(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】自由表面上への印刷
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240523BHJP
B41J 3/54 20060101ALI20240523BHJP
B41J 29/00 20060101ALI20240523BHJP
B41J 3/00 20060101ALI20240523BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20240523BHJP
B05C 11/00 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
B41J2/01 109
B41J2/01 303
B41J2/01 301
B41J2/01 451
B41J2/01 401
B41J3/54 Z
B41J29/00 A
B41J3/00
B05C5/00 101
B05C11/00
(21)【出願番号】P 2020567645
(86)(22)【出願日】2019-02-25
(86)【国際出願番号】 GB2019050511
(87)【国際公開番号】W WO2019162698
(87)【国際公開日】2019-08-29
【審査請求日】2022-02-25
(32)【優先日】2018-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520321683
【氏名又は名称】マイクロプライ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100203208
【氏名又は名称】小笠原 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ロウズ,アンソニー・デイビッド・ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】コーニッシュ-エヴァンス,サミュエル・ポール
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】カナダ国特許出願公開第03012904(CA,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
B41J 3/54
B41J 29/00
B41J 3/00
B05C 5/00
B05C 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線に沿って結合された第1セクション及び第2セクションと、コントローラ(50)と、を具備し、前記第1セクション及び前記第2セクションのうちの少なくとも一方が、
プリントヘッド(120、220)と、
該プリントヘッド用のトラック(110、210)と、
該トラックを支持するフレーム又はフレーム部分(104)と、を含む、プリンタであって、
当該プリンタがモータをさらに含み、
前記フレームは、水平に延びる段差の縁部に適用されるように構成されており、該段差の垂直面の近接を検出するためのセンサをさらに含み、
前記コントローラが、前記段差の前記縁部に沿って当該プリンタを駆動するよう前記モータを動作させる、ように構成され
、
各セクションがプリントヘッドを含み、
当該プリンタが同時に前記段差の水平面及び垂直面に適用されるように構成される、ことを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
結合される前記第1セクション及び前記第2セクションが沿う前記線が、ヒンジ(12)を形成し、
当該プリンタは、該ヒンジの周りに折り畳まれ得るようになっており、これにより、複数の段差角度に適合するようになっている、及び/又は、格納のために折り畳まれるようになっている、請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
前記プリントヘッド(120)が、前記段差の水平面に適用されるように構成される、請求項1又は請求項2に記載のプリンタ。
【請求項4】
前記プリントヘッド(220)が、前記段差の垂直面に適用されるように構成される、請求項1又は請求項2に記載のプリンタ。
【請求項5】
前記フレームは、前記プリンタが前記段差に置かれているときに前記プリンタを駆動するために、前記モータによって駆動されるホイール(130)を含む、請求項1から請求項
4のいずれかに記載のプリンタ。
【請求項6】
前記フレームが、前記フレームを置く少なくとも1つのボール又はキャスタ(134)を含む、請求項1から請求項
5のいずれかに記載のプリンタ。
【請求項7】
前記トラックは、当該プリントヘッドが案内される2つの平行なレール(1120、1210)を含む、請求項1から請求項
6のいずれかに記載のプリンタ。
【請求項8】
前記レールが、前記プリントヘッドの位置決めを制御するためのエンコーダとしても機能する、請求項
7に記載のプリンタ。
【請求項9】
前記フレームが、前記段差の蹴上げに面する垂直プレート(206)と、前記蹴上げから前記プリントヘッドの所定の距離範囲を維持する前記垂直プレート上のセンサ(207)と、を含む、請求項1から請求項
8のいずれかに記載のプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに対してある角度で2つの表面又は平面上に、具体的には段差の踏み面と蹴上げの両方に印刷するための装置及び方法に関する。より一般的には、段差縁部などの実際の特徴に追従することによって、媒体を供給せずに「全体で」印刷することができるプリンタが企図される。
【背景技術】
【0002】
ほとんどのプリンタ又はプリントヘッドは、フレームに取り付けられており、紙などの媒体がフレームを通過して印刷される。印刷は、窓又はフロントガラスなどの透明シートの両面に行われることが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、制約が少ない「自由範囲」プリンタを提供することを目的とする。そのようなプリンタの1つの用途は、広告目的のために、段差、特にスタジアムなどの公共の建物の段差に印刷することである。現在、バナーやストリップはそのような表面に適用されているが、小さなずれでも目立つためにある程度のスキルが必要であり、また、摩耗するとストリップが外れて見苦しくなったり、場合によっては危険をもたらす場合もある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、一態様では、ヒンジとすることができる線に沿って結合された第1及び第2の印刷セクションと、コントローラとを備えるプリンタが提供され、セクションの少なくとも1つは、
プリントヘッドと、
プリントヘッド用のトラックと、
トラックを支持するフレーム又はフレーム部分と
を含み、
プリンタは、モータをさらに含み、フレームは、水平に延びる段差縁部に適用されるように構成され、段差の垂直面の近接を検出するためのセンサをさらに含み、コントローラは、モータを動作させて段差の縁部に沿ってプリンタを駆動するように構成される。
【0005】
使用中のプリントヘッドは、プリンタの構成に応じて、段差の垂直面又は水平面に適用され、多くの、おそらくほとんどの実施形態において、2つのプリントヘッドがあり、1つは蹴上げ(垂直面)用、もう1つは踏み面(水平面)用である。このようにして、両面を同時に印刷することができる。本文脈では、「水平」及び「垂直」という指定はおおよそであるが、一般に、プリンタは実際には水平である表面に置かれるため、この表面への適用手段を必要とせず、その自重で押さえられている。より一般的には、プリンタは、2つの平面上に構成され、これら2つの平面の交点に沿って移動する。
【0006】
プリントヘッドは、例えば、インクジェットプリントヘッドであり得、それ自体の供給部を有し得るか、又はより長期間の使用のために、近くのインク容器への接続を有し得る。インクは、用途に応じて、ほぼ恒久的及び/又は耐候性にすることができる。プリンタは、自律動作のために充電式バッテリーによって電力を供給されるか、又は主電源接続を有することができる。
【0007】
トラックは、2つの平行なレールから形成され得、通常はヒンジ、つまり結合線に対して直角になる。光学式又は磁気式エンコーダなどのエンコーダを組み込むことができるため、レールに沿ったプリントヘッドの位置を決定し、コントローラにフィードバックすることができる。これにより、ベルトなどの追跡装置が不要になるが、個別のエンコーダを使用することも可能である。
【0008】
フレームは、段差縁部の周りを包むような形状を有することができ、これは、2つの交差するプレート、1つは使用中の水平プレート、もう1つは垂直プレートから作製することによって簡単に実現することができる。コントローラ及びセンサはこれらに取り付けることができ、センサは垂直プレート上にある。モータは、水平プレート又はフレームセクションの下のホイールによりプリンタの動きを駆動することができ、プレートは、ボールキャスタ又は同様の全方向性サポートによってさらに支持される。ホイールは、好ましくは、独立して駆動される。
【0009】
フレームは、使用時にレールの遠端部を保持するエンドプレートをさらに含むことができる。好ましくは、これらのエンドプレートは伸張可能であり、それにより未使用時はプリンタをより小さな容積に縮小することができる。
【0010】
プリンタはまた、一般に、パーツを保護するためのハウジング又はシェルを有する。これは、収納のために完全に折り畳めるクラムシェル設計にすることができる。
【0011】
第2の態様では、プリンタが段差縁部に沿って駆動され、段差縁部に追従するように制御されながら、段差面の1又はそれ以上に印刷する、印刷方法が提供される。
【0012】
第3の態様では、プリントヘッドと、プリントヘッド用のトラックと、動力手段とを備えるプリンタが提供され、プリンタは、動力手段を駆動して段差縁部に沿ってプリンタを移動させるように適合されたコントローラをさらに含む。
【0013】
本発明をよりよく理解するために、次に、添付の図面を参照して実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態を表す段差プリンタの図である。
【
図2】
図2は、ケーシングが取り外された同様の図である。
【
図4】
図4は、ケーシングが閉じられた状態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明による段差印刷装置を示し、段差又は棚部5上に置かれている。段差は、踏み面又は水平面5h及び蹴上げ5vを有し、これらはほぼ垂直面である。参照を容易にするために、段差の高さはz方向、その深さはy方向、その左右の範囲はx方向で表される。
【0016】
プリンタ1は、本質的に、フレーム104(
図2)、1又はそれ以上のプリントヘッド120、220、及びシェル又はケーシング10からなる。プリンタ1は、水平部分100と垂直部分200の2つの部分又はセクションであり、ヒンジ12で接続されている。各部分は、2つの分離可能な部分、共通の中央部分14と端部部分16、26で構成される半クラムシェルのものである。図示されていない可撓性カバーは、端部部分を中央シェル部分に接続することができる。
【0017】
プリンタの構成は、
図1の構成と同様の図である
図2でより詳細に見ることができるが、フレーム104がよりはっきりと見えるようにケーシングが取り外されている。フレーム104は、以下でまた説明される2つの連動ベースプレート、水平プレート106と、センサプレート206と呼ばれる垂直又は壁プレートとを含む。ベースプレート106、206は、段差5の縁部5e上に置かれるブラケットを形成するように交差する。
【0018】
連動ベースプレートの内側にはエンドプレート118が配置され、段差の踏み面上に置かれている。このエンドプレートは、以下で説明するプリントヘッド用のトラックを形成する2つの線形スライダ又はレール110によって、センサプレート206の突出した上側部分に接続される。これらのレールはエンドプレートに固定されているが、センサプレートの穴を通過してベアリングを形成しているため、例えば、段差のサイズに合わせたり、印刷の範囲を決定したりするためにエンドプレートの伸張を変えることができる。レールはまた、
図1に見えるように、シェルの中央部分14を通って突出している。
【0019】
同様の方式で、下側エンドプレート218は、垂直レール218によって水平ベースプレート106に接続される。これらのレールは、下向きの範囲に同様に調整可能であり、干渉を避けるために水平壁からx方向にわずかにオフセットしてシェル10を通って突出する。
【0020】
それぞれの自律プリントヘッド120、220は、レール110、210上に配置される。これらのプリントヘッドは、印刷中にレールに沿って前後に動くことを可能にするそれぞれのモータを含み、経済性のために、各プリントヘッドは、2つのレールと接触する2つのホイールを駆動する単一のモータを有し、各ホイールは、レールをブッシングに対して押し付ける。プリントヘッドは、次に説明するように、フレームが移動するときにフレームと共に動かされる。
【0021】
図3は、プリントヘッドの下又は内側からのプリンタを示し、フレーム104が段差上に置かれている様子も明らかにしている。水平部分100は、ヒンジ線に直角な共通軸上のベースプレート106に取り付けられた一対のホイール130を含む。これらのホイールは、独立して駆動されて差動ドライブを形成し、それにより装置はその場でどちらかの方向に回転し、段差の曲率又は不規則性に追従することができる。
【0022】
残りの静止点は、ボールベアリング又はキャスタによって提供される、x方向にフレームに沿って間隔を置いて配置されたベアリング132、及びエンドフレーム部分118上の2つのボール134である。一方、垂直フレーム部分200は、同様のボールベアリング234を有し、動作中、段差の蹴上げに対して置かれる。様々なホイール及びベアリングの高さは、好ましくは、プリントヘッドが段差の縁部まで、又は少なくともその近くまで移動することができるような高さである。
【0023】
プリンタ1は、
図1のベースプレート106上に見えるコントローラ50をさらに含む。このコントローラ50は、専用のマイクロコントローラとすることができるが、本実施形態では、Raspberry Pi(登録商標)である。これは、例えば、ワイヤによって、又はここでは無線で、プリントヘッド内のモータ及び印刷アクチュエータに、かつセンサプレート206に取り付けられたセンサ207、又はセンサのセットに接続される。これらのセンサは段差の蹴上げまでの間隔を測定するので、プリンタ1を蹴上げに接近させることができ、したがって段差から落下するのを防ぐことができる。プリントヘッド120、220はまた、レール110、220に沿った位置を追跡するさらなるセンサを含む。追跡は、概略的に示すように、レール自体に構築されたエンコーダによって、又は個別のエンコーダを用いて行うことができる。
【0024】
本実施形態では、プリンタは、未使用時は折り畳んで保管することができる。この目的のために、プリントヘッド及びエンドプレートがそれぞれのベースプレートまで真っ直ぐに移動するので、レール110、210は、中央シェル部分14を通って最大限に突出する。次に、シェル部分をヒンジ線に沿って折り畳むと、装置を
図4に示す折り畳み構成にすることができる。必要に応じて、個別のカバーを突出したレールに適用してもよい。
【0025】
次に、プリンタの動作について説明する。領域全体を印刷する場合、最初にプリンタを展開し、シェルの端部部分16、26を延ばして段差の深さと高さにそれぞれ一致させる。段差周辺が自由であるため、突出したレールは邪魔されない。次に、プリンタは印刷領域の一端に載置され、印刷を行うように設定される。
【0026】
次に、各プリントヘッド120、220は、そのレールの長さ、又は印刷する必要がある限り、コントローラ50の制御下で移動し、その上にグラフィックも記録される。次いでプロセッサは、ホイール130を回転させることによってプリンタを前進させる。一般に、プリンタは一方向にのみ、例えば、
図2の左側に移動し、印刷面上を移動しないようにする。有用な特徴としては、接触バンパ及び超音波センサを使用して、プリンタが段差上で予期しない物体と衝突しないようにするか、又は衝突した際に停止させることである。
【0027】
センサプレート206上のセンサが、プリンタが段差の垂直面から設定距離範囲を離れていると決定した場合、プロセッサは、ホイールを旋回させて段差縁部の追跡を元に戻す。このようにして、プリンタは、印刷のために垂直面からの距離が近すぎたり遠すぎたりすることなく、段差が湾曲したり不規則であっても段差に追従することができる。適切な距離範囲は、例えば、約5~10mmである。印刷に干渉しない場合、ばね式接触センサなどの代替のセンサを想定することができる。
【0028】
レールが必要に応じてx方向にオフセットされるため、水平又は垂直のプリントヘッドは、印刷を四角に仕切るために最後の走行を完了する必要があり得、実際、他のプリントヘッドが最初に印刷を開始している。
【0029】
示された例のいくつかの修正は、本発明の範囲内で企図され得る。例えば、段差の蹴上げは垂直である必要はなく、「垂直」セクション200は、恒久的に、又はヒンジの周りに固定可能な程度の回転を有することによって、対応して角度を付けることができる。
【0030】
ベースプレート又は中央フレームセクション106、206は、2つの連動部分ではなく、一体構造にすることができる。
【0031】
記載された実施形態は、好ましいように、2つのレールを有するが、プリントヘッドが走行するレールは1つだけ、又は(好ましくは)3つ以上であってもよい。レール自体もまた、例のようにエンコーダである必要はなく個別の部分にすることができ、例えば磁気など、示されている光学システムとは異なる検知方法を使用することもできる。プリンタの2つの部分は同じである必要はなく、状況に応じて、異なるレール、プレート、ベアリングなどを有していてもよい。
【0032】
段差追従法又は縁部追従法が使用されている限り、水平と垂直の両方のプリントヘッドを有する必要はない。例えば、浅い段差の境界を印刷したい場合、適切なプリンタは、段差縁部を追跡する縁部追従部を有する水平プリンタのみを有する。
【0033】
プリンタは、プラットフォームの縁部、棚部、建物の壁など、あらゆる種類の段差に印刷するために使用することができる。