(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】配線基板
(51)【国際特許分類】
H05K 3/34 20060101AFI20240523BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20240523BHJP
H01L 23/13 20060101ALI20240523BHJP
H05K 1/18 20060101ALN20240523BHJP
【FI】
H05K3/34 501E
H05K1/02 A
H01L23/12 C
H05K1/18 L
(21)【出願番号】P 2020208261
(22)【出願日】2020-12-16
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142745
【氏名又は名称】伊藤 世子
(74)【代理人】
【識別番号】100136319
【氏名又は名称】北原 宏修
(74)【代理人】
【識別番号】100148275
【氏名又は名称】山内 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100143498
【氏名又は名称】中西 健
(72)【発明者】
【氏名】西田 智弘
(72)【発明者】
【氏名】半戸 琢也
【審査官】小南 奈都子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-283555(JP,A)
【文献】国際公開第2018/216597(WO,A1)
【文献】特開2017-174952(JP,A)
【文献】特開2007-073617(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/34
H05K 1/02
H01L 23/13
H05K 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子が搭載される素子搭載予定部を有している配線基板であって、
絶縁性の基材と、
少なくとも頂面が露出した状態で、前記基材上に配置されている少なくとも一つの金属突起部と
を備え、
前記金属突起部の少なくとも底部側には、前記金属突起部の外周を覆うように絶縁性の側壁が設けられており、
前記基材と前記側壁とは、一体となって
おり、
前記基材の表面から前記金属突起部の前記頂面までの高さは、前記基材の表面から前記側壁の頂点までの高さ以上となっている、配線基板。
【請求項2】
前記側壁は、基板の厚み方向に沿った断面視で、前記基材に至るまで裾広がりに傾斜した傾斜部を有している、請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
複数の前記金属突起部を有し、
少なくとも1組の隣り合う2つの前記側壁は、それぞれの前記傾斜部が隣接するように設けられている、請求項2に記載の配線基板。
【請求項4】
前記金属突起部の一部は、前記基材内に埋め込まれている、請求項1から3の何れか1項に記載の配線基板。
【請求項5】
前記金属突起部は、基板の厚み方向に沿った断面視で傾斜した形状を有している、請求項1から4の何れか1項に記載の配線基板。
【請求項6】
前記基材および前記側壁は、セラミックで形成されている、請求項1から5の何れか1項に記載の配線基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子が搭載される素子搭載予定部を有している配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路などを搭載した半導体チップは、例えば、スイッチング素子、抵抗、コンデンサなどの様々な半導体素子で構成されている。この半導体チップは、例えば、セラミック、ガラスなどの非導電性材料で形成されている絶縁基板上に搭載され、モジュール化された配線基板を構成する。半導体チップが搭載される絶縁基板は、非導電性材料で形成されている絶縁基材、並びに、この絶縁基材上に金属などの導電性材料を用いて形成されている素子搭載用の接続パッド(素子搭載予定部とも呼ばれる)および配線などを備えている。
【0003】
特許文献1には、ビア導体および配線パターンを有するガラスセラミック基板が開示されている。このガラスセラミック基板では、基板1のガラスセラミック部をエッチングしてビア導体2を表面から突出させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
絶縁基板上に導電性の接続パッドなどを形成する場合には、例えば、特許文献1に開示されているように、絶縁基板の表面から接続パッドを突出させる構造が提案されている。これにより、絶縁基板に搭載される半導体チップなどと接続パッドとの接続が行いやすくなるという利点がある。
【0006】
しかしながら、絶縁基板の表面から接続パッドおよび配線パターンなどを突出させた形状とすることで、突出部分が絶縁基板から剥がれたり、突出部分が欠けたりしやすくなる。
【0007】
そこで、本発明では、基板上に突出した形状を有する金属部の剥がれおよび欠損を抑制することのできる配線基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一局面にかかる配線基板は、半導体素子が搭載される素子搭載予定部を有している。この配線基板は、絶縁性の基材と、少なくとも頂面が露出した状態で、前記基材上に配置されている少なくとも一つの金属突起部とを備えている。前記金属突起部の少なくとも底部側には、前記金属突起部の外周を覆うように絶縁性の側壁が設けられており、前記基材と前記側壁とは、一体となっている。
【0009】
上記の構成によれば、絶縁性の基材と一体となった側壁が設けられていることで、基材上に突出した状態で設けられている金属突起部を、基材に対して強固に接合させることができる。そのため、金属突起部の剥がれを抑制することができる。また、金属突起部の少なくとも底部側の外周が、絶縁性の側壁で覆われていることで、金属突起部を保護することができる。そのため、金属突起部の欠損を抑制することができる。
【0010】
上記の本発明の一局面にかかる配線基板において、前記側壁は、基板の厚み方向に沿った断面視で、前記基材に至るまで裾広がりに傾斜した傾斜部を有していてもよい。
【0011】
上記の構成によれば、絶縁性の基材の表面と側壁との接合部において側壁の厚みが増すため、金属突起部を基材に対して、より強固に固定させることができる。したがって、絶縁性の基材から金属突起部が脱落することをより確実に抑えることができる。
【0012】
上記の本発明の一局面にかかる配線基板は、複数の前記金属突起部を有し、少なくとも1組の隣り合う2つの前記側壁は、それぞれの前記傾斜部が隣接するように設けられていてもよい。
【0013】
上記の構成によれば、絶縁性の基材の表面から側壁の頂点までの高さをより高くすることができる。また、隣接する側壁同士の隙間に樹脂材料などが充填されることで、金属突起部を補強することができるため、より機械的強度の高い半導体パッケージを得ることができる。
【0014】
上記の本発明の一局面にかかる配線基板において、前記金属突起部の一部は、前記基材内に埋め込まれていてもよい。この構成によれば、金属突起部をより強固に絶縁性基材に接合固定させることができる。
【0015】
上記の本発明の一局面にかかる配線基板において、前記金属突起部は、基板の厚み方向に沿った断面視で傾斜した形状を有していてもよい。
【0016】
上記の構成によれば、基板の厚み方向に沿って径が一定の柱状の金属突起部と比較して、金属突起部の頂部側または底部側において金属突起部の外周を覆う側壁の厚みを大きくすることができる。なお、金属突起部における傾斜の方向は、配線基板上に設けられる金属突起部の用途などに応じて適宜決めればよい。
【0017】
上記の本発明の一局面にかかる配線基板において、前記基材および前記側壁は、セラミックで形成されていてもよい。この構成によれば、機械的強度、および耐熱性などに優れた配線基板を得ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一局面にかかる配線基板によれば、基板上に突出した形状を有する金属突起部の剥がれおよび欠損を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1の実施形態にかかる配線基板の構成を示す断面模式図である。
【
図2】第1の実施形態にかかる配線基板に形成されている接続パッドの構成を示す斜視図である。
【
図3】第1の実施形態にかかる配線基板に形成されている配線部の構成を示す斜視図である。
【
図4】
図1に示す配線基板に半導体チップが搭載された半導体モジュールの構成を示す断面模式図である。
【
図5】第1の実施形態にかかる配線基板の製造工程を示す模式図である。
【
図6】第2の実施形態にかかる配線基板の一部分の構成を示す平面図である。
【
図7】
図6に示す配線基板の内部構成を示す断面模式図である。
【
図8】第3の実施形態にかかる配線基板に形成されている接続パッドの内部構成を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0021】
〔第1の実施形態〕
本実施形態では、本発明にかかる配線基板の一例として、配線基板1を例に挙げて説明する。この配線基板1には、半導体チップ(半導体素子)40が搭載され、半導体モジュール50を構成する。
【0022】
(配線基板および半導体モジュールの構成)
図1には、配線基板1の断面構造を模式的に示す。
図2および
図3には、配線基板1の一部分の表面の構成を示す。
図2では、複数の接続パッド21が設けられている配線基板1の表面10bの構成を示す。
図3では、複数の配線部22が設けられている配線基板1の表面10bの構成を示す。本実施形態では、便宜上、略平板状の配線基板1において半導体チップ40が搭載される側の面を表面とし、その反対側の面を裏面とする。但し、配線基板1の表面および裏面の定義はこれに限定はされず、任意に決めることができる。
【0023】
配線基板1は、主として、セラミック基材(絶縁性の基材)10、接続パッド21、配線部22、および導電性ビア23などを備えている。
【0024】
セラミック基材10は、配線基板1の土台となる部材である。本実施形態では、セラミック基材10は、中央に凹部10aを有している。凹部10aの上方には、半導体チップ40が配置される。すなわち、凹部10aの上方は、半導体チップ40などの半導体素子が搭載される素子搭載予定部40aとなっている。凹部10aの周囲には、外周壁11が設けられている。凹部10aの底面部には、所定形状の導電性パターンが形成されており、接続パッド21および配線部22などを形成している。本実施形態では、凹部10aの底面部をセラミック基材10の表面10bと呼ぶ。
【0025】
セラミック基材10は、複数のセラミックシートを積層して形成されている。セラミックシートは、例えば、アルミナ(Al2O3)を主成分とする高温焼成セラミックで形成することができる。また、別の実施態様では、セラミックシートは、ガラス-セラミックなどの中温焼成セラミック(MTCC)、または低温焼成セラミック(LTCC)で形成されていてもよい。
【0026】
なお、別の実施形態では、セラミック基材10は、1枚のセラミックシートで形成されていてもよい。
【0027】
接続パッド21および配線部22は、セラミック基材10の表面10bに設けられている。
図2には、セラミック基材10の表面10bに、複数の接続パッド21が並んで配置されている状態を示している。
図3には、セラミック基材10の表面10bに、複数の配線部22が並んで配置されている状態を示している。なお、配線基板1における接続パッド21および配線部22の配置の仕方は、
図2および
図3に示す例に限定はされない。配線基板1の仕様および用途などに応じて、接続パッド21および配線部22の配置方法は、適宜変更される。
【0028】
接続パッド21は、配線基板1に搭載される半導体チップ40の接続端子41と電気的に接続される(
図4参照)。すなわち、接続パッド21は、配線基板1における素子搭載予定部となり得る。
図2に示すように、接続パッド21は、セラミック基材10の表面10bから突出するように設けられている。
図1に示すように、接続パッド21は、主として、導電性の金属突起部31と、絶縁性の側壁12とで形成されている。
【0029】
接続パッド21の一部または全ては、導電性ビア23と接続されている。
図1に示すように、導電性ビア23と接続されている接続パッド21は、その金属突起部31が、導電性ビア23を構成する金属部33の上方に配置されている。
【0030】
導電性ビア23は、セラミック基材10の内部を貫通するように設けられている。導電性ビア23は、配線基板1の表面側に形成されている接続パッド21と、配線基板1の裏面側に形成されている接続パッド(図示せず)とを電気的に接続する。導電性ビア23は、セラミック基材10内に埋め込まれている金属部33で主に形成されている。金属部33は、金属突起部31と同様に、導電性の材料で形成されている。金属部33は、接続パッド21の金属突起部31と一体的に形成されていてもよい。
【0031】
配線部22は、配線基板1上に張り巡らされており、配線基板1内の各素子に電気信号を伝達する。また、配線部22の一部は、配線基板1に搭載される半導体チップ40の接続端子41との間で電気的に接続されてもよい(
図4参照)。
図3に示すように、配線部22は、セラミック基材10の表面10bから突出するように設けられている。
図1に示すように、配線部22は、主として、導電性の金属突起部32と、絶縁性の側壁13とで形成されている。
【0032】
なお、
図1には図示されていないが、セラミック基材10の内部にも配線が形成されていてもよい。セラミック基材10の内部に形成されている内層配線は、図示しない導電性ビアなどによって、セラミック基材10の表面10bに配置されている配線部22と電気的に接続されていてもよい。
【0033】
金属突起部31および32は、例えば、銅(Cu)、タングステン(W)、銀(Ag)、またはモリブデン(Mo)などの金属材料、あるいはこれらの金属材料を主成分とする合金材料によって形成することができる。
【0034】
金属部33も、金属突起部31および32と同様の材料で形成することができる。
【0035】
金属突起部31および32、並びに金属部33は、例えば、印刷ペーストによるメタライズ法、基板に開口部を形成して導電性ペーストを埋め込む方法、パターン状の金属層を転写する方法などの従来公知の方法を用いて、形成することができる。これにより、セラミック基材10内に所定のパターン形状を有する金属突起部31および32、並びに金属部33を形成することができる。そして、後述するように、金属突起部31および32などが形成されたセラミック基材10の表面をレーザー処理することによって、
図1に示すように、金属突起部31および32の少なくとも一部を、セラミック基材10の表面10bから突出させることができる。
【0036】
絶縁性の側壁12は、金属突起部31の外周を覆うように設けられている。側壁12は、セラミック基材10の表面10bから盛り上がるように形成されている。また、側壁12は、セラミック基材10の一部で形成されている。すなわち、側壁12とセラミック基材10とは、一体となっている。
【0037】
本実施形態では、側壁12は、配線基板1の厚み方向に沿った断面視で、セラミック基材10の凹部10aの底部(すなわち、表面10b)に至るまで裾広がりに傾斜した傾斜部12aを有している(
図1参照)。このように、側壁12が裾広がりの形状を有していることで、セラミック基板10の表面10bと側壁12との接合部において側壁12の外径が大きくなるため、接続パッド21をセラミック基材10の表面10bに対して、より強固に固定させることができる。
【0038】
また、本実施形態では、金属突起部31は、配線基板1の厚み方向に沿った断面視で、頂部側から底部側に径が大きくなる台形状を有している(
図1参照)。すなわち、金属突起部31の側面も、側壁12の傾斜部12aに沿うように傾斜している。これにより、頂部側から底部側にかけて径が一定の柱状の金属突起部と比較して、金属突起部31の頂部側において、金属突起部31の外周を覆う側壁12の厚みを確保することができる。
【0039】
絶縁性の側壁13は、金属突起部32の外周を覆うように設けられている。側壁12と同様に、側壁13は、セラミック基材10の表面10bから盛り上がるように形成されている。また、側壁13は、セラミック基材10の一部で形成されている。すなわち、側壁13とセラミック基材10とは、一体となっている。
【0040】
本実施形態では、側壁13は、配線基板1の厚み方向に沿った断面視で、セラミック基材10の凹部10aの底部(すなわち、表面10b)に至るまで裾広がりに傾斜した傾斜部13aを有している(
図1参照)。このように、側壁13が裾広がりの形状を有していることで、セラミック基板10の表面10bと側壁13との接合部において側壁13の外径が大きくなるため、配線部22をセラミック基材10の表面10bに対して、より強固に固定させることができる。
【0041】
また、本実施形態では、金属突起部32は、配線基板1の厚み方向に沿った断面視で、頂部側から底部側に径が大きくなる台形状を有している(
図1参照)。すなわち、金属突起部32の側面も、側壁13の傾斜部13aに沿うように傾斜している。これにより、頂部側から底部側にかけて径が一定の柱状の金属突起部と比較して、金属突起部32の頂部側において、金属突起部32の外周を覆う側壁13の厚みを確保することができる。
【0042】
金属突起部31の頂面31aは、セラミック基材10の側壁12に覆われておらず露出している。この露出した頂面31aには、メッキ層35が形成される(
図4参照)。なお、別の実施態様では、金属突起部31の頂面31aを含む上方部分が、セラミック基材10の側壁12に覆われていない状態であってもよい。すなわち、金属突起部31の少なくとも底部側(すなわち、表面10b側)の外周が、側壁12に覆われていればよい。
【0043】
また、金属突起部32の頂面32aは、セラミック基材10の側壁13に覆われておらず露出している。この露出した頂面32aには、メッキ層35が形成される(
図4参照)。
【0044】
メッキ層35は、例えば、Niメッキ、およびAuメッキなどを含む。メッキ層35は、単層のメッキ層で構成されていてもよいし、複数のメッキ層で構成されていてもよい。メッキ層35は、例えば、従来公知の電解めっき法などを用いて形成することができる。電解めっき法を行うことで、セラミック基材10から露出している金属部の表面(例えば、頂面31a、頂面32aなど)にメッキ被膜を形成することができる。
【0045】
上記のような構成を有する配線基板1の素子搭載予定部40aには、半導体チップ40が搭載される。これにより、半導体モジュール50が得られる。
図4には、半導体モジュール50の断面構造を模式的に示す。
【0046】
半導体モジュール50では、配線基板1上に、フリップチップ実装によって半導体チップ40が接続されている。具体的には、配線基板1の接続パッド21および配線部22などと、半導体チップ40の接続端子41とが、半田バンプ36を介して接続されている。
【0047】
配線基板1上に半導体チップ40が搭載された状態で、セラミック基材10の凹部10aには、液状の樹脂材料が流し込まれる。この樹脂材料が硬化することで、凹部10aには、樹脂51が充填された状態となる。これにより、半導体モジュール50が得られる。
【0048】
なお、接続パッド21の側壁12、および配線部22の側壁13が、裾広がりの形状を有していることで、凹部10aに樹脂材料を流し込んだときに、凹部10aの表面10bと側壁12または側壁13との境界部にも樹脂材料が流れ込みやすくなる。そのため、硬化後の樹脂51にボイド(空隙)が形成される可能性を減らすことができる。
【0049】
(配線基板の製造方法)
続いて、配線基板1の製造方法について説明する。ここでは特に、セラミック基材10の表面10bに接続パッド21および配線部22を形成する工程について説明する。この工程以外の配線基板1の製造方法については、従来公知の配線基板の製造方法が適用できる。
【0050】
図5には、セラミック基材10の表面10bに接続パッド21および配線部22を形成するための各工程を、工程順に示す。
【0051】
先ず、
図5の「1」で示す工程では、接続パッド21および配線部22を構成する金属突起部31および32が埋め込まれたセラミック基材10を準備する。
【0052】
具体的には、従来公知のパターン形成方法(例えば、フォトリソグラフィなど)を用いて、セラミックシートに、所定形状の金属突起部31および32を形成する。また、別のセラミックシートに、導電性ビア23となる金属部33、および内層配線となる金属部を所定形状に形成する。なお、各セラミックシートに形成される金属突起部31および32の大きさを適宜変更することで、
図5に示すように断面視で台形状を有する金属突起部31および32を得ることができる。
【0053】
このようにして得られた複数のセラミックシートは、その後、決められた順序で積層される。このとき、上方に積層されるセラミックシートには、凹部10aを形成するために、中央に開口部が設けられている。これにより、凹部10aおよび外周壁11を有するセラミックシートの積層体を得ることができる。その後、得られたセラミックシートの積層体を焼成し、セラミック基材10が得られる。
【0054】
なお、セラミック基材10が1枚のセラミックシートで構成される場合には、所定形状の金属突起部31および32が形成された1枚のセラミックシートを焼成して、セラミック基材10を形成する。
【0055】
続いて、
図5の「2」で示す工程を行う。この工程では、セラミック基材10の凹部10aの底面に対してレーザー処理を行う。具体的には、セラミック基材10上で、加工用のレーザー光LをX方向およびY方向に走査しながら照射する。ここで、用いられるレーザー光としては、例えば、超短パルスレーザー、エキシマレーザー、UV固体レーザー、ファイバーレーザー、YAGレーザー、CO
2レーザーなどが挙げられる。
【0056】
このようなレーザー処理を行うことで、セラミック基材10の凹部10aの底面では、主としてセラミック基材10が削られる一方、金属突起部31および32についてはあまり削られることなく残される。これにより、金属突起部31および32と、その周囲に位置するセラミック基材10の一部とが突出し、その他の部分が凹んだ形状のセラミック基材10が得られる。
【0057】
例えば、複数の金属突起部31が並んで配置されているセラミック基材10では、
図2に示すように、表面10bから接続パッド21が突出した状態となる。この状態では、金属突起部31の外周には、レーザー処理後に残存したセラミック基材10で形成された側壁12が形成されている。このようなセラミック基材10と一体となった側壁12が設けられていることで、接続パッド21は、セラミック基材10の表面10bに対して強固に固定され得る。したがって、セラミック基材10から剥がれにくい接続パッド21を得ることができる。
【0058】
例えば、複数の金属突起部32が並んで配置されているセラミック基材10では、
図3に示すように、表面10bから配線部22が突出した状態となる。この状態では、金属突起部32の外周には、レーザー処理後に残存したセラミック基材10で形成された側壁13が形成されている。このようなセラミック基材10と一体となった側壁13が設けられていることで、配線部22は、セラミック基材10の表面10bに対して強固に固定され得る。したがって、セラミック基材10から剥がれにくい配線部22を得ることができる。
【0059】
超短パルスレーザーを用いる場合のレーザー処理の条件は、例えば、以下の通りとすることができる。
出力:1.0W以上10W以下
周波数:200kHz
速度:500mm/秒以上2000mm/秒以下
走査回数:10回以上50回以下
送りピッチ:10μm
【0060】
このレーザー処理において、走査回数を増減させることで、セラミック基材10の表面10bから接続パッド21の頂面32aまでの高さを変化させることができる。例えば、走査回数を10回とすることで、接続パッド21の高さを約20μmとすることができる。また、走査回数を50回とすることで、接続パッド21の高さを約90μmとすることができる。また、走査回数が比較的少ない場合には、例えば、
図8に示す接続パッド221のように、金属突起部231の底面231b側の一部がセラミック基材10に埋め込まれた状態とすることができる。
【0061】
その後、
図5の「3」で示す工程を行う。この工程では、金属突起部31の頂面31aおよび金属突起部32の頂面32aにメッキ層35を形成する。メッキ層35は、例えば、従来公知の電解めっき法などを用いて形成することができる。電解めっき法を行うことで、セラミック基材10から露出している金属部の表面(例えば、頂面31a、頂面32aなど)にメッキ被膜を形成することができる。
【0062】
以上のように、本実施形態にかかる配線基板1は、レーザー処理を行うことによって、表面10bから突出した側壁12を有する接続パッド21、および、表面10bから突出した側壁13を有する配線部22を形成することができる。
【0063】
また、本実施形態にかかる配線基板1では、レーザー処理を行うことによって、接続パッド21および配線部22の露出面(すなわち、頂面31aおよび32a)、および、セラミック基材10の露出面(すなわち、表面10b、並びに側壁12および13の表面)に、粗面加工を施すことができる。
【0064】
頂面31aおよび32aに粗面加工が施されることで、メッキ層35を介して頂面31aおよび32a上に配置される半田バンプ36との接合強度を高めることができる。これにより、配線基板1上に搭載される半導体チップ40を、接続パッド21などを介してより確実に接続させることができる。
【0065】
金属突起部31の頂面31aおよび金属突起部32の頂面32aの粗さは、例えば、JIS B 0601(1994)、JIS B 0031(1994)に準拠した方法で規定することができる。
【0066】
この方法で規定される頂面31aおよび頂面32aの算術平均線粗さRaは、0.5以上1.2以下の範囲内とすることができ、0.6以上1.1以下の範囲内であることが好ましい。また、この方法で規定される頂面31aおよび頂面32aの十点平均線粗さRzは、5.5以上7.5以下の範囲内とすることができ、4.5以上6.5以下の範囲内であることが好ましい。
【0067】
また、この方法で規定される頂面31aおよび頂面32aの算術平均面粗さSaは、0.7以上1.0以下の範囲内とすることができ、0.8以上0.9以下の範囲内であることが好ましい。また、この方法で規定される頂面31aおよび頂面32aの十点平均面粗さSzは、7.0以上11.0以下の範囲内とすることができ、8.0以上10.0以下の範囲内であることが好ましい。
【0068】
セラミック基材10の露出面に粗面加工が施されることで、凹部10aに樹脂材料を流し込んだときの樹脂材料の流れ性を向上させることができる。これにより、硬化後の樹脂51にボイド(空隙)が形成される可能性を減らすことができる。
【0069】
セラミック基材10の露出面の粗さは、例えば、JIS B 0601(1994)、JIS B 0031(1994)に準拠した方法で規定することができる。
【0070】
この方法で規定されるセラミック基材10の露出面の算術平均線粗さRaは、0.4以上0.9以下の範囲内とすることができ、0.5以上0.8以下の範囲内であることが好ましい。また、この方法で規定されるセラミック基材10の露出面の十点平均線粗さRzは、2.0以上6.0以下の範囲内とすることができ、3.0以上5.0以下の範囲内であることが好ましい。
【0071】
また、この方法で規定されるセラミック基材10の露出面の算術平均面粗さSaは、0.7以上1.4以下の範囲内とすることができ、0.8以上1.3以下の範囲内であることが好ましい。また、この方法で規定されるセラミック基材10の露出面の十点平均面粗さSzは、9.0以上21.0以下の範囲内とすることができ、10.0以上20.0以下の範囲内であることが好ましい。
【0072】
(第1の実施形態のまとめ)
以上のように、本実施形態にかかる配線基板1は、半導体チップ40などの半導体素子が搭載される素子搭載予定部40aを有している。この配線基板1は、セラミック基材(絶縁性の基材)10と、セラミック基材10上に配置されている複数の金属突起部31および32とを備えている。金属突起部31は接続パッド21を形成し、金属突起部32は配線部22を形成する。金属突起部31の頂面31aおよび金属突起部32の頂面32aは、絶縁材料に覆われておらず、露出している。これらの頂面31aおよび32aには、メッキ層35が形成される。
【0073】
金属突起部31の少なくとも底部側には、金属突起部31の外周を覆うように絶縁性の側壁12が設けられている。金属突起部32の少なくとも底部側には、金属突起部32の外周を覆うように絶縁性の側壁13が設けられている。これら側壁12および13は、セラミック基材10と一体となっている。
【0074】
このような側壁12を有する接続パッド21および側壁13を有する配線部22は、例えば、金属突起部31および32が埋め込まれたセラミック基材10の表面にレーザーを照射し、セラミック基材10を部分的に削ることで形成され得る。これにより、セラミック基材10の表面10bから突出した形状を有する接続パッド21および配線部22が得られる。
【0075】
接続パッド21および配線部22をセラミック基材10の表面10bから突出した形状とすることで、配線基板1の上方に配置される半導体チップ40の接続端子41との接続を行いやすくすることができる。
【0076】
また、セラミック基材10と一体となった側壁12が設けられていることで、接続パッド21は、セラミック基材10の表面10bに対して強固に接合されることができる。また、セラミック基材10と一体となった側壁13が設けられていることで、配線部22は、セラミック基材10の表面10bに対して強固に接合されることができる。これにより、セラミック基材10の表面10bから突出するように設けられている接続パッド21および配線部22の剥がれを抑制することができる。
【0077】
また、金属突起部31および32の少なくとも底部側の外周が、絶縁性の側壁12および13で覆われていることで、金属突起部31および32を保護することができる。そのため、接続パッド21および配線部22の欠損を抑制することができる。
【0078】
なお、本実施形態では、配線基板1を構成している絶縁性の基材は、セラミックで形成されているが、絶縁性の基材はセラミックに限定はされない。配線基板1を形成する絶縁性の基材は、例えば、樹脂製であってもよい。
【0079】
〔第2の実施形態〕
続いて、第2の実施形態にかかる配線基板101について、
図6および
図7を参照しながら説明する。第2の実施形態にかかる配線基板101は、接続パッド121の構成が第1の実施形態の接続パッド21とは異なっている。それ以外の構成については、第1の実施形態と同様の構成が適用できる。
【0080】
第1の実施形態と同様に、配線基板101は、主として、セラミック基材(絶縁性の基材)10、接続パッド121、配線部22、および導電性ビア23などを備えている。セラミック基材(絶縁性の基材)10、配線部22、および導電性ビア23については、第1の実施形態と同様の構成が適用できる。
【0081】
図6には、配線基板101において、複数の接続パッド121が形成されている領域のセラミック基材10の表面10bの構成を示す。
図7には、
図6に示す配線基板101の断面構成を示す。
【0082】
図6に示すように、接続パッド121は、セラミック基材10の表面10bに、複数個並んで配置されている。接続パッド121は、接続パッド21と同様に、配線基板101に搭載される半導体チップ40の接続端子41と、半田バンプ36などを介して電気的に接続される。
図7に示すように、接続パッド121は、セラミック基材10の表面10bから突出するように設けられている。
【0083】
接続パッド121は、主として、導電性の金属突起部131と、絶縁性の側壁112とで形成されている。金属突起部131は、第1の実施形態と同様の材料で形成することができる。
【0084】
絶縁性の側壁112は、金属突起部131の外周を覆うように設けられている。側壁112は、セラミック基材10の表面10bから盛り上がるように形成されている。また、側壁112は、セラミック基材10の一部で形成されている。すなわち、側壁112とセラミック基材10とは、一体となっている。金属突起部131の頂面131aは、セラミック基材10の側壁112に覆われておらず露出している。この露出した頂面131aには、メッキ層(図示せず)が形成される。
【0085】
本実施形態では、側壁112は、配線基板101の厚み方向に沿った断面視で、セラミック基材10の表面10bに至るまで裾広がりに傾斜した傾斜部112aを有している。そして、隣り合って配置されている各接続パッド121および121における各側壁112および112は、それぞれの傾斜部112aおよび112aが隣接するように設けられている。
【0086】
隣り合って配置されている各接続パッド121および121の間には、隙間Gが設けられている。隙間Gは、その断面が略V字状の形状となっている(
図7参照)。隙間Gの最深部の位置は、例えば、セラミック基材10の表面10bと略同じ高さとすることができる。配線基板101上に半導体チップ40が搭載された状態で、この隙間Gには、樹脂51が充填される。
【0087】
このように、本実施形態では、隣り合って配置されている各接続パッド121において、隣接する2つの傾斜部112aおよび112aの間に平面が存在しないような構成となっている。上記の構成によれば、セラミック基材10の表面10bからの高さがより高い接続パッド121を形成することができる。また、隣接する各接続パッド121同士の隙間Gに樹脂51が充填されることで、接続パッド121を補強することができる。
【0088】
図7に示す例では、金属突起部131は、先端側に位置する縮径部131bと、底部側に位置する柱状部131cとを有している。
【0089】
柱状部131cは、配線基板101の厚み方向に沿った断面視で径がほぼ一定となっている。
図7では示されていないが、柱状部131cの底部側には、導電性ビア23が設けられていてもよい。このようにして、柱状部131cが導電性ビア23と電気的に接続されることで、接続パッド121と電気的に接続された半導体チップ40の接続端子41から伝達された電気信号を、導電性ビア23を介して配線基板101の裏面側へ送信することができる。
【0090】
縮径部131bは、配線基板101の厚み方向に沿った断面視で、頂部側から底部側に径が大きくなる台形状を有している。すなわち、縮径部131bの側面も、側壁112の傾斜部112aに沿うように傾斜している。これにより、頂部側から底部側にかけて径が一定の柱状の金属突起部と比較して、金属突起部131の頂部側(すなわち、縮径部131b側)において、金属突起部131の外周を覆う側壁112の厚みを確保することができる。
【0091】
図7に示す金属突起部131の形状は一例であり、本発明はこれに限定はされない。
【0092】
上記のような構成を有する接続パッド121は、第1の実施形態で説明したレーザー処理を行うことによって形成することができる。レーザー処理の走査回数をより多くすることで、上記のような構成を有する接続パッド121が得られる。
【0093】
〔第3の実施形態〕
続いて、第3の実施形態にかかる配線基板201について、
図8を参照しながら説明する。第3の実施形態にかかる配線基板201は、接続パッド221の構成が第1の実施形態の接続パッド21とは異なっている。それ以外の構成については、第1の実施形態と同様の構成が適用できる。
【0094】
第1の実施形態と同様に、配線基板201は、主として、セラミック基材(絶縁性の基材)10、接続パッド221、配線部22、および導電性ビア23などを備えている。セラミック基材(絶縁性の基材)10、配線部22、および導電性ビア23については、第1の実施形態と同様の構成が適用できる。
【0095】
図8には、配線基板201の一部分(具体的には、接続パッド221が形成されている部分)の断面構成を示す。
【0096】
接続パッド221は、主として、導電性の金属突起部231と、絶縁性の側壁12とで形成されている。金属突起部231は、第1の実施形態と同様の材料で形成することができる。
【0097】
絶縁性の側壁12は、金属突起部231の外周を覆うように設けられている。側壁12は、セラミック基材10の表面10bから盛り上がるように形成されている。また、側壁12は、セラミック基材10の一部で形成されている。すなわち、側壁12とセラミック基材10とは、一体となっている。側壁12の外形は、第1の実施形態で説明した側壁12の外形と同様の構成が適用できる。
【0098】
金属突起部231の頂面231aは、セラミック基材10の側壁12に覆われておらず露出している。この露出した頂面231aには、メッキ層(図示せず)が形成される。
【0099】
本実施形態では、金属突起部231は、配線基板201の厚み方向に沿った断面視で、頂面231a側から底面231b側に向かって径が小さくなる台形状を有している(
図8参照)。すなわち、金属突起部231の側面231cは、側壁12の傾斜部12aとは逆方向に傾斜している。これにより、頂部側から底部側にかけて径が一定の柱状の金属突起部と比較して、金属突起部231の底部側において、金属突起部231の外周を覆う側壁12の厚みを大きくすることができる。
【0100】
また、本実施形態では、金属突起部231の底面231b側の一部がセラミック基材10に埋め込まれた状態となっている。すなわち、金属突起部231の底面231bは、セラミック基材10の表面10bよりも下方に位置している。これにより、金属突起部231をより強固にセラミック基材10に固定させることができる。
【0101】
上記のような構成を有する接続パッド221は、第1の実施形態で説明したレーザー処理を行うことによって形成することができる。レーザー処理の走査回数をより少なくすることで、金属突起部231の一部がセラミック基材10に埋め込まれた状態の接続パッド221が得られる。
【0102】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。また、本明細書で説明した異なる実施形態の構成を互いに組み合わせて得られる構成についても、本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0103】
1 :配線基板
10 :セラミック基材(絶縁性の基材)
10a :(セラミック基材の)凹部
10b :(セラミック基材の)表面
11 :外周壁
12 :(接続パッドの)側壁(絶縁性の側壁)
12a :(側壁の)傾斜部
13 :(配線部の)側壁(絶縁性の側壁)
13a :(側壁の)傾斜部
21 :接続パッド
22 :配線部
23 :導電性ビア
31 :(接続パッドの)金属突起部
31a :頂面
32 :(配線部の)金属突起部
32a :頂面
33 :(導電性ビアの)金属部
35 :メッキ層
36 :半田バンプ
40 :半導体チップ(半導体素子)
40a :素子搭載予定部
41 :接続端子
50 :半導体モジュール
51 :樹脂
101 :配線基板
112 :側壁
112a:(側壁の)傾斜部
121 :接続パッド
131 :金属突起部
201 :配線基板
221 :接続パッド
231 :金属突起部