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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】フィルムコンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/32 20060101AFI20240523BHJP
   H01G 4/38 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
H01G4/32 540
H01G4/32 531
H01G4/38 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021001913
(22)【出願日】2021-01-08
(65)【公開番号】P2022107154
(43)【公開日】2022-07-21
【審査請求日】2023-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 隆志
(72)【発明者】
【氏名】会森 信
【審査官】上谷 奈那
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/081853(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/201543(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/091696(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/181109(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/32
H01G 4/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極および第2電極を有するフィルムコンデンサ素子と、
前記第1電極に接続される第1極性の第1バスバと、
前記第2電極に接続される第2極性の第2バスバと、
前記フィルムコンデンサ素子、前記第1バスバおよび前記第2バスバを収納するための収納空間が形成されたケースと、
を備えるフィルムコンデンサであって、
前記第1バスバは、前記ケース内に収納された第1極主板と、前記ケースから露出した第1極引出端子とを備え、
前記第2バスバは、前記ケース内に収納された第2極主板と、前記ケースから露出した第2極引出端子とを備え、
前記ケースは、
前記収納空間の下方に設けられた底部と、
前記収納空間の四方を囲む周壁部と、
前記周壁部に設けられたケースポケットと、
を備え、
前記第1極引出端子の少なくとも1つは、前記周壁部に対向した第1極先端部を備え、
前記第1極先端部には、締結用の第1貫通穴が形成されており、
前記第2極引出端子の少なくとも1つは、前記第1極先端部と隣り合うように前記周壁部に対向した第2極先端部を備え、
前記第2極先端部には、締結用の第2貫通穴が形成されており、
前記ケースポケットは、
前記第1貫通穴を露出させた状態で前記第1極先端部の下面および外面下部を覆い、かつ前記第2貫通穴を露出させた状態で前記第2極先端部の下面および外面下部を覆う第1返し部を備え
前記第1返し部は、前記第1極先端部の前記下面および前記第2極先端部の前記下面と接する
ことを特徴とするフィルムコンデンサ。
【請求項2】
前記ケースポケットは、
互いに対向しない前記第1極先端部の一方側の側面および前記第2極先端部の他方側の側面を覆う第2返し部を備える
ことを特徴とする請求項1に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項3】
前記周壁部には、前記第1極先端部の前記第1貫通穴と対向する位置に第1ナットが設けられており、かつ前記第2極先端部の前記第2貫通穴と対向する位置に第2ナットが設けられている
ことを特徴とする請求項1または2に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項4】
前記第1バスバは、前記第1極引出端子として第1極入力端子と第1極出力端子とを備え、
前記第2バスバは、前記第2極引出端子として第2極入力端子と第2極出力端子とを備え、
前記第1極入力端子が前記第1極先端部を備えるとともに前記第2極入力端子が前記第2極先端部を備えることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項5】
前記第1極出力端子および前記第2極出力端子は、前記周壁部の左右の少なくとも一方の上方から前記底部の下面と平行にのびて前記ケース外に引き出されており、
前記底部の下面には、被取付対象を取り付け可能な取付部が設けられている
ことを特徴とする請求項4に記載のフィルムコンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ハイブリッド車や電気自動車等の電動車のモータに三相交流電力を供給する電力変換装置が知られている。電力変換装置は、DC/DCコンバータと、インバータと、制御回路と、フィルムコンデンサとを備える。DC/DCコンバータは、バッテリから供給された直流電力を昇圧して出力し、インバータは、DC/DCコンバータの出力を三相交流電力に変換してモータに供給する。制御回路は、DC/DCコンバータおよびインバータを制御する。フィルムコンデンサは、DC/DCコンバータとインバータとの間に設けられ、平滑コンデンサとして機能する。
【0003】
フィルムコンデンサは、複数のフィルムコンデンサ素子と、N極のNバスバと、P極のPバスバと、これらを収納するケースとを備える(例えば、特許文献1参照)。NバスバおよびPバスバは、引出端子として、DC/DCコンバータに接続されるN極およびP極の入力端子を備える。
【0004】
上記のフィルムコンデンサにおいては、入力端子がケースから露出しているため、入力端子と他部品(例えば、制御回路を含む回路基板)との絶縁がとれないという問題がある。また、上記のフィルムコンデンサには、入力端子の位置決めの目安となるものが存在しないという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-251351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、引出端子と他部品との絶縁確保が可能で、かつ引出端子の位置決めが可能なフィルムコンデンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係るフィルムコンデンサは、
第1電極および第2電極を有するフィルムコンデンサ素子と、
前記第1電極に接続される第1極性の第1バスバと、
前記第2電極に接続される第2極性の第2バスバと、
前記フィルムコンデンサ素子、前記第1バスバおよび前記第2バスバを収納するための収納空間が形成されたケースと、
を備えるフィルムコンデンサであって、
前記第1バスバは、前記ケース内に収納された第1極主板と、前記ケースから露出した第1極引出端子とを備え、
前記第2バスバは、前記ケース内に収納された第2極主板と、前記ケースから露出した第2極引出端子とを備え、
前記ケースは、
前記収納空間の下方に設けられた底部と、
前記収納空間の四方を囲む周壁部と、
前記周壁部に設けられたケースポケットと、
を備え、
前記第1極引出端子の少なくとも1つは、前記周壁部に対向した第1極先端部を備え、
前記第1極先端部には、締結用の第1貫通穴が形成されており、
前記第2極引出端子の少なくとも1つは、前記第1極先端部と隣り合うように前記周壁部に対向した第2極先端部を備え、
前記第2極先端部には、締結用の第2貫通穴が形成されており、
前記ケースポケットは、
前記第1貫通穴を露出させた状態で前記第1極先端部の下面および外面下部を覆い、かつ前記第2貫通穴を露出させた状態で前記第2極先端部の下面および外面下部を覆う第1返し部を備えることを特徴とすることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、引出端子の先端部(第1極先端部および第2極先端部)の下面および外面下部がケースポケットの第1返し部で覆われているため、引出端子と他部品との絶縁確保が可能になる。また、この構成によれば、第1返し部を利用した引出端子の上下方向の位置決めが可能になる。なお、第1極先端部および第2極先端部において、外面とは、周壁部に対向した面(内面)の逆側の面である。
【0009】
上記フィルムコンデンサにおいて、
前記ケースポケットは、
互いに対向しない前記第1極先端部の一方側の側面および前記第2極先端部の他方側の側面を覆う第2返し部を備えるよう構成できる。
【0010】
この構成によれば、引出端子と他部品とのさらなる絶縁確保(例えば、左右方向における絶縁確保)が可能になるとともに、第2返し部を利用した引出端子の別方向(例えば、左右方向)の位置決めも可能になる。
【0011】
上記フィルムコンデンサにおいて、
前記周壁部には、前記第1極先端部の前記第1貫通穴と対向する位置に第1ナットが設けられており、かつ前記第2極先端部の前記第2貫通穴と対向する位置に第2ナットが設けられているよう構成できる。
【0012】
上記フィルムコンデンサにおいて、
前記第1バスバは、前記第1極引出端子として第1極入力端子と第1極出力端子とを備え、
前記第2バスバは、前記第2極引出端子として第2極入力端子と第2極出力端子とを備え、
前記第1極入力端子が前記第1極先端部を備えるとともに前記第2極入力端子が前記第2極先端部を備えるよう構成できる。
【0013】
上記フィルムコンデンサにおいて、
前記第1極出力端子および前記第2極出力端子は、前記周壁部の左右の少なくとも一方の上方から前記底部の下面と平行にのびて前記ケース外に引き出されており、
前記底部の下面には、被取付対象を取り付け可能な取付部が設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、引出端子と他部品との絶縁確保が可能で、かつ引出端子の位置決めが可能なフィルムコンデンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係るフィルムコンデンサが搭載される電力変換装置のブロック図である。
図2】本発明に係るフィルムコンデンサの斜視図である。
図3】本発明に係るフィルムコンデンサの分解斜視図である。
図4】(A)はNバスバの出力端子を示す図である。(B)はPバスバの出力端子を示す図である。
図5】本発明に係るフィルムコンデンサのケースであって、(A)は上側から見た斜視図であり、(B)は下側から見た斜視図である。
図6】本発明に係るフィルムコンデンサのケースポケットの拡大図である。
図7】本発明に係るフィルムコンデンサにおいてケースポケットと入力端子との関係を示す図であって、(A)は断面図であり、(B)はその模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明に係るフィルムコンデンサについて説明する。なお、図中の矢印で示す前後方向X、左右方向Y、上下方向Zは、互いに直交する直線方向である。
【0017】
図1に、本発明の一実施形態に係るフィルムコンデンサCを搭載した電力変換装置1を示す。電力変換装置1は、フィルムコンデンサCに加えて、DC/DCコンバータAと、インバータB1,B2と、制御回路Dと、これらを収納する筐体Eとを備える。電力変換装置1は、例えば、ハイブリッド車や電気自動車等の電動車に搭載され、バッテリ2から供給された直流電力を交流電力に変換してモータ3,4に供給する。
【0018】
DC/DCコンバータAは、制御回路Dの制御下で、バッテリ2から入力された直流電力を昇圧し、昇圧した直流電力をフィルムコンデンサCに出力する。DC/DCコンバータAは、例えば、絶縁トランスと、1次側のスイッチング回路と、2次側の整流平滑回路とで構成される。
【0019】
インバータB1は、制御回路Dの制御下で、フィルムコンデンサCから入力された三相用の直流電力を三相の交流電力に変換し、当該三相の交流電力をモータ3に出力する。同様に、インバータB2は、制御回路Dの制御下で、フィルムコンデンサCから入力された三相用の直流電力を三相の交流電力に変換し、当該三相の交流電力をモータ4に出力する。インバータB1,B2は、U相の交流電力を生成するU相スイッチ回路と、V相の交流電力を生成するV相スイッチ回路と、W相の交流電力を生成するW相スイッチ回路とを備える。各スイッチ回路は、例えば、直列接続されたスイッチング素子で構成できる。
【0020】
本実施形態では、インバータB1,B2は、フィルムコンデンサCの出力端子に対応した入力端子を備える。具体的には、インバータB1,B2の各相のスイッチ回路が、N入力端子、第1のP入力端子、第2のP入力端子を備える。例えば、第1のP入力端子および第2のP入力端子はスイッチ回路の一端に接続され、N入力端子はスイッチ回路の他端に接続される。
【0021】
制御回路Dは、上記のとおり、DC/DCコンバータAおよびインバータB1,B2を制御する。制御回路Dは、アナログ制御回路、マイクロコントローラ等を含むデジタル制御回路、または両者を組み合わせた回路で構成できる。本実施形態では、制御回路Dを含む回路基板が、被取付対象としてフィルムコンデンサCの下側に取り付けられる。
【0022】
筐体Eは、金属(例えば、アルミニウム)により形成され、DC/DCコンバータAと、インバータB1,B2と、フィルムコンデンサCと、制御回路Dとを収納する。
【0023】
フィルムコンデンサCは、DC/DCコンバータAとインバータB1,B2との間に設けられ、平滑コンデンサとして機能する。図2に、フィルムコンデンサCの斜視図を示し、図3に、フィルムコンデンサCの分解斜視図を示す。
【0024】
フィルムコンデンサCは、コンデンサ素子部10と、本発明の「第1極性の第1バスバ」に相当するNバスバ20と、本発明の「第2極性の第2バスバ」に相当するPバスバ30と、ケース40と、絶縁部50と、封止樹脂60とを備える。なお、図3では、封止樹脂60を省略している。
【0025】
コンデンサ素子部10は、平滑用のコンデンサとして機能する8個のフィルムコンデンサ素子11(本発明の「フィルムコンデンサ素子」に相当)を備える。
【0026】
フィルムコンデンサ素子11は、誘電体フィルムの表面に内部電極(陰極、陽極)としての金属膜が形成された一対の金属化フィルムを重ねて巻回し、その両巻回端に外部電極としてのメタリコン部を形成したものである。一方のメタリコン部(本発明の「第1電極」に相当)は、一方の金属化フィルムの内部電極(陰極)に接続され、他方のメタリコン部(本発明の「第2電極」に相当)は、他方の金属化フィルムの内部電極(陽極)に接続される。フィルムコンデンサ素子11は、第1電極が下側、第2電極が上側になるようにケース40内に配置される。
【0027】
Nバスバ20は、金属板を加工して形成された電極端子部品であり、陰極用のバスバである。Nバスバ20は、本発明の「第1極主板」に相当するN主板21と、本発明の「第1極入力端子」に相当するN入力端子22と、本発明の「第1極出力端子」に相当するN出力端子23とを備える。N入力端子22とN出力端子23とが本発明の「第1極引出端子」として機能する。
【0028】
N主板21は、ケース40内に収納され、フィルムコンデンサ素子11の下側の第1電極に接続される。
【0029】
N入力端子22は、N主板21の前端から引き出されてケース40の前面に露出しており、DC/DCコンバータAの陰極用の出力端子に接続される。N入力端子22は、ケース40の前面に対向したN先端部22A(本発明の「第1極先端部」に相当)を備える。N先端部22Aには、入力部として、DC/DCコンバータAとの締結用の第1貫通穴H1(本実施形態では、丸穴)が形成されている。
【0030】
N出力端子23は、N主板21の左端および右端からケース40外に引き出されている。図4(A)に示すように、N出力端子23は、U相用のN出力端子23Uと、V相用のN出力端子23Vと、W相用のN出力端子23Wとを備える。なお、図4(A)には左側のN出力端子23のみを示しているが、右側のN出力端子23も、左側と同様の構成である。
【0031】
N出力端子23U,23V,23Wには、出力部として、インバータB1の各相のスイッチ回路におけるN入力端子との締結用の貫通穴が形成されている。N出力端子23U,23V,23Wは、それぞれインバータB1のU,V,W相のスイッチ回路のN入力端子に接続される。
【0032】
Pバスバ30は、金属板を加工して形成された電極端子部品であり、陽極用のバスバである。Pバスバ30は、本発明の「第2極主板」に相当するP主板31と、本発明の「第2極入力端子」に相当するP入力端子32と、本発明の「第2極出力端子」に相当するP出力端子33とを備える。P入力端子32とP出力端子33とが本発明の「第2極引出端子」として機能する。
【0033】
P主板31は、ケース40内に収納され、フィルムコンデンサ素子11の上側の第2電極に接続される。
【0034】
P入力端子32は、P主板31の前端から引き出されてN入力端子22と隣り合うようにケース40の前面に露出しており、DC/DCコンバータAの陽極用の出力端子に接続される。P入力端子32は、ケース40の前面に対向したP先端部32A(本発明の「第2極先端部」に相当)を備える。P先端部32Aには、入力部として、DC/DCコンバータAとの締結用の第2貫通穴H2(本実施形態では、丸穴)が形成されている。
【0035】
P出力端子33は、P主板31の左端および右端からケース40外に引き出されている。図4(B)に示すように、P出力端子33は、U相用のP出力端子33U,33U’と、V相用のP出力端子33V,33V’と、W相用のP出力端子33W,33W’とを備える。ただし、P出力端子33U’とP出力端子33Vとは、共通化された単一の第1共通端子33UVであり、P出力端子33V’とP出力端子33Wとは、共通化された単一の第2共通端子33VWである。なお、図4(B)には左側のP出力端子33のみを示しているが、右側のP出力端子33も、左側と同様の構成である。
【0036】
P出力端子33U、第1共通端子33UV、第2共通端子33VW、およびP出力端子33W’には、出力部として、インバータB1の各相のスイッチ回路におけるP入力端子との締結用の貫通穴が形成されている。P出力端子33Uは、U相スイッチ回路の第1のP入力端子に接続される。第1共通端子33UVは、P出力端子33U側においてU相スイッチ回路の第2のP入力端子に接続され、第2共通端子33VW側においてV相スイッチ回路の第1のP入力端子に接続される。第2共通端子33VWは、第1共通端子33UV側においてV相スイッチ回路の第2のP入力端子に接続され、P出力端子33W’側においてW相スイッチ回路の第1のP入力端子に接続される。P出力端子33W’は、W相スイッチ回路の第2のP入力端子に接続される。
【0037】
ケース40は、絶縁性樹脂により形成された筐体である。図5に示すように、ケース40は、底部41と、周壁部42と、ケースポケット43と、取付部44とを備える。
【0038】
底部41は、Nバスバ20のN主板21の下方に位置するように設けられている。図5(B)に示すように、底部41の下面には、回路基板を取り付け可能な複数の取付部44が設けられている。本実施形態では、取付部44に、制御回路Dが取り付けられる。
【0039】
周壁部42は、前壁42F、後壁42B、左壁42Lおよび右壁42Rからなり、N主板21の四方(前方、後方、左方、右方)を囲むように設けられている。周壁部42および底部41は、Nバスバ20のN主板21、コンデンサ素子部10、Pバスバ30のP主板31を収納するための収納空間を形成する。
【0040】
前壁42Fには、N先端部22Aの第1貫通穴H1と対向する位置に第1ナット45が設けられており、かつP先端部32Aの第2貫通穴H2と対向する位置に第2ナット46が設けられている。本実施形態では、第1ナット45および第2ナット46は、前壁42Fに形成された凹部に嵌め込まれている。例えば、第1ナット45および第2ナット46は、インサート成形により前壁42Fに設けられる。
【0041】
ケースポケット43は、前壁42Fの前面に設けられている。図6および図7に示すように、ケースポケット43は、下側のポケットを構成する第1返し部43Dと、左側および右側のポケットを構成する第2返し部43L,43Rとを備える。
【0042】
第1返し部43Dは、N先端部22Aの第1貫通穴H1を露出させた状態でN先端部22Aの下面および外面下部(本実施形態では、前面下部)を覆い、かつP先端部32Aの第2貫通穴H2を露出させた状態でP先端部32Aの下面および外面下部(本実施形態では、前面下部)を覆う。
【0043】
図7(B)に示すように、第1返し部43Dは、N先端部22Aと他部品(例えば、制御回路D)とを絶縁するための沿面距離(L1+L2+L3)を確保することができる。同様に、第1返し部43Dは、P先端部32Aと他部品とを絶縁するための沿面距離を確保することができる。
【0044】
また、第1返し部43Dは、N先端部22AおよびP先端部32Aの上下方向の位置決めを可能にする。例えば、N先端部22Aの下面と当該下面に対向する第1返し部43Dの対向面とが接し、かつP先端部32Aの下面と上記対向面とが接するように、N主板21およびP主板31をケース40内に収納することができる。
【0045】
第2返し部43Lは、N先端部22Aの第1貫通穴H1を露出させた状態でN先端部22Aの左側面および前面左側部を覆う。第2返し部43Lの下端は、第1返し部43Dの左端と連結しており、第2返し部43Lの上端は、第1ナット45の上端よりも高い位置に存在する。第2返し部43Rは、P先端部32Aの第2貫通穴H2を露出させた状態でP先端部32Aの右側面および前面右側部を覆う。第2返し部43Rの下端は、第1返し部43Dの右端と連結しており、第2返し部43Rの上端は、第2ナット46の上端よりも高い位置に存在する。
【0046】
第2返し部43L,43Rは、P先端部32AおよびN先端部22Aと他部品(例えば、筐体E)とを絶縁するための沿面距離を確保することができる。また、第2返し部43L,43Rは、N先端部22AおよびP先端部32Aの左右方向の位置決めを可能にする。例えば、N先端部22Aの左側面と当該左側面に対向する第2返し部43Lの対向面とが接し、かつP先端部32Aの右側面と当該右側面に対向する第2返し部43Rの対向面とが接するように、N主板21およびP主板31をケース40内に収納することができる。
【0047】
取付部44は、底部41の下面に設けられている。一方で、N出力端子23およびP出力端子33は、いずれも左壁42Lの上方および右壁42Rの上方から、底部41の下面と平行にのびてケース40外に引き出されている。すなわち、N出力端子23およびP出力端子33はケース40の収納空間の上方に位置し、取付部44は当該収納空間の下方に位置する。このような構造により、本実施形態では、N出力端子23およびP出力端子33と制御回路Dとの絶縁確保が可能になる。
【0048】
再び図3を参照して、絶縁部50は、Nバスバ20とPバスバ30との短絡を防止するために設けられている。絶縁部50は、第1絶縁部材51と、第2絶縁部材52と、第3絶縁部材53とを備える。第1絶縁部材51は、N主板21の前端部とP主板31の前端部との間に配置される。第2絶縁部材52は、N主板21の左端部とP主板31の左端部との間に配置される。第3絶縁部材53は、N主板21の右端部とP主板31の右端部との間に配置される。
【0049】
封止樹脂60は、ケース40内の収納空間に収納されているコンデンサ素子部10を保護するための樹脂である。封止樹脂60は、例えば、エポキシ樹脂等のポッティング樹脂を、ディスペンサーによってケース40内に所定量だけ充填し、硬化させたものである。
【0050】
上記のとおり、本実施形態に係るフィルムコンデンサCは、第1返し部43Dおよび第2返し部43L,43Rで構成されたケースポケット43を備えることを特徴とする。本実施形態に係るフィルムコンデンサCによれば、ケース40を大型化させることなくN入力端子22およびP入力端子32と他部品との絶縁確保が可能になり、ケースポケット43を利用したN入力端子22およびP入力端子32の位置決めが可能になる。
【0051】
[変形例]
以上、本発明に係るフィルムコンデンサの実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0052】
本発明に係るフィルムコンデンサは、フィルムコンデンサ素子と第1バスバと第2バスバとケースとを備え、ケースは、底部と周壁部と当該周壁部に設けられたケースポケットとを備え、第1バスバの第1極引出端子の少なくとも1つは、周壁部に対向した第1極先端部を備え、第2バスバの第2極引出端子の少なくとも1つは、第1極先端部と隣り合うように周壁部に対向した第2極先端部を備え、ケースポケットが、第1極先端部に形成された第1貫通穴を露出させた状態で、第1極先端部の下面および外面下部を覆い、かつ第2極先端部に形成された第2貫通穴を露出させた状態で、第2極先端部の下面および外面下部を覆うのであれば、適宜構成を変更できる。
【0053】
例えば、上記実施形態では、第1極入力端子と第2極入力端子とがそれぞれ、第1極先端部と第2極先端部とを備えていたが、これに替えて、またはこれに加えて、第1極出力端子と第2極出力端子とがそれぞれ、第1極先端部と第2極先端部とを備えるように構成してもよい。すなわち、本発明に係るフィルムコンデンサは、各入力端子の第1極先端部と第2極先端部とを覆う第1のケースポケット、および/または各出力端子の第1極先端部と第2極先端部とを覆う第2のケースポケットを備えるように構成してもよい。
【0054】
上記実施形態では、ケースポケット43が第1返し部43Dおよび第2返し部43L,43Rによって構成されているが、本発明のケースポケットは、少なくとも第1返し部43Dで構成されていればよい。
【0055】
第1返し部43Dは、互いに分離した、N先端部22Aの第1貫通穴H1を露出させた状態でN先端部22Aの下面および前面下部を覆う返しと、P先端部32Aの第2貫通穴H2を露出させた状態でP先端部32Aの下面および前面下部を覆う返しとで構成されてもよい。
【0056】
本発明に係るフィルムコンデンサは、封止樹脂60のない、いわゆる樹脂レスフィルムコンデンサでもよい。
【0057】
上記実施形態では、U,V,Wの三相に対応しているが、本発明に係るフィルムコンデンサは、一相または二相に対応したものでもよく、四相以上に対応したものでもよい。
【0058】
上記実施形態では、各相においてN出力端子23の両側にP出力端子33が配置されているが、各相においてP出力端子33の両側にN出力端子23を配置してもよい。その場合、Pバスバ30の代わりに、Nバスバ20が第1共通端子および第2共通端子を備える構成となる。
【符号の説明】
【0059】
A DC/DCコンバータ
B1,B2 インバータ
C フィルムコンデンサ
D 制御回路
E 筐体
1 電力変換装置
2 バッテリ
3,4 モータ
10 コンデンサ素子部
11 フィルムコンデンサ素子
20 Nバスバ
21 N主板
22 N入力端子
22A N先端部
23 N出力端子
30 Pバスバ
31 P主板
32 P入力端子
32A P先端部
33 P出力端子
33UV 第1共通端子
33VW 第2共通端子
40 ケース
41 底部
42 周壁部
43 ケースポケット
43D 第1返し部
43L,43R 第2返し部
44 取付部
45 第1ナット
46 第2ナット
50 絶縁部
51 第1絶縁部材
52 第2絶縁部材
53 第3絶縁部材
60 封止樹脂
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7