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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】遠心分離機
(51)【国際特許分類】
   B04B 1/20 20060101AFI20240523BHJP
   C02F 11/127 20190101ALN20240523BHJP
【FI】
B04B1/20 ZAB
C02F11/127
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021016991
(22)【出願日】2021-02-05
(65)【公開番号】P2022120224
(43)【公開日】2022-08-18
【審査請求日】2023-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(73)【特許権者】
【識別番号】505279215
【氏名又は名称】株式会社広島メタル&マシナリー
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】名越 収二郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】松井 寛幸
(72)【発明者】
【氏名】山本 章裕
(72)【発明者】
【氏名】北風 俊哉
(72)【発明者】
【氏名】藤嶋 宏治
(72)【発明者】
【氏名】平野 勝也
(72)【発明者】
【氏名】上刎 正士
【審査官】宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-099255(JP,A)
【文献】特開2002-239416(JP,A)
【文献】特開2000-350948(JP,A)
【文献】特開2017-131847(JP,A)
【文献】特開2020-097027(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B04B 1/20
C02F 11/127
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸心廻りに回転するボウルと、前記ボウルの回転軸心方向で前記ボウルの一端側に設けた分離液排出口と、前記ボウルの回転軸心方向で前記ボウルの他端側に設けた脱水ケーキ排出口と、前記ボウルと同回転軸心廻りに回転するスクリューコンベアを備え、
前記ボウルは、内周面が前記ボウルの回転軸心方向に伸びるボウル分離部と、前記ボウル分離部から前記脱水ケーキ排出口に向けて内周面がテーパー状に狭まるボウル排出部を有し、
前記スクリューコンベアは、内胴と内胴外周に螺旋状に設けた羽根を有し、
前記内胴は、前記ボウル分離部に対応して外周面が前記内胴の回転軸心方向に伸びる内胴分離部と、前記ボウル排出部に対応して前記脱水ケーキ排出口に向けて外周面がテーパー状に狭まる内胴排出部を有し、
前記ボウル排出部の内周面と前記内胴排出部の外周面の間に隙間排出部を有し、
前記ボウルが前記隙間排出部に臨む位置に保守用開孔を有し、前記保守用開孔を塞ぐプラグを着脱自在に設けたことを特徴とする遠心分離機。
【請求項2】
前記内胴は、前記内胴分離部から前記内胴排出部に向けて外周面がテーパー状に広がる内胴圧縮部を有することを特徴とする請求項1に記載の遠心分離機。
【請求項3】
前記保守用開孔および前記プラグは、前記ボウルの周方向の複数個所に設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の遠心分離機。
【請求項4】
前記保守用開孔および前記プラグは、前記ボウル分離部と前記ボウル排出部の境の近傍に位置することを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の遠心分離機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遠心分離機に関し、ボウル内の保守技術に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下水処理過程で発生する汚泥を処理する装置として、遠心脱水機や遠心濃縮機等の遠心分離機がある。
【0003】
遠心脱水機は、汚泥を高速回転させることで、固形分と水分を比重差によって分離し、脱水するものである。例えば特許文献1に記載するものは、直胴型遠心脱水装置であり、ボウルとボウル内に配置するスクリューコンベアを有し、スクリューコンベアの回転胴の外周面が、ストレート部とストレート部から径大方向に傾斜したテーパー部からなり、回転胴のストレート部の内周面に無機凝集剤を供給する無機凝集剤供給経路を設けている。
【0004】
ボウルは、一端側に分離液排出口を有し、他端側に脱水ケーキ排出口を有し、回転胴のテーパー部の終端付近から脱水ケーキ排出口まで隘路の隙間排出部を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-131847
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の遠心脱水機において、下水汚泥のスラリーを無機凝集剤とともに、ボウル内に投入し、高速回転するボウル内で固液分離する。分離した固形物は、スクリューによって脱水ケーキ排出口に向けて搬送する間に脱水し、隙間排出部を通してボウルの外へ排出する。ケーキ層の含水率はボウル内の液深方向において一様ではなく、ボウル内周面側のケーキ層下部に近いほどに含水率が低下する。また、隙間排出部の隘路により与える排出抵抗力が大きいほどに、ケーキ層に加わる圧縮力が強くなる。
【0007】
しかし、汚泥の性状によっては圧縮力が過剰に作用して、低含水率ケーキが隙間排出部に詰まり、脱水ケーキによる閉塞が生じる。
【0008】
ボウルの内部を保守する場合には、ボウルの分解等を伴う工数の多い作業が必要となり、遠心脱水機の設置現場においてボウルを開放することは困難であり、ボウル内の汚泥堆積状況を視認して把握することができない。
【0009】
遠心脱水機は、通常の運転管理として運転停止時に洗浄工程を実施し、機内を洗浄する。しかし、隙間排出部が低含水率ケーキで閉塞した場合には、通常の洗浄工程を実施しても隙間排出部に詰まった脱水ケーキを洗い出すことは困難である。
【0010】
本発明は上記した課題を解決するものであり、隙間排出部の閉塞解除や清掃等の保守管理を容易に行うことができる遠心分離機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の遠心分離機は、回転軸心廻りに回転するボウルと、前記ボウルの回転軸心方向で前記ボウルの一端側に設けた分離液排出口と、前記ボウルの回転軸心方向で前記ボウルの他端側に設けた脱水ケーキ排出口と、前記ボウルと同回転軸心廻りに回転するスクリューコンベアを備え、前記ボウルは、内周面が前記ボウルの回転軸心方向に伸びるボウル分離部と、前記ボウル分離部から前記脱水ケーキ排出口に向けて内周面がテーパー状に狭まるボウル排出部を有し、前記スクリューコンベアは、内胴と内胴外周に螺旋状に設けた羽根を有し、前記内胴は、前記ボウル分離部に対応して外周面が前記内胴の回転軸心方向に伸びる内胴分離部と、前記ボウル排出部に対応して前記脱水ケーキ排出口に向けて外周面がテーパー状に狭まる内胴排出部を有し、前記ボウル排出部の内周面と前記内胴排出部の外周面の間に隙間排出部を有し、前記ボウルが前記隙間排出部に臨む位置に保守用開孔を有し、前記保守用開孔を塞ぐプラグを着脱自在に設けたことを特徴とする。
【0012】
本発明の遠心分離機において、前記内胴は、前記内胴分離部から前記内胴排出部に向けて外周面がテーパー状に広がる内胴圧縮部を有することを特徴とする。
【0013】
本発明の遠心分離機において、前記保守用開孔および前記プラグは、前記ボウルの周方向の複数個所に設けたことを特徴とする。
【0014】
本発明の遠心分離機において、前記保守用開孔および前記プラグは、前記ボウル分離部と前記ボウル排出部の境の近傍に位置することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態における遠心分離機を示す断面図
図2】同実施の形態における保守用開孔およびプラグを示すボウル軸心方向の断面図
図3】同実施の形態における保守用開孔およびプラグを示すボウル径方向の断面図
図4】同実施の形態における保守用開孔およびプラグを示すボウル軸心方向の断面図
図5】同実施の形態における保守用開孔およびプラグを示すボウル径方向の断面図
図6】本発明の他の実施の形態における遠心分離機を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態に係る遠心分離機を図面に基づいて説明する。
(構造)
図1において、遠心分離機100は、円筒直胴状のボウル106とボウル106の内部に配置する内胴107とを同心状に有し、ボウル106が軸受け部105a、105bを介して内胴107の回転軸心方向の両端の回転軸部107a、107bを回転可能に支持しており、同心状に配置されたボウル106と内胴107は同じ回転軸心廻りに回転可能であり、油圧モータ(図示省略)により内胴107がボウル106に対して所定の差速で回転する。
【0017】
内胴107は内胴外周に回転軸心の周りに螺旋状に設けた羽根108を有してスクリューコンベア109を構成している。
【0018】
ボウル106は、回転軸心方向の一端側に分離液排出口112を有し、他端側に脱水ケーキ排出口113を有しており、内周面が回転軸心方向に伸びる円筒直胴状のボウル分離部130と、ボウル分離部130から脱水ケーキ排出口113に向けて内周面がテーパー状に狭まるボウル排出部140を有している。
【0019】
ボウル分離部130は、回転軸心方向の一端側が主として分離した水分の分離液が滞留する分離液領域部110であり、回転軸心方向の他端側が主として分離した固形分の脱水ケーキを移送する脱水ケーキ領域部111である。
【0020】
分離液排出口112は、ボウル106の回転軸心方向の一端側の端部壁の複数個所に設けており、回転軸心から等距離の位置に、かつ回転軸心廻りに所定間隔で配置している。各分離液排出口112には越流堰をなすダムプレート(図示省略)が各分離液排出口の開口の一部を覆って装着されている。
【0021】
ダムプレートは、ボウル106のボウル径方向における位置を調整することにより、分離液の上限水位となる分離液排出口112での堰高さを設定する。脱水ケーキ排出口113は回転軸心を中心とする放射状の複数個所に、かつ回転軸心廻りに所定間隔で配置されている。
【0022】
内胴107は、外周面が回転軸心方向に伸びる内胴分離部150と、外周面がボウルの他端側に向けてテーパー状に広がる内胴圧縮部160と、内胴圧縮部160から脱水ケーキ排出口113に向けて外周面がテーパー状に狭まる内胴排出部170を有する。
【0023】
ボウル排出部140の内周面と内胴排出部170の外周面の間が隘路の隙間排出部180をなし、隙間排出部180により脱水ケーキ領域部111と脱水ケーキ排出口113が連通している。
【0024】
ボウル106は、隙間排出部180に臨む位置、ここではボウル分離部130とボウル排出部140の境の近傍の位置に、保守用開孔190を有しており、保守用開孔190にプラグ200を着脱自在に設けている。保守用開孔190およびプラグ200は、ボウル106の周方向の複数個所に設けている。
【0025】
ここでは、保守用開孔190に座繰り部191とネジ穴192を形成し、プラグ200に座繰り部191に埋まる頭部201とネジ穴192に螺合するネジ軸202を形成し、プラグ200が保守用開孔190に螺合結合している。
【0026】
また、保守用開孔190とプラグ200は、図4および図5に示す構成とすることも可能である。すなわち、保守用開孔190に座繰り部191と貫通孔193を形成し、プラグ200に座繰り部191に埋まる頭部201と貫通孔193に挿入する軸部203を形成し、プラグ200を保守用開孔190に挿入する。そして、頭部201に形成した通し孔204に固定ネジ205を挿入し、ボウル106に形成した通しネジ孔206に固定ネジ205を螺合させて、プラグ200をボウル106にネジ固定している。
【0027】
汚泥供給管120は、分離液領域部110の側の回転軸部106aを貫通して内胴107の内部に挿入されており、先端開口120aが内胴107の汚泥投入部121に連通している。薬剤供給管122は、汚泥供給管120の外側に二重管状に配置しており、先端開口122aが内胴107の汚泥投入部121に連通している。
【0028】
内胴107の汚泥投入部121に対応する周壁には、分離液領域部110の内部に向けて開口する複数の汚泥投入口121aが回転軸心を中心とする放射状の位置に、かつ回転軸心廻りに所定間隔で配置されている。
(運転)
以上の構成においては、原汚泥を、汚泥供給管120を通して高速回転する内胴107の汚泥投入部121に供給するとともに、高分子凝集剤を、薬剤供給管122を通して高速回転する内胴107の汚泥投入部121に供給して混合し、原汚泥と高分子凝集剤の混合汚泥(スラリー)を汚泥投入部121の汚泥投入口121aから高速回転するボウル106の内部に投入する。
【0029】
ボウル106の内部で凝集した汚泥フロックを含む混合汚泥は、遠心力を受けて比重差により分離液と脱水ケーキとに固液分離される。ボウル106と回転数差(差速)をもつスクリューコンベア109が脱水ケーキを分離液領域部112から脱水ケーキ領域部111に移送する。脱水ケーキは、内胴圧縮部160を移動する間に圧縮されて含水率がさらに低下し、隙間排出部180を通って脱水ケーキ排出口113からボウル106の外部へ排出される。
【0030】
分離液は、ボウル106の分離液排出口112からダムプレートを越流してボウル106の外部へ排出される。
(保守管理)
隙間排出部180が閉塞した場合等の保守管理時には、プラグ200を外して保守用開孔190を開放する。保守用開孔190は、ボウル106の隙間排出部180に臨む位置にあるので、保守用開孔190を通して隙間排出部180の脱水ケーキの堆積状態を視認し、把握することができる。そして、隙間排出部180に詰まった脱水ケーキを洗い流す洗浄作業を保守用開孔から行うことができ、機体の分解作業等を行うことなく保守管理を実施できる。
【0031】
図6は、本発明の他の実施の形態を示すものであり、先の実施の形態と同様の作用を行う部材には同符号を付して説明を省略する。
【0032】
本実施の形態では、先の実施の形態における内胴圧縮部160が存在せず、内胴107は、ボウル分離部130に対応して外周面が回転軸心方向に伸びる内胴分離部150と、ボウル排出部140に対応して脱水ケーキ排出口113に向けて外周面がテーパー状に狭まる内胴排出部170からなる。内胴分離部150は内胴排出部170に続く終端において外径が内胴排出部170の最大外径にまで拡がっている。
【符号の説明】
【0033】
105a、105b 軸受け部
106 ボウル
106a、106b 回転軸部
107 内胴
107a、107b 回転軸部
108 羽根
109 スクリューコンベア
110 分離液領域部
111 脱水ケーキ領域部
112 分離液排出口
113 脱水ケーキ排出口
120 汚泥供給管
120a 先端開口
121 汚泥投入部
121a 汚泥投入口
122 薬剤供給管
122a 先端開口
130 ボウル分離部
140 ボウル排出部
150 内胴分離部
160 内胴圧縮部
170 内胴排出部
180 隙間排出部
190 保守用開孔
191 座繰り部
192 ネジ穴
193 貫通孔
200 プラグ
201 頭部
202 ネジ軸
203 軸部
204 通し孔
205 固定ネジ
206 ネジ孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6