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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】造形システム及び造形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/386 20170101AFI20240523BHJP
   B33Y 50/00 20150101ALI20240523BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20240523BHJP
   B29C 64/10 20170101ALI20240523BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240523BHJP
   B29C 64/20 20170101ALI20240523BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
B29C64/386
B33Y50/00
B33Y30/00
B29C64/10
B33Y10/00
B29C64/20
G06T1/00 340A
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021045741
(22)【出願日】2021-03-19
(65)【公開番号】P2022144648
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2023-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【弁理士】
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142653
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】原山 健次
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-139593(JP,A)
【文献】特開2020-062322(JP,A)
【文献】特開2005-078646(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/386
B33Y 50/00
B33Y 30/00
B29C 64/10
B33Y 10/00
B29C 64/20
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体的な造形物を造形する造形システムであって、
造形すべき前記造形物を示すデータである造形物データを生成するデータ生成部と、
前記データ生成部において生成する前記造形物データに基づいて前記造形物の造形を行う造形実行部と
を備え、
前記データ生成部は、
造形の対象物となる人間を3Dスキャナで読み取ることで生成するデータである対象物データを取得するデータ取得処理と、
前記対象物データに対する補正を行うデータ補正処理と、
前記データ補正処理において補正を行った後の前記対象物データに基づいて前記造形物データを生成する造形物データ生成処理と
を行い、
前記対象物データは、前記人間の顔を含む前記人間の少なくとも一部の形状と、当該形状の表面の各位置の色とを少なくとも示すデータであり、
前記データ補正処理において、前記データ生成部は、前記対象物データを補正することで、前記対象物データが示す前記人間の顔の状態を変化させることを特徴とする造形システム。
【請求項2】
前記データ補正処理において、前記データ生成部は、前記対象物データが示す前記形状を変化させることを特徴とする請求項1に記載の造形システム。
【請求項3】
前記データ補正処理において、前記データ生成部は、前記人間の顔における目、鼻、及び口の少なくともいずれかに対応する部分について、前記対象物データが示す前記形状を変化させることを特徴とする請求項2に記載の造形システム。
【請求項4】
前記データ補正処理において、前記データ生成部は、前記人間の顔における目、鼻、及び口の少なくともいずれかに対応する部分の少なくとも一部について、前記造形物の表面と直交する方向である法線方向において前記表面の位置が変化するように、前記対象物データが示す前記形状を変化させることを特徴とする請求項3に記載の造形システム。
【請求項5】
前記データ補正処理において、前記データ生成部は、前記対象物データが示す前記人間の顔の少なくとも一部の色が変わるように、前記対象物データが示す色を変化させることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の造形システム。
【請求項6】
前記データ補正処理において、前記データ生成部は、前記対象物データに対して行う補正を示す指示である補正指示をユーザから受け取り、前記補正指示に基づき、前記対象物データの補正を行うことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の造形システム。
【請求項7】
前記データ生成部は、前記ユーザへの画面表示を行う表示部を有し、
前記データ補正処理において、前記データ生成部は、前記対象物データが示す前記人間の少なくとも一部を前記表示部に立体的に表示しつつ、前記補正指示を前記ユーザから受け取ることを特徴とする請求項6に記載の造形システム。
【請求項8】
前記データ補正処理において、前記データ生成部は、前記補正指示に従って前記対象物データを補正した場合の補正後の前記対象物データに基づいて生成される前記造形物データを用いる場合に造形される前記造形物である予測造形物の少なくとも一部を前記表示部に表示しつつ、前記補正指示を前記ユーザから受け取ることを特徴とする請求項7に記載の造形システム。
【請求項9】
前記データ生成部は、互いに異なる複数種類の補正モードの中からいずれかの前記補正モードを選択する指示を前記ユーザから受け取る補正モード選択処理を更に行い、
前記複数種類の補正モードのそれぞれは、前記補正指示の指定の仕方と対応付けられており、
前記データ補正処理において、前記データ生成部は、前記補正モード選択処理で選択された前記補正モードに対応付けられている指定の仕方で前記補正指示を前記ユーザから受け取り、当該補正指示に基づき、前記対象物データに対する補正を行うことを特徴とする請求項6から8のいずれかに記載の造形システム。
【請求項10】
前記補正モード選択処理において、前記データ生成部は、
補正の強さを示すパラメータの指定を前記ユーザから受け付けることなく予め設定された補正を行う前記補正モードである所定補正モードと、
前記パラメータの指定を前記ユーザから受け付けることで前記パラメータによって指定される強さでの補正を行う前記補正モードであるパラメータ指定モードと
を含む前記複数種類の補正モードの中からいずれかの前記補正モードを選択する指示を前記ユーザから受け取ることを特徴とする請求項9に記載の造形システム。
【請求項11】
前記補正モード選択処理において、前記データ生成部は、
前記対象物データが示す前記対象物の形状を前記ユーザの操作に応じて変化させる補正を行う前記補正モードである形状調整モードを更に含む前記複数種類の補正モードの中からいずれかの前記補正モードを選択する指示を前記ユーザから受け取ることを特徴とする請求項10に記載の造形システム。
【請求項12】
前記対象物データは、UV座標系を使ってテクスチャをマッピングすることで前記表面の各位置の色が設定されるデータであり、
前記データ補正処理において、前記データ生成部は、前記対象物データにおいてマッピングされている前記テクスチャが示す画像の中で前記人間の顔を示す領域である顔領域を識別し、識別した前記顔領域に基づき、前記対象物データが示す前記人間の顔の状態を変化させることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の造形システム。
【請求項13】
前記データ補正処理において、前記データ生成部は、前記顔領域の中で前記人間の目を示す領域である目領域を更に識別し、前記対象物データが示す前記人間の顔における目の状態が変化するように、前記対象物データに対する補正を行うことを特徴とする請求項12に記載の造形システム。
【請求項14】
前記データ補正処理において、前記データ生成部は、前記UV座標系の各位置と前記テクスチャの各位置との対応関係を示すUVマップで前記目領域が対応付けられる位置を変化させることで、前記対象物データが示す前記人間の顔における目の状態が変化するように、前記対象物データに対する補正を行うことを特徴とする請求項13に記載の造形システム。
【請求項15】
前記データ補正処理において、前記データ生成部は、前記対象物データが示す前記人間の顔における肌の色が変化するように、前記対象物データに対する補正を行うことを特徴とする請求項12から14のいずれかに記載の造形システム。
【請求項16】
前記造形実行部は、造形の材料となるインクを吐出するインクジェットヘッドを備え、前記インクの層を複数層重ねることで、前記造形物を造形することを特徴とする請求項1から15のいずれかに記載の造形システム。
【請求項17】
立体的な造形物を造形する造形方法であって、
造形すべき前記造形物を示すデータである造形物データを生成するデータ生成段階と、
前記データ生成段階において生成する前記造形物データに基づいて前記造形物の造形を行う造形実行段階と
を備え、
前記データ生成段階において、
造形の対象物となる人間を3Dスキャナで読み取ることで生成するデータである対象物データを取得するデータ取得処理と、
前記対象物データに対する補正を行うデータ補正処理と、
前記データ補正処理において補正を行った後の前記対象物データに基づいて前記造形物データを生成する造形物データ生成処理と
を行い、
前記対象物データは、前記人間の顔を含む前記人間の少なくとも一部の形状と、当該形状の表面の各位置の色とを少なくとも示すデータであり、
前記データ補正処理において、前記対象物データを補正することで、前記対象物データが示す前記人間の顔の状態を変化させることを特徴とする造形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造形システム及び造形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェットヘッドを用いて造形物を造形する造形装置(3Dプリンタ)が知られている(例えば、特許文献1参照。)。このような造形装置においては、例えば、インクジェットヘッドにより形成するインクの層を複数層重ねることにより、積層造形法で造形物を造形する。また、造形装置においては、通常、造形しようとする造形物を示す造形物データに基づき、造形の動作を実行する。この場合、造形物データについて、例えば、造形しようとする対象物(造形の対象物)の形状や色を3Dスキャナ等の装置で読み取ることで作成することが考えられる。この場合、造形の対象物については、例えば、造形物によって表現しようとする対象等と考えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-071282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
3Dスキャナ等で造形の対象物の形状や色を読み取って造形物データを生成する場合、通常、できるだけ正確に形状や色を読み取ることが好ましいと考えられる。これに対し、本願の発明者は、実際に様々な造形物を造形する実験等を行うことで、造形の対象物によっては、単に正確に形状や色を読み取る以外の方法で造形物データを生成することが好ましい場合があることを見出した。そのため、従来、より適切な方法で造形物の造形を行うことが望まれていた。そこで、本発明は、上記の課題を解決できる造形システム及び造形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の発明者は、様々な造形の対象物について、形状や色を3Dスキャナ等で読み取ることで造形物データを生成し、その造形物データに基づいて造形物を造形することを考えた。そして、例えば造形の対象物が人間である場合について、形状や色を3Dスキャナ等で正確に読み取るのみでは、好ましい造形物を造形することが難しいことを見出した。より具体的に、人間を示す造形物を造形する場合、例えば、実際の人間よりも縮小したサイズでの造形を行うことが考えられる。そして、この場合、サイズが変わることの影響により、実際の人間(人物)の形状や色を忠実に再現しても、実際の人間と印象が大きく変わる場合がある。また、人間を示す造形物を造形する場合には、必ずしも実際の人間を忠実に再現することが好ましいわけではなく、例えば人物の個性を強調するように造形を行うことや、見た目の印象をよくして造形を行うことが望ましい場合もある。
【0006】
これに対し、本願の発明者は、造形の対象物となる人間を3Dスキャナで読み取ることで生成するデータに対して補正を行うことで、人間を示す造形物の造形をより適切に行うことを考えた。また、更なる鋭意研究により、このような効果を得るために必要な特徴を見出し、本発明に至った。上記の課題を解決するために、本発明は、立体的な造形物を造形する造形システムであって、造形すべき前記造形物を示すデータである造形物データを生成するデータ生成部と、前記データ生成部において生成する前記造形物データに基づいて前記造形物の造形を行う造形実行部と備え、前記データ生成部は、造形の対象物となる人間を3Dスキャナで読み取ることで生成するデータである対象物データを取得するデータ取得処理と、前記対象物データに対する補正を行うデータ補正処理と、前記データ補正処理において補正を行った後の前記対象物データに基づいて前記造形物データを生成する造形物データ生成処理とを行い、前記対象物データは、前記人間の顔を含む前記人間の少なくとも一部の形状と、当該形状の表面の各位置の色とを少なくとも示すデータであり、前記データ補正処理において、前記データ生成部は、前記対象物データを補正することで、前記対象物データが示す前記人間の顔の状態を変化させることを特徴とする。
【0007】
このように構成した場合、例えば、人間を3Dスキャナで読み取ることで生成する対象物データに対し、造形物で表現する人間の顔の状態を変化させるための補正を適切に行うことができる。また、補正後の対象物データに基づいて造形物データを生成し、造形物データに基づいて造形実行部での造形を実行することで、補正の結果を反映した造形物を適切に造形することができる。また、これにより、例えば、所望の状態で人間(人物)を示す造形物の造形をより適切に行うことができる。
【0008】
この構成において、3Dスキャナについては、例えば、対象物の少なくとも一部の色及び形状を読み取る読取装置等と考えることができる。この場合、対象物の色については、例えば、対象物の表面の色等と考えることができる。また、造形システムは、3Dスキャナを更に備えてもよい。また、データ補正処理でのデータ生成部動作に関し、対象物データが示す人間の顔の状態を変化させることについては、例えば、顔の少なくとも一部における形状や色を変化させること等と考えることができる。また、対象物データが示す人間の顔の状態を変化させることについては、例えば、対象物データが示す形状及び色で表現される人間の表情を変化させること等と考えることもできる。また、この構成において、造形実行部は、例えば、造形の材料となるインクを吐出するインクジェットヘッドを備える。この場合、造形実行部は、例えば、インクの層を複数層重ねることで、造形物を造形する。このように構成すれば、例えば、造形実行部において造形物の造形を適切に実行することができる。
【0009】
また、データ補正処理において、データ生成部は、例えば、対象物データが示す形状を変化させる。このように構成すれば、例えば、対象物データに対する補正を適切に行うことができる。また、より具体的に、データ補正処理において、データ生成部は、例えば、人間の顔における目、鼻、及び口の少なくともいずれかに対応する部分について、対象物データが示す形状を変化させる。このように構成すれば、例えば、対象物データが示す人間の顔の状態を適切に変化させることができる。また、更に具体的に、データ補正処理において、データ生成部は、例えば、人間の顔における目、鼻、及び口の少なくともいずれかに対応する部分の少なくとも一部について、造形物の表面と直交する方向である法線方向において表面の位置が変化するように、対象物データが示す形状を変化させる。このように構成すれば、例えば、対象物データにおいて目、鼻、口等を示す形状を適切に変化させることができる。また、この場合、人間の顔における目、鼻、及び口の少なくともいずれかに対応する部分についてデータが示す形状を変化させる動作については、例えば、人間の顔を構成するパーツの形状を変化させる補正等と考えることもできる。また、データ補正処理において、データ生成部は、例えば、人間の顔における目、鼻、及び口以外のパーツ(例えば、耳、又は眉等)に対応する部分について、対象物データが示す形状を変化させてもよい。
【0010】
また、データ補正処理において、データ生成部は、対象物データが示す色を変化させてもよい。この場合、データ補正処理において、データ生成部は、例えば、対象物データが示す人間の顔の少なくとも一部の色が変わるように、対象物データが示す色を変化させる。このように構成すれば、例えば、対象物データが示す人間の顔の状態をより適切に変化させることができる。また、この場合、対象物データが示す人間の顔の少なくとも一部の色が変わる補正としては、例えば、対象物データが示す人間の顔における瞳の色が変化するように対象物データの補正を行うことが考えられる。また、対象物データが示す人間の顔の少なくとも一部の色が変わる補正として、例えば、対象物データが示す人間の顔における口(唇)、鼻、耳、又は肌の色(皮膚の色)が変化するように対象物データの補正を行うこと等も考えられる。また、この場合、顔の一部の色を変化させることで、対象物データが示す人間の顔におけるパーツ(例えば、目)の大きさを変化させること等も考えられる。
【0011】
また、この構成において、対象物データとしては、例えば、UV座標系を使ってテクスチャをマッピングすることで表面の各位置の色が設定されるデータを用いることが考えられる。この場合、対象物データが示す色を変化させる補正については、例えば、テクスチャが示す画像の色を変化させることで行うことができる。より具体的に、この場合、データ補正処理において、データ生成部は、例えば、対象物データにおいてマッピングされているテクスチャが示す画像の中で人間の顔を示す領域である顔領域を識別する。そして、識別した顔領域に基づき、対象物データが示す人間の顔の状態を変化させる。このように構成すれば、例えば、対象物データに対する補正を適切に行うことができる。また、この場合、例えば、顔領域の少なくとも一部の色を変化させること等が考えられる。このように構成すれば、例えば、対象物データが示す色を変化させる補正を適切に行うことができる。また、データ補正処理において、データ生成部は、更に、例えば、顔領域の中で人間の目を示す領域である目領域を識別し、対象物データが示す人間の顔における目の状態が変化するように、対象物データに対する補正を行う。このように構成すれば、例えば、対象物データが示す人間の顔の印象を容易かつ適切に変化させることができる。また、この場合、例えば、目における黒目と白目とのコントラストを上げる補正や、目のサイズを大きくする補正を行うこと等が考えられる。
【0012】
また、データ補正処理において、データ生成部は、例えば、UVマップで目領域が対応付けられる位置を変化させることで、対象物データが示す人間の顔における目の状態が変化するように、対象物データに対する補正を行う。この場合、UVマップについては、例えば、UV座標系の各位置とテクスチャの各位置との対応関係を示すデータ等と考えることができる。このように構成すれば、例えば、対象物データが示す人間の顔における目の状態を適切に変化させることができる。また、この場合、例えば、テクスチャが示す画像自体は変化させずに、UVマップで目領域が対応付けられる位置を変化させてもよい。このように構成すれば、例えば、より自然に目の印象を変化させることができる。
【0013】
また、データ補正処理では、例えば、人間の肌の色を変化させる補正を行うこと等も考えられる。この場合、データ補正処理において、データ生成部は、例えば、対象物データが示す人間の顔における肌の色が変化するように、対象物データに対する補正を行う。また、上記のような色の補正を行う場合、データ補正処理において、データ生成部は、対象物データが示す形状を変化させずに、テクスチャが示す画像を変化させてもよい。このように構成した場合、例えば、形状を変化させないことで、より容易に対象物データの補正を行うことができる。
【0014】
また、データ補正処理において、データ生成部は、例えば、対象物データに対して行う補正を示す指示である補正指示をユーザから受け取り、補正指示に基づき、対象物データの補正を行う。このように構成すれば、例えば、ユーザの意向に沿った補正を適切に行うことができる。また、データ生成部は、ユーザへの画面表示を行う表示部を有してよい。表示部としては、例えば、公知のモニタ等の画像表示装置を好適に用いることができる。この場合、データ補正処理において、データ生成部は、例えば、対象物データが示す人間の少なくとも一部を表示部に立体的に表示しつつ、補正指示をユーザから受け取る。このように構成すれば、例えば、補正指示をより適切に受け取ることができる。また、この場合、表示部に立体的に表示することについては、例えば、表示している物の立体的な形状をユーザが認識できるように表示を行うこと等と考えることができる。また、このような表示としては、例えば、公知の3D表示技術を用いた表示等を行うことが考えられる。
【0015】
また、対象物データが示す人間の少なくとも一部を表示部に立体的に表示することについては、例えば、造形しようとする造形物の造形結果の予測を表示すること等と考えることもできる。この場合、データ生成部の動作について、例えば、造形結果の予測を表示しつつ補正指示をユーザから受け取る動作と考えることができる。より具体的に、この場合、データ補正処理において、データ生成部は、例えば、補正指示に従って対象物データを補正した場合の補正後の対象物データに基づいて生成される造形物データを用いる場合に造形される造形物である予測造形物の少なくとも一部を表示部に表示しつつ、補正指示をユーザから受け取る。このように構成した場合、ユーザは、例えば、所望の補正を行うための補正指示をより適切に決定することができる。また、これにより、例えば、データ生成部において、補正指示をより適切に受け取ることができる。
【0016】
また、この構成において、データ生成部では、例えば、ユーザに選択される補正モードでの補正を行うことが考えられる。より具体的に、この場合、データ生成部では、例えば、ユーザによって選択可能な互いに異なる複数種類の補正モードを用いることが考えられる。また、複数種類の補正モードのそれぞれについては、例えば、補正指示の指定の仕方と対応付けておくことが考えられる。この場合、データ生成部は、例えば、複数種類の補正モードの中からいずれかの補正モードを選択する指示をユーザから受け取る補正モード選択処理を更に行う。また、データ補正処理において、データ生成部は、例えば、補正モード選択処理で選択された補正モードに対応付けられている指定の仕方で補正指示をユーザから受け取り、当該補正指示に基づき、対象物データに対する補正を行う。このように構成すれば、例えば、様々な補正モードでの対象物データに対する補正を適切に行うことができる。
【0017】
また、この場合、例えば、指示の詳細さが互いに異なる複数種類の補正モードを用いることが考えられる。このように構成すれば、例えば、ユーザが求める品質等に応じて、補正の指示の与え方を適切に変化させることができる。また、より具体的に、この場合、補正モード選択処理において、データ生成部は、例えば、補正の強さを示すパラメータの指定をユーザから受け付けることなく予め設定された補正を行う補正モードである所定補正モードと、パラメータの指定をユーザから受け付けることでパラメータによって指定される強さでの補正を行う補正モードであるパラメータ指定モードとを含む複数種類の補正モードの中からいずれかの補正モードを選択する指示をユーザから受け取る。このように構成すれば、例えば、ユーザが求める品質等に応じて、様々な補正モードでの対象物データに対する補正を適切に行うことができる。また、この場合、所定補正モードについては、例えば、補正の強さを示すパラメータを用いずに補正の内容を指定することで簡単な補正を行う補正モード等と考えることもできる。パラメータ指定モードについては、例えば、補正の強さを示すパラメータを用いてより具体的に補正の仕方を指定することでより詳細な補正を行う補正モード等と考えることができる。
【0018】
また、補正モードとしては、例えば、パラメータ指定モードよりも詳細に補正の仕方を指定する補正モード等を更に用いてもよい。この場合、例えばポリゴン編集等によって対象物データが示す対象物の形状を変化させる操作をユーザに直接行わせる補正モード等を用いることが考えられる。また、より具体的に、この場合、補正モード選択処理において、データ生成部は、例えば、対象物データが示す対象物の形状をユーザの操作に応じて変化させる補正を行う補正モードである形状調整モードを更に含む複数種類の補正モードの中からいずれかの補正モードを選択する指示をユーザから受け取る。このように構成すれば、例えば、様々な補正モードでの対象物データに対する補正をより適切に行うことができる。
【0019】
また、本発明の構成として、上記と同様の特徴を有する造形方法等を用いることも考えられる。この場合も、例えば、上記と同様の効果を得ることができる。また、この場合、造形方法について、例えば、造形物の製造方法等と考えることもできる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、例えば、人間を示す造形物の造形をより適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る造形システム10の一例を示す図である。図1(a)は、造形システム10の構成の一例を示す。図1(b)は、造形装置12の要部の構成の一例を示す。図1(c)は、ヘッド部102の構成の一例を示す。
図2】造形物50の構成、及び造形物データを生成する動作について更に詳しく説明をする図である。図2(a)は、造形装置12により造形する造形物50の構成の一例を示す。図2(b)は、制御PC14において造形物データを生成する動作の一例を示すフローチャートである。
図3】制御PC14においてスキャンデータに対して行う補正の動作の一例を示すフローチャートである。
図4】目調整の動作について更に詳しく説明をする図である。
図5】補正の指示の受け取り方等について更に詳しく説明をする図である。図5(a)は、補正モードの選択を受け取る画面の一例を示す。図5(b)は、補正モードとして詳細モードが指定された場合にユーザに示す画面の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る造形システム10の一例を示す。図1(a)は、造形システム10の構成の一例を示す。本例において、造形システム10は、立体的な造形物を造形する造形システムであり、造形装置12、制御PC14、及び3Dスキャナ16を備える。造形システム10において造形する造形物については、例えば、立体的な三次元構造物等と考えることができる。
【0023】
造形装置12は、造形物の造形を実行する造形実行部の一例であり、制御PC14の制御に応じて、造形物を造形する。また、本例において、造形装置12は、フルカラーでの着色がされた造形物を造形可能なフルカラー造形装置であり、造形しようとする造形物を示すデータである造形物データを制御PC14から受け取り、造形物データに基づいて、造形物を造形する。また、本例において、造形装置12において造形物を造形する動作は、造形実行段階の動作の一例である。
【0024】
制御PC14は、造形装置12の動作を制御するコンピュータ(ホストPC)であり、造形物データを造形装置12へ供給することにより、造形装置12による造形の動作を制御する。また、本例において、制御PC14は、3Dスキャナ16から受け取るスキャンデータに基づき、外部から色彩を視認できる表面に着色がされた造形物を示す造形物データを生成して、造形装置12へ供給する。造形物データについては、例えば、造形装置12において造形すべき造形物を示すデータ等と考えることができる。また、造形物データについて、例えば、造形装置12への入力データ等と考えることもできる。また、本例において、制御PC14は、データ生成部の一例である。制御PC14において造形物データを生成する動作は、データ生成段階の動作の一例である。また、制御PC14が3Dスキャナ16から受け取るスキャンデータは、対象物データの一例である。本例において、制御PC14は、ユーザの指示に基づいてスキャンデータの補正を行って、補正後のスキャンデータに基づき、造形物データを生成する。制御PC14においてスキャンデータに対して行う補正については、後に更に詳しく説明をする。
【0025】
3Dスキャナ16は、立体物の形状及び色を読み取る装置である。3Dスキャナ16としては、公知の3Dスキャナ等を好適に用いることができる。3Dスキャナ16については、例えば、造形の対象物の少なくとも一部の色及び形状を読み取る読取装置等と考えることができる。この場合、対象物の色については、例えば、対象物の表面の色等と考えることができる。また、本例において、3Dスキャナ16は、読み取り対象となる立体物の少なくとも一部について、形状と表面の色とを示すスキャンデータを生成する。スキャンデーについては、例えば、3Dスキャナ16で立体物のスキャンを行うことで生成されるデータ等と考えることができる。また、スキャンデータにおいて、立体物の形状については、例えば、3Dモデル用の公知の形式で形状を示すデータを用いて示すことが考えられる。立体物の表面の色については、例えば、立体的な形状(立体形状)の表面に貼り付けるテクスチャが示す画像(テクスチャ画像)を用いて示すことが考えられる。また、本例のスキャンデータにおいては、立体形状について、UVマッピング法によって表面へのテクスチャの貼り付けが可能な形式で示す。また、表面の色について、UVマップ法で立体形状にテクスチャを貼り付けることで示す。この場合、スキャンデータについて、例えば、UV座標系を使ってテクスチャをマッピングすることで表面の各位置の色が設定されるデータ等と考えることができる。
【0026】
また、本例において、造形システム10では、人間を示す造形物の造形を行う。そして、3Dスキャナ16では、造形の対象物となる人間に対して読み取りを実行することで、その人間の形状及び色を示すスキャンデータを生成する。そして、3Dスキャナ16は、生成したスキャンデータを、制御PC14へ供給する。本例によれば、例えば、人間を示す造形物(例えば、フィギュア等)を適切に造形することができる。
【0027】
尚、本例において、造形システム10は、3台の装置である造形装置12、制御PC14、及び3Dスキャナ16により構成されている。造形システム10の変形例において、造形システム10は、これら以外の装置を更に備えてもよい。また、造形システム10の変形例においては、例えば、2台以下の装置で造形システム10を構成すること等も考えられる。この場合、例えば、制御PC14の機能を兼ねた造形装置12を用いること等が考えられる。
【0028】
続いて、造形装置12の具体的な構成について、説明をする。図1(b)は、造形装置12の要部の構成の一例を示す。本例において、造形装置12は、立体的な造形物50を造形する造形装置であり、ヘッド部102、造形台104、走査駆動部106、及び制御部110を有する。以下に説明をする点を除き、造形装置12は、公知の造形装置と同一又は同様の構成を有してよい。より具体的に、以下に説明をする点を除き、造形装置12は、インクジェットヘッドを用いて造形物50の材料となる液滴を吐出することで造形を行う公知の造形装置と同一又は同様の特徴を有してよい。また、造形装置12は、図示した構成以外にも、例えば、造形物50の造形等に必要な各種構成を更に備えてよい。また、本例において、造形装置12は、積層造形法により立体的な造形物50を造形する造形装置(3Dプリンタ)である。積層造形法については、例えば、複数の層を重ねて造形物50を造形する方法等と考えることができる。
【0029】
ヘッド部102は、造形物50の材料を吐出する構成である。また、本例において、造形物50の材料としては、インクを用いる。インクについては、例えば、機能性の液体等と考えることができる。また、インクについて、例えば、インクジェットヘッドから吐出する液体等と考えることもできる。本例において、ヘッド部102は、造形物50の材料として、複数のインクジェットヘッドから、所定の条件に応じて硬化するインクを吐出する。そして、着弾後のインクを硬化させることにより、造形物50を構成する各層を重ねて形成して、積層造形法で造形物を造形する。また、本例では、このようなインクとして、紫外線の照射により液体状態から硬化する紫外線硬化型インク(UVインク)を用いる。また、ヘッド部102は、造形物50の材料に加え、サポート層52の材料を更に吐出する。これにより、ヘッド部102は、造形物50の周囲等に、必要に応じて、サポート層52を形成する。サポート層52については、例えば、造形中の造形物50の少なくとも一部を支持する積層構造物等と考えることができる。サポート層52は、造形物50の造形時において、必要に応じて形成され、造形の完了後に除去される。
【0030】
造形台104は、造形中の造形物50を支持する台状部材であり、ヘッド部102におけるインクジェットヘッドと対向する位置に配設され、造形中の造形物50及びサポート層52を上面に載置する。また、本例において、造形台104は、積層方向(図中のZ方向)へ移動可能な構成を有しており、走査駆動部106に駆動されることにより、造形物50の造形の進行に合わせて、積層方向への移動を行う。この場合、積層方向については、例えば、積層造形法において造形の材料が積層される方向等と考えることができる。また、本例において、積層方向は、造形装置12において予め設定される主走査方向(図中のY方向)及び副走査方向(図中のX方向)と直交する方向である。
【0031】
走査駆動部106は、造形中の造形物50に対して相対的に移動する走査動作をヘッド部102に行わせる駆動部である。本例において、造形中の造形物50に対して相対的に移動することについては、例えば、造形台104に対して相対的に移動すること等と考えることができる。また、ヘッド部102に走査動作を行わせることについては、ヘッド部102が有するインクジェットヘッドに走査動作を行わせること等と考えることができる。また、本例において、走査駆動部106は、走査動作として、主走査動作(Y走査)、副走査動作(X走査)、及び積層方向走査動作(Z走査)をヘッド部102に行わせる。
【0032】
この場合、主走査動作については、例えば、造形中の造形物50に対して相対的に主走査方向へ移動しつつインクを吐出する動作等と考えることができる。副走査動作については、例えば、主走査方向と直交する副走査方向へ造形中の造形物50に対して相対的に移動する動作等と考えることができる。また、副走査動作については、例えば、予め設定された送り量だけ副走査方向へ造形台104に対して相対的に移動する動作等と考えることもできる。本例において、走査駆動部106は、ヘッド部102に主走査動作及び副走査動作を行わせることで、ヘッド部102にインクの層を形成させる。また、積層方向走査動作については、例えば、造形中の造形物50に対して相対的に積層方向へ移動する動作等と考えることができる。走査駆動部106は、造形の動作の進行に合わせてヘッド部102に積層方向走査動作を行わせることにより、積層方向において、造形中の造形物50に対するインクジェットヘッドの相対位置を調整する。
【0033】
制御部110は、例えば造形装置12のCPUを含む構成であり、造形装置12の各部を制御することにより、造形物50の造形の動作を制御する。また、本例において、制御部110は、制御PC14から受け取る造形物データに基づき、造形しようとする造形物50の断面を示すデータであるスライスデータを生成する。そして、造形物50を構成するそれぞれのインクの層を形成する動作において、スライスデータに基づいてヘッド部102における各インクジェットヘッドの動作を制御することにより、造形物の造形に用いるインクを各インクジェットヘッドに吐出させる。本例によれば、例えば、造形物50の造形を適切に実行することができる。
【0034】
続いて、造形装置12におけるヘッド部102の構成について、更に詳しく説明をする。図1(c)は、ヘッド部102の構成の一例を示す。本例において、ヘッド部102は、複数のインクジェットヘッド202、複数の紫外線光源204、及び平坦化ローラ206を有する。また、複数のインクジェットヘッド202として、図中において文字s~tを付して区別して示すように、インクジェットヘッド202s、インクジェットヘッド202w、インクジェットヘッド202y、インクジェットヘッド202m、インクジェットヘッド202c、インクジェットヘッド202k、及びインクジェットヘッド202tを有する。これらの複数のインクジェットヘッド202は、副走査方向における位置を揃えて、主走査方向へ並べて配設される。また、それぞれのインクジェットヘッド202は、造形台104と対向する面に、所定のノズル列方向へ複数のノズルが並ぶノズル列を有する。本例において、ノズル列方向は、副走査方向と平行な方向である。
【0035】
また、これらのインクジェットヘッド202のうち、インクジェットヘッド202sは、サポート層52の材料を吐出するインクジェットヘッドである。サポート層52の材料としては、例えば、サポート層用の公知の材料を好適に用いることができる。インクジェットヘッド202wは、白色(W色)のインクを吐出するインクジェットヘッドである。本例において、白色のインクは、光反射性のインクの一例であり、例えば造形物50において光を反射する性質の領域(光反射領域)を形成する場合に用いられる。この光反射領域は、例えば、造形物50表面に対してフルカラー表現での着色を行う場合に、造形物50の外部から入射する光を反射する。フルカラー表現については、例えば、プロセスカラーのインクによる減法混色法の可能な組み合わせで行う色の表現等と考えることができる。
【0036】
インクジェットヘッド202y、インクジェットヘッド202m、インクジェットヘッド202c、インクジェットヘッド202k(以下、インクジェットヘッド202y~kという)は、着色された造形物50の造形時に用いられる着色用のインクジェットヘッドである。より具体的に、インクジェットヘッド202yは、イエロー色(Y色)のインクを吐出する。インクジェットヘッド202mは、マゼンタ色(M色)のインクを吐出する。インクジェットヘッド202cは、シアン色(C色)のインクを吐出する。インクジェットヘッド202kは、ブラック色(K色)のインクを吐出する。また、本例において、YMCKの各色は、プロセスカラーの一例である。インクジェットヘッド202tは、クリアインクを吐出するインクジェットヘッドである。クリアインクについては、例えば、可視光に対して無色で透明(T)なインク等と考えることができる。また、クリアインクについて、例えば、意図的に色材を添加していないインク等と考えることもできる。
【0037】
複数の紫外線光源204は、インクを硬化させるための光源(UV光源)であり、紫外線硬化型インクを硬化させる紫外線を発生する。本例において、複数の紫外線光源204のそれぞれは、間にインクジェットヘッド202の並びを挟むように、ヘッド部102における主走査方向の一端側及び他端側のそれぞれに配設される。紫外線光源204としては、例えば、UVLED(紫外LED)等を好適に用いることができる。また、紫外線光源204として、メタルハライドランプや水銀ランプ等を用いることも考えられる。平坦化ローラ206は、造形物50の造形中に形成されるインクの層を平坦化するための平坦化手段である。平坦化ローラ206は、例えば主走査動作時において、インクの層の表面と接触して、硬化前のインクの一部を除去することにより、インクの層を平坦化する。以上のような構成のヘッド部102を用いることにより、例えば、造形物50を構成するインクの層を適切に形成できる。また、複数のインクの層を重ねて形成することにより、例えば、造形物50を適切に造形できる。
【0038】
尚、ヘッド部102の具体的な構成については、上記において説明をした構成に限らず、様々に変形することもできる。例えば、ヘッド部102は、着色用のインクジェットヘッドとして、上記以外の色用のインクジェットヘッドを更に有してもよい。また、ヘッド部102における複数のインクジェットヘッドの並べ方についても、様々に変形可能である。例えば、一部のインクジェットヘッドについて、他のインクジェットヘッドと副走査方向における位置をずらしてもよい。
【0039】
続いて、本例の造形装置12により造形する造形物50の構成や、造形装置12へ供給する造形物データを生成する動作等について、更に詳しく説明をする。図2は、造形物50の構成、及び造形物データを生成する動作について更に詳しく説明をする図である。図2(a)は、造形装置12により造形する造形物50の構成の一例を示す図であり、積層方向(Z方向)と直交する造形物50の断面であるX-Y断面の構成の一例を示す。この場合、Y方向やZ方向と垂直な造形物50のZ-X断面やZ-Y断面の構成も、同様の構成になる。
【0040】
上記においても説明をしたように、本例において、造形装置12(図1参照)は、インクジェットヘッド202y~k(図1参照)等を用いて、着色された造形物50を造形する。また、この場合、造形物50として、少なくとも表面が着色された造形物50を造形する。造形物50の表面が着色されることについては、例えば、造形物50において外部から色彩を視認できる領域の少なくとも一部が着色されること等と考えることができる。また、この場合、造形装置12は、例えば図中に示すように、光反射領域152及び着色領域154を備える造形物50を造形する。また、必要に応じて、造形物50の周囲等にサポート層52(図1参照)を形成する。
【0041】
光反射領域152は、着色領域154等を介して造形物50の外側から入射する光を反射するための光反射性の領域である。本例において、造形装置12は、インクジェットヘッド202w(図1参照)から吐出する白色のインクを用いて、造形物50の内部に光反射領域152を形成する。また、本例において、造形装置12は、内部領域を兼ねた光反射領域152を形成する。この場合、内部領域については、例えば、造形物50の内部を構成する領域等と考えることができる。造形物50の構成の変形例においては、内部領域について、光反射領域152とは別の領域として形成してもよい。この場合、造形装置12は、例えば、サポート層52の材料以外の任意のインクを用いて、内部領域を形成する。また、内部領域の周囲に、光反射領域152を形成する。
【0042】
着色領域154は、インクジェットヘッド202y~kから吐出する着色用のインクにより着色がされる領域である。本例において、造形装置12は、インクジェットヘッド202y~kから吐出する着色用のインクと、インクジェットヘッド202t(図1参照)から吐出するクリアインクとを用いて、光反射領域152の周囲(外側)に着色領域154を形成する。また、この場合、造形装置12では、例えば、各位置への各色の着色用のインクの吐出量を調整することにより、様々な色を表現する。また、色の違いによって生じる着色用のインクの量の変化を補填するために、クリアインクを用いる。このように構成すれば、例えば、着色領域154の各位置を所望の色で適切に着色できる。
【0043】
また、上記においても説明をしたように、本例において、造形装置12は、制御PC14(図1参照)から受け取る造形物データに基づき、造形物50の造形を実行する。また、この場合、制御PC14は、図2(b)に示すフローチャートの動作により、3Dスキャナ16(図1参照)から受け取るスキャンデータに基づき、造形物データを生成する。
【0044】
図2(b)は、制御PC14において造形物データを生成する動作の一例を示すフローチャートである。造形物データを生成する動作において、制御PC14は、先ず、3Dスキャナ16からスキャンデータを受け取ることで、スキャンデータの取得を行う(S102)。ステップS102における制御PC14の動作は、データ取得処理の動作の一例である。また、上記においても説明をしたように、本例において、制御PC14は、ユーザの指示に基づき、スキャンデータの補正を行う。この場合、ユーザについては、例えば、制御PC14に対する操作を行う作業者等と考えることができる。また、造形システム10の構成によっては、3Dスキャナ16での読み取りの対象となった人間が制御PC14の操作を行うこと等も考えられる。この場合、制御PC14のユーザについて、3Dスキャナ16での読み取りの対象となった人間と同一になると考えることができる。
【0045】
また、スキャンデータの補正を行う動作において、制御PC14は、補正モードを選択する指示をユーザから受け取る(S104)。この場合、制御PC14は、例えば、予め用意された互いに異なる複数種類の補正モードをユーザに提示して、複数種類の補正モードの中からいずれかの補正モードを選択する指示をユーザから受け取る。ステップS104における制御PC14の動作は、補正モード選択処理の動作の一例である。本例において用いる補正モードの例や、補正モードを選択する動作等については、後に更に詳しく説明をする。
【0046】
また、補正モードの選択が行われた後、制御PC14は、ユーザに選択された補正モードで対応する動作で、スキャンデータの補正を行う(S106)。ステップS106における制御PC14の動作は、データ補正処理の動作の一例である。本例において、制御PC14は、スキャンデータが示す人間の顔の印象が変化するように、スキャンデータの補正を行う。また、より具体的に、このような補正としては、例えば、肌の色(皮膚の色)を変化させる補正や、目の大きさを変化させる補正等を行うことが考えられる。本例においてスキャンデータの補正を行う動作についても、後に更に詳しく説明をする。
【0047】
また、スキャンデータの補正を行った後には、補正後のスキャンデータに基づき、造形物データを生成する(S108)。ステップS108における制御PC14の動作は、造形物データ生成処理の動作の一例である。また、上記においても説明をしたように、本例において、制御PC14は、生成した造形物データを造形装置12へ供給することで、造形装置12に造形の動作を実行させる。この場合、造形物データについて、例えば、造形装置12へ供給するためのデータ等と考えることもできる。
【0048】
また、本例でのステップS108において、制御PC14は、例えば、造形装置12への入力データの形式に合わせた形式の変更等を行うことで、造形物データを生成する。また、スキャンデータ及び造形物データの形式によっては、補正後のスキャンデータをそのまま造形物データとして用いてもよい。この場合、ステップS106においてスキャンデータを補正する動作について、例えば、データ補正処理の動作の動作と造形物データ生成処理の動作とを兼ねていると考えることもできる。また、制御PC14の動作の変形例においては、例えば、造形装置12への入力データの形式に合わせた形式の変更等について、スキャンデータの補正時に行ってもよい。また、この場合、例えば、造形装置12への入力データの形式に合わせた形式の変更等を行った後に、スキャンデータが示す人間の顔の印象を変化させるための補正を行ってもよい。
【0049】
本例によれば、例えば、スキャンデータの補正を適切に行うことができる。また、補正後のスキャンデータに基づき、造形物データを適切に生成することができる。更には、制御PC14において生成した造形物データを造形装置12へ供給することで、造形物の造形を造形装置12に適切に実行させることができる。
【0050】
続いて、造形装置12においてスキャンデータを補正する動作について、更に詳しく説明をする。また、これに関連して、先ず、本例においてスキャンデータの補正を行う理由等について、説明をする。上記においても説明をしたように、本例の造形システム10では、3Dスキャナ16において人間の形状及び色を読み取ることで、スキャンデータを生成する。そして、制御PC14においてスキャンデータに基づいて造形物データを生成し、造形装置12において、造形物データに基づき、3Dスキャナ16で読み取りの対象となった人間を示す造形物(例えば、人間のフィギュア)を造形する。
【0051】
また、より具体的に、この場合、例えば、人間の全身が入る大きさの3Dスキャナ16を用いて、人間の全身に対してスキャンを行うことが考えられる。そして、例えばこのような方法でスキャンデータの生成を行う場合、スキャンの対象が大きいこと等により、スキャン対象の人間の位置によって光の当たり方に差が生じやすくなる。また、例えば、環境光の影響で影になる部分が発生すること等も考えられる。そして、これらの影響により、例えば、スキャン結果において、肌の色が暗くなることや、目を構成している黒目と白目のコントラストが下がること等が生じやすくなる。そして、この場合、例えば3Dスキャナ16で生成したスキャンデータをそのまま用いると、造形装置12において造形する造形物が示す人間において、肌の色のくすみ、目のぼけ、又は目が黒くつぶれること等が生じやすくなる。これに対し、人間を示す造形物において、肌や目の印象は、特に重要である。そのため、肌のくすみや目のぼけ、つぶれ等が生じると、所望の出来映えの造形物を造形することが難しくなることが考えられる。また、人間を示すフィギュアにおいて、肌の色のくすみや目のぼけ、つぶれ等が生じると、価値が大きく低下すること等も考えられる。
【0052】
また、人間を示す造形物を造形する場合、例えば、実際の人間よりも縮小したサイズでの造形を行うことが考えられる。そして、この場合、サイズの縮小の影響により、目のつぶれ等が特に生じやすくなる。また、この場合、サイズが変わることの影響により、実際の人間(人物)の形状や色を忠実に再現しても、実際の人間と印象が大きく変わることも考えられる。更に、人間を示す造形物を造形する場合には、必ずしも実際の人間を忠実に再現することが好ましいわけではなく、例えば人物の個性を強調するように造形を行うことや、見た目の印象をよくして造形を行うことが望ましい場合もある。
【0053】
これに対し、上記においても説明をしたように、本例において、制御PC14は、スキャンデータに対し、補正を行う。また、この補正として、例えば、造形装置12で造形する造形物の状態を所望の出来映えに近づけるように、補正を行う。より具体的に、本例において、3Dスキャナ16は、読み取り対象の人間の顔を少なくとも含む部分を示すスキャンデータを生成する。この場合、スキャンデータについて、例えば、人間の顔を含む人間の少なくとも一部の形状と、当該形状の表面の各位置の色とを少なくとも示すデータ等と考えることができる。また、制御PC14では、スキャンデータを補正することで、例えば、スキャンデータが示す人間の顔の状態を変化させる。この場合、スキャンデータが示す人間の顔の状態を変化させることについては、例えば、顔の少なくとも一部における形状又は色を変化させること等と考えることができる。また、スキャンデータが示す人間の顔の状態を変化させることについては、例えば、スキャンデータが示す形状及び色で表現される人間の表情を変化させること等と考えることもできる。また、より具体的に、本例において、制御PC14は、例えば、人間の顔における肌の色及び目の状態を変化させることで、肌の色がきれいであり、かつ目がパッチリとした印象になるように、スキャンデータの補正を行う。また、この場合、制御PC14は、例えば図3に示すフローチャートの動作により、スキャンデータの補正を行う。
【0054】
図3は、制御PC14においてスキャンデータに対して行う補正の動作の一例を示すフローチャートである。本例において、スキャンデータに対して補正を行う場合、制御PC14は、先ず、スキャンデータが示す3Dモデルに基づき、スキャンデータにおいて人間の顔に対応する部分を識別する(S202)。この場合、スキャンデータが示す3Dモデルについては、例えば、スキャンデータが示す形状及び色で構成される立体的なモデル等と考えることができる。ステップS202における制御PC14の動作については、例えば、3Dモデルの顔を自動認識する動作等と考えることもできる。
【0055】
また、本例において、制御PC14は、ステップS202での識別結果に基づき、スキャンデータが示す立体形状における表面の色を示すテクスチャが示す画像(テクスチャ画像)の中で人間の顔を示す領域である顔領域(顔エリア)を更に識別する(S204)。より具体的に、上記においても説明をしたように、本例のスキャンデータでは、表面の色について、UVマップ法で立体形状にテクスチャを貼り付けることで示している。そして、この場合、ステップS204において、制御PC14は、ステップS202で識別した顔の部分のUVマップに基づき、テクスチャ画像における顔領域を識別(取得)する。また、本例において、UVマップについては、例えば、UV座標系の各位置とテクスチャの各位置との対応関係を示すデータ等と考えることができる。UVマップについては、例えば、立体形状に対するテクスチャの貼り付け方を指定するデータ等と考えることもできる。
【0056】
また、本例において、制御PC14は、例えば、ユーザの指示に基づき、人間の顔における肌の色及び目の状態を変化させるための補正を行う。より具体的に、図3に示す場合の補正の動作において、制御PC14は、顔の部分の肌の見え方を変化させる補正である美肌調整(S206)と、目の印象を変化させる補正である目調整(S208)とを行う。この場合、制御PC14は、美肌調整として、例えば、肌の色の明るさを明るくする(上げる)処理(美白処理)や、肌の色の調整等を行う。また、目調整として、例えば、目の黒目と白目とのコントラストを上げる(高める)処理や、目のサイズを大きくする処理(目のサイズアップ)等を行う。この場いい、目のサイズについては、例えば、目がパッチリとした印象になるように、少しだけ大きくすることが考えられる。
【0057】
また、更に具体的に、例えば、目調整を行う動作において、制御PC14は、スキャンデータが示す3Dモデルに基づき、顔領域の中で人間の目を示す領域である目領域を識別する。目領域を識別する動作については、例えば、3Dモデルに基づいて目の位置を自動的に認識する動作等と考えることができる。そして、例えば上記のようにして、スキャンデータが示す人間の顔における目の状態が変化するように、スキャンデータに対する補正を行う。また、目のサイズアップを行う補正において、制御PC14は、例えば、UVマップで目領域が対応付けられる位置を変化させることで、目のサイズアップを行う。この場合、目のサイズアップを行う補正について、例えば、テクスチャ画像自体は変化させずに、UVマップで目領域が対応付けられる位置を変化させることで行うことが考えられる。このように構成すれば、例えば、より自然な印象での目のサイズアップを行うことができる。また、目調整では、例えば、瞳の色が変化するようにスキャンデータの補正を行うこと等も考えられる。この場合、瞳の色を変化させる補正については、例えば、テクスチャ画像における瞳の部分の色を変化させることで行うことが考えられる。
【0058】
本例によれば、例えば、スキャンデータに対し、造形物で表現する人間の顔の状態を変化させるための補正を適切に行うことができる。また、これにより、例えば、補正後のスキャンデータが示す人物の印象を適切に変化させることができる。更には、補正後のスキャンデータに基づいて造形物データを生成し、造形物データに基づいて造形装置12(図1参照)での造形を実行することで、例えば、補正の結果を反映した造形物を適切に造形することができる。また、これにより、例えば、3Dスキャナ16で取得したスキャンデータをそのまま用いて高い精度で人物を再現する場合よりも印象をよくした造形物や、所望の状態で人物を示す造形物の造形を適切に行うことができる。また、上記の説明等から理解できるように、本例によれば、例えば、3Dスキャナ16で取得したスキャンデータを補正することで、スキャンの対象となった人間の特徴を残しつつ、最終的に造形される造形物の状態を変化させることができる。また、これにより、例えば、スキャン対象となった人間の基本的な雰囲気等を変化させることなく、所望の状態で人物を示す造形物の造形を適切に行うことができる。
【0059】
続いて、制御PC14において行う目調整の動作等について、更に詳しく説明をする。図4は、目調整の動作について更に詳しく説明をする図である。図中の上段において処理前の状態として示す図は、制御PC14において補正を行う前のスキャンデータが示す3Dモデルの例を示す。この3Dモデルについては、例えば、3Dスキャナ16で取得したスキャンデータが示す3Dモデル等と考えることができる。
【0060】
また、図中の中段において補正前及び補正後の状態として示す図は、制御PC14において目調整を行う前(補正前)、及び目調整を行った後(補正後)のテクスチャ画像の例を示す。図中において、細い折れ線は、UVマップ法でテクスチャが貼り付けられる立体形状を示している。より具体的に、本例のスキャンデータは、対象物の形状について、ポリゴンを用いて示す。そして、この場合、図中の細い折れ線について、顔領域の一部の各位置におけるポリゴンの状態を示していると考えることができる。
【0061】
また、上記においても説明をしたように、目調整において、制御PC14は、スキャンデータが示す3Dモデルに基づき、目の位置を認識する。この場合、例えば、補正を行う前のスキャンデータが示す3Dモデルに基づいて目の位置を認識することが考えられる。また、目の位置の認識については、例えば、目調整を行う時点のスキャンデータに基づいて行うこと等も考えられる。例えば、図3を用いて上記において説明をしたように、美肌調整を行った後に目調整を行う場合、目の位置の認識について、美肌調整を行った後のスキャンデータが示す3Dモデルに基づいて行うことも考えられる。
【0062】
また、上記においても説明をしたように、目調整において、制御PC14は、例えば、目の黒目と白目とのコントラストを上げる処理や、目のサイズを大きくする処理等を行う。また、このような補正により、制御PC14は、例えば図中に示す補正前のテクスチャ画像について、補正後のテクスチャ画像のように変化させる。また、この場合、補正後のスキャンデータが示す3Dモデルについて、例えば、図中の下段において処理後の状態として示す図のようになると考えることができる。本例によれば、例えば、目がパッチリとした印象になるようなスキャンデータの補正(パッチリ目の処理)を適切に行うことができる。
【0063】
ここで、上記においても説明をしたように、本例において、制御PC14は、スキャンデータに対する補正として、目調整の他に、美肌調整を更に行う。そして、美肌調整及び目調整については、例えば、3Dモデルの形状を変化させることなく、色のみを変化させることでも、実行が可能である。また、この場合、美肌調整や目調整で行う補正の少なくとも一部について、例えば、顔領域の少なくとも一部の色を変化させる補正の一例と考えることができる。また、美肌調整や目調整で行う補正の少なくとも一部について、例えば、スキャンデータが示す人間の顔の少なくとも一部の色が変わるようにスキャンデータが示す色を変化させる補正等と考えることもできる。また、上記の説明等から理解できるように、本例において、例えば美肌調整等で色を変化させる補正については、テクスチャ画像の色を変化させることで行う。また、この場合、制御PC14は、例えば、スキャンデータが示す形状を変化させずに、テクスチャ画像を変化させる。より具体的に、美肌処理において、制御PC14は、例えば、顔領域における肌の色を変化させることで、テクスチャが示す画像を変化させる。また、目調整においても、制御PC14は、例えば白目と黒目とのコントラストを変化させる補正等で、テクスチャ画像を変化させることが考えられる。このように構成した場合、例えば、スキャンデータが示す形状を変化させないことで、より容易にスキャンデータの補正を行うことができる。また、これにより、例えば、スキャンデータが示す人間の顔の印象を容易かつ適切に変化させることができる。
【0064】
また、スキャンデータの補正においては、例えば、テクスチャ画像のみではなく、スキャンデータが示す形状についても変化させてもよい。この場合、スキャンデータを補正する動作において、制御PC14は、スキャンデータが示す形状を変化させる。このように構成した場合も、例えば、スキャンデータに対する補正を適切に行うことができる。また、より具体的に、この場合、例えば、目調整の動作において、目のサイズを変更するのに合わせて、スキャンデータが示す形状も変化させること等が考えられる。この場合、例えば、目のサイズを変更するのに合わせて、目の縁の部分を構成する上下の瞼に対応する微細な凹凸の位置を変化させること等が考えられる。また、この場合、制御PC14は、例えば、目調整において、UVマップで目領域が対応付けられる位置を変化させ、この位置の変化に合わせて、上下の瞼に対応する凹凸の位置を変化させる。このように構成すれば、例えば、スキャンデータが示す顔の印象をより自然かつ適切に変化させることができる。
【0065】
また、上記においては、スキャンデータに対して行う補正に関し、主に、肌の色や目の印象に関する補正を行う動作について、説明をした。しかし、スキャンデータに対する補正としては、上記以外の補正を行うことも考えられる。この場合、例えば、人間の顔を構成する様々なパーツに対し、色や形状を変化させる補正を行うことが考えられる。より具体的に、人間の顔を構成するパーツとしては、目以外に、例えば、鼻、口、耳、及び眉等を考えることができる。この場合、制御PC14は、例えば、これらのパーツの少なくとも一部の色が変化するようにスキャンデータの補正を行うことで、スキャンデータが示す人間の顔の少なくとも一部の色が変わる補正を行う。
【0066】
また、顔を構成する様々なパーツについて、スキャンデータが示す形状を変化させる補正を行うこと等も考えられる。この場合、様々なパーツのうち、特に、目、鼻、口の形状を変化させることが考えられる。より具体的に、この場合、制御PC14は、例えば、人間の顔における目、鼻、及び口の少なくともいずれかに対応する部分について、スキャンデータが示す形状を変化させる。このように構成すれば、例えば、スキャンデータが示す人間の顔の状態を適切に変化させることができる。また、更に具体的に、この場合、制御PC14は、例えば、人間の顔における目、鼻、及び口の少なくともいずれかに対応する部分の少なくとも一部について、造形物の表面と直交する方向である法線方向において表面の位置が変化するように、スキャンデータが示す形状を変化させる。法線方向において表面の位置が変化することについては、例えば、造形物の表面における凸部の高さや凹部の深さを変化させること等と考えることができる。このように構成すれば、例えば、スキャンデータにおいて目、鼻、口等を示す形状を適切に変化させることができる。また、これにより、例えば、スキャンデータが示す人間の顔の状態を適切に変化させることができる。
【0067】
続いて、ユーザからの補正の指示の受け取り方や、補正モードについて、更に詳しく説明をする。上記においても説明をしたように、本例において、制御PC14は、ユーザの指示に基づき、スキャンデータの補正を行う。より具体的に、本例において、制御PC14は、スキャンデータに対して行う補正を示す指示である補正指示をユーザから受け取り、補正指示に基づき、スキャンデータデータの補正を行う。また、補正の実行時において、制御PC14は、補正モードを選択する指示をユーザから受け取る。また、本例において、制御PC14は、ユーザへの画面表示を行う表示部を有する。表示部としては、例えば、公知のモニタ等の画像表示装置を好適に用いることができる。そして、制御PC14は、例えば、図5に示す画面表示を用いて、ユーザからの指示を受け取る。
【0068】
図5は、補正の指示の受け取り方等について更に詳しく説明をする図である。図5(a)は、補正モードの選択を受け取る画面の一例を示す。図5(b)は、補正モードとして詳細モードが指定された場合にユーザに示す画面の一例を示す。
【0069】
上記においても説明をしたように、本例において、制御PC14は、複数種類の補正モードの中からいずれかの補正モードを選択する指示をユーザから受け取る。そして、制御PC14は、ユーザにより選択された補正モードに対応付けられている指定の仕方で補正指示をユーザから受け取り、その補正指示に基づき、スキャンデータに対する補正を行う。このように構成すれば、例えば、様々な補正モードでのスキャンデータに対する補正を適切に行うことができる。また、これにより、例えば、ユーザの意向に沿った補正を適切に行うことができる。この場合、複数種類の補正モードのそれぞれについては、例えば、補正指示の指定の仕方と対応付けておくことが考えられる。また、本例において、制御PC14は、複数種類の補正モードとして、簡単モード、詳細モード、及びデータ編集モードを用いる。この場合、制御PC14は、例えば図5(a)において簡単、詳細、及びデータ編集の文字を記載して示すボタンのように、それぞれの補正モードに対応する選択手段を表示して、ユーザによる補正モードの選択の指示を受け取る。また、この場合、制御PC14は、選択される補正モードに対応付けられている指定の仕方により、補正指示を更にユーザから受け取る。
【0070】
また、本例において用いる上記の複数種類の補正モードは、指示の詳細さが互いに異なる複数種類の補正モードの一例である。これらの複数種類の補正モードを用いることにより、例えば、ユーザが求める品質等に応じて、補正の指示の与え方を適切に変化させることができる。また、本例において、簡単モードは、所定補正モードの一例である。所定補正モードについては、例えば、補正の強さを示すパラメータの指定をユーザから受け付けることなく予め設定された補正を行う補正モード等と考えることができる。また。簡単モードについて、例えば、補正の強さを示すパラメータを用いずに補正の内容を指定することで簡単な補正を行う補正モード等と考えることもできる。
【0071】
また、本例において、簡単モードは、目をパッチリさせることや肌色をきれいに出すこと(美肌)等の目的を指定することで補正を実行する補正モードである。補正モードとして簡単モードがユーザに選択された場合、制御PC14は、例えば図5(a)に目パッチリ、及び美肌等として示すように、補正の目的を示すボタン等の選択手段を表示して、補正の目的の選択をユーザから更に受け付ける。そして、ユーザにより選択された補正の目的に基づき、例えば自動的に設定されるパラメータ等に従って目調整や美肌調整等を実行することで、スキャンデータの補正を行う。このような簡単モードを用いることにより、例えば、ユーザに負担をかけることなく、スキャンデータに対する補正を適切に行うことができる。
【0072】
また、本例において、詳細モードは、パラメータ指定モードの一例である。パラメータ指定モードについては、例えば、パラメータの指定をユーザから受け付けることでパラメータによって指定される強さでの補正を行う補正モード等と考えることもできる。また、詳細モードについて、例えば、補正の強さを示すパラメータを用いて補正の仕方を指定することで簡単モードよりも詳細な補正を行う補正モード等と考えることもできる。補正モードとして詳細モードがユーザに選択された場合、制御PC14は、例えば図5(b)に示す画面をユーザに指定して、補正の強さを示すパラメータの指定をユーザから受け付ける。より具体的に、図示した場合において、制御PC14は、目調整において目をパッチリさせる程度を示す目パッチリ度や、肌調整において美肌感を高めるために行う調整の程度を示す美肌度等について、パラメータの指定をユーザから受け付ける。そして、この場合、制御PC14は、指定されたパラメータに基づいて目調整や美肌調整等を実行することで、スキャンデータの補正を行う。このような詳細モードを用いることにより、例えば、ユーザの希望に合わせたスキャンデータに対する補正をより適切に行うことができる。
【0073】
また、本例において、データ編集モードは、形状調整モードの一例である。形状調整モードについては、例えば、スキャンデータが示す形状をユーザの操作に応じて変化させる補正を行う補正モード等と考えることができる。この場合、形状をユーザの操作に応じて変化させることについては、例えば、スキャンデータにおいて形状を示すポリゴンの形状等を編集することで直接的に形状を変化させること等と考えることができる。また、この場合、データ編集モードについて、例えば、ポリゴンの編集等によってスキャンデータが示す形状を変化させる操作をユーザに直接行わせる補正モード等と考えることもできる。また、データ編集モードについて、例えば、パラメータ指定モードよりも詳細に補正の仕方を指定する補正モード等と考えることができる。データ編集モードでは、形状に限らず、スキャンデータにおけるテクスチャ画像の編集をユーザに更に行わせてもよい。また、データ編集モードにおいて、例えば、スキャンデータが示す形状に対するテクスチャの貼り付け方を変更する調整等をユーザに行わせてもよい。
【0074】
補正モードとしてデータ編集モードがユーザに選択された場合、制御PC14は、例えば、スキャンデータの形状の編集(例えばポリゴンの編集)やテクスチャ画像の編集等を行わせる画面をユーザに表示して、スキャンデータの補正のための操作をユーザに行わせる。このようなデータ編集モードを用いることにより、例えば、必要に応じて、スキャンデータに対し、詳細かつ具体的な補正を適切に行うことができる。また、上記のような複数種類の補正モードを用いることにより、例えば、ユーザが求める品質等に応じて、様々な補正モードでのスキャンデータに対する補正を適切に行うことができる。
【0075】
ここで、上記の説明等から理解できるように、上記の複数種類の補正モードのうち、簡単モード及び詳細モードについては、例えば、造形装置12(図1参照)に関する詳しい知識等がないユーザ等でも比較的容易に補正の仕方の指定を行うことが可能な補正モード等と考えることができる。これに対し、データ編集モードについては、例えば、造形装置12等に関するある程度の知識が必要な補正モード等と考えることができる。そのため、データ編集モードについては、例えば、所定の知識等を有している一部のユーザのみが選択可能な補正モードとして用いることも考えられる。より具体的に、例えば、簡単モード及び詳細モードについては消費者等の一般的なユーザでも使用可能な補正モードとし、データ編集モードについては、造形システム10(図1参照)のオペレータ等の特定のユーザのみが使用する補正モードにすること等が考えられる。この場合、一般的なユーザとしては、例えば、造形装置12において造形する造形物の購入者等を想定することができる。また、一般的なユーザとして、例えば、3Dスキャナ16(図1参照)でのスキャン対象の人物等を想定することもできる。また、データ編集モードを使用可能な特定のユーザとしては、例えば、造形装置12において造形する造形物を販売する販売者やその補助者等を想定することができる。また、特定のユーザについて、例えば、データ編集モードを使用するためのオペレータ等と考えることもできる。また、データ編集モードでの補正については、例えば、簡単モードや詳細モードでの補正と共に行うこと等も考えられる。この場合、例えば、データ編集モードでの補正により、簡単モード又は詳細モードでの補正を行った結果に対する微調整を行うこと等が考えられる。
【0076】
また、上記のように、本例においては、スキャンデータの補正を行うことで、造形物の仕上がりについて、ユーザの所望の仕上がりに近づける。しかし、この場合も、補正指示が不適切であると、所望の仕上がりでの造形物の造形を適切に行えなくなる。また、造形装置12において造形物を造形する場合、通常、多くのインクを消費することになる。また、造形の動作には、数時間~数日程度以上の長い時間を要する場合がある。そのため、不適切な補正指示での造形を実行してしまうと、無駄なコストや時間を多く消費することになる。
【0077】
そのため、制御PC14においては、スキャンデータが示す人間の少なくとも一部を表示部に立体的に表示しつつ、補正指示をユーザから受け取ることが好ましい。この場合、スキャンデータが示す人間の少なくとも一部を表示部に立体的に表示することについては、例えば、造形しようとする造形物の造形結果の予測を表示すること等と考えることができる。また、表示部に立体的に表示することについては、例えば、表示している物の立体的な形状をユーザが認識できるように表示を行うこと等と考えることができる。また、このような表示としては、例えば、公知の3D表示技術を用いた表示等を行うことが考えられる。表示部への立体的な表示については、例えば、造形物を表示する向きをユーザの指示に従って変更可能な状態で行うことが好ましい。また、造形物の一部としては、少なくとも顔に対応する部分を表示することが考えられる。また、この場合、例えば、表示のスケールを異ならせて、造形物の全体と、顔に対応する部分とを表示部に表示してもよい。また、表示部への表示については、例えば、造形結果の3Dプレビュー表示等と考えることもできる。また、表示部への造形物の表示については、例えば、ユーザの指示に応じて拡大及び縮小が可能な状態で行うことが好ましい。
【0078】
また、制御PC14での補正指示の受け取りについては、例えば、受け取る補正指示に従ってスキャンデータを補正した場合に得られる造形物の予測結果をユーザに示しつつ行うことが考えられる。この場合、制御PC14は、例えば、補正指示に従ってスキャンデータを補正した場合の補正後のスキャンデータに基づいて生成される造形物データを用いる場合に造形される造形物である予測造形物の少なくとも一部を表示部に表示しつつ、補正指示をユーザから受け取る。補正指示に従ってスキャンデータを補正した場合の補正後のスキャンデータについては、例えば、その時点での仮の補正指示に従って補正を行った場合のスキャンデータ等と考えることができる。この場合、ユーザは、例えば、表示部に表示される予測造形物の状態に基づき、最終的に指定する補正指示を決定する。このように構成した場合、ユーザは、例えば、所望の補正を行うための補正指示を適切に決定することができる。また、これにより、制御PC14において、補正指示をより適切に受け取ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、例えば造形システム等に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0080】
10・・・造形システム、12・・・造形装置、14・・・制御PC、16・・・3Dスキャナ、50・・・造形物、52・・・サポート層、102・・・ヘッド部、104・・・造形台、106・・・走査駆動部、110・・・制御部、152・・・光反射領域、154・・・着色領域、202・・・インクジェットヘッド、204・・・紫外線光源、206・・・平坦化ローラ
図1
図2
図3
図4
図5