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特許7492907印刷システム、印刷装置およびテストパターンの印刷方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】印刷システム、印刷装置およびテストパターンの印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/325 20060101AFI20240523BHJP
   B41J 29/393 20060101ALI20240523BHJP
   H04N 1/00 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
B41J2/325 C
B41J29/393 107
H04N1/00 002A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020198431
(22)【出願日】2020-11-30
(65)【公開番号】P2022086431
(43)【公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(72)【発明者】
【氏名】臼井 孝
(72)【発明者】
【氏名】藤谷 正哉
(72)【発明者】
【氏名】南 雅範
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-208812(JP,A)
【文献】特開2009-154410(JP,A)
【文献】特開2016-086271(JP,A)
【文献】特開2009-051095(JP,A)
【文献】特開2014-195898(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0256404(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0043087(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/325
B41J 29/393
H04N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷装置と画像読み取り装置を備え、
前記印刷装置は、
印刷媒体の表面にインク層によるパターンを形成させ、形成されたインク層の上に透明な保護層を形成させる印刷ユニットと、
前記印刷ユニットを用いて、キャリブレーション用のテストパターンおよび画像パターンを形成する制御部とを備え、
前記画像読み取り装置は、
形成されたテストパターンを光学的に読み取る画像読み取りユニットを備え、
前記制御部は、前記画像パターンを形成する場合はその画像パターンを覆う保護層を形成し、前記テストパターンを形成する場合は、少なくとも前記テストパターンを形成する領域に保護層を形成しないかまたは少なくとも前記テストパターンを形成する領域に前記画像パターンを覆う保護層よりも不均一な保護層を形成するように制御する印刷システム。
【請求項2】
前記印刷媒体は、凹凸が印刷面に形成されたものであり、
前記制御部は、前記テストパターンを形成する場合は保護層を形成しないように制御する請求項1に記載の印刷システム。
【請求項3】
前記印刷媒体は、光沢を持たせるために平滑処理されたものであり、
前記制御部は、前記画像パターンを形成する場合は均一な保護層を形成し、前記テストパターンを形成する場合は部分的な保護層を形成するか、または部分的に異なる厚さの層が並ぶ不均一な保護層を形成するように制御する請求項1に記載の印刷システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記画像読み取りユニットが読み取った前記テストパターンのうち均一な濃度のパターンであるべき領域に濃度や色のムラがあると判断した場合、そのムラの濃い部分の読み取り値を採用せずにキャリブレーションを行う請求項1に記載の印刷システム。
【請求項5】
印刷媒体の表面にインク層によるパターンを形成させ、形成されたインク層の上に透明な保護層を形成させる印刷ユニットと、
前記印刷ユニットを用いて、キャリブレーション用のテストパターンおよび画像パターンを形成する制御部とを備え、
前記制御部は、前記画像パターンを形成する場合はその画像パターンを覆う保護層を形成し、前記テストパターンを形成する場合は、少なくとも前記テストパターンを形成する領域に保護層を形成しないかまたは少なくとも前記テストパターンを形成する領域に前記画像パターンを覆う保護層よりも不均一な保護層を形成するように制御する印刷装置。
【請求項6】
前記印刷媒体は、凹凸が印刷面に形成されたものであり、
前記制御部は、前記テストパターンを形成する場合は保護層を形成しないように制御する請求項5に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記印刷媒体は、光沢を持たせるために平滑処理されたものであり、
前記制御部は、前記画像パターンを形成する場合は均一な保護層を形成し、前記テストパターンを形成する場合は部分的な保護層を形成するか、または部分的に異なる厚さの層が並ぶ不均一な保護層を形成するように制御する請求項5に記載の印刷装置。
【請求項8】
キャリブレーション用のテストパターンおよび画像パターンを形成する印刷装置の制御部が、
印刷ユニットを用いて、印刷媒体の表面にインク層によるパターンを形成するステップと、
形成された記インク層の上に透明の保護層を形成するステップと、
画像読み取りユニットを用いて、形成されたテストパターンを光学的に読み取るステップとを備え、
前記制御部は、前記画像パターンを形成する場合はその画像パターンを覆う保護層を形成し、前記テストパターンを形成する場合は、少なくとも前記テストパターンを形成する領域に保護層を形成しないかまたは少なくとも前記テストパターンを形成する領域に前記画像パターンを覆う保護層よりも不均一な保護層を形成するように制御するテストパターンの印刷方法。
【請求項9】
前記印刷媒体の印刷面が平滑処理されたものか凹凸が形成されたものかの選択を受付けるステップをさらに備え、
前記制御部は、印刷面に凹凸が形成された印刷媒体に前記テストパターンを形成する場合は保護層を形成しないように制御する請求項8に記載の印刷方法。
【請求項10】
前記印刷媒体の印刷面が平滑処理されたものか凹凸が形成されたものかの選択を受付けるステップをさらに備え、
前記制御部は、印刷面が平滑処理された印刷媒体に前記画像パターンを形成する場合は均一な保護層を形成し、前記テストパターンを形成する場合は部分的な保護層を形成するか、または部分的に異なる厚さの層が並ぶ不均一な保護層を形成するように制御する請求項8に記載の印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、インク層を形成しその上に透明な保護層を形成して画像パターンを印刷し、さらに、キャリブレーション用のテストパターンを形成し得る印刷システム、印刷装置およびテストパターンの印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置の濃度、ガンマ特性、色調等に係る個々の装置間の特性を均一化し、また、環境や時間の経過に対して特性を安定させるためのキャリブレーション機能が知られている。
所定のテストパターンを印刷装置のメモリーに記憶させておき、キャリブレーションを行う際に記憶されたテストパターンを印刷させ、印刷されたテストパターンをスキャナー(画像読取ユニット)に読み取らせて、目標とする特性に近づけるように補正を行う機能である。
【0003】
スキャナーは、透明な読み取り面上に原稿(キャリブレーションの場合は印刷されたテストパターン)を載せて操作するフラットベッド型のものが一般的である。
キャリブレーション機能に関して、補正関数の算出に使用するテストパターンが読み取り面に対してどのような向きで配置されても、テストパターン像の向きを検出して補正データを算出できるスキャンデータ取込装置および補正データ生成方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
また、基準原稿を読み取ってカラー画像読み取り装置の基準原稿に対する読み取り特性を求めておき、所定の原稿種での読み取り特性をそれに基づいて推測し、所定原稿用のガンマ変換、色変換のパラメータを設定する手法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。カラースキャナーの読み取り特性は原稿種ごとに異なるところ、原稿種ごとの標準原稿を読み込んで色変換係数を設定するといった手間を省略して安定した色再現を得ようとするものである。
【0005】
しかし、テストパターンをフラットベッド型のスキャナーで読み取る際、濃度や色のムラが生じることがある。平滑な表面の光沢紙に印刷されたものや、オーバーコートされた保護層によって平滑な表面を有するテストパターンを読み取る場合である。濃度や色のムラは、ニュートンリングとして知られている現象に起因する。即ち、テストパターンは、表面は平滑であるが若干のうねりを有する。そのようなテストパターンが透明な平面である読み取り面上に置かれた状態で、スキャナーは下方から読み取り面を介してテストパターンの反射光を読み取る。読み取り面とテストパターン表面の間の場所によって緩やかに変化する間隔によって、原稿にない濃淡が読み取られた画像に生じるのである。
【0006】
一般的なニュートンリングの説明は、平面と片面が大きな曲率半径を有するレンズが近接すると同心円状の縞模様が生じるというものである。上述のテストパターンは、一定曲率半径でなく不規則なうねりのために、同心円状の縞模様でなく不規則な形状のムラが生じる。
上述の特許文献1および2には、ニュートンリング現象によるムラについての言及がない。それに関して、写真フィルム等の透過原稿を読み取る画像読み取り装置において、フィルム原稿の一方の面を押さえて位置決めする透明なプラテンを拡散面とするものが提案されている(例えば、特許文献3参照)。写真フィルムとプラテンとの間に微小な隙間が形成されている場合にニュートンリングが発生すること、プラテンを拡散面にすることによりそのニュートンリングを防止することが述べられている。
【0007】
しかしながら同時に、写真フィルムからイメージセンサーに至る光路上に透明板の拡散面が存在する場合は、拡散面によって写真フィルムの透過光が拡散されて光像がぼやけることも記載されている。一方、光源から写真フィルムに至る光路上に拡散面が存在しても透過光像がぼやけることはない。よって、光源から写真フィルムに至る光路上に拡散面を配置する構成としている。透過原稿の場合は、そのような構成が可能であるが、反射原稿の場合は原稿面への入射光だけでなく原稿面からの反射光も同じ拡散面を通過する構成になるので光像がぼやけてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2006-339688号公報
【文献】特開平9-0186892号公報
【文献】特開2006-064714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
表面が平滑な銀塩写真等の原稿スキャン時に、上述のニュートンリング現象によるムラへの対策として、澱粉を主体としたパウダーで、噴霧することで密着を防ぐ製品が知られている(例えば、[online]、[令和2年10月6日検索]、インターネット<URL:https://www.str-web.com/product/ap.html参照>)。しかし、使用後に拭き取りが必要になり、また、手間やコストがかかってしまうといった側面がある。
【0010】
特許文献1,2のようにキャリブレーションの精度を向上させる種々の検討がなされているが、ニュートンリング現象によるムラとその対応についてはそれらに言及されていない。
この発明は、以上のような事情を考慮してなされたものであって、平滑な表面を有するキャリブレーション用のテストパターンをスキャナーで読み取る際、読み取り画像にニュートンリング現象による濃度や色のムラが現れるのを抑制できる手法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、印刷装置と画像読み取り装置を備え、前記印刷装置は、印刷媒体の表面にインク層によるパターンを形成させ、形成されたインク層の上に透明な保護層を形成させる印刷ユニットと、前記印刷ユニットを用いて、キャリブレーション用のテストパターンおよび画像パターンを形成する制御部とを備え、前記画像読み取り装置は、形成されたテストパターンを光学的に読み取る画像読み取りユニットを備え、前記制御部は、前記画像パターンを形成する場合はその画像パターンを覆う保護層を形成し、前記テストパターンを形成する場合は、少なくとも前記テストパターンを形成する領域に保護層を形成しないかまたは少なくとも前記テストパターンを形成する領域に前記画像パターンを覆う保護層よりも不均一な保護層を形成するように制御する印刷システムを提供する。
【0012】
また、異なる態様としてこの発明は、印刷媒体の表面にインク層によるパターンを形成させ、形成されたインク層の上に透明な保護層を形成させる印刷ユニットと、前記印刷ユニットを用いて、キャリブレーション用のテストパターンおよび画像パターンを形成する制御部とを備え、前記制御部は、前記画像パターンを形成する場合はその画像パターンを覆う保護層を形成し、前記テストパターンを形成する場合は、少なくとも前記テストパターンを形成する領域に保護層を形成しないかまたは少なくとも前記テストパターンを形成する領域に前記画像パターンを覆う保護層よりも不均一な保護層を形成するように制御する印刷装置を提供する。
【0013】
また、異なる観点からこの発明は、キャリブレーション用のテストパターンおよび画像パターンを形成する印刷装置の制御部が、印刷ユニットを用いて、印刷媒体の表面にインク層によるパターンを形成するステップと、形成された前記インク層の上に透明の保護層を形成するステップと、画像読み取りユニットを用いて、形成されたテストパターンを光学的に読み取るステップとを備え、前記制御部は、前記画像パターンを形成する場合はその画像パターンを覆う保護層を形成し、前記テストパターンを形成する場合は、少なくとも前記テストパターンを形成する領域に保護層を形成しないかまたは少なくとも前記テストパターンを形成する領域に前記画像パターンを覆う保護層よりも不均一な保護層を形成するように制御するテストパターンの印刷方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
この発明による印刷システムにおいて、制御部は、前記画像パターンを形成する場合はその画像パターンを覆う保護層を形成し、前記テストパターンを形成する場合は、保護層を形成しないかまたは前記画像パターンを覆う保護層よりも不均一な保護層を形成するように制御するので、平滑な表面を有するキャリブレーション用のテストパターンをスキャナーで読み取る際にニュートンリング現象による濃度ムラを抑制できる。
この発明による印刷装置および印刷方法も同様の作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】この実施形態において、複合機およびサービスユニットを備えた画像形成システムの構成を示すブロック図である。
図2図1に示す画像形成システムの外観図である。
図3A図1に示すスキャナーユニットが原稿の走査を開始する様子を示す説明図である。
図3B図3Aに示すスキャナーユニットが原稿を走査中の状態を示す説明図である。
図4図1に示すフォトプリンタ印刷ユニットの要部を示す説明図である。
図5】この実施形態において、プラテンガラスに置かれた原稿に下方から光を照射して読み取られる読み取り画像の例を示す説明図である。
図6】この実施形態において、テストパターンの読み取り画像がニュートンリング現象によるムラを含む例を示す説明図である。
図7A】この実施形態において、フォトプリンタが印刷する通常の印刷出力の例を示す説明図である。
図7B】この実施形態において、フォトプリンタが印刷するキャリブレーション用のテストパターンの出力例を示す説明図である。
図8A】表面に凹凸が形成されたフォトペーパーの表面にテストパターンが印刷された例を示す説明図である。
図8B】表面が平滑に仕上げられたフォトペーパーの表面にテストパターンが印刷された例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を用いてこの発明をさらに詳述する。なお、以下の説明は、すべての点で例示であって、この発明を限定するものと解されるべきではない。
(実施の形態1)
≪画像形成システムの構成≫
まず、この実施形態における画像形成システムについて述べる。
図1は、この実施形態における画像形成システムの一態様として、複合機およびサービスユニットを備えてなるシステムの構成を示すブロック図である。図2は、図1に示す画像形成システムの外観図である。
【0017】
図1に示すように、画像形成システム100は、外観で大別すると複合機101およびサービスユニット110から構成される。画像形成システム100を構成する複合機101は、複合機制御部11、複合機操作ユニット12、スキャナーユニット13、複合機印刷ユニット14、複合機データ格納ユニット15および複合機通信インターフェース回路16を備える。
複合機制御部11は、プロセッサを中心とする回路で構成され、複合機データ格納ユニット15に格納された制御プログラムをプロセッサが実行して、複合機101の各ユニットを制御する。複合機制御部11は、サービス制御部111と協働して、複合機101を用いた画像形成システム100のサービスを提供する。
【0018】
複合機操作ユニット12は、ユーザーに情報を提供する液晶表示装置等のディスプレイデバイスおよびユーザーの操作を受付けるタッチパネル等の操作検出デバイスを備える。
スキャナーユニット13は、フラットベッド型のカラースキャナーである。
図3Aおよび図3Bは、スキャナーユニット13が原稿を走査する様子を示す説明図である。図3Aは原稿の走査を開始する状態を示し、図3Bは原稿を走査中の状態を示す。
図3Aおよび図3Bに示すように、原稿31は、読み取り面を透明なプラテンガラス33の側にして所定の位置に置かれる。
スキャナーユニット13は、原稿31を照射する光源20、光源20に照射された原稿31からの反射光を導く第1の反射ミラーを支持する第1走査ユニット21を備える。さらに、第2および第3の反射ミラーを支持する第2走査ユニット22を備える。
【0019】
第1走査ユニット21は、光源20で原稿31を照射しながら図3Aおよび図3Bに矢印Sで示す走査方向へ移動して原稿31を走査する。同時に、第2走査ユニット22が第1走査ユニット21の半分の速度で走査方向へ移動する。
原稿31からの反射光は、第1~第3の反射ミラーで反射された後、結像レンズ23を透過してラインイメージセンサー24上で結像する。ラインイメージセンサー24は、ライン状に結像した原稿31の画像を読み取る。第1走査ユニット21および第2走査ユニット22が移動して原稿31を走査することにより、ラインイメージセンサー24は原稿31の全面の画像を読み取る。
【0020】
複合機印刷ユニット14は、電子写真方式のカラープリントエンジンである。
複合機データ格納ユニット15は、複合機制御部11が実行する処理プログラム等を格納する不揮発性のメモリーおよびデータを格納するRAMを備える。
複合機通信インターフェース回路16は、サービスユニット110および図示しない外部の機器との通信を行うためのインターフェース回路である。
【0021】
図2に示すように、複合機101の左隣に接して、サービスユニット110が配置される。サービスユニット110は、サービス制御部111、サービス操作ユニット112、コードリーダ113、コインベンダー114、サービスユニット通信インターフェース回路116およびフォトプリンタ200を備える。
サービス制御部111は、プロセッサを中心とする回路で構成され、複合機101、サービス操作ユニット112、コードリーダ113、コインベンダー114、領収証プリンタ115およびフォトプリンタ200と通信してサービスに係る制御を行う。
【0022】
サービス操作ユニット112は、図2に示すようにサービスユニット110の上部に設けられている。サービス操作ユニット112は、ユーザーに情報を提供する液晶表示装置等のディスプレイデバイスおよびユーザーの操作を受付けるタッチパネル等の操作検出デバイスを備える。
コードリーダ113は、提供するサービスに係る1次元コードや2次元コードを読み取る公知の装置である。サービス制御部111は、コードリーダ113で読み取られたコードの信号を認識する。
【0023】
サービス制御部111は、コインベンダー114を制御して、画像形成システム100が提供するサービスに係る課金処理を実行する。さらに、サービス制御部111は、公知の領収証プリンタ115を制御して、提供されたサービスに係る領収証を発行する。また、サービス制御部111は、複合機制御部11と協働して複合機101を用いたサービスを提供し、フォトプリンタ制御部201と協働してフォトプリンタ200を用いたサービスを提供する。
【0024】
サービスユニット通信インターフェース回路116は、複合機101および図示しない外部の機器との通信を行うためのインターフェース回路である。
フォトプリンタ200は、フォトペーパーに写真画像の印刷を行う。フォトプリンタ200は、フォトプリンタ制御部201、フォトプリンタ印刷ユニット204およびフォトプリンタデータ格納ユニット205を備える。
【0025】
フォトプリンタ制御部201は、プロセッサを中心とする回路で構成され、複合機データ格納ユニット15に格納された制御プログラムをプロセッサが実行して、複合機101の各ユニットを制御する。フォトプリンタ制御部201は、サービス制御部111と協働して、フォトプリンタ200を用いた画像形成システム100のサービスを提供する。
フォトプリンタ印刷ユニット204は、昇華型のカラープリンタエンジンである。フォトプリンタ印刷ユニット204の構成については、別途後述する。
【0026】
フォトプリンタデータ格納ユニット205は、フォトプリンタ制御部201が実行する処理プログラム等を格納する不揮発性のメモリーおよびデータを格納するRAMを備える。
領収証およびフォトペーパーに印刷された写真画像は、フォト排出口150へ排出される。領収証は、レシート排出口151へ排出される。
なお、図1では、プロセッサおよびメモリーを中心に構成されるサービス制御部111、複合機制御部11およびフォトプリンタ制御部201の3つの制御部が存在する態様を示したが、それら3つの制御部のすべてまたは何れか2つが統合された構成であってもよい。その場合、対応するデータ格納ユニットも統合された構成であってもよい。即ち、複合機データ格納ユニット15とフォトプリンタデータ格納ユニット205が統合された構成もあり得る。
【0027】
≪フォトプリンタ印刷ユニットの構成≫
図4は、この実施形態によるフォトプリンタ印刷ユニット204の要部を示す説明図である。フォトプリンタ印刷ユニット204は、昇華型のプリンタであり、インクリボンRとロール紙Pが所定位置に装着されて使用される。
【0028】
インクリボンRは、供給リール212から供給され、サーマルヘッド214とプラテンロール215の間を通過して巻取リール211に巻き取られる。インクリボンRは、供給リール212と巻取リール211とが一体化しカセット式に構成されている。インクリボンRは、例えばイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色の昇華性染料および熱可塑性樹脂で形成されたY,M,Cの染料領域を有する。さらに、同じ熱可塑性樹脂で形成された保護層領域(オーバーコート層領域)を有する。
【0029】
それらY、M、Cの占領領域と保護層領域とが、一定の間隔で供給リール212の繰り出し方向である長手方向に繰り返し形成されている。そして、Y,M,Cの染料領域および保護層領域を一組として、一枚の画像を印刷するようになっている。フォトプリンタ制御部201は、巻取リール211を駆動してインクリボンRを巻き取る。インクリボンRは供給リール212から巻取リール211へ一方向に移動する。
【0030】
また、フォトプリンタ制御部201は、上流側の搬送ロール216および下流側の搬送ロール217の駆動を制御する。さらに、サーマルヘッド214に対するプラテンロール215の圧接および解除を制御する。プラテンロール215は、サーマルヘッド214に対向する位置に設けられ、搬送されるロール紙Pを支持する従動ローラである。
【0031】
フォトプリンタ制御部201は、ホルダ213に装着されたロール紙Pをホルダ213から繰り出し、サーマルヘッド214とプラテンロール215との間を通過させてロール紙Pへ画像の印刷を行い、下流側の搬送ロール217を通過して排出されるように制御する。印刷を行う際、フォトプリンタ制御部201は、ロール紙Pを単に下流側へ搬送するだけでなく、ロール紙Pを上流側へ巻取る制御も行う。
搬送ロール217の後には、ロール紙Pを裁断するためのカッター218が備えられている。フォトプリンタ制御部201は、カッター218を制御し、所定の位置でロール紙Pを裁断してカットシートPaとして印刷されたものを出力する。
【0032】
サーマルヘッド214は、複数の発熱素子が配列されている。フォトプリンタ制御部201は、印刷すべき画像およびその階調レベルに応じて複数の発熱素子へ選択的に通電する。フォトプリンタ制御部201は、プラテンロール215を制御してサーマルヘッド214との間にインクリボンRとロール紙Pとを挟持させ、サーマルヘッド214の各発熱素子を選択的に発熱させて、発熱箇所および発熱量に対応するインクリボンRのインクをロール紙Pに転写させる。
【0033】
詳細には、フォトプリンタ制御部201は、まずロール紙Pの印刷領域とインクリボンRのY染料領域との位置合わせを行う。そのうえで、プラテンロール215をサーマルヘッド214に圧接させてロール紙PとインクリボンRを挟持させ、ロール紙Pの印刷領域にインクリボンRのイエローインクによる印刷を行う。
続いて、プラテンロール215を圧解除して搬送ロール216および217にロール紙Pの印刷領域を上流側へ巻き取らせ、ロール紙Pの印刷領域とインクリボンRのM染料領域との位置合わせを行う。そして、プラテンロール215をサーマルヘッド214に圧接させてロール紙PとインクリボンRを挟持させ、イエローインキの印刷がなされたロール紙Pの印刷領域にインクリボンRのマゼンタインクによる印刷を行う。
【0034】
さらに、プラテンロール215を圧解除して搬送ロール216および217にロール紙Pを上流側へ巻取らせ、インクリボンRのC染料領域との位置合わせを行う。そのうえで、プラテンロール215をサーマルヘッド214に圧接させてロール紙PとインクリボンRを挟持させ、イエローおよびマゼンタの印刷がなされたロール紙Pの印刷領域にインクリボンRのシアンインクによる印刷を行う。
【0035】
最後に、プラテンロール215を圧解除して搬送ロール216および217にロール紙Pを上流側へ巻取らせ、インクリボンRの保護層との位置合わせを行う。そのうえで、プラテンロール215をサーマルヘッド214に圧接させてロール紙PとインクリボンRを挟持させ、イエロー、マゼンタおよびシアンの印刷がなされたロール紙Pの印刷領域の全面にインクリボンRの保護層を転写させる(オーバーコート)。
【0036】
以上のようにして、フォトプリンタ制御部201は、ロール紙Pの表面とインクリボンRとの相対位置を少なくとも4度シフトさせて両者を密着させ、Y,M,Cの各染料領域を選択的にロール紙Pへ転写させてカラー画像を形成する。そして、形成されたカラー画像の全面に保護層領域のインクを転写させてオーバーコートを行う。
以上、フォトプリンタ印刷ユニットの構成について述べた。
【0037】
≪ニュートンリング現象による濃度ムラについて≫
フラットベッド型のスキャナーで表面が平滑な反射原稿を読み取る場合に生じ得るニュートンリング現象による濃度ムラについて、もう少し述べておく。
図5は、この実施形態において、スキャナーユニット13のプラテンガラス33の上に置かれた原稿31にプラテンガラス33の下方から光を照射して読み取られる読み取り画像37を示す説明図である。原稿31およびプラテンガラス33は、水平断面を示している。図5に示す例で、原稿31は、フォトプリンタ200で印刷された写真画像としている。即ち、原稿31は、平滑なフォトペーパー31aの表面にYMCインク層31bによる画像が形成されている。さらに、YMCインク層31bの表面を覆うように透明な保護層31cが形成されている。
【0038】
図5は、原稿31の表面の保護層31cが柔らかいために、プラテンガラス33との接触する一部の領域が変形して平坦化した状態を示している。平坦化した領域を密着領域35で示している。それに対して、密着領域35の周辺では、プラテンガラス33と保護層31cの表面の間にわずかな空隙が存在する。
プラテンガラス33と空気や保護層31cとは光の屈折率が異なる。異なる屈折率を有する媒質の境界では、固定端反射と自由端反射が起こる。図5において、空気よりも屈折率の大きなプラテンガラスの上端面で生じる自由端反射をBで示し、それに対して原稿面で起こる固定端反射をAで示している。
【0039】
密着領域35では、原稿31を読み取る際の照射光が正反射を起こす。固定端反射と自由端反射とは互いに逆位相となるために相殺されて反射光量が減衰する。そのため、密着領域35では、反射光量を読み取って得られる読み取り画像37の濃度が濃くなり、密着領域35に対応する高濃度領域39が生じる。
一方、密着領域35の周辺では、プラテンガラス33の上端面と原稿31との間の空隙の距離が波長の整数倍の箇所のみ固定端反射と自由端反射とが相殺されるが、原稿31の表面に微細な凹凸があること、照射光が単一波長でないことから特定の箇所で固定端反射と自由端反射とが相殺される現象が生じにくい。よって、密着領域35以外の領域に高濃度領域39が生じない。
以上が、表面が平滑な原稿を読み取るとニュートンリング現象によって濃度ムラや色ムラが生じ得ることについての原理的な説明である。
【0040】
≪キャリブレーション用テストパターンの印刷制御≫
フォトペーパーに印刷された写真画像の原稿31は、平滑な表面に柔らかい保護層31cが形成される。上述のように、フラットベッド型のスキャナーユニット13で読み取る際にニュートンリング現象による濃度や色のムラが生じることがある。
デジタルカメラが普及した今日において、スキャナーユニット13に読み取らせる原稿が、フォトペーパーに印刷された写真画像であるケースはあまり多いとは考えられない。また、フォトペーパーに印刷された写真画像をスキャンする場合であっても、プレビュー等でニュートンリング現象によるムラの有無を確認し、必要に応じて再スキャンを行う対応が可能である。
【0041】
しかし、フォトプリンタ200からキャリブレーション用テストパターンを出力し、スキャナーユニット13に読み取らせてフォトプリンタ200のキャリブレーションを行う場合、以下の点で通常の原稿のスキャンに比べてニュートンリング現象によるムラの影響を受けやすい。
第1に、テストパターンの読み取りは、フォトプリンタ200のキャリブレーションを目的としたものであって画像を得ることが目的でない。そのため、オペレータがわざわざ読み取り画像をプレビューすることは通常行わない。
第2に、キャリブレーションを行う際は通常、フォトプリンタ200で印刷したテストパターンを、即座にスキャナーに読み取らせる。そために、テストパターン表面の保護層31cは、ほとんど傷付かずに平滑で柔らかな状態である。
【0042】
キャリブレーション用のテストパターンの読み取り画像にニュートンリング現象によるムラが生じた場合(例えば、図6参照)、そのムラの影響は単にその読み取り画像に留まらない。そのキャリブレーションの結果を反映して印刷される、フォトプリンタ200による印刷物のすべてに影響する。
その観点から、キャリブレーション用のテストパターンについては、通常の写真画像を印刷し読み取る場合より一層、ニュートンリング現象によって読み取り画像にムラが生じることのないようにする配慮が求められる。
【0043】
そこで、この実施形態においては、フォトプリンタ200のキャリブレーション用にテストパターンを印刷する場合に限り、基本的に保護層31cを形成しないように制御する。
そもそも保護層31cを形成するのは、それによってYMCインク層31bの耐候性能をより向上させるためである。即ち、保護層31cを形成することによって、水分や油分が表面からYMCインク層31bへ浸透したり、ガスや紫外線が直接照射されたりするのを抑制する。それによって、YMCインク層31bの特に色材である染料の退色、変色を抑制する。例えば、染料の加水分解による退色、化学変化による変色や退色、昇華による退色、紫外線分解による退色などを抑制し、長期保存に耐えるようにすると共に、汚れを防ぐ役割も担っている。
【0044】
キャリブレーションの際は通常、フォトプリンタ200で印刷したテストパターンを即座にスキャナーに読み取らせるので、長期保存性は重要でない。
また、保護層31cは、光学的にはその有無による違いが生じないように、できるだけ無色透明になるように設計されている。従って、テストパターンの保護層31cの有無がキャリブレーションに与える影響はないといえる。
図7Aおよび図7Bは、この実施形態において、サービス制御部111がフォトプリンタ200に印刷させる通常の印刷出力とキャリブレーション用のテストパターンをそれぞれ示す説明図である。
【0045】
図7Aに示すようにフォトプリンタ200の通常印刷出力41は、フォトペーパー41aの表面にYMCインク層41bで画像が印刷され、さらにそのYMCインク層41bの上に保護層41cが形成されてYMCインク層41bをオーバーコートしている。フォトプリンタ印刷ユニットの構成について上述した制御によって、通常印刷出力41の印刷を行う。
それに対してキャリブレーション用のテストパターン印刷出力43は、図7Bに示すようにフォトペーパー43aの表面にYMCインク層43bでテストパターンが印刷されるが、その上に保護層がオーバーコートされない。
【0046】
サービス制御部111は、サービス操作ユニット112が受付けたサービスの要求が、通常のフォトプリンタ200による印刷のサービスの場合は、印刷すべき画像のデータと共にフォトプリンタ200のフォトプリンタ制御部201に印刷を指示する。
サービス制御部111から指示を受けたフォトプリンタ制御部201は、付加された画像のデータに基づいて、図7Aに示すように、保護層41cを形成する通常の印刷を行う。
【0047】
一方、サービス制御部111は、サービス操作ユニット112が受付けたサービスの要求が、フォトプリンタ200のキャリブレーションに係るテストパターンの印刷要求である場合は、フォトプリンタ制御部201にキャリブレーションの指示を送る。サービス制御部111から指示を受けたフォトプリンタ制御部201は、フォトプリンタデータ格納ユニット205に格納されたテストパターンのデータに基づいて、図7Bに示すように、テストパターンを印刷する。テストパターンを印刷する場合は保護層41cを形成しない。
【0048】
なお、図7Bに示す例では、印刷媒体であるフォトペーパー43aの全域に保護層を形成していないが、少なくともテストパターンが印刷される領域に保護層を形成しないようにすればよい。
なお、図7Aに示すように、昇華型プリンタでYMCインク層41bのうえに保護層41cを形成するオーバーコート処理の場合、一般に保護層41cの形成にはYMCインク層41bの形成よりも大きな熱量を必要とする。そのため、保護層41cを形成する際にはYMCインク層41bを形成する際に比べてフォトペーパー43aの搬送速度を落としている。レイアウトにもよるが、テストパターン部分以外の領域にオーバーコート処理しないことで印刷の高速化を図ることができる。
【0049】
印刷されたテストパターン印刷出力43を、オペレータが複合機101のスキャナーユニット13のプラテンガラス(図2に不図示)の所定位置にセットし、サービス操作ユニット112に対して所定の操作を行うものとする。その操作に応答して、サービス制御部111は、スキャナーユニット13にセットされたテストパターン印刷出力43を読み取ってテストパターンに対応する所定の箇所の読み取り値を提供するように複合機制御部11に指示する。
指示に従って、複合機制御部11は、プラテンガラスにセットされたテストパターン印刷出力43を読み取って、テストパターンに対応する所定の箇所の読み取り値を提供する。サービス制御部111は、提供された読み取り値に基づいてフォトプリンタ200の色調および階調に係る特性を目標に近づけるように、フォトプリンタ制御部201に補正を実行させる。
【0050】
(実施の形態2)
サービス制御部111は、凹凸が印刷面に形成されたフォトペーパーにテストパターンを印刷させる場合は、保護層を形成させないようにするが、光沢をもたせるために表面が平滑に仕上げられたフォトペーパーにテストパターンを印刷させる場合は、部分的な保護層を形成してもよい。なお、印刷面に形成される凹凸は、例えば、ツヤ消しのためである。
図8Aは、凹凸が形成されたフォトペーパー45aの表面にYMCインク層45bでテストパターンを印刷したテストパターン印刷出力45の例を示す説明図である。保護層を形成しないことによってフォトペーパー45aの表面に形成された凹凸が残されている。
【0051】
図8Aに示すテストパターン印刷出力45をスキャナーユニット13のプラテンに置いた場合、表面に残されたフォトペーパー75aの凹凸によってプラテンガラスとの間に空隙が確保され、ニュートンリング現象によるムラが発生しにくい。
また、図8Bは、光沢をもたせるため表面が平滑に仕上げられたフォトペーパーに47aの表面にYMCインク層47bでテストパターンを印刷したテストパターン印刷出力47の例を示す説明図である。図8Bに示す例の場合、サーマルヘッド214の発熱素子への通電を場所によって断続的に変化させることで、複数の局所的な保護層47cを形成すし、表面に保護層47cの凹凸を形成している。図8Bに示すテストパターン印刷出力47は、フォトペーパー47aの断面を示しているが、形成された保護層47cが奥行き方向に並んだ縞状の保護層47cを形成してもよいし、市松模様の保護層47cを形成してもよい。
【0052】
さらに、図8Bに示す例では、保護層47cが厚く形成される箇所と薄く形成される箇所が混在しているが、局所的に保護層47cを形成し、保護層が形成される箇所と形成されない箇所を配置することで保護層47cの表面に凹凸を形成してもよい。
図8Bに示すテストパターン印刷出力47をスキャナーユニット13のプラテンに置いた場合、保護層47cの凹凸によってプラテンガラスとの間に空隙が確保される。表面が平滑なフォトペーパー47aであっても、ニュートンリング現象によるムラが発生しにくい。
なお、図8Bに示す例では、印刷媒体であるフォトペーパー43aの全域に渡って凹凸のある保護層47cを形成しているが、少なくともテストパターンが印刷される領域に凹凸のある保護層を形成すればよい。
【0053】
(実施の形態3)
この実施形態では、キャリブレーション用のテストパターンをスキャナーユニット13で読み取った場合に、例えば図6に示すようにニュートンリング現象によるムラが部分的に生じて高濃度領域39が存在する場合、高濃度領域39に対応する読み取り値を採用せずにキャリブレーションを行う。テストパターンは通常、インクリボンRに対応するY,M,C各色の階調パッチで構成されるパターンである。階調パッチに対応する読み取り値は、階調パッチの濃度順に並ぶはずであるが、何れかの箇所に高濃度領域39が存在すると、隣接する濃度のパッチに対して読み取り値が逆転したり、逆転しなくとも濃度の差分が不自然な値になったりする。
【0054】
均一な濃度であるべきパッチの領域に不自然な差ができた場合は、そのパッチの領域の一部に高濃度領域39が存在すると判断できる。よって、高濃度領域39の領域外と判断される部分の読み取り値のみを採用すればよい。
ある濃度のパッチ領域のすべてが高濃度領域39に属する場合は、隣接パッチの読み取り値との関係が上述のように不自然になるので、高濃度領域39が存在すると判断できる。その場合は、高濃度領域39に属するパッチ領域を採用せず、隣接パッチの読み取り値で補完するようにしてもよい。
【0055】
(実施の形態4)
実施の形態1では、印刷システムとしての構成態様を述べたが、即ち、図1に示すように、複合機101とサービスユニット110を備えるシステムの態様である。
異なる態様として、フォトプリンタとスキャナーが1つの装置として構成されてもよい。即ち、複合機として構成されてもよい。
フォトプリンタは、図1に示すフォトプリンタ印刷ユニット204と同様の機能を有する。スキャナーは、図1に示すスキャナーユニット13と同様の機能を有する。それらを制御する制御部は、図1に示すサービス制御部111、フォトプリンタ制御部201および複合機制御部11が統合されたものに該当する。
【0056】
以上に述べたように、
(i)この発明による印刷システムは、印刷装置と画像読み取り装置を備え、前記印刷装置は、印刷媒体の表面にインク層によるパターンを形成させ、形成されたインク層の上に透明な保護層を形成させる印刷ユニットと、前記印刷ユニットを用いて、キャリブレーション用のテストパターンおよび画像パターンを形成する制御部とを備え、前記画像読み取り装置は、形成されたテストパターンを光学的に読み取る画像読み取りユニットを備え、前記制御部は、前記画像パターンを形成する場合はその画像パターンを覆う保護層を形成し、前記テストパターンを形成する場合は、少なくとも前記テストパターンを形成する領域に保護層を形成しないかまたは少なくとも前記テストパターンを形成する領域に前記画像パターンを覆う保護層よりも不均一な保護層を形成するように制御することを特徴とする。
【0057】
印刷媒体は、表面に印刷が行われる媒体である。その具体的な態様は、例えば、印刷用紙である。前述の実施形態におけるロール紙およびフォトペーパーは、この発明の印刷媒体に相当する。
また、画像読み取りユニットは、原稿の画像を読み取るものである。その具体的な態様は、例えば、スキャナーである。前述の実施形態におけるスキャナーユニットは、この発明の画像読み取りユニットに相当する。
さらにまた、制御部は、例えばCPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等のプロセッサおよびメモリーを中心に構成される。制御部は、メモリーに予め格納された制御プログラムを読み出して、処理を実行する。
【0058】
上述の実施形態におけるフォトプリンタは、この発明の印刷装置に相当し、複合機は、この発明における画像読み取り装置に相当する。上述の実施形態におけるサービス制御部は、この発明における制御部に相当する。ただし、サービス制御部、フォトプリンタ制御部および複合機制御部は協働して処理を行うところ、異なる態様としてフォトプリンタ制御部および/または複合機制御部の少なくとも一部がさらに制御部に相当してもよい。また、サービス制御部、フォトプリンタ制御部および複合機制御部の少なくとも何れかが統合された態様もあり得るところ、統合された態様がこの発明の制御部に相当してもよい。
【0059】
さらに、この発明の好ましい態様について説明する。
(ii)前記印刷媒体が、凹凸が印刷面に形成されたものであり、前記制御部は、前記テストパターンを形成する場合は保護層を形成しないように制御してもよい。
このようにすれば、テストパターンを形成する場合は保護層を形成しないことによって印刷媒体に形成された表面の凹凸を残し、ニュートンリング現象のために読み取り結果に濃度ムラが生じるのを残された凹凸によって抑制できる。
【0060】
(iii)前記印刷媒体が、光沢を持たせるために平滑処理されたものであり、前記制御部は、前記画像パターンを形成する場合は均一な保護層を形成し、前記テストパターンを形成する場合は部分的な保護層を形成するか、または部分的に異なる厚さの層が並ぶ不均一な保護層を形成するように制御してもよい。
このようにすれば、平滑処理された印刷媒体であっても、部分的な保護層を形成するか、または部分的に異なる厚さの層が並ぶ不均一な保護層を形成することによって保護層に凹凸を持たせ、ニュートンリング現象のために読み取り結果に濃度ムラが生じるのを保護層の凹凸によって抑制できる。
【0061】
(iv)前記制御部は、前記画像読み取りユニットが読み取った前記テストパターンのうち均一な濃度のパターンであるべき領域に濃度のムラがあると判断した場合、そのムラの濃い部分の読み取り値を採用せずにキャリブレーションを行うようにしてもよい。
このようにすれば、ニュートンリング現象により、均一な濃度のパターンであるべき領域に濃いムラの部分ができた場合でも、その部分を読み取り値として採用しないことによってニュートンリング現象がキャリブレーションの結果に与える影響を抑制できる。
【0062】
(v)この発明の一態様は、印刷媒体の表面にインク層によるパターンを形成させ、形成されたインク層の上に透明な保護層を形成させる印刷ユニットと、前記印刷ユニットを用いて、キャリブレーション用のテストパターンおよび画像パターンを形成する制御部と、形成されたテストパターンを光学的に読み取る画像読み取りユニットとを備え、前記制御部は、前記画像パターンを形成する場合はその画像パターンを覆う保護層を形成し、前記テストパターンを形成する場合は、少なくとも前記テストパターンを形成する領域に保護層を形成しないかまたは少なくとも前記テストパターンを形成する領域に前記画像パターンを覆う保護層よりも不均一な保護層を形成するように制御する印刷装置を含む。
【0063】
(vi)前記印刷媒体は、凹凸が印刷面に形成されたものであり、前記制御部は、前記テストパターンを形成する場合は保護層を形成しないように制御してもよい。
このようにすれば、テストパターンを形成する場合は保護層を形成しないことによって印刷媒体に形成された表面の凹凸を残し、ニュートンリング現象のために読み取り結果に濃度ムラが生じるのを残された凹凸によって抑制できる。
【0064】
(vii)前記印刷媒体は、光沢を持たせるために平滑処理されたものであり、前記制御部は、前記画像パターンを形成する場合は均一な保護層を形成し、前記テストパターンを形成する場合は部分的な保護層を形成するか、または部分的に異なる厚さの層が並ぶ不均一な保護層を形成するように制御してもよい。
このようにすれば、平滑処理された印刷媒体であっても、部分的な保護層を形成するか、または部分的に異なる厚さの層が並ぶ不均一な保護層を形成することによって保護層に凹凸を持たせ、ニュートンリング現象のために読み取り結果に濃度ムラが生じるのを保護層の凹凸によって抑制できる。
【0065】
(viii)この発明の一態様は、キャリブレーション用のテストパターンおよび画像パターンを形成する印刷装置の制御部が、印刷ユニットを用いて、印刷媒体の表面にインク層によるパターンを形成するステップと、形成された記インク層の上に透明の保護層を形成するステップと、画像読み取りユニットを用いて、形成されたテストパターンを光学的に読み取るステップとを備え、前記制御部は、前記画像パターンを形成する場合はその画像パターンを覆う保護層を形成し、前記テストパターンを形成する場合は、少なくとも前記テストパターンを形成する領域に保護層を形成しないかまたは少なくとも前記テストパターンを形成する領域に前記画像パターンを覆う保護層よりも不均一な保護層を形成するように制御するテストパターンの印刷方法を含む。
【0066】
(ix)前記印刷媒体の印刷面が平滑処理されたものか凹凸が形成されたものかの選択を受付けるステップをさらに備え、前記制御部は、印刷面に凹凸が形成された印刷媒体に前記テストパターンを形成する場合は保護層を形成しないように制御してもよい。
このようにすれば、テストパターンを形成する場合は保護層を形成しないことによって印刷媒体に形成された表面の凹凸を残し、ニュートンリング現象のために読み取り結果に濃度ムラが生じるのを残された凹凸によって抑制できる。
【0067】
(x)前記印刷媒体の印刷面が平滑処理されたものか凹凸が形成されたものかの選択を受付けるステップをさらに備え、前記制御部は、印刷面が平滑処理された印刷媒体に前記画像パターンを形成する場合は均一な保護層を形成し、前記テストパターンを形成する場合は部分的な保護層を形成するか、または部分的に異なる厚さの層が並ぶ不均一な保護層を形成するように制御してもよい。
このようにすれば、平滑処理された印刷媒体であっても、部分的な保護層を形成するか、または部分的に異なる厚さの層が並ぶ不均一な保護層を形成することによって保護層に凹凸を持たせ、ニュートンリング現象のために読み取り結果に濃度ムラが生じるのを保護層の凹凸によって抑制できる。
【0068】
この発明の態様には、上述した複数の態様のうちの何れかを組み合わせたものも含まれる。
前述した実施の形態の他にも、この発明について種々の変形例があり得る。それらの変形例は、この発明の範囲に属さないと解されるべきものではない。この発明には、請求の範囲と均等の意味および前記範囲内でのすべての変形とが含まれるべきである。
【符号の説明】
【0069】
11:複合機制御部、 12:複合機操作ユニット、 13:スキャナーユニット、 14:複合機印刷ユニット、 15:複合機データ格納ユニット、 16:複合機通信インターフェース回路
20:光源、 21:第1走査ユニット、 22:第2走査ユニット、 23:結像レンズ、 24:ラインイメージセンサー
31:原稿、 31a,41a,43a,45a,47a:フォトペーパー、 31b,41b,43b,45b,47b:YMCインク層、 31c,41c,47c:保護層、 33:プラテンガラス、 35:密着領域、 37:読み取り画像、 39:高濃度領域、 41:通常印刷出力、 43,45,47:テストパターン印刷出力
100:画像形成システム、 101:複合機、 110:サービスユニット、 111:サービス制御部、 112:サービス操作ユニット、 113:コードリーダ、 114:コインベンダー、 115:領収証プリンタ、 116:サービスユニット通信インターフェース回路、 150:フォト排出口、 151:レシート排出口
200:フォトプリンタ、 201:フォトプリンタ制御部、 204:フォトプリンタ印刷ユニット、 205:フォトプリンタデータ格納ユニット、 211:巻取リール、 212:供給リール、 213:ホルダ、 214:サーマルヘッド、 215:プラテンロール、 216,217:搬送ロール、 218:カッター
P:ロール紙、 Pa:カットシート、 R:インクリボン
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B