸心Oを中心に50°以上110°以下の範囲であり、好ましくは80°以上100°以下であり、より好ましくは90°である。また、厚さt3は、0.2mm以上0.5mm以下であり、好ましくは0.3mmである。
【0064】
固定板74は、図10(a)に示すように、矩形断面を有する板形状に形成されており、上面が円柱形上に削り取られて円形状の嵌合穴74aが形成されている。この嵌合穴74aは、リング部材78(図6参照)の外周面が嵌合する大きさに形成されており、固定板74は、リング部材78を介して第3の段73が取り付けられるようになっている。嵌合穴74aの底面には、複数のピン穴74bが形成されている。これにより、第3の段73のピン穴73bと固定板74のピン穴74bの1つとの位置を一致させて間にピン77(図6参照)を介在させて、第3の段73と固定板74とに対して収容面70の軸心Oを中心とした円周方向の位置を固定することができる。
【0065】
固定板74のピン穴74bは、図10(b)に示すように、略円形形状である収容面70の軸心Oを中心に角度θ4毎に複数個形成されている。すなわちピン穴74bの各々は、収容面70の軸心Oとの距離が同じであり、それぞれ第3の段73のピン穴73bと位置合わせ可能になっている。角度θ4は、収容面の軸心Oを中心に30°以上45°以下の範囲であり、本実施形態では45°としている。
【0066】
第1の段71、第2の段72、及び第3の段73は、ピン75及びピン76で円周方向が位置決めされていることにより一体で回転移動するようになっている一方、第3の段73は、固定板74に対して、固定板74に対して円周方向に回転させた状態で位置決め可能になっている。これにより、温度調整部20は、挿入されるプリフォーム1に応じて拡径面71a,72a,73aの円周方向位置を変更することができる。
【0067】
以下、本実施形態に係る温度調整部20における温度調整工程について説明する。
まず、ブロー成形装置100は、プリフォーム1を射出成形部10で高温離型する。このとき、プリフォーム1の貯留部2の胴部の円周方向の一部に鉛直方向に延びる様態、すなわち縦縞状に分布する高温部位が生じている場合がある。
【0068】
射出成形部10でプリフォーム1を高温離型すると、ブロー成形装置100は、プリフォーム1を温度調整部20に搬送する。
【0069】
プリフォーム1を温度調整部20に搬送すると、ブロー成形装置100は、プリフォーム1の縦縞状に分布する高温部位が拡径部71a,72a,73aの位置と一致するように、プリフォーム1を温調ポット22の収容面70で画定されたキャビティ内に収容する。なお、このプリフォーム1縦縞状に分布する高温部と拡径部71a,72a,73aとの位置関係は、実際の連続生産時の中間製品となるプリフォーム1を成形する前にプリフォーム1の試験成形を行い、この試験成形の結果に応じて予め位置調整する。このとき、位置調整は、第3の段73を固定板74に対して位置決めするピン穴74bの位置を変更することによって行う。
【0070】
プリフォーム1を収容面70に収容すると、ブロー成形装置100は、冷却ブローの冷却効率が高められる整流部材を備えた温調ロッド21aをプリフォーム1のネック部3内に配置する。
【0071】
温調ロッド21aをプリフォーム1のネック部3内に配置すると、ブロー成形装置100は、予備ブローにより、例えば0.1MPa以上0.4MPa以下である第1の低圧エアーによりプリフォーム1を膨らまし、プリフォーム1の縦縞状に分布する高温部位を拡径部71a,72a,73aの表面に接触させる。このとき、縦縞状に分布する高温部位が局所的に若干延伸されることでその熱量が低下し、温度が他の部位より低下する。
【0072】
予備ブローを行うと、ブロー成形装置100は、冷却ブローにより、例えば0.1MPa以上0.4MPa以下である第2の低圧エアーをプリフォーム1内に導入させて循環させ、プリフォーム1をエアーと温調ポット22とで冷却させる。このとき、プリフォーム1に挿入される温調ロッド21aの整流部材として、プリフォーム1の縦縞状に分布する高温部位に対向する部分が切り掛かれて流路が形成されたものを用いることにより、偏温解消が一層促進されて望ましい。
【0073】
プリフォーム1を冷却させると、ブロー成形装置100は、温調ロッド21aからプリフォーム1を引き抜き、温調ポット22からプリフォーム1を引き抜く。
【0074】
プリフォーム1を温調ポット22から引き抜くと、ブロー成形装置100は、円周方向の偏温が解消されたプリフォーム1をブロー成形部30に搬送する。
【0075】
本実施形態に係る温度調整部20は、第1の段71、第2の段72、及び第3の段73の各々に拡径部71a,72a,73aが形成されている。これにより、温度調整部20は、プリフォーム1の円周方向の偏温、すなわち局所的な高温部位が生じることを解消することができる。
【0076】
(第4実施形態)
図11は、温度調整部を正面から見た断面図を示す。なお、第4実施形態では第1実施形態と異なる部分について説明し、図中の第1実施形態と略同一の構成に対しては同一の符号を用いている。
【0077】
温調ポット22の第1の段22eに、図11に示すように、矩形断面を有する環状溝26が温調ロッド21aを囲むように形成されている。この環状溝26は、内部に空気が介在して空気層Aが形成されることによっても断熱構造として機能する。温調ポット22は、断熱構造を有することにより、温度調整する際に、第1の段22eを第1実施形態の第1の段22aに比べて高温に設定しなくても、ネック部3の下方の部分が冷却され難くすることができ、ブロー成形部30でプリフォーム1をブロー成形する際に良好にネック部3の下方の部分を延伸させることができる。また、第1の段22dを第1実施形態と同じように高温にする場合は、プリフォーム1の内部にエアを流通させて冷却を行う際のネック部3の下方の部分の温度低下を一層抑制することができる。このため、プリフォーム1のネック部3の下方の部分が冷却されてしまうこと効果的に防止することができる。
【0078】
(第5実施形態)
図12は、温度調整部を正面から見た断面図を示し、図13は、環状プレートの上面図及び断面図を示す。図13において、図13(a)は、環状プレートの上面図を示し、図13(b)は環状プレートの断面図を示す。なお、第5実施形態では第1実施形態と異なる部分について説明し、図中の第1実施形態と略同一の構成に対しては同一の符号を用いている。
【0079】
本実施形態に係る温調ポット22の第1の段22fには、図12に示すように、環状溝27内にPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂製の環状プレート28が断熱材として組み込まれている。環状溝27は、第1の段22fに形成された内周面の底部から、内周面の中心に向かって延在する平面である底面を有している。
【0080】
環状溝27に組み込まれる環状プレート28は、図13(a)に示すように、ドーナツ形状に形成されている。環状溝27は、複数の貫通孔27aが形成されており、環状プレート27は、貫通孔27aを通して環状溝27の底部にねじが螺合されることにより、環状溝27に固定されるようになっている。
【0081】
環状プレート28は、図13(b)に示すように、中心軸に沿って一端から他端に行くほど内周面29の直径が小さくなるように傾斜した内周面が形成されている。これにより、環状プレート28は、温調ポット22内に挿入されたプリフォーム1のネック部3の下方の部分が、プリフォーム1の底部端に向かって円錐形状に半径が小さくなるように、プリフォーム1と当接するようになっている。
【0082】
本実施形態に係る温調ポット22の第1の段22fも、断熱構造を有することにより、温度調整する際に、第1の段22eを第1実施形態の第1の段22aに比べて高温に設定しなくても、ネック部3の下方の部分が冷却され難くすることができ、ブロー成形部30でプリフォーム1をブロー成形する際に良好にネック部3の下方の部分を延伸させることができる。また、第1の段22dを第1実施形態と同じように高温にする場合は、プリフォーム1の内部にエアを流通させて冷却を行う際のネック部3の下方の部分の温度低下を一層抑制することができる。このため、プリフォーム1のネック部3の下方の部分が冷却されてしまうこと効果的に防止することができる。
【0083】
(第6実施形態)
図14は、第6実施形態に係る温度調整部の半分を正面から見た断面図を示す。なお、第6実施形態では第1実施形態と異なる部分について説明し、図中の第1実施形態と略同一の構成に対しては同一の符号を用いている。
【0084】
本実施形態に係る温度調整部20は、図14に示すように、温調ポット22が別部材として複数の段に分かれずに一体で形成された温調ポット本体80を備えている。すなわち、温調ポット22に挿入されたプリフォーム1の胴部及び底部は、境目のない1つの面で形成された収容面70で温調ポット本体80と接するようになっている。なお、本実施形態に係る温調ポット本体80は、第3実施形態と同様に、収容面70の一部が拡径するように拡径面72aが形成されている。
【0085】
温調ポット本体80は、一体で形成されているが、外側に第1の溝部81と第2の溝部82とが形成されて3つの領域83,84,85に分かれている。すなわち、温調ポット本体80は、第1実施形態と同様に温度設定の異なる3つの段(温調ブロック)を有しているが、それぞれの段は一体で形成されており、第1の段に相当する第1の領域83と第2の段に相当する第2の領域に相当する第2の領域84との間に第1の溝部81が形成され、第2の領域84と第3の段に相当する第3の領域85との間に第2の溝部82が形成されている。これら第1の溝部81及び第2の溝部82の各々は、プリフォーム1が挿入される方向に沿って1mm以上5mm以下の幅、好ましくは1.5mm以上2.5mm以下で形成されており、空気が介在することにより空気断熱するようになっている。これにより、第1の溝部81は、第1の領域83と第2の領域84との間を断熱し、第2の溝部82は、第2の領域84と第3の領域85との間を断熱するようになっている。なお、第1の溝部81及び第2の溝部82は、PEEK樹脂を介在させることにより断熱させてもよい。
【0086】
プリフォーム1と収容面70との間のエアが脱気されにくい場合(例えばプリフォーム1が細長い形状である場合等)は、第2の溝部82の底には、収容面70を貫通するスリット86が形成され、収容面70内の空間と第2の溝部82とが流体的に連通するようになっていても良い。これにより、プリフォーム1の外周面と温調ポット20の収容面70との間に滞留するエアーが排気、すなわち脱気されるため、スリット86はエアベントとして機能する。なお、スリット86は、スリット86がプリフォーム1に当たることによってプリフォーム1に形成されるラインを目立たなくさせるため、プリフォーム1の底部に対応する位置に設けることが望ましい。また、スリットの幅は第1の溝部81及び第2の溝部82の幅より小さく設定されるのが好ましい。
【0087】
従来技術による多段式温調ポットは複数段に分割されていたため、必ずプリフォームに境目の痕、すなわち分割ラインが形成されていた。このような分割ラインはボトルである容器1aの肉厚不良やリング状の線が形成されてしまうといった外観不良を招き易い。
【0088】
本実施形態に係る温調ポット20は、収容面70を形成する温調ポット本体80が一体で形成されていることにより、上下に別体として分割した構成ではないため、プリフォーム1を温度調整または冷却処理しても、収容面70が分割して形成されたときの境界がプリフォーム1に分割ラインとなって形成されないようになっている。
【0089】
また、温調ポット本体80は、第1の溝部81と第2の溝部82とで境界部分が断熱された3つの領域83,84,85に分かれている。これにより、第1の領域83の流路23a、第2の領域84の流路23b、及び第3の領域85の流路23cの各々を流れる流体に温度差を生じさせてプリフォーム1の上下方向に温度差を生じさせたり上下方向の温度差を解消させたりすることができるようになっている。これにより、長いプリフォーム1であっても、上下方向の温調及び冷却を好適に実施することができる。
【0090】
なお、本発明において、射出成形部10の射出キャビティ型12等からなる射出型にプリフォーム1の材料を導入する射出装置(不図示)の射出筒(バレル)の設定温度、および、射出装置と射出型との間に配置されるホットランナー(HR)のブロック部とノズル部の設定温度は、在来の成形法よりも5℃~15℃以上、低温に設定されるのが望ましい。例えば、プリフォーム1の材料がPETである場合は、下記の表1のように設定できる。これにより、プリフォーム1の材料(PET)を射出装置で徒に高温状態で溶融させる必要性が無いため、プリフォーム1を材料の劣化が抑止された高品質状態で成形できるのと共に、プリフォーム1が従来の成形法よりも低温で成形できることから温度調整部20におけるプリフォームの冷却時間も短縮できる。
【0091】
【表1】
【0092】
また、プリフォーム1の形状も従来のプリフォームとは異なる形状を有することが望ましい。例えば、容量が0.3L~1L程度までの容器1aを成形する場合は、プリフォーム1の貯留部2の胴部壁の厚さを2.5mm~8.0mm、好ましくは、3.0±0.8の範囲に設定し、従来の同等容器を成形する場合のプリフォームよりも胴部壁を厚くして胴部長を短くするのが好ましい。この方法により、射出型の射出空間が従来よりも広くなるため、従来よりも射出成形時間(射出サイクル時間)を短くしつつ低圧で材料を射出装置から射出型に導入でき、プリフォーム1をハイサイクルのブロー成形装置でも高品質に成形できる。なお、従来のプリフォームの射出成形時間の短縮方法は、胴部壁を薄くするのが一般的であった。しかしこの場合は、プリフォームから容器を成形する場合の延伸倍率(面倍率)が小さくなって容器の物性が低下する。つまり、射出成形時間を短くするために容器の物性を犠牲にする必要があった。さらに、プリフォームの胴部壁が薄いと厚肉の場合に比べて射出成形時の偏温が相対的に大きくなり、成形性が低下する。本発明では温度調整部20で肉厚のプリフォーム1も好適に冷却できるため、上記のような形状のプリフォーム1が利用でき、成形サイクルの短縮化と容器の物性の維持及び向上を両立できる。
【0093】
さらに、温度調整部20の温度調整(冷却)が完了したプリフォーム1は、ブロー成形部30に搬送する前に、温調ロッド21aおよび温調ポット22から離型した状態で、ネック型50で保持された状態で所定時間、待機させるのが望ましい。所定時間は、例えば、射出成形時間の1/3以下、好ましくは、1/4以下で設定するのが良い。一度温度調整されたプリフォーム1に対して追加で均温化処理を施すことになり、短時間でもプリフォーム1に残存する偏温を良好に解消することができる。同時に、プリフォーム1をブロー成形に適した温度に低下させることができる。これにより、プリフォーム1の偏温に起因するフィッシュアイ(涙模様)、リング模様(伸びムラ)およびオレンジピール(梨地状態の表面荒れ)といったブロー成形不良が低減できつつ物性も向上し、容器1aをより高品質でブロー成形可能になる。
【0094】
なお、高温状態のプリフォーム1は射出成形部10で射出コア型11から離型させる際、矯正不能な形状にプリフォーム1が変形してしまう虞がある。これを抑止するため、離型直前に射出コア型11からプリフォーム1の内部にエアーを噴出させる方法を採用しても良い。つまり、射出型の型閉状態でプリフォーム1の内壁と射出コア型11の外表面とをエアーで離接させても構わない。この構成としては、例えば、射出コア型11には、ネック部1の直下と対向する領域に環状のエアスリットが設けられ、それに連通するように内部にエアー回路が内蔵される。これにより、高温離型時のプリフォーム1の変形が確実に防止できる。
【0095】
以上、実施形態に基づいて本発明を説明してきたが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記実施形態では、温調ロッド21aと温調ポット22との間にプリフォーム1を配置して、温調ロッド21aからプリフォーム1の内側に空気を送風して循環させるタイプの温度調整部20を用いているが、これに限定されない。第1の段22a以外の下段22b,22cの型面温度がプリフォーム1のガラス転移温度よりも10℃以上低ければ、プリフォーム1を温調ロッドと温調ポットとで挟み込んで圧縮変形させながら冷却させる温度調整部を用いてもよい。
【0096】
また、上記実施形態では、予備ブローを行った後に冷却ブローを行っているが、冷却ブローを行った後に予備ブローを行ってもよい。冷却ブローを行った後に予備ブローを行うことにより、十分に冷却されて偏温解消も進展したプリフォーム1を温調ポット20の収容面70に強く密接させることができ、プリフォーム1に対しブローにより適した温度分布を付与させることが可能になる。特に多段式温調ポットを用いた場合においては、プリフォーム1の上下方向の温度分布が良好になる。特に上記第3実施形態に係る偏芯した温調ポット20との併用により、プリフォーム1の偏温解消が一層促進され、肉厚分布良好な容器が成形可能になる。
【符号の説明】
【0097】
1…プリフォーム
1a…容器
2…貯留部
2a…胴部
2b…底部
3…ネック部
10…射出成形部
11…射出コア型
12…射出キャビティ型
20…温度調整部(温度調整装置)
21…温調用ブローコア
21a…温調ロッド
21b…第1の接続部
21c…第2の接続部
22…温調ポット
22a…第1の段(最上段)
22b…第2の段
22c…第3の段
22d…第2の段
22e…第1の段(最上段)
22f…第1の段(最上段)
23a…流路
23b…流路
23c…流路
24a…接続部
24b…接続部
24c…接続部
24d…接続部
24e…接続部
25…中空部
26…環状溝
27…環状溝
28…環状プレート28
29…内周面
30…ブロー成形部
31…ブロー型
40…取出部
50…ネック型
50…搬送部
60…リング
70…収容面
71…第1の段
72…第2の段
73…第3の段
73…拡径面
74…固定板
74a…嵌合穴
75…ピン
76…ピン
77…ピン
78…リング部材
80…温調ポット本体
81…第1の溝部
82…第2の溝部
83…第1の領域
84…第2の領域
85…第3の領域
86…スリット
100…ブロー成形装置(樹脂製容器の製造装置)
A…空気層
O…軸心
Z…軸心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14